JP2020026439A - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物および硬化物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い耐熱性と電気信頼性に優れたエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物を提供する。【解決手段】式(1)で表されるエポキシ樹脂。(R1は夫々独立にH、C1〜6のアルキル基又はC1〜6のアルコキシ基)【選択図】なし

Description

本発明は耐熱性および電気特性が要求される電気電子材料用途に好適なエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、電気的性質(誘電率・誘電正接、絶縁性)、機械的性質、接着性、熱的性質(耐熱性など)などに優れているため、注型品、積層板、IC封止材料等の電気・電子分野、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。
近年、例えば、電気・電子分野においてはその発展に伴い、樹脂組成物の高純度化をはじめ耐湿性、密着性、誘電特性、フィラー(無機または有機充填剤)を高充填させるための低粘度化、成型サイクルを短くするための反応性のアップ等の諸特性の一層の向上が求められている。又、構造用材料としては航空宇宙材料、レジャー・スポーツ器具用途などにおいて軽量で機械物性の優れた材料が求められている。特に半導体封止分野、基板(基板自体、もしくはその周辺材料)においては、その半導体の変遷に従い、薄層化、スタック化、システム化、三次元化と複雑になっていき、非常に高いレベルの耐熱性や高流動性といった要求特性が求められる。
高機能化で特に要求される特性として耐熱性、耐湿性等が挙げられる。例えば、スマホに代表される通信機器の発達により、薄型化が進み、反り低減の手法として寸法安定性の向上のために、耐熱性が求められる。また、硬化収縮が反りの要因となる場合が多く、硬化収縮のより小さい材料が求められ、半導体パッケージとしての信頼性を保つために種々の特性が求められる。
国際公開第2013/183735号
"2008年 STRJ報告 半導体ロードマップ専門委員会 平成20年度報告"、第8章、p1−1、[online]、平成21年3月、JEITA(社)電子情報技術産業協会 半導体技術ロードマップ専門委員会、[平成24年5月30日検索]、<http://strj-jeita.elisasp.net/strj/nenjihoukoku-2008.cfm> 高倉信之他、松下電工技報 車関連デバイス技術 車載用高温動作IC、74号、日本、2001年5月31日、35−40頁
近年の高信頼性化の中で更なる耐熱性と電気信頼性が要求される中、たとえばパワーデバイス周辺材料であれば駆動温度が175℃まで上昇するため、少なくとも185℃以上の耐熱性が必要になったり、デバイスの高機能化のため、アルミワイヤから銅や銀ワイヤへの変更が想定され、エポキシ樹脂の分子内に含まれる塩素量の低減だけでなく、硫酸イオン分の低減が必要となっており、従来以上の厳しい特性が求められる傾向がある。
また近年の環境問題を重要視するグリーン化の流れから使用する各部材における塩素量を900ppm以下とすることでその部材の全塩素量を900ppm以下に維持する方向性がでており、塩素量が900ppm以下であることが重要となってきており、電子材料の業界として塩素量の低減が必須となってきている。なお、半導体封止材においては特にワイヤの変更等により塩素量の更なる低減が求められており、従来の2/3、さらにはそれ以下の塩素量までの低減が要求されてきている。すなわち少なくとも600ppmを切るような塩素量のエポキシ樹脂が求められる。パワーデバイスの用途においても、高電圧での駆動を想定した破壊電圧試験において塩素等が起因した特性低下が見られ、できるだけ低塩素のエポキシ樹脂が求められている。
これに対して、本発明者らは、フェノールフタレインから誘導されるエポキシ樹脂が耐熱性に優れることから電気電子材料用のエポキシ樹脂として提案している(特許文献1)が、耐熱性及び電気信頼性についてさらなる改良が必要であった。
本発明者らは前記したような実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、
[1]下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、
Figure 2020026439
(式中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
[2]高速液体クロマトグラフィー測定における面積百分率で、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂が1〜10面積%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定における面積百分率で、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂が70〜90面積%であるエポキシ樹脂、
Figure 2020026439
(式中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
[3]全塩素量が1000ppm以下である前項[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂、
(4)95℃の熱水で抽出した抽出水の電気伝導度が30mS/m以下である前項[1]〜[3]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂、
