JP2020026564A - 化成処理被膜を有する塗装鋼材、及びその製造方法 - Google Patents

化成処理被膜を有する塗装鋼材、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】クロム酸を含まない塗布型の化成処理被膜層を有する塗装鋼材であって、有機樹脂塗装として防食性の高い粉体エポキシ樹脂塗料、あるいは3層ポリオレフィン樹脂塗装と組み合わせた場合に、高い密着性と耐陰極剥離性を提供する。【解決手段】本発明の鋼材は、高い防食性と密着性が要求される粉体エポキシ樹脂塗装、あるいは粉体エポキシ樹脂をプライマーとして、接着剤、ポリオレフィン樹脂を積層塗装する際に使用される化成処理被膜を有する鋼材であって、鋼材1表面に下地処理層としてジルコニウムあるいはチタンを含む酸化物被膜層2を形成し、その上に鉄酸化物と線状の微粒子シリカを主とする微粒子が連結した構造によって上部に塗装する塗料が含浸して密着性を強化することが可能な多孔状の被膜層3を形成したものである。【選択図】図1

Description

本発明は、有機樹脂塗装鋼材において、特定の化成処理被膜を表面に有する塗装鋼材及びその製造方法に関する。特にラインパイプの有機樹脂被覆で近年要求される高温性能に対して、耐熱性の高い樹脂との組み合わせで耐剥離効果に優れた化成処理被膜を有する塗装鋼材に関する。
従来、海洋構造物やラインパイプ等では防食性能を高めるために被覆材料の耐熱性向上や厚みを増す対策が行われている。しかしながら、高温では有機樹脂の防食性は通常低下するため、鋼材露出部と塗膜下のマクロ腐食電流に起因する電気化学的反応を完全に抑制する事は難しい。また、防食性を高めるために厚い有機樹脂を使用すると、内部応力が大きくなる結果、鋼材と厚い有機樹脂塗膜との密着性確保が困難となり、何らかの対策が必要となる。これらの要求に対しては、鋼材表面に化成処理を設ける方法が有効で、従来はブラスト処理又は酸洗によってスケールを除去し、その後、特開平07−195612号公報(特許文献1)に示されるように、クロム酸を含有するクロメート化成処理を施していた。このクロメート処理は、塗布後に乾燥するだけで鋼材とその上の防食塗膜等との間に良好な密着性を提供し、耐剥離性を大幅に向上させることが出来るため、数mmの厚みを有するポリオレフィン樹脂塗装鋼管の下地処理としても一般的である。しかしながら、クロメート化成処理被膜は環境負荷物質である6価クロムを含むことから、代替えの化成処理が望まれる。
6価クロムを含まない代表的な化成処理としてリン酸亜鉛処理がある。リン酸亜鉛処理は加温した亜鉛を含むリン酸塩処理浴中に鋼材を浸漬して、鋼材表面にリン酸亜鉛の結晶を析出させて被膜を形成した後、余分な成分を水洗する。ところが、ラインパイプに使用する大径鋼管の浸漬処理は設備や時間の面で難しく、また析出したリン酸亜鉛結晶被膜が脆いことから、密着性にも問題があった。
一方、防食被覆鋼材の製造方法として特開2009−209393号公報(特許文献2)に開示されているように、ジルコンフッ化水素酸、チタンフッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸、リン酸、縮合リン酸、シュウ酸のいずれかの酸1種以上と、V系化合物、Mo系化合物、W系化合物、Y系化合物、Zr系化合物、Bi系化合物のなかの1種以上を含有する水溶液で水洗する洗浄処理が提案されている。しかし、洗浄処理では化成処理被膜を形成しないので電気化学反応による塗膜の剥離を抑制出来ない。このため、依然として6価クロムを含有せず、かつ水洗等の行程上の制約が無い鋼材表面の化成処理方法が求められている。
6価のクロム酸を使用しない鋼材の化成処理は、特開2006−249459号公報(特許文献3)に記載されている。この化成処理は、鋼材表面にリン酸金属化合物に、水分散性シリカの微粒子を質量比で0.3〜4.0の割合で添加した水溶液を塗布し、水洗等の工程を必要とせず、塗布と乾燥のみで処理を行うことが可能であり、クロメート処理と同等の樹脂塗膜の耐水密着性と耐陰極剥離性を有す鋼材表面処理を提供する。
また、特開2009−209394号公報(特許文献4)にはクロムを含む化成処理層を用いない樹脂被覆鋼材の製造方法が記載されており、Al系リン酸塩、Ca系リン酸塩、Mg系リン酸塩、Zn系リン酸塩のうち少なくとも1種のリン酸塩とV系化合物、Mo系化合物、W系化合物、Y系化合物、Zr系化合物、Bi系化合物の少なくとも1種の化合物を含有する化合物、およびシリカを含有する、化成処理用水溶液が開示されている。
しかしながら、上記公報(特許文献3、特許文献4)に記載されるリン酸塩から成る化成処理被膜では、余剰リン酸成分が残存し易く不溶性となる被膜を形成し難い。このため、電気化学的反応による被膜の溶出が多くなる高温領域の塗膜剥離抑制に課題があった。
