JP2020044835A - 立体造形用の硬化性樹脂組成物 - Google Patents

立体造形用の硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】造形精度が高く、耐摩耗性が高く、摺動特性が高い硬化物を得ることができる立体造形用の硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】カチオン重合性化合物(A)と、無機粒子(B)と、硬化剤(C)と、を含む立体造形用の硬化性樹脂組成物であって、カチオン重合性化合物(A)と硬化剤(C)からなる組成物の重合後の曲げ弾性率は2.0GPa以上であり、無機粒子(B)は層状の結晶構造を有し、無機粒子(B)の含有量は、カチオン重合性化合物(A)と無機粒子(B)の合計100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であり、厚さ200μmの硬化性樹脂組成物の、波長365nmあるいは405nmにおける、前方散乱を含めた光の透過率が0.1%以上である立体造形用の硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性樹脂組成物及びそれを用いた立体造形物の製造方法に関する。
液状の硬化性樹脂組成物の用途の一例として、硬化性樹脂組成物を紫外線等の光によって層毎に硬化させ、それを順次積層することにより、所望の立体造形物を作製する光学的立体造形法(光造形法)が鋭意研究されている。光造形法の用途は形状確認のための試作品の造形(ラピッドプロトタイピング)にとどまらず、機能性検証のためのワーキングモデルの造形や型の造形(ラピッドツーリング)などへと広がってきている。また、光造形法の用途は実製品の造形(ラピッドマニュファクチャリング)にまで広がりつつある。
このような背景から、硬化性樹脂組成物に対する要求は高度化してきている。最近では、汎用のエンジニアリングプラスチックに匹敵するような、硬化物の耐摩耗性が高い立体造形物を造形可能な硬化性樹脂組成物が求められている。硬化物の耐摩耗性を高めるために、摩擦係数を下げ、離形性及び摺動特性を向上する方法として、硬化性樹脂組成物の表面自由エネルギーを下げること、硬化性樹脂組成物に固体潤滑剤を添加すること、オイルなどの液体潤滑剤を含有させることが一般的によく知られている。また、造形精度を改善する目的で、硬化性樹脂組成物にガラスビーズや無機化合物を添加することが一般的に良く知られており、これまでに多くの検討がされてきた。
特許文献1には脂環式エポキシに、ガラス粉末やアルミナ粉末などの無機充填剤を添加した、造型精度に優れた光学的立体造形用樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2には、ウレタンアクリレートに、ガラスビーズなどの無機充填剤、ポリスチレンビーズ、ポリエチレンビーズなどの高分子充填剤を添加した、体積収縮率の小さい光学的立体造形用樹脂組成物が提案されている。
特開平09−268205号公報 特開平07−026060号公報
立体造形用の硬化性樹脂組成物は、硬化物を造形する際の精度が高いだけでなく、硬化物の摩擦係数が低く、耐摩耗性が高いことが望まれる。しかし、これらすべての物性を一度に満足することは難しく、特許文献1および2に記載の樹脂組成物は、摺動特性を向上させる成分が配合されている実施例がないため、摺動特性が十分に良好なものではなかった。
そこで、本発明では、上述の課題を解決するために、造形精度が高く、耐摩耗性が高く、摺動特性が高い硬化物を得ることができる立体造形用の硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の立体造形用の硬化性樹脂組成物は、カチオン重合性化合物(A)と、無機粒子(B)と、硬化剤(C)と、を含む立体造形用の硬化性樹脂組成物であって、
前記カチオン重合性化合物(A)と前記硬化剤(C)からなる組成物の重合後の曲げ弾性率は2.0GPa以上であり、
前記無機粒子(B)は層状の結晶構造を有し、前記無機粒子(B)の含有量は、前記カチオン重合性化合物(A)と前記無機粒子(B)の合計100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であり、
厚さ200μmの前記硬化性樹脂組成物の、波長365nmあるいは405nmにおける、前方散乱を含めた光の透過率が0.1%以上であることを特徴とする。
本発明の立体造形用の硬化性樹脂組成物は、造形精度が高く、耐摩耗性が高く、摺動性が高い硬化物を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、以下に説明する実施形態は、あくまでも本発明の実施形態の一つであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
<カチオン重合性化合物(A))>
カチオン重合性化合物(A)として、カチオン重合性化合物(A)と硬化剤(C)からなる組成物の重合後の曲げ弾性率が2.0GPa以上、好ましくは3.0GPa以上となるカチオン重合性化合物を用いる。ここで、カチオン重合性化合物(A)と硬化剤(C)からなる組成物とは、硬化性樹脂組成物から、カチオン重合性化合物(A)と硬化剤(C)以外の成分を除いた組成物をいう。
カチオン重合性化合物とは、カチオンの存在下で重合反応をする化合物の総称である。カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル系化合物等が挙げられる。これらのうちでも、エポキシ化合物が好ましい。
カチオン重合性化合物(A)は単独、または2種類以上のカチオン重合性化合物の混合物で構成されていてもよい。カチオン重合性化合物(A)として2種類以上のカチオン重合性化合物を用いる場合は、2種類以上のカチオン重合性化合物からなるカチオン重合性化合物(A)と硬化剤(C)からなる組成物の重合後の曲げ弾性率が2.0GPa以上であればよい。
[エポキシ化合物]
本発明で用いるエポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、一種類のエポキシ化合物のみから構成されていてもよく、複数のエポキシ化合物で構成されていてもよい。エポキシ化合物の例として、エポキシ基を含む樹脂(プレポリマー)や、脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ基を含む樹脂(プレポリマー)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
硬化物の弾性率及び、反応速度の観点から、脂環式エポキシ化合物が好ましい。脂環式エポキシ化合物とは、エポキシシクロブチル基、エポキシシクロペンチル基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシシクロヘプチル基、エポキシシクロオクチル基を持つ化合物など、脂環式アルキル基の環上にエポキシ基を持つ化合物である。材料入手の容易性と反応性の観点から、エポキシシクロヘキシル基を持つ化合物が好ましい。
