以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、以下に示される複数の実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
なお、本明細書に添付した図面では、構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとしてブロック図を示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
また、図面等において、大きさ、層の厚さ、領域等は、明瞭化のため誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。
また、図面等において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
また、本明細書等において、「上」や「下」などの配置を示す用語は、構成要素の位置関係が、「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
また、本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
また、本明細書等において、「電圧」とは、ある電位と基準の電位(例えば、グラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位差とは言い換えることができる。
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む、少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域、またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域、またはソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等において、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタが非導通状態(オフ状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。非導通状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。つまり、nチャネル型トランジスタのオフ電流とは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流、という場合がある。
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタが非導通状態にあるときのソース電流をいう場合がある。また、オフ電流と同じ意味で、リーク電流という場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、トランジスタが非導通状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流をいう場合がある。
また、本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductor、ともいう)などに分類される。
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)と呼ぶことができる。すなわち、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタを、「酸化物半導体トランジスタ」、「OSトランジスタ」と呼ぶことができる。同様に、上述した、「酸化物半導体を用いたトランジスタ」も、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである。
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と呼称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。金属酸化物の詳細については後述する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一形態に係わるレベルシフタ回路の構成例について説明する。本発明の一形態に係わるレベルシフタ回路は、半導体特性を利用することで機能する回路であり、半導体基板に形成されたトランジスタと、OSトランジスタとを有する。また、本発明の一形態に係わるレベルシフタ回路は、当該回路の外部から供給される第1の高電源電位よりも電位が高い、第2の高電源電位を生成する機能を有する。
<半導体装置の構成例1>
図1(A)は、半導体装置110の構成例を示す回路図である。
半導体装置110は、本発明の一形態に係わるレベルシフタ回路である。半導体装置110は、トランジスタ11、トランジスタ12、トランジスタ21、トランジスタ31、容量素子41、容量素子42、インバータ51、インバータ52、および、ダイオード61、を有する。
トランジスタ11およびトランジスタ12はpチャネル型トランジスタであり、トランジスタ21はnチャネル型トランジスタであり、トランジスタ31はOSトランジスタである。OSトランジスタはnチャネル型トランジスタである。また、トランジスタ11、トランジスタ12、およびトランジスタ21は、ゲート、ドレイン、ソースに加えて、ボディ(端子)(バルク、ともいう)を有する。
トランジスタ11、トランジスタ12、トランジスタ21、インバータ51、インバータ52、および、ダイオード61は、半導体基板に形成したトランジスタを用いて構成されている。半導体基板は、トランジスタのチャネル領域を形成することが可能であれば、特に限定されない。例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、化合物半導体基板(SiC基板、GaN基板など)、SOI(Silicon on Insulator)基板などを用いることができる。
また、SOI基板として、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて形成されたSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)基板や、水素イオン注入により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開するスマートカット法、ELTRAN法(登録商標:Epitaxial Layer Transfer)などを用いて形成されたSOI基板を用いてもよい。単結晶基板を用いて形成したトランジスタは、チャネル形成領域に単結晶半導体を有する。
一方、OSトランジスタは薄膜トランジスタであるため、トランジスタ31は、半導体基板上に積層して設けることができる。また、酸化物半導体のバンドギャップは2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上であるため、OSトランジスタは熱励起によるリーク電流が小さく、オフ電流が非常に小さい特徴を有する。また、OSトランジスタはソースとドレインとの間の耐圧が高い。
OSトランジスタのチャネル形成領域に用いられる金属酸化物は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)の少なくとも一方を含む酸化物半導体であることが好ましい。このような酸化物半導体としては、In-M-Zn酸化物(元素Mは、例えばAl、Ga、YまたはSn)が代表的である。電子供与体(ドナー)となる水分、水素などの不純物を低減し、かつ酸素欠損も低減することで、酸化物半導体をi型(真性)、または実質的にi型にすることができる。このような酸化物半導体は、高純度化された酸化物半導体と呼ぶことができる。なお、OSトランジスタの詳細については、実施の形態3で説明する。
図1(A)において、配線VSSには低電源電位Vsが供給され、配線VDDには高電源電位Vdが供給され、配線VCOMには所定の電位Vcが供給される。ここで、高電源電位Vdは低電源電位Vsより高い電位であり、所定の電位Vcは、低電源電位Vsより高く、高電源電位Vdより低い電位である。例えば、所定の電位Vcを、(低電源電位Vs+高電源電位Vd)/2とすることができる。
また、半導体装置110は、入力端子INおよび出力端子OUTを有する。
入力端子INは、インバータ51の入力端子、トランジスタ11のゲート、および、トランジスタ21のゲートと、電気的に接続され、トランジスタ11のソースまたはドレインの一方は、配線VDDと電気的に接続され、トランジスタ11のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ21のソースまたはドレインの一方、および、トランジスタ12のゲートと、電気的に接続される。トランジスタ21のソースまたはドレインの他方は、配線VCOMと電気的に接続され、トランジスタ11のボディは、配線VDDと電気的に接続され、トランジスタ21のボディは、配線VSSと電気的に接続される。
インバータ51の出力端子は、インバータ52の入力端子、および、トランジスタ31のゲートと、電気的に接続され、インバータ52の出力端子は、容量素子42の第1端子と電気的に接続される。トランジスタ31のソースまたはドレインの一方は、配線VSSと電気的に接続される。
ダイオード61の入力端子は、配線VDDと電気的に接続され、ダイオード61の出力端子は、容量素子41の第1端子、容量素子42の第2端子、トランジスタ12のソースまたはドレインの一方、および、トランジスタ12のボディと、電気的に接続される。容量素子41の第2端子は、配線VSSと電気的に接続され、トランジスタ12のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ31のソースまたはドレインの他方、および、出力端子OUTと、電気的に接続される。