また、不溶性の酸化ジルコニウムを主体とする化成処理膜を得る方法として特許第5946358号公報(特許文献5)には炭酸ジルコニウムアンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、シランカップリング剤を利用する方法が開示されている。本方法では厚膜の絶縁塗膜形成には有効であるが、化成処理液のpHが8から12のアルカリ析出型であるため、析出酸化物膜と鋼材との密着性に問題があった。
特開平07−195612号公報 特開2009−209393号公報 特開2006−249459号公報 特開2009−209394号公報 特許第5946358号公報
本発明の目的は、ラインパイプの外面防食に用いられる粉体エポキシ樹脂塗装、あるいは粉体エポキシ樹脂塗料を用いたプライマーを有する3層ポリオレフィン樹脂塗装等の有機樹脂塗装との密着性に優れ、高温使用でも耐陰極剥離性等の防食性が良好な鋼材表面の化成処理被膜を有する塗装鋼材と、その製造方法を提供するものである。
本発明者らは鋼材表面に塗膜下での電気化学的反応を抑制し、且つ塗膜との密着性を高める方法として、電気絶縁性が高く、安定な金属酸化物を主とし、且つ鋼材と反応した緻密な処理層である第1層を設けた。さらに、反応で溶出した鉄酸化物が作る弱い層は接着力を低下させることから、ポーラスな多孔層を形成する微粒子シリカ(SiO)、例えば線状シリカ微粒子を加えて弱い酸化物層を骨格補強した第2層を設けて、鉄との反応及び、塗膜との密着、の相反する問題を解決した。
防食特性として重要な陰極剥離を抑制する被膜には、鋼材との密着性と化学的、電気的な安定性が必要である。このためには鉄表面と反応し、かつ安定な金属酸化物層の形成が有効となる。そこで、まず鉄との親和性である相互作用パラメーターを見ると、大きく負の値を示す金属としては、Sc、Ti、Zr,Nb、Al、Si、Asがあげられる。このうち、安定な酸化物を形成する金属として、Ti、Zr、Al、Siが選択される。中でもTiは常温でも安定な金属酸化物を形成しやすく、陰極剥離でカソードの鋼材表面での電気化学反応でアルカリが発生しても溶解が生じ難いと考えられる。また、同じチタン族元素であるジルコニウムも耐酸性、耐アルカリ性に優れる。以上の観点からチタン、ジルコニウムを主とする酸化物被膜を鋼材表面に設けた。中でもジルコニウムはアルミニウムの化成処理としても用いられ、Zr3(PO4)・nH2Oを主体としたZr量が5〜30mg/m (0.005〜0.03μm)の薄い膜で用いられるが、処理する表面の影響を受けやすく、洗浄を含めた処理条件の管理が性能を大きく左右する。特に被膜が薄いと耐食性が劣り、被膜が厚いとその上層である塗膜との密着性が劣ることから被膜厚の制御が重要な管理項目となっている。本発明の鋼材の化成処理では、第一にブラスト処理を施した粗い粗面であること、第二に化成処理をする素材が鉄であるためにアルミニウムや亜鉛に比べて反応性が低いこと、第三に化成処理被膜の上に塗装する塗膜がラインパイプの場合厚膜であることからその応力が大きく、その結果高い密着性が要求されるといった点でアルミニウムや亜鉛の化成処理とは異なるため、新たな化成処理技術が必要とされた。
鋼材表面はブラスト処理で除錆を行っても、空気中ではブラスト処理後短時間に薄い酸化物で覆われてしまうため、密着性に優れる化成処理被膜形成には強い酸を用いて酸化膜を除去する必要がある。その一方、塗布型化成処理の場合強い酸で反応性を高めようとすると、未反応の溶解性酸成分が残存し、溶解した鉄による析出物も多くなって密着を阻害する。そのため、これまで酸としては弱酸で鉄と化合するリン酸、又はその化合物を中心とした検討が行われて来た。しかしながら、リン酸は鉄との反応には液濃度を高くしなければならず、余剰リン酸成分が残りやすく、膜が溶解して陰極剥離性能が低下するといった問題があった。これに対して本発明では、反応性が高いフッ酸成分を含むジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸を用い、且つ塗布時の鋼板温度を40〜80℃と高めて塗布することで鋼材表面にジルコニウムあるいはチタン元素を鉄元素に対して7%以上含んだ均一に薄い絶縁性の不溶解被膜を形成する。ジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸の濃度不足や、鉄との反応が不十分であるとジルコニウム又はチタンの比率が7%未満になって防食性が低下する。
更に、この第1層には第3成分としてジルコニウム酸化膜あるいはチタン酸化膜の欠陥部を補填するためにマグネシウム、亜鉛、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含んでも良い。
