JP7318924B2 - 蛍光体及びこれを用いた発光装置 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な蛍光体及びこれを用いた発光装置等に関する。
近年、省エネルギー化の流れを受け、画像表示装置や照明装置等の発光装置を用いる機器においては、LEDを用いた照明やバックライト等の需要が増加している。これらに用いられるLEDとしては、近紫外又は短波長可視域で発光するLEDチップと蛍光体とを併用することで白色発光させる白色発光LEDが一般化しつつある。このような白色発光LEDとしては、青色LEDチップが発する青色光を励起光として黄色に発光する蛍光体を用いたものが主流である。また近年では、青色に発光する蛍光体、緑色に発光する蛍光体、又は赤色に発光する蛍光体を用いる試みもなされている。そして、この種のLEDを用いた発光装置においては、優れた発光特性が求められており、これに用いるLEDの蛍光体においても、より高い発光特性を有するものが切望されている。
緑色蛍光体しては、例えば特許文献1には、アルカリ土類元素を含むサイアロン蛍光体が開示されている。黄色又は橙色蛍光体としては、例えば特許文献2には、Sr1.11Al2.25Si9.7516:Eu0.02の組成式で表されるαサイアロン蛍光体が開示されている。
また、発光特性を改善する目的で、Liを含む蛍光体が検討されている。Liを含む緑色蛍光体としては、例えば特許文献3に、Liを含有するアルミン酸ストロンチウムの応力発光材料が開示されている。また、例えば特許文献4には、Li1BaAlSi12:Eu2+蛍光体が開示されている。Liを含む赤色蛍光体として、例えば特許文献5には、CaAlSiN:Eu2+とLiSiの固溶体が開示されている。さらに、例えば特許文献6には、SrLiAl:Eu2+の組成で表されるSLA蛍光体が開示されている。
国際公開第2011/016486号 特開2009-256558号公報 特開2015-67799号公報 国際公開第2014/003076号 国際公開第2006/126567号 国際公開第2013/175336号
上記したように、各色の蛍光体が開発されているが、さらに発光特性を向上させた蛍光体が切望されている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。即ち本発明の目的は、近紫外又は短波長可視域の光により、緑色から黄色の範囲の何れかの光を発する新規な蛍光体等を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記の蛍光体を用いた発光装置等を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく蛍光体の新規探索を鋭意検討した結果、従来の蛍光体とは異なる結晶構造を有し、近紫外又は短波長可視域の光により、緑色から黄色の範囲の何れかの光を発する新規な蛍光体を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
<1>
M元素、A元素、B元素、C元素(但し、M元素は、Eu、Ce、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、A元素はLi、Na及びKよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、B元素はMg、Ca、Sr及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、C元素はAl及び/又はGaである)及びOを少なくとも有し、更にNをeの割合で有する結晶相を含み、下記式[1]で表される蛍光体。
1-m [1]
(上記式[1]中、m、a、c、e及びfは、各々独立に、下記式を満たす値である。
0<m≦0.2
0.31≦a≦0.51
0.49≦c≦0.69
0≦e≦0.38
1.63≦f≦2.10
0.95≦a+c≦1.05
1.90≦e+f≦2.10)
<2>
少なくともA元素とC元素が別の結晶サイトに存在し、晶系が斜方晶系であり、格子定数が下記範囲を満たす、<1>に記載の蛍光体。
10.06≦格子定数a≦12.29
5.06≦格子定数b≦6.19
5.99≦格子定数c≦7.32
<3>
300nm以上500nm以下の波長を有する励起光を照射することにより、480nm以上540nm以下の波長範囲に発光ピークを有する<1>又は<2>に記載の蛍光体。
<4>
発光スペクトルにおける半値幅が、50nm以下である、<1>~<3>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<5>
上記式[1]中、a=0.50、c=0.50、e=0、f=2.00である、<1>~<4>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<6>
少なくともA元素とC元素が同一結晶サイトに存在し、晶系が単斜晶系であり、格子定数が下記範囲を満たす、<1>に記載の蛍光体。
5.25≦格子定数a≦6.41
5.07≦格子定数b≦6.20
5.99≦格子定数c≦7.32
96.0≦格子定数β≦117.3
<7>
300nm以上500nm以下の波長を有する励起光を照射することにより、545nm以上605nm以下の波長範囲に発光ピークを有する、<1>又は<6>に記載の蛍光体。
<8>
