以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる制御システムを詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る制御システム1の構成を示す図である。制御システム1は、直流モータMの駆動制御を行う。
制御システム1は、L負荷として機能する直流モータMに対して、外付けの抵抗素子を使用しない抵抗レスの電流検出を行う。すなわち、制御システム1は、直流モータMに流れる電流(駆動電流)を検出し、検出結果に応じて定電流制御を行う。定電流制御は、駆動スイッチの両端電圧を検出し、検出された電流が所定の目標電流に近づくように制御することで行われる。
例えば、制御システム1は、図2に示すような擬似正弦波状の制御波形パターンに応じて、直流モータMに流れる電流を制御する。図2は、制御システム1の動作を示す波形図である。このような制御は、目標電流をステップ的に変更しながら疑似的に正弦波に近い電流波形パターンが得られるようにする駆動制御であり、マイクロステップ駆動と呼ばれ得る。マイクロステップ駆動を抵抗レスの電流検出で行うためには、直流モータの駆動電流を高精度に検出することが望まれる。
しかし、駆動回路内の駆動スイッチとしてのトランジスタが高性能化し動作電圧が低電圧化することに伴い、制御波形パターンにおける電流振幅の小さい領域で駆動電流の検出精度を確保することが困難になり得る。直流モータMに対して低電流駆動が要求される場合、駆動電流の検出精度を確保することがますます困難になり得る。
例えば、電流検出回路がコンパレータ等のオフセット電圧を有する回路を用いて構成される場合、電流振幅の小さい領域において電流検出回路のオフセット電圧が制御の目標電圧(目標電流に対応した電圧値)に対して相対的に大きくなる。このため、電流振幅の小さい領域では、電流検出回路は、駆動スイッチの両端電圧の値が目標電圧よりオフセット電圧に相当する分大きな電圧値で目標電圧に達したと検出するなど、その電流検出の誤差が大きくなり得る。これにより、制御波形パターンに対して実際のモータ電流の波形パターンが電流振幅の小さい領域でオフセットし擬似正弦波から乖離した波形パターンになるため、直流モータで騒音及び/又は振動が大きく発生し得る。
本実施形態では、駆動回路5内の駆動スイッチを複数のトランジスタの並列接続で構成する。電流振幅の小さい領域でオンさせるトランジスタの数を制限し両端電圧が大きく表れるようにすることで、電流検出の精度向上を図る。
具体的には、制御システム1は、制御装置2及び電源回路3を含む。電源回路3は、電圧源3aを含む。制御装置2は、電源回路3及び直流モータMに接続され、直流モータMの駆動を制御する。制御装置2は、駆動回路5及び制御回路6を有する。駆動回路5は、MCD(モータコイルドライバ)として実装される。制御回路6は、MCU(マイクロコントローラーユニット)として実装され得る。制御回路6は、制御ロジック回路61及びPWM制御回路62を有する。直流モータMは、例えば、ステッピングモータであるが、DCブラシモータ、DCブラシレスモータであってもよい。
駆動回路5は、複数の電流検出回路51〜54及び複数の駆動スイッチ55〜58を有する。駆動スイッチ55〜58は、Hブリッジ回路として構成可能である。各駆動スイッチ55〜58は、制御端子がPWM制御回路62に接続され、一端が直流モータMに接続されている。駆動スイッチ55,56は、他端が電源回路3に接続されている。駆動スイッチ57,58は、他端がグランド電位に接続されている。
各電流検出回路51〜54は、対応する駆動スイッチ55〜58の両端に電気的に接続さる。各電流検出回路51〜54は、駆動スイッチ55〜58の両端電圧により、その駆動スイッチ55〜58に流れる電流の大きさを検出する。
図3(a)は、電流検出回路51及び駆動スイッチ55の構成及び動作を示す図である。駆動スイッチ55は、ノードN1、ノードN2、複数のトランジスタNT1〜NT3を有する。ノードN1は、電源回路3に接続されている。ノードN2は、直流モータMに接続可能である。トランジスタNT1〜NT3は、ノードN1及びノードN2の間に互いに並列に電気的に接続されている。各トランジスタNT1〜NT3は、NMOSトランジスタで構成され得る。各トランジスタNT1〜NT3は、ドレインがノードN1に接続され、ソースがノードN2に接続され、ゲートがPWM制御回路62に接続されている。
電流検出回路51は、ノードN1及びノードN2の間に流れる電流を検出する。電流検出回路51は、トランジスタNT11、判定回路511、及び基準電流源512を有する。トランジスタNT11は、トランジスタNT1〜NT3に対応するディメンジョン(=W/L:Wがゲート幅、Lがゲート長)を有し、トランジスタNT1〜NT3に対応するオン抵抗で動作し得る。トランジスタNT11は、ドレインが基準電流源512に接続され、ソースがノードN2に接続され、ゲートがバイアス電位Vbに接続されている。バイアス電位Vbは、トランジスタNT11が線形領域で動作するように調整されている。基準電流源512は、目標電流(図2参照)に相当する基準電流を発生させる制御信号がPWM制御回路62から供給される。これにより、基準電流源512及びトランジスタNT11の間のノードN3には、目標電流に相当する目標電圧が現れるようになっている。