ここで、ダイオード61の出力端子、容量素子41の第1端子、容量素子42の第2端子、トランジスタ12のソースまたはドレインの一方、および、トランジスタ12のボディが、電気的に接続されたノードをノードN11と呼称する。
一方、ダイオード61、および、容量素子42は、チャージポンプ回路を形成する。ダイオード61は、ノードN11の電位が高電源電位Vdより低い場合、配線VDDとノードN11との間を導通状態とし、ノードN11の電位を高電源電位Vdとする機能を有する。容量素子42は、容量素子42の第1端子の電位が、低電源電位Vsから高電源電位Vdに変化すると、容量結合により、ノードN11の電位を押し上げる機能を有する。ノードN11の電位が高電源電位Vdより高い場合、ダイオード61は、配線VDDとノードN11との間を非導通状態とするため、ノードN11には、高電源電位Vdより高い電位が生成される。この電位を、高電源電位Vh(第2の高電源電位)と呼ぶ。
図1(B)は、インバータ51およびインバータ52に適用可能な、インバータ50のシンボルである。インバータ50は、入力端子INおよび出力端子OUTを有する。
図1(C)は、インバータ50の構成例を示す回路図である。インバータ50は、トランジスタ13およびトランジスタ23を有し、トランジスタ13はpチャネル型トランジスタであり、トランジスタ23はnチャネル型トランジスタである。
入力端子INは、トランジスタ13のゲート、および、トランジスタ23のゲートと、電気的に接続される。トランジスタ13のソースまたはドレインの一方は、配線VDDと電気的に接続され、トランジスタ13のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ23のソースまたはドレインの一方、および、出力端子OUTと、電気的に接続される。トランジスタ23のソースまたはドレインの他方は、配線VSSと電気的に接続される。トランジスタ13のボディは、配線VDDと電気的に接続され、トランジスタ23のボディは、配線VSSと電気的に接続される。
図1(D)は、ダイオード61のシンボルである。ダイオード61は、入力端子INおよび出力端子OUTを有する。
図1(E)は、ダイオード61の構成例を示す回路図である。ダイオード61は、トランジスタ14を有し、トランジスタ14はpチャネル型トランジスタである。
入力端子INは、トランジスタ14のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタ14のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ14のゲート、トランジスタ14のボディ、および、出力端子OUTと、電気的に接続される。
<半導体装置の動作例>
図2は、半導体装置110の動作例を示すタイミングチャートである。
期間T11は、電源電位が供給されていない状態である。配線VDDおよび配線VCOMの電位は、配線VSSの電位と差がなく、例えば、低電源電位Vsとなる。なお、低電源電位Vsは、例えば、0V(GND)とすることができる。
期間T12において、電源電位が供給される。配線VDDには高電源電位Vdが供給され、配線VCOMには所定の電位Vcが供給される。
入力端子INには、ローレベルを表す低電源電位Vsが供給されている。トランジスタ11は導通状態となり、トランジスタ21は非導通状態となるため、トランジスタ12のゲートには高電源電位Vdが印加される。ノードN11の電位は、ダイオード61を介して、高電源電位Vdに近い電位となるが、トランジスタ12のゲートには高電源電位Vdが印加されているため、トランジスタ12は非導通状態である。インバータ51は高電源電位Vdを出力し、インバータ52は低電源電位Vsを出力する。容量素子42の第1端子には低電源電位Vsが印加され、トランジスタ31のゲートには高電源電位Vdが印加されるため、トランジスタ31は導通状態である。したがって、出力端子OUTの電位は、低電源電位Vsとなる。
期間T13において、入力端子INに、ハイレベルを表す高電源電位Vdが供給される。トランジスタ11は非導通状態となり、トランジスタ21は導通状態となるため、トランジスタ12のゲートには所定の電位Vcが印加され、トランジスタ12は導通状態となる。インバータ51は低電源電位Vsを出力し、インバータ52は高電源電位Vdを出力するため、トランジスタ31は非導通状態となる。
ここで、ノードN11の電位は、期間T12において、高電源電位Vdに近い電位であったが、期間T12から期間T13に移行する際、容量素子42の第1端子の電位が、低電源電位Vsから高電源電位Vdに変化するため、ノードN11の電位も押し上げられる。ノードN11の電位が押し上げられる量は、容量素子42の容量と、容量素子41の容量、および、ノードN11が有する寄生容量等、との比によって決まる。したがって、出力端子OUTの電位を、高電源電位Vdより高い、高電源電位Vhとすることができる。
なお、トランジスタ31のソースとドレインとの間には、低電源電位Vsと高電源電位Vhとの電位差が印加される。低電源電位Vsと高電源電位Vhとの電位差は、半導体装置110が有するトランジスタのソースとドレインとの間に印加される電位差としては最大であり、トランジスタ31には耐圧が高いトランジスタが求められる。OSトランジスタは、ソースとドレインとの間の耐圧が高く、半導体基板に形成されたトランジスタの上方に積層して設けることができるため、トランジスタ31に好適である。
また、トランジスタ12のゲートには所定の電位Vcが印加されているため、トランジスタ12のソースとゲートとの間には、所定の電位Vcと高電源電位Vhとの電位差が印加される。所定の電位Vcは、低電源電位Vsより高い電位であるため、トランジスタ12のソースとゲートとの間に印加される電位差を、低電源電位Vsと高電源電位Vhとの電位差より小さくすることができる。
例えば、所定の電位Vcを、(低電源電位Vs+高電源電位Vd)/2とし、高電源電位Vhを、高電源電位Vd+(高電源電位Vd-低電源電位Vs)/2となるように、容量素子42の容量と容量素子41の容量を調整することで、トランジスタ12のソースとゲートとの間に印加される電位差を、高電源電位Vd-低電源電位Vs、とすることができる。
期間T14は期間T12と同様であり、期間T15は期間T13と同様であるため、説明を省略する。
<半導体装置の構成例2>
半導体装置110は、インバータ52を有さない構成であってもよい。図3(A)は、半導体装置111の構成例を示す回路図である。
半導体装置111は、半導体装置110と比べて、インバータ52を有さない構成である。そのため、容量素子42の第1端子は、入力端子INと電気的に接続される。入力端子INから入力される信号の駆動能力が十分な場合、インバータ52を省略することができる。動作に関しては、半導体装置110と同様であるため、説明を省略する。
また、半導体装置111は、容量素子41を有さない構成としてもよい。半導体装置111を、容量素子41を有さない構成とすることで、ノードN11の電位が押し上げられる量は、容量素子42の容量と、ノードN11が有する寄生容量等との比によって決まるため、高電源電位Vhをより高い電位とすることができる。
<半導体装置の構成例3>
半導体装置110において、トランジスタ31のソースとドレインとの間に印加される電位差を小さくすることができる。図3(B)は、半導体装置120の構成例を示す回路図である。
半導体装置120は、半導体装置110と比べて、トランジスタ32を有する構成である。トランジスタ32は、トランジスタ31のソースまたはドレインの一方と、出力端子OUTとの間に設けられる。
すなわち、トランジスタ32のソースまたはドレインの一方は、出力端子OUTと電気的に接続され、トランジスタ32のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ31のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタ31のソースまたはドレインの他方は、配線VSSと電気的に接続される。また、トランジスタ32のゲートは、配線VDDと電気的に接続される。
出力端子OUTの電位が高電源電位Vhの場合において、トランジスタ32のソースまたはドレインの他方の電位が高電源電位Vdより低い場合、トランジスタ32は導通状態となり、トランジスタ32のソースまたはドレインの他方の電位が高電源電位Vdより高い場合、トランジスタ32は非導通状態となる。すなわち、出力端子OUTの電位が高電源電位Vhの場合においても、トランジスタ31のソースまたはドレインの一方の電位を、高電源電位Vdに近い電位とすることができる。なお、トランジスタ32は、OSトランジスタとすることができる。動作に関しては、半導体装置110と同様であるため、説明を省略する。
<半導体装置の構成例4>
半導体装置110において、容量素子42を駆動する能力を増強することができる。図4(A)は、半導体装置130の構成例を示す回路図である。
半導体装置130は、半導体装置110と比べて、トランジスタ32、アナログスイッチ71、および、トランジスタ22、を有する構成である。すなわち、半導体装置130は、半導体装置120と比べて、アナログスイッチ71、および、トランジスタ22、を有する。トランジスタ22はnチャネル型トランジスタである。
半導体装置130の構成例について、半導体装置120と異なる部分を説明する。インバータ52の出力端子は、アナログスイッチ71の第1入力端子と電気的に接続され、インバータ51の出力端子は、インバータ52の入力端子、アナログスイッチ71の第2入力端子、トランジスタ22のゲート、および、トランジスタ31のゲートと、電気的に接続される。アナログスイッチ71の第1出力端子は、容量素子42の第1端子、および、トランジスタ22のソースまたはドレインの一方と、電気的に接続され、アナログスイッチ71の第2出力端子は、配線VDD、および、トランジスタ32のゲートと、電気的に接続される。
図4(B)は、アナログスイッチ71のシンボルである。アナログスイッチ71は、第1入力端子IN1、第2入力端子IN2、第1出力端子OUT1、および、第2出力端子OUT2、を有する。
