JP2020030994A - リチウムイオン二次電池用の正極集電体及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用の正極集電体及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】柔軟性が良好であり、クラック等の欠陥を生じ難いリチウムイオン二次電池用の正極集電体、及び、それを備えるリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】リチウムイオン二次電池用の正極集電体は、厚さが15μm以下のアルミニウム製の箔であり、昇温脱離法によって室温から200℃までに検出される水素ガスの総量が、室温から500℃までに検出される水素ガスの総量に対して50%以上である。リチウムイオン二次電池1は、正極2と負極3がセパレータ4を介して対面させてなるリチウムイオン二次電池であって、正極2は、リチウムイオン二次電池用の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極合剤層と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用の正極集電体及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、正負極間を隔てるセパレータ、キャリアの伝導媒体として機能する電解液等で反応系が構成されている。正極は、導電性の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合剤層とを備えている。正極は、一般に、正極活物質、結着剤等を溶媒中で混練して正極合剤とし、正極合剤を正極集電体の表面に塗工し、乾燥させた後、プレス成形で密度を調整することによって形成されている。
リチウムイオン二次電池は、電子機器、車両等の駆動用電源や蓄電用電源をはじめ種々の目的で利用されており、更なる高エネルギ密度化や小型化・軽量化が望まれている。リチウムイオン二次電池の分野では、これらの要求に応えるために、活物質、セパレータ等の開発だけでなく、集電体の改良も進められている。
例えば、特許文献1には、集電体として用いられるアルミニウム多孔質焼結体が記載されている。アルミニウム多孔質焼結体は、三次元網目構造の開気孔が形成されており、活物質等の密着性や保持性に優れるとされている。また、圧延により、高出力密度化や高エネルギ密度化が可能であるとされている(段落0014等参照)。圧延後の好ましい厚さは、0.03〜3mmとされている(段落0075参照)。
また、特許文献2には、導電性金属を主体とする基材と、基材の表面を被覆する膜厚10nm以下のダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜とを備える電極集電体が記載されている。アルミニウム製の集電体は、大気に晒されると、表面に絶縁性の酸化膜が形成され易いが、薄いDLC膜によると、導電性を確保しつつ基材を保護することが可能であり、優れた集電性能が得られるとされている。
従来、リチウムイオン二次電池用の正極集電体としては、主にアルミニウム製の圧延箔が用いられてきた。圧延加工による場合、厚さが15μm以下のアルミニウム箔を製造することは、工業生産上の理由で困難である。そのため、アルミニウム箔である正極集電体の従来品は、厚さが15〜20μm程度あり、銅箔が主流である負極集電体と比較して、薄膜化の余地が大きい状況にある。
そこで、近年、アルミニウム箔の製造に電解還元析出法(電解法)を用いる技術の開発が進められている。電解法では、溶液中のアルミニウムイオンがカソード表面に還元析出し、薄膜状に成長してアルミニウム箔が形成される。電解法によると、電気めっきの原理で成膜が行われるため、厚さが15μm以下のアルミニウム箔の工業生産を行うことができる。現在までに、電解法における電解処理の条件の検討や、成膜されるアルミニウム箔の特性解析等が進められている。
例えば、特許文献3には、電解法によって製造されるアルミニウム箔に優れた可撓性を具備させるための技術が開示されている。また、非特許文献1には、電解法によって製造されたアルミニウム箔について、物性、組成、結晶構造、電気化学的特性等を解析・評価したことが開示されている。
特許第5578307号公報 特許第5207026号公報 特開2015−155564号公報
岡本篤志、他4名、「電解アルミニウム箔のリチウムイオン電池正極集電体への適用」、Electrochemistry、公益社団法人電気化学会、2013年11月5日、第81巻、第11号、p.906−911
一般に、リチウムイオン二次電池の正極は、正極集電体上に正極合剤層が形成された後、打ち抜き加工等を施され、捲回されて電池容器に収容されている。正極集電体として用いられるアルミニウム箔は、正極合剤の塗工時、正極合剤層のプレス成形時、打ち抜き加工時、捲回時等に、折り曲げられる等して、クラックを生じることがある。また、破断したり、圧縮力等で粉々に破砕したりすることがある。
これらの破壊現象は、電解法によって製造されるアルミニウム箔(以下、「電解アルミニウム箔」ということがある。)においても発生が認められており、正極集電体の薄膜化を進めるにあたって障害となっている。特許文献2に記載されているDLC膜や、特許文献3に記載されている弾性率条件は、アルミニウム箔に内在している破壊現象の原因因子を直接解消するものではないと考えられる。
非特許文献1に開示されているように、電解アルミニウム箔は、従来の圧延箔とは異なる組織・組成・特性を有している。薄膜化した正極集電体について、集電性能や正極活物質等の支持性能、耐久性や取り扱い性等を確保するために、クラック、割れ、破砕等の欠陥を防止する対策が求められている。
そこで、本発明は、柔軟性が良好であり、クラック等の欠陥を生じ難いリチウムイオン二次電池用の正極集電体、及び、それを備えるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係るリチウムイオン二次電池用の正極集電体は、厚さが15μm以下のアルミニウム製の箔であり、昇温脱離法によって室温から200℃までに検出される水素ガスの総量が、室温から500℃までに検出される水素ガスの総量に対して50%以上である。
また、本発明に係るリチウムイオン二次電池は、正極と負極がセパレータを介して対面させてなるリチウムイオン二次電池であって、前記正極は、前記のリチウムイオン二次電池用の正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極合剤層と、を備える。
