以下に本発明の実施の形態を示す。ただし、本明細書に記載された実施の形態を適宜組み合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に複数の構成例(動作例、製造方法例も含む)が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。また、本発明は、多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図面において、大きさ、層の厚さ、及び領域等は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値等に限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき等を含むことが可能である。
本明細書において、「上に」、「下に」等の配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている場合がある。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
図面に記載したブロック図の各回路ブロックの配置は、説明のため位置関係を特定するものであり、本発明の一形態の回路ブロックの配置は、これに限定されない。ブロック図において、異なる回路ブロックで別々の機能を実現するよう示していても、実際の回路ブロックにおいては同じ回路ブロック内で別々の機能を実現しうるように設けられている場合もある。また各回路ブロックの機能は、説明のため機能を特定するものであり、一つの回路ブロックとして示していても、実際の回路ブロックにおいては一つの回路ブロックで行う処理を、複数の回路ブロックで行うように設けられている場合もある。
本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置であり、半導体素子(トランジスタ、ダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等をいう。また、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップは、半導体装置の一例である。また、記憶装置、表示装置、発光装置、照明装置、及び電子機器等は、それ自体が半導体装置である場合があり、又は半導体装置を有している場合がある。
本明細書等では、接地電位を0Vとみなし、正電位、負電位とは接地電位を0V基準にした電位である。
本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図又は文章に示された接続関係に限定されず、図又は文章に示された接続関係以外のものも、図又は文章に開示されているものとする。X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、等)であるとする。
トランジスタは、ゲート、ソース、及びドレインと呼ばれる3つの端子を有する。ゲートは、トランジスタの導通状態を制御する制御ノードとしての機能を有するノードである。ソース又はドレインとしての機能を有する2つの入出力ノードは、トランジスタの型及び各端子に与えられる電位の高低によって、一方がソースとなり他方がドレインとなる。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
ノードは、回路構成やデバイス構造等に応じて、端子、配線、電極、導電層、導電体、不純物領域等と言い換えることが可能である。また、端子、配線等をノードと言い換えることが可能である。
電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位又はソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。
本明細書等において、「体」という言葉と、「膜」という言葉と、「層」という言葉と、は、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電体」という言葉を「導電膜」という言葉、又は「導電層」という言葉に変更することが可能な場合がある。例えば、「絶縁体」という言葉を「絶縁膜」という言葉、又は「絶縁層」という言葉に変更することが可能な場合がある。
本明細書等において、“第1”、“第2”、“第3”という序数詞は構成要素の混同を避けるために付す場合があり、その場合は数的に限定するものではなく、また順序を限定するものでもない。
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductor又は単にOSともいう)等に分類される。例えば、トランジスタの半導体層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OS FETと記載する場合においては、金属酸化物又は酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態は、本発明の一態様の半導体装置について説明する。
本発明の一態様は、半導体装置の一種であるチャージポンプ回路に関する。例えば、入力電位より低い電位を出力する機能を有するチャージポンプ回路に関する。本発明の一態様の半導体装置は、第1の電荷転送スイッチと、第2の電荷転送スイッチと、を有する。上記入力電位は、第1及び第2の電荷転送スイッチに入力される。
第1の電荷転送スイッチは、ダイオード接続されたSiトランジスタを複数有し、当該Siトランジスタが直列に接続されている。第2の電荷転送スイッチは、ダイオード接続されたOSトランジスタを複数有し、当該OSトランジスタが直列に接続されている。
Siトランジスタは、OSトランジスタよりオン電流が大きい。よって、第1の電荷転送スイッチは、第2の電荷転送スイッチより高速に動作する。したがって、第1の電荷転送スイッチが正常に動作する場合には、第1の電荷転送スイッチの出力電位は、第2の電荷転送スイッチの出力電位より低くなる。
しかしながら、Siトランジスタは、高温環境下等では基板リーク電流が増加するという特性を有する。よって、第1の電荷転送スイッチは、高温環境下等では正常に動作しない場合がある。一方、OSトランジスタは、高温環境下等でも基板リーク電流が発生しないという特性を有する。よって、第2の電荷転送スイッチは、高温環境下等でも正常に動作する。
本発明の一態様の半導体装置は、第1の電荷転送スイッチの出力電位、又は第2の電荷転送スイッチの出力電位のうち、低い方の電位に対応する電位を出力することができる。よって、室温環境下(代表的には25℃)等、第1の電荷転送スイッチが正常に動作する環境下では、第1の電荷転送スイッチの出力電位が半導体装置から出力される。一方、高温環境下等、第1の電荷転送スイッチが正常に動作しない環境下では、第2の電荷転送スイッチの出力電位が半導体装置から出力される。
以上、本発明の一態様の半導体装置は、室温環境下等、第1の電荷転送スイッチが正常に動作する環境下では、高速に動作することができる。一方、本発明の一態様の半導体装置は、高温環境下等、第1の電荷転送スイッチが正常に動作しない環境下でも、第2の電荷転送スイッチにより正常に動作することができる。
以上の動作は、例えば温度センサにより温度を測定し、測定結果に応じて、半導体装置から出力される電位を第1の電荷転送スイッチの出力電位、及び第2の電荷転送スイッチの出力電位から選択する等の、特別な制御をしなくても行うことができる。よって、本発明の一態様の半導体装置を、低価格なものとすることができる。
<半導体装置の構成例>
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置である、半導体装置10の構成例を示す回路図である。半導体装置10として、例えばチャージポンプ回路とすることができる。
半導体装置10は、入力端子INと、出力端子OUTと、電荷転送スイッチ20と、電荷転送スイッチ30と、容量素子群40と、クロック信号生成回路11と、容量素子12と、を有する。電荷転送スイッチ20は、2個以上のトランジスタ21を有する。電荷転送スイッチ30は、2個以上のトランジスタ31を有する。容量素子群40は、1個以上の容量素子41を有する。クロック信号生成回路11は、クロック信号入力端子ICK、並びにクロック信号出力端子OCK及びクロック信号出力端子OCKBを有する。
ここで、トランジスタ21及びトランジスタ31は、nチャネル型トランジスタとすることができる。
図1(A)では、電荷転送スイッチ20がトランジスタ21を5個有し、電荷転送スイッチ30がトランジスタ31を5個有し、容量素子群40が容量素子41を4個有する構成を示しているが、本発明の一態様はこれに限らない。例えば、電荷転送スイッチ20が有するトランジスタ21の個数は4個以下でもよいし、6個以上でもよい。また、電荷転送スイッチ30が有するトランジスタ31の個数は4個以下でもよいし、6個以上でもよい。さらに、容量素子群40が有する容量素子41の個数は、トランジスタ21の個数、又はトランジスタ31の個数に応じて、3個以下、又は5個以上とすることができる。
図1(A)では、5個のトランジスタ21を、それぞれトランジスタ21[1]乃至トランジスタ21[5]と記載して区別している。また、5個のトランジスタ31を、それぞれトランジスタ31[1]乃至トランジスタ31[5]と記載して区別している。さらに、4個の容量素子41を、それぞれ容量素子41[1]乃至容量素子41[4]と記載して区別している。なお、他の図面、他の素子等においても、同様の表記をする場合がある。
また、本明細書等において、括弧内の数字が大きい素子を、括弧内の数字が小さい素子より後段の素子という。例えば、トランジスタ21[2]は、トランジスタ21[1]より後段のトランジスタ21であり、容量素子41[4]は、容量素子41[1]乃至容量素子41[3]より後段の容量素子41である。
トランジスタ21及びトランジスタ31は、ダイオード接続されている。ダイオード接続とは、トランジスタのゲートとドレインを接続することをいう。ダイオード接続されたトランジスタは、ドレインの電位がゲートの電位と等しくなる。当該トランジスタがnチャネル型のトランジスタである場合、ゲート電位とソース電位との差(ゲート電圧)がトランジスタのしきい値電圧より大きくなると、Ids−Vgs特性に従った電流が、トランジスタのドレインからソースに流れる。一方、ゲート電圧がトランジスタのしきい値電圧以下である場合は、トランジスタのソース−ドレイン間に電流が流れない。以上より、ダイオード接続されたnチャネル型のトランジスタは、ドレインを陽極、ソースを陰極としたダイオードとしての機能を有するということができる。
ダイオード接続されたトランジスタがpチャネル型のトランジスタである場合、ゲート電圧がトランジスタのしきい値電圧より小さくなると、Ids−Vgs特性に従った電流が、トランジスタのソースからドレインに流れる。一方、ゲート電圧がトランジスタのしきい値電圧以上である場合、トランジスタのソース−ドレイン間に電流が流れない。以上より、ダイオード接続されたpチャネル型のトランジスタは、ソースを陽極、ドレインを陰極としたダイオードとしての機能を有するということができる。
図1(A)に示す構成の半導体装置10において、トランジスタ21[1]のソース、及びトランジスタ31[1]のソースは、入力端子INと電気的に接続されている。
また、容量素子41[1]の一方の電極は、トランジスタ21[1]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[2]のソース、トランジスタ31[1]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[2]のソースと電気的に接続されている。容量素子41[2]の一方の電極は、トランジスタ21[2]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[3]のソース、トランジスタ31[2]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[3]のソースと電気的に接続されている。容量素子41[3]の一方の電極は、トランジスタ21[3]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[4]のソース、トランジスタ31[3]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[4]のソースと電気的に接続されている。容量素子41[4]の一方の電極は、トランジスタ21[4]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[5]のソース、トランジスタ31[4]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[5]のソースと電気的に接続されている。つまり、トランジスタ21[1]乃至トランジスタ21[5]は直列に接続されているということができ、トランジスタ31[1]乃至トランジスタ31[5]は直列に接続されているということができる。
さらに、トランジスタ21[5]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[5]のゲート及びドレインは、出力端子OUTと電気的に接続されている。また、出力端子OUTは、容量素子12の一方の電極と電気的に接続されている。つまり、最終段のトランジスタ21のゲート及びドレイン、最終段のトランジスタ31のゲート及びドレインは、出力端子OUT、及び容量素子12の一方の電極と電気的に接続されている。
クロック信号生成回路11が有するクロック信号出力端子OCKは、容量素子41[1]の他方の電極、及び容量素子41[3]の他方の電極と電気的に接続されている。クロック信号生成回路11が有するクロック信号出力端子OCKBは、容量素子41[2]の他方の電極、及び容量素子41[4]の他方の電極と電気的に接続されている。
クロック信号生成回路11は、クロック信号入力端子ICKから入力されるクロック信号を基にして、2種類のクロック信号を生成し、それぞれクロック信号出力端子OCK、及びクロック信号出力端子OCKBから出力する機能を有する。例えば、クロック信号出力端子OCKからは、クロック信号入力端子ICKに入力されるクロック信号と同位相のクロック信号を出力することができる。一方、クロック信号出力端子OCKBからは、クロック信号入力端子ICKに入力されるクロック信号と逆位相のクロック信号を出力することができる。
以上より、クロック信号出力端子OCKから出力されるクロック信号と、クロック信号出力端子OCKBから出力されるクロック信号は、互いに逆位相とすることができる。これにより、隣接する容量素子41の他方の電極には、互いに逆位相のクロック信号を入力することができる。つまり、容量素子41[1]の他方の電極に入力されるクロック信号と、容量素子41[2]の他方の電極に入力されるクロック信号は、互いに逆位相であるということができる。また、容量素子41[2]の他方の電極に入力されるクロック信号と、容量素子41[3]の他方の電極に入力されるクロック信号は、互いに逆位相であるということができる。さらに、容量素子41[3]の他方の電極に入力されるクロック信号と、容量素子41[4]の他方の電極に入力されるクロック信号は、互いに逆位相であるということができる。
電荷転送スイッチ20、及び電荷転送スイッチ30は、容量素子41の他方の電極に入力されるクロック信号の位相が切り替わる際に、容量素子41に保持された電荷を転送することができる。よって、容量素子41は、ポンピングキャパシタとしての機能を有するということができる。
入力端子INには、電位VSSを入力することができる。電位VSSは、例えば接地電位とすることができる。
入力端子OUTからは、電荷転送スイッチ20から出力される電位、又は電荷転送スイッチ30から出力される電位のうち、低い方の電位に対応する電位が出力される。電荷転送スイッチ20から出力される電位、又は電荷転送スイッチ30から出力される電位は、いずれも入力端子INに入力される電位より低い。よって、出力端子OUTから出力される電位は、入力端子INから入力される電位より低くなる。つまり、半導体装置10は、降圧型のチャージポンプ回路であるということができる。
容量素子12は、電荷転送スイッチ20から転送される電荷、及び電荷転送スイッチ30から転送される電荷を保持する機能を有する。容量素子12を設けることにより、出力端子OUTから出力される電位の変動を抑制することができる。なお、トランジスタ21[5]及びトランジスタ31[5]のゲート容量が大きい場合等は、容量素子12を設けなくてもよい。
容量素子12の他方の電極には、電位VSSを供給することができる。なお、図1(A)では入力端子INに入力される電位と、容量素子12の他方の電極に供給される電位は、どちらも電位VSSとしているが、入力端子INに入力される電位と容量素子12の他方の電極に供給される電位は等しくなくてもよい。
トランジスタ21として、Siトランジスタを用いることができる。一方、トランジスタ31として、OSトランジスタを用いることができる。OSトランジスタとして、インジウムを含む金属酸化物を有するトランジスタ等を用いることができる。
Siトランジスタは、OSトランジスタよりオン電流が大きいという特徴を有する。よって、電荷転送スイッチ20は、電荷転送スイッチ30より高速に動作する。したがって、電荷転送スイッチ20が正常に動作する場合には、電荷転送スイッチ20の出力電位は、電荷転送スイッチ30の出力電位より低くなるので、出力端子OUTの電位は電荷転送スイッチ20の出力電位に対応する電位となる。
しかしながら、Siトランジスタは、高温環境下等では基板リーク電流が増加するという特性を有する。よって、電荷転送スイッチ20は、高温環境下等では正常に動作しない場合がある。一方、OSトランジスタは、高温環境下等でも基板リーク電流が発生しないという特性を有する。よって、電荷転送スイッチ30は、高温環境下等でも正常に動作する。よって、電荷転送スイッチ20が正常に動作しない高温環境下等では、出力端子OUTの電位は電荷転送スイッチ30の出力電位に対応する電位となる。
以上、半導体装置10は、室温環境下等、電荷転送スイッチ20が正常に動作する環境下では、高速に動作することができる。一方、半導体装置10は、高温環境下等、電荷転送スイッチ20が正常に動作しない環境下でも、電荷転送スイッチ30により正常に動作することができる。特に、電荷転送スイッチ30が有するトランジスタ31の全てをOSトランジスタとすることにより、例えば半導体装置10を高温環境下に置いたとしても半導体装置10の信頼性低下を抑制することができるので好ましい。
以上の動作は、例えば温度センサにより温度を測定し、測定結果に応じて、出力端子OUTの電位を電荷転送スイッチ20の出力電位に対応する電位、及び電荷転送スイッチ30の出力電位に対応する電位から選択する等の、特別な制御をしなくても行うことができる。よって、半導体装置10を、低価格なものとすることができる。
なお、前述のように、OSトランジスタによって構成される電荷転送スイッチ30は、Siトランジスタによって構成される電荷転送スイッチ20より動作速度が遅い。よって、高温環境下等、電荷転送スイッチ20が正常に動作しない環境下では、電荷転送スイッチ20が正常に動作する環境下より、クロック信号の周波数を高くすることが好ましい。これにより、電荷転送スイッチ20が正常に動作しない環境下であっても、半導体装置10の動作速度が低下することを抑制することができる。