発光スペクトルにおける半値幅が、80nm以下である、<1>、<6>及び<7>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<9>
上記式[1]中、0.44≦a≦0.50、0.50≦c≦0.56、0≦e≦0.13、1.88≦f≦2.0である、<1>及び<6>~<8>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<10>
M元素が、Euである、<1>~<9>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<11>
A元素が、Liである、<1>~<10>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<12>
B元素が、Srである、<1>~<11>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<13>
C元素が、Alである、<1>~<12>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<14>
前記蛍光体の含有率が20質量%以上であることを特徴とする、<1>~<13>のいずれか一項に記載の蛍光体。
<15>
<1>~<14>のいずれか一項に記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
本発明によれば、従来の蛍光体とは異なる結晶構造を有し、近紫外又は短波長可視域の光により緑色から黄色の範囲のいずれかの光を発する新規な蛍光体等を実現できる。この新規な蛍光体は、その発光特性(励起スペクトル、発光スペクトル、発光色及び発光効率)により、白色発光LED用途において殊に有用なものである。そして、本発明の新規な蛍光体を含む発光装置、並びに、この発光装置を含む照明装置及び画像表示装置は、高発光効率で高品質である。
実施例1の蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。 実施例2の蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。 実施例3の粉末X線回折測定結果を示すグラフである。 実施例3の蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば「1~100」との数値範囲は、その上限値「1」及び下限値「100」の双方を包含するものとする。他の数値範囲の表記も同様である。
また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表す。そして、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1-xSrAl:Eu」と、「Sr1-xBaAl:Eu」と、「Ca1-xBaAl:Eu」と、「Ca1-x-ySrBaAl:Eu」(但し、これらの式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1である。)とを包括的に示しているものとする。
また、上記の「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」の例の元素比率は、Alが2モルに対して、CaとSrとBaの合計が1モルであることを意味する。
<蛍光体>
本実施形態の蛍光体は、M元素、A元素、B元素、C元素(但し、M元素はEu、Ce、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、A元素はLi、Na及びKよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、B元素はMg、Ca、Sr、及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、C元素はAl及び/又はGaである)、及びOを少なくとも有し、更にNをeの割合で有する結晶相を含み、下記式[1]を満たすものである。
1-m [1]
(上記式[1]中、m、a、c、e及びfは、各々独立に、下記式を満たす値である。
0<m≦0.2
0.31≦a≦0.51
0.49≦c≦0.69
0≦e≦0.38
1.63≦f≦2.10
0.95≦a+c≦1.05
1.90≦e+f≦2.10)
M元素は、付活元素であり、ユーロピウム(Eu)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)からなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を表す。M元素は、少なくともEuを含むことが好ましい。
また、Euは、その全部又は一部がCe、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素で置換されていてもよい。すなわち、M元素は、Euと、Ce、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素とを含むことが好ましい。発光量子効率の観点からは、Euの全部又は一部がCeに置換されていることがより好ましい。つまり、M元素は、Eu及び/又はCeであることがさらに好ましく、より好ましくはEuである。なお、M元素全体に対するEuの含有割合は、特に限定されないが、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