図4(C)は、アナログスイッチ71の構成例を示す回路図である。アナログスイッチ71は、トランジスタ15およびトランジスタ25を有し、トランジスタ15はpチャネル型トランジスタであり、トランジスタ25はnチャネル型トランジスタである。
第1入力端子IN1は、トランジスタ25のゲートと電気的に接続され、第2入力端子IN2は、トランジスタ15のゲートと電気的に接続される。トランジスタ25のソースまたはドレインの一方は、第1出力端子OUT1、および、トランジスタ15のソースまたはドレインの一方と、電気的に接続され、トランジスタ25のソースまたはドレインの他方は、第2出力端子OUT2、および、トランジスタ15のソースまたはドレインの他方と、電気的に接続される。トランジスタ25のボディは、配線VSSと電気的に接続され、トランジスタ15のボディは、配線VDDと電気的に接続される。
アナログスイッチ71は、第1入力端子IN1にハイレベルを表す高電源電位Vdが印加され、第2入力端子IN2にローレベルを表す低電源電位Vsが印加された場合、第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2との間が導通状態となり、第1入力端子IN1にローレベルを表す低電源電位Vsが印加され、第2入力端子IN2にハイレベルを表す高電源電位Vdが印加された場合、第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2との間が非導通状態となる。
すなわち、図4(A)において、入力端子INに、ローレベルを表す低電源電位Vsが供給される場合、インバータ51は高電源電位Vdを出力し、インバータ52は低電源電位Vsを出力し、アナログスイッチ71は非導通状態となり、トランジスタ22は導通状態となる。容量素子42の第1端子には低電源電位Vsが印加される。これは、図2における、期間T12と同じ状態である。
また、図4(A)において、入力端子INに、ハイレベルを表す高電源電位Vdが供給される場合、インバータ51は低電源電位Vsを出力し、インバータ52は高電源電位Vdを出力し、アナログスイッチ71は導通状態となり、トランジスタ22は非導通状態となる。容量素子42の第1端子には高電源電位Vdが印加される。これは、図2における、期間T13と同じ状態である。
上述のように、半導体装置130は、アナログスイッチ71、および、トランジスタ22を用いて、容量素子42の第1端子に、低電源電位Vs、または、高電源電位Vdを出力することで、容量素子42を駆動する能力を増強することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置110を、半導体基板に形成したトランジスタ、および、半導体基板上に積層して設けたOSトランジスタ、を用いて構成した例について説明する。半導体基板に形成したトランジスタとしてトランジスタ300、半導体基板上に積層して設けたOSトランジスタとしてトランジスタ500、の断面図を図5に示す。
<半導体装置の構成例>
図5に示す半導体装置は、トランジスタ300、トランジスタ500、および、容量素子600を有している。図6(A)はトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、図6(B)はトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、図6(C)はトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
図5に示す半導体装置において、トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600は、トランジスタ300およびトランジスタ500の上方に設けられている。
トランジスタ300は、基板311に形成され、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、および、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。
トランジスタ300は、図6(C)に示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
なお、導電体の材料により、仕事関数が定まるため、導電体の材料を変更することで、トランジスタのVthを調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
なお、図5に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析(TDS分析)法などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
各プラグ、および配線(導電体328、および導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図5において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、図5において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、図5において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、図5において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、例えば、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
図6(A)、(B)に示すように、トランジスタ500は、絶縁体516の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に、互いに離して配置された導電体542a、および導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の中に配置された導電体560と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、導電体560と、の間に配置された絶縁体550と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、絶縁体550と、の間に配置された酸化物530cと、を有する。
また、図6(A)、(B)に示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580の間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、図6(A)、(B)に示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、図6(A)、(B)に示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。また、導電体542aおよび導電体542bをまとめて導電体542という場合がある。
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、図5、図6(A)(B)に示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
絶縁体550は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
なお、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542(導電体542a、および導電体542b)が設けられる。導電体542としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
また、図6(A)に示すように、酸化物530の、導電体542との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543(領域543a、および領域543b)が形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
酸化物530と接するように上記導電体542を設けることで、領域543の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543に導電体542に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543のキャリア密度が増加し、領域543は、低抵抗領域となる。
絶縁体544は、導電体542を覆うように設けられ、導電体542の酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱履歴において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542が耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面および側面)接して配置することが好ましい。絶縁体550は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
ゲート電極として機能する導電体560は、図6(A)、(B)では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
また、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540aおよび導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546および導電体548と同様の構成である。
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
導電体546、および導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