[5]前項[1]〜[4]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂と硬化触媒を含有するエポキシ樹脂組成物、
[6]硬化剤を含有する前項[5]に記載のエポキシ樹脂組成物、
[7]前項[5]又は[6]に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物、
に関する。
本発明のエポキシ樹脂は、その硬化物が耐熱性、電気信頼性に優れた特性を有するため電気電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。
本発明のエポキシ樹脂は下記式(1)
Figure 2020026439
(式中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
に示される構造の化合物を含むエポキシ樹脂であり、多官能のエポキシ樹脂となる。
特許文献1に記載のエポキシ樹脂は主たる構造が二官能のエポキシ樹脂で部分的に一官能のエポキシ樹脂を含むような材料となっており、3官能以上のエポキシ樹脂の含有が認められなかった。このことは樹脂架橋時のネットワークを直線状に伸ばすことはできても三次元化させる効果はなく、耐熱性の向上においてはマイナスの要因であると考えられる。
本発明のエポキシ樹脂は2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミドをエピハロヒドリンで反応させることで得られる。
前記式(1)の構造は従来二官能もしくはそれ以下の官能基数のエポキシ樹脂であった2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミドのエポキシ樹脂に対し、その反応中に現れるヒドロキシル基をさらにエポキシ化することで得ることができる。
更には、フェノール化合物のフェノール性水酸基をグリシジルエーテル化してエポキシ樹脂を製造する場合には、一般にはすべてのフェノール性水酸基にエポキシ環を形成することができず、特に2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミドの様な二官能フェノールのエポキシ樹脂の場合、閉環しきらずモノグリシジルエーテル体ができるだけでなく、エポキシ基を有さない構造ができてしまう傾向にあり、架橋に関与できない化合物ができてしまう傾向がある。
具体的には、前記反応によって下記式(3)
Figure 2020026439
に示される(a)(b)の様な構造を分子内に有するエポキシ樹脂となる。
前記式(3)に示される構造を導入することで、架橋に関与しない構造を低減し、その母骨格の特性を引き出すことにより、耐熱性が向上するだけでなく、分子の動きの拘束により、さらに硬化における収縮の低減をすることができる。
前記式(3)に示される構造を分子内に有するエポキシ樹脂の具体的な構造としては、例えば以下に示されるような構造式等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2020026439
前記構造式で表されるエポキシ樹脂を一般式化すると下記式(4)に示される構造で表される。
Figure 2020026439
(式中、Rは水素原子もしくはグリシジル基を表し、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。nは0〜5の整数を示す。)
ここで、式中Rで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等の直鎖、分岐鎖または環状構造を有するアルキル基が挙げられる。メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が好ましい。
また式中Rで表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の直鎖、分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基が挙げられる。メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
式中nは1〜5が好ましく、1〜4がより好ましい。また、nの平均値は1<nの平均値<5が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂においては前記式(4)で表される構造を有するエポキシ樹脂を1面積%以上含有する物質が好ましい。しかしながら本発明において、全物質を特定し構造同定をすることが困難であることから、特に本発明においては前記式(4)に示される構造のn=1、n=2で表される構造でかつRのうち少なくとも一つがグリシジル基である構造に着目し、その含有量を定める。すなわち、本発明のエポキシ樹脂の含有量が1面積%以上含まれることによりこれを証明することとする。
なお、含有量の測定値は、高速液体クロマトグラフィーで測定した値であり単位は面積%で、検出UVは274nmである。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーではこれら構造の分離が困難であるため、高速液体クロマトグラフィーで測定を行った。
本発明のエポキシ樹脂は、前記式(1)で表される構造の樹脂を1〜10面積%含有することが好ましく、特に2〜10面積%含有することが好ましい。10面積%を超えている場合、全体の分子量が大きくなりすぎてしまうため、粘度が非常に高い樹脂となり、半導体封止用材料や薄膜の相関絶縁膜、無機物を多く入れないといけないパッケージ基板においては使用が困難となることがある。具体的には溶融粘度が2.0Pa・s以下でないと他の樹脂を混合しても低粘度化が困難となることがあり、かつ使用するために他の樹脂を多量に混合する必要性が生じるため、本発明のエポキシ樹脂の特性を活かしきれないことがある。