A元素は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を表す。A元素は、Liを含むことが好ましく、Liであることがより好ましい。
B元素は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を表す。B元素は、Srを含むことが好ましく、Srであることがより好ましい。なお、B元素は、アルカリ土類金属元素以外の他の2価金属元素、例えば亜鉛(Zn)等で一部置換されていてもよい。
C元素は、アルミニウム(Al)及び/又はガリウム(Ga)を表す。C元素は、Alを含むことが好ましく、Alであることがより好ましい。なお、C元素は、その他の3価の元素、例えば、ホウ素(B)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)等で一部置換されていてもよい。
なお、本実施態様の蛍光体は、上記した最小構成元素以外に、他の元素、例えばフッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)等のハロゲン原子を含んでいてもよい。ハロゲン原子は、原料金属中の不純物としての混入のみならず、粉砕工程或いは窒化工程等の製造プロセス時に導入されてもよい。特に、フラックスとしてハロゲン化物を用いる場合、蛍光体中にハロゲン原子が高確率で含まれてしまう傾向にある。
mは、式[1]中のM元素の含有割合を表し、その範囲は、0<m≦0.2である。mの下限値は、好ましくは0.001、より好ましくは0.02であり、またその上限値は、好ましくは0.15、さらに好ましくは0.1である。
aは、式[1]中のA元素の含有割合を表し、その範囲は、0.31≦a≦0.51である。aの下限値は、好ましくは0.38、より好ましくは0.44である。また、aの上限値は、好ましくは0.50である。
cは、式[1]中のC元素の含有割合を表し、その範囲は、0.49≦c≦0.69である。cの下限値は、好ましくは0.50であり、また、その上限値は、好ましくは0.63、より好ましくは0.56である。
eは、式[1]中のN(窒素)の含有割合を表し、その範囲は、0≦e≦0.38である。eの上限値は、好ましくは0.25、より好ましくは0.13である。
fは、式[1]中のO(酸素)の含有割合を表し、その範囲は、1.63≦f≦2.10である。fの下限値は、好ましくは1.75、より好ましくは1.88であり、また、その上限値は、好ましくは2.05、より好ましくは2.00である。
式[1]におけるa+cの範囲は、0.95≦a+c≦1.05である。a+cの下限値は、より好ましくは0.97、さらに好ましくは0.99であり、また、その上限値は、より好ましくは1.03、さらに好ましくは1.01である。
式[1]におけるe+fの範囲は、1.90≦e+f≦2.10である。e+fの下限値は、より好ましくは1.94、さらに好ましくは1.98であり、また、その上限値は、より好ましくは2.06、さらに好ましくは2.02である。
式[1]で表される蛍光体において、いずれの元素の含有量も、上述した範囲内であると、発光特性に優れる蛍光体が得られ易い。
本実施形態の第1の蛍光体は、結晶構造において、少なくともA元素とC元素が別の結晶サイトに存在し、斜方晶系の結晶構造を有する。
本実施様態の第1の蛍光体の格子定数aは、10.06≦a≦12.29である。格子定数aの下限値は、より好ましくは10.62Å以上、さらに好ましくは10.90Å以上であり、また、その上限値は、より好ましくは11.73Å以下、さらに好ましくは11.45Å以下である。
また、格子定数bは、5.06≦b≦6.19である。格子定数bの下限値は、より好ましくは5.34Å以上、さらに好ましくは5.48Å以上であり、また、その上限値は、より好ましくは5.91Å以下、さらに好ましくは5.77Å以下である。
また、格子定数cは、5.99≦c≦7.32である。格子定数cの下限値は、より好ましくは6.33Å以上、さらに好ましくは6.49Å以上であり、また、その上限値は、より好ましくは6.99Å以下、さらに好ましくは6.82Å以下である。
本実施形態の第2の蛍光体は、結晶構造において、少なくともA元素とC元素が同一結晶サイトに存在し、単斜晶系の結晶構造を有する。
本実施様態の第2の蛍光体の格子定数aは、5.25≦a≦6.41である。格子定数aの下限値は、より好ましくは5.54Å以上、さらに好ましくは5.68Å以上であり、また、その上限値は、より好ましくは6.12Å以下、さらに好ましくは5.98Å以下である。
また、格子定数bは、5.07≦b≦6.20である。格子定数bの下限値は、より好ましくは5.35Å以上、さらに好ましくは5.50Å以上であり、また、その上限値は、より好ましくは5.92Å以下、さらに好ましくは5.78Å以下である。
また、格子定数cは、5.99≦c≦7.32である。格子定数cの下限値は、より好ましくは6.32Å以上、さらに好ましくは6.49Å以上であり、また、その上限値は、より好ましくは6.99Å以下、さらに好ましくは6.82Å以下である。
<蛍光体の諸物性>
[発光色]
本実施形態の蛍光体は、波長300nm以上480nm以下の近紫外領域~短波長可視領域の光で励起することができる。蛍光体に含まれる元素の化学組成等を調整することにより、本実施形態の蛍光体は、緑色、黄緑色、及び黄色等、所望の色の光を発光することができる。