具体的な化合物としては、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1−メチルー1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルネン、イソホロンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイドなどの単官能脂環式エポキシ化合物、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタンなどの二官能脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物としては市販品を用いることができ、例えば、UVR6105、UVR6110、UVR6128(以上、ユニオンカーバイト製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド3000(以上、ダイセル製)などが挙げられる。
架橋構造により硬化物の弾性率を高くすることができるため、脂環式エポキシ化合物は二官能脂環式エポキシ化合物が好ましく、下記一般式(1)乃至(3)で表される二官能脂環式エポキシ化合物がより好ましい。
Figure 2020044835
1乃至R54は水素原子、ヒドロキシル基、または炭素数1乃至6のアルキル基を表す。アルキル基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状または分岐状アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基等が挙げられる。R1、R9、R10、R18、R19、R27、R28、R36、R37、R45、R46、およびR54は反応性の観点から水素原子であることが好ましい。また、R1乃至R54は入手容易性の観点から水素原子であることが好ましい。
1乃至L3は、エーテル構造、エステル構造またはカーボネート構造を含む、2価の連結基を表す。市販品の入手容易性から、L1乃至L3は、エステル構造を含むものが好ましい。
さらに、入手容易性の観点から、脂環エポキシは、一般式(3)で表される二官能脂環式エポキシ化合物であり、かつR37乃至R54が水素原子であることが好ましく、さらに2価の連結基であるL3にエステル構造を含むものが好ましい。
[オキセタン化合物]
オキセタン化合物は、オキセタニル基を有する化合物であれば特に限定されず、一種類のオキセタン化合物のみから構成されていてもよく、複数のオキセタン化合物で構成されていてもよい。
オキセタン化合物のオキセタニル基の数は特に限定はされない。オキセタン化合物としては、例えば、分子中にオキセタニル基を1つ有する単官能オキセタン化合物、分子中にオキセタニル基を2つ有する二官能オキセタン化合物、分子中にオキセタニル基を3個有する三官能オキセタン化合物、分子中にオキセタニル基を4個以上有する四官能以上のオキセタン化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、オキセタン化合物は分子中に芳香環やエーテル結合をもつオキセタン化合物を用いてもよい。
オキセタン化合物の具体的な例としては、例えば、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヘキシルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ベンジルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−メタクリルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−カルボキシオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン等のモノオキセタン化合物;ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’−ビス[3−エチル−(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、キシリレンビスオキセタン、炭酸ビス[(エチル(3−オキセタニル)]メチル、アジピン酸ビス[エチル(3−オキセタニル)]エチル、テレフタル酸ビス[エチル(3−オキセタニル)]メチル、1,4−シクロヘキサンカルボン酸ビス[エチル(3−オキセタニル)]メチル、ビス{4−[エチル(3−オキセタニル)メトキシカルボニルアミノ]フェニル}メタン、α,ω−ビス−{3−[1−エチル(3−オキセタニル)メトキシ]プロピル(ポリジメチルシロキサン)等のジオキセタン化合物;及びオリゴ(グリシジルオキセタン−co−フェニルグリシジルエーテル)等の多オキセタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
オキセタン化合物の中でも、粘度が低くて取扱いやすく、且つ、高い反応性を示すことから、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’−ビス[3−エチル−(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、及びキシリレンビスオキセタンが好ましく、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’−ビス[3−エチル−(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、及び3−エチル−3−(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタンがより好ましい。
オキセタン化合物としては、カチオン重合性モノマーを主成分とする市販品のものを用いることができ、例えば、アロンオキセタン(R) OXT−121、OXT−221、EXOH、POX、OXA、OXT−101、OXT−211、OXT−212(東亞合成社製)、ETERNACOLL(R) OXBP、OXTP(宇部興産製)等が挙げられる。
<無機粒子(B)>
無機粒子(B)は、層状の結晶構造を有する。層状の結晶構造を有する無機粒子(B)とは、例えばグラファイトのような六方晶系の結晶構造を持つ無機粒子であり、層毎の面内は強い共有結合で繋がっているが、層と層の間は弱いファンデルワールス力で結合しているような無機粒子を指す。そのような構造を持つ無機粒子として、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、窒化ケイ素、セレン化モリブデン、二セレン化モリブデン、二セレン化タンタル、二テルル化チタン、硫化ガリウム、セレン化ガリウム、セレン化すず、塩化カドミウム、塩化コバルト、塩化鉛、三フッ化セリウム、ヨウ化鉛、タルク、マイカなどが挙げられる。中でも、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、窒化ケイ素、タルクといった、光の吸収が少ない無機粒子を使用すると、樹脂組成物の光の透過率を高く保つことができるため、硬化性の観点より好ましく、無機粒子(B)としては、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、窒化ケイ素のいずれかが特に好ましい。
無機粒子(B)の粒径は、小さすぎると樹脂組成物の粘度を著しく増大させてしまうため、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上である。一方、粒径が大きすぎると樹脂組成物中で沈降が起こりやすくなり、さらに後述する光の透過率も悪くなるため、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。なおここで言う粒径とは、レーザー回折法によって求められた平均粒子径のことを指す。