本発明によると、柔軟性が良好であり、クラック等の欠陥を生じ難いリチウムイオン二次電池用の正極集電体、及び、それを備えるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオン二次電池の一例を模式的に示す部分断面図である。 電解アルミニウム箔の温度と脱離した水素ガスの累積量との関係を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用の正極集電体、及び、それを備えるリチウムイオン二次電池について詳細に説明する。
<正極集電体>
本実施形態に係る正極集電体は、リチウムイオン二次電池の正極に用いられる。正極集電体の片面又は両面には、正極活物質、結着剤、導電材等を含む正極合剤によって正極合剤層が形成される。正極集電体は、正極活物質等を支持すると共に、正極活物質から電気を取り出すための電池部品として機能する。
本実施形態に係る正極集電体は、アルミニウム製の金属箔であり、平均厚さが15μm以下とされる。この正極集電体は、電解法によって製造される電解アルミニウム箔であり、圧延加工によって製造される一般的な圧延箔よりも薄膜化された集電体である。この正極集電体は、折り曲げられたとき、曲げ変形や曲げ戻し変形を加えられたとき、その他の外力が加えられたとき等に生じるクラック等の欠陥を、不純物である水素の低減によって防止するものである。
本実施形態に係る正極集電体は、平均厚さが、少なくとも15μm以下、好ましくは14μm以下、より好ましくは13μm以下、更に好ましくは12μm以下である。また、平均厚さが、1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上である。このような厚さは、例えば、電解法による製造時に、電解処理の電流密度、電解処理の時間等を適切に調整することによって得ることができる。
本実施形態に係る正極集電体は、アルミニウムの純度が、好ましくは97.0%以上、より好ましくは98.0%以上、更に好ましくは99.0%以上、特に好ましくは99.5%以上である。アルミニウムの純度が高いほど、高い電気伝導率や延性が得られる。このような純度は、例えば、電解法による製造時に用いるめっき液の金属純度、電極の金属純度等を高くすることによって得ることができる。
本実施形態に係る正極集電体は、金属組織中の水素量が低減されていることを特徴の一つとするものである。具体的には、昇温脱離法によって室温から200℃までに検出される水素ガスの総量が、室温から500℃までに検出される水素ガスの総量に対して50%(質量%)以上とされる。また、昇温脱離法によって室温から500℃までに検出される水素ガスの総量が、正極集電体あたりの質量濃度で、250ppm以下とされる。
昇温脱離法(Thermal desorption spectroscopy:TDS)は、真空雰囲気において、試料を一定の昇温速度で加熱し、試料から脱離するガスを定量する分析法である。昇温脱離法によると、測定試料から脱離する成分の脱離速度(単位面積・単位時間あたりに脱離する分子数)を、脱離速度と分圧との比例関係や、脱離した成分をイオン化して検出する質量分析法によって定量することができる。そのため、測定対象の成分について、温度毎の脱離量のスペクトルや、ある温度までの全脱離量(累積量)を求めることができる。
昇温脱離法による正極集電体の分析では、電解アルミニウム箔である正極集電体を測定試料とし、測定試料から脱離する水素ガス、すなわち水素分子の脱離量を定量する。原則として、測定試料の加熱方式は、赤外線式を用い、測定試料の昇温速度は、1℃/分とする。測定試料は、電解法による製造後に直ちに分析するが、水酸化ナトリウム溶液、硝酸、水、アルコール、アセトン等で洗浄し、乾燥させてから分析に供してもよい。
昇温脱離法による正極集電体の分析では、室温から500℃までに検出される水素ガスを、正極集電体に混入している全水素に由来する、と見做すことができる。室温から500℃までにおいては、アルミニウムが溶融せず、水素化物をはじめとする水素化合物の熱分解も略生じない。しかし、水素原子、水素分子、水素イオン等の水素種は、正極集電体の表面に吸着した状態、金属組織中の結晶粒に取り込まれた状態、金属組織中の粒界に濃化した状態のいずれであっても、室温から500℃までに略全量が脱離する。よって、室温から500℃までに脱離する水素ガスの総量を定量すると、正極集電体に混入している全水素量が実質的に求められる。
また、昇温脱離法による正極集電体の分析では、室温に近い低温域で検出される水素ガスを、正極集電体の表面に吸着した状態の水素種や、金属組織中の粒界に濃化した状態の水素種に由来する、と見做すことができる。金属組織中の結晶粒に取り込まれた状態の水素種は、室温に近い低温域では脱離し難く、より高温で脱離する傾向を示す。これに対し、正極集電体の表面に吸着した状態の水素種や、金属組織中の粒界に濃化した状態の水素種であれば、室温に近い低温域であっても容易に脱離する。よって、室温に近い低温域で脱離する水素ガスの総量を定量すると、全水素量あたりの割合から、金属組織に対する影響が大きい水素と、金属組織に対する影響が小さい水素との、凡その比率を求めることができる。
すなわち、正極集電体に含まれる水素量を、昇温脱離法を用いて定量した分析結果において、室温に近い低温度域で検出される水素ガスの総量が、室温から500℃までに検出される水素ガスの総量に対して高い比率であるほど、金属組織中の結晶粒に取り込まれた水素の割合が全水素量あたりで低いことを意味し、水素による金属組織に対する影響が発生し難い状態であることを意味するといえる。
鉄鋼の分野では、金属組織中に存在する水素が水素脆化を引き起こすことが知られている。鉄鋼中には、200℃前後よりも低温域で脱離を終える拡散性が高い水素と、200℃前後を超える高温域で脱離を始める水素とが存在するとの報告がなされている。
本実施形態に係る正極集電体では、後記する実施例で確認されているように、室温から200℃までに検出される水素ガスの総量が、全水素量に対して50%以上であると、電解アルミニウム箔の柔軟性が良好になり、曲げ変形及び曲げ戻し変形を加えられたとき、クラック等の欠陥を生じなくなる。180℃までに検出される水素量が全水素量に対して30%以上であることや、250℃までに検出される水素量が全水素量に対して70%以上であることが、同様に水素量の好ましい条件となる。