図5では、導電体612、および導電体610は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい、酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい、酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、ソースとドレインとの間の耐圧が高い、酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。
<トランジスタの構造例>
なお、本実施の形態に示す半導体装置のトランジスタ500は、上記の構造に限られるものではない。以下、トランジスタ500に用いることができる構造例について説明する。
<トランジスタの構造例1>
図7(A)、(B)および(C)を用いてトランジスタ510Aの構造例を説明する。図7(A)はトランジスタ510Aの上面図である。図7(B)は、図7(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図7(C)は、図7(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図7(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
図7(A)、(B)および(C)では、トランジスタ510Aと、層間膜として機能する絶縁体511、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584を示している。また、トランジスタ510Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能する導電体546(導電体546a、および導電体546b)を示している。
トランジスタ510Aは、ゲート電極として機能する導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体550と、チャネルが形成される領域を有する酸化物530(酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体542aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体542bと、絶縁体574とを有する。
また、図7に示すトランジスタ510Aでは、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して配置される。また、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560は、導電体542a、および導電体542bとの間に配置される。
絶縁体511、および絶縁体512は、層間膜として機能する。
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
例えば、絶縁体511は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
トランジスタ510Aにおいて、導電体560は、ゲート電極として機能する場合がある。
絶縁体514、および絶縁体516は、絶縁体511または絶縁体512と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体514は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ510Aの周辺部からトランジスタ510Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
例えば、絶縁体522は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体522を得ることができる。
チャネル形成領域として機能する領域を有する酸化物530は、酸化物530aと、酸化物530a上の酸化物530bと、酸化物530b上の酸化物530cと、を有する。酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。酸化物530として、上述した金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
なお、酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して設けられることが好ましい。絶縁体574がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
導電体542は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
導電体542aと、導電体542bとは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
また、図7では単層構造を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
また、導電体542上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、または水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体574を成膜する際に、導電体542が酸化することを抑制することができる。
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
バリア層を有することで、導電体542の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体542に、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、酸化物530c、および絶縁体574を介して設けられることが好ましい。
トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体550は、積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
ゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一つまたは、すべての拡散を抑制する機能とする。
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560は、配線として機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
絶縁体580と、トランジスタ510Aとの間に絶縁体574を配置する。絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584は、層間膜として機能する。
絶縁体582は、絶縁体514と同様に、水または水素などの不純物が、外部からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
また、絶縁体580、および絶縁体584は、絶縁体516と同様に、絶縁体582よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
また、トランジスタ510Aは、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584に埋め込まれた導電体546などのプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
また、導電体546の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
例えば、導電体546としては、例えば、水素、および酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
上記構造を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、ソースとドレインとの間の耐圧が高い酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
<トランジスタの構造例2>
図8(A)、(B)および(C)を用いてトランジスタ510Bの構造例を説明する。図8(A)はトランジスタ510Bの上面図である。図8(B)は、図8(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図8(C)は、図8(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図8(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ510Bはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
トランジスタ510Bは、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
ゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
また、導電体560の上面および側面、絶縁体550の側面、および酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体574を設けることが好ましい。なお、絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
絶縁体574を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ510Bへ拡散することを抑制することができる。
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
また、バリア性を有する絶縁体576を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