無機粒子(B)の添加量は、カチオン重合性化合物(A)と無機粒子(B)の合計100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下、好ましくは20質量部以上30質量部以下である。無機粒子(B)の添加量は、少なすぎると造形精度向上、摩擦係数低下(摺動性向上)、耐摩耗性向上の効果が小さくなるため、カチオン重合性化合物(A)と無機粒子(B)の合計100質量部に対して、10質量部以上が好ましい。一方、無機粒子(B)の添加量は、多すぎると耐摩耗性向上の効果が小さくなり、また、樹脂組成物の粘度の増大や、後述する光の透過率が減少するため、カチオン重合性化合物(A)と無機粒子(B)の合計100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。
<硬化剤(C)>
硬化剤(C)としては、光重合開始剤を用いることが好ましく、光カチオン重合開始剤を用いることがより好ましい。本発明の効果を損なわない範囲で、これらを単独で、もしくは、複数組み合わせて用いてもよい。また、光カチオン重合開始剤のほかに、熱カチオン重合開始剤、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、熱潜在性硬化剤等のその他の硬化剤を含有してもよい。
[光カチオン重合開始剤]
光カチオン重合開始剤は、光酸発生剤とも呼ばれる。紫外線等のエネルギー線の照射によりカチオン重合を開始することのできる酸を発生する。
光カチオン重合性開始剤としては、例えば、カチオン部分が、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Feカチオンであり、アニオン部分が、BF4 -、PF6 -、SbF6 -、[BX4-(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)で構成されるオニウム塩を単独で使用または2種以上を併用することができる。
芳香族スルホニウム塩としては、例えばビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスファート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスファート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスファート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、芳香族アンモニウム塩としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、チアンスレニウム塩としては、5−メチルチアンスレニウムヘキサフルオロホスファート、5−メチル−10−オキソチアンスレニウムテトラフルオロボレート、5−メチル−10,10−ジオキソチアンスレニウムヘキサフルオロホスファート等を使用することができる。
また、チオキサントニウム塩としては、S−ビフェニル2−イソプロピルチオキサントニウムヘキサフルオロホスファート等を使用することができる。
また、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe塩としては、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスファート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチルベンゼン]−Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
光カチオン重合性開始剤としては、例えば、CPI(R)−100P、CPI(R)−110P、CPI(R)−101A、CPI(R)−200K、CPI(R)−210S(以上、サンアプロ社製)、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI−6990、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI−6992、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI−6976(以上、ダウ・ケミカル日本社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、アデカオプトマーSP−300(以上、(株)ADEKA製)、CI−5102、CI−2855(以上、日本曹達(株)製)、サンエイド(R)SI−60L、サンエイド(R)SI−80L、サンエイド(R)SI−100L、サンエイド(R)SI−110L、サンエイド(R)SI−180L、サンエイド(R)SI−110、サンエイド(R)SI−180(以上、三新化学工業社製)、エサキュア(R)1064、エサキュア(R)1187(以上、ランベルティ社製)、オムニキャット550(アイジーエム レジン社製)、イルガキュア(R)250(BASF社製)、ロードシルフォトイニシエーター2074(RHODORSILPHOTOINITIATOR2074(ローディア・ジャパン(株)製)等が市販されている。
本発明では、光カチオン重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、熱カチオン重合開始剤などそのほかの硬化剤を同時に含有していてもよい。
光カチオン重合開始剤の添加量としては、カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光カチオン重合開始剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。光カチオン重合開始剤量が多いと、光の透過性が低下し、重合が不均一になることがある。
[熱カチオン重合開始剤]
熱カチオン重合開始剤は、熱酸発生剤とも呼ばれる。加熱によりカチオン種を含む化合物が励起され、熱分解反応が起こり熱硬化を進行させる硬化剤として実質的な機能を発揮するものである。熱カチオン重合開始剤は、硬化剤として一般に使用されている酸無水物類、アミン類、フェノール樹脂などとは異なり、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことない。そのため、ハンドリング性に優れた一液性樹脂組成物を提供することが可能となる。
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニル−p−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファートなどが挙げられる。
本発明では、熱カチオン重合開始剤として、例えば、ジアゾニウム塩系化合物であるAMERICUREシリーズ(アメリカン・スキャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、ヨードニウム塩系化合物であるUVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、WPIシリーズ(和光純薬社製)、スルホニウム塩系化合物であるCYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サートマー社製)、オプトマーSPシリーズ、オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)等の市販品を使用できる。
本発明では、熱カチオン重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、高温で分解する熱カチオン重合開始剤を用いてもよい。
