JP2020045532A - アルミ溶湯の溶存水素処理装置およびそれを用いた溶存水素処理方法 - Google Patents

アルミ溶湯の溶存水素処理装置およびそれを用いた溶存水素処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶存水素処理の効率および能力の向上を実現する溶存水素処理装置およびそれを用いた溶存水素処理方法を提供する。【解決手段】アルミ溶湯を収納する処理槽1と、処理槽1に処理前のアルミ溶湯を入湯する入湯口4と、処理槽1から処理後のアルミ溶湯を出湯する出湯口7と、処理槽1の大気を排除する減圧配管12を備え、出湯口7が処理槽1の下部に設けられているアルミ溶湯の溶存水素処理装置である。出湯口が処理槽の下部に設けられているため、処理後のアルミ溶湯の排出の際に残量がないという効果が得られる。アルミ溶湯は処理槽内の大気を減圧配管から排除して処理槽内を減圧することにより入湯口から注入し、アルミ溶湯の注入後に処理槽内の大気を再度減圧配管から排除して処理槽内の真空度を高めることにより、平衡水素量の絶対値を大幅に低下させることができ、水素の再溶解が起こりにくくなるという効果が得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウムおよびアルミニウム合金溶湯中の溶存水素を除去するための技術に関する。
アルミニウム及びアルミニウム合金溶湯(以下、「アルミ溶湯」という。)に含まれる溶存水素を除去するための処理方法として、シャフト(中空状のパイプ)先端にガスを小さい気泡にするためのインペラが固定されたインペラシャフトを回転させながらアルゴンガスや窒素ガスを微細な気泡となるように排出し、その気泡に溶存水素を吸着させてアルミ溶湯外に取り除く方法が一般的である。アルミ溶湯中の溶存水素を取り除くことにより、最終的なアルミニウム製品の内部に残留する気孔を減少させることができるため、歩留や品質の製造時の歩留向上、最終製品の欠陥防止に寄与する。
アルミ溶湯の溶存水素処理に関する先行技術として、特許文献1乃至5を挙げることができる。
特開平09−316558号公報 特開平06−265269号公報 特開平06−330199号公報 特開平07−090406号公報 特開平07−233425号公報
特許文献1の技術は、槽内を真空にすることにより、アルミニウムよりも蒸気圧の高い亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等のアルミ溶湯中に含まれる金属を取り除くことを目標としており、本発明の目的とは異なる。また、真空状態での処理によって水素0.10ppm以下の結果が得られているが、真空度が10kPaであれば処理されたアルミ溶湯は入湯口、出湯口から槽内に逆流するため、処理されたアルミ溶湯を槽内から排出できないと思われる。よって特許文献1の技術は、水素を除くための脱ガス装置としては実用的であるとはいえない。
特許文献2の技術は、槽内の一部を減圧した状態でより効率よく脱ガスできるように考案された装置に関するものである。しかしながら、構造的に真空度は90kPa程度であり、従来の装置と比較しても大幅な効率の向上は望めない。
特許文献3の技術は、大気圧下で使用される脱ガス装置であり、特に供給されたガスを回転するインペラによって微細な気泡になるように工夫されている。しかしながら、湿気を伴う大気中で脱ガス処理を行えば必ず水素の再溶解が発生するため、処理時間を長くしたとしても満足する水素量は達成できないと思われる。
特許文献4の技術は、インペラ形状をより工夫されたものであるが、特許文献3の技術と同じ理由で現状のレベルを上げることは難しい。
特許文献5の技術は、回転脱ガス装置の回転するシャフトとモーターのアタッチメントを工夫することにより、短時間に簡単に芯出しができる構造にしたこと、および先端のインペラの形状をアルミ溶湯の渦巻き現象の抑制と供給されたガスが微細な気泡になるように工夫したことに特徴がある。しかしながら、前述のように湿気を持つ大気中での脱ガス処理には前述した通り限界がある。