<トランジスタの構造例3>
図9(A)、(B)および(C)を用いてトランジスタ510Cの構造例を説明する。図9(A)はトランジスタ510Cの上面図である。図9(B)は、図9(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図9(C)は、図9(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図9(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ510Cはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
図9に示すトランジスタ510Cは、導電体542aと酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面および導電体560側の側面を越えて延在し、酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547は、導電体542に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547の膜厚は、少なくとも導電体542より厚いことが好ましい。
図9に示すトランジスタ510Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ510Aよりも、導電体542を導電体560に近づけることができる。または、導電体542aの端部および導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ510Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流および周波数特性の向上を図ることができる。
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体546a(導電体546b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
また、図9に示すトランジスタ510Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成にしてもよい。絶縁体544としては、水または水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ510Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
<トランジスタの構造例4>
図10(A)、(B)および(C)を用いてトランジスタ510Dの構造例を説明する。図10(A)はトランジスタ510Dの上面図である。図10(B)は、図10(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図10(C)は、図10(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図10(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ510Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
図10(A)乃至(C)では、酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
なお、金属酸化物552は、ゲート電極の一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電層とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
トランジスタ510Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
金属酸化物552を有することで、ゲート電極として機能する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ510Dのオン電流の向上を図ることができる。または、ゲート絶縁膜として機能する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、および金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と酸化物530との間の物理的な距離、および導電体560から酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
具体的には、金属酸化物552として、酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁層である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱履歴において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
絶縁体570は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水または水素などの不純物が、導電体560および絶縁体550を介して、酸化物530に混入することを抑制することができる。
絶縁体571はハードマスクとして機能する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
なお、絶縁体571に、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
また、トランジスタ510Dは、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
領域531aおよび領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて、露出した酸化物530b表面にリンまたはボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
また、酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物530bに拡散させて領域531aおよび領域531bを形成することもできる。
酸化物530bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531aおよび領域531bを「不純物領域」または「低抵抗領域」という場合がある。
絶縁体571および/または導電体560をマスクとして用いることで、領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531aおよび/または領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531aまたは領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
また、トランジスタ510Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
また、トランジスタ510Dは、絶縁体575、酸化物530上に絶縁体574を有する。絶縁体574は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水または水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体574として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体574が酸化物530および絶縁体575から水素および水を吸収することで、酸化物530および絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
<トランジスタの構造例5>
図11(A)乃至図11(C)を用いてトランジスタ510Eの構造例を説明する。図11(A)はトランジスタ510Eの上面図である。図11(B)は、図11(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図11(C)は、図11(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図11(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ510Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
図11(A)乃至図11(C)では、導電体542を設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物530bと、絶縁体574の間に、絶縁体573を有する。
図11に示す、領域531(領域531a、および領域531b)は、酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
具体的には、酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記酸化物530bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
なお、酸化物530を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
特に、ホウ素、及びリンは、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
続いて、酸化物530b、およびダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531と、酸化物530cおよび絶縁体550とが重畳する領域を設けることができる。