また、本発明のエポキシ樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定における面積百分率で、前記式(2)で表されるエポキシ樹脂が70〜90面積%含有することが好ましい。
さらには前述に記載するような一官能体や官能基を有さない構造を5面積%以上含有しないことが好ましく、特に3%以上含有しないことが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量は260〜285g/eq.が好ましく、より好ましくは、260〜280g/eq.である。エポキシ当量が285g/eq.を超えると単位構造当たりのエポキシ基の量が少なくなることを示し、エポキシ基の数が少なくなることを意味する。エポキシ基の数が少なくなると耐熱性の面で好ましくないことがある。
前記反応により得られた本発明のエポキシ樹脂に残存している全塩素量としては1000ppm以下が好ましく、より好ましくは900ppm以下であり、特に600ppm以下であることが好ましい。
熱水(95℃)抽出により抽出される抽出水に含まれる硫酸イオンについても1000ppm以下が好ましく、特に900ppm以下が好ましい。
近年のトレンドからICパッケージのワイヤは金から銅や銀に代わってきており、塩素イオンや硫酸イオンの含有量に対して敏感になってきている。全塩素が高いと吸湿をした状態で加熱されたり、高い電圧がかかった際に結合している塩素が外れ塩素イオンとして乖離してしまうおそれがある。この乖離した塩素イオンがワイヤの腐食に影響する要因となることから着目されており、この量がHAST等の試験における短絡の優位な差として現れる。
さらに、前述の課題においては、樹脂における熱水(95℃)抽出の抽出水のpHも大きく影響するおそれがある。pHが大きく酸性に触れていると、前記ワイヤによる腐食を促進させる効果が大きいことが知られている。一般に水のpHは5−6(空気中の二酸化炭素を吸収するためpH7にはならない)であることからこの範囲から大きく酸性側に触れることは好ましくなく、特にpH5以上となることが好ましい。
なお、同様に電気信頼性の面から樹脂における熱水(95℃)抽出の抽出水の電気伝導度が30mS/m以下であることが好ましく、より好ましくは25mS/m以下であり、特に好ましくは20mS/m以下である。抽出水の電気伝導度は、樹脂に含有される総イオン性不純物が関与し、上記の値を満たすことが電気信頼性の向上に有効である。当該値の向上においては反応後、樹脂として取り出す前の樹脂溶液の精製を繰り返すことで達成できる。
本発明のエポキシ樹脂は軟化点を有する樹脂状の形態を有する。ここで、軟化点としては80〜110℃が好ましい。軟化点が低すぎると分子があまりつながっていない状態を示す、もしくは溶剤等の残留を意味し、耐熱性への影響や、硬化不良、成型時のボイド等の課題が現れることがある。逆に、軟化点が高すぎる場合、他の樹脂との混練の際に、ハンドリングが悪くなることがある。
また、溶融粘度は0.5〜2.0Pa・s(ICI 溶融粘度 150℃ コーンプレート法)が好ましく、より好ましくは0.7〜1.5Pa・sであり、特に0.8〜1.5Pa・sであることが好ましい。粘度が小さすぎる場合、官能基のない1官能体の量が多くなっている可能性が高いこと、また分子量分布が小さい場合、結晶性が現れ、高い融点となり取り扱いが困難になることがあり、また溶剤への溶解性に課題が出てくることがある。
以下、本発明のエポキシ樹脂の製造法について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、例えばフェノールフタレインとアニリンから合成される下記式(P)で表される(例えば、日本国特開2005−290378号公報が挙げられる)フェノール化合物(PPA)とエピハロヒドリンとの反応で得られる。
Figure 2020026439
(式中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
本発明においては、Rは水素原子であることが最も好ましい。
ここで、式中Rで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等の直鎖、分岐鎖または環状構造を有するアルキル基が挙げられる。メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
また式中Rで表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の直鎖、分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基が挙げられる。メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂の具体的な製造方法例を以下に示す。
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、エピハロヒドリンとしては工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量はフェノール化合物(PPA)の水酸基1モルに対し3.0〜5.5モルが好ましい。3.0モルを下回るとエポキシ当量が大きくなることがあり、また、エポキシ樹脂の軟化点が大きくなりすぎるため、作業性が悪くなる可能性があり、5.5モルを超えると、反応中にエピハロヒドリンによりPPA同士のつながった物が少なくなり、結果的に前記式(1)の構造になるものが少なくなることから、目的とする前記式(1)の構造を増加させることができないことがある。
上記エポキシ化反応においてはアルカリ金属水酸化物が使用できる。