また、トランジスタ21は、トランジスタ31よりオン電流が大きければ、Siトランジスタでなくてもよい。また、トランジスタ31は、高温環境下等、電荷転送スイッチ20が正常に動作しない環境下でも電荷転送スイッチ30が正常に動作すれば、OSトランジスタでなくてもよい。
図1(A)では、電荷転送スイッチ20に、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ21を設けた場合の半導体装置10の構成例を示しているが、電荷転送スイッチ20にはpチャネル型トランジスタを設けてもよい。図1(B)は、電荷転送スイッチ20にpチャネル型トランジスタであるトランジスタ22を設けた場合の、半導体装置10の構成例を示す回路図である。なお、図1(B)では、電荷転送スイッチ20がトランジスタ22を5個有する構成を示しているが、トランジスタ21と同様に、電荷転送スイッチ20が有するトランジスタ22の個数は4個以下でもよいし、6個以上でもよい。
トランジスタ22は、トランジスタ21と同様に、ダイオード接続されている。つまり、トランジスタ22は、ゲートとドレインが接続されている。
図1(B)に示す構成の半導体装置10では、トランジスタ22[1]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[1]のソースは、入力端子INと電気的に接続されている。
また、容量素子41[1]の一方の電極は、トランジスタ22[1]のソース、トランジスタ22[2]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[1]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[2]のソースと電気的に接続されている。容量素子41[2]の一方の電極は、トランジスタ22[2]のソース、トランジスタ22[3]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[2]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[3]のソースと電気的に接続されている。容量素子41[3]の一方の電極は、トランジスタ22[3]のソース、トランジスタ22[4]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[3]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[4]のソースと電気的に接続されている。容量素子41[4]の一方の電極は、トランジスタ22[4]のソース、トランジスタ22[5]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[4]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[5]のソースと電気的に接続されている。つまり、トランジスタ21[1]乃至トランジスタ21[5]と同様に、トランジスタ22[1]乃至トランジスタ22[5]は直列に接続されているということができる。
さらに、トランジスタ22[5]のソース、トランジスタ31[5]のゲート及びドレインは、出力端子OUTと電気的に接続されている。つまり、最終段のトランジスタ22のソース、最終段のトランジスタ31のゲート及びドレインは、出力端子OUTと電気的に接続されている。その他の接続関係等は、図1(A)に示す構成の半導体装置10と同様である。
トランジスタ22として、トランジスタ21と同様にSiトランジスタを用いることができる。なお、トランジスタ22は、トランジスタ21と同様に、トランジスタ31よりオン電流が大きければSiトランジスタでなくてもよい。
図1(A)に示す構成の半導体装置10は、電荷転送スイッチ20に設けられるトランジスタを全てトランジスタ21とし、図1(B)に示す構成の半導体装置10は、電荷転送スイッチ20に設けられるトランジスタを全てトランジスタ22としたが、本発明の一態様はこれに限られない。例えば、電荷転送スイッチ20が、トランジスタ21とトランジスタ22の両方を有する構成としてもよい。つまり、電荷転送スイッチ20が、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタの両方を有してもよい。
図1(A)、(B)に示す構成の半導体装置10は、降圧型のチャージポンプであるが、昇圧型のチャージポンプとしてもよい。図2(A)、(B)は、半導体装置10を昇圧型のチャージポンプとした場合の、半導体装置10の回路図である。
図2(A)、(B)に示す構成の半導体装置10では、電荷転送スイッチ20に設けられたトランジスタ、及び電荷転送スイッチ30に設けられたトランジスタのソースとドレインが、図1(A)、(B)に示す構成の半導体装置10と入れ替わっている。また、入力端子INには、電位VDDを入力することができる。なお、半導体装置10が昇圧型のチャージポンプであっても、入力端子INに電位VSSを入力してもよい。
以下では、半導体装置10が降圧型のチャージポンプであるとして説明を行うが、電位の大小関係を適宜逆にすること等により、半導体装置10が昇圧型のチャージポンプであったとしても以下の説明を適用することができる。
<トランジスタの構成例>
図3(A)は、図1(A)に示すトランジスタ21[1]及びトランジスタ21[2]の、断面構成例及び接続構成例を示す模式図である。なお、他のトランジスタ21についても、図3(A)に示す構成を適用することができる。
トランジスタ21は、基板70に形成することができる。基板70は、p型基板とすることができる。また、トランジスタ21がSiトランジスタである場合は、基板70は、シリコン系の半導体材料が含まれるシリコン基板とすることができる。基板70をシリコン基板とする場合、基板70は単結晶シリコンを含むことが好ましい。
又は、基板70は、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)等を有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。又はGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ21をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
基板70には、p+領域71、並びにn型ウェル72a、n型ウェル72b、n型ウェル72c、及びn型ウェル73a、n型ウェル73bが設けられる。基板70の内部におけるn型ウェル72a、n型ウェル73a、及びn型ウェル72bに囲まれた領域がp型ウェル74[1]となり、n型ウェル72b、n型ウェル73b、及びn型ウェル72cに囲まれた領域がp型ウェル74[2]となる。n型ウェル72aにはn+領域75aが設けられ、n型ウェル72bにはn+領域75bが設けられ、n型ウェル72cにはn+領域75cが設けられる。
ここで、p型ウェル74[1]の下側にn型ウェル73aが設けられ、p型ウェル74[2]の下側にn型ウェル73bが設けられる。つまり、n型ウェル73a及びn型ウェル73bは、基板70内部の深い位置に設けられているということができる。
p型ウェル74[1]には、p+領域76[1]、n+領域77[1]、及びn+領域78[1]が設けられる。p型ウェル74[2]には、p+領域76[2]、n+領域77[2]、及びn+領域78[2]が設けられる。
基板70をp型基板とすると、基板70、p型ウェル、及びp+領域は、前述の半導体材料に加え、ホウ素等のp型の導電性を付与する元素を含む。なお、p型ウェルに含まれる当該元素の濃度は、基板70に含まれる当該元素の濃度と同程度とすることができる。また、p+領域に含まれる、p型の導電性を付与する元素の濃度は、基板70及びp型ウェルに含まれる当該元素の濃度より高くすることができる。よって、p+領域の電気抵抗を、基板70及びp型ウェルの電気抵抗より低くすることができる。
n型ウェル、及びn+領域は、前述の半導体材料に加え、リン等のn型の導電性を付与する元素を含む。n+領域に含まれる当該元素の濃度は、n型ウェルに含まれる当該元素の濃度より高くすることができる。よって、n+領域の電気抵抗を、n型ウェルの電気抵抗より低くすることができる。
n+領域77[1]とn+領域78[1]の間の領域と重なる領域を有するように、基板70上に絶縁体80[1]が設けられ、n+領域77[2]とn+領域78[2]の間の領域と重なる領域を有するように、基板70上に絶縁体80[2]が設けられる。また、絶縁体80[1]と接する領域を有するように、導電体81[1]が設けられ、絶縁体80[2]と接する領域を有するように、導電体81[2]が設けられる。なお、絶縁体80[1]及び導電体81[1]は、n+領域77[1]と重なる領域を有してもよいし、n+領域78[1]と重なる領域を有してもよい。また、絶縁体80[2]及び導電体81[2]は、n+領域77[2]と重なる領域を有してもよいし、n+領域78[2]と重なる領域を有してもよい。
入力端子INは、p+領域71、n+領域75a、n+領域77[1]、n+領域75b、及びn+領域75cと電気的に接続されている。また、p+領域76[1]、導電体81[1]、n+領域78[1]、及びn+領域77[2]は、互いに電気的に接続されている。さらに、p+領域76[2]、導電体81[2]、及びn+領域78[2]は、互いに電気的に接続されている。
n+領域77[1]は、トランジスタ21[1]のソース領域としての機能を有し、n+領域77[2]は、トランジスタ21[2]のソース領域としての機能を有する。n+領域78[1]は、トランジスタ21[1]のドレイン領域としての機能を有し、n+領域78[2]は、トランジスタ21[2]のドレイン領域としての機能を有する。
絶縁体80[1]は、トランジスタ21[1]のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁体80[2]は、トランジスタ21[2]のゲート絶縁膜としての機能を有する。導電体81[1]は、トランジスタ21[1]のゲート電極としての機能を有し、導電体81[2]は、トランジスタ21[2]のゲート電極としての機能を有する。
ここで、p型ウェル74[1]における、n+領域77[1]とn+領域78[1]の間の領域のうち、導電体81[1]と重なる領域は、トランジスタ21[1]のチャネル形成領域となる。また、p型ウェル74[2]における、n+領域77[2]とn+領域78[2]の間の領域のうち、導電体81[2]と重なる領域は、トランジスタ21[2]のチャネル形成領域となる。
p+領域71に供給される電位は、基板70の電位となる。n+領域75aに供給される電位は、n型ウェル72aの電位となる。n+領域75bに供給される電位は、n型ウェル72bの電位となる。n+領域75cに供給される電位は、n型ウェル72cの電位となる。p+領域76[1]に供給される電位は、p型ウェル74[1]の電位となる。p+領域76[2]に供給される電位は、p型ウェル74[2]の電位となる。
以上より、トランジスタ21[1]は、p型ウェル74[1]、p+領域76[1]、n+領域77[1]、n+領域78[1]、絶縁体80[1]、及び導電体81[1]を有するということができる。また、トランジスタ21[2]は、p型ウェル74[2]、p+領域76[2]、n+領域77[2]、n+領域78[2]、絶縁体80[2]、及び導電体81[2]を有するということができる。さらに、トランジスタ21[1]とトランジスタ21[2]は、n型ウェル72a、n型ウェル73a、n型ウェル72b、n型ウェル73b、及びn型ウェル72cによって分離されているということができる。
p+領域71、n+領域75a、n+領域77[1]、n+領域75b、及びn+領域75cには、電位VSSを供給することができる。また、p+領域76[1]、導電体81[1]、n+領域78[1]、及びn+領域77[2]に供給される電位を、電位V1とする。さらに、p+領域76[2]、導電体81[2]、及びn+領域78[2]に供給される電位を、電位V2とする。半導体装置10を降圧型のチャージポンプとする場合、電位VSSより電位V1の方が低くなり、電位V1より電位V2の方が低くなる。つまり、“VSS>V1>V2”という関係が成立する。
“VSS>V1>V2”という関係が成立することにより、p型基板である基板70の電位と、n型ウェルの電位と、が順バイアスの関係とならなくなる。また、p型ウェルの電位と、n型ウェルの電位と、順バイアスの関係とならなくなる。以上より、基板70からn型ウェルに電流が流れること、及びp型ウェルからn型ウェルに電流が流れることを抑制することができる。
ここで、トランジスタ21[1]におけるソース電位(n+領域77[1]に供給される電位)とボディ電位(p+領域76[1]に供給される電位)との差は、“VSS−V1”となる。また、トランジスタ21[2]におけるソース電位(n+領域77[2]に供給される電位)とボディ電位(p+領域76[2]に供給される電位)との差は、“V1−V2”となる。よって、後段のトランジスタ21であっても、ソース電位とボディ電位との差が、トランジスタ21[1]におけるソース電位とボディ電位との差と比較して大幅に増加することを抑制することができる。よって、後段のトランジスタ21においても、ソース電位とボディ電位との差が大きくなると発生する基板バイアス効果による、トランジスタのしきい値電圧の増加を抑制することができる。以上より、電荷転送スイッチ20に設けられたトランジスタ21の個数を増加させることにより電荷転送スイッチ20の出力電位を低くしても、後段のトランジスタ21の、基板バイアス効果によるしきい値電圧の増加を抑制することができる。
図3(B)は、図1(B)に示すトランジスタ22[1]及びトランジスタ22[2]の、断面構成例及び接続構成例を示す模式図である。なお、他のトランジスタ22についても、図3(B)に示す構成を適用することができる。
トランジスタ22はトランジスタ21と同様に、p型基板とすることができる基板70に形成することができる。
基板70には、p+領域71、並びにn型ウェル90[1]及びn型ウェル90[2]が設けられる。n型ウェル90[1]にはn+領域91[1]、並びにp+領域92[1]及びp+領域93[1]が設けられ、n型ウェル90[2]にはn+領域91[2]、並びにp+領域92[2]及びp+領域93[2]が設けられる。
p+領域92[1]とp+領域93[1]の間の領域と重なる領域を有するように、基板70上に絶縁体80[1]が設けられ、p+領域92[2]とp+領域93[2]の間の領域と重なる領域を有するように、基板70上に絶縁体80[2]が設けられる。また、絶縁体80[1]と接する領域を有するように、導電体81[1]が設けられ、絶縁体80[2]と接する領域を有するように、導電体81[2]が設けられる。なお、絶縁体80[1]及び導電体81[1]は、p+領域92[1]と重なる領域を有してもよいし、p+領域93[1]と重なる領域を有してもよい。また、絶縁体80[2]及び導電体81[2]は、p+領域92[2]と重なる領域を有してもよいし、p+領域93[2]と重なる領域を有してもよい。
入力端子INは、p+領域71、n+領域91[1]、p+領域92[1]、導電体81[1]、及びn+領域91[2]と電気的に接続されている。また、p+領域93[1]は、p+領域92[2]及び導電体81[2]と電気的に接続されている。
p+領域92[1]は、トランジスタ22[1]のドレイン領域としての機能を有し、p+領域92[2]は、トランジスタ22[2]のドレイン領域としての機能を有する。p+領域93[1]は、トランジスタ22[1]のソース領域としての機能を有し、p+領域93[2]は、トランジスタ22[2]のソース領域としての機能を有する。
絶縁体80[1]は、トランジスタ22[1]のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁体80[2]は、トランジスタ22[2]のゲート絶縁膜としての機能を有する。導電体81[1]は、トランジスタ22[1]のゲート電極としての機能を有し、導電体81[2]は、トランジスタ22[2]のゲート電極としての機能を有する。
ここで、n型ウェル90[1]における、p+領域92[1]とp+領域93[1]の間の領域のうち、導電体81[1]と重なる領域は、トランジスタ22[1]のチャネル形成領域となる。また、n型ウェル90[2]における、p+領域92[2]とp+領域93[2]の間の領域のうち、導電体81[2]と重なる領域は、トランジスタ22[2]のチャネル形成領域となる。
p+領域71に供給される電位は、図3(A)に示す場合と同様に、基板70の電位となる。n+領域91[1]に供給される電位は、n型ウェル90[1]の電位となり、n+領域91[2]に供給される電位は、n型ウェル90[2]の電位となる。
以上より、トランジスタ22[1]は、n型ウェル90[1]、n+領域91[1]、p+領域92[1]、p+領域93[1]、絶縁体80[1]、及び導電体81[1]を有するということができる。また、トランジスタ22[2]は、n型ウェル90[2]、n+領域91[2]、p+領域92[2]、p+領域93[2]、絶縁体80[2]、及び導電体81[2]を有するということができる。さらに、トランジスタ22[1]とトランジスタ22[2]は、n型ウェル90[1]及びn型ウェル90[2]によって分離されているということができる。
トランジスタ22は、基板70内部の深い位置にウェルを設けなくても、トランジスタ22の素子間分離を行うことができる。よって、トランジスタ22は簡易な工程で作製することができる。
p+領域71、n+領域91[1]、p+領域92[1]、導電体81[1]、及びn+領域91[2]には、電位VSSを供給することができる。p+領域71[1]、並びにn+領域91[1]及びn+領域91[2]に同じ電位を供給することにより、基板70の電位と、n型ウェル90[1]及びn型ウェル90[2]の電位とを等しくすることができる。これにより、p型基板である基板70の電位と、n型ウェル90[1]及びn型ウェル90[2]の電位とが順バイアスの関係とならなくなる。したがって、基板70から、n型ウェル90[1]、及びn型ウェル90[2]に電流が流れることを抑制することができる。
なお、電荷転送スイッチ20が有するトランジスタ22に設けられた全てのn+領域91に、p+領域71に供給した電位と同じ電位を供給することができる。これにより、全てのn型ウェル90の電位を、基板70の電位と等しくすることができる。
また、p+領域93[1]、p+領域92[2]、及び導電体81[2]に供給される電位を、電位V1とする。さらに、p+領域93[2]に供給される電位を、電位V2とする。図3(A)に示す場合と同様に、半導体装置10を降圧型のチャージポンプとする場合、電位VSSより電位V1の方が低くなり、電位V1より電位V2の方が低くなる。つまり、“VSS>V1>V2”という関係が成立する。
前述のように、n型ウェル90の電位は電位VSSとなる。よって、“VSS>V1>V2”という関係が成立する場合、p+領域71以外のp+領域に供給される電位は、n型ウェル90の電位より低くなる。よって、p+領域の電位と、n型ウェル90の電位とが順バイアスの関係とならなくなる。したがって、p+領域からn型ウェル90に電流が流れることを抑制することができる。