フッ酸成分が鋼材表面を溶解することで、ジルコニウム、あるいはチタンを主とする緻密な絶縁酸化膜が形成される一方、反応で溶出した鉄は、液の乾燥時に前記の緻密な絶縁酸化膜層の上に堆積して脆弱な鉄酸化物層が形成される。防食に有効な反応層の厚みを増やすには、塗布するジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸の液濃度を上げる必要があるが、必然的に鉄の溶解量が増えて脆弱な鉄酸化物層が増加して上部塗膜との密着性が低下する。この相反する課題に対し、溶出した鉄を取り込み、且つ上部塗膜との密着性を確保するために多孔状被膜を形成する方法を検討した。その結果、微粒子シリカが有効であって、中でも強度のある接着性被膜を形成する線状(パールネックレス状を含む)微粒子シリカ添加が有効であることを見出した。線状(パールネックレス状を含む)の微粒子シリカはシリカ粒子同士が強固に結合した2次構造をもつことから、脆弱な鉄酸化物の内部がシリカ骨格で補強される。更には多孔状被膜を形成することが出来ることから、多孔状の空隙に上層のエポキシ樹脂が浸透して一体になって密着性が向上する効果が得られる。すなわち、前記の第1層の絶縁酸化被膜の上に第2層被膜として、鉄、珪素、酸素を含有する粒状物が連結した多孔層を形成することで密着性課題を解決した。この時の粒状物が占める断面の面積割合は透過型電子顕微鏡(TEM)での観察では30〜80%である。
上記の第2層被膜を形成する処理液としては、ジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸の質量濃度Aに対して多孔状を形成する線状(あるいはパールネックレス状)シリカ微粒子の濃度BがB/Aの質量比で0.2〜2.5の範囲内であると良い。この時の膜厚としては、鉄酸化物層とその上層の塗装(エポキシ樹脂)をバランス良く結合するために0.2〜2μmが好ましい。0.2μm以下では鉄酸化物を吸収しきれない場合がある。一方2μmを越えると、膜強度が低下して密着力も低下する場合がある。これらの膜厚は断面TEMによって膜厚の直接測定が可能であると供に、シリカ付着量で管理することが可能である。シリカ付着量としては100〜500mg/mの範囲が好ましい。
本発明の要旨は次のとおりである。
ブラスト処理を施した鋼材の上に、順に化成処理被膜、エポキシ樹脂塗装、又は順に化成処理被膜、エポキシ樹脂塗装、変性ポリオレフィン接着剤、ポリオレフィン樹脂からなる3層ポリオレフィン樹脂塗装であって、前記化成処理被膜が、鉄、フッ素、ジルコニウムあるいはチタン、酸素を含む第1層の酸化物被膜と、鉄、珪素、酸素を含む粒状物が連結した多孔層の第2層とから成る2層構造を有しており、この第2層の上に積層されている塗装層を形成するエポキシ樹脂が第2層の多孔の隙間に浸透固化し充填された構造を持つことを特徴とする化成処理被膜を有する塗装鋼材である。更に第1層にマグネシウム、亜鉛、アルミニウムから成る群より選ばれる少なくとも1種の金属を含有させると良い。この化成処理層の第1層はエネルギー分散型X線分析(EDS分析)から得られる値として、ジルコニウム又はチタン元素の比率が鉄元素に対して7%以上の比率を持ち、第2層は粒状物で形成される多孔状物が占める断面積は30〜80%である。
なお、第1層に、鉄、フッ素、ジルコニウムあるいはチタン、酸素を含んでおり、かつ第2層に鉄、珪素、酸素を含む粒状物が連結した多孔層を形成する場合は、他の成分は任意に選択できる。
前記化成処理被膜構造を得る化成処理方法としては、鋼材を40〜80℃に加熱して処理液を塗布、乾燥すると良い。塗布する処理液は、ジルコンフッ化水素酸あるいはチタンフッ化水素酸の質量濃度Aと線状(パールネックレス状を含む)シリカ微粒子の質量濃度BをB/Aが0.2〜2.5の質量比である化成処理液を用いる。更に前述のマグネシウム、亜鉛又はアルミニウム金属を酸化物換算の総質量濃度CがC/Aの質量比で0.03〜0.5の範囲内で含有させれば更に良い。
以上述べたように、本発明によると、防食塗装を行う鋼材の化成処理液として、クロム酸を用いる必要が無く、また、化成処理後に水洗を必要とせず、塗布および乾燥のみで被膜形成が可能で、高温環境での電気防食による剥離を防止する塗装鋼材を提供できる。
図1は、本発明の一つの実施態様を示す粉体エポキシ樹脂を塗装層として用いた鋼材の構成断面図である。 図2は、本発明の一つの実施態様を示す3層ポリオレフィン樹脂を塗装層として用いた鋼材の構成断面図である。 図3は、実施例1の処理条件での化成処理膜断面を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。 図4は、実施例1の処理条件での化成処理膜断面の2層構造の元素分布をエネルギー分散型X線分析(EDS分析)で示す写真である。
