JP2020037803A - プレキャストパネルにおける目地部の封止構造 - Google Patents
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Abstract
Description
これは床版本体の接合端面にループ鉄筋を突出させたプレキャスト床版を使用し、既設のプレキャスト床版に別途のプレキャスト床版を隣接するように敷設し、プレキャスト床版の間に形成された継手空間内にコンクリートを場所打ちして隣り合うプレキャスト床版間を一体化している。
相対向する一対の張出部の端面の間には継手空間と連通した目地空間が形成されている。この目地空間からのコンクリート漏えいを防止するため、目地空間に面した何れか一方の張出部の端面に沿って帯状のパッキン材が付設されている(特許文献3,4)。
パッキン材はゴム等の弾性素材からなり、その断面形状と圧縮変形率が全長に亘って均一に形成されている。
パッキン材の弾性復元力を利用して一対の張出部の平らな端面間に形成される目地部を封止するため、パッキン材の断面寸法は目地空間より大きく形成されていて、圧縮状態で目地空間に介挿される。
<1>プレキャスト床版を敷設する際、目地空間の全長に亘って均一幅に設定することが難しい。
目地空間の間隔が設計間隔より広がると、パッキン材による十分な封止効果が得られないためにコンクリートを打設した際に目地空間を通じてコンクリート中の水分が染み出る、所謂「ノロ漏れ」が生じる。
<2>パッキン材はプレキャスト床版の一方の張出部の平らな端面から突出した形態で取り付けられている。
封止性能を高めるためにはパッキン材の突出寸法を大きくすると、敷設予定プレキャスト床版を落とし込んで敷設する際にパッキン材が他方の張出部と擦れて、ノロ漏れの原因となるパッキン材の剥がれや損傷を生じ易い。
<3>プレキャスト床版の敷設方法として、離れた位置に一旦落とし込み、その後に落とし込んだプレキャスト床版を水平移動して押し付ければ、パッキン材の損傷等を回避して敷設できるが、プレキャスト床版の水平移動工程が増えるために施工性が悪くなる。
<1>目地空間の間隔に多少のバラツキがあっても目地空間の影響を受けずに目地空間の全長に亘って高い封止性能を発揮して封止できること。
<2>プレキャストパネルの敷設時に膨張チューブが損傷を受け難いこと。
<3>プレキャストパネルの水平移動作業を省略してプレキャストパネルを敷設できること。
本発明の他の形態において、突き合せた両張出部の端面に連続した凹溝が相対向して形成され、膨張チューブが何れか片方の凹溝に収容して固着されていて、注入材を注入して膨張させた膨張チューブの両側面が相対向する両方向の凹溝の溝壁に圧接して目地空間が封止される。
本発明の他の形態において、前記膨張チューブが凹溝の溝壁に接着または埋め込みにより固着されている。
本発明の他の形態において、前記膨張チューブが伸縮性のチューブ素材、または非伸縮性のホース素材で形成されている。
本発明の他の形態において、前記注入材が気体、液体、またはスラリー状の固結材の何れか一種、または気液混合物である。
<1>目地空間内で膨張チューブを膨張させて目地空間を弾力的に封止できるので、目地空間の間隔に多少のバラツキがあっても目地空間の影響を受けずに目地空間の全長に亘って高い封止性能を発揮して封止することができる。
<2>コンクリートの養生中はノロ漏れを防止できるだけでなく、コンクリート硬化後においては止水防止効果も期待することができる。
<3>膨張チューブを凹溝内に収容して張出部の端面からの膨張チューブの突出量を小さくしてあるので、敷設予定のプレキャストパネルを既設のプレキャストパネルに隣り合うように落とし込んで敷設する際に膨張チューブが損傷を受け難い。
<4>敷設予定のプレキャストパネルを既設のプレキャストパネルに隣り合うように落とし込んで敷設できるので、プレキャストパネルの水平移動作業を省略できて施工性がよくなる。
プレキャストパネル10は工場等で予め製作したコンクリートパネルである。
本例ではプレキャストパネル10がコンクリート製のプレキャスト床版である形態について説明する。プレキャストパネル10の設置方向は本例で示した水平方向に限定されるものではなく、斜め方向や縦方向でもよい。
プレキャストパネル10は図示しない橋軸横断方向に配設された桁材上に隣り合わせて敷設され、隣り合うプレキャストパネル10,10の間が公知の場所打ち継手により一体に接合される。
図1に例示したプレキャストパネル10について説明すると、プレキャストパネル10はその側端部に段差状の接合端面11が形成されていると共に、接合端面11の下部には水平に張り出た張出部12が一体に形成されている。