具体的には、絶縁体574となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体574、および絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、酸化物530bに設けられた領域531の一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理などにより、酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜の一部を除去することで、図11に示すトランジスタを形成することができる。
なお、絶縁体573、および絶縁体574は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
図11に示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体542を設けないため、コストの低減を図ることができる。
<トランジスタの構造例6>
また、図5及び図6では、ゲートとしての機能を機能する導電体560が、絶縁体580の開口の内部に形成されている構造例について説明したが、例えば、当該導電体の上方に、当該絶縁体が設けられた構造を用いることもできる。このようなトランジスタの構造例を、図12、図13に示す。
図12(A)はトランジスタの上面図であり、図12(B)はトランジスタの斜視図である。また、図12(A)におけるX1-X2の断面図を図13(A)に示し、Y1-Y2の断面図を図13(B)に示す。
図12、図13に示すトランジスタは、酸化物半導体Sと、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体FGIと、フロントゲートとしての機能を有する導電体FGEと、配線としての機能を有する導電体WEと、を有する。また、導電体PEは、導電体WEと、酸化物S、又は導電体FGEと、を接続するためのプラグとしての機能を有する。なお、ここでは、酸化物半導体Sが、3層の酸化物S1、S2、S3によって構成されている例を示している。
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物の構成について説明する。
<金属酸化物の構成>
本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
トランジスタの半導体に用いる酸化物半導体として、結晶性の高い薄膜を用いることが好ましい。該薄膜を用いることで、トランジスタの安定性または信頼性を向上させることができる。該薄膜として、例えば、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜が挙げられる。しかしながら、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜を基板上に形成するには、高温またはレーザー加熱の工程が必要とされる。よって、製造工程のコストが増加し、さらに、スループットも低下してしまう。
2009年に、CAAC構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(CAAC-IGZOと呼ぶ)が発見されたことが、非特許文献1および非特許文献2で報告されている。ここでは、CAAC-IGZOは、c軸配向性を有する、結晶粒界が明確に確認されない、低温で基板上に形成可能である、ことが報告されている。さらに、CAAC-IGZOを用いたトランジスタは、優れた電気特性および信頼性を有することが報告されている。
また、2013年には、nc構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(nc-IGZOと呼ぶ)が発見された(非特許文献3参照)。ここでは、nc-IGZOは、微小な領域(例えば、1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有し、異なる該領域間で結晶方位に規則性が見られないことが報告されている。
非特許文献4および非特許文献5では、上記のCAAC-IGZO、nc-IGZO、および結晶性の低いIGZOのそれぞれの薄膜に対する電子線の照射による平均結晶サイズの推移が示されている。結晶性の低いIGZOの薄膜において、電子線が照射される前でさえ、1nm程度の結晶性IGZOが観察されている。よって、ここでは、IGZOにおいて、完全な非晶質構造(completely amorphous structure)の存在を確認できなかった、と報告されている。さらに、結晶性の低いIGZOの薄膜と比べて、CAAC-IGZOの薄膜およびnc-IGZOの薄膜は電子線照射に対する安定性が高いことが示されている。よって、トランジスタの半導体として、CAAC-IGZOの薄膜またはnc-IGZOの薄膜を用いることが好ましい。
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一形態の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
また、上記酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さい、具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流がyA/μm(10-24A/μm)オーダである、ことが非特許文献6に示されている。例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている(非特許文献7参照)。
また、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置への応用が報告されている(非特許文献8参照)。表示装置では、表示される画像が1秒間に数十回切り換っている。1秒間あたりの画像の切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚が困難である高速の画面の切り換えが、目の疲労の原因として考えられている。そこで、表示装置のリフレッシュレートを低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。また、リフレッシュレートを低下させた駆動により、表示装置の消費電力を低減することが可能である。このような駆動方法を、アイドリング・ストップ(IDS)駆動と呼ぶ。
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10-9/cm3以上とすればよい。
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
CAAC構造およびnc構造の発見は、CAAC構造またはnc構造を有する酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性および信頼性の向上、ならびに、製造工程のコスト低下およびスループットの向上に貢献している。また、該トランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置およびLSIへの応用研究が進められている。
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置110を、記憶装置(メモリともいう)に用いた例について説明する。
<メモリの構成例>
図14は、メモリ200の構成例を示すブロック図である。メモリ200は、周辺回路211、およびメモリセルアレイ270を有する。周辺回路211は、ローデコーダ221、ワード線ドライバ回路222、ビット線ドライバ回路230、出力回路240、および、コントロールロジック回路260を有する。なお、本明細書等で説明する図面においては、主な信号の流れを矢印または線で示しており、電源線等は省略する場合がある。
ビット線ドライバ回路230は、カラムデコーダ231、プリチャージ回路232、センスアンプ233、および、入出力回路234を有する。プリチャージ回路232は、配線BLをプリチャージする機能を有する。センスアンプ233は、配線BLから読み出されたデータ信号を増幅する機能を有し、入出力回路234は、配線BLにデータ信号を書き込む機能、および配線BLから読み出したデータ信号を出力回路240へ出力する機能を有する。
配線BLおよび配線WLは、メモリセルアレイ270が有するメモリセル271に接続されている配線であり、詳しくは後述する。増幅されたデータ信号は、出力回路240を介して、デジタルのデータ信号RDATAとしてメモリ200の外部に出力される。
メモリ200には、外部から電源として、低電源電位VSS、周辺回路211用の高電源電位VDDが供給される。ここで、高電源電位VDDは、低電源電位VSSよりも高い電位である。
メモリ200には、制御信号(CE、WE、RE)、アドレス信号ADDR、データ信号WDATAが外部から入力される。アドレス信号ADDRは、ローデコーダ221およびカラムデコーダ231に入力され、WDATAは入出力回路234に入力される。
コントロールロジック回路260は、外部からの入力信号(CE、WE、RE)を処理して、ローデコーダ221、カラムデコーダ231の制御信号を生成する。CEはチップイネーブル信号であり、WEは書き込みイネーブル信号であり、REは読み出しイネーブル信号である。コントロールロジック回路260が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて他の制御信号を入力してもよい。
なお、メモリ200において、上述の各回路、各信号および各電位は、必要に応じて適宜取捨することができる。あるいは、他の回路、他の信号または他の電位を追加してもよい。
ここで、メモリセル271を構成するトランジスタに、OSトランジスタを適用することができる。OSトランジスタはオフ電流が非常に小さいため、メモリセル271に書き込んだデータを長時間保持することができる。そのため、メモリセル271のリフレッシュ頻度を少なくすることができ、メモリ200を消費電力の少ないメモリとすることができる。