以下、本発明につき詳細に説明を行なう。
図1及び図2は、本発明の一つの実施態様を示す塗装鋼材の構成断面図である。本発明に使用する鋼材1としては普通鋼、あるいは高合金鋼などどのような鋼種でも適用可能である。鋼材種としては何でも良いが、長期の防食性が要求されるものとしてはラインパイプ用の鋼管がある。
本発明に係る、鉄、ジルコニウムあるいはチタン、フッ素、酸素からなる酸化物被膜層2、及び、鉄、珪素、酸素からなる粒状物が連結した多孔状の被膜層3を形成する化成処理を行う場合、その前に、鋼材1表面のスケール、汚染物等を除去する必要があるため、サンド、アルミナ、グリッド、あるいはショットを用いたブラスト処理を行う。化成処理被膜が形成された後、塗装を行う。塗装としては粉体エポキシ樹脂塗料を塗布した粉体エポキシ樹脂層4を形成する。なお耐疵性などの防食性を高める場合、塗装として粉体エポキシ樹脂塗料を比較的薄く塗布した粉体エポキシ樹脂層4、変性ポリオレフィン接着剤層5,ポリオレフィン樹脂層6を順次積層して3層ポリオレフィン樹脂塗装を施す。
化成処理被膜の形成には、化成処理液を鋼材に塗布して乾燥する。その場合に、化成処理液塗布後の水洗を必要としない。特に本化成処理の被膜形成には乾燥工程が必要なため、水洗を行うと化成処理被膜構造が形成されない。本発明の2層構造を有する化成処理被膜を形成するための処理条件と、化成処理液について詳細に説明する。
本発明の粉体エポキシ樹脂塗装鋼管あるいはポリオレフィン樹脂塗装鋼管は、化成処理を行う前に、鋼管表面の錆や汚れを除去するだけでなく、接着に必要な表面粗さを確保するために、ブラスト処理を行う。ブラスト処理に用いる研掃材としては、一般的には鋼製グリッド又はショット粒を用いる。更に清浄な表面が要求される場合には、アルミナ等のセラミック素材を用いても良い。また、サンドを用いることも出来る。ブラスト処理後の表面に、鉄粉等の汚れが付着している場合、ブラシ、吸引、液体による洗浄等の処理を行うことができる。
ブラスト処理後の表面に不溶性の化成処理被膜を鋼材表面に形成する。この不溶性被膜は均一に薄膜である必要があるが、塗布型では鋼材表面に塗布出来る液量と乾燥までの時間に制限があり、短時間での反応には酸成分を増やす必要がある。しかしながら、酸成分が多過ぎると、水素が発生し均一な膜形成が難しい。また、可溶性である酸成分が化成処理被膜中に残存して性能が低下するという課題がある。これに対して、本発明では、酸及び析出するジルコニウム又はチタンを供給するために、ジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸を用いる。フッ酸成分が鋼材表面を溶解することによるpH上昇によってジルコニウム又はチタンが鋼材表面に析出し、密着した均一な不溶性被膜を形成する。またマグネシウム、アルミニウム、亜鉛といった金属を処理液に添加しておくと、ジルコニウム又はチタンと同時に析出して表面を覆うことにより被膜の欠陥部が補完される。これらの金属成分は酸化物として添加した方が安全なので添加量は金属酸化物で計算する。金属酸化物の質量濃度Cとしては、少ないと効果が不足し、多すぎるとジルコニウム又はチタンの絶縁被膜効果を減じるので、ジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸の質量濃度Aに対して、C/Aの質量比で0.03〜0.5の範囲で添加する。
第1層の密着性の良い不溶性酸化被膜の形成には鉄の溶解反応が不可欠であるが、溶解した鉄成分は液乾燥時に被膜強度が小さい酸化物を形成する。特に鋼材の温度が低い状態で処理液を塗布した場合、被膜強度が小さい錆(鉄酸化層)が増加して密着力が低下するので、処理温度は40℃以上が必要である。また鋼材温度が高すぎても均一な反応が得られないことから80℃以下とする。但し、40〜80℃の温度で処理液を塗布した場合でも反応酸化物層の上の塗膜の接着を阻害する被膜強度が小さい鉄酸化物層を完全に抑制することは難しい。そこで、本発明では密着性を改善する第2層形成のため、化成処理液に多孔層を形成するシリカ微粒子を添加する。
多孔層を形成するためのシリカ微粒子としては、液相法により合成した5〜50nm径の1次粒子が線状につらなり凝集体(2次粒子径:40〜150nm)を形成する線状シリカ(パールネックレス状を含む)を用いると良い。予め強く結合した線状構造を持つシリカを用いることで凝集力が増すと同時に鉄酸化物と供に多孔状の混合被膜を形成し、その上の塗料であるエポキシ樹脂層との密着性を向上させる。シリカ微粒子としては、例えば日産化学のスノーテックス(登録商標)−OUP、スノーテックス(登録商標)PS−SO、スノーテックス(登録商標)PS−MO、スノーテックス(登録商標)AK−PS−S、日揮触媒化成のCataloid S−20L、等を用いることができる。
