JP2020023675A - 蓄光材料の製造方法及び蓄光材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも少ない希土類元素の使用でも高い輝度特性を有し、かつ均質な発光をする蓄光材料を製造する方法を提供する。【解決手段】粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器中に、水及び/又は有機溶媒、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物、希土類化合物、及び第13族元素化合物を所定の関係を満たすモル比で供給して原料混合物を得る工程(1)と、混合スラリーの粒度分布から算出されるD50が1.7μm以下、かつD90が2.7μm以下となるまで該反応容器中で、原料混合物の混合・粉砕処理を行って混合スラリーを得る工程(2)と、該混合・粉砕処理で得られた混合スラリーを40mPa・sec以上の粘度に調製したうえで噴霧乾燥する工程(3)とを含むことを特徴とする蓄光材料の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、蓄光材料の製造方法及び蓄光材料に関する。
蓄光材料は、照射された光のエネルギーを蓄えて、光照射を止めた後も発光する性質を有する材料である。蓄光材料は、時計の文字盤やキーホルダー等の日用品の他、地下施設での避難誘導板等の材料として使用されている。
現在普及している緑色蓄光体は、SrAlにユーロピウム及びジスプロシウムの2種類の希土類元素を賦活したものである。この蓄光体は、希土類の添加量と蓄光体の残光特性に相関があることが知られており、添加量が少ないと発光特性が低下することになる(特許文献1参照)。蓄光材料については、残光特性を向上させるための種々の検討がなされている(特許文献2〜9参照)。
特許第4597865号公報 特開2015−214702号公報 特開2006−152242号公報 特開2001−271064号公報 特開平8−127772号公報 特開平7−324186号公報 特開平7−11250号公報 国際公開第2005/044944号 特開2004−323656号公報
上述のとおり現在普及している蓄光材料は、SrAl等の母材に希土類元素を賦活したものであるが、希土類は他の金属と比較して希少であることや、その偏在性ゆえに特定の産出国への依存度が高いこと、また代替も困難であること等から、我が国の中長期的な安定供給確保に対する懸念が生じている。それゆえ、希土類元素の代替・使用量低減が求められるが、上記特許文献1に示されているとおり、希土類元素の添加量と蓄光体のりん光特性には相関があり、添加量が少ないとりん光特性が低下することになる。またSrAlを母材とする蓄光材料を製造する際、一般的にはSr配合量に対してAl配合量を量論組成以上となるように配合するが、この場合、SrAl1425などの他の組成比のアルミン酸ストロンチウムが副生して混相状態となる。副生した異相にも希土類元素が固溶するため、SrAl中に固溶する希土類元素量が減少し、りん光輝度が低下するため、希土類元素を過剰に添加する必要がある。これらの理由により、希土類元素の添加量を減らすことが難しいのが現状である。
更に従来から一般的に採用されているプロセス(乾式原料混合→焼成→粉砕)では、原料の粉砕混合が不十分であるため異相が生じやすいという課題がある。また、焼成して得られた蓄光体は非常に硬く焼結していることから粉砕工程で微細粒子が大量に発生し粒度分布が非常にブロードとなる。蓄光体のりん光強度とりん光時間は粒子サイズと相関があり、小さな粒子ほど、りん光輝度が低く、りん光時間が短くなる傾向がある。つまり、粒径が大きく異なる粒子を樹脂等に配合すると発光が不均一になるため、蓄光材料の製造工程には微細粒子や粗大粒子を取り除く分級工程が必須となるが、この工程により、蓄光材料の収率が低くなり、コスト高の一因となっているという課題がある。
このように、従来の蓄光材料には解決すべき様々な課題があるのが現状である。
本発明は、上記現状に鑑み、従来よりも少ない希土類元素の使用でも高い輝度特性を有し、かつ均質な発光をする蓄光材料を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来よりも少ない希土類元素の使用でも高い輝度特性を有し、かつ均質な発光をする蓄光材料を製造する方法について検討したところ、粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器中に、水及び/又は有機溶媒、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物、希土類化合物、及び、第13族元素化合物を所定のモル比で供給して原料混合物を得た後、該反応容器中で、原料混合物から混合スラリーを得るための混合・粉砕処理を、混合スラリーの粒度分布から算出されるD50が1.7μm以下、かつD90が2.7μm以下となるまで行い、該混合・粉砕処理で得られた混合スラリーを40mPa・sec以上の粘度に調製したうえで噴霧乾燥して蓄光材料を製造すると、従来よりも少ない希土類元素の使用でも高い輝度特性を有し、かつ均質な発光をする蓄光材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器中に、水及び/又は有機溶媒、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物、希土類化合物、及び第13族元素化合物を下記のモル比で供給して原料混合物を得る工程(1)と、混合スラリーの粒度分布から算出されるD50が1.7μm以下、かつD90が2.7μm以下となるまで該反応容器中で、原料混合物の混合・粉砕処理を行って混合スラリーを得る工程(2)と、該混合・粉砕処理で得られた混合スラリーを40mPa・sec以上の粘度に調製したうえで噴霧乾燥する工程(3)とを含むことを特徴とする蓄光材料の製造方法である。
1.88<E/(A+B+C)≦2.10
0.001<D/(A+B+C)<0.025
0<B/(A+B+C)<0.02
0<F/(A+B+C)<0.03
A:アルカリ土類金属化合物中のアルカリ土類金属元素の総モル数
B:アルカリ金属化合物中のアルカリ金属元素の総モル数
C:希土類化合物中の希土類元素の総モル数
D:各希土類化合物中の各希土類元素のモル数
E:第13族元素化合物中のホウ素を除く第13族元素の総モル数
F:第13族元素化合物中のホウ素のモル数
上記粉砕媒体撹拌型粉砕機は、ビーズミルであることが好ましい。