判定回路511は、入力ノード511a、511b、及び出力ノード511cを有する。判定回路511は、例えばコンパレータで構成され得る。判定回路511は、入力ノード511aがノードN1に接続され、入力ノード511bがノードN3に接続され、出力ノード511cが制御ロジック回路61に接続されている。判定回路511は、ノードN1の電圧とノードN3の電圧とを比較した結果に基づく信号を制御ロジック回路61へ供給する。例えば、判定回路511は制御ロジック回路61に、ノードN1の電圧がノードN3の電圧を超えた場合、Hレベルの信号を、ノードN1の電圧がノードN3の電圧を下回った場合、Lレベルの信号を供給する。
なお、電流検出回路52及び駆動スイッチ56の構成についても同様である。電流検出回路53及び駆動スイッチ57の構成、電流検出回路54及び駆動スイッチ58の構成については、ノードN1が直流モータMに接続されノードN2がグランド電位に接続されている点が異なり、それ以外の点は上記と同様である。
制御ロジック回路61は、図2に示すような制御波形パターンが予め設定されているか、方形波の波形パターンから所定のパラメータを用いた演算を行って図2に示すような制御波形パターンを生成する。制御ロジック回路61は、各電流検出回路51〜54の検出結果(すなわち、判定回路511の比較結果)と図2に示す制御波形パターンとに応じて、目標電流値とトランジスタNT1〜NT3のうちオンさせる数とをPWM制御回路62に指示する。
制御ロジック回路61は、駆動スイッチ55〜58のトランジスタNT1〜NT3をオンさせるようにPWM制御回路62に指示する。例えば、制御電流における最大振幅の絶対値をIM(>0)とすると、図2に示す期間TL−1,TL−2,TL−3,TL−4,TL−5において、制御電流の振幅絶対値がIM/2より小さい。このとき、図1における左から右への方向をモータ電流の正側とすると、制御電流の振幅が+側では、駆動スイッチ55,58においてオンさせるトランジスタの数を1個に制限し(図3(a))、駆動スイッチ56,57においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。制御電流の振幅が−側では、駆動スイッチ56,57においてオンさせるトランジスタの数を1個に制限し、駆動スイッチ55,58においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。
これにより、制御電流の振幅絶対値が小さい領域において駆動スイッチの両端の抵抗が大きくなり、駆動スイッチの両端に現れる電圧を大きくすることができるので、電流検出回路54による駆動電流の検出精度を容易に向上できる。
一方、期間TH−1,TH−2,TH−3,TH−4において、制御電流の振幅絶対値がIM/2より大きい。このとき、制御電流の振幅が+側では、駆動スイッチ55,58にいてトランジスタを全てオンさせ、駆動スイッチ56,57においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。制御電流の振幅が−側では、駆動スイッチ56,57においてトランジスタを全てオンさせ、駆動スイッチ55,58においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。
PWM制御回路62は、制御ロジック回路61からの指示に応じて、目標電流値の制御信号と各駆動スイッチ55〜58におけるトランジスタNT1〜NT3をオン・オフさせるPWM制御信号とを生成し、駆動回路5へ供給する。すなわち、PWM制御回路62は、目標電流値の制御信号を各基準電流源512へ供給するとともに、PWM制御信号を各トランジスタNT1〜NT3へ供給する。
以上のように、本実施形態では、制御装置2において、駆動回路5内の駆動スイッチを複数のトランジスタの並列接続で構成し、電流振幅の小さい領域でオンさせるトランジスタの数を制限し両端電圧が大きく表れるようにする。これにより、電流検出の精度を向上でき、直流モータMに流す電流を適正に制御できる。したがって、直流モータMに対する低電流駆動の要求を満たすことができ、直流モータMに対する制御可能な電流範囲であるダイナミックレンジを容易に(例えば、低電流側に)拡大できる。
なお、各駆動スイッチ55〜58において、互いに並列接続されるトランジスタの数は、3つに限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
あるいは、駆動回路5において、電流検出回路がモータ電流の電流経路に少なくとも1つ配されていればよい。例えば、駆動回路5は、電流検出回路51,52が省略された構成であってもよいし、電流検出回路53,54が省略された構成であってもよい。
実施形態では、制御システム1が抵抗レスで電流検出を行う場合について例示しているが、外付け抵抗を用いて電流検出を行う場合においても、本実施形態の考え方は適用可能である。
次に、実施形態の第1の変形例について説明する。図4は、駆動回路5における電流検出回路及び駆動スイッチの実装構成を示す図である。例えば、装置のコンパクト化の要求により回路を配置すべき領域100が予め決められていることがある。この場合、電流検出回路51及び駆動スイッチ55は、図4(a)に示すように、領域100内を3分割して得られる領域101〜103のそれぞれに、トランジスタNT1〜NT3を配置し、領域101〜103の間の領域104,105に電流検出回路51に相当する構成を分割して配置する。各領域101〜103は、例えばゲートアレイで構成でき、等価的に1つのトランジスタとして動作し得る。