熱カチオン重合開始剤の添加量としては、カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。熱カチオン重合開始剤の量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。
[ラジカル重合開始剤]
本発明の硬化性樹脂組成物に、後述する反応性希釈剤(D)として、ラジカル重合性化合物を添加する場合、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤に分類される。
(光ラジカル重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤は、主に分子内開裂型と水素引抜き型に分類される。分子内開裂型では、特定波長の光を吸収することで、特定の部位の結合が切断され、その切断された部位にラジカルが発生し、それが重合開始剤となり、ラジカル重合性の反応性希釈剤(D)の重合が始まる。水素引き抜き型では、特定波長の光を吸収し励起状態になり、その励起種が周囲にある水素供与体から水素引き抜き反応を起こし、ラジカルが発生し、それが重合開始剤となり、ラジカル重合性の反応性希釈剤(D)の重合が始まる。
分子内開裂型光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤が知られている。これらはカルボニル基に隣接した結合がα開裂して、ラジカル種を生成するタイプのものである。アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤等がある。具体的な化合物としては、例えば、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤としては、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(R)651、BASF社製)等があり、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア(R)1173、BASF社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア(R)184、BASF社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア(R)2959、BASF社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(イルガキュア(R)127、BASF社製)等があり、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア(R)907、BASF社製)あるいは2−ベンジルメチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(イルガキュア(R)369、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリン(R)TPO、BASF社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア(R)819、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、(2E)−2−(ベンゾイルオキシイミノ)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1−オン(イルガキュア(R)OXE−01、BASF社製)等が挙げられるが、これに限定されることはない。
水素引き抜き型光ラジカル重合開始剤としては、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−t−ブチル−9,10−アントラキノン等のアントラキノン誘導体、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体が挙げられるが、これに限定されることはない。
本発明では、光ラジカル重合開始剤を2種類以上併用してもよいが、単独で用いてもよい。また、造形後の熱処理で重合反応を進めるために、熱ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。
光ラジカル重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物中の全てのラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光ラジカル重合開始剤量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。光ラジカル重合開始剤量が多いと、光の透過性が低下し、重合が不均一になることがある。
(熱ラジカル重合開始剤)
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生するものであれば特に制限されず従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、アゾ系化合物、過酸化物及び過硫酸塩等を好ましいものとして例示することができる。アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等が挙げられる。過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート及びジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物中の全てのラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。熱ラジカル重合開始剤が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。
[アニオン重合開始剤]
本発明の硬化性樹脂組成物に、後述する反応性希釈剤(D)として、アニオン重合性化合物を添加する場合、アニオン重合開始剤を用いることができる。アニオン重合開始剤は、光塩基発生剤を用いることができる。
(光塩基発生剤)
光塩基発生剤とは、紫外線や可視光などのエネルギー線の照射によって塩基を発生する化合物を言う。特に、光に対する感度が良好であることから、ボレートアニオンを含む塩であることが好ましい。具体的な商品としては、サンアプロ株式会社製のU−CAT5002などや昭和電工株式会社製のP3B、BP3B、N3B、MN3Bなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
アニオン重合開始剤の添加量としては、アニオン重合性化合物の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。アニオン重合開始剤の量が少ないと、重合が不十分となる傾向がある。
[その他の硬化剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、以下の熱潜在性硬化剤を用いることができる。熱潜在性硬化剤とは、過熱により熱硬化を進行させる硬化剤を指す。
酸無水物類(酸無水物系硬化剤)としては、公知または慣用の酸無水物系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、取り扱い性の観点で、25℃で液状の酸無水物[例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等]が好ましい。一方、25℃で固体状の酸無水物については、例えば、25℃で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、本発明の硬化性樹脂組成物の取り扱い性が向上する傾向がある。酸無水物系硬化剤としては、硬化物の耐熱性、透明性の観点で、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。
