JP2014075205A - 蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 フッ素化合物を含んだ有機電解液中に、正極集電体と正極活物質からなる正極と、負極集電体と負極活物質からなる負極が配置されており、前記正極集電体として、表面が(111)に優先的に結晶配向された電解アルミニウム箔が用いられ、前記正極に印加される電位が3.5V(vs. Li/Li+)以上4.5V(vs. Li/Li+)以下であることを特徴とする蓄電デバイス。
【選択図】 図1
Description
よって本発明は、充放電効率の低下を抑制可能な蓄電デバイスの提供を目的とする。
つまり、従来正極集電体には圧延アルミニウム箔が用いられてきたが、圧延アルミニウム箔は3.5V(vs.Li/Li+)以上の高い電位を印加すると電解液中のフッ素化合物と反応して箔の表面にAlF3を主成分とするフッ化被膜が形成される。このフッ化被膜は電子伝導性に乏しく、集電体と活物質との間の電子移動を妨げており、正極全体の抵抗が高くなることで蓄電デバイスの充放電効率の低下に繋がることがわかった。
また、放電時の電圧降下を抑制することもできる。また、正極で発生する抵抗熱を低減できるので、蓄電デバイスの発火・爆発等の故障を抑えることができ、安全性にも優れる。
正極に電位が印加されるとリチウムイオンが移動して蓄電デバイスの充放電が行われる。3.5V(vs.Li/Li+)以上4.5V(vs.Li/Li+)以下の電位とは充電時に印加される電位とする。
なお「V(vs.Li/Li+)」の意味は、一般的に蓄電デバイスの電極電位を示す場合に用いられる通り、Liの標準電極電位を基準とした場合の電位である。
本発明で用いる電解アルミニウム箔は電解法によって製造することができる。
以下、電解法で用いるめっき液に関して説明する。このめっき液は、後述の単層電解アルミニウム箔、複合電解アルミニウム被膜の両方の製造方法で適用可能である。
電解アルミニウム箔の製造のために好適なめっき液は、(1)ジアルキルスルホン、(2)アルミニウムハロゲン化物、および、(3)含窒素化合物を含むめっき液が挙げられる。10A/dm2以上の電流密度を印加しても安定なめっき処理が可能であり、成膜速度の向上を図ることができるとともに、延性に富む高純度の電解アルミニウム箔の製造が可能である。また、このめっき液は塩素濃度が低いので、塩化水素ガスの発生による設備の腐食といった問題を生じることがなく、さらに、成膜速度を速めるためにベンゼンやトルエンなどの有機溶媒を添加する必要がないので、その水洗が可能であり廃液処理を容易に行うことができるといった利点を有する。
ハロゲン化アンモニウムとしては、塩化アンモニウムや臭化アンモニウムなどを例示することができる。また、第一アミン〜第三アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ヘキシルアミン、メチルエチルアミンなどのアルキル基の炭素数が1〜6のもの(直鎖状でも分岐状でもよい)を例示することができる。ハロゲン化水素としては、塩化水素や臭化水素などを例示することができる。一般式:R1R2R3R4N・X(R1〜R4は同一または異なってアルキル基、Xは第四アンモニウムカチオンに対するカウンターアニオンを示す)で表される第四アンモニウム塩におけるR1〜R4で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基などの炭素数が1〜6のもの(直鎖状でも分岐状でもよい)を例示することができる。Xとしては塩素イオンや臭素イオンやヨウ素イオンなどのハロゲン化物イオンの他、BF4 −やPF6 −などを例示することができる。具体的な化合物としては、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、四フッ化ホウ素テトラエチルアンモニウムなどを例示することができる。好適な含窒素化合物としては、速い成膜速度で延性に富む高純度の電解アルミニウム箔の製造を容易にする点において第三アミンの塩酸塩、例えばトリメチルアミン塩酸塩を挙げることができる。
また、含窒素化合物の配合量がジアルキルスルホン10モルに対し0.01モルを下回ると配合することの効果、即ち、めっき液の電気伝導性の改善に基づく高電流密度印加でのめっき処理の実現による成膜速度の向上、電解アルミニウム箔の高純度化や延性の向上などの効果が得られにくくなる恐れがある。一方、4.0モルを超えるとめっき液の組成が本質的に変わってしまうことでアルミニウムが析出しなくなってしまう恐れがある。