あるいは、トランジスタNT1〜NT3の各構成に対し、図4(b)に示すように、領域100内を10分割し、この領域201〜210のうち1以上の領域を任意に割り当ててもよい。例えば、トランジスタNT1に領域201を割り当て、トランジスタNT2に領域202〜204を割り当て、トランジスタNT3に領域205〜210を割り当てる。これにより、駆動スイッチにおけるトランジスタNT1〜NT3のディメンジョンを適宜調整できる。この場合も、トランジスタに割り当てた領域間に、電流検出回路に相当する構成を分割して配置することができる。
次に、実施形態の第2の変形例について説明する。制御回路6は、駆動スイッチ55〜58においてオンさせるトランジスタの数を多段階的に制御してもよい。図5は、第2の変形例に係る制御システムの動作を示す波形図である。図6は、第2の変形例における電流検出回路及び駆動スイッチの動作を示す図である。
例えば、図5に示す期間TL−1,TL−2,TL−3,TL−4,TL−5において、制御電流の振幅絶対値が1/3×IMより小さい。このとき、左から右へ向かう方向がモータ電流の正側とすると、制御電流の振幅が+側では、駆動スイッチ55,58においてオンさせるトランジスタの数を1個に制限し(図6(a))、駆動スイッチ56,57においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。制御電流の振幅が−側では、駆動スイッチ56,57においてオンさせるトランジスタの数を1個に制限し(図6(a))、駆動スイッチ55,58においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。
これにより、制御電流の振幅絶対値が小さい領域において駆動スイッチの両端の抵抗が大きくなり、駆動スイッチの両端に現れる電圧を大きくすることができる。よって、電流検出回路54による駆動電流の検出精度を容易に向上できる。
図5に示す期間TM−1,TM−2,TM−3,TM−4,TM−5,TM−6,TM−7,TM−8において、制御電流の振幅絶対値が1/3×IMより大きく2/3×IMより小さい。このとき、制御電流の振幅が+側では、駆動スイッチ55,58においてオンさせるトランジスタの数を2個に制限し(図6(b))、駆動スイッチ56,57においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。制御電流の振幅が−側では、駆動スイッチ56,57においてトランジスタの数を2個に制限し、駆動スイッチ55,58においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。
これにより、制御電流の振幅絶対値が中程度の領域において駆動スイッチの両端の抵抗が中程度に大きくなり、駆動スイッチの両端に現れる電圧を中程度に大きくすることができる。よって、電流検出回路54による駆動電流の検出精度を容易に向上できる。
一方、図5に示す期間TH−1,TH−2,TH−3,TH−4において、制御電流の振幅絶対値が2/3×IMより大きい。このとき、制御電流の振幅が+側では、駆動スイッチ55,58においてトランジスタを全てオンさせ(図6(c))、駆動スイッチ56,57においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。制御電流の振幅が−側では、駆動スイッチ56,57においてトランジスタを全てオンさせ、駆動スイッチ55,58においてトランジスタは全てオフ状態に維持する。
このように、第2の変形例では、制御装置2において、制御電流の振幅に基づいて多段階的にオンさせるトランジスタの数を制限している。電流振幅の小さい領域では両端電圧が大きく表れるようにし、電流振幅の中程度の領域では両端電圧が中程度に大きく表れるようにする。これにより、定電流制御において、電流検出の精度をさらに向上でき、直流モータMに流す電流をさらに適正に制御できる。
あるいは、第3の変形例として、制御装置2は、電流振幅が大きい領域で複数のトランジスタをシーケンシャル駆動してもよい。図7は、第3の変形例における駆動回路の動作を示す波形図である。
例えば、図7(a)に示すように、トランジスタをオンさせるべきタイミングt1において、各トランジスタNT1〜NT3が一括してオンされ得る。この場合、駆動電流の波形が目標値Itに達した後に目標値Itを超えてオーバーシュートする傾向にある。このオーバーシュートを考慮して直流モータMの制御電流を下げる場合、直流モータMに対する制御可能な電流範囲であるダイナミックレンジが制限され得る。
それに対して、第3の変形例では、図7(b)に示すように、複数のトランジスタNT1〜NT3をシーケンシャルにオンさせる。図7(b)の場合、タイミングt11にトランジスタNT1をオンさせ、タイミングt12にトランジスタNT2をオンさせ、タイミングt13にトランジスタNT3をオンさせる。これにより、駆動電流の立ち上がりはゆっくりであるが徐々に急峻に立ち上がる波形になり、目標値Itに達した後に目標値It近傍で安定し得る。これにより、波形のオーバーシュートを抑制できるので、直流モータMの制御電流を大きな値に設定可能である。したがって、直流モータMに対する高電流駆動の要求を満たすことができ、直流モータMに対する制御可能な電流範囲であるダイナミックレンジを容易に(例えば、高電流側に)拡大できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。