上記反応容器中に供給する第13族元素化合物がアルミニウム化合物とホウ素化合物であることが好ましい。
本発明はまた、SrAlで表される化合物を母体結晶とし、ユーロピウム、ジスプロシウム、リチウム、及び、ホウ素を添加した蓄光材料であって、
ユーロピウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0.001を超えて、0.025未満であり、
ジスプロシウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0.001を超えて、0.025未満であり、
アルミニウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が1.88を超えて、2.10以下であり、
リチウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0を超えて、0.02未満であり、
ホウ素のモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0を超えて、0.03未満であることを特徴とする蓄光材料でもある。
上記蓄光材料は、蓄光材料断面の反射電子像の画像解析から、以下の方法により求められる希土類元素の偏在率が1%以下であることが好ましい。
[希土類原子の偏在率測定]
蓄光材料断面の反射電子像の各ピクセルについて256階調のグレーレベルで色判定した結果のヒストグラムにおいて、母体結晶の占める面積であるグレーレベルが150〜200の間のピーク面積aで、希土類元素の占める面積であるグレーレベルが250以上の範囲におけるピーク面積bを除した値(b/a)を希土類原子の偏在率とする。
上記蓄光材料は、エタノールを分散媒として使用し、レーザー回折・散乱式粒度分布計を使用して測定した粒度分布測定で得られるD25値をD75値で除した値が0.45を超えることが好ましい。
本発明の蓄光材料の製造方法は、従来よりも少ない希土類元素の使用でも輝度特性に優れ、かつ、均質な発光をする蓄光材料を製造することができる、蓄光材料の有用な製造方法である。
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
1.蓄光材料の製造方法
本発明の蓄光材料の製造方法は、粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器中に、水及び/又は有機溶媒、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物、希土類化合物、及び、第13族元素化合物を所定の割合で供給して原料混合物を得る工程(1)と、混合スラリーの粒度分布から算出されるD50が1.7μm以下、かつD90が2.7μm以下となるまで該反応容器中で、工程(1)で得られた原料混合物の混合・粉砕処理を行って混合スラリーを得る工程(2)と、工程(2)の混合・粉砕処理で得られた混合スラリーを40mPa・sec以上の粘度に調製したうえで噴霧乾燥する工程(3)とを含むことを特徴とする。
このような工程を含む製造方法で製造すると、希土類元素を効率よく母材中に固溶することができ、また粒径の揃った粒度分布の狭い蓄光材料として得られる。これらにより、従来よりも少ない希土類元素の使用でも輝度特性や発光の均質性に優れ、シート化したときの輝度ムラの少ない蓄光材料を得ることができる。また、粒度分布の狭い蓄光材料が得られるために分級工程を設ける必要がなく、また、分級工程を設けた場合でも選別される蓄光材料の割合が少ないため、高い収率で優れた特性の蓄光材料を得ることができる。
上記工程(1)では、粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器中に、水及び/又は有機溶媒、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属、希土類化合物、及び、第13族元素化合物が供給される。これらの原料の供給される割合は下記のモル比であることを特徴とする。
1.88<E/(A+B+C)≦2.10
0.001<D/(A+B+C)<0.025
0<B/(A+B+C)<0.02
0<F/(A+B+C)<0.03
A:アルカリ土類金属化合物中のアルカリ土類金属元素の総モル数
B:アルカリ金属化合物中のアルカリ金属元素の総モル数
C:希土類化合物中の希土類元素の総モル数
D:各希土類化合物中の各希土類元素のモル数
E:第13族元素化合物中のホウ素を除く第13族元素の総モル数
F:第13族元素化合物中のホウ素のモル数
このような割合であると、各原料が過不足なく供給されているといえ、異相の副生が十分に抑制されるため、得られる蓄光材料がりん光輝度に優れたものとなる。
上記工程(1)において供給する水及び/又は有機溶媒の量は、反応容器中に供給するアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属、希土類化合物、及び、第13族元素化合物の合計100重量部に対して、100〜300重量部であることが好ましい。このような割合であると、原料の粉砕・混合を効率よく行うことができる。
なお、ここでいう「水及び/又は有機溶媒の量」は、水、有機溶媒のいずれか一方のみを供給する場合にはそれらの量を表し、水と有機溶媒の両方が供給される場合にはそれらの合計量を意味する。
上記工程(1)において供給されるアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されないが、Be、Mg、Ca、Sr、及びBaから選択される1種以上の金属の化合物が挙げられる。その化合物としては、例えば上記金属の炭酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
中でもカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)から選択される少なくとも1つの金属の化合物が好ましく、取り扱いが容易な点で特に炭酸ストロンチウムが好ましい。
上記工程(1)において供給されるアルカリ金属化合物としては、特に限定されないが、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrから選択される1種以上の金属の化合物が挙げられる。その化合物としては、例えば上記金属の炭酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
中でもリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)から選択される少なくとも1つの金属の化合物が好ましく、取り扱いが容易な点で特に炭酸リチウムが好ましい。