プレキャストパネル10,10を隣り合わせて敷設したときに接合端面11と張出部12との間には継手空間15が形成される。
プレキャストパネル10の側端部にはループ状または直線状を呈する複数の継手用鉄筋20が埋設されていて、複数の継手用鉄筋20の一部が接合端面11から露出している。
複数の継手用鉄筋20は隣り合わせてプレキャストパネル10,10を敷設したときに互いに干渉しない位置関係になっている。
張出部12の端面12aには端面12aの長手方向に沿って連続した凹溝13が形成されている。
凹溝13は膨張チューブ30を張出部12の断面内に位置させるための収容空間である。
本例では凹溝13の断面形状が半円状を呈する形態について説明するが、凹溝13の断面形状については特に制約がない。
凹溝13の形成位置は、プレキャストパネル10,10を隣り合わせて敷設したときに相対向するように一対の凹溝13,13が同一高さに形成されている。
プレキャストパネル10,10を隣り合わせて敷設したときに張出部12,12の間に目地部が形成されると共に、相対向する端面12a,12aの間には目地空間16が形成される。
膨張チューブ30は目地空間16を封止するための中空構造の封止材であり、目地部を連続して封止可能な全長を有している。
膨張チューブ30は注入材35を注入しない通常時(非膨張時)においては目地空間16を超えない断面寸法を有し、注入材35の注入時には目地空間16を封止可能な大きさに膨張させることができる。
膨張チューブ30の断面形状に制約は特になく、図示した楕円形の他に、円形、矩形等でもよい。
膨張チューブ30の素材は伸縮性のチューブ素材(例えばゴムや弾性樹脂等)でもよいし、耐圧ホースのような非伸縮性のホース素材(布地に樹脂をコーティングしたもの等)でもよい。
膨張チューブ30は一方の凹溝13の溝壁に接着、または埋め込み等により予め固着されている。
膨張チューブ30が非伸縮性のホース素材の場合は折り畳んだ状態で凹溝13内に収容させておくとよい。
膨張チューブ30の注入材35としては、エア等の気体、水等の液体、スラリー状のモルタル等の固結材等の物が使用可能である。
注入材35はこれら複数の流体を単独で用いてもよいが、気液混合の形態で用いてもよい。
注入材35を気液混合の形態で用いると、膨張チューブ30を膨張させた後に目地部に多少の目開きがあっても圧縮変形させたおいた気体の膨張力によって膨張チューブ30の圧力低下を抑えることができる。
また、注入材35にモルタルを使用すると、注入材35が硬化して膨張チューブ30のせん断強度が高くなる。
つぎに場所打ち継手によるプレキャストパネル10A,10Bの接合方法について説明する。
図2を参照して説明すると、右方のプレキャストパネル10Aは、例えば図示しない橋軸横断方向に配設された桁材上に敷設された既設のパネルを示し、左方のプレキャストパネル10Bは敷設予定のパネルを示している。
膨張チューブ30は何れか一方のプレキャストパネル10A,10Bの張出部12の端面12aに非膨張(収縮)状態で取り付けられている。
本例では膨張チューブ30が既設のプレキャストパネル10A側に取り付けてある形態について説明する。
図2において敷設予定のプレキャストパネル10Bを、既設のプレキャストパネル10Aと隣り合うように真上から落とし込む。
膨張チューブ30は萎んだ状態にあると共に、膨張チューブ30の一部が一方の凹溝12の内部に収納されて端面12aからの突出量が小さく抑えられている。
そのため、左方のプレキャストパネル10Bを落とし込む際に、降下する張出部12によって膨張チューブ30が擦られたり傷付けられたりせずに済む。
さらに膨張チューブ30が凹溝12の内部に萎んだ状態で収納されていることから、各プレキャストパネル10A,10Bの運搬時や取扱時においても、膨張チューブ30が損傷を受け難い。
したがって、本発明ではプレキャストパネル10Bを離れた位置に一旦落とし込み、その後にプレキャストパネル10Bを既設のプレキャストパネル10Aへ向けて水平に押し付けるといったプレキャストパネル10Bの水平移動作業を省略してプレキャストパネル10Bを敷設できる
図4を参照しながら、目地空間16内で膨張チューブ30を膨張させて目地空間16を封止するシール作用について詳しく説明する。
注入材35を所定の圧力で注入して膨張チューブ30を膨張させると、右方(一方)の凹溝13に取り付けられた膨張チューブ30は左方(他方)の凹溝13へ向けて膨張を続け、目地空間16を横断して左方の凹溝13内へ入り込む。