多孔層に占める多孔状物の断面積の割合は30〜80%が適する。この範囲をはずれると、その上に塗装するエポキシ樹脂の浸透・充填が不十分となり塗装層との密着力が低下する。
気相法シリカ微粒子も多孔状被膜は形成されるが、気相法シリカでは数10nmの1次粒子が結合して空隙の多い比重の軽い凝集体を形成しており、非常に嵩高く、凝集体同士の結合力が弱いため十分な被膜の強度が得られない。このため、密着力は前述の線状(パールネックレス状を含む)シリカよりも劣る。
一方、例えば凝集体を形成しない液相法の単粒子シリカでは本発明の必要条件である塗膜との密着に必要な多孔層が形成されない。
化成処理液中のジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸の質量濃度A、線状シリカ微粒子の質量濃度Bとした時にB/Aの添加量比を0.2〜2.5で添加する。添加量比が0.2に満たない、あるいは2.5を越えた場合にはジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸によって生じる脆弱な鉄酸化物層と、その鉄酸化物内部に網目状の補強骨格として入るシリカ微粒子の量が少なすぎると有効な補強にならず、また多すぎると上部がシリカ微粒子のみの構造となることから、同様に弱い膜となって密着性が低下する。
更に化成処理液にシランカップリング剤を添加しても問題無い。但し、シランカップリング剤の分子構造中にアミノ基やイソシアネート基を有すると化成処理被膜の構造が変化するため、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤を用いるのが良い。
化成処理液の鋼材への塗布方法に関しては、スプレー、刷毛、ロール、流し塗り後のしごき等、塗布量を調整出来る方法であれば何でも良い。この時の膜厚管理としては、接着性に影響の大きいシリカの付着量で管理を行い、第2層に密着性の良い断面TEMで観察される0.2〜2μmの膜厚が得られるように100〜500mg/mの付着量範囲で塗布するのが好ましい。付着量が100mg/m未満では処理の効果が充分得られない場合があり、500mg/mを大きく超えると化成処理被膜のシリカ微粒子を主とする2層目の部分の強度が低下することにより密着力が低下する場合がある。シリカの付着量測定には蛍光X線分析装置を用いると容易に測定可能である。蛍光X線分析装置は、近年性能が向上し、大気中でも軽元素までの分析が出来るようになって来ている。このため予め鋼板表面を溶解して化学分析を行って検量線を作製して利用する。
次に、上記化成処理液を塗布して形成した化成処理被膜の上に施す塗装層について説明する。塗装層の形成には防食性、接着性に優れるエポキシ樹脂を用いた塗料を用いることができる。この時、高い防食性を得るためには100μm以上の膜厚を確保する必要があることから、厚膜を確保し易い粉体型のエポキシ樹脂塗料を用いて塗装する。粉体エポキシ樹脂塗料の主成分のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を単独、もしくは混合し、更に多官能性のフェノールノボラックやハロゲン化エポキシ樹脂を組み合わせたものに、フェノール系硬化剤を組み合わせたものが一般的である。硬化速度はアミン系やイミダゾール化合物、ジシアンジアミド等を添加して調整する。さらに無機顔料を全体積に対して3〜30vol%の範囲で添加してもよい。無機顔料として、シリカ、酸化チタン、ウォラストナイト、マイカ、タルク、カオリン、酸化クロム、ホウ酸亜鉛、燐酸亜鉛等の顔料、もしくは亜鉛、Al等の金属粉、あるいはセラミック粉等、その他にバナジウムリン系化合物等の防錆顔料を適宜用いることができる。粉体エポキシ樹脂塗料は、国内では、日本ペイント株式会社、もしくは関西ペイント株式会社から入手できる。海外では、JOUTAN、KCC、Arsonnsisi、3M Co.、等のメーカーで鋼管被覆用として販売されている銘柄を適宜用いることができる。
本発明の塗装鋼材では、粉体エポキシ樹脂塗料を、化成処理後に160〜270℃に加熱した鋼材に静電粉体塗装機を用いて塗布することができる。厚みは、通常100μm〜500μmである。100μm未満の厚みは、未塗装部分(ピンホール)が出来るために防食欠陥部となり好ましくない。また厚みが500μmを超えると、塗膜の内部応力の増加とコストの面から好ましくない。粉体エポキシ樹脂塗料は一度溶融状態となることで、2層構造の化成処理被膜の2層目の多孔状のシリカ被膜に浸透して、化成処理被膜と一体化する。これにより、塗装膜と鋼材の高い密着性が得られる。