単層電解アルミニウム箔は電解法によって製造する。例えば、ステンレス板などの基材の表面に電気めっきで金属被膜を形成した後、当該被膜を基材から剥離することによって得られる。
複合電解アルミニウム被膜は、アルミニウムよりも引張強度に優れる金属箔(以下、単に金属箔という)に形成した電解アルミニウム被膜である。(以下、金属箔と電解アルミニウム被膜の両方を併せて複合電解アルミニウム材ということがある)
金属箔としては、例えばニッケル、鉄、銅、チタンなどの金属箔が挙げられるが、これらの金属のうちの少なくとも1種を含む合金からなる箔、例えばニッケルと鉄の合金であるパーマロイからなる箔や、銅とベリリウムの合金からなる箔などでもよい。こうした金属箔は、例えば圧延法によって製造された市販のものでもよいし、電解法によって製造されたものでもよい。電解法による金属箔の製造は、例えば所定の基材の表面に金属被膜を形成した後、当該被膜を基材から剥離して行うことができる。金属箔の厚みは、例えば5〜50μmとすることができる。
蓄電デバイス100は、筐体10の内部にフッ素化合物を含んだ有機電解液が充填され、その有機電解液中に電極ユニット8が浸漬された構造である。電極ユニット8は、薄い箔で帯状の正極、負極、及びセパレータを正極−セパレータ−負極−セパレータの順に重ねて積層体とし、この積層体を倦回した構造である。筐体10が金属材料からなる場合、筐体10の内側には絶縁層4が形成される。また、筐体10には外部機器との接続端子となる正極端子5と負極端子6が形成され、正極端子5と電極ユニット8の正極が電気的に接続され、同様に負極端子6と電極ユニット8の負極が電気的に接続される。
図8は図7のA−A断面である。帯状の正極1と負極2の間には両者が直接通電しないように物理的に離すためのセパレータ3が挟まれる。但し、セパレータ3は多孔質な材質であり有機電解液7が浸透しているので、正極1と負極2は有機電解液7により電気的に接続された状態である。
正極は帯状の正極集電体と正極活物質から主に構成される。正極活物質として例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、LiFePO4、Li2FePO4F、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、Li(LiaNixMnyCoz)O2等のリチウム酸化化合物の酸化物を原料に用いることができる。
本実施例においては正極活物質としてLiMn2O4を含む原料を用い、正極集電体として上記で説明した電解アルミニウム箔を用いた。
単層電解アルミニウム箔に正極活物質を塗布し、プレス成型により一体化することで正極を得ることができる。
負極は板状の負極集電体を主とする合材層の表面に負極活物質が形成された構造を有する。負極活物質として例えば、黒鉛 (LiC6)、ハードカーボン (LiC6)、チタネイト (Li4Ti5O12)、Si (Li4.4Si)、Ge (Li4.4Ge)
等の材料を用いることができる。また、負極集電体として銅箔やニッケル箔等を用いることができる。
負極電極は、例えば銅箔に炭素材料などの活物質と結着材を混合・分散させた有機溶媒スラリーを塗布・乾燥した後、プレスして密度を上げることで作製できる。
本実施例においては負極活物質として黒鉛
(LiC6)を用い、負極集電体として銅箔を用いた。
正極の一方の面にセパレータを形成する。セパレータは多孔質の材料を塗布しても良いし、帯状のセパレータを張り付けてもよい。また、セパレータはストライプ状や千鳥状などのパターンにしてもよく、物理的に正極と負極の接触を防ぎ、かつ、後述するように有機電解液が正極と負極の間に充填されてリチウムイオンの移動が可能なものであればよい。
同様に帯状の負極の片面にもセパレータを形成する。
セパレータを設けた正極と負極を、正極、セパレータ、負極、セパレータの順になるように重ねて積層体とする。この積層体を筐体内部に配置できるように、筐体の開口部に合う形で捲回し電極ユニットを形成する。例えば筐体が矩形状である場合は、電極ユニットも矩形に近い形で形成される。