上記反応において使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよい。本発明においては特に、溶解性、ハンドリングの面からフレーク状に成型された固形物の使用が好ましい。
アルカリ金属水酸化物の使用量は原料フェノール化合物の水酸基1モルに対して通常1.05〜1.3モルであり、好ましくは1.05〜1.2モル、より好ましくは1.05〜1.15モルである。アルカリ金属水酸化物の添加量が1.05モルを切る場合、塩素量が多くなる傾向がみられ、また1.2モルを超える場合、エポキシの開環物が多くなり、耐熱性の低下することがある。
反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加してもよい。4級アンモニウム塩の使用量としては原料のフェノール化合物の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。本発明においては特に4級アンモニウム塩の添加は好ましく、前記式(3)の構造を増加させる傾向がある。
しかしながら多量のクロライド塩の添加は全塩素量を増加させる影響があることから前述の範囲内に収めることが好ましい。
本反応においては上記エピハロヒドリンに加え、非極性プロトン溶媒(ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジメチルイミダゾリジノン等)を用いることが好ましい。非極性プロトン溶媒はエピハロヒドリンの使用量に対し通常1〜50重量%であり、好ましくは4〜25重量%である。1%を切ると反応中にゲル物ができやすく、収率の低下がみられる他、前記式(1)の構造ができにくくなることがある。また、本樹脂においては水の添加が好ましく、エピハロヒドリンの使用量に対し通常0.1〜8%であり、より好ましくは0.5〜5%であり、特に好ましくは0.5〜3%の水の共存が好ましい。水の添加が多すぎると前記式(1)の構造ができにくく、またエポキシ基が開環した化合物ができやすくなり、耐熱性に悪影響を及ぼす可能性がある。また初期の水の添加が多すぎる場合、系内に濁りが多い場合、できたエポキシ樹脂に濁りが生じる場合があるので水の添加量のコントロールが必要である。
なお、アルコール類の添加も反応促進のためには有効であるが、水同様、入れすぎると前記式(1)の構造ができにくく、またエポキシ基が開環した化合物ができやすくなり、耐熱性に悪影響を及ぼす可能性がある。エピハロヒドリンの使用量に対し、8%以下が好ましく、より好ましくは5%、特に1%以下にすることが好ましい。
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。特に本発明においては、より高純度なエポキシ化のために30〜55℃での反応が好ましい。30℃以上であれば、反応の進行が極度に遅くならず、また55℃以下であれば、前記式(1)に示される構造を含有するエポキシ樹脂の含有量が十分なものとなる。
反応終了後、反応を最後まで追い込むために60〜80℃で後反応を行うことは好ましい。時間は15分〜4時間が好ましく、特に好ましくは30分〜2時間である。本反応が終わっていない状態で次工程に進むとエポキシ化されていないフェノール性水酸基が残ってしまうことがあり、後の溶剤除去工程においてエポキシ樹脂とフェノール性水酸基が反応してしまうことでゲル化してしまう可能性がある。
これらのエポキシ化反応の反応物を反応終了後、水洗、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂を炭素数4〜7のケトン化合物(たとえば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。)を溶剤として溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した原料フェノール化合物の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モルであり、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃であり、反応時間は通常0.5〜2時間である。
またエピハロヒドリンとの反応においては反応初期から窒素等の不活性ガスで置換されていることが好ましく、反応雰囲気の酸素濃度は10%以下であることが好ましい。
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に100〜250℃の加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂の他、硬化触媒を必須成分とする。また、任意成分として他のエポキシ樹脂や硬化剤を含有することは好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂以外に他のエポキシ樹脂を含有する場合、全エポキシ樹脂中、本発明のエポキシ樹脂の割合は20重量%以上が好ましく、より好ましくは30重量%以上であり、特に40重量%以上であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂と併用し得る他のエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン又は1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類並びにアルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
特に本発明のエポキシ樹脂組成物を光学用途に用いる場合、本発明のエポキシ樹脂と脂環式エポキシ樹脂やシルセスキオキサン構造のエポキシ樹脂とを併用して用いることが好ましい。特に脂環式エポキシ樹脂の場合、骨格にエポキシシクロヘキサン構造を有する化合物が好ましく、シクロヘキセン構造を有する化合物の酸化反応により得られるエポキシ樹脂が特に好ましい。