本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑みて創作されたものであり、溶存水素処理の効率および能力の向上を実現する溶存水素処理装置およびそれを用いた溶存水素処理方法を提供する。
本発明の溶存水素処理装置は、アルミ溶湯を収納する処理槽と、前記処理槽に処理前のアルミ溶湯を入湯する入湯口と、 前記処理槽から処理後のアルミ溶湯を出湯する出湯口と、前記処理槽内を減圧する減圧配管を備え、前記入湯口および前記出湯口が、通湯孔が設けられているダイスと、前記通湯口を塞ぐストッパーピンを備えることを特徴とする。
本発明の溶存水素処理装置は、処理槽内の大気を減圧配管から排除して処理槽内を減圧することによりアルミ溶湯を入湯口から注入する。アルミ溶湯の注入後に処理槽内の大気を再度減圧配管から排除して処理槽内の真空度を高めることにより、平衡水素量の絶対値を大幅に低下させることができ、水素の再溶解が起こりにくくなるという効果が得られる。入湯口および出湯口がダイスとストッパーピンによって密閉可能な構成となっているため、従来の処理装置と比較して非常に高い真空環境を実現することができる。これにより従来の処理装置では達成できなかった溶存水素量の僅少なアルミ溶湯の脱ガス処理を実現することができる。
本発明は、出湯口が処理槽の下部に設けられている構成とすることにより、脱ガス処理後のアルミ溶湯は重力によって自然排出される。またアルミ溶湯の残量がないという効果も得られる。さらに処理槽内に加圧ガスを供給する加圧配管を備える構成とすることにより、アルミ熔湯の排出にかかる時間を短縮することができるという効果が得られる。加圧ガスとしては、酸素および水分を含まないガス、例えば窒素ガスなどが好ましい。
本発明は、入湯口と接続されて処理槽内の上方に向けて延びる送湯管を備える構成とすることにより、アルミ溶湯が送湯管の先端から下方に落下する際の表面積が増大するため、脱ガス処理が促進されるという効果が得られる。
本発明は、減圧配管が、アルミ溶湯の注入時に処理槽内の大気を排除する第1の排気手段と、アルミ溶湯の注入後に処理槽内の大気を排除する第2の排気手段と接続されている構成とすることにより、第1の排気手段を用いたアルミ溶湯の注入工程の後に第2の排気手段を用いた処理槽内の大気の排除工程に連続的に移行することができるため、脱ガス処理にかかる時間を短縮することができるという効果が得られる。
溶存水素処理装置の構成を示す図 アルミ溶湯の流量調節機構を示す図 溶存水素処理装置の付帯設備の構成を示す図
本発明の実施の形態について添付した図面を参照しながら説明する。最初に溶存水素処理装置の構造について説明し、次にその処理能力について説明する。
〔溶存水素処理装置の構造〕
図1に溶存水素処理装置の構成を示す。溶存水素処理装置は、アルミ溶湯の脱ガス処理を行う処理槽1、アルミ溶湯中に不活性ガスを吹込むインペラシャフト2、アルミ溶湯の温度を保持するためのヒーターチューブ3、処理槽1にアルミ溶湯を注入するための入湯口4、入湯口4の開閉を行うストッパーピン5およびダイス6、処理槽1からアルミ溶湯を排出するための出湯口7、出湯口7の開閉を行うストッパーピン8およびダイス9、処理槽1に加圧ガスを供給するための加圧配管10およびバルブ11、処理槽1を減圧するための減圧配管12、真空ポンプ13、バルブ14で構成される。
処理槽1の材質は、炭化珪素とカーボン複合体、キャスタブル等の材料が使用できる。ストッパーピン5、8およびダイス6、9の材料はカーボンや窒化珪素セラミックスが使用できるが、アルミ溶湯に対しての耐久性を考慮すると窒化珪素セラミックスが望ましい。同様にヒーターチューブ3やインペラシャフト2などの高温で使用され、かつ強度が要求される部材には窒化珪素セラミックスの使用が望まれるが、インペラシャフトは酸素のない空間で使用されることからカーボン材料でも十分使用に耐えられる。高価な窒化珪素セラミックスと安価なカーボン材料を適材適所で使い分けすることで製造コストを低減することが望ましい。