上記工程(1)において供給される希土類化合物としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等から選択される1種以上の金属の化合物が挙げられる。その化合物としては、例えば上記金属の炭酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
中でもセリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、及びエルビウム(Er)から選択される少なくとも1つの金属の化合物が好ましく、さらにそのなかでもユーロピウム(Eu)の化合物が好ましく、取り扱いが容易な点で特に酸化ユーロピウムが好ましい。これはEuが材料の発光中心として強く作用する元素だからである。また、Eu発光中心に対して、Dy、Ho、Ce、Nd、Erといった希土類元素を添加するとりん光時間を長くする作用があるため、その組み合わせや量は蓄光性という観点では重要である。
上記工程(1)において供給される第13族元素化合物としては、特に限定されないが、B、Al、Ga、In、Tl等から選択される1種以上の元素の化合物が挙げられる。その化合物としては、例えば酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
中でもアルミニウム(Al)の化合物が好ましく、取り扱いが容易な点で特に酸化アルミニウムが好ましい。
上記第13族元素化合物としては、ホウ素化合物も好ましい。ホウ素化合物としては、ホウ酸や酸化ホウ素が挙げられる。
上記工程(1)においては、水及び/又は有機溶媒が供給されるが、有機溶媒としては、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類といった水溶性有機溶媒が挙げられる。また本発明の効果を損なわない範囲で他の分散媒を含んでいてもよい。
上記工程(1)において供給される原料は、水及び/又は有機溶媒、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属、希土類化合物、及び、第13族元素化合物を含むものである限り、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、粒子の分散性を高めるための分散剤、粒子の結晶性を高めるためのフラックス成分等が挙げられる。
上記分散剤の例としては、特に限定されないが、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤としては、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられ、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記粒子の結晶性を高めるためのフラックス成分としては、特に限定されないが、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記工程(1)では、粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器を使用する。ここで、粉砕媒体撹拌型粉砕機とは、粉砕容器内に粉砕媒体を投入し、被粉砕物とともに、粉砕容器を揺動、回転(自転又は公転)させて撹拌するか、粉砕媒体を撹拌部で直接撹拌して、粉砕を行う粉砕機をいう。
粉砕媒体撹拌型粉砕機の例としては、特に限定されないが、遊星ミル、ビーズミル、及び振動ミルからなる群から選択されるいずれか1種であるのが好ましい。なかでも、ビーズミルが特に好ましい。
上記粉砕媒体としては、特に限定されないが、アルミナボール、ジルコニアボール、窒化珪素ボール、窒化炭素ボール、ガラスビーズ、ナイロン被覆鉄芯ボール等が挙げられ、直径10mm以下のものが主に使用される。なかでもアルミナボールが好ましい。これは原料混合物成分元素として第13族元素が含まれているため、同族の元素で構成される材質のボールからその成分が混入したとしても不純物として作用する影響が小さいためである。
目的に応じた大きさの粉砕媒体を使用することで、粉砕容器中で原料混合物が粉砕媒体と共に強力に撹拌されて、効率的に粉砕、混合、及び分散媒中への分散を行うことができる。
上記工程(2)は、粉砕媒体撹拌型粉砕機を用いて、上記工程(1)で得られた原料混合物から混合スラリーを得る混合・粉砕処理を、混合スラリーの粒度分布から算出されるD50が1.7μm以下、かつD90が2.7μm以下となるまで行う工程である。この混合・粉砕処理によって、原料の粉砕、混合、及び分散媒中への分散が同時に行われる。
本願明細書において、「スラリーの粒度分布から算出されるD50(又はD90)」とは、工程(1)において供給した水及び/又は有機溶媒中に存在する粒子、例えば原料のアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物、希土類化合物、第13族元素化合物及びこれらの反応物や複合体等からなる粒子を区別せずに測定した粒度分布から算出されるD50(又はD90)の値を意味する。
粒度分布から算出されるD50、D90はそれぞれ体積基準の累積50%粒子径、体積基準の累積90%粒子径で、すなわち粒度分布測定結果の積算粒子量曲線において、その積算量が50%、90%を占めるときの粒子径を意味する。粒度分布は、後述のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定することが出来る。
上記工程(2)における混合・粉砕処理は、混合スラリーの粒度分布から算出されるD50が1.7μm以下、かつD90が2.7μm以下となるまで行えばよいが、D50は1.7μm以下であることが好ましく、D90は2.5μm以下であることが好ましい。またD50、D90の下限は特に限定されないが、現実的には、通常D50、D90共に0.1μm以上の値をとる。
上記工程(2)における混合・粉砕処理は、混合スラリーのD50及びD90が所定の値以下となる限り、その方法は特に制限されないが、上記粉砕媒体撹拌型粉砕機の粉砕媒体に与える相対遠心加速度をG(m/sec)として、G≧7.1の条件で行うのが好ましい。このような条件で混合を行うことで、原料の分散、粉砕がより十分となり、得られる蓄光材料がりん光輝度により優れたものとなる。Gの上限は特に限定はなく、粉砕媒体撹拌型粉砕機の能力や仕様に基づいて当業者が通常の運転条件範囲で適宜設定することができる。