また、OSトランジスタは、薄膜トランジスタであり、半導体基板上に積層して設けることができる。例えば、周辺回路211を構成するトランジスタに、単結晶シリコン基板に形成されたSiトランジスタを適用することができる。Siトランジスタを適用した周辺回路211は、高速な動作が可能である。そして、OSトランジスタを適用したメモリセル271は、周辺回路211の上方に積層して設けることができる。
図15(A)に、メモリセルアレイ270の詳細を記載する。メモリセルアレイ270は、一列にm(mは1以上の整数)個、一行にn(nは1以上の整数)個、計m×n個のメモリセル271を有し、メモリセル271は行列状に配置されている。図15(A)では、メモリセル271のアドレスも表記しており、[1,1]、[m,1]、[i,j]、[1,n]、[m,n](iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、メモリセル271のアドレスである。
また、個々のメモリセル271は、配線BLおよび配線WLと接続されている。メモリセルアレイ270は、n本の配線BL(BL(1)乃至BL(n))、および、m本の配線WL(WL(1)乃至WL(m))を有する。図15(A)に示すように、アドレスが[i,j]のメモリセル271は、配線WL(i)を介してワード線ドライバ回路222と電気的に接続され、配線BL(j)を介してビット線ドライバ回路230と電気的に接続される。
<メモリセルの構成例>
図15(B)は、メモリセル271の構成例を示す回路図である。
メモリセル271は、トランジスタM11と、容量素子CAとを有する。トランジスタM11のソースまたはドレインの一方は、容量素子CAの第1端子と電気的に接続され、トランジスタM11のソースまたはドレインの他方は、配線BLと接続され、トランジスタM11のゲートは、配線WLと接続されている。また、容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
配線BLは、ビット線として機能し、配線WLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。
トランジスタM11は、容量素子CAの第1端子と配線BLとを、導通または非導通とするスイッチとしての機能を有する。データの書き込みまたは読み出しは、配線WLにハイレベルの電位を印加し、容量素子CAの第1端子と配線BLとを、導通状態とすることによって行われる。つまり、メモリセル271は、容量素子CAに電荷を蓄積することでデータを保持するメモリであり、メモリセル271に保持されるデータは、配線BLおよびトランジスタM11を介して、書き込みまたは読み出しが行われる。
なお、トランジスタM11には、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)を用いることができる。OSトランジスタはオフ電流が非常に小さいため、トランジスタM11にOSトランジスタを用いることで、メモリセル271に書き込んだデータを長時間保持することができる。そのため、メモリセル271のリフレッシュ頻度を少なくすることができ、メモリ200を消費電力の少ないメモリとすることができる。または、トランジスタM11にOSトランジスタを用いることで、メモリセル271に多値データまたはアナログデータを保持することができる。
また、メモリセル271の構成例はこれに限定されず、回路の構成を適宜変更することができる。
<ワード線ドライバ回路の構成例>
図16(A)は、ワード線ドライバ回路222の構成例を示すブロック図である。
ワード線ドライバ回路222は、ワード線として機能する配線WLを駆動する機能を有する。ワード線ドライバ回路222は、ローデコーダ221より、配線WLを駆動するための、信号WIが入力される。ここで、信号WIは、ハイレベルまたはローレベルで表されるデジタル信号である。
なお、配線WLはm本あるため、信号WIの数もmである。図16(A)では、WI(1)乃至WI(m)と表す。
そして、ローデコーダ221には、低電源電位VSSと高電源電位VDDが供給されており、信号WIのハイレベルに対応する電位は高電源電位VDDであり、信号WIのローレベルに対応する電位は低電源電位VSSである。
一方、メモリセルアレイ270において、配線WLのハイレベルに対応する電位としては、メモリセル271が有するトランジスタM11を導通状態とするため、高電源電位VDDより高い電位が必要である。トランジスタM11を導通状態とするためには、少なくとも、高電源電位VDDに、トランジスタM11のしきい値電圧Vthを足した電位が必要である。
そのため、ワード線ドライバ回路222は、入力された信号のハイレベルに対応する電位を変更するため、上記実施の形態で説明した半導体装置110を有する。ワード線ドライバ回路222は、半導体装置110をm個有し、図16(A)では、m個の半導体装置110を、回路LV(1)乃至回路LV(m)と表す。また、ワード線ドライバ回路222が出力する信号のハイレベルに対応する電位を、高電源電位VIHとする。
<ワード線ドライバ回路の入出力例>
図16(B)に、ワード線ドライバ回路222の入出力の一例を示す。
図16(B)は、ワード線ドライバ回路222に入力される信号WIと、ワード線ドライバ回路222が駆動する配線WLの電位について示している。信号WI、および配線WLは、それぞれmあるため、そのうちの一つ(信号WI(i)、および配線WL(i))を例にして説明する。
図16(B)の縦軸は電位を示し、横軸は時刻を示している。時刻T1において、信号WI(i)が低電源電位VSSから高電源電位VDDに変化すると、ほぼ同じ時刻T1に、ワード線ドライバ回路222は、配線WL(i)の電位を、低電源電位VSSから高電源電位VIHに変化させる。また、時刻T2において、信号WI(i)が高電源電位VDDから低電源電位VSSに変化すると、ほぼ同じ時刻T2に、ワード線ドライバ回路222は、配線WL(i)の電位を、高電源電位VIHから低電源電位VSSに変化させる。
なお、実際には、入力される信号WI(i)の電位が変化してから、配線WL(i)の電位が変更されるまでには遅延時間があり、また、信号になまりや、ノイズ等を有する場合がある。図16(B)は、理想的な場合の波形を示している。
上記実施の形態で説明したように、高電源電位VIHは、容量素子42の容量と、容量素子41の容量、および、ノードN11が有する寄生容量等、との比によって、高電源電位VDDから押し上げられる。そのため、高電源電位VIHを、高電源電位VDDより高い電位とすることができる。
このように、信号WI(i)は、配線WL(i)と電気的に接続されたメモリセル271に対して、データの書き込みまたは読み出しを行う場合にハイレベルとなり、ワード線ドライバ回路222は、信号WI(i)のハイレベルに対応する電位を変更して、配線WL(i)を駆動する。
<メモリの斜視外略図>
メモリセル271を構成するトランジスタにOSトランジスタを適用した場合、メモリセル271は、半導体基板上に積層して設けることができる。メモリセル271を半導体基板上に積層して設けた場合の斜視外略図を図17に示す。図17は、メモリ200の構成例を示す斜視外略図である。
図17において、周辺回路210は、半導体基板201に形成したトランジスタを用いて構成される。半導体基板201の上方には、層202が積層され、層202にはOSトランジスタが形成される。メモリセル271は、層202に設けられる。
この場合、ワード線ドライバ回路222を、半導体基板201に形成したトランジスタ、および、層202に形成したOSトランジスタ、を用いて構成することができる。図17では、半導体基板201、層202の双方が有するトランジスタを用いて、ワード線ドライバ回路222が設けられている様子を示している。
半導体基板201の上方に、OSトランジスタが形成された層202を積層して設けることで、メモリ200のチップ面積を削減することができる。半導体基板201に高耐圧トランジスタを作り分ける必要がなく、半導体基板201の製造プロセスを簡略化することができる。メモリ200に供給する電源電位の数を少なくすることができる。また、メモリセル271に書き込んだデータを長時間保持することができる。
<電子機器>
本実施の形態で説明したメモリ200を用いることができる、電子機器の一例について説明する。
本実施の形態で説明したメモリ200は、様々な電子機器に用いることができる。特に、メモリ200は、電子機器に内蔵されるメモリとして用いることができる。以下、メモリ200を用いることができる電子機器として、情報端末、ゲーム機、電化製品、移動体、並列計算機、サーバを含むシステム等を例に挙げ、説明する。
例えば、メモリ200を用いることができる電子機器として、情報端末5500を、図18(A)に図示する。情報端末5500は、携帯電話(スマートフォン)である。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511とを有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
例えば、メモリ200を用いることができる電子機器として、デスクトップ型情報端末5300を、図18(B)に図示する。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303とを有する。
図18(A)および図18(B)では、スマートフォンおよびデスクトップ型情報端末を例として図示したが、それ以外の情報端末として、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどに、メモリ200を用いてもよい。
例えば、メモリ200を用いることができる電子機器として、携帯ゲーム機5200を、図18(C)に図示する。携帯ゲーム機5200は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