後段のトランジスタ22のソース電位(p+領域93に供給される電位)は、前段のトランジスタ22のソース電位より低くなる。一方、例えば全てのトランジスタ22において、ボディ電位(n+領域91に供給される電位)は電位VSSで一定となる。以上より、後段のトランジスタ22におけるソース電位とボディ電位との差は、前段のトランジスタ22におけるソース電位とボディ電位との差より大きくなる。よって、基板バイアス効果による、トランジスタ22のしきい値電圧の増加を抑制するために、電荷転送スイッチ20に設けるトランジスタ22の個数を少なくし、電荷転送スイッチ20の出力電位が低くなりすぎないようにすることが好ましい。
図1(A)、(B)に示す構成の半導体装置10では、電荷転送スイッチ20に設けられたトランジスタ21又はトランジスタ22の個数を、電荷転送スイッチ30に設けられたトランジスタ31の個数と等しくしたが、本発明の一態様はこれに限らない。例えば、SiトランジスタはOSトランジスタより電荷転送速度が高い。よって、Siトランジスタとすることができるトランジスタ21又はトランジスタ22の個数が、OSトランジスタとすることができるトランジスタ31の個数より少なくても、出力端子OUTの電位を低くすることができる。
図4(A)は、図1(A)に示す構成の半導体装置10の変形例であり、トランジスタ21の個数が、トランジスタ31の個数より1個少ない場合の、半導体装置10の構成例を示している。図4(B)は、図1(B)に示す構成の半導体装置10の変形例であり、トランジスタ22の個数が、トランジスタ31の個数より1個少ない場合の、半導体装置10の構成例を示している。なお、トランジスタ21又はトランジスタ22の個数を、トランジスタ31の個数より2個以上少なくしてもよい。又は、トランジスタ31の個数を、トランジスタ21又はトランジスタ22の個数より少なくしてもよい。
トランジスタ21又はトランジスタ22の個数を減少させることにより、トランジスタ21又はトランジスタ22のしきい値電圧のばらつきが電荷転送スイッチ20の出力電位に与える影響を小さくすることができる。よって、電荷転送スイッチ20の出力電位のばらつきを小さくすることができる。
図1(A)、(B)に示す構成の半導体装置10は、ポンピングキャパシタとしての機能を有する容量素子41の一方の電極が、トランジスタ21又はトランジスタ22、及びトランジスタ31の両方と電気的に接続されている。つまり、ポンピングキャパシタとしての機能を有する容量素子41を、電荷転送スイッチ20及び電荷転送スイッチ30により共有しているが、本発明の一態様はこれに限られない。ポンピングキャパシタとしての機能を有する容量素子を、電荷転送スイッチ20及び電荷転送スイッチ30により共有しなくてもよい。
図5(A)は、図1(A)に示す構成の半導体装置10の変形例であり、図5(B)は、図1(B)に示す構成の半導体装置10の変形例である。図5(A)、(B)は、半導体装置10が容量素子群40を有さず、容量素子群50及び容量素子群60を有する場合の、半導体装置10の構成例を示している。
容量素子群50は、1個以上の容量素子51を有する。容量素子群60は、1個以上の容量素子61を有する。
図5(A)、(B)では、容量素子群50が有する容量素子51の個数を4個としているが、容量素子51の個数は、電荷転送スイッチ20が有するトランジスタ21又はトランジスタ22の個数に応じて3個以下、又は5個以上とすることができる。また、図5(A)、(B)では、容量素子群60が有する容量素子61の個数を4個としているが、容量素子61の個数は、電荷転送スイッチ30が有するトランジスタ31の個数に応じて3個以下、又は5個以上とすることができる。具体的には、容量素子51の個数は、トランジスタ21又はトランジスタ22の個数より1個少なくすることができ、容量素子61の個数は、トランジスタ31の個数より1個少なくすることができる。
図5(A)に示す構成の半導体装置10において、容量素子51[1]の一方の電極は、トランジスタ21[1]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[2]のソースと電気的に接続されている。容量素子51[2]の一方の電極は、トランジスタ21[2]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[3]のソースと電気的に接続されている。容量素子51[3]の一方の電極は、トランジスタ21[3]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[4]のソースと電気的に接続されている。容量素子51[4]の一方の電極は、トランジスタ21[4]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[5]のソースと電気的に接続されている。
図5(B)に示す構成の半導体装置10において、容量素子51[1]の一方の電極は、トランジスタ22[1]のソース、トランジスタ22[2]のゲート及びドレインと電気的に接続されている。容量素子51[2]の一方の電極は、トランジスタ22[2]のソース、トランジスタ22[3]のゲート及びドレインと電気的に接続されている。容量素子51[3]の一方の電極は、トランジスタ22[3]のソース、トランジスタ22[4]のゲート及びドレインと電気的に接続されている。容量素子51[4]の一方の電極は、トランジスタ22[4]のソース、トランジスタ22[5]のゲート及びドレインと電気的に接続されている。
図5(A)、(B)に示す構成の半導体装置10において、容量素子61[1]の一方の電極は、トランジスタ31[1]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[2]のソースと電気的に接続されている。容量素子61[2]の一方の電極は、トランジスタ31[2]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[3]のソースと電気的に接続されている。容量素子61[3]の一方の電極は、トランジスタ31[3]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[4]のソースと電気的に接続されている。容量素子61[4]の一方の電極は、トランジスタ31[4]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[5]のソースと電気的に接続されている。
また、クロック信号生成回路11が有するクロック信号出力端子OCKは、容量素子51[1]の他方の電極及び容量素子51[3]の他方の電極、並びに容量素子61[1]の他方の電極及び容量素子61[3]の他方の電極と電気的に接続されている。クロック信号生成回路11が有するクロック信号出力端子OCKBは、容量素子51[2]の他方の電極及び容量素子51[4]の他方の電極、並びに容量素子61[2]の他方の電極及び容量素子61[4]の他方の電極と電気的に接続されている。
図5(A)、(B)に示す構成の半導体装置10において、電荷転送スイッチ20は、容量素子51の他方の電極に入力されるクロック信号の位相が切り替わる際に、容量素子51に保持された電荷を転送することができる。また、電荷転送スイッチ30は、容量素子61の他方の電極に入力されるクロック信号の位相が切り替わる際に、容量素子61に保持された電荷を転送することができる。以上より、容量素子51及び容量素子61は、容量素子41と同様にポンピングキャパシタとしての機能を有するということができる。
半導体装置10を図5(A)、(B)に示す構成とすることにより、電荷転送スイッチ20が転送する電荷を保持する機能を有する容量素子の容量と、電荷転送スイッチ30が転送する電荷を保持する機能を有する容量素子の容量と、を異ならせることができる。例えば、詳細は後述するが、OSトランジスタのオフ電流はSiトランジスタのオフ電流より小さいので、容量素子61の容量は容量素子51の容量より小さくすることができる。
図1(A)、(B)に示す構成の半導体装置10では、電荷転送スイッチ20に設けられたトランジスタを、全てSiトランジスタとすることができるトランジスタ21又はトランジスタ22としたが、本発明の一態様はこれに限らない。電荷転送スイッチ20が有するトランジスタの一部が、OSトランジスタであってもよい。
図6(A)、(B)は、図1(A)に示す構成の半導体装置10の変形例であり、電荷転送スイッチ20がm−1個(mは2以上の整数)のトランジスタ21又はトランジスタ22と、1個のトランジスタ32を有する場合の、半導体装置10の構成例を示している。図6(A)、(B)に示す構成の半導体装置10において、電荷転送スイッチ30はm個のトランジスタ31を有し、容量素子群40はm−1個の容量素子41を有する。なお、電荷転送スイッチ30が有するトランジスタ31の個数は、例えばm個より多くてもよく、この場合、容量素子群40が有する容量素子41の個数もm−1個より多くなる。
トランジスタ32はOSトランジスタであり、nチャネル型のトランジスタとすることができる。トランジスタ32は、トランジスタ31と同じ構成とすることができる。また、トランジスタ32はダイオード接続されている。
図6(A)に示す構成の半導体装置10において、トランジスタ32のソースは、トランジスタ21[m−1]のゲート及びドレインと電気的に接続されている。図6(B)に示す構成の半導体装置10において、トランジスタ32のソースは、トランジスタ22[m−1]のソースと電気的に接続されている。
図6(A)、(B)に示す構成の半導体装置10において、トランジスタ32のソースはトランジスタ31[m−1]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[m]のソース、及び容量素子41[m−1]の一方の電極と電気的に接続されている。また、トランジスタ32のゲート及びドレインは、トランジスタ31[m]のゲート及びドレイン、出力端子OUT、及び容量素子12の一方の電極と電気的に接続されている。つまり、トランジスタ32は、電荷転送スイッチ20の最終段のトランジスタであるということができる。
OSトランジスタは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である金属酸化物を半導体材料として用いているため、オフ電流が極めて小さい。よって、電荷転送スイッチ30に設けられた最終段のトランジスタだけでなく、電荷転送スイッチ20に設けられた最終段のトランジスタにもOSトランジスタを用いることにより、容量素子12に長期間電荷を保持することができる。これにより、電荷転送スイッチ20及び電荷転送スイッチ30による電荷の転送を長期間行わなくても、出力端子OUTから出力される電位の変動を抑制することができる。よって、クロック信号OCK及びクロック信号OCKBのクロック周波数を小さくすることができる。又は、クロック信号OCK及びクロック信号OCKBについて、クロックゲーティングを行うことができる。以上により、半導体装置10の消費電力を低減させることができる。なお、トランジスタ32は、オフ電流が極めて低ければ、OSトランジスタでなくてもよい。
前述のように、SiトランジスタはOSトランジスタよりオン電流が大きい。よって、図6(A)、(B)に示すような構成は、mの値が大きい場合に適用すると、電荷転送スイッチ20が有する最終段のSiトランジスタをOSトランジスタに置き換えたことによる、電荷転送スイッチ20の動作速度の低下等を抑制することができ好ましい。例えば、mの値は、5以上とすることが好ましく、10以上とすることがより好ましい。一方、mの値が大きすぎると、電荷転送スイッチ20が有するトランジスタのしきい値電圧のばらつき、及び電荷転送スイッチ30が有するトランジスタのしきい値電圧のばらつきが、出力端子OUTの電位に与える影響が大きくなる。よって、mの値は、例えば20以下とすることが好ましい。
<半導体装置の動作例>
図7は、図1(A)、(B)、及び図4(A)、(B)乃至図6(A)、(B)等に示す構成の半導体装置10の動作方法の一例を示すタイミングチャートである。図7には、クロック信号出力端子OCKの電位、クロック信号出力端子OCKBの電位、及び出力端子OUTの電位を示している。なお、半導体装置10が図6(A)、(B)に示す構成である場合には、図7に示すタイミングチャートは特にmの値が5である場合に対応する。
図7等において、電位VDDは電位VSSより高い電位を示す。例えば、電位VSSが接地電位である場合、電位VDDは正電位となる。クロック信号出力端子OCKの電位、及びクロック信号出力端子OCKBの電位は、電位VDD又は電位VSSとすることができる。
本明細書等において、クロック信号の電位が例えば電位VDDから電位VSSに切り替わること、又は電位VSSから電位VDDに切り替わることを、クロック信号の位相が切り替わるという。
図7に示すように、クロック信号出力端子OCKBから出力されるクロック信号の位相は、クロック信号出力端子OCKから出力されるクロック信号の位相と180°異ならせることができる。つまり、クロック信号出力端子OCKの電位が電位VDDである場合はクロック信号出力端子OCKBの電位を電位VSSとし、クロック信号出力端子OCKの電位が電位VSSである場合はクロック信号出力端子OCKBの電位を電位VDDとすることができる。なお、クロック信号出力端子OCKの電位とクロック信号出力端子OCKBの電位が両方とも電位VDDとなる期間があってもよいし、両方とも電位VSSとなる期間があってもよい。
電荷転送スイッチ20及び電荷転送スイッチ30は、クロック信号の位相が切り替わる際に、電荷を転送することができる。例えば、図7に示す場合では、クロック信号の電位が電位VDDから電位VSSに切り替わる際、つまりクロック信号が立ち下がる際に、電荷が転送される。以上により、出力端子OUTの電位が低下する。例えば、入力端子INの電位を電位VSSとする場合、出力端子OUTの電位は、最終的には“5(VSS−VDD+Vth)”まで低下する。
ここで、“Vth“は、電荷転送スイッチが有するトランジスタのしきい値電圧である。前述のように、出力端子OUTの電位は、電荷転送スイッチ20から出力される電位、又は電荷転送スイッチ30から出力される電位のうち、低い方の電位に対応する電位となる。よって、電荷転送スイッチ20が正常に動作する環境下に半導体装置10が置かれている場合等、電荷転送スイッチ20の出力電位が出力端子OUTの電位となる場合には、”Vth“は電荷転送スイッチ20が有するトランジスタのしきい値電圧となる。また、電荷転送スイッチ20が正常に動作しない環境下に半導体装置10が置かれている場合等、電荷転送スイッチ30の出力電位が出力端子OUTの電位となる場合には、”Vth“は電荷転送スイッチ30が有するトランジスタのしきい値電圧となる。
なお、図7等では、電荷転送スイッチ20が有するトランジスタのしきい値電圧は全て等しいとし、電荷転送スイッチ30が有するトランジスタのしきい値電圧は全て等しいとしている。また、電荷転送スイッチ20がm個のトランジスタを有し、電荷転送スイッチ20の出力電位が出力端子OUTの電位となる場合は、出力端子OUTの電位は最終的には“m(VSS−VDD+Vth)”となる。さらに、電荷転送スイッチ30がm個のトランジスタを有し、電荷転送スイッチ30の出力電位が出力端子OUTの電位となる場合も、出力端子OUTの電位は最終的には“m(VSS−VDD+Vth)”となる。
以上より、しきい値電圧Vthが小さいほど、出力端子OUTの電位は低くなる。よって、しきい値電圧が小さいほど、電荷転送スイッチが有するトランジスタの数(上式におけるmの値)を少なくしても、出力端子OUTの電位を低くすることができる。よって、例えばSiトランジスタはOSトランジスタよりしきい値電圧Vthが小さい場合には、図4(A)、(B)に示すように、トランジスタ21又はトランジスタ22の個数を、トランジスタ31の個数より少なくすることができる。
<半導体装置の断面構成例1>
図8は、トランジスタ22及びトランジスタ31、並びに容量素子12を有する半導体装置10の構成例を示す断面図である。図8は、例えば図1(B)、図4(B)、図5(B)に示す構成の半導体装置10に適用することができる。ここで、図8に示すトランジスタ22及びトランジスタ31は、最終段のトランジスタ22、及び最終段のトランジスタ31であるが、最終段以外のトランジスタ22及びトランジスタ31についても図8に示す構成を適用することができる。
図9(A)はトランジスタ31のチャネル長方向の断面図であり、図9(B)はトランジスタ31のチャネル幅方向の断面図である。
図8に示すように、Siトランジスタとすることができるトランジスタ22の上層に、OSトランジスタとすることができるトランジスタ31と、容量素子12を設けることができる。
前述のように、トランジスタ22は、基板70に形成することができる。基板70は、例えばp型基板とすることができる。基板70には、p+領域71、及びn型ウェル90が設けられる。n型ウェル90にはn+領域91、並びにp+領域92及びp+領域93が設けられる。
p+領域92とp+領域93の間の領域と重なる領域を有するように、基板70上に絶縁体80が設けられる。また、絶縁体80と接する領域を有するように、導電体81が設けられる。なお、絶縁体80は、p+領域92と重なる領域を有してもよいし、p+領域93と重なる領域を有してもよい。
ここで、前述のように、p+領域92は、トランジスタ22のソース領域としての機能を有し、p+領域93は、トランジスタ22のドレイン領域としての機能を有する。また、n型ウェル90における、p+領域92とp+領域93の間の領域のうち、ゲート電極としての機能を有する導電体81と重なる領域は、トランジスタ22のチャネル形成領域となる。
基板70は、シリコン系半導体等の半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。又は、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)等を有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。又はGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ22をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
p+領域71、p+領域92、及びp+領域93は、上記基板70に適用される半導体材料に加え、ホウ素等のp型の導電性を付与する元素を含む。また、n型ウェル90及びn+領域91は、上記基板70に適用される半導体材料に加え、リン素等のn型の導電性を付与する元素を含む。
導電体81は、ホウ素等のp型の導電性を付与する元素を含むシリコン等の半導体材料、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料等の導電性材料を用いることができる。又は、導電体81は、リン等のn型の導電性を付与する元素を含むシリコン等の半導体材料、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料等の導電性材料を用いることができる。