アミン類(アミン系硬化剤)としては、公知または慣用のアミン系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−3,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレン−2,4−ジアミン、トリレン−2,6−ジアミン、メシチレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,6−ジアミン等の単核ポリアミン、ビフェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ナフチレンジアミン、2,6−ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
フェノール類(フェノール系硬化剤)としては、公知または慣用のフェノール系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、パラキシリレン・メタキシリレン変性フェノール樹脂等のアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパン等が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、例えば、分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のいずれか一方又は両方を有するポリアミド樹脂等が挙げられる。
イミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)としては、公知または慣用のイミダゾール系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジン等が挙げられる。
ポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)としては、例えば、液状のポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂等が挙げられる。
ポリカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシ基含有ポリエステル等が挙げられる。
その他の硬化剤の添加量は、重合性化合物の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上75質量部以下、より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。その他の硬化剤の添加量が少ないと、重合が不十分となる傾向があり、多すぎると架橋反応が進行し、靱性の劣化を招く傾向がある。
<その他の成分>
[反応性希釈剤(D)]
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、カチオン重合性化合物(A)、無機粒子(B)、硬化剤(C)のほかに、反応性希釈剤(D)を含有していてもよい。硬化性樹脂組成物に反応性希釈剤(D)を含有させることで、硬化性組成物の粘度を低減させることができる。また、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の機械特性や熱特性を調整することができる。反応性希釈剤(D)は、ラジカル重合性、カチオン重合性、またはアニオン重合性を有するモノマーを添加することができる。
ラジカル重合性を有するモノマーとしては、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル化合物、ビニルエステル系モノマー、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド系モノマー、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマー、ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系モノマー等が挙げられる。カチオン重合性を有するモノマーとしては、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。アニオン重合性を有するモノマーとしては、(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でもカチオン重合性を有するモノマーが、カチオン重合性化合物(A)と同種の機構で反応するため、反応速度の観点から特に好ましい。また、硬化物の摩擦係数を下げるためには、ラジカル重合性を有するモノマーを含有することが好ましい。
反応性希釈剤(D)は、1種類以上を任意に混合して使用することができる。反応性希釈剤(D)の含有量は、カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。反応性希釈剤(D)の量が50質量部を超える場合、本発明の効果が損なわれる恐れがある。
[添加剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤が含有されていてもよい。かかる添加剤としては、硬化したエポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリシロキサン、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂などの樹脂フィラー、あるいはポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのエンジニアリングプラスチックのフィラー、あるいは、金、銀、鉛、アルミニウムなどの軟質金属、シリカ、チタニア、アルミナなどの無機フィラーが挙げられる。
さらに、フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などの光増感剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤等を挙げることができる。
他に、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー、フッ素含有モノマー、シロキサン構造含有モノマーなど反応性モノマー、シランカップリング剤などを添加してもよい。
<硬化性樹脂組成物の光の透過率>
硬化性樹脂組成物の光の透過率は0.1%以上である。光の透過率とは、樹脂組成物に光を照射したときの透過光強度を、照射した光の強度で除した値を百分率で表したものであり、前方散乱を含めた光の透過率である。透過光強度は、波長365nmあるいは405nmの照射光を、厚さ200μmの硬化性樹脂組成物に照射したときに、吸収されずに透過した光と、光源に対して前方へ散乱した光を合わせた強度のことである。光の透過率が0.1%以上であれば、樹脂組成物は立体造形機の光照射によって硬化することが可能である。光の透過率が高いほど、硬化に必要な光の照射時間が短くなり硬化速度が向上するため、光の透過率はより好ましくは1%以上、さらにより好ましくは10%以上である。