[発光スペクトル]
本実施態様の第1の蛍光体は、波長300nm以上500nm以下のいずれかの光を照射することにより励起した場合における発光スペクトルを測定した際に、その内の少なくとも1つの発光スペクトルにおいて、以下の特性を有することが好ましい。すなわち、上述の発光スペクトルにおけるピーク波長(発光極大波長)は、480nm以上、好ましくは490nm以上、より好ましくは500nm以上である。また、その上限値は、540nm以下、好ましくは530nm以下、より好ましくは520nm以下である。発光スペクトルが上記範囲内であると、得られる蛍光体において、良好な緑~黄緑色を呈するため好ましい。
本実施態様の第2の蛍光体は、波長300nm以上500nm以下のいずれかの光を照射することにより励起した場合における発光スペクトルを測定した際に、その内の少なくとも1つの発光スペクトルにおいて、以下の特性を有することが好ましい。すなわち、上述の発光スペクトルにおけるピーク波長(発光極大波長)は、545nm以上、好ましくは555nm以上、より好ましくは565nm以上である。また、その上限値は、605nm以下、好ましくは595nm以下、より好ましくは585nm以下である。発光スペクトルが上記範囲内であると、得られる蛍光体において、良好な黄緑~黄色を呈するため好ましい。
[発光スペクトルの半値幅]
本実施態様の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅が、100nm以下、好ましくは90nm以下、より好ましくは85nm以下であり、また、その下限値は、30nm以上である。上記範囲内であると、液晶表示装置等の発光装置に使用する場合、色純度の低下が抑えられ、また、色再現範囲が広くなる傾向にあるため好ましい。
なお、本実施態様の蛍光体を波長300nm以上500nm以下の光で励起するための励起用光源としては、特に限定されないが、例えばGaN系LEDを用いることができる。LED発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものが知られており、その組成を調整することにより、所定の波長の光を発する発光光源となり得る。なお、本実施態様の蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、ピーク相対強度及びピーク半値幅等の算出は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて行うことができる。なお、LED発光装置は、本実施形態の蛍光体を用いて、特開平5-152609、特開平7-99345又は特許公報第2927279号等に記載されているような公知の方法により製造することができる。
[励起波長]
本実施態様の蛍光体は、300nm以上、好ましくは350nm以上、より好ましくは380nm以上の波長範囲に励起ピーク(吸収極大波長)を有する。また、本実施態様の蛍光体は、500nm以下、好ましくは490nm以下、より好ましくは480nm以下の波長範囲に励起ピーク(吸収極大波長)を有する。すなわち、本実施態様の蛍光体は、近紫外から青色領域の光で励起可能である。
[結晶系と空間群]
本実施態様の蛍光体における結晶系は、斜方晶系(Orthorhombic)もしくは単斜晶系(Monoclinic)である。また、本実施態様の蛍光体における空間群は、平均構造が上記長さの繰り返し周期(すなわち、格子定数cが所定の範囲内の周期)を示していれば特に限定されないが、「International Tables for Crystallography(Third,revised edition),Volume A SPACE-GROUP SYMMETRY」に基づく62番(P n m a)又は11番(P 21/m)に属するものであることが好ましい。ここで、格子定数及び空間群は、常法にしたがって求めることできる。具体的には、格子定数は、X線回折及び中性子線回折の結果をリートベルト(Rietveld)解析することにより求めることができる。空間群は、電子線回折、単結晶を用いたX線回折及び中性子線回折の解析により求めることができる。
<蛍光体の製造方法>
本実施態様の蛍光体の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、付活元素であるM元素の原料(以下、適宜「M源」と称する場合がある。)、A元素の原料(以下、適宜「A源」と称する場合がある。)、B元素の原料(以下、適宜「B源」と称する場合がある。)、及びC元素の原料(以下、適宜「C源」と称する場合がある。)等の蛍光体原料を混合する工程(混合工程)と、得られた混合物を焼成する工程(焼成工程)とを少なくとも備える方法が好ましく用いられる。なお、以下では例えば、元素Euの原料を「Eu源」、元素Smの原料を「Sm源」などということがある。元素Alの原料を「Al源」、元素Siの原料を「Si源」等と称することがあり、他の元素についても同様とする。
[蛍光体原料]