なお、導電体の材料により、仕事関数が定まるため、導電体の材料を変更することでトランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタル等の材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウム等の金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
なお、図8に示すトランジスタ22は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
トランジスタ22を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326が順に積層して設けられている。
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等を用いればよい。
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ22等によって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
また、絶縁体324には、基板70、又はトランジスタ22等から、トランジスタ31等が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ31等のOSトランジスタに、水素が拡散することで、当該OSトランジスタの特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ31と、トランジスタ22との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(Thermal Desorption Spectroscopy;TDS)等を用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
また、絶縁体320及び絶縁体322には導電体328が埋め込まれ、絶縁体324及び絶縁体326には導電体330が埋め込まれている。ゲート電極としての機能を有する導電体81とドレイン領域としての機能を有するp+領域93は、導電体328及び導電体330を介して電気的に接続されている。
導電体328、及び導電体330は、プラグ又は配線としての機能を有する。また、プラグ又は配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線としての機能を有する場合、及び導電体の一部がプラグとしての機能を有する場合もある。
各プラグ、及び配線(導電体328、及び導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料等の導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデン等の高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。又は、アルミニウムや銅等の低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
絶縁体326上、及び導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図8において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ22と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ22とトランジスタ31とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ22からトランジスタ31への水素の拡散を抑制することができる。
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ22からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
絶縁体354上、及び導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、図8において、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ22とトランジスタ31とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ22からトランジスタ31への水素の拡散を抑制することができる。
絶縁体364上、及び導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、図8において、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ22とトランジスタ31とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ22からトランジスタ31への水素の拡散を抑制することができる。
絶縁体374上、及び導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、図8において、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ22とトランジスタ31とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ22からトランジスタ31への水素の拡散を抑制することができる。
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、及び導電体386を含む配線層、について説明したが、半導体装置10の構成はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516が順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、例えば、基板70、又はトランジスタ22を設ける領域等から、トランジスタ31を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル等の金属酸化物を用いることが好ましい。
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分等の不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分等の不純物のトランジスタ31への混入を防止することができる。また、トランジスタ31を構成する金属酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ31に対する保護膜として用いることに適している。
また、例えば、絶縁体512、及び絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、及び絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
図9(A)、(B)に示すように、トランジスタ31は、絶縁体514及び絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516と導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された金属酸化物530aと、金属酸化物530aの上に配置された金属酸化物530bと、金属酸化物530b上に、互いに離して配置された導電体542a、及び導電体542bと、絶縁体524、導電体542a及び導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の中に配置された導電体560と、金属酸化物530b、導電体542a、導電体542b、及び絶縁体580と、導電体560と、の間に配置された絶縁体550と、金属酸化物530b、導電体542a、導電体542b、及び絶縁体580と、絶縁体550と、の間に配置された金属酸化物530cと、を有する。
また、図9(A)、(B)に示すように、絶縁体524、金属酸化物530a、金属酸化物530b、導電体542a、及び導電体542bと、絶縁体580の間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、図9(A)、(B)に示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、図9(A)、(B)に示すように、絶縁体580、導電体560、絶縁体550、及び金属酸化物530cの上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
なお、以下において、金属酸化物530a、金属酸化物530b、及び金属酸化物530cをまとめて金属酸化物530という場合がある。また、導電体542a及び導電体542bをまとめて導電体542という場合がある。
なお、トランジスタ31では、チャネル形成領域と、その近傍において、金属酸化物530a、金属酸化物530b、及び金属酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、金属酸化物530bの単層、金属酸化物530bと金属酸化物530aの2層構造、金属酸化物530bと金属酸化物530cの2層構造、又は4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ31では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、図8、図9(A)、(B)に示すトランジスタ31は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
ここで、導電体560は、トランジスタ31のゲート電極として機能し、導電体542aは、トランジスタ31のドレイン電極として機能し、導電体542bは、トランジスタ31のソース電極としての機能を有する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542a及び導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ31において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ31の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置10の微細化、高集積化を図ることができる。
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542a又は導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542a及び導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ31のスイッチング速度を向上させ、トランジスタ31の周波数特性を高めることができる。
導電体560は、第1のゲート電極としての機能を有する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート電極としての機能を有する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ31のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ31のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を小さくすることが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
本明細書等において、第1のゲート電極は、例えばトップゲート電極を示す。また、第2のゲート電極は、例えばバックゲート電極を示す。なお、第1のゲート電極がバックゲート電極であり、第2のゲート電極がトップゲート電極であってもよい。
導電体503は、金属酸化物530、及び導電体560と重なる領域を有するように配置する。これにより、導電体560、及び導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、金属酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。
また、導電体503は、絶縁体514及び絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。
絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524は、第2のゲート電極のゲート絶縁膜としての機能を有する。絶縁体550は、第1のゲート電極のゲート絶縁膜としての機能を有する。
ここで、金属酸化物530と接する絶縁体524として、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を金属酸化物530に接して設けることにより、金属酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ31の信頼性を向上させることができる。
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、又は3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、又は100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、金属酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、金属酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、(Ba,Sr)TiO3(BST)等のいわゆるhigh−k材料を含む絶縁体を単層又は積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流等の問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体にhigh−k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
特に、不純物、及び酸素等の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム及びハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム及びハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)等を用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、金属酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ31の周辺部から金属酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層としての機能を有する。
又は、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン、又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high−k材料の絶縁体を酸化シリコン、又は酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
なお、絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
トランジスタ31は、チャネル形成領域を含む金属酸化物530に、酸化物半導体としての機能を有する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、金属酸化物530として、In−M−Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、若しくはマグネシウム等から選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、金属酸化物530として、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物を用いてもよい。
前述のように、金属酸化物530においてチャネル形成領域にとしての機能を有する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
金属酸化物530は、金属酸化物530b下に金属酸化物530aを有することで、金属酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、金属酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、金属酸化物530b上に金属酸化物530cを有することで、金属酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、金属酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
なお、金属酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、金属酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、金属酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、金属酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、金属酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、金属酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、金属酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、金属酸化物530cは、金属酸化物530a又は金属酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
また、金属酸化物530a及び金属酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、金属酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、金属酸化物530a及び金属酸化物530cの電子親和力が、金属酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
ここで、金属酸化物530a、金属酸化物530b、及び金属酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、金属酸化物530a、金属酸化物530b、及び金属酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化又は連続接合するともいうことができる。このようにするためには、金属酸化物530aと金属酸化物530bとの界面、及び金属酸化物530bと金属酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