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須の成分であるカチオン重合性化合物(A)、無機粒子(B)及び硬化剤(C)、並びに、必要に応じてその他の任意成分の適量を攪拌容器に仕込み、通常、30℃以上120℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下で攪拌することにより製造することができる。その際の攪拌時間は、通常1分以上6時間以下、好ましくは10分以上2時間以下である。
カチオン重合性化合物(A)と無機粒子(B)の合計(反応性希釈剤(D)を含有する場合はカチオン重合性化合物(A)と無機粒子(B)と反応性希釈剤(D)の合計)の含有量は、硬化剤(C)を除いた硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは25質量部以上100質量部以下、さらに好ましくは75質量部以上100質量部以下であることで、本発明の効果を十分に得ることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、好ましくは50mPa・s以上10,000mPa・s以下であり、より好ましくは70mPa・s以上5,000mPa・s以下である。
以上のようにして得られる本発明の硬化性樹脂組成物は、光学的立体造形法における光硬化性樹脂組成物として好適に使用される。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物に対して、紫外線、電子線、X線、放射線などの活性エネルギー線を選択的に照射して硬化に必要なエネルギーを供給する光学的立体造形法により、所望の形状の立体造形物を製造することができる。
<硬化物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、カチオン重合性化合物(A)、無機粒子(B)、硬化剤(C)が必須成分であり、これらを硬化せしめることで硬化物を得ることができる。硬化方法は含有する硬化剤に合わせ、活性エネルギー線硬化、熱硬化などの任意の公知の方法を用いて、硬化することができる。硬化方法は複数種類を組み合わせてもよい。
<硬化性樹脂組成物の機能>
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須の成分として層状の結晶構造を有する無機粒子(B)が含有されている。層状の結晶構造を持つ化合物の特徴として、層毎の面内は強い共有結合で繋がっているが、層と層の間は弱いファンデルワールス力で結合している。そのため、層の方向に対して垂直方向には高い機械強度を有する一方、平行の方向には滑りやすい性質を有する。
また、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、硬化時に無機粒子(B)が凝集や分離をすることなく硬化することができるため、最表面にも層状の結晶構造を持つ無機粒子(B)が存在する。その結果、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は従来よりも、低い動摩擦係数、及び耐摩耗性に優れた硬化物を提供することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須成分として硬化後の弾性率が2.0GPa以上であるカチオン重合性化合物(A)が含有されている。弾性率が高いほど耐摩耗性が高くなるだけでなく、無機粒子(B)を含む摩耗粉による摩耗の進行(三元アブレシブ摩耗)を抑えることができるため、従来よりも耐摩耗性に優れた硬化物を提供することができる。
また、無機粒子(B)は、硬化前後で体積収縮をほとんど起こさないため、硬化性樹脂組成物に含有している体積の分、硬化時の収縮を抑えることができる。さらに、樹脂成分であるカチオン重合性化合物(A)として、硬化時の収縮の少ないエポキシ化合物を選択した場合、前述の無機粒子(B)の効果と合わせて、さらに硬化時の収縮を抑えることができる。すなわち、立体造形用の硬化性樹脂組成物として用いた場合、従来よりも造形精度の高い硬化性樹脂組成物を提供することができる。
<立体造形物の製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤(C)として光カチオン重合開始剤等の光重合開始剤を含有することで、光学的立体造形方法に好適に用いることができる。硬化性樹脂組成物の硬化物は、従来既知の光学的立体造形方法および装置のいずれを使用して作製してもよい。好ましい光学的立体造形法の代表例としては、スライスデータに基づいて硬化性樹脂組成物を層毎に硬化させて造形物を造形する工程を有する方法である。具体的には、液状をなす硬化性樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように、スライスデータに基づいて活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成する。次いでこの硬化層に未硬化の硬化性樹脂組成物を供給し、同様にスライスデータに基づいて活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する。この積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体的造形物を得る方法を挙げることができる。
その際の活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線などを挙げることができる。そのうちでも、300nm以上450nm以下の波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられる。その際の光源としては、紫外線レーザー(例えばArレーザー、He−Cdレーザーなど)、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯などを使用することができる。そのうちでも、レーザー光源が、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮でき、しかも集光性に優れていて高い造形精度を得ることができる点から、好ましく採用される。
硬化性樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光などのような点状に絞られた活性エネルギー線を使用して点描または線描方式で硬化樹脂層を形成してもよい。また、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターなどのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して造形面に活性エネルギー線を面状に照射して硬化樹脂層を形成させる造形方式を採用してもよい。
光学的立体造形法の代表的な一例を説明すると、次のとおりである。まず、収容容器内において昇降自在に設けられた支持ステージを硬化性樹脂組成物の液面から微小量降下(沈降)させることにより、支持ステージ上に硬化性樹脂組成物を供給して、その薄層(1)を形成する。次いで、この薄層(1)に対して選択的に光を照射することにより、固体状の硬化樹脂層(1)を形成する。次いで、この硬化樹脂層(1)上に硬化性樹脂組成物を供給してその薄層(2)を形成し、この薄層(2)に対して選択的に光照射することにより、硬化樹脂層(1)上にこれと連続して一体的に積層されるように新しい硬化樹脂層(2)を形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら或いは変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化樹脂層(1,2,・・・n)が一体的に積層されてなる立体造形物が造形される。