シクロヘキセン構造を有する化合物としては、シクロヘキセンカルボン酸とアルコール類とのエステル化反応あるいはシクロヘキセンメタノールとカルボン酸類とのエステル化反応(Tetrahedron vol.36 p.2409(1980)、Tetrahedron Letter p.4475(1980)等に記載の手法)、あるいはシクロヘキセンアルデヒドのティシェンコ反応(日本国特開2003−170059号公報、日本国特開2004−262871号公報等に記載の手法)、さらにはシクロヘキセンカルボン酸エステルのエステル交換反応(日本国特開2006−052187号公報等に記載の手法)によって製造できる化合物が挙げられる。
アルコール類としては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないがエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオールなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。またカルボン酸類としてはシュウ酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれに限らない。
さらに上記以外のシクロヘキセン構造を有する化合物として、シクロヘキセンアルデヒド誘導体と、アルコール体とのアセタール反応によるアセタール化合物が挙げられる。反応手法としては一般のアセタール化反応を応用すれば製造でき、例えば、反応媒体にトルエン、キシレンなどの溶媒を用いて共沸脱水しながら反応を行う方法(米国特許第2945008号公報)、濃塩酸に多価アルコールを溶解した後アルデヒド類を徐々に添加しながら反応を行う方法(日本国特開昭48−96590号公報)、反応媒体に水を用いる方法(米国特許第3092640号公報)、反応媒体に有機溶媒を用いる方法(日本国特開平7−215979号公報)、固体酸触媒を用いる方法(日本国特開2007−230992号公報)等が開示されている。構造の安定性から環状アセタール構造が好ましい。
これらエポキシ樹脂の具体例としては、ERL−4221、UVR−6105、ERL−4299(全て商品名、いずれもダウ・ケミカル製)、セロキサイド2021P、エポリードGT401、EHPE3150、EHPE3150CE(全て商品名、いずれもダイセル化学工業製)及びジシクロペンタジエンジエポキシドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない(参考文献:総説エポキシ樹脂 基礎編I p76−85)。
これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明に使用できる硬化触媒の具体例としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等の各種の複素環式化合物類、及びそれら複素環式化合物類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルセチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等のアンモニュウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、カルボン酸金属塩(2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミスチリン酸などの亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩)やリン酸エステル金属(オクチルリン酸、ステアリルリン酸等の亜鉛塩)、アルコキシ金属塩(トリブチルアルミニウム、テトラプロピルジルコニウム等)、アセチルアセトン塩(アセチルアセトンジルコニウムキレート、アセチルアセトンチタンキレート等)等の金属化合物等が挙げられる。本発明においては特にホスホニウム塩やアンモニウム塩、金属化合物類が硬化時の着色やその変化の面において好ましい。また4級塩を使用する場合、ハロゲンとの塩はその硬化物にハロゲンを残すことになり、電気信頼性および環境問題の視点から好ましくない。
硬化触媒の使用量は、エポキシ樹脂100に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じて用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤を含有することができる。用いることができる硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール樹脂、カルボン酸系化合物などが挙げられる。具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物(アミン、アミド化合物);無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン又は1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのフェノール樹脂;イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明においては特に電子材料用途に使用するため、特にフェノール樹脂を用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物における硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られないことがある。