具体的には、金属酸化物530aと金属酸化物530b、金属酸化物530bと金属酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、金属酸化物530bがIn−Ga−Zn酸化物の場合、金属酸化物530a及び金属酸化物530cとして、In−Ga−Zn酸化物、Ga−Zn酸化物、酸化ガリウム等を用いるとよい。
このとき、キャリアの主たる経路は金属酸化物530bとなる。金属酸化物530a、金属酸化物530cを上述の構成とすることで、金属酸化物530aと金属酸化物530bとの界面、及び金属酸化物530bと金属酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ31は高いオン電流を得られる。
金属酸化物530b上には、ドレイン電極としての機能を有する導電体542a、及びソース電極としての機能を有する導電体542bが設けられる。導電体542(導電体542a及び導電体542b)としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、又は上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物等を用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、又は、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
また、図9(A)に示すように、金属酸化物530の、導電体542との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543(領域543a、及び領域543b)が形成される場合がある。このとき、領域543aはドレイン領域として機能し、領域543bはソース領域としての機能を有する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
金属酸化物530と接するように上記導電体542を設けることで、領域543の酸素濃度が低減する場合がある。また、導電体542に含まれる金属と、金属酸化物530の成分とを含む金属化合物層が、領域543に形成される場合がある。このような場合、領域543のキャリア密度が増加し、領域543は低抵抗領域となる。
絶縁体544は、導電体542を覆うように設けられ、導電体542の酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、金属酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又は、マグネシウム等から選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、絶縁体544として、アルミニウム、又はハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)等を用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542が耐酸化性を有する材料、又は、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
絶縁体550は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。絶縁体550は、金属酸化物530cの内側(上面及び側面)と接して配置することが好ましい。絶縁体550は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、又は3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、金属酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、金属酸化物530cを通じて、金属酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水又は水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に金属酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、金属酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。絶縁体550と導電体560との間に設けられる金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
第1のゲート電極としての機能を有する導電体560は、図9(A)、(B)では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2等)、銅原子等の不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、又は酸化ルテニウム等を用いることが好ましい。
また、導電体560bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としての機能も有するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、又は樹脂等を有することが好ましい。特に、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、金属酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、金属酸化物530cを通じて、金属酸化物530a及び金属酸化物530bへと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水又は水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
半導体装置10を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、及び絶縁体550の上面、及び金属酸化物530cに接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550及び絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、金属酸化物530中に酸素を供給することができる。
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又はマグネシウム等から選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、及び窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素等の不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
また、絶縁体574の上に、層間膜としての機能を有する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524等と同様に、膜中の水又は水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。
図8に示すように、容量素子12は、絶縁体516、絶縁体514、絶縁体512、及び絶縁体510に埋め込まれた導電体518と、導電体518の上に配置された絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された導電体541と、を有する。
導電体518は、容量素子12の一方の電極として機能し、導電体386、導電体376、導電体366、導電体356、導電体330、及び導電体328を介して、トランジスタ22のソース領域としての機能を有するp+領域92と電気的に接続されている。絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524は、容量素子12の誘電体としての機能を有する。導電体541は、容量素子12の他方の電極としての機能を有する。
導電体518は、導電体503と同一材料、同一工程により形成することができる。導電体541は、導電体542a及び導電体542bと同一材料、同一工程により形成することができる。
容量素子12を図8に示す構成とすることにより、絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524の3層を、容量素子12の誘電体とすることができる。よって、半導体装置10の作製工程数及びスループットを増加させることなく、容量素子12の誘電体の膜厚を、例えば絶縁体550を容量素子12の誘電体とする場合より厚くすることができる。よって、容量素子12に保持された電荷が、容量素子12の誘電体を介してリークすることを抑制することができるため、容量素子12に長期間電荷を保持することができる。したがって、半導体装置10の消費電力を低減させることができる。
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル等の金属酸化物を用いることが好ましい。
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分等の不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分等の不純物のトランジスタ31への混入を防止することができる。また、トランジスタ31を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ31に対する保護膜として用いることに適している。
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、及び絶縁体586には、導電体546、及び導電体548が埋め込まれている。
導電体546、及び導電体548は、容量素子12、トランジスタ31、又はトランジスタ22と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体546、及び導電体548は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
導電体546、及び導電体548上に、導電体610、導電体612、及び導電体614が設けられる。導電体610は、トランジスタ31と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体612は、導電体560、導電体542a、及び導電体518を互いに接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体614は、容量素子12と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。
導電体610、導電体612、及び導電体614には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物等の導電性材料を適用することもできる。
図8では、導電体610、導電体612、及び導電体614は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、及び導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
導電体610、導電体612、導電体614、及び絶縁体586上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
なお、容量素子41、又は容量素子51及び容量素子61は、絶縁体586上に設けることができる。この場合、半導体装置10の回路面積を小さくすることができる。また、容量素子41、又は容量素子51及び容量素子61は、容量素子12と同一の層に設けることができる。つまり、容量素子41、又は容量素子51及び容量素子61は、容量素子12と同一工程により形成することができる。この場合、半導体装置10の作製工程を簡略化することができるので、半導体装置10を低価格なものとすることができる。
本構造を用いることで、金属酸化物を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。又は、オン電流が大きい金属酸化物を有するトランジスタを提供することができる。又は、オフ電流が小さい金属酸化物を有するトランジスタを提供することができる。又は、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。又は、金属酸化物を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化又は高集積化を図ることができる。
<半導体装置の断面構成例2>
図10は、トランジスタ31及びトランジスタ32、並びに容量素子12を有する半導体装置10の構成例を示す断面図である。図10は、例えば図6(A)、(B)に示す構成の半導体装置10に適用することができる。ここで、図10に示すトランジスタ31は、最終段のトランジスタ31であるが、最終段以外のトランジスタ31についても、図10に示す構成を適用することができる。
なお、図10では絶縁体512より下層を省略しているが、図8と同様の構成とすることができる。
トランジスタ31は、図8と同様の構成とすることができる。トランジスタ32は、トランジスタ31と同様の構成とすることができ、トランジスタ31と同一の層に設けることができる。
図10に示す構成の半導体装置10では、導電体542aを、容量素子12の一方の電極とすることができる。また、導電体503と同一材料、同一工程で形成することができる導電体518を、容量素子12の他方の電極とすることができる。また、導電体546上、及び導電体548上に、導電体620、導電体622、導電体624、導電体626、及び導電体628が設けられる。導電体620は、トランジスタ31と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体622は、トランジスタ31が有する導電体560と、導電体542aと、を互いに接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体624は、容量素子12と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体626は、トランジスタ32が有する導電体560と、導電体542aと、を互いに接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体628は、トランジスタ32と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。ここで、導電体624は、出力端子OUTと電気的にすることができる。
導電体620、導電体622、導電体624、導電体626、及び導電体628には、図8に示す導電体610、導電体612、及び導電体614と同様の材料を用いることができる。また、導電体620、導電体622、導電体624、導電体626、導電体628、及び絶縁体586上には、絶縁体650が設けられている。
<半導体装置が出力した電位の供給先>
次に、半導体装置10が出力端子OUTから出力した電位の供給先について説明する。図11は、半導体装置10が有する出力端子OUTの接続先を示す回路図である。図11に示すように、出力端子OUTの電位は、例えばメモリセル209が配列されたセルアレイ200に供給することができる。セルアレイ200は、例えば記憶装置、CPU(Central Processing Unit)、又は撮像装置等の一部を構成する。なお、図11では、セルアレイ200にメモリセル209が1行だけ設けた構成を示しているが、セルアレイ200にはメモリセル209をマトリクス状に設けることができる。
メモリセル209は、トランジスタMW、及び容量素子CSを有する。トランジスタMWのソース又はドレインの一方は、容量素子CSの一方の電極と電気的に接続されている。トランジスタMWの第1のゲートは、ワード線としての機能を有する配線WLと電気的に接続されている。トランジスタMWの第2のゲートは、配線BGLを介して半導体装置10の出力端子OUTと電気的に接続されている。また、容量素子CSの他方の電極には、例えば電位VSSを供給することができる。
図11に示すように、半導体装置10が出力端子OUTから出力した電位は、トランジスタMWの第2のゲートに供給することができる。前述のように、出力端子OUTの電位は、入力端子INの電位より低くすることができ、例えば負電位とすることができる。出力端子OUTの電位が負電位である場合、トランジスタMWの第2のゲートに負電位が供給されることになるので、トランジスタMWのしきい値電圧がプラスシフトし、オフ電流を低減することができる。これにより、容量素子CSに長期間電荷を保持することができる。よって、容量素子CSへの電荷の書き込みの頻度を低下させることができるので、本発明の一態様の半導体装置の消費電力を低減することができる。
トランジスタMWは、OSトランジスタとすることが好ましい。前述のように、OSトランジスタのオフ電流は極めて小さい。よって、トランジスタMWをOSトランジスタとすることにより、容量素子CSへの電荷の書き込みの頻度をさらに低下させることができ、本発明の一態様の半導体装置の消費電力をさらに低減することができる。
なお、図11では、1個のセルアレイ200に対して1個の半導体装置10が設けられる構成を示しているが、1個のセルアレイ200に対して2個以上の半導体装置10を設けてもよい。半導体装置10の個数を増加させることにより、信号遅延等を低減することができるため、本発明の一態様の半導体装置の動作を高速化することができる。
以下では、セルアレイ200を記憶装置に適用した場合について説明する。図12(A)は、セルアレイ200を適用した記憶装置210の構成例を示すブロック図である。前述のように、セルアレイ200にはメモリセル209をマトリクス状に配列することができる。
記憶装置210は、セルアレイ200の他、電位生成部201、制御部202、及び周辺回路208を有する。電位生成部201は、半導体装置10を有する。周辺回路208は、センスアンプ回路204、ドライバ205、メインアンプ206、入出力回路207を有する。
メモリセル209は、配線WL、配線LBL(又は配線LBLB)、及び配線BGLと電気的に接続されている。前述のように、配線WLはワード線としての機能を有する。また、配線LBL及び配線LBLBは、ローカルビット線としての機能を有する。
図12(B)は、メモリセル209の構成例である。図12(B)は、図11に示す構成のメモリセル209に、配線LBLを追加したものである。配線LBLは、トランジスタMWのソース又はドレインの他方と電気的に接続されている。
ドライバ205には、複数の配線WL、及び複数の配線CSELが電気的に接続されている。ドライバ205は、複数の配線WL、及び複数の配線CSELに出力する信号を生成する。