本実施形態に係る正極集電体は、昇温脱離法によって室温から500℃までに検出される水素ガスの総量が、少なくとも250ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは150ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。正極集電体に含まれる水素の絶対量が少ないほど、クラック等の欠陥が発生する可能性や、水素による機械的特性等に対する影響が小さくなる。このような水素量は、電解法による製造時に用いるめっき液の温度、めっき液の組成、電解処理の雰囲気等を適切に調整することによって得ることができる。
また、本実施形態に係る正極集電体は、不純物である硫黄(S)や塩素(Cl)の含有量が、好ましくは1.5質量%以下、通常、0.01質量%以上0.5質量%以下である。これらの不純物が少ないほど、良好な集電性能や、機械的特性等が得られる。このような不純物量は、電解法による製造時に電解処理の条件を適切に調整することによって得ることができる。
次に、本実施形態に係る正極集電体の製造方法について説明する。
本実施形態に係る正極集電体は、電解還元析出法(電解法)によって電解アルミニウム箔として製造される。電解法は、溶液中のアルミニウムイオンを電気化学的に還元して析出させる方法である。めっき液を入れた電解槽において、めっき液に浸漬させた陽極と陰極との間に直流電流を通電し、陰極上にアルミニウムを還元析出させて薄膜状に成長させた後、陰極上に形成された薄膜を剥離することによって、電解アルミニウム箔を得ることができる。
めっき液としては、ジアルキルスルホンと、アルミニウムハロゲン化物と、含窒素化合物とを含む非水系電解液を用いる。アルミニウムは、標準電極電位が水素よりも低い卑な金属である。そのため、溶液中のアルミニウムイオンを還元析出させるにあたって、水溶液を用いることはできない。これに対し、溶媒としてジアルキルスルホンを用いると、安全且つ電流効率良く、アルミニウムを還元析出させることができる。また、含窒素化合物を添加すると、めっき液の電気伝導率が高くなり、高い電流密度の通電が可能になるため、高純度で延性や柔軟性に優れた電解アルミニウム箔を速い成膜速度で得ることができる。
ジアルキルスルホンとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜6であるものを用いることができる。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよい。ジアルキルスルホンの具体例としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジヘキシルスルホン、メチルエチルスルホン等が挙げられる。ジアルキルスルホンとしては、電気伝導率の高さや、入手し易さの観点から、特に、ジメチルスルホンが好ましい。
アルミニウムハロゲン化物としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等を用いることができる。アルミニウムハロゲン化物としては、腐食の要因となる水分を排除する観点から、無水物を用いることが好ましい。
含窒素化合物としては、例えば、ハロゲン化アンモニウム、第一級アミンのハロゲン化水素塩、第二級アミンのハロゲン化水素塩、第三級アミンのハロゲン化水素塩、第四級アンモニウム塩、含窒素芳香族化合物等を用いることができる。これらの含窒素化合物は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
ハロゲン化アンモニウムとしては、例えば、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等を用いることができる。
アミンのハロゲン化水素塩としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜6である第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミンと、任意のハロゲン化水素との塩を用いることができる。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよい。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ヘキシルアミン、メチルエチルアミン等が挙げられる。また、ハロゲン化水素の具体例としては、塩化水素、臭化水素等が挙げられる。
第四級アンモニウム塩としては、例えば、一般式:RN・X[但し、式中、R〜Rは、それぞれ独立してアルキル基を表し、Xは、アンモニウムカチオンに対するカウンターアニオンを表す。]で表されるアンモニウム塩を用いることができる。R〜Rとしては、炭素数が1〜6である直鎖状又は分枝状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等が挙げられる。Xとしては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン化物イオンや、テトラフルオロホウ酸イオン(BF )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )等が挙げられる。第四級アンモニウム塩の具体例としては、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、四フッ化ホウ素テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
含窒素芳香族化合物としては、例えば、フェナントロリン、アニリン等を用いることができる。
めっき液に添加する含窒素化合物としては、高純度で延性や柔軟性に優れた電解アルミニウム箔を速い成膜速度で得る観点からは、第三級アミンのハロゲン化水素塩が好ましく、第三級アミンの塩酸塩がより好ましく、トリメチルアミン塩酸塩が特に好ましい。