このようにして得られる立体造形物を収容容器から取り出し、その表面に残存する未反応の硬化性樹脂組成物を除去した後、必要に応じて洗浄する。ここで、洗浄剤としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤;アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤;テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤を挙げることができる。なお、洗浄剤で洗浄した後には必要に応じて、光照射又は熱照射によるポストキュアーを行っても良い。ポストキュアーは、立体造形物の表面及び内部に残存することのある未反応の硬化性樹脂組成物を硬化させることができ、造形物の表面のべたつきを抑えることができる他、造形物の初期強度を向上させることができる。
<用途>
本発明に係る硬化性樹脂組成物およびその硬化物の用途は特に限定はされない。例えば、光造形法の3Dプリンター用の樹脂、スポーツ用品、医療・介護用品、産業用機械・機器、精密機器、電気・電子機器、電気・電子部品、建材用品等の様々な用途に利用可能である。
以下に本発明を詳しく説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜10、比較例1〜6>
[組成物の調整]
表1に示す処方に従い各成分を配合し、75℃に加熱して2時間かくはん装置でかくはんし、硬化性樹脂組成物を調整した。
(カチオン重合性化合物(A))
A1:2官能脂環式エポキシ化合物(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」ダイセル製)
A2:2官能脂環式エポキシ化合物(ε−カプロラクトン変性 3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2081」ダイセル製)
A3:2官能非脂環式エポキシ化合物(「EXA−4816」DIC製)
A4:3官能非脂環式エポキシ化合物と2官能オキセタン化合物の混合物(「KEA−21」ケーエスエム製)
A5:2官能非脂環式エポキシ化合物(「EXA−4850−1000」DIC製)
A6:2官能非脂環式エポキシ化合物(「EXA−4850−150」DIC製)
(無機粒子(B))
B1:フッ化黒鉛(「セフボンCMC」セントラル硝子製)
B2:窒化ホウ素(アルドリッチ製)
B3:窒化ケイ素(製品名「HM−5MF」NTKセラテック製)
B4:グラファイト(製品名「Z−5F」伊藤黒鉛製)
(硬化剤(C))
C1:光カチオン重合開始剤(「CPI−210S」(サンアプロ製))
C2:光ラジカル重合開始剤(「イルガキュア184」(BASF製))
(その他の成分)
D1:三官能ウレタンアクリレート化合物(「紫光UV7550B」日本合成化学工業製)40質量%、単官能アクリレート化合物(「イソボルニルアクリレート」東京化成工業製)30質量%、単官能アクリルアミド化合物(「ACMO」KJケミカルズ製)30質量%の混合物
D2:二官能ウレタンアクリレート化合物(「紫光UV6630B」日本合成化学工業製)40質量%、二官能アクリレート化合物(「A−DCP」新中村化学製)2.5質量%、ラジカル重合性を有するマレイミド化合物(「Imilex−P」日本触媒製)20質量%、単官能アクリルアミド化合物(「ACMO」KJケミカルズ製)37.5質量%の混合物
シリカ:製品名「アドマファインSO−E6」アドマテックス製
[試験片の作成]
調製した硬化性樹脂組成物から、下記の方法で試験片を作成した。まず、二枚の石英ガラスの間に長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの金型を挟み、ここに硬化性樹脂組成物を流し込んだ。流し込んだ硬化性樹脂組成物に対して紫外線照射機(HOYA CANDEO OPTRONICS社製、商品名「LIGHT SOURCE EXECURE 3000」)で5mW/cm2の紫外線を金型の両面から120秒間ずつ照射し、仮硬化を行った。その後、再度両面から360秒ずつ紫外線を照射することで本硬化を行い、硬化物を得た(総エネルギーとして4800mJ/cm2)。得られた硬化物を50℃の加熱オーブン内に入れて1時間、100℃の加熱オーブン内に入れて2時間熱処理を行うことで、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を得た。
[試験フィルムの作成]
調製した硬化性樹脂組成物から、下記の方法で試験フィルムを作成した。まず、幅26mm、長さ76mm、厚さ約1mmのスライドグラスの中心に、数滴の硬化性樹脂組成物を載せ、スライドグラスの両端に300μmの厚さのスペーサーを設置した。次に、滴下した硬化性樹脂組成物の上に、PET製のフィルムを載せ、さらにその上にスライドグラスを載せた。その後、滴下した硬化性樹脂組成物に対して、紫外線照射機(HOYA−SCHOTT製、商品名「UV LIGHT SOURCE EX250」)で5mW/cm2の紫外線を300秒照射(総エネルギーとして1500mJ/cm2)した。次に、PET製フィルムを剥がし、得られた硬化物を50℃の加熱オーブン内に入れて1時間、100℃の加熱オーブン内に入れて2時間熱処理を行うことで、厚さ300μmm、直径約2cmのスライドグラスに密着した試験フィルムを得た。
[評価]
(硬化性樹脂組成物の光の透過率)
硬化性樹脂組成物の光の透過率は、次のように測定を行った。ます、調整した硬化性樹脂組成物を、幅26mm、長さ76mm、厚さ約1mmのスライドグラスの中心に数滴載せ、スライドグラスの両端に200μmの厚さのスペーサーを設置した。次に、滴下した硬化性樹脂組成物の上に、同型のスライドグラスを載せ200μmの厚さの硬化性樹脂組成物を調整した。次に、200μm厚の硬化性樹脂組成物の365nmと405nmの透過率を、紫外可視分光光度計(島津製作所製、商品名「SOLICSPEC−3700」)を用いて測定した。なお、ここでいう透過光とは、吸収されずに透過した光と、光源に対して前方へ散乱した光を合わせた強度を指し、積分球を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
(曲げ弾性率)
カチオン重合性化合物(A)と硬化剤(C)以外の成分を除いた樹脂組成物を別途調整し、上記の方法で試験片を作成して曲げ試験用のサンプルを作成した。その試験片を引張・圧縮試験機(エー・アンド・デイ製、商品名「テンシロン万能材料試験機RTF−1250C」)によって、三点曲げ試験(条件:試験速度2mm/分、支点間距離64mm、圧子の半径5mm、支持台の半径5mm)を行い、測定された歪み区間0.05%から0.25%の応力勾配より曲げ弾性率を算出した。得られた結果を表1に示す。
(造形精度)
硬化収縮率を造形精度の指標とした。硬化収縮率は、硬化物と硬化性樹脂組成物の比重の差を、硬化物の比重で除した値とした。硬化収縮率による造形精度の基準を以下に示す。また、得られた結果を表1に示す。
◎:2.0%未満
○:2.0%以上2.5%未満
×:2.5%以上
(摺動性)
動摩擦係数を摺動性の指標とした。動摩擦係数の測定は、摩耗摩擦試験機(商品名:HEIDON Type20、新東科学社製)を用いて行った。試験フィルムを回転ステージに固定し、摺動半径が5mmとなるように、直径10mmのSUS304製の球を当接させた。球に100gの垂直荷重をかけ、10cm/secの速度でステージを回転させ、試験フィルムとSUS304製の球との間にかかる力を測定した。動摩擦係数は、前記のかかる力を荷重で除することによって算出した。合計3時間の測定のうち、初期の5分間を除いた平均値を動摩擦係数とした。動摩擦係数による摺動性の基準を以下に示す。また、得られた結果を表1に示す。