なお、アルミ溶湯に不活性ガスを供給する方法としては、前述のインペラシャフト方式のほかにランスパイプ方式や床式バブリング方式などを用いてもよい。
図2にアルミ溶湯の流量調節機構を示す。ダイス6にはアルミ溶湯を注入するための入湯口4が設けられている。ストッパーピン5をダイス6に接近させると入湯口4が閉じてアルミ溶湯が遮断される。ストッパーピン5をダイス6から離反させると入湯口4が開いてアルミ溶湯の注入が可能になる。出湯口7およびストッパーピン8、ダイス9の構造も同様である。入湯口4と出湯口7を閉じると処理層1を密閉状態とすることができ、処理槽内を高い真空度に保つことが可能になる。
図3に溶存水素処理装置の付帯設備の構成を示す。アルミ溶湯レベルセンサ15は密閉された槽内のアルミ溶湯の量(高さ)を検知する。窒素ガスタンク16は加圧配管10を通じて処理層1に加圧された窒素ガスを供給する。減圧配管12にはアルミ溶湯の入湯用の真空タンク17と脱ガス処理用の真空タンク18を取り付ける。真空タンク17は中程度の真空度に調節され、真空タンク18は高程度の真空度に調節される。2つの真空タンク17、18は真空ポンプ13と接続される。不活性ガスとして塩素ガスを使用する場合には塩素ガス処理装置19を付加する。各配管にはバルブ20乃至26が装着される。処理槽1の下方にはアルミ溶湯の注入時に使用される樋27、アルミ溶湯の排出時に使用される樋28が設けられている。処理槽1の内部には入湯口4と連続する送湯管29が設けられている。送湯菅29は処理槽1の約半分の高さの位置まで延伸されている。
〔溶存水素処理装置の操作〕
アルミ溶湯の脱ガス処理の理論は、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスをアルミ溶湯中に吹き込み、その気泡にアルミ溶湯中の溶存水素を吸着させてアルミ溶湯外に取り出すという考え方に基づいている。溶存水素処理装置は、アルミ溶湯の注入、脱ガス処理、排出の順番で脱ガス処理を行う。表1に、アルミ溶湯の注入時、脱ガス処理時、排出時における各バルブの開閉状態を示す。
アルミ溶湯の注入時は、入湯口4、バルブ21、バルブ22を開く。バルブ21を開くと処理槽内の大気が真空タンク17に吸引されるため処理槽内が減圧される。これに伴ってアルミ溶湯が入湯口4から吸引され、送湯菅29を経由して処理槽内に注入される。アルミ溶湯レベルセンサ15が所定量のアルミ溶湯の注入を検知するとバルブ4、バルブ21を閉じる。
脱ガス処理時は、不活性ガスとしてアルゴンガスまたは窒素ガスを用いる場合と塩素ガスを用いる場合とでは異なる手順となる。アルゴンガスまたは窒素ガスを用いる場合は、バルブ20、22、24を開く。真空ポンプ13の働きにより処理槽内に残留する大気が処理窓外に放出されるため、湿気と酸素のない状態での脱ガス処理が可能になる。なお注入時にバルブ22を開いて真空タンク18の真空度を高めておくことで、バルブ20を開いたときに処理槽内に残留する大気を一気に排出することができるため、脱ガス処理に移行する時間を大幅に短縮することができる。脱ガス処理に塩素ガスを使用する場合は無害化処理が必要となるため、バルブ24は閉じ、バルブ25、26を開く。
アルミ溶湯の排出時は、出湯口7、バルブ11を開く。出湯口7は処理槽1の底部にあるため重力によって自然排出されるが、加圧された窒素ガスを処理槽内に圧入することで排出にかかる時間を大幅に短縮することができる。
以上の注入、脱ガス処理、排出の処理サイクルを繰り返すことで処理槽内は無酸素で乾燥した状態に保たれるので、処理サイクルに要する時間は漸次短縮され処理効率が向上し、さらには製品品質の向上にも繋がる。
〔溶存水素処理装置の性能〕