なお、他成分としてシアナートエステル化合物の使用することができる。シアナートエステル化合物は単独での硬化反応に加え、エポキシ樹脂との反応により、より架橋密度の高い、耐熱性の硬化物とすることができる。シアナートエステル樹脂としては、例えば、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、これらの誘導体、芳香族シアネートエステル化合物等が挙げられる。また、例えば前述の硬化剤に記載したような、各種フェノール樹脂と青酸もしくはその塩類との反応により合成も可能である。本発明においては特に2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンやその誘導体(部分重合物等)のように分子内にベンジル位のメチレン構造を有しない構造のものが好ましく、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1以上であれば難燃性が十分となり、0.6以下では硬化物の吸湿性、誘電特性がより優れたものとなる。
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、エポキシ樹脂と硬化剤の合計100重量部に対して通常0.05〜50重量部であり、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。無機充填剤の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜95重量%を占める量が用いられる。
更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、酸化防止剤、光安定剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。特にカップリング剤についてはエポキシ基を有するカップリング剤、もしくはチオールを有するカップリング剤の添加が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えばエポキシ樹脂成分と硬化触媒並びに必要により硬化剤成分、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材および配合剤等とを必要に応じて押出機、ニーダー、ロール、プラネタリーミキサー等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、得られたエポキシ樹脂組成物が液状である場合はポッティングやキャスティングにより、該組成物を基材に含浸したり、金型に流し込み注型したりして、加熱により硬化させる。また得られたエポキシ樹脂組成物が固形の場合、溶融後注型、あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに加熱により硬化させる。硬化温度、時間としては通常80〜200℃で2〜10時間である。硬化方法としては高温で一気に硬化させることもできるが、ステップワイズに昇温し、硬化反応を進めることが好ましい。具体的には80〜150℃の間で初期硬化を行い、100℃〜200℃の間で後硬化を行う。硬化の段階としては2〜8段階に分けて昇温するのが好ましく、より好ましくは2〜4段階である。
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、エポキシ樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%であり、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。
また本発明のエポキシ樹脂組成物をフィルム型封止用組成物として使用することもできる。このようなフィルム型樹脂組成物を得る場合は、本発明のエポキシ樹脂組成物を剥離フィルム上に前記ワニスを塗布し加熱下で溶剤を除去、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤を得る。このシート状接着剤は、多層基板などにおける層間絶縁層、光半導体の一括フィルム封止として使用することが出来る。
本発明のエポキシ樹脂組成物の具体的な用途としては、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物)や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。本発明においては、電子材料用の絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物)への使用が特に好ましい。
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止剤、基板としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなど用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)およびパッケージ基板などを挙げることができる。またネットワーク基板や、モジュール基板といった機能性が求められる基板用途へも好適である。
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
エポキシ当量: JIS K 7236 (ISO 3001) に準拠
ICI溶融粘度: JIS K 7117−2 (ISO 3219) に準拠
軟化点: JIS K 7234 に準拠
全塩素: JIS K 7243−3 (ISO 21672−3) に準拠
鉄分: ICP発光分光分析
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC):
カラム(Shodex KF−603、KF−602x2、KF−601x2)
連結溶離液はテトラヒドロフラン
流速は0.5ml/min.