有機樹脂塗装として3層ポリオレフィン樹脂塗装を行う場合は、粉体エポキシ樹脂塗料を塗布後、更に変性ポリオレフィン接着剤を介してポリオレフィン樹脂を積層する。変性ポリオレフィン接着剤は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの公知のポリオレフィン類を無水マレイン酸で変性したもの、あるいはオレフィン類と無水マレイン酸との共重合体、オレフィン類とアクリル酸エステルと、無水マレイン酸との共重合体を用いる。その後に被覆するポリオレフィン樹脂と異種のポリオレフィン樹脂を用いる(例えばポリエチレンとポリプロピレン)と、接着に問題が生じるので、同種のポリオレフィンを変性したものが好ましい。
熱可塑性の変性ポリオレフィン接着剤は、ペレットで供給される場合、押出機を用いて加熱溶融した接着剤樹脂ダイスを用いてフィルム状にして塗装する。その他、変性ポリオレフィン接着剤を粉砕して粉体化し塗布する方法もある。これらの方法により0.1〜0.4mmの膜厚の接着剤層を形成する。
変性ポリオレフィン接着剤層の上に積層するポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの従来公知のポリオレフィン樹脂、並びにエチレン−プロピレンブロックまたはランダム共重合体、ポリアミド−プロピレンブロック又はランダム共重合体等の公知のポリオレフィン共重合体を含む樹脂を挙げることができる。
ポリオレフィン樹脂層には、ポリオレフィン樹脂以外の成分として、耐熱性、耐候性対策として、カーボンブラック又はその他の着色顔料、充填強化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の耐候剤等を任意に組み合わせて添加することができる。
ポリオレフィン樹脂を、変性ポリオレフィン接着剤と同様の押出し被覆方法でJIS G3469−1に規定される最小全膜厚である1.2mm以上になるように塗装する。ポリオレフィン樹脂層は厚い程、耐疵性と防食性に優れるが、厚膜になると内部応力が大きくなるため、5mm以下が望ましい。
以下、本発明を表1及び表2に基づき、実施例によって具体的に説明する。
〔化成処理液の調製〕
本発明の実施例1〜12及び17、処理成分又は処理条件が異なる比較例1〜8、特許文献2に相当する比較例10及び14、の化成処理液の原料としては、森田化学工業製のチタンフッ化水素酸溶液(40%)を用いた。一方、本発明の実施例13〜16及び18の化成処理液の原料には同じく森田化学工業製のジルコンフッ化水素酸溶液(40%)を用いた。次に実施例1〜18、比較例1〜6に用いる液相法の線状シリカは日産化学製のスノーテックス(登録商標)PS−MOを用いた。比較例7の液相法単粒子シリカ微粒子としては液相法で合成された日産化学製のスノーテックス(登録商標)O、比較例8、11、15の乾式法シリカ微粒子としては気相法で合成された日本アエロジル製のAEROSIL(登録商標) 200を使用した。添加金属としては酸化物を用い、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムの粉末を添加して溶解させた。比較例10、14の硝酸ジルコニウム、比較例11,15の重リン酸マグネシウムは市販の試薬を使用した。
比較例10、14として、特許文献2表1の実施例17に相当する処理液を製造した。これはチタンフッ化水素酸4N溶液でチタンフッ化水素酸は分子量が163.9なのでグラム当量を82として計算し、森田化学工業製のチタンフッ化水素酸 40%溶液(比重1.38)の1リットルに対して、0.68リットルの水を加えて1.68倍とした希釈溶液を用い、これに硝酸ジルコニウムを5重量%加えて調整した。
また、比較例11、15として特許文献3に示される、塗布型の化成処理溶液として重リン酸マグネシウム溶液と気相法で合成された日本アエロジル製のAEROSIL(登録商標) 200を混合して1:1となるように調整した。)
比較例12、16として特許文献5の実施例6に相当する化成処理液としては、炭酸ジルコニウムアンモニウムをジルコニウム濃度で7%、メタバナジン酸アンモニウムをバナジウム濃度で0.0022%、第2リン酸アンモニウムをPO濃度で0.74%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1.5%で調整した。塗布温度は実施例と同じく60℃とし、ジルコニウム付着量で800mg/mとなるように塗布した。
〔実施例、比較例の作製方法〕