筐体10は様々な形態を持つが、例えば本体部と蓋部で構成される。本体部はAl−Mg系のアルミ合金を用いて深絞り加工により一体的に形成し、内側に絶縁層を設けたもの等を用いることができる。
蓋部には電子デバイスと接続するための正極端子5と負極端子6が形成され、電極ユニット8の正極1の接続部(図示せず)とこの正極端子5、および、電極ユニット8の負極2の接続部(図示せず)と負極端子6がそれぞれ電気的に接続された状態で固着される。
本体部の内部に有機電解液を充填した後、電極ユニット8が本体部の内部に納まるように蓋部を本体部の開口部に被せ、その後、有機電解液7が漏れないように蓋部で本体部の開口部をレーザー溶接などで封口する。
本発明の蓄電デバイスの一例について記載する。正極集電体として、表面が(111)に優先的に結晶配向された電解アルミニウム箔を用いた。電解アルミニウム箔として、単層電解アルミニウム箔を用いた。
以下に電解アルミニウム箔の評価結果を説明する。
ジメチルスルホン、無水塩化アルミニウム、トリメチルアミン塩酸塩をモル比で10:3:0.1の割合で混合し、110℃で溶解させて電解アルミニウムめっき液を調製した。陽極に純度99.9mass%のアルミニウム板、陰極(アルミニウム被膜を形成するための基材)にチタン板を用い、10A/dm2の印加電流密度で、めっき液を95℃に保って電気めっき処理を3分間行った。処理後、表面に電解アルミニウム被膜が形成されたチタン板をめっき液から取り出し、水洗を行ってから乾燥した後、その端部から電解アルミニウム被膜を剥離し、厚さ15μmの電解アルミニウム箔を得た。この電解アルミニウム箔の結晶構造について、X線回折装置(D8 ADVANCE:ブルカーAXS社製、X線としてCuKα線を使用したθ−2θ法による、以下同じ)を用いてX線回折ピークを測定した。その結果を図2に示す。得られた電解アルミニウム箔は、(111)面と(311)面での配向比が26.7であり、(111)面への優先配向性を持った結晶構造を有していた。
電解アルミニウム箔の表面にマンガン酸リチウム:アセチレンブラック:ポリフッ化ビニリデンを質量比で8:1:1の割合で混合してN-メチルピロリドンに分散させて調製したスラリーをドクターブレードで塗布した後、120℃で24時間真空乾燥し、一度10kg/cm2の圧力でプレスして表面を平滑にした後、さらに100℃で24時間真空乾燥することにより、全体の厚みが40μm(電解アルミニウム箔の厚さ15μm、正極活物質の厚さ25μm)のリチウムイオン二次電池用の正極を作製した。
容器24中に有機電解液25を入れた。有機電解液25として6フッ化りん酸リチウムをエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の体積比1:1の混合溶媒に溶解して1mol/l(1M LiPF6/EC+DMC (1:1 by vol.))としたものを用いた。この有機電解液25の中に上記で作製した正極21、リチウム箔からなる負極22、及びリチウム箔からなる参照極23を入れ、正極に最高で4.5V(vs. Li/Li+)の電位が印加されるように充放電した。正確には、3.5〜4.5V(vs. Li/Li+)の範囲で10サイクル電位を変動させて充放電した。
その後、交流インピーダンス測定器(ソーラトロン社製:1260型)を用いて100Hzから100KHzの範囲で電解アルミニウム箔を集電体に用いた正極の抵抗を評価した。評価結果を図1に示す。
このことから、この電解アルミニウム箔を用いた正極を蓄電デバイスに使用すれば、正極が3.5V(vs.Li/Li+)以上(4.5V(vs.Li/Li+)以下)の電位が印加される蓄電デバイスであっても、正極集電体の抵抗が大きくならず、正極全体の抵抗が増大することがない。その結果、抵抗の経時変化が小さく高効率な状態を長時間維持できる蓄電デバイスとすることができる。
図1に、厚さ15μmのAl-Mn系合金(AA3003)からなる圧延アルミニウム箔を正極集電体に用いること以外は実施例1と同様にして評価した結果を併記する。
電解アルミニウム箔を用いた正極の抵抗に対し、圧延アルミニウム箔を用いた正極は約3倍の抵抗値を持っており、今回の測定では電極の抵抗は500Ωを超えていた。
この圧延アルミニウム箔を蓄電デバイスに用いても、使用中に3.5V以上の電位が正極に印加されると正極全体の抵抗が高くなり充放電効率が下がってしまう。