溶存水素処理装置の性能について以下のような実証実験を行った。本実験では内容積200Lの処理槽1にて100Lのアルミ溶湯の脱ガス処理を実施した。最初に入湯口4を開き、次いで80kPaに調節された真空タンク17に直結するバルブ21を開くと注入が開始し、概ね1minで100Lのアルミ溶湯の注入が完了した。インペラシャフト2はアルゴンガス5L/minを吹き込んだ状態で回転させておいた。注入が完了したらバルブ4、21を閉じ、真空タンク18に直結するバルブ22を開き、処理槽内の真空度を10kPaにした状態で脱ガス処理を実施した。脱ガス処理を開始して30sec経過後にバルブ20を閉じ、バルブ11を開いて窒素ガスで処理槽内を100kPaまで加圧し、出湯口7を開いてアルミ溶湯を樋28に排出した。排出に要した時間は40secであった。排出完了後に出湯口7を閉じ、これで脱ガス処理の1サイクルが終了した。
以上の実証実験を実施例1とし、パラメータを変えながら実施した実施例2乃至6の実証実験の結果を表2に示す。
比較例1、2は、脱ガス処理時に処理槽内を真空にせず、大気を導入した場合の実験結果を示している。アルミ溶湯の溶存水素量をランズレー分析試験で評価したところ、0.06cc/100ALから0.09cc/100ALという従来装置では実現不可能な結果が得られた。また処理槽内からも脱ガス処理されたアルミ溶湯からもアルミ酸化物は検出されなかった。実験後の処理槽内には僅かな量のアルミ溶湯が内璧に箔状態で付着しているだけであり、ほぼ全量のアルミ溶湯を排出することができた。
1 処理槽
2 インペラシャフト
4 入湯口
5 ストッパーピン
6 ダイス
7 出湯口
8 ストッパーピン
9 ダイス
10 加圧配管
12 減圧配管
13 真空ポンプ
16 窒素ガスタンク
17 真空タンク
18 真空タンク
19 塩素ガス処理装置

Claims (8)

  1. アルミ溶湯を収納する処理槽と、
    前記処理槽に処理前のアルミ溶湯を入湯する入湯口と、
    前記処理槽から処理後のアルミ溶湯を出湯する出湯口と、
    前記処理槽内を減圧する減圧配管を備え、
    前記入湯口および前記出湯口が、通湯孔が設けられているダイスと、前記通湯口を塞ぐストッパーピンを備える、
    アルミ溶湯の溶存水素処理装置。
  2. 前記出湯口が前記処理槽の下部に設けられている、
    請求項1に記載のアルミ溶湯の溶存水素処理装置。
  3. 前記処理槽内に加圧ガスを供給する加圧配管を備える、
    請求項2に記載のアルミ溶湯の溶存水素処理装置。
  4. 前記加圧配管が、酸素および水分を含まないガスの供給装置と接続されている、
    請求項1乃至3の何れかに記載のアルミ溶湯の溶存水素処理装置。
  5. 前記入湯口と接続されて前記処理槽内の上方に向けて延びる送湯管を備える、
    請求項1乃至4の何れかに記載のアルミ溶湯の溶存水素処理装置。
  6. 前記減圧配管が、アルミ溶湯の注入時に前記処理槽内の大気を排除する第1の排気手段と、アルミ溶湯の注入後に前記処理槽内の大気を排除する第2の排気手段と接続されている、
    請求項1乃至5の何れかに記載のアルミ溶湯の溶存水素処理装置。
  7. 請求項1乃至6の何れかに記載のアルミ溶湯処理装置を用いたアルミ溶湯処理方法であり、
    インペラシャフト方式、ランスパイプ方式、床式バブリング方式のうち何れかの方式を用いてアルミ溶湯に不活性ガスを供給する、
    アルミ溶湯の溶存水素処理方法。
  8. 前記不活性ガスとして塩素ガスを使用し、使用後の塩素ガスはガス排除口から取り出した後に無害化して放出する、
    請求項7に記載のアルミ溶湯の溶存水素処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023158747A1 (en) * 2022-02-17 2023-08-24 Pyrotek, Inc. Method and apparatus for improving aluminum degassing efficiency

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