鋼材として鋼管は200AのJISG3452の配管用炭素鋼管5.5m長を用いた。鋼管外面にブラスト処理を行って除錆した。鋼管を加温後、本発明の実施例及び比較例の化成処理液を刷毛で塗布して乾燥した。一部の水洗工程を含む比較例については、十分な水道水で粗洗浄した後に純水で洗浄後、熱風乾燥を行った。
有機樹脂塗装として3層ポリオレフィン樹脂塗装を行う場合は、化成処理後の鋼管を200℃に加温後、粉体エポキシ樹脂塗料(3M製226N 8G)を、目標膜厚200μmで静電粉体塗装を実施した。その後、変性ポリエチレン接着剤(ADMERTM NE065、三井化学製)とポリエチレン(NOVATECTM ER002S、日本ポリエチレン製)のペレットを押出機とTダイスを用いてシート状の半溶融状態成形し、巻き付け被覆を行った。接着剤膜厚は200μm、ポリエチレン膜厚は3mmになるように調整した。その後、外面水冷を行って本発明の実施例1〜16及び比較例1〜12の3層ポリオレフィン樹脂塗装鋼管を製造した。
有機樹脂塗装として粉体エポキシ樹脂のみを塗装する場合は、化成処理後の鋼管を220℃に加温後、粉体エポキシ樹脂塗料(3M製226N 8G)を、目標膜厚350μmで静電粉体塗装を実施した後、水冷を行って、本発明の実施例17,18及び比較例13〜16の粉体エポキシ樹脂塗装鋼管を製造した。
〔シリカ付着量測定〕
化成処理の膜厚目安として、化成処理後にマスキングを行って樹脂を塗装しない部分を作り、5×5cmのクーポン状に切断加工して膜厚測定用試験片を作製した。試験片は予めシリカ付着量での検量線を作製した蛍光X線装置(XGT−7200V:堀場製作所製)で1試料に付き9点測定して平均した。
〔被膜の分析〕
実施例、比較例の塗装鋼材の一部を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)として日本電子製JEM−2100Fを用いて化成処理被膜の断面構造を観察した。得られた画像を数値化して画像解析によって多孔質第2層の断面占有率を求めた。また、エネルギー分散型X線分析(EDS分析)装置として日本電子製のJED−2300Tを用いて、化成処理の第1層と第2層についてプローブ径約2nmで元素分析を行った。計測は5点行い、測定の中央値によって元素比率の代表値とした。
〔評価試験方法〕
陰極剥離試験としては製造した3層ポリオレフィン樹脂塗装鋼管及び粉体エポキシ樹脂塗装鋼管を長さ方向に150mm、円周方向に8分割して試験片を作製した。作製した1水準に対して3個の試験片をISO 21809のAnnex H に示される方法で試験片中央の塗膜にドリルで穴を開けた後に試験用セルを立て、内部に3%食塩水電解液を満たした後に全体を60℃のオーブンに入れて温度を制御し、銀塩化銀電極に対して−1.45Vの陰極防食を鋼材露出部に施した。試験を30日行った後に3層ポリオレフィン樹脂塗装鋼管ではポリオレフィンを除去し、穴を中心として8方向にカッターでプライマーに切り込みを入れ、プライマーを疵穴部からはつって容易に剥離する陰極剥離部分を露出させた。剥離直径を4方向で測定して平均し、初期穴からの剥離距離を算出した。粉体エポキシ樹脂塗装鋼管についても同様の手順で評価を行った。剥離距離が13mm未満を合格とした。
更に、密着性及び防食性能を確認する方法として、前述の8分割した150mm長の試験サンプルを80℃の温水に50日間浸漬し、塗膜の切断端面からの剥離距離(mm)を測定した。剥離距離が5mm未満のものを合格とした。
以上の実施例及び比較例の試験結果を表1及び表2に示す。
〔実施例、比較例の内容〕
本発明の実施例1〜4と比較例1〜3は処理液成分のシリカ添加量比範囲を示すもので、添加量比(B/A)の適正範囲は0.2〜2.5である。本発明の実施例2及び実施例5〜7では化成処理のシリカ付着量の範囲を示すもので、実施例7で付着量が多い場合には陰極剥離性能が悪くなることから、100〜500mg/mがより適正な範囲である。
本発明の実施例8〜9、比較例4〜5は化成処理液塗布時の鋼材の温度範囲を示すもので、適正な温度範囲である40〜80℃を外れた比較例4、5では本発明の化成処理被膜を形成することが難しく、陰極剥離性及び端部剥離性が悪くなる。
比較例6は化成処理後に本発明の処理方法とは異なる水洗を行った処理工程を示すもので、陰極剥離性及び端部剥離性が悪い。
実施例10〜12は化成処理の成分として添加金属成分無し、あるいは亜鉛、マグネシウムを用いた例であり、いずれも性能が良好である。
比較例7、8は化成処理の処理成分であるシリカ微粒子に本発明に必要な粒状物が連結した多孔状層を形成しないシリカ微粒子を使用した例であり、陰極剥離性及び端部剥離性が悪い。
比較例9、13は化成処理の無い場合、比較例10、14は特許文献2に相当する洗浄処理、比較例11、15は特許文献3に相当するリン酸系の塗布型化成処理、比較例12、16は特許文献5の例であり、いずれも陰極剥離性及び端部剥離性が悪い。