M源、A源、B源及びC源等の蛍光体原料は、これらのケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、ハロゲン化物(塩化物、フッ化物)、酸フッ化物、水酸化物、シュウ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、又は有機金属化合物或いはこれらの前駆体化合物等を用いることができ、その種類は特に限定されない。蛍光体原料としては、1種を単独で用いることができ、また、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。これらの中でも、酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭酸塩、及びケイ化物が好ましく、より好ましくは酸化物、窒化物及びハロゲン化物である。
なお、必要に応じて、本実施形態の蛍光体を予め合成し、これを種結晶(シード結晶)として原料混合物に混合してもよい。このように種結晶を用いることで、結晶化及び低温合成が促進され、より高い結晶度を有する蛍光体が得られ易い傾向にある。なお、種結晶の配合割合は、特に限定されないが、全蛍光体原料100質量部に対して、0.1~30質量部の範囲が好ましい。
(M源)
付活元素であるM源のうち、Eu源の具体例としては、Eu、Eu(SO、Eu(C・10HO、EuF、EuCl、EuCl、Eu(NO・6HO、EuN及びEuNH等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、Eu3、EuF及びEuN等が好ましく、特に好ましくはEuである。一方、Sm源、Tm源及びYb源等のその他の付活元素の原料の具体例としては、Eu源の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれSm、Tm及びYb等に置き換えた化合物が挙げられる。
(A源)
A源のうち、Li源の具体例としては、LiO、LiOH、LiCO、LiNO、LiSO、LiF、LiCl、LiN、LiNH及びこれらの化合物の水和物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、LiO、LiCO及びLiNが好ましい。また、発光効率の点からは、純度の高いものが好ましい。一方、Liがその他の1価の元素によって一部置換される場合において、その他の1価の元素の原料の具体例としては、上記Li源の具体例として挙げた各化合物において、LiをNa、K、Rb又はCs等に置き換えた化合物が挙げられる。なお、Li源は、単体のLiを用いてもよく、LiAlOといったLi化合物を用いてもよい。
(B源)
B源のうち、Sr源の具体例としては、SrO、Sr(OH)・8HO、SrCO、Sr(NO、SrSO、Sr(C)・HO、Sr(OCOCH・0.5HO、SrF、SrCl、SrN、Sr及びSrNH等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、SrO、SrCO、SrN及びSrが好ましい。また、反応性の点から、Sr源は、粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。一方、Mg、Ca源及びBa源等のその他のアルカリ土類金属元素の原料の具体例としては、上記Sr源の具体例として挙げた各化合物において、SrをMg、Ca、Ba等に置き換えた化合物が挙げられる。
(C源)
C源のうち、Al源の具体例としては、AlN、Al、Al(OH)、AlOOH、Al(NO、AlF及びAlCl等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、AlN及びAlが好ましい。また、反応性の点から、Al源は粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。一方、Ga源の具体例としては、上記Al源の具体例として挙げた各化合物において、AlをGaに置き換えた化合物が挙げられる。また、AlやGaがその他の3価の元素によって一部置換される場合において、その他の3価の元素の原料の具体例としては、上記Al源の具体例として挙げた各化合物において、AlをB、In、Sc、Y、La、Gd及びLu等に置き換えた化合物が挙げられる。なお、Al源は、単体のAlを用いてもよく、LiAlOといったLi化合物を用いてもよい。
なお、上述したM源、A源、B源及びC源は、それぞれ、一種のみを用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本実施態様の蛍光体の製造方法としては、以下に記載するように、所望する組成の蛍光体が得られるように上述した蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて十分混合した後、ルツボに充填し、所定温度及び雰囲気下で焼成し、得られた焼成物を粉砕及び洗浄することにより、所望組成を有する本実施態様の蛍光体を得ることができる。
[混合工程]
蛍光体原料の混合方法は、乾式混合法や湿式混合法等の公知の手法により行えばよく、特に限定されない。乾式混合法としては、例えば、ボールミル等を用いた混合法が挙げられる。また、湿式混合法としては、例えば、前述の蛍光体原料に水等の溶媒又は分散媒を加えて、ボールミルや、乳鉢及び乳棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥又は自然乾燥等により乾燥させる方法である。なお、溶媒又は分散媒としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒等が挙げられるが、これらに特に限定されない。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;或いはこれらの混合溶剤;等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、水、アルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤が好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[焼成工程]