セルアレイ200は、センスアンプ回路204に積層して設けられている。センスアンプ回路204は、複数のセンスアンプSAを有する。センスアンプSAは隣接する配線LBL及び配線LBLB(ローカルビット線対)、配線GBL及び配線GBLB(グローバルビット線対)、複数の配線CSELと電気的に接続されている。センスアンプSAは配線LBLと配線LBLBとの電位差を増幅する機能を有する。
センスアンプ回路204には、4本の配線LBLに対して、1本の配線GBLが設けられ、4本の配線LBLBに対して1本の配線GBLBが設けられているが、センスアンプ回路204の構成は、図12(A)の構成例に限定されない。
メインアンプ206は、センスアンプ回路204及び入出力回路207に接続されている。メインアンプ206は、配線GBLの電圧を増幅する機能を有する。メインアンプ206は省略することができる。
入出力回路207は、書き込みデータに対応する電位を配線GBLに入力する機能を有する。また、入出力回路207は、配線GBLの電位、又はメインアンプ206の出力電位を読み出しデータとして外部に出力する機能を有する。
配線CSELの信号によって、データを読み出すセンスアンプSA、及びデータを書き込むセンスアンプSAを選択することができる。そのため、入出力回路207は、マルチプレクサ等の選択回路が不要であるため、回路構成を簡単化でき、占有面積を縮小することができる。
制御部202は、記憶装置210を制御する機能を有する。例えば、制御部202は、ドライバ205、メインアンプ206、及び入出力回路207を制御する。
記憶装置210には、電源電位として、電位VDD、及び電位VSSが入力される。電位VDD、及び電位VSS以外の電位は、電位生成部201で生成される。電位生成部201で生成した電位は記憶装置210が有する各回路に入力される。電位VDDは、例えばトランジスタMWの駆動電位に用いることができる。なお、トランジスタMWの駆動電位を電位生成部201で生成してもよい。
電位生成部201に設けられている半導体装置10は、電位VBGを生成する機能を有する。電位VBGは、配線BGLに入力される。
図12(A)の例では、折り返しビット線方式のランダムアクセスメモリ(RAM)の例であるが開放ビット線方式のRAMとすることもできる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に用いることができるトランジスタについて説明する。
<トランジスタの構造例1>
図13(A)、(B)及び(C)を用いてトランジスタ510Aの構造例を説明する。図13(A)はトランジスタ510Aの上面図である。図13(B)は、図13(A)に一点鎖線L1−L2で示す部位の断面図である。図13(C)は、図13(A)に一点鎖線W1−W2で示す部位の断面図である。なお、図13(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
図13(A)、(B)及び(C)では、トランジスタ510Aと、層間膜としての機能を有する絶縁体511、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体580、絶縁体582、及び絶縁体584を示している。また、トランジスタ510Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとしての機能を有する導電体546(導電体546a、及び導電体546b)と、配線としての機能を有する導電体503と、を示している。
トランジスタ510Aは、第1のゲート電極としての機能を有する導電体560(導電体560a、及び導電体560b)と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体505(導電体505a、及び導電体505b)と、第1のゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体550と、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体521、絶縁体522、及び絶縁体524と、チャネル形成領域を有する金属酸化物530(金属酸化物530a、金属酸化物530b、及び金属酸化物530c)と、ソース又はドレインの一方としての機能を有する導電体542aと、ソース又はドレインの他方としての機能を有する導電体542bと、絶縁体574とを有する。
また、図13に示すトランジスタ510Aでは、金属酸化物530c、絶縁体550、及び導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して配置される。また、金属酸化物530c、絶縁体550、及び導電体560は、導電体542a、及び導電体542bとの間に配置される。
絶縁体511、及び絶縁体512は、層間膜としての機能を有する。
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)又は(Ba,Sr)TiO3(BST)等の絶縁体を単層又は積層で用いることができる。又はこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
例えば、絶縁体511は、水又は水素等の不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜としての機能を有することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子等の不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコン等を用いてもよい。当該構成により、水素、水等の不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
導電体503は、絶縁体512に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体503の上面の高さと、絶縁体512の上面の高さは同程度にできる。なお導電体503は、単層とする構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503を2層以上の多層膜構造としてもよい。なお、導電体503は、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
トランジスタ510Aにおいて、導電体560は、第1のゲート電極としての機能を有する場合がある。また、導電体505は、第2のゲート電極としての機能を有する場合がある。その場合、導電体505に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ510Aの閾値電圧を制御することができる。特に、導電体505に負の電位を印加することにより、トランジスタ510Aの閾値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体505に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
また、例えば、導電体505と、導電体560とを重畳して設けることで、導電体560、及び導電体505に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体505から生じる電界と、がつながり、金属酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。つまり、s−channel構造をとることができる。
絶縁体514、及び絶縁体516は、絶縁体511又は絶縁体512と同様に、層間膜としての機能を有する。例えば、絶縁体514は、水又は水素等の不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜としての機能を有することが好ましい。当該構成により、水素、水等の不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
第2のゲートとしての機能を有する導電体505は、絶縁体514及び絶縁体516の開口の内壁に接して導電体505aが形成され、さらに内側に導電体505bが形成されている。ここで、導電体505a及び導電体505bの上面の高さと、絶縁体516の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ510Aでは、導電体505a及び導電体505bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体505は、単層、又は3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
ここで、導電体505aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子等の不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、又は酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、又は上記酸素のいずれか一又は、すべての拡散を抑制する機能とする。
例えば、導電体505aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体505bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
また、導電体505が配線の機能を兼ねる場合、導電体505bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体505bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
絶縁体521、絶縁体522、及び絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ510Aの周辺部からトランジスタ510Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層としての機能を有する。
例えば、絶縁体521は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high−k材料の絶縁体を酸化シリコン、又は酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体522を得ることができる。
なお、図13には、第2のゲート絶縁膜として、3層の積層構造を示したが、単層、又は2層以上の積層構造としてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
チャネル形成領域としての機能を有する領域を有する金属酸化物530は、金属酸化物530aと、金属酸化物530a上の金属酸化物530bと、金属酸化物530b上の金属酸化物530cと、を有する。金属酸化物530b下に金属酸化物530aを有することで、金属酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、金属酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、金属酸化物530b上に金属酸化物530cを有することで、金属酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、金属酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。金属酸化物530として、上述した金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
なお、金属酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して設けられることが好ましい。絶縁体574がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が金属酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
導電体542は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極としての機能を有する。
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜としての機能を有する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、金属酸化物530c、及び絶縁体574を介して設けられることが好ましい。
トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流等の問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体を、high−k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
絶縁体580と、トランジスタ510Aとの間に絶縁体574を配置する。絶縁体574は、水又は水素等の不純物、及び酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、及び水素等の不純物が金属酸化物530c、絶縁体550を介して、金属酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
絶縁体580、絶縁体582、及び絶縁体584は、層間膜としての機能を有する。
絶縁体582は、絶縁体514と同様に、水又は水素等の不純物が、外部からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜としての機能を有することが好ましい。
また、絶縁体580、及び絶縁体584は、絶縁体516と同様に、絶縁体582よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
また、トランジスタ510Aは、絶縁体580、絶縁体582、及び絶縁体584に埋め込まれた導電体546等のプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
また、導電体546の材料としては、導電体505と同様に、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料等の導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデン等の高融点材料を用いることが好ましい。又は、アルミニウムや銅等の低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
例えば、導電体546としては、例えば、水素、及び酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
上記構造を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。又は、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。又は、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
<トランジスタの構造例2>
図14(A)、(B)及び(C)を用いてトランジスタ510Bの構造例を説明する。図14(A)はトランジスタ510Bの上面図である。図14(B)は、図14(A)に一点鎖線L1−L2で示す部位の断面図である。図14(C)は、図14(A)に一点鎖線W1−W2で示す部位の断面図である。なお、図14(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ510Bはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
トランジスタ510Bは、導電体542(導電体542a、及び導電体542b)と、金属酸化物530c、絶縁体550、及び導電体560と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
第1のゲート電極としての機能を有する導電体560は、導電体560a、及び導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子等の不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
また、導電体560の上面及び側面、絶縁体550の側面、及び金属酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体574を設けることが好ましい。なお、絶縁体574は、水又は水素等の不純物、及び酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。絶縁体574を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、及び水素等の不純物がトランジスタ510Bへ拡散することを抑制することができる。
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、及び絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
また、バリア性を有する絶縁体576を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウム等の耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、又は加工がしやすい導電体を用いることができる。
<トランジスタの構造例3>
図15(A)、(B)及び(C)を用いてトランジスタ510Cの構造例を説明する。図15(A)はトランジスタ510Cの上面図である。図15(B)は、図15(A)に一点鎖線L1−L2で示す部位の断面図である。図15(C)は、図15(A)に一点鎖線W1−W2で示す部位の断面図である。なお、図15(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ510Cはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
図15に示すトランジスタ510Cは、導電体542aと金属酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと金属酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面及び導電体560側の側面を越えて延在し、金属酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547は、導電体542に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547の膜厚は、少なくとも導電体542より厚いことが好ましい。
図15に示すトランジスタ510Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ510Aよりも、導電体542を導電体560に近づけることができる。又は、導電体542aの端部及び導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ510Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流及び周波数特性の向上を図ることができる。