ここで「遠心加速度」とは、ある物体を回転半径r、回転角速度ωで回転した場合に発生するrωで表される物理量を意味する。一般的に、遠心加速度の単位としては地球の重力加速度との比で表した「相対遠心加速度」を用いる。例として、ある物体が回転軸を中心にN回転しているとすると、ω=2πN/60(rad/s)、地球の重力加速度=9.81(m/s)相対遠心加速度Gは以下の数式(1)で表すことができる。
Figure 2020023675
さらに自転・公転を伴う遊星ミルの場合には、相対遠心加速度Gは以下の数式(2)によって求めることができる。
Figure 2020023675
式中、rsは公転半径(m)を、rpは容器半径(m)を、iwは自転・公転比を、ωは公転回転数(rpm)をそれぞれ意味する。
上記工程(2)を行う時間は特に制限されず、混合スラリーの粒度分布が所定の値となるまで行えばよいが、製造効率を考えると、0.1〜5時間で行うことが好ましい。より好ましくは、0.1〜2時間で行うことである。
上記工程(3)は、工程(2)で得られた混合スラリーを40mPa・sec以上の粘度に調製したうえで噴霧乾燥する工程である。この乾燥処理によって、各原料が均一に混ざりあった状態を維持することができる。また、噴霧乾燥して得られる乾燥粉体は密度が低く、粒度分布の狭いものとなる。
ここで、噴霧乾燥機とは、スラリーを気体中に噴霧して急速に乾燥させ、乾燥粉体を製造する設備である。乾燥に用いる気体は一般に高温のものを用いる。
噴霧方式の例としては、回転ディスク、圧力ノズル、二流体ノズル等が挙げられるが、中でも乾燥粉の粒子径制御が可能な点で回転ディスク方式が好ましい。
上記工程(3)において混合スラリーを噴霧乾燥する際の混合スラリーの粘度は、40mPa・sec以上であればよいが、50mPa・sec以上であることが好ましい。より好ましくは、60mPa・sec以上である。また、スラリー粘度が高すぎると噴霧することが困難になるため、混合スラリーの粘度は150mPa・sec以下であることが好ましい。混合スラリーの粘度は、分散媒である水及び/又は有機溶媒を添加、あるいは蒸発させることにより、調整することができる。
混合スラリーの粘度は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
上記工程(3)において混合スラリーを噴霧する際の混合スラリー濃度は、100〜750g/lであることが好ましい。100g/l未満であると噴霧乾燥時間が長くなり、生産性が低くなるため好ましくない。また750g/lを超えるとスラリーの粘度が高く、噴霧することが困難になるため好ましくない。混合スラリー濃度は、より好ましくは、150〜700g/lであり、更に好ましくは、200〜650g/lである。
上記工程(3)において噴霧乾燥する際の噴霧温度は、入口温度は100〜250℃が好ましい。また、出口温度は50〜150℃が好ましい。このような温度で噴霧することで、より水分量が少なく、粒子径がそろった乾燥物が得られる。
本発明の蓄光材料の製造方法は、上記工程(1)〜(3)を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、焼成、粉砕、分級、表面処理等が挙げられる。
上記焼成工程の温度は、1200〜1600℃であることが好ましい。より好ましくは、1300〜1500℃である。このような温度で行うことで、得られる蓄光材料をより蓄光性に優れたものとすることができる。
また、焼成工程の時間は、1〜12時間であることが好ましい。より好ましくは、2〜8時間である。
上記焼成工程は、還元雰囲気下で行われることが好ましい。還元雰囲気下で行うことで、得られる蓄光材料をより蓄光性に優れたものとすることができる。
還元雰囲気での焼成は、一酸化炭素や水素等の還元性ガスのみからなる雰囲気で行ってもよく、還元性ガス以外のガスも含む雰囲気で行ってもよいが、窒素、アルゴン等の不活性ガス中に還元性ガスが含まれた雰囲気下で行うことが好ましく、雰囲気中の還元性ガス濃度を0.3〜5vol%として行う事が好ましい。より好ましくは、0.5〜4vol%である。
2.蓄光材料
本発明はまた、SrAlで表される化合物を母体結晶とし、ユーロピウム、ジスプロシウム、リチウム、及び、ホウ素を添加した蓄光材料であって、
ユーロピウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0.001を超えて、0.025未満であり、
ジスプロシウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0.001を超えて、0.025未満であり、
アルミニウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が1.88を超えて、2.10以下であり、
リチウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0を超えて、0.02未満であり、
ホウ素のモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0を超えて、0.03未満であることを特徴とする蓄光材料でもある。
つまり、本発明の蓄光材料は、アルミニウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値を1.88を超えて2.10以下として、蓄光材料製造時のSrAl1425の副生を抑制し、またリチウムとホウ素を含有することにより、りん光輝度を高めた材料である。
本発明の蓄光材料は、ユーロピウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0.001を超えて0.025未満であるが、この値は、0.0015以上、0.023以下であることが好ましく、より好ましくは、0.0025以上、0.02以下である。
また、ジスプロシウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0.001を超えて0.025未満であるが、この値は、0.0015以上、0.023以下であることが好ましく、より好ましくは、0.0025以上、0.02以下である。
更に本発明の蓄光材料は、リチウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0を超えて0.02未満である。
また、ホウ素のモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0を超えて0.03未満である。
リチウムやホウ素は、材料を混合して蓄光材料を製造する際の反応助剤として機能する成分であり、これらの割合がこのようであると、蓄光材料の合成において十分に反応が進行し、得られる蓄光材料がより、りん光輝度に優れたものとなる。