めっき液は、ジアルキルスルホン10モルに対して、アルミニウムハロゲン化物の配合量が、1.5モル以上6.0モル以下であることが好ましく、2.0モル以上5.0モル以下であることがより好ましく、2.5モル以上4.0モル以下であることが更に好ましい。配合量が1.5モル未満であると、電子過剰によるアルミニウム錯イオンの不足や副生成物の生成が原因で「焼け」と呼ばれる現象を生じて、還元析出したアルミニウムが黒ずむ虞がある。また、成膜効率が低くなる虞がある。一方、配合量が6.0モルを超えると、めっき液の電気抵抗が高くなり、ジュール熱が原因でめっき液の成分が分解する虞がある。これに対し、配合量が前記の範囲であれば、高い成膜効率で安定に還元析出を進めることができる。また、塩化アンモニウムを用いる場合、めっき液の塩素濃度が低くなるため、塩化水素による腐食を避けることができる。
また、めっき液は、ジアルキルスルホン10モルに対して、含窒素化合物の配合量が、0.01モル以上4.0モル以下であることが好ましく、0.05モル以上1.5モル以下であることがより好ましい。配合量が0.01モル未満であると、含窒素化合物による効果が十分に得られない虞がある。一方、配合量が4.0モルを超えると、アルミニウムハロゲン化物に対して含窒素化合物が過剰なめっき液となるため、アルミニウムが還元析出し難くなる。これに対し、配合量が前記の範囲であれば、高純度の電解アルミニウム箔を速い成膜速度で得ることができる。
めっき液は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気の下で、ジアルキルスルホンと、アルミニウムハロゲン化物と、含窒素化合物と、を所定の配合量で混合し、これらを加温して溶解させることによって調製することができる。
電解用の陽極としては、例えば、純度が99.0%以上のアルミニウム板を用いることができる。また、電解用の陰極としては、例えば、平滑な析出面を有する金属板を用いることができる。電解用の陰極の材料としては、例えば、ステンレス、チタン、アルミニウム、ニッケル、銅等が挙げられる。電解用の陰極の材料としては、電極の作製時の加工が容易な点、緻密な酸化皮膜が形成され、電解アルミニウム箔の剥離が容易になる点で、チタンが特に好ましい。電解用の電極は、水分の混入に起因する水素の還元生成を防ぐ観点から、表面を研磨、洗浄した後に、十分に乾燥させてから用いることが好ましい。
電解用の陰極としては、回動可能なドラム型の電極を用いてもよい。電解槽において、陰極ドラムの外周面に対向するように電解用の陽極を配置し、陰極ドラムの外周面の一部と電解用の陽極とをめっき液に浸漬させた状態とし、電極間に直流電流を通電すると、陰極ドラムの外周面にアルミニウムが還元析出する。陰極ドラムを回動させながら、電極間への通電と、還元析出したアルミニウムの薄膜の剥離とを続けると、電解アルミニウム箔を連続的に製造することができる。
従来、アルミニウムを還元析出させる電解処理では、めっき液の温度が、60℃以上150℃以下、好ましくは80℃以上130℃以下となるように調整されている。めっき液の溶媒として用いられるジメチルスルホンの融点は、約110℃である。めっき液の温度が60℃以上であると、溶媒としてジメチルスルホンを含むものの、めっき液が固化し難くなるため、めっき液の流動性を確保することができる。また、めっき液の温度が150℃以下であると、還元析出したアルミニウムとめっき液とが反応し難くなるため、電解アルミニウム箔にC、S、Cl等の不純物が混入するのを防ぐことができる。従来のめっき液の温度は、このような範囲のうち、特に95℃付近に調整されることが多かった。
これに対し、本実施形態に係る正極集電体の製造においては、電解アルミニウム箔に混入する水素の量を低減する観点から、めっき液の温度を従来よりも低くすることが好ましい。具体的には、めっき液の温度は、60℃以上95℃未満とすることが好ましく、60℃以上90℃以下とすることがより好ましく、60℃以上85℃以下とすることが更に好ましく、60℃以上80℃以下とすることが特に好ましい。
また、電解処理において、電流密度は、0.25A/dm以上20A/dm以下とすることが好ましく、5A/dm以上17A/dm以下とすることがより好ましく、10A/dm以上15A/dm以下とすることが更に好ましい。電流密度が0.25A/dm未満であると、高い成膜速度が得られず、生産性が低くなる虞がある。一方、電流密度が20A/dmを超えると、含窒素化合物の分解等が起こるため、還元析出が適切に進まなくなる虞や、電解アルミニウム箔に不純物が混入し易くなる虞がある。これに対し、前記の範囲であれば、高い成膜速度で適切に還元析出を進めることができる。電解処理の時間は、通常、1分以上90分以下、好ましくは1分以上30分以下である。
また、電解処理において、めっき液や電解アルミニウム箔を取り扱う雰囲気の露点は、−40℃以下とすることが好ましく、−50℃以下とすることがより好ましい。露点が−40℃以下であると、水分が極めて少ない状態であり、陰極上で還元生成する水素量が少なくなるため、電解アルミニウム箔に取り込まれる水素量を低減することができる。また、めっき液のハロゲン化合物と反応する水分量が少なくなるため、腐食性のハロゲン化水素の生成や、ハロゲン化水素による腐食、皮膜の形成や、酸化物皮膜、水酸化物皮膜の形成による変色を抑制することができる。このような露点の雰囲気は、電解槽の雰囲気中に不活性ガスを供給することによって得ることができる。
電解処理によって還元析出させたアルミニウムは、めっき液を除去する観点から、水等の洗浄媒体で洗浄することが好ましい。また、陰極上から剥離して回収した電解アルミニウム箔は、洗浄媒体の乾燥や残留応力除去の目的や、電解アルミニウム箔に取り込まれる水素量を低減する観点から、熱処理することが好ましい。熱処理の温度は、80℃以上550℃以下とすることが好ましく、100℃以上450℃以下とすることがより好ましく、200℃以上350℃以下とすることが更に好ましい。また、熱処理の時間は、所要時間を短縮する観点から、2分以上120分以下とすることが好ましく、20分以上90分以下とすることがより好ましい。
以上の電解法によって製造される電解アルミニウム箔である正極集電体によると、圧延法によって製造される圧延箔とは異なり、厚さを15μm以下に安定且つ確実に薄膜化させることができる。そのため、正極集電体ないし正極の占有体積を縮小して、電池あたりのエネルギ密度を向上させることができる。また、昇温脱離法によって室温に近い低温度域で検出される水素ガスの総量が、室温から500℃までに検出される水素ガスの総量に対して高い比率になるため、不純物として混入している水素の多くが脱離し易い状態になる。そのため、水素の多くが金属組織中の結晶粒に取り込まれた状態である場合と比較して、混入している水素を、熱処理、放置等によって容易に排除することができる。すなわち、水素による金属組織に対する影響を容易に解消することができる。また、室温から500℃までに検出される水素ガスの総量が少なく、不純物として混入している水素の絶対量が少ないため、水素による金属組織に対する影響が小さい電解アルミニウム箔となる。よって、水素による機械的特性等への影響が小さく、柔軟性が良好であり、可撓性や靭性に優れ、クラック等の欠陥を生じ難いリチウムイオン二次電池用の正極集電体を提供することができる。