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体546a(導電体546b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、金属酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
また、図15に示すトランジスタ510Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成にしてもよい。絶縁体544としては、水又は水素等の不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ510Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜としての機能を有することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコン又は窒化酸化シリコン等の、窒化物絶縁体を用いてもよい。
また、図15に示すトランジスタ510Cは、図13に示すトランジスタ510Aと異なり、導電体505を単層構造で設けてもよい。この場合、パターン形成された導電体505の上に絶縁体516となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜の上部を、導電体505の上面が露出するまでCMP法等を用いて除去すればよい。ここで、導電体505の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体505上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体505の上に形成される、絶縁体の平坦性を良好にし、金属酸化物530b及び金属酸化物530cの結晶性の向上を図ることができる。
<トランジスタの構造例4>
図16(A)、(B)及び(C)を用いてトランジスタ510Dの構造例を説明する。図16(A)はトランジスタ510Dの上面図である。図16(B)は、図16(A)に一点鎖線L1−L2で示す部位の断面図である。図16(C)は、図16(A)に一点鎖線W1−W2で示す部位の断面図である。なお、図16(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ510Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
図16(A)乃至(C)では、導電体503を設けずに、第2のゲートとしての機能を有する導電体505を配線としても機能させている。また、金属酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、金属酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
なお、金属酸化物552は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、金属酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコン等を用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh−k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
トランジスタ510Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部としての機能を有する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
金属酸化物552を有することで、ゲート電極としての機能を有する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ510Dのオン電流の向上を図ることができる。又は、ゲート絶縁膜としての機能を有する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、金属酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と金属酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、及び金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と金属酸化物530との間の物理的な距離、及び導電体560から金属酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
具体的には、金属酸化物552として、金属酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。又は、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又は、マグネシウム等から選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、アルミニウム、又はハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)等を用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
絶縁体570は、水又は水素等の不純物、及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウム又は酸化ハフニウム等を用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水又は水素等の不純物が、導電体560及び絶縁体550を介して、酸化物230に混入することを抑制することができる。
絶縁体571はハードマスクとしての機能を有する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
なお、絶縁体571に、水又は水素等の不純物、及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、及び金属酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、金属酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
また、トランジスタ510Dは、露出した金属酸化物530b表面の一部に領域531a及び領域531bを有する。領域531a又は領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域としての機能を有する。
領域531a及び領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、又はプラズマ処理等を用いて、露出した金属酸化物530b表面にリン又はボロン等の不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態等において「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
また、金属酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を金属酸化物530bに拡散させて領域531a及び領域531bを形成することもできる。
金属酸化物530bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531a及び領域531bを「不純物領域」又は「低抵抗領域」という場合がある。
絶縁体571及び/又は導電体560をマスクとして用いることで、領域531a及び領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531a及び/又は領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531a又は領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531a及び領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上等を実現できる。
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571等と同様にマスクとしての機能を有する。よって、金属酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
また、トランジスタ510Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、及び金属酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、又は樹脂等であることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
また、トランジスタ510Dは、絶縁体575、金属酸化物530上に絶縁体574を有する。絶縁体574は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水又は水素等の不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体574として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体574が酸化物230及び絶縁体575から水素及び水を吸収することで、酸化物230及び絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
<トランジスタの構造例5>
図17(A)乃至図17(C)を用いてトランジスタ510Eの構造例を説明する。図17(A)はトランジスタ510Eの上面図である。図17(B)は、図17(A)に一点鎖線L1−L2で示す部位の断面図である。図17(C)は、図17(A)に一点鎖線W1−W2で示す部位の断面図である。なお、図17(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ510Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
図17(A)乃至図17(C)では、導電体542を設けずに、露出した金属酸化物530b表面の一部に領域531a及び領域531bを有する。領域531a又は領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域としての機能を有する。また、金属酸化物530bと、絶縁体574の間に、絶縁体573を有する。
図17に示す、領域531(領域531a、及び領域531b)は、金属酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
具体的には、金属酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記金属酸化物530bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、金属酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法等を用いることができる。
なお、金属酸化物530を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、又はリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)等を用いて測定すればよい。
特に、ホウ素、及びリンは、アモルファスシリコン、又は低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
続いて、金属酸化物530b、及びダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、及び絶縁体574となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、及び絶縁体574となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531と、金属酸化物530c及び絶縁体550とが重畳する領域を設けることができる。
具体的には、絶縁体574となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体574、及び絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、金属酸化物530bに設けられた領域531の一部が露出する。次に、当該開口部に金属酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、及び導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理等により、金属酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、及び導電体560となる導電膜の一部を除去することで、図17に示すトランジスタを形成することができる。
なお、絶縁体573、及び絶縁体574は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
図17に示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体542を設けないため、コストの低減を図ることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物の構成について説明する。
<金属酸化物の構成>
本明細書等において、CAAC(c−axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud−Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、又は材料の構成の一例を表す。
CAC−OS又はCAC−metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC−OS又はCAC−metal oxideを、トランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(又はホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC−OS又はCAC−metal oxideに付与することができる。CAC−OS又はCAC−metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
また、CAC−OS又はCAC−metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
また、CAC−OS又はCAC−metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
また、CAC−OS又はCAC−metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC−OS又はCAC−metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC−OS又はCAC−metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
すなわち、CAC−OS又はCAC−metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、又は金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC−OS(c−axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)及び非晶質酸化物半導体等がある。
トランジスタの半導体に用いる酸化物半導体として、結晶性の高い薄膜を用いることが好ましい。該薄膜を用いることで、トランジスタの安定性又は信頼性を向上させることができる。該薄膜として、例えば、単結晶酸化物半導体の薄膜又は多結晶酸化物半導体の薄膜が挙げられる。しかしながら、単結晶酸化物半導体の薄膜又は多結晶酸化物半導体の薄膜を基板上に形成するには、高温又はレーザー加熱の工程が必要とされる。よって、製造工程のコストが増加し、さらに、スループットも低下してしまう。
2009年に、CAAC構造を有するIn−Ga−Zn酸化物(CAAC−IGZOと呼ぶ)が発見されたことが、非特許文献2及び非特許文献3で報告されている。ここでは、CAAC−IGZOは、c軸配向性を有する、結晶粒界が明確に確認されない、低温で基板上に形成可能である、ことが報告されている。さらに、CAAC−IGZOを用いたトランジスタは、優れた電気特性及び信頼性を有することが報告されている。
また、2013年には、nc構造を有するIn−Ga−Zn酸化物(nc−IGZOと呼ぶ)が発見された(非特許文献4参照)。ここでは、nc−IGZOは、微小な領域(例えば、1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有し、異なる該領域間で結晶方位に規則性が見られないことが報告されている。
非特許文献5及び非特許文献6では、上記のCAAC−IGZO、nc−IGZO、及び結晶性の低いIGZOのそれぞれの薄膜に対する電子線の照射による平均結晶サイズの推移が示されている。結晶性の低いIGZOの薄膜において、電子線が照射される前でさえ、1nm程度の結晶性IGZOが観察されている。よって、ここでは、IGZOにおいて、完全な非晶質構造(completely amorphous structure)の存在を確認できなかった、と報告されている。さらに、結晶性の低いIGZOの薄膜と比べて、CAAC−IGZOの薄膜及びnc−IGZOの薄膜は電子線照射に対する安定性が高いことが示されている。よって、トランジスタの半導体として、CAAC−IGZOの薄膜又はnc−IGZOの薄膜を用いることが好ましい。
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、及び七角形等の格子配列を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化すること等によって、歪みを許容することができるためと考えられる。