上記本発明の蓄光材料は、該蓄光材料断面の反射電子像の画像解析から、以下の方法により求められる希土類元素の偏在率が1%以下であることが好ましい。このように、希土類元素の偏析が少なく効率的に母材中に固溶された材料であると、従来の蓄光材料よりも希土類元素の含有量が少ないものの、りん光輝度により優れた材料となる。偏在率は、0.8%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.55%以下である。偏在率が小さいほど希土類元素が母体結晶に効率的に固溶できているといえる。
また、本発明の蓄光材料は、平均粒子径D50(μm)が100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、20〜80μmである。
[希土類原子の偏在率測定]
蓄光材料断面の反射電子像の各ピクセルについて256階調のグレーレベルで色判定した結果のヒストグラムにおいて、母体結晶の占める面積であるグレーレベルが150〜200の間のピーク面積aで、希土類元素の占める面積であるグレーレベルが250以上の範囲におけるピーク面積bを除した値(b/a)を希土類原子の偏在率とする。
本発明の蓄光材料は、エタノールを分散媒として使用し、レーザー回折・散乱式粒度分布計を使用して測定した粒度分布測定で得られるD25値をD75値で除した値が0.45を超えることが好ましい。このようなものであると、粒径がそろっており、樹脂等へ配合した際の分散性が良好であり、その発光も均一になる。D25値をD75値で除した値は、より好ましくは、0.50以上であり、更に好ましくは、0.55以上である。
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。
実施例1
炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.58g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、17.01g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0063g)、ホウ酸(純度99.5%、0.11g)を秤量し、水(85mL)中に入れて原料混合物を得、3mm径アルミナボール(ニッカトー社製、SSA−999W、190g)を粉砕メディアとして使用し、遊星ボールミルを用いて250rpmで90分間分散・粉砕・混合することによりスラリー状の緑色蓄光体用組成物を得た。得られた混合スラリーに水を添加して粘度を60mPa・secに調整した後、噴霧乾燥し、粉末状の緑色蓄光体用組成物を得た。次いで、その緑色蓄光体用組成物をアルミナ製坩堝に充填して、還元雰囲気(2%水素含有窒素)中で200℃/時の速度で1400℃まで昇温し、そのまま4時間保持後、200℃/時の速度で室温まで降温した。
こうして得られた焼成物を、乳鉢で解砕し、篩を通すことで目的の緑色蓄光体を粉末として得た。なお、混合スラリーの粘度は、B型粘度計(東京計器製、型式:BM)を用いて20±1℃の条件で計測した。
実施例2
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、25.08g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.08g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.08g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、17.10g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0063g)、ホウ酸(純度99.5%、0.11g)とした以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
実施例3
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、23.91g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.60g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.63g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、16.89g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0062g)、ホウ酸(純度99.5%、0.10g)とした以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
実施例4
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.58g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、17.01g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0063g)、ホウ酸(純度99.5%、0.21g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を93mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
実施例5
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.45g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、17.27g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0063g)、ホウ酸(純度99.5%、0.21g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を93mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
実施例6