◎:0.45未満
○:0.45以上0.55未満
×:0.55以上
(耐摩耗性)
比摩耗量を耐摩耗性の指標とした。比摩耗量は、上記の動摩擦係数測定後の樹脂の摺動跡から、下記の方法で算出した。まず、動摩擦係数測定後の摺動跡を共焦点顕微鏡(レーザーテック製、OPTELICS C130)によって摩耗断面積を求め、円周の長さで乗じた値を摩耗体積とした。次に、得られた摩耗体積を荷重と摺動距離で除した値を比摩耗量とした。比摩耗量による耐摩耗性の基準を以下に示す。また、得られた結果を表1に示す。
◎:0.02mm3/N・Km未満
○:0.02mm3/N・Km以上0.05mm3/N・Km未満
×:0.05mm3/N・Km以上
Figure 2020044835
表1に示すように、本発明に係る実施例1乃至8は、いずれも硬化収縮率2.5%未満、摩擦係数0.55未満、比摩耗量0.05mm3/N・Km未満であり、良好な造形精度、高い摺動性、高い耐摩耗性を両立した硬化物を得ることができた。
一方、無機粒子(B)の添加量には好適な範囲があり、好適な範囲を外れた比較例1乃至3は、評価の目標値を上回ることができない項目があった。この結果より、無機粒子(B)は造形精度、摺動性、耐摩耗性の向上に効果があることが示唆されたが、添加量が多すぎると、耐摩耗性が著しく悪化した。これは無機粒子(B)の添加量が多いほど、カチオン重合性化合物(A)との界面が多くなり、疲労摩耗を誘発するためだと推定される。
また、層状の結晶構造を持たない無機粒子であるシリカを添加した比較例4は、造形精度の向上は見られたが、摺動性及び、耐摩耗性の向上が見られなかった。この結果より、無機粒子が層状の結晶構造を持つことが、摺動性及び耐摩耗性の向上に効果があることが示唆された。
さらに、カチオン重合性化合物(A)の硬化後の曲げ弾性率が2.0GPa未満である比較例5は、層状の結晶構造を持つ無機粒子(B)を好適な範囲で添加されているにもかかわらず、耐摩耗性が著しく悪化していた。これは無機粒子(B)を含む摩耗粉が、カチオン重合性化合物(A)の硬化物の摩耗に寄与していることが想定される。この現象は一般的に三元アブレシブ摩耗と呼ばれる。表1の結果、特に実施例1,8、比較例5の結果より、カチオン重合性化合物(A)の弾性率が高いほど耐摩耗性が高いため、カチオン重合性化合物(A)の弾性率は高いほうが三元アブレシブ摩耗を防ぐには好ましいことが示唆された。
一方、実施例1,2,7,8、比較例5に示す様に、カチオン重合性化合物(A)の硬化後の弾性率は、脂環式エポキシのほうが高くなった。これは、エポキシ化合物の開環カチオン重合後に生成するポリエチレングリコール鎖に、剛直な脂環式のアルキル基が導入されるためだと想定される。この結果より、カチオン重合性化合物として、脂環式エポキシ化合物のほうが好ましいことが示唆された。
また、実施例9、10に示す様に、反応性希釈剤(D)としてラジカル重合性化合物を用いたものは、ラジカル重合性化合物を用いなかった時と比較して摩擦係数の低下がみられた。これは、ラジカル重合性化合物の硬化物そのものの摩擦係数が小さいため、硬化物全体の摩擦係数が低下したと想定される。これらの結果より、硬化物の摩擦係数を下げるためには、反応性希釈剤(D)として、ラジカル重合性成分を用いることが好ましいことが示唆された。
365nm、405nmの光の透過率が0%であった比較例6は硬化不良が発生し、評価を行うことができなかった。一方、光の透過率が0.1%である実施例4は硬化可能であり、評価可能であった。これらの結果より、光の透過率は0.1%以上あることが、硬化性樹脂組成物として好ましいことが示唆された。

Claims (12)

  1. カチオン重合性化合物(A)と、無機粒子(B)と、硬化剤(C)と、を含む立体造形用の硬化性樹脂組成物であって、
    前記カチオン重合性化合物(A)と前記硬化剤(C)からなる組成物の重合後の曲げ弾性率は2.0GPa以上であり、
    前記無機粒子(B)は層状の結晶構造を有し、前記無機粒子(B)の含有量は、前記カチオン重合性化合物(A)と前記無機粒子(B)の合計100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であり、
    厚さ200μmの前記硬化性樹脂組成物の、波長365nmあるいは405nmにおける、前方散乱を含めた光の透過率が0.1%以上であることを特徴とする立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  2. 前記硬化剤(C)の含有量は、前記カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  3. 前記カチオン重合性化合物(A)と前記硬化剤(C)からなる組成物の重合後の曲げ弾性率は3.0GPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  4. 前記無機粒子(B)は、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、窒化ケイ素のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  5. 前記光の透過率は1%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  6. 前記カチオン重合性化合物(A)は、脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  7. 前記脂環式エポキシ化合物は、下記一般式(1)乃至(3)のいずれかに示される二官能脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項6に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
    Figure 2020044835
    (式(1)乃至(3)中、R1乃至R54は、水素原子、ヒドロキシル基または炭素数1乃至6のアルキル基を表す。
    1乃至L3は、エーテル構造、エステル構造またはカーボネート構造を含む、2価の連結基を表す。)
  8. 前記R1、R9、R10、R18、R19、R27、R28、R36、R37、R45、R46、R54は水素原子であることを特徴とする請求項7に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  9. 前記カチオン重合性化合物(A)は、前記一般式(3)で示され、かつR37乃至R54が水素原子であることを特徴とする請求項7に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  10. 前記L3はエステル構造を含むことを特徴とする請求項9に記載の立体造形用の硬化性樹脂組成物。
  11. スライスデータに基づいて硬化性樹脂組成物を層毎に光硬化させて造形物を造形する工程を有する立体造形物の製造方法であって、
    前記硬化性樹脂組成物が、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物であることを特徴とする立体造形物の製造方法。
  12. さらに、前記造形物に熱照射をして立体造形物を得る工程を有することを特徴とする請求項11に記載の立体造形物の製造方法。
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