図18(C)では、携帯ゲーム機を例として図示したが、それ以外のゲーム機として、例えば、家庭用の据え置き型ゲーム機、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどに、メモリ200を用いてもよい。
例えば、メモリ200を用いることができる電子機器として、電気冷凍冷蔵庫5800を、図18(D)に図示する。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
図18(D)では、電気冷凍冷蔵庫を例として図示したが、それ以外の電化製品として、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどに、メモリ200を用いてもよい。
例えば、メモリ200を用いることができる電子機器として、自動車5700を、図18(E1)に図示する。また、図18(E2)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。図18(E2)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目やレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることができる。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることもできる。
表示パネル5704には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない)からの画像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する画像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
図18(E1)および図18(E2)では、自動車および自動車のフロントガラス周辺に取り付けられた表示パネルを例として図示したが、それ以外の移動体として、例えば、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)などに、メモリ200を用いてもよい。
例えば、メモリ200を用いることができる電子機器として、情報端末7000を、図19(A)および図19(B)に図示する。情報端末7000は、筐体7010、モニタ部7012、キーボード7013、ポート7015等を有する。
キーボード7013およびポート7015は、筐体7010に設けられている。また、ポート7015として、例えば、USBポート、LANポート、HDMI(High-Definition Multimedia Interface;HDMIは登録商標)ポート等を有している。
筐体7010に取り付けられているモニタ部7012は、開閉可能である。図19(A)に、モニタ部7012が開いている状態を図示し、図19(B)に、モニタ部7012が閉じている状態を図示する。例えば、モニタ部7012が開く最大の角度は135°程度である(図19(A)参照)。
筐体7010には、開閉可能なカバー7011が設けられている(図19(B)参照)。筐体7010の内部には、メモリ200が組み込まれており、メモリ200は着脱可能である。筐体7010の内部に、メモリ200を冷却する装置、または放熱する装置を設けてもよい。カバー7011を開けて、メモリ200を着脱できるため、情報端末7000の拡張性は高い。情報端末7000に複数のメモリ200を組み込むことで、高度なグラフィック処理、科学技術計算、人工知能の演算等を行うことができる。
例えば、メモリ200を用いることができる電子機器として、大型の並列計算機5400を、図20(A)に図示する。並列計算機5400は、ラック5410内に、ラックマウント型の計算機5420を複数有している。
図20(B)は、計算機5420の構成例を示す斜視概略図である。計算機5420は、マザーボード5430を有し、マザーボードは、複数のスロット5431を有する。スロット5431には、PCカード5421が挿されている。PCカード5421は、接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425を有し、それぞれ、マザーボード5430に接続されている。
図20(C)は、PCカード5421の構成例を示す斜視概略図である。PCカード5421は、ボード5422を有し、ボード5422上に、接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425、チップ5426、チップ5427等を有する。
チップ5426、チップ5427等として、メモリ200、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が搭載されている。チップ5426、チップ5427等は、信号の入出力を行う複数の端子(図示しない)を有しており、当該端子をPCカード5421が備えるソケット(図示しない)に差し込むことで、PCカード5421との電気的な接続を行ってもよいし、当該端子をPCカード5421が備える配線に、例えば、リフロー方式のはんだ付けを行うことで、電気的な接続を行ってもよい。
接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425は、例えば、PCカード5421に対する電力供給、信号入出力などを行うためのインターフェースとすることができる。接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425の規格として、例えば、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial ATA)、SCSI(Small Computer System Interface)、また映像信号を出力する場合はHDMI(登録商標)等が挙げられる。
また、PCカード5421は、ボード5422上に、接続端子5428を有する。接続端子5428は、マザーボード5430のスロット5431に挿すことができる形状であり、接続端子5428は、PCカード5421とマザーボード5430とを接続するためのインターフェースとして機能する。接続端子5428の規格として、例えば、PCI Express(PCIeともいう;PCI ExpressおよびPCIeは、登録商標)が挙げられる。
並列計算機5400は、例えば、大規模な科学技術計算、人工知能の学習および推論に必要な大規模な演算を行うことができる。
例えば、メモリ200を用いることができる電子機器として、サーバ5100を含むシステムを、図21(A)に図示する。図21(A)は、サーバ5100と、情報端末5500およびデスクトップ型情報端末5300との間で、通信5110を行う様子を模式的に示している。
ユーザは、情報端末5500、デスクトップ型情報端末5300等から、サーバ5100にアクセスすることができる。そして、インターネットを介した通信5110によって、ユーザは、サーバ5100の管理者が提供するサービスを受けることができる。当該サービスとして、例えば、電子メール、SNS(Social Networking Service)、オンラインソフトウェア、クラウドストレージ、ナビゲーションシステム、翻訳システム、インターネットゲーム、オンラインショッピング、株・為替・債権などの金融取引、公共施設・商業施設・宿泊施設・病院などの予約システム、インターネット番組・講演・講義などの視聴等が挙げられる。
また、科学技術計算、人工知能の学習および推論に必要な演算等、ユーザの手元にある情報端末5500またはデスクトップ型情報端末5300では処理能力が足りない場合、ユーザは、通信5110によってサーバ5100にアクセスし、サーバ5100上で当該計算または演算を行うことができる。
例えば、サーバ5100上で提供されるサービスにおいて、人工知能を利用することができる。例えば、ナビゲーションシステムに人工知能を導入することで、当該システムは、道路の混雑状況、電車の運行情報などに応じて臨機応変に案内できる場合がある。例えば、翻訳システムに人工知能を導入することで、当該システムは、方言・スラングなど独特の言い回しを適切に翻訳できる場合がある。例えば、病院などの予約システムに人工知能を利用することで、当該システムは、ユーザの症状・怪我の度合いなどを判断し、適切な病院・診察所等を紹介できる場合がある。
図21(A)では、サーバ5100と、情報端末5500およびデスクトップ型情報端末5300との間で、通信5110を行う様子を示しているが、サーバ5100と、情報端末以外の電子機器との間で、通信5110を行ってもよい。例えば、電子機器をインターネットに接続したIoT(Internet of Things)の形態であってもよい。
図21(B)は、一例として、サーバ5100と、電子機器(電気冷凍冷蔵庫5800、携帯ゲーム機5200、自動車5700、テレビジョン装置5600)との間で、通信5110を行う様子を模式的に示している。
図21(B)において、それぞれの電子機器は人工知能を利用してもよい。人工知能の学習および推論に必要な演算等を、サーバ5100上で行うことができる。例えば、演算に必要なデータが、通信5110によって、電子機器の一つからサーバ5100に送信され、サーバ5100上で人工知能の演算が行われ、出力データが、通信5110によって、サーバ5100から電子機器の一つに送信される。これにより、当該電子機器は、人工知能の演算によって出力されたデータを利用することができる。
なお、図21(B)に示す電子機器は一例であり、サーバ5100と、図21(B)に示されていない電子機器との間で、通信5110を行ってもよい。
上述のように、本実施の形態で説明したメモリ200は、様々な電子機器に用いることができる。メモリ200は、少ない電源数で動作させることができ、メモリ200を用いた電子機器のコストを低減することができる。また、メモリ200は、チップ面積が小さく、電子機器を小型化することができる。もしくは、より多くのメモリ200を、電子機器に搭載することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。