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.14g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.29g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.31g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、17.90g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0062g)、ホウ酸(純度99.5%、0.21g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を93mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例1
原料を分散・粉砕・混合することにより得られたスラリー状の緑色蓄光体用組成物に水を添加して粘度を30mPa・secに調整した後、乾燥を磁性皿で、130℃で5時間乾燥し、粉末状の緑色蓄光体用組成物として得ること以外は実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例2
原料の分散・粉砕・混合時間を30分間とすること、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を20mPa・secに調整すること以外は実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例3
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.84g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、16.49g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0063g)、ホウ酸(純度99.5%、0.11g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を35mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例4
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.14g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.29g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.31g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、17.90g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0062g)、ホウ酸(純度99.5%、0.10g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を35mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例5
原料の秤量を、炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、23.2659g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.74g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.79g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、16.84g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0062g)、ホウ酸(純度99.5%、0.10g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を35mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例6
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.58g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、16.99g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0063g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を35mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例7
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.58g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、16.99g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0063g)、ホウ酸(純度99.5%、0.32g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を35mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例8
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.59g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、16.99g)、ホウ酸(純度99.5%、0.11g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を35mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例9
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.28g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、17.12g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.13g)、ホウ酸(純度99.5%、0.11g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を35mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
比較例10
従来の蓄光材料として、株式会社ネモト・ルミマテリアル社製のN夜光(G−300M)を用いた。
比較例11
原料の秤量を炭酸ストロンチウム(堺化学工業製SW−K、24.58g)、酸化ユーロピウム(純度99.9%、0.30g)、酸化ジスプロシウム(純度99.9%、0.32g)、酸化アルミニウム(純度99.99%、17.01g)、炭酸リチウム(純度99.0%、0.0063g)、ホウ酸(純度99.5%、0.21g)とし、噴霧乾燥に供する混合スラリーの粘度を33mPa・secに調整した以外は、実施例1と同様に行い目的の緑色蓄光体を粉末として得た。
実施例1〜6、比較例1〜11で得られた緑色蓄光体及び比較例10の蓄光材料を以下のような方法で評価した。評価結果を表1に示した。
<粒度分布測定>
スラリー状の緑色蓄光体用組成物(混合スラリー)の粒度分布は水を、緑色蓄光体粉末の粒度分布はエタノールを分散媒として使用し、レーザー回折・散乱式粒度分布計 (マイクロトラック・ベル(株)製MT−3300EXII)により下記条件で測定した。
計測モード:MT−3000
測定上限:1408μm
測定下限:0.021μm
粒子屈折率:1.81
粒子形状:非球形
溶媒屈折率:1.36(分散媒がエタノールの場合)、1.33(分散媒が水の場合)
<異相の有無の評価>
緑色蓄光体粉末に対し、以下の装置、条件でX線回折を測定し、異相A(SrAl25)については、2θ=28°付近に現れる(021)面に帰属されるピーク、異相B(SrAl)については、2θ=32°付近に現れる(440)面に帰属されるピークの有無で判定した。
粉末X線回折装置:Rigaku社製 RINT−TTRIII
X線源:Cu−Kα線(波長:1.5406Å、電圧50kV、電流300mA)
平行ビーム光学系(長尺スリット:PSA200/分解能0.057°)
測定範囲:2θ=12°〜52°
ステップ幅:0.01°
計数時間:2s
<りん光輝度評価>
得られた緑色蓄光体粉末を、透明アクリル樹脂を重量比で1:1.4となるよう乳鉢を用いて混合したあと、埋込プレス機を用いて蓄光粉末含有アクリル樹脂円形成型体を得た。その後、りん光輝度計(トプコン製BM−100)を用いてこの成型体のりん光輝度(60分後の残光輝度、単位:mcd/m)を測定した。この際、輝度測定はJIS Z 9107の6.3.2に準拠し、暗所に24時間以上外光を遮断した状態で保管し、その後、常用光源(東芝製D65蛍光灯)を用いて200ルクスの照度で20分間照射し、照射を止めた後、60分後のりん光輝度を測定した。
<希土類原子の偏在率>
(1)クロスセクションポリッシャによる粒子断面形成
エポキシ樹脂中に粉体を混ぜ合わせたものを作製し、80℃にて加熱脱泡を行った。脱泡が完了した後、120℃にて加熱固化させた。固化させた樹脂を、断面を精密平面研磨機にセットし、研磨紙(#400)で研磨し、その後研磨紙(#800)にて仕上げ研磨を行った。研磨された樹脂を断面試料作製装置(SM−09011)にセットし、アルゴンイオンビームにて切断し、断面を作製した。
(2)SEM観察
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7000F)により、粒子断面を観察した。
加速電圧:15kV
倍率:粒子10個分が撮影できる任意の倍率(100〜1000倍)
(3)画像解析ソフトによる偏在率の算出
まず、得られた反射電子像の各ピクセルについて256階調のグレーレベルで色判定し、色判定結果のヒストグラムを作成した。得られたヒストグラムには代表的な3つのピークが存在した。各ピークの面積は、下記の通りに対応した。
(A)グレーレベル0〜150:反射電子像において、エポキシ樹脂の占める面積
(B)グレーレベル150〜250:反射電子像において、母体粒子の占める面積
(C)グレーレベル250以上:反射電子像において、希土類元素の占める面積
このとき、希土類元素の占める面積を母体粒子が占める面積で除した値を希土類元素の偏在率と定めた。すなわちグレーレベルが150から250の間のピーク面積をaとし、グレーレベルが250以上の範囲におけるピーク面積をbとしたときに、bをaで除した値(b/a)である。
表1では、偏在率が1%より大きいものを×、0.4より大きく〜1%を〇、0.4%以下を◎とした。
Figure 2020023675
実施例1〜6では、得られた緑色蓄光体粉末中に異相が認められず、りん光輝度及び粒度分布測定で得られるD25値をD75値で除した値(D25/D75)が比較例10(従来の蓄光体)よりも優れ、ジスプロシウムの偏在率が特に低いことが分かる。これは、各元素の比率を適切に設定し、各原料を十分に均一に分散・粉砕・混合し、混合スラリーの粘度を40mPa・sec以上に調整して噴霧乾燥したためである。D25/D75が優れるのは、噴霧乾燥の特徴、すなわち、混合スラリーの粘度を調製したうえで、熱気体中に噴霧し急速に乾燥させ、噴霧した混合スラリー液滴の大きさに応じた造粒物としたためであると考えられる。
比較例1では、得られた緑色蓄光体粉末に異相A及びBが生成し、りん光輝度が低くなった。これは、粘度が30mPa・secの混合スラリーを蒸発乾燥している間に、各原料の沈降分離や水溶性成分の偏析などによって、蒸発乾燥物の組成均一性が低くなったためであると考えられる。また、得られた緑色蓄光体粉末のD25/D75も大幅に低くなった。
比較例2では、得られた緑色蓄光体粉末に異相A及びBが生成し、りん光輝度が低くなった。これは、各元素の比率は適切な範囲にあるが、分散・粉砕・混合時間が短く、各原料の分散・粉砕・混合が不十分で、噴霧乾燥したとしても、その噴霧乾燥造粒物中において元素偏析が生じ、SrAlで表される本発明の母体結晶が単相で得られなかったためであると考えられる。また、分散・粉砕・混合時間が不十分であることは、混合スラリーの粒度分布D50、D90の値が実施例1〜3に比べ大きいことでも推測できる。また噴霧乾燥時の混合スラリーの粘度が低いこともこれらの結果に影響していると考えられる。
比較例3では異相Bが、比較例4においては異相Aが生成し、りん光輝度が大幅に低下した。これは、各元素を均一に分散・粉砕・混合し、噴霧乾燥したとしてもアルミニウムのモル数がストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数に対して、比較例3においては少なく、比較例4においては過剰で、SrAlで表される本発明の母体結晶よりも、りん光の発生効率の悪い結晶相A及びBが生成したためであると考えられる。また、比較例10(従来の蓄光体)も比較例4と同様にアルミニウムのモル数がストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数に対して、過剰のため、結晶相Aが認められた。また噴霧乾燥時の混合スラリーの粘度が低いこともこれらの結果に影響していると考えられる。