本実施形態に係る正極集電体は、電解法によって製造される電解アルミニウム箔であるため、圧延箔とは異なる金属組織・表面性状を有する。電解アルミニウム箔の金属組織・表面性状等については、非特許文献1や、研究論文(岡本篤志、他2名、「電析法によるアルミニウム箔の作製とその物性評価」、表面技術、一般社団法人表面技術協会、2012年、第63巻、第10号、p.641−645)等に報告されている。電解アルミニウム箔と圧延箔とは、結晶粒の配向や表面性状によって、互いに判別することができる。
具体的には、電解アルミニウム箔の金属組織は、電解法によって形成された、長軸が電解アルミニウム箔の厚さ方向に配向している柱状晶を主体としている。電解アルミニウム箔では、柱状晶が並列した金属組織となり、結晶粒の長軸が、厚さ方向に対して略平行方向に配向する。これに対し、圧延箔では、厚さ方向(圧延方向)に対して結晶粒が偏平化されるため、結晶粒の長軸が、厚さ方向に対して略垂直方向に配向した金属組織となる。
また、電解アルミニウム箔の表面は、アルミニウムが還元析出するめっき液側の面の表面粗さが大きくなると共に、無光沢の外観を呈する。通常、電解アルミニウム箔は、めっき液側の面が白色を呈し、表面粗さ(算術平均粗さRa)がめっき液側の面と反対側の面(析出面)とで大きく異なる。これに対し、圧延箔では、圧延面が鏡面化して光沢を呈する。通常、圧延箔は、表面粗さ(算術平均粗さRa)が両方の面で同様に小さくなる。
また、電解アルミニウム箔の結晶粒は、ミラー指数(111)面に優先的に配向している。電解アルミニウム箔では、CuKα1線によるX線回折測定において、(111)面、(200)面、(220)面、(311)面、及び、(400)面のピーク強度の合計あたり、(111)面のピーク強度の割合が、85%程度以上に高くなる。これに対し、圧延箔では、熱処理にもよるが、通常、このような配向は生じない。
<リチウムイオン二次電池>
次に、前記の正極集電体を用いたリチウムイオン二次電池について説明する。
図1は、リチウムイオン二次電池の一例を模式的に示す部分断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、正極2と、負極3と、セパレータ4と、電池缶5と、正極リード6と、負極リード7と、電池蓋8と、ガスケット9と、絶縁体10と、を備えている。
正極2と負極3は、セパレータ4を挟んで積層されている。セパレータ4を介して互いに対面するシート状の正極2と負極3は、セパレータ4と共に螺旋状に捲回され、電池缶5の内部に収容されている。電池缶5の内部には、電解液が注入され、正極2、負極3及びセパレータ4は、電解液に浸漬された状態で保持される。
正極2は、正極集電体と、正極集電体の表面に形成された正極合剤層と、を備えている。正極集電体は、正極リード6を介して電池蓋8と電気的に接続されている。また、負極3は、負極集電体と、負極集電体の表面に形成された負極合剤層と、を備えている。負極集電体は、負極リード7を介して電池缶5と電気的に接続されている。
正極リード6や負極リード7は、例えば、スポット溶接、超音波接合等の各種の方法で接合することができる。正極リード6や負極リード7は、リード線の他、箔状、板状等の適宜の形状に設けることができる。また、正極リード6や負極リード7の途中、正極リード6と電池缶5の外部端子との接続部、負極リード7と電池蓋8の外部端子との接続部には、温度上昇時の保護のため、正温度係数(Positive temperature coefficient:PTC)抵抗素子を設けることもできる。
電池缶5の上部は、正極2、負極3等が収容され、電解液が注入された後、電池蓋8によって閉じられる。電池缶5や電池蓋8は、例えば、ステンレス鋼製、アルミニウム製等として設けることができる。電池蓋8は、電池缶5に対して、溶接、接着、かしめ等の適宜の接合法で取り付けることができる。
電池缶5の上部の開口と電池蓋8との間には、絶縁性を有するガスケット9が取り付けられている。ガスケット9によって、電池蓋8と電池缶5との間が電気的に絶縁されると共に、電池缶5の内部が外気に対して封止されている。また、正極2や負極3と電池蓋8との間や、正極2や負極3と電池缶5の底部との間には、電極間の短絡を防止するための絶縁板10が設けられている。
(正極)
正極2を構成する正極集電体は、前記の電解アルミニウム箔によって形成される。正極2を構成する正極合剤層は、正極活物質、結着剤、導電材等を混合して得られる正極合剤によって形成することができる。
正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNi1−x:但し、Mは、Co、Mn、Al等の元素を表す。)、三元系リチウム金属複合酸化物(LiNiCoMn)、マンガン酸リチウム(LiMn)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等の各種の一般的な正極活物質を用いることができる。なお、これらの正極活物質は、金属元素の一部が、Ni、Co、Mn、Ti、Zr、Al等の他の元素で置換されていてもよい。また、これらの正極活物質は、他の元素を含む皮膜で被覆されていてもよい。
正極用の結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリルポリマ等の各種の一般的な結着剤を用いることができる。正極用の結着剤の量は、正極合剤あたり、例えば、2質量%以上10質量%以下とすることができる。
(負極)
負極3を構成する負極集電体は、例えば、圧延銅箔、電解銅箔等によって形成することができる。負極集電体の厚さは、例えば、7μm以上10μm以下とすることができる。負極集電体は、機械加工、エッチング等の適宜の方法によって穿孔されていてもよい。負極3を構成する負極合剤層は、負極活物質、結着剤、導電材等を混合して得られる負極合剤によって形成することができる。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛や、メソカーボンマイクロビーズ、メソカーボンファイバ、塊状人造黒鉛等の人造黒鉛や、非晶質炭素や、リチウム、スズ、ケイ素、チタン等を含む酸化物系材料や、リチウム、スズ、ケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、マグネシウム等の金属・合金材料等の各種の一般的な負極活物質を用いることができる。