また、CAAC−OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成等によって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損等)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC−OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC−OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC−OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC−OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a−like OSは、鬆又は低密度領域を有する。即ち、a−like OSは、nc−OS及びCAAC−OSと比べて、結晶性が低い。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一形態の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有していてもよい。
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
また、上記酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さい、具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流がyA/μm(10−24A/μm)オーダである、ことが非特許文献7に示されている。例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPU等が開示されている(非特許文献8参照)。
また、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置への応用が報告されている(非特許文献9参照)。表示装置では、表示される画像が1秒間に数十回切り換っている。1秒間あたりの画像の切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚が困難である高速の画面の切り換えが、目の疲労の原因として考えられている。そこで、表示装置のリフレッシュレートを低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。また、リフレッシュレートを低下させた駆動により、表示装置の消費電力を低減することが可能である。このような駆動方法を、アイドリング・ストップ(IDS)駆動と呼ぶ。
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性と言う。例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10−9/cm3以上とすればよい。
また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
CAAC構造及びnc構造の発見は、CAAC構造又はnc構造を有する酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性及び信頼性の向上、ならびに、製造工程のコスト低下及びスループットの向上に貢献している。また、該トランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置及びLSIへの応用研究が進められている。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用することができる電子機器について説明する。
<電子機器・システム>
本発明の一態様の半導体装置は、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルチップ、チップ用等のモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、等が挙げられる。
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す機能等を有することができる。図18に、電子機器の例を示す。
[携帯電話]
図18(A)には、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)が図示されている。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
情報端末5500に本発明の一態様の半導体装置を適用することで、室温環境下では高速に動作し、高温環境下でも正常に動作することができる。
[情報端末1]
図18(B)には、デスクトップ型情報端末5300が図示されている。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303と、を有する。
デスクトップ型情報端末5300に本発明の一態様の半導体装置を適用することで、室温環境下では高速に動作し、高温環境下でも正常に動作することができる。
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、及びデスクトップ用情報端末を例として、それぞれ図18(A)、(B)に図示したが、スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーション等が挙げられる。
[情報端末2]
図18(C)には、タブレット型情報端末5000が図示されている。タブレット型情報端末5000は、筐体5002と、表示部5001と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5001に備えられ、ボタンが筐体5002に備えられている。
タブレット型情報端末5000に本発明の一態様の半導体装置を適用することで、室温環境下では高速に動作し、高温環境下でも正常に動作することができる。
タブレット型情報端末5000は、コントローラ5010の中央部に保持することができる。コントローラ5010を用いることで、タブレット型情報端末5000は、タッチパネルより精密且つ高速な操作を受け付けることができる。これにより、タブレット型情報端末5000を携帯型ゲーム機として使用することができる。
また、コントローラ5010は、上述のセンサの一以上を有していてもよい。また、コントローラ5010は、タブレット型情報端末5000を保持していない状態においても、有線又は無線で接続することができる。
また、タブレット型情報端末5000は、クレードル5020に保持することができる。クレードル5020は、タブレット型情報端末5000及びその付属品を充電する機能、タブレット型情報端末5000の出力データ(例えば、映像データ、音声データ、又はテキストデータ等)を出力する機能、入力装置(例えば、マウス、キーボード、記録メディアドライブ又はコントローラ5010等)と接続し、入力データをタブレット型情報端末5000に伝達する機能、又はタブレット型情報端末5000を有線又は無線で通信回線と電気的に接続する機能の少なくとも一を有する。
このようなクレードル5020を用いることで、タブレット型情報端末5000は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、又は据え置き型ゲーム機として使用することができる。
また、クレードル5020は、GPUチップ、メインメモリ、又はストレージ等を有していてもよい。これらを有することで、例えば、タブレット型情報端末5000から出力される映像データをアップコンバートすることができる。
[据え置き型ゲーム機]
図18(D)は、ゲーム機の一例である据え置き型ゲーム機5100を示している。据え置き型ゲーム機5100は、ゲーム機本体5101、無線又は有線で接続することができるコントローラ5102等を有する。
据え置き型ゲーム機5100に本発明の一態様の半導体装置を適用することで、室温環境下では高速に動作し、高温環境下でも正常に動作することができる。
[携帯型ゲーム機]
図18(E)は、ゲーム機の一例である携帯型ゲーム機5200を示している。携帯型ゲーム機は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
携帯型ゲーム機5200に本発明の一態様の半導体装置を適用することで、室温環境下では高速に動作し、高温環境下でも正常に動作することができる。
上記において、ゲーム機の一例として据え置き型ゲーム機、携帯型ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様の半導体装置を適用するゲーム機はこれに限定されない。本発明の一態様の半導体装置を適用するゲーム機としては、例えば、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地等)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシン等が挙げられる。
[電化製品]
図19(A)は、電化製品の一例である電気冷凍冷蔵庫5800を示している。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
電気冷凍冷蔵庫5800に本発明の一態様の半導体装置を適用することで、室温環境下では高速に動作し、高温環境下でも正常に動作することができる。
本一例では、電化製品として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器等が挙げられる。
[移動体]
本発明の一態様の半導体装置は、移動体である自動車、及び自動車の運転席周辺に適用することができる。
図19(B1)は移動体の一例である自動車5700を示し、図19(B2)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。図19(B1)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定等、その他様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目やレイアウト等は、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることが可能である。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることも可能である。
表示パネル5704には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない。)からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
自動車5700に本発明の一態様の半導体装置を適用することで、室温環境下では高速に動作し、高温環境下でも正常に動作することができる。
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)等も挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
<並列計算機>
本発明の一態様の半導体装置を有する計算機を複数用いてクラスターを組むことで、並列計算機を構成することができる。当該並列計算機は、室温環境下では高速に動作し、高温環境下でも正常に動作することができる。
図20(A)には、大型の並列計算機5400が図示されている。並列計算機5400には、ラック5410にラックマウント型の計算機5420が複数格納されている。
計算機5420は、例えば、図20(B)に示す斜視図の構成とすることができる。図20(B)において、計算機5420は、マザーボード5430を有し、マザーボードは、複数のスロット5431、複数の接続端子5432、複数の接続端子5433を有する。スロット5431には、PCカード5421が挿されている。加えて、PCカード5421は、接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425を有し、それぞれ、マザーボード5430に接続されている。
PCカード5421は、本発明の一態様に係る半導体装置等を備えた処理ボードである。例えば、図20(C)では、PCカード5421が、ボード5422を有し、ボード5422が、接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425と、チップ5426と、チップ5427と、接続端子5428と、を有する構成を示している。なお、図20(C)には、チップ5426、及びチップ5427以外のチップを図示しているが、それらのチップについては、以下に記載するチップ5426、及びチップ5427の説明を参酌する。
接続端子5428は、マザーボード5430のスロット5431に挿すことができる形状を有しており、接続端子5428は、PCカード5421とマザーボード5430とを接続するためのインターフェースとして機能する。接続端子5428の規格としては、例えば、PCIe等が挙げられる。
接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425は、例えば、PCカード5421に対して電力供給、信号入力等を行うためのインターフェースとすることができる。また、例えば、PCカード5421によって計算された信号の出力等を行うためのインターフェースとすることができる。接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425のそれぞれの規格としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial ATA)、SCSI(Small Computer System Interface)等が挙げられる。また、接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425から映像信号を出力する場合、それぞれの規格としては、HDMI(登録商標)等が挙げられる。
チップ5426は、信号の入出力を行う端子(図示しない。)を有しており、当該端子をPCカード5421が備えるソケット(図示しない。)に対して差し込むことで、チップ5426とPCカード5421とを電気的に接続することができる。チップ5426としては、例えば、本発明の一態様のGPUとすることができる。
チップ5427は、複数の端子を有しており、当該端子をPCカード5421が備える配線に対して、例えば、リフロー方式のはんだ付けを行うことで、チップ5427とPCカード5421とを電気的に接続することができる。チップ5427としては、例えば、記憶装置、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPU等が挙げられる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
本実施例では、本発明の一態様の半導体装置について、シミュレーションを行った結果を説明する。
図21(A)、(B)は、シミュレーションを行った半導体装置の構成を示す回路図である。図21(A)に示す構成の半導体装置は、入力端子INと、出力端子OUTaと、出力端子OUTbと、電荷転送スイッチ20と、電荷転送スイッチ30と、容量素子群50と、容量素子群60と、クロック信号生成回路11と、容量素子12aと、容量素子12bと、を有する。電荷転送スイッチ20は、トランジスタ21[1]乃至トランジスタ21[5]を有する。電荷転送スイッチ30は、トランジスタ31[1]乃至トランジスタ31[5]を有する。容量素子群50は、容量素子51[1]乃至容量素子51[4]を有する。容量素子群60は、容量素子61[1]乃至容量素子61[4]を有する。
図21(A)に示す構成の半導体装置において、トランジスタ21[1]のソース、及びトランジスタ31のソースは、入力端子INと電気的に接続されている。
容量素子51[1]の一方の電極は、トランジスタ21[1]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[2]のソースと電気的に接続されている。容量素子51[2]の一方の電極は、トランジスタ21[2]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[3]のソースと電気的に接続されている。容量素子51[3]の一方の電極は、トランジスタ21[3]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[4]のソースと電気的に接続されている。容量素子51[4]の一方の電極は、トランジスタ21[4]のゲート及びドレイン、トランジスタ21[5]のソースと電気的に接続されている。
容量素子61[1]の一方の電極は、トランジスタ31[1]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[2]のソースと電気的に接続されている。容量素子61[2]の一方の電極は、トランジスタ31[2]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[3]のソースと電気的に接続されている。容量素子61[3]の一方の電極は、トランジスタ31[3]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[4]のソースと電気的に接続されている。容量素子61[4]の一方の電極は、トランジスタ31[4]のゲート及びドレイン、トランジスタ31[5]のソースと電気的に接続されている。
トランジスタ21[5]のゲート及びドレインは、出力端子OUTaと電気的に接続されている。出力端子OUTaは、容量素子12aの一方の電極と電気的に接続されている。トランジスタ31[5]のゲート及びドレインは、出力端子OUTbと電気的に接続されている。出力端子OUTbは、容量素子12bの一方の電極と電気的に接続されている。
つまり、図21に示す構成の半導体装置は、図5(A)に示す構成の半導体装置10から、電荷転送スイッチ20の出力端子と電荷転送スイッチ30の出力端子を、電気的に接続せずに分離した構成であるということができる。また、図21(B)に示す半導体装置の構成は、図5(A)に示す半導体装置10の構成と同様である。
図21(A)、(B)に示す構成の半導体装置において、トランジスタ21[1]乃至トランジスタ21[5]をSiトランジスタ、トランジスタ31[1]乃至トランジスタ31[5]をOSトランジスタとした。トランジスタ21[1]乃至トランジスタ21[5]のチャネル長は0.48μm、チャネル幅は0.36μmとし、トランジスタ31[1]乃至トランジスタ31[5]のチャネル長は0.36μm、チャネル幅は0.36μmとした。また、容量素子51[1]乃至容量素子51[4]、及び容量素子61[1]乃至容量素子61[4]の容量を1pFとし、容量素子12a及び容量素子12b、並びに容量素子12の容量を2pFとした。
本実施例では、入力端子INに電位VSSとして接地電位を供給した際の、出力端子OUTa及び出力端子OUTb、並びに出力端子OUTの電位の経時変化をシミュレーションにより算出した。ここで、半導体装置の温度は27℃とした。図22(A)は、出力端子OUTa及び出力端子OUTbの電位の経時変化のシミュレーション結果を示す図である。図22(B)は、出力端子OUTの電位の経時変化のシミュレーション結果を示す図である。
図22(A)に示すように、出力端子OUTaの電位は出力端子OUTbの電位より低くなることが確認された。また、図22(B)に示すように、出力端子OUTの電位は、出力端子OUTaの電位と出力端子OUTbの電位のうちの低いほうの電位である、出力端子OUTaの電位となることが確認された。