膨張チューブ30が自重で多少下向きに膨張しようとしても、膨張チューブ30の膨張方向が誘導されて、膨張チューブ30が確実に左方の凹溝13内へ入り込ませることができ。
膨張チューブ30の両側面が相対向する凹溝13,13の溝壁に強く圧接するまで注入材35を注入する。
このように、相対向するふたつの凹溝13,13の間に跨って膨張チューブ30が膨張することで目地空間16を弾力的に封止できる。
なお、膨張チューブ30は凹溝13の溝壁を越えて端面12aの一部に圧接するまで膨張させてもよい。
膨張チューブ30は目地空間16に追従して膨張するので、目地空間16の間隔が設計間隔より広い箇所があっても、目地空間16の影響を受けずに、目地空間16の全長に亘って確実に封止することができる。
図5を参照して説明すると、隣り合わせて敷設したプレキャストパネル10A,10Bから延出した継手用鉄筋20に交差鉄筋21を配筋した後、継手空間15内にコンクリート40を打設する。
目地空間16内で膨張させた膨張チューブ30が目地空間16を封止するため、コンクリート40の養生中におけるノロ漏れを確実に防止することができる
図6の矢印に示すようにコンクリート40の重量が膨張チューブ30に対して下向きの外力として作用して膨張チューブ30の内圧が高められる。膨張チューブ30の内圧が高まることで、膨張チューブ30の両側面と各凹溝13との圧接力が増して膨張チューブ30によるシール性能が格段に高くなる。
さらに、膨張した膨張チューブ30はノロ漏れ防止作用だけでなく、コンクリート40の硬化後においても高い止水性能を発揮することもできる。
以上は張出部12,12に相対向させて一対の凹溝13,13を形成した形態について説明したが、張出部12,12の何れか一方に凹溝13を形成し、張出部12,12の何れか他方を平坦な端面12aのままの組み合せとしてもよい。
凹溝13と対向する左方の張出部12の端面12aは平坦に形成されている。
本例では一方の凹溝13を省略できるのでプレキャストパネル10の成形が容易となる。
10A・・・・既設のプレキャストパネル
10B・・・・敷設予定のプレキャストパネル
11・・・・・接合端面
12・・・・・張出部
12a・・・・張出部の端面
13・・・・・凹溝
15・・・・・継手空間
16・・・・・目地空間
20・・・・・継手用鉄筋
21・・・・・交差鉄筋
30・・・・・膨張チューブ
35・・・・・注入材
40・・・・・コンクリート
Claims (5)
- パネル本体の接合端面から突出する張出部と、接合端面から延出される継手用鉄筋とを有するプレキャストパネルを使用し、敷設予定のプレキャストパネルを既設のプレキャストパネルに隣り合うように落とし込んで敷設する際に両プレキャストパネルの接合端面の間にコンクリートを打設するための継手空間が形成されると共に、相対向する張出部の端面の間に継手空間と連通した目地空間が形成される、プレキャストパネルにおける目地部の封止構造であって、
相対向して突き合せた張出部の少なくも何れか一方の端面に連続した凹溝が形成され、
非膨張時における張出部の端面からの突出寸法が前記目地空間より小さい膨張チューブが前記凹溝に収容して固着されていて、
注入材を注入して膨張させた膨張チューブの側面が前記凹溝の溝壁に圧接して目地空間が封止されることを特徴とする、
プレキャストパネルにおける目地部の封止構造。 - 突き合せた両張出部の端面に連続した凹溝が相対向して形成され、膨張チューブが何れか片方の凹溝に収容して固着されていて、注入材を注入して膨張させた膨張チューブの両側面が相対向する両方向の凹溝の溝壁に圧接して目地空間が封止されることを特徴とする、請求項1に記載のプレキャストパネルにおける目地部の封止構造。
- 前記膨張チューブが凹溝の溝壁に接着または埋め込みにより固着されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のプレキャストパネルにおける目地部の封止構造。
- 前記膨張チューブが伸縮性のチューブ素材、または非伸縮性のホース素材で形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載のプレキャストパネルにおける目地部の封止構造。
- 前記注入材が気体、液体、またはスラリー状の固結材の何れか一種、または気液混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のプレキャストパネルにおける目地部の封止構造。
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