得られた混合物を、各蛍光体原料と反応性の低い材料からなるルツボ又はトレイ等の耐熱容器中に充填する。このような焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、例えば、酸化アルミニウム製の坩堝や、窒化ホウ素等の坩堝や、モリブデンやタングステンで作製した容器等が挙げられる。
焼成工程時の焼成温度は、圧力や外部雰囲気等によっても異なるが、500℃以上、2000℃以下の温度範囲である。この焼成工程における最高到達温度としては、600℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上、また、2000℃以下、好ましくは1800℃以下である。焼成温度を高くしすぎないことで、母体中に含まれる元素が一部脱離し、結晶中に欠陥が多く生成し、得られる結晶が着色することを抑制できる場合がある。また、結晶相が分解して別の相が不純物として生じてしまうことを抑制できる場合がある。焼成温度を低くしすぎないことで、固相反応の進行が遅くなり、目的相を主相として有する蛍光体が得られ難くなることを抑制できる場合がある。また、焼成温度を低くしすぎないことで、結晶内で発光中心となる元素、例えばEu元素の拡散がされず量子効率が低下することを抑制できる場合がある。
焼成工程時の圧力は、焼成温度や外部雰囲気等によっても異なるが、0.1MPa以上であり、また、200MPa以下、好ましくは190MPa以下である。
焼成工程における焼成雰囲気は、本実施態様の蛍光体が得られる限り任意であるが、不活性ガス(窒素、アルゴン等)含有雰囲気とすることが好ましい。具体的には、窒素ガス雰囲気及び水素含有窒素雰囲気等が好ましく、より好ましくは窒素ガス雰囲気である。
焼成工程における焼成時間は、焼成時の温度や圧力、外部雰囲気等によっても異なるが、10分間以上、好ましくは30分間以上、また、72時間以下、好ましくは24時間以下である。焼成時間を短くしすぎないことで、粒生成と粒成長を促すことができずに、特性のよい蛍光体が得られ難くなることを抑制できる場合がある。焼成時間を長くしすぎないことで、構成している元素の揮発が促され、原子欠損により結晶構造内に欠陥が誘発され特性のよい蛍光体が得られ難くなることを抑制できる場合がある。
[後処理工程]
得られる焼成物は、粒状又は塊状となる。これを解砕、粉砕及び/又は分級操作を組み合わせて所定のサイズの粉末にする。ここでは、D50(メジアン径ともいう)が約30μm以下になるように処理してもよい。
具体的な処理の例としては、合成物を目開き45μm程度の篩分級処理し、篩を通過した粉末を次工程に回す方法、或いは合成物をボールミルや振動ミル、ジェットミル等の一般的な粉砕機を使用して所定の粒度に粉砕する方法が挙げられる。後者の方法において、過度の粉砕を行わないことで、光を散乱しやすい微粒子が生成したり、粒子表面に結晶欠陥が生成し、発光効率の低下を引き起こしたりすることを抑制できる場合がある。
また、必要に応じて、蛍光体(焼成物)を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄工程後は、蛍光体を付着水分がなくなるまで乾燥させて、使用に供する。さらに、必要に応じて、凝集をほぐすために分散及び/又は分級処理を行ってもよい。
発光特性に優れる蛍光体を得る観点から、不純物の含有量が少ない方が好ましい。とりわけ、Cl及びF等のハロゲン元素を少なくすることで、発光が阻害されることを抑制できる場合がある。そのため、蛍光体の全質量に対するCl及びFの元素量換算の含有割合は合計で5000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは3000ppm以下、さらに好ましくは2000ppm以下である。
<蛍光体含有組成物>
本実施形態の蛍光体は、そのまま単独で発光材料として用いることができるが、他の材料と混合して蛍光体含有組成物として用いることもできる。すなわち、蛍光体含有組成物は、本実施形態の蛍光体とは異なる物質を含んでいてもよい。例えば、本実施形態の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体やバインダー樹脂や封止樹脂中に分散させた形態で用いることができる。蛍光体含有組成物として用いる場合、本実施形態の蛍光体の含有割合(含有率)は、組成物総質量に対して、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。このとき、本実施形態の蛍光体とは異なる物質としては、任意の無機系材料及び/又は有機系材料を使用することができ、例えば、本実施形態の蛍光体とは異なる蛍光体;付加反応型シリコーン又は縮合反応型のシリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のバインダー樹脂や封止樹脂;ガラス;拡散剤;増粘剤;増量剤;緩衝剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