実施例13〜16、18はチタンフッ化水素酸に代えて、ジルコンフッ化水素酸を用いた本発明の化成処理を使用した例であり、いずれも性能が良好である。
実施例17は実施例2と同じ化成処理で、塗装が3層ポリオレフィン樹脂に対して粉体エポキシ樹脂の場合である。
〔実施例、比較例の評価の結果〕
表1及び表2の結果から明らかな様に、本発明の化成処理液成分と処理工程を行った実施例によって本発明の2層化成処理被膜が鋼材上に形成され、高温の陰極剥離や浸漬での耐剥離性能が無処理、あるいは他の処理である比較例に比べて優れている。従来技術である洗浄処理工程のある特許文献2に相当する比較例では有効な処理被膜が形成されないため、陰極剥離性能や浸漬での耐剥離性能が十分では無い。一方で特許文献3に相当する比較例のリン酸系化成処理では浸漬後の剥離は小さいが、陰極剥離試験で発生するアルカリで被膜が溶解するため性能が十分では無い。これに対して特許文献5に相当する比較例のジルコニウムを主とする不溶性酸化被膜を形成する方法は、陰極剥離には有効だが、浸漬での耐剥離性能に課題があることがわかる。
本発明の被膜構造として、実施例2の処理条件での化成処理膜断面TEM写真を図3、その元素分布分析写真を図4に示す。図3のTEM像で鋼材1の表面に化成処理被膜の酸化物被膜層2と被膜層3が形成され、その上層に樹脂層4が見られる。図4の元素分析によって鋼材1の表面の第1層には鉄、フッ素、チタン、酸素が検出され、緻密な金属酸化物が形成されていることがわかる。その上の第2層は成分が異なり、鉄、珪素、酸素が検出される。珪素は粒状で、同位置に酸素が強く検出されることから、添加したシリカ微粒子を示しており、多孔状の被膜が形成されている。第2層の隙間に炭素が検出されることから、粉体エポキシ樹脂塗料の樹脂層4と第2層の多孔状の被膜層3は一体となっていることがわかる。
以上の結果からも明らかなように、本発明の化成処理によって2層の化成処理被膜構造が形成される。これによって、ラインパイプの防食被覆に要求される高温陰極剥離性と浸漬後の耐剥離性能を両立することが可能となる。
1 鋼材
2 鉄、ジルコニウム又はチタン、フッ素、酸素からなる酸化物被膜層
3 鉄、珪素、酸素からなる多孔状の被膜層
4 粉体エポキシ樹脂層
5 変性ポリオレフィン接着剤層
6 ポリオレフィン樹脂層

Claims (5)

  1. 鋼材表面に、鉄、ジルコニウムあるいはチタン、フッ素及び酸素を含み、ジルコニウム元素あるいはチタン元素の比率が鉄元素に対して7%以上の比率となる酸化被膜層からなる第1層と、前記第1層の上に鉄、珪素、及び酸素を含む粒状物が連結して形成され、多孔状物が断面積の30〜80%を占める多孔層からなる第2層と、さらに前記第2層の上に積層されている塗装層が第2層の多孔の隙間に充填された構造を持つ事を特徴とする化成処理被膜を有する塗装鋼材。
  2. 前記請求項1の塗装鋼材表面の化成処理被膜層の第1層が、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムから成る群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする化成処理被膜を有する塗装鋼材。
  3. 前記請求項1の塗装鋼材の製造方法であって、成分として、ジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸、及び線状シリカ微粒子を含み、ジルコンフッ化水素酸又はチタンフッ化水素酸の質量濃度をA、線状シリカの質量濃度をBとそれぞれした時、B/Aの添加量比で0.2〜2.5の範囲で含有する処理液を30℃〜80℃に加熱した鋼材表面に塗布後、乾燥することで化成処理被膜を形成し、ついで前記化成処理被膜の上に塗装を行うことを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
  4. 前記請求項3記載の処理液が、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムから成る群より選ばれる少なくとも1種の金属を含み、ジルコンフッ化水素酸又はフッ化チタン水素酸の質量濃度をA、前記金属の酸化物換算での総質量濃度をCとそれぞれした時、C/Aの添加量比で0.03〜0.5の範囲内であることを特徴とする、請求項3記載の化成処理被膜を有する塗装鋼材の製造方法。
  5. 請求項3又は4記載の塗装鋼材の製造方法において、前記第2層におけるシリカ成分分析の付着量が100〜500mg/m2の範囲内である化成処理被膜を有する塗装鋼材の製造方法。
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