実施例1〜3に対し、比較例6はホウ素を添加しない、比較例8はリチウムを添加しない例であるが、ホウ素もリチウムもに反応助剤として機能する成分であることから、添加しないと固相反応が十分に進まずに母体結晶であるSrAl相の結晶性が低く、りん光輝度が低くなったと考えられる。さらに、比較例7及び9のように多いと反応助剤としての効果が過剰となり噴霧乾燥造粒物同士の焼結が進み粗大粒子が生成したり、粗大粒子を粉砕する際に微細粒子が生成したりして、D25/D75が低下することが分かった。また噴霧乾燥時の混合スラリーの粘度が低いこともこれらの結果に影響していると考えられる。
比較例11では、得られた緑色蓄光体粉末のD25/D75が実施例のものに比べて劣る結果となった。原料組成が同じである実施例4との比較から、噴霧乾燥時の混合スラリーの粘度が、りん光輝度にも影響することが確認された。
また、実施例1〜3と比較例5により、同じホウ素及びリチウム添加量において、希土類添加量とりん光輝度との関係を見て取ることが出来る。希土類使用量低減の観点において、実施例2は、従来品よりも、りん光輝度が高く、D25/D75も高く、最も優れた結果であるといえる。しかし、比較例5まで希土類を増やした場合、ホウ素及びリチウムを共添加しても従来品よりも、りん光輝度が低くなった。このことから、ホウ素及びリチウムの共添加によるりん光輝度の向上効果は、希土類の使用量が少ない場合において顕著であるといえる。つまり、単純に固相反応中に低融点のガラス成分を生成することで反応を促進させ、結晶性を向上させるという反応助剤としての効果の他に、希土類量が少量の場合、SrAlで表される本発明の母体結晶中へ希土類元素の固溶を促進する効果があると考えられる。それは定かではないが、LiとDyに着目すると、Liは一価の陽イオン(Li)としてふるまい、三価の陽イオンとしてふるまうDy3+が二価のSr2+サイトに固溶する際、Liも固溶し電荷補償が行われることなどが考えられる。
また、実施例4〜6により、同じホウ素及びリチウムの添加量におけるアルミニウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値とりん光輝度との関係を見て取ることが出来る。本発明の蓄光材料において、アルミニウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値は、1.88超から2.10以下であるが、りん光輝度の向上効果の観点において、好ましくは1.96以上、2.00以下であるといえる。

Claims (6)

  1. 粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器中に、水及び/又は有機溶媒、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物、希土類化合物、及び第13族元素化合物を下記のモル比で供給して原料混合物を得る工程(1)と、
    混合スラリーの粒度分布から算出されるD50が1.7μm以下、かつD90が2.7μm以下となるまで該反応容器中で、原料混合物の混合・粉砕処理を行って混合スラリーを得る工程(2)と、
    該混合・粉砕処理で得られた混合スラリーを40mPa・sec以上の粘度に調製したうえで噴霧乾燥する工程(3)とを含む
    ことを特徴とする蓄光材料の製造方法。
    1.88<E/(A+B+C)≦2.10
    0.001<D/(A+B+C)<0.025
    0<B/(A+B+C)<0.02
    0<F/(A+B+C)<0.03
    A:アルカリ土類金属化合物中のアルカリ土類金属元素の総モル数
    B:アルカリ金属化合物中のアルカリ金属元素の総モル数
    C:希土類化合物中の希土類元素の総モル数
    D:各希土類化合物中の各希土類元素のモル数
    E:第13族元素化合物中のホウ素を除く第13族元素の総モル数
    F:第13族元素化合物中のホウ素のモル数
  2. 前記粉砕媒体撹拌型粉砕機は、ビーズミルであることを特徴とする請求項1に記載の蓄光材料の製造方法。
  3. 前記反応容器中に供給する第13族元素化合物がアルミニウム化合物とホウ素化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄光材料の製造方法。
  4. SrAlで表される化合物を母体結晶とし、
    ユーロピウム、ジスプロシウム、リチウム、及び、ホウ素を添加した蓄光材料であって、
    ユーロピウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0.001を超えて、0.025未満であり、
    ジスプロシウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0.001を超えて、0.025未満であり、
    アルミニウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が1.88を超えて、2.10以下であり、
    リチウムのモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0を超えて、0.02未満であり、
    ホウ素のモル数をストロンチウム、ユーロピウム、ジスプロシウム及びリチウムの合計モル数で除した値が0を超えて、0.03未満であることを特徴とする蓄光材料。
  5. 蓄光材料断面の反射電子像の画像解析から、以下の方法により求められる希土類元素の偏在率が1%以下であることを特徴とする請求項4に記載の蓄光材料。
    [希土類原子の偏在率測定]
    蓄光材料断面の反射電子像の各ピクセルについて256階調のグレーレベルで色判定した結果のヒストグラムにおいて、母体結晶の占める面積であるグレーレベルが150〜200の間のピーク面積aで、希土類元素の占める面積であるグレーレベルが250以上の範囲におけるピーク面積bを除した値(b/a)を希土類原子の偏在率とする。
  6. エタノールを分散媒として使用し、レーザー回折・散乱式粒度分布計を使用して測定した粒度分布測定で得られるD25値をD75値で除した値が0.45を超えることを特徴とする請求項4又は5に記載の蓄光材料。
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