<発光装置等>
上述した本実施形態の蛍光体及びこれを用いた蛍光体含有組成物は、照明装置や画像表示装置等の発光装置の発光材料として好適に用いられる。この種の発光装置の一態様は、300nm以上500nm以下の近紫外又は短波長可視域の光を発する励起用光源、及びこの励起用光源が発する光の少なくとも一部を異なる発光スペクトルに変換する蛍光体を少なくとも備える。かかる蛍光体として、上述した本実施形態の蛍光体及びこれを用いた蛍光体含有組成物を用いればよい。励起用光源としては、特に限定されないが、例えば300~500nmの波長の光を発する紫外(又は紫)LED発光素子又は青色LED発光素子を用いることができる。LED発光素子としては、例えば、GaN系LEDを用いることができる。GaN系LEDとしては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体を用いることができる。照明装置や画像表示装置等の発光装置としては、LED照明装置やLED画像表示装置等のLEDデバイス、EL照明装置やEL画像表示装置等のELデバイス、蛍光ランプ等が知られている。より具体的には、白色発光ダイオード、複数の白色発光ダイオードを含む照明器具、液晶パネル用バックライト等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、画像表示装置としては、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)及び液晶ディスプレイ(LCD)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。装置構成及び発光装置の実施形態としては、種々のものが知られており、それらの構成は何ら制限されず、公知の装置構成を任意に採用することが可能である。例えば、特開2007-291352号公報に記載のものが挙げられる。また、発光装置の形態としては、砲弾型、カップ型、チップオンボード及びリモートフォスファー等が挙げられる。画像表示装置としては、具体的構成に制限はないが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置を構成する場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑及び青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
励起用光源としては、本実施形態の蛍光体の励起ピーク(吸収極大波長)に一致した波長300nm以上500nm以下の近紫外又は短波長可視領域に発光ピークを有する光を発する光源が好ましく用いられる。このような光源としては、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、半導体レーザ、又は、有機EL発光体(OLED)等が挙げられる。これにより、蛍光体から緑色、黄緑色、黄色等、所望の発光色を効率よく発光させることができる。
以下、実施例を用いて本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
<測定方法>
[発光特性]
発光粒子をガラスキャピラリ中に封入するか、ガラスファイバー先端に設置し、Xe分光励起装置QE1100(大塚電子社製)及び発光検出器MCPD-7700(大塚電子社製)を用いて励起発光スペクトルと発光スペクトルを測定した。励起スペクトルは、発光ピーク波長近傍の発光をモニターしたときの測定結果である。また 、発光ピーク波長と発光ピークの半値幅は、得られた発光スペクトルから読み取った。
[元素分析]
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察にて結晶を選び出したのち、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて各元素の分析を実施した。
[結晶構造解析]
単結晶粒子のX線回折データをイメージングプレートとグラファイトモノクロメータを備えMo KαをX線源とする単結晶X線回折装置(Bruker AXS,D8 QUEST)で測定した。データの収集と格子定数の精密化にはAPEX2を、X線形状吸収補正にはSADABS(Siemens Area Detector ABSorption correction program)を使用した。F2のデータについて最小自乗法プログラムSHELXL-97を用いて結晶構造パラメータの精密化を行った。また、結晶構造の描画にはVESTA(三次元結晶構造表示ソフトウェア)を用いた。
(実施例1)
蛍光体原料粉末としてLiAlO 24.0質量%、SrO 74.7質量%、Eu 1.3質量%となるようにそれぞれ秤量した後、乳鉢に入れ、均一になるまで混合し、実施例1の原料混合粉末を得た。得られた原料混合粉末を、モリブデン製容器に充填した。なお、これらの操作は、高純度窒素ガスで満たしたグローブボックス中ですべて行った。
次いで、容器を管状炉中に設置し、Nガスを流通させ、最高温度1000℃で2時間保持することによって焼成した。焼成後の容器をNガスで満たしたグローブボックス中へ導入し、