負極用の結着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、アクリルポリマ等の各種の一般的な結着剤を用いることができる。また、カルボキシメチルセルロース等の添加剤を結着剤に添加してもよい。負極用の結着剤の量は、負極合剤あたり、例えば、2質量%以上10質量%以下とすることができる。
正極2や負極3は、活物質と、結着剤と、必要に応じて用いる導電材とを溶媒中で混練して合剤を調製し、調製された合剤を集電体の片面又は両面に塗工し、塗工した合剤を乾燥させて合剤層を形成し、合剤層が形成された電極材をプレス成形し、プレス成形によって電極密度が調整された電極材に、打ち抜き加工、切断加工等を施すことによって作製することができる。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックや、カーボンナノチューブや、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリアセン等の導電性高分子等の各種の一般的な導電材を用いることができる。導電材の量は、例えば、合剤あたり、3質量%以上10質量%以下とすることができる。
合剤を混合する混合装置としては、例えば、プラネタリーミキサ、ディスパーミキサ、バタフライミキサ、二軸混練機、ボールミル、ビーズミル等の各種の装置を用いることができる。また、合剤を分散させる溶媒としては、例えば、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、水、γ−ブチロラクトン、メタノール、エタノール等を用いることができる。また、合剤を塗工する方法としては、例えば、ロールコート法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディッピング法、スプレー法等の各種の方法を用いることができる。
(セパレータ)
セパレータ4としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂の微多孔質フィルム、不織布等を用いることができる。
(電解液)
電解液は、電解質と、非水系溶媒と、を含んで組成される。電解質としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)等の各種のリチウム塩を用いることができる。電解質の濃度は、例えば、0.6mol/L以上1.8mol/L以下とすることができる。
非水系溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネートや、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、メチルアセテート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の鎖状カルボン酸エステルや、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステルや、エーテル類等を適宜混合して用いることができる。
電解液は、電解液の分解の抑制、電極の保護、過充電の防止、電解液の難燃性の向上等を目的として、各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、リン酸トリメチル、亜リン酸トリメチル等の有機リン化合物や、1,3−プロパンスルトン等の有機硫黄化合物や、ポリアジピン酸無水物等の無水カルボン酸類や、ホウ酸トリメチル等のホウ素化合物や、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル等が挙げられる。
(用途)
リチウムイオン二次電池1は、例えば、携帯端末情報機器、テレビ、映像機、掃除機、電動工具、ロボット、ゲーム機等の電子機器用電源や、船舶、鉄道車両、ハイブリッド鉄道車両、ハイブリット自動車、電気自動車、建設機械、運搬機器等の駆動用電源や、電力貯蔵装置、無停電電源装置、電力平準化装置等の定置用電源等、各種の用途に使用することができる。
なお、以上のリチウムイオン二次電池1は、円筒形とされているが、電池の形状は特に限定されるものではない。リチウムイオン二次電池1は、例えば、角形、ボタン形、ラミネートシート形等の適宜の形状であってよい。但し、電解アルミニウム箔の水素量の低減による効果、柔軟性、靭性等が有効に働く点で、正極2や負極3によって形成される電極群の曲率や曲げ角度が大きい形状、例えば、円筒形や角形がより好ましい。
以上のリチウムイオン二次電池によると、正極に用いられる正極集電体が、柔軟性が良好であり、可撓性や靭性に優れ、クラック等の欠陥を生じ難いため、電池の製造時の支障の低減によって、歩留まりを向上させることができる。また、リチウムイオン二次電池中において、正極集電体にクラック、割れ等が進展し難くなるため、正極集電体の集電性能や正極活物質等の支持性能、正極集電体の耐久性等が向上したリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以上、本発明に係るリチウムイオン二次電池用の正極集電体、及び、それを備えるリチウムイオン二次電池の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、技術的範囲を逸脱しない限り、様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、実施形態の構成に他の構成を加えたりすることが可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、構成の削除、構成の置換をすることも可能である。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
<正極集電体の作製・評価>
リチウムイオン二次電池用の正極集電体を電解法によって作製し、混入している水素の量を解析し、折り曲げたときの欠陥に対する耐性について評価した。
[実施例1]