なお、この圧延アルミニウム箔のX線分析結果を図4に示す。(111)面と(200)面での配向比は0.1であった。
複合電解アルミニウム被膜を用いた正極を作成した。
実施例1で用いたチタン板の変わりに厚さ5μmの銅箔を用い、実施例1と同様の方法にて、その両面に厚さ2μmの複合電解アルミニウム被膜を被覆させ、複合電解アルミニウム材を得た。この複合電解アルミニウム材を正極集電体として用いた。
複合電解アルミニウム被膜の表面をX線回折にて解析したところ、(111)面と(200)面での配向比が13.8であり、表面が(111)に優先的に結晶配向された複合電解アルミニウム被膜であることが確認された。
この複合電解アルミニウム材の表面にマンガン酸リチウム:アセチレンブラック:ポリフッ化ビニリデンを質量比で8:1:1の割合で混合してN-メチルピロリドンに分散させて調製したスラリーをドクターブレードで塗布した後、120℃で24時間真空乾燥し、一度10kg/cm2の圧力でプレスして表面を平滑にした後、さらに100℃で24時間真空乾燥することにより、正極を作製した。以降は実施例1と同様に、正極に最高で4.5V(vs. Li/Li+)の電位が印加されるように充放電した。正確には、3.5〜4.5V(vs. Li/Li+)の範囲で10サイクル電位を変動させて充放電した。
その後、交流インピーダンス測定器を用いて100Hzから100KHzの範囲で電解アルミニウム箔の抵抗を評価したところ、電極の抵抗は180Ωと低かった。また、評価後の電解アルミニウム箔の表面をSEMにより観察したが、フッ化被膜は確認できなかった。
実施例1で得られた電解アルミニウム箔に対し、延性を改善させるために、窒素雰囲気中、300℃で0.5時間保持する熱処理を施した。
この電解アルミニウム箔の結晶構造について、X線回折装置を用いてX線回折ピークを測定した。その結果を図3に示す。得られた電解アルミニウム箔は(111)面と(311)面での配向比が7.5であり、表面が(111)に優先的に結晶配向された電解アルミニウム箔であることが確認された。
以降は実施例1と同様に、正極に最高で4.5V(vs. Li/Li+)の電位が印加されるように充放電した。正確には、3.5〜4.5V(vs. Li/Li+)の範囲で10サイクル電位を変動させて充放電した。
その後、交流インピーダンス測定器を用いて100Hzから100KHzの範囲で評価したところ、電極の抵抗は190Ωと低かった。また、評価後の電解アルミニウム箔の表面をSEMにより観察したが、フッ化被膜は確認できなかった。
比較例1で得られた電解アルミニウム箔に対し、延性を改善させるために、窒素雰囲気中、300℃で0.5時間保持する熱処理を施した。
この電解アルミニウム箔の結晶構造について、X線回折装置を用いてX線回折ピークを測定した。その結果を図5に示す。得られた電解アルミニウム箔は(111)面と(220)面での配向比が0.05であり、表面が(111)に優先的に結晶配向された電解アルミニウム箔が得られていないことが確認できた。
以降は実施例1と同様に、正極に最高で4.5V(vs. Li/Li+)の電位が印加されるように充放電した。正確には、3.5〜4.5V(vs. Li/Li+)の範囲で10サイクル電位を変動させて充放電した。
その後、交流インピーダンス測定器を用いて100Hzから100KHzの範囲で評価したところ、電極の抵抗は500Ωを超えていた。
Claims (3)
- フッ素化合物を含んだ有機電解液中に、正極集電体と正極活物質からなる正極と、負極集電体と負極活物質からなる負極が配置されており、
前記正極集電体として、表面が(111)に優先的に結晶配向された電解アルミニウム箔が用いられ、
前記正極に印加される電位が3.5V(vs. Li/Li+)以上4.5V(vs. Li/Li+)以下であることを特徴とする蓄電デバイス。 - 請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
前記電解アルミニウム箔は単層であることを特徴とする蓄電デバイス。 - 請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
前記電解アルミニウム箔は、アルミニウムよりも引張強度に優れる金属箔の表面に被膜されたものであることを特徴とする蓄電デバイス。
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