カラム温度は40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):
カラム :Inertsil ODS−2(ジーエルサイエンス)
検出器 :UV 274nm
温度 :40℃
溶離液 :アセトニトリル/水
流量 :1.0ml/min
注入量 :5μl(濃度: 約10mg/6ml)
グラジエントプログラム
アセトニトリル/水
スタート 30/70 グラジエント →28分後 100/0 そのまま保持
合成例1
ディーンスタークを具備した還流冷却管、撹拌装置、窒素導入管、温度計を備えた2Lの4つ口フラスコに窒素パージを施しながらアニリン664部、濃塩酸242部、フェノールフタレイン319部を投入し、170℃のオイルバス中、還流状態で20時間、ディーンスタークで生成する水を抜きながら反応を行った。
反応終了後、反応混合物を1276部の5%の塩酸中に滴下し、析出した結晶を減圧濾過、その後、得られた結晶を10%水酸化ナトリウム水溶液に完全に溶解するまで加え溶解した。溶解確認後、活性炭(味の素ファインテクノ CP1)300部を加え、1時間撹拌、その後、減圧濾過により、活性炭を除去した後、得られた溶液に対し、10%塩酸で中和を行った。中和終了後、析出した結晶を濾過することで、361部の結晶(未乾燥 ウエットケーキ)得た。
得られたウエットケーキを1224部のメタノールで再結晶を行った後、真空乾燥機で乾燥することで目的とするフェノール化合物(PPA)を196部得た。
得られたフェノール化合物(PPA)の純度は99%(HPLC測定結果)以上であった。
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコに窒素パージを施しながらフェノール化合物(PPA)196.5部、エピクロロヒドリン472部(5.1当量部)、ジメチルスルホキシド115部、水5.2部(約1.1%対エピクロロヒドリン)を加え、水浴を45℃にまで昇温した。フレーク状の水酸化ナトリウム44部(1.1当量部)を90分かけて分割添加した後、更に40℃で2時間、70℃で1時間で後反応を行った。反応終了後、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、50〜80℃の温水で水洗を行い、残留する塩を除いたのち、70℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP1)を248部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は264g/eq.、軟化点が95℃、ICI溶融粘度1.0Pa・s(150℃)、全塩素量360ppmであった。また95℃の熱水による抽出水のpHは5.9(ブランク5.88)、電気伝導度は0.11mS/mであった。
また前記式(2)の構造は83面積%(GPC)であり、HPLCにおける前記式(1)の構造が4.5面積%。前記式(4)におけるn=1とn=2における2つ存在するRの少なくとも一つががグリシジル基であるものの総計(以下、n=1とn=2の総計と称す)は6面積%であった。また1官能体の総計は1面積%以下であった。
実施例2〜4
エピクロロヒドリン量、水、水酸化ナトリウム量、水酸化ナトリウム水溶液量について以下に示す表の仕込み比率とした以外は、実施例1と同じ条件で合成し、エポキシ樹脂(EP2〜EP4)を得た。結果を以下に示す。


Figure 2020026439
実施例1〜4で得られるエポキシ樹脂は1官能体が少なく、式(1)の構造が多く含まれており、多官能のエポキシ樹脂となっていることがわかる。
実施例5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコに窒素パージを施しながらフェノール化合物(PPA)196.5部、エピクロロヒドリン490部(5.3当量部)、ジメチルスルホキシド115部、水15.7部(約3.2%対エピクロロヒドリン)、テトラエチルアンモニウムブロマイド2部を加え、水浴を45℃にまで昇温した。フレーク状の水酸化ナトリウム48部(1.2当量部)を90分かけて分割添加した後、更に40℃で2時間、70℃で1時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP5)を240部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は269g/eq.、軟化点が98℃、ICI溶融粘度0.9Pa・s(150℃)、全塩素量 370ppmであった。また95℃の熱水による抽出水のpHは5.9(ブランク5.88)、電気伝導度は0.2mS/mであった。
また前記式(2)の構造は84面積%(GPC)であり、HPLCにおける前記式(1)の構造が5.3面積%。前記式(4)におけるn=1とn=2の総計は7.3面積%であった。また1官能体の総計は1面積%以下であった。
比較例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4つ口フラスコに窒素パージを施しながらフェノール化合物(PPA)196.5部、エピクロロヒドリン509部(5.5当量部)、メタノール51部を加え、内温を70℃にまで昇温した。フレーク状の水酸化ナトリウム44部(1.1当量部)を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液3部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP6)を249部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は277g/eq.、軟化点が96℃、ICI溶融粘度0.6Pa・s(150℃)、全塩素量2230ppmであった。また95℃の熱水による抽出水のpHは5.9(ブランク5.88)、電気伝導度は0.25mS/mであった。
また前記式(2)の構造は82面積%(GPC)であり、HPLCにおける前記式(1)の構造が1面積%未満であった。前記式(4)におけるn=1とn=2の総計は1面積%未満であった。また1官能体の総計は5.6面積%以下であった。
比較例2
比較例1の水酸化ナトリウム水溶液の量を3部から30部に変更した以外は同様に合成を行った。
得られたエポキシ樹脂(EP7)のエポキシ当量は270g/eq.、軟化点が92℃、ICI溶融粘度0.5Pa・s(150℃)、全塩素量1630ppmであった。また95℃の熱水による抽出水のpHは5.9(ブランク5.88)、電気伝導度は0.22mS/mであった。