正極集電体の供試材として、電解アルミニウム箔を以下の手順で作製した。はじめに、10モルのジメチルスルホン(純度:99.9%、Sigma-Aldrich社製)に、3.8モルの塩化アルミニウム(純度:99%、関東化学社製)を加え、加熱により溶解させた。次いで、この溶液に、0.1モルの塩化アンモニウム(純度:99.5%、関東化学社製)を加え、加熱により溶解させて電解処理用のめっき液を得た。
続いて、めっき液を入れた電解槽において、直流定電流による電解処理を行った。電解用の陽極としては、アルミニウム板(純度:99%以上、ニラコ社製)を使用した。電解用の陰極としては、チタン板(純度:99%、ニラコ社製)を使用した。また、めっき液の温度は、85℃とした。電解処理の電流密度は、50mA/cmとした。電解処理を行った後、アルミニウムが表面に還元析出したチタン板を電解槽から取り出し、蒸留水(和光純薬工業社製)で洗浄した後に乾燥させた。その後、チタン板の表面に還元析出したアルミニウムの薄膜を剥離して、厚さが13.0μmの電解アルミニウム箔を得た。
[実施例2]
めっき液の温度を90℃とした以外は、実施例1と同様にして、厚さが12.0μmの電解アルミニウム箔を得た。
[実施例3]
0.2モルの塩化アンモニウムをめっき液の調製に用いた以外は、実施例2と同様にして、厚さが15.0μmの電解アルミニウム箔を得た。
[比較例1]
塩化アンモニウムをめっき液の調製に用いなかった以外は、実施例1と同様にして、厚さが15.0μmの電解アルミニウム箔を得た。
[比較例2]
0.05モルの塩化アンモニウムをめっき液の調製に用いた以外は、実施例2と同様にして、厚さが14.0μmの電解アルミニウム箔を得た。
[比較例3]
めっき液の温度を130℃とした以外は、実施例2と同様にして、厚さが15.0μmの電解アルミニウム箔を得た。
(柔軟性の評価)
電解アルミニウム箔である正極集電体の柔軟性を、以下の方法で評価した。作製した電解アルミニウム箔を、電極に接していた面を内側にして折り曲げ、曲げ角度(外角)が180度となるように屈曲させた後、元の形状に曲げ戻した。そして、曲げ変形及び曲げ戻し変形を加えられた曲げ部の内側に、クラックが発生しているか否かを、目視によって観察した。
(水素量の評価)
電解アルミニウム箔である正極集電体に含まれる水素量を、昇温脱離法によって分析した。分析装置としては、昇温脱離分析装置「TDS1200II」(電子科学社製)を使用した。温度範囲は50℃から500℃まで、昇温速度は1℃/分とした。測定試料から脱離した水素分子イオン(H )を四重極質量分析計で検出し、温度と水素の脱離量との関係を解析した。そして、500℃までに検出された水素ガスの総量と200℃までに検出された水素ガスの総量とを、それぞれ積分計算し、500℃までに検出された水素ガスの総量に対する、200℃までに検出された水素ガスの総量の割合を算出した。
(評価の結果)
表1に、実施例及び比較例の正極集電体について、電解処理の条件と、500℃までに検出された水素ガスの脱離量(全水素量)と、200℃までに検出された水素ガスの脱離量の全水素量あたりの割合と、電解アルミニウム箔の厚さと、柔軟性の評価の結果を示す。なお、柔軟性の評価について、「クラック有」であるものは、屈曲時に破砕したものを含む。
Figure 2020030994
表1に示すように、実施例1〜3は、室温から200℃までに検出された水素ガスの脱離量の全水素量あたりの割合が50%以上であり、電解アルミニウム箔に曲げ変形及び曲げ戻し変形を加えたとき、クラック等の欠陥が生じないことが確認された。これらの電解アルミニウム箔は、柔軟性が良好であり、脆性的な破壊は生じなかった。一方、比較例1〜3は、電解アルミニウム箔が脆く、クラックを生じるか、屈曲時に破砕した。
図2は、電解アルミニウム箔の温度と脱離した水素ガスの累積量との関係を示す図である。
図2において、横軸は、電解アルミニウム箔の温度[℃]、縦軸は、電解アルミニウム箔から脱離した水素ガスの累積量(その温度までに検出された水素ガスの総量の全水素量あたりの割合)[%]を示す。累積量は、500℃までに検出された水素ガスの脱離量(全水素量)を100%として換算している。実線は、実施例1に係る電解アルミニウム箔、短破線は、実施例2に係る電解アルミニウム箔、二点鎖線は、比較例1に係る電解アルミニウム箔、長破線は、比較例2に係る電解アルミニウム箔の結果である。
図2に示すように、200℃においては、いずれの電解アルミニウム箔であっても、水素の脱離が開始しており、且つ、水素の脱離速度が比較的速い段階にあることが確認された。200℃までに検出される水素量が全水素量に対して50%以上であれば、柔軟性が良好になり、クラック等の欠陥を生じないと判断することができる。
<リチウムイオン二次電池の作製・評価>
リチウムイオン二次電池を電解アルミニウム箔である正極集電体を用いて作製し、充放電性能について評価した。
[正極の作製]
リチウムイオン二次電池用の正極を、実施例に係る正極集電体を用いて以下の手順で作製した。正極活物質としては、組成式:LiNi1/3Mn1/3Co1/3で表されるリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(NMC)を用いた。この正極活物質は、BET比表面積が0.4m/g、メジアン径が6.5μmである。また、導電材としては、鱗片状黒鉛(平均粒径:20μm)とアセチレンブラック(品種名:HS−100、平均粒径:48nm、電気化学工業社製)を用いた。また、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデンを用いた。
はじめに、正極活物質に、導電材及び結着剤を順次添加して混合した。質量比は、正極活物質:導電材:結着剤=90:5:5とした。次いで、分散溶媒として1−メチル−2−ピロリドンを添加し、混練してスラリー状の正極合剤を得た。得られた正極合剤を正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させて正極合剤層を形成し、正極合剤層をプレスして所定の密度まで圧密化した。正極合剤の塗布量は、正極集電体の片面あたり140g/mとした。また、正極合剤層の密度は、2.8g/cmとした。
[負極の作製]
リチウムイオン二次電池用の負極を、以下の手順で作製した。負極活物質としては、黒鉛系材料を用いた。また、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデンを用いた。また、負極集電体としては、厚さが10μmの圧延銅箔を用いた。
はじめに、負極活物質に、結着剤を添加した。質量比は、負極活物質:結着剤=92:8とした。次いで、分散溶媒として1−メチル−2−ピロリドンを添加し、混練してスラリー状の負極合剤を得た。得られた負極合剤を負極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させて負極合剤層を形成し、負極合剤層をプレスして所定の密度まで圧密化した。負極合剤の塗布量は、負極集電体の片面あたり73g/mとした。また、負極合剤層の密度は、1.15g/cmとした。
[リチウムイオン二次電池の作製]
リチウムイオン二次電池を、得られたリチウムイオン二次電池用の正極と負極とを用いて以下の手順で作製した。はじめに、正極及び負極のそれぞれにリードを接合した。そして、厚さが30μmのポリエチレン製のセパレータを挟んで正極と負極とを重ね、リードが互いに反対側の端面に位置する状態となるように、これらを螺旋状に捲回した。捲回したときの巻径(直径)は、17.8±0.1mmとした。
捲回した正極、負極及びセパレータは、図2に示す構造のリチウムイオン二次電池1となるように、18650型の電池用の電池缶5に収容した。負極リード7は、ポリプロピレン製の絶縁リング(絶縁体10)の切り込みを通して電池缶5の底部に溶接した。また、正極リード6は、絶縁リング(絶縁体10)の切り込みを通して上方に引き出した。電池缶5の上部の開口には、ポリプロピレン製のガスケット9を取り付け、引き出した正極リード6は、電池蓋8に溶接した。
続いて、電池缶5の内部に電解液を注入した。電解液としては、エチレンカーボネートと、ジメチルカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、体積比2:3:2で混合した混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウムを1.2mol/Lとなるように溶解した溶液を用いた。そして、電池缶5の上端部を、かしめ機で折り曲げることにより封止して、18650型のリチウムイオン二次電池を得た。
(充放電性能の評価)
作製したリチウムイオン二次電池について、以下の手順で放電容量を測定し、充放電性能を評価した。放電容量の測定は、25℃の環境下、定電流定電圧(Constant Current - Constant Voltage:CC−CV)充電で行った。なお、CC−CV充電は、一定の電流値で充電を開始し、既定の電圧値に達した時点で定電圧充電に切り替えて所定時間の充電を行う方式を意味する。
はじめに、作製したリチウムイオン二次電池を25℃で10時間静置し、電解液と、正極、負極、セパレータ等とを馴染ませた。そして、0.2CAの電流値で充電を開始し、電圧が4.1Vに達した時点で、4.1Vの電圧値が維持されるように5時間の充電を継続した。充電を終了した後、30分間休止させた。次いで、0.2CAの定電流で放電を行い、電圧が2.7Vに達した時点で放電を終了した。この充放電を1サイクルとして、計3サイクルを繰り返した後、0.2CAの定電流で3.7Vまで充電した。その後、エージング処理として、25℃で5日間にわたってリチウムイオン二次電池を放置した。
続いて、エージング処理したリチウムイオン二次電池を、0.2CAの定電流で2.7まで放電させた。放電を終了した後、30分間休止させた。次いで、0.2CAの電流値で充電を開始し、電圧が4.1Vに達した時点で、4.1Vの電圧値が維持されるように5時間の充電を継続した。充電を終了した後、30分間休止させた。次いで、0.2CAの定電流で放電を行い、電圧が2.7Vに達した時点で放電を終了した。
続いて、最後の放電過程で測定された放電容量を設計容量と比較し、定格容量に対する到達度に基づいて放電性能を評価した。作製したリチウムイオン電池の設計容量は、いずれも1Ahである。実施例1〜3に係る電解アルミニウム箔を用いた結果、それぞれ、設計容量と同様に、1Ahの放電容量が計測された。水素量を低減した実施例に係る電解アルミニウム箔は、リチウムイオン二次電池用の正極集電体として、十分な実用性を備えていることが確認された。
1 リチウムイオン二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電池缶
6 正極リード
7 負極リード
8 電池蓋
9 ガスケット
10 絶縁体

Claims (5)

  1. リチウムイオン二次電池用の正極集電体であって、
    厚さが15μm以下のアルミニウム製の箔であり、
    昇温脱離法によって室温から200℃までに検出される水素ガスの総量が、室温から500℃までに検出される水素ガスの総量に対して50%以上であるリチウムイオン二次電池用の正極集電体。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の正極集電体であって、
    昇温脱離法によって室温から500℃までに検出される水素ガスの総量が、250ppm以下であるリチウムイオン二次電池用の正極集電体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用の正極集電体であって、
    前記箔の金属組織は、電解還元析出法によって形成された柱状晶を主体とし、
    前記柱状晶は、長軸が前記箔の厚さ方向に配向しているリチウムイオン二次電池用の正極集電体。
  4. 正極と負極がセパレータを介して対面させてなるリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極合剤層と、を備え、
    前記正極集電体は、厚さが15μm以下のアルミニウム製の箔であり、
    昇温脱離法によって室温から200℃までに検出される水素ガスの総量が、室温から500℃までに検出される水素ガスの総量に対して50%以上であり、
    昇温脱離法によって室温から500℃までに検出される水素ガスの総量が、250ppm以下であるリチウムイオン二次電池。
  5. 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池であって、
    前記箔の金属組織は、電解還元析出法によって形成された柱状晶を主体とし、
    前記柱状晶は、長軸が前記箔の厚さ方向に配向しているリチウムイオン二次電池。
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