また前記式(2)の構造は83面積%(GPC)であり、HPLCにおける前記式(1)の構造が1面積%未満であった。前記式(4)におけるn=1とn=2の総計は1面積%未満であった。また1官能体の総計は4.2面積%以下であった。
比較例3
比較例2のエピクロロヒドリン量を509部(5.5当量部)から638部(6.9当量部)、フレーク状の水酸化ナトリウム44部(1.1当量部)から48部(1.2当量部)にした以外は同様にして合成した。
得られたエポキシ樹脂(EP8)のエポキシ当量は267g/eq.、軟化点が89℃、ICI溶融粘度0.5Pa・s(150℃)、全塩素量1100ppmであった。また95℃の熱水による抽出水のpHは5.9(ブランク5.88)、電気伝導度は0.12mS/mであった。
また前記式(2)の構造は90面積%(GPC)であり、HPLCにおける前記式(1)の構造が1面積%未満であった。前記式(4)におけるn=1とn=2の総計は1面積%未満であった。また1官能体の総計は3.1面積%以下であった。
実施例6〜10、比較例4〜6
前記で得られたエポキシ樹脂(EP1〜8)、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製 H−1 軟化点84℃ 水酸基当量104g/eq. 以下、P―1と称す。)、硬化促進剤(硬化触媒)としてトリフェニルホスフィン(東京化成製)を使用し、表2の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、本発明のエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を粉砕後、タブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
Figure 2020026439
実施例11、12、比較例7
前記で得られたエポキシ樹脂(EP1 EP3、EP7)、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製 H−1 軟化点84℃ 水酸基当量104g/eq. 以下、P―1と称す。)を使用し、表3の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、本発明のエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を粉砕後、タブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、評価用試験片を得た。
Figure 2020026439
表2,3から、本件発明のエポキシ樹脂を用いた硬化物は、比較例に比べて高い耐熱性を維持したまま、ピール強度が向上しており密着性、強靭性に優れていることがわかる。また硬化収縮率が小さく、機械強度にも優れているため、電気・電子部品等に使用した場合、安全性が高いと考えられる。
実施例13〜16
前記で得られたエポキシ樹脂(EP2,4)、硬化剤としてビフェニレンフェノールアラルキル樹脂(日本化薬製 KAYAHARD GMK−L 軟化点65℃ 水酸基当量201g/eq.以下、P―2と称す。)、フェノールアラルキル樹脂(三井化学製 ミレックスXLC−3L 以下、P−3と称す。)、硬化促進剤(硬化触媒)としてトリフェニルホスフィン(東京化成製)、シリカゲル(瀧森製MSR−2122)、カップリング剤(信越化学製 KBM−303)、離型剤(カルナバワックス セラリカ野田製)を使用し、表4の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、本発明のエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂脂組成物を粉砕後、タブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後160℃×2時間+180℃×6時間の条件で硬化、0.8mm厚の評価用試験片を得た。得られた試験片についてUL−94に準拠し、難燃性を試験したところ、いずれも高い難燃性を示すことが確認できた。
Figure 2020026439
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2015年10月7日付で出願された日本国特許出願(特願2015−199843)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。



Claims (7)

  1. 下記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
    Figure 2020026439
    (式中Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
  2. 高速液体クロマトグラフィー測定における面積百分率で、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂が1〜10面積%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定における面積百分率で、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂が70〜90面積%であるエポキシ樹脂。
    Figure 2020026439
    (式中Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
  3. 全塩素量が1000ppm以下である請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂。
  4. 95℃の熱水で抽出した抽出水の電気伝導度が30mS/m以下である請求項1及至請求項3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂。
  5. 請求項1及至請求項4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂と硬化触媒を含有するエポキシ樹脂組成物。
  6. 硬化剤を含有する請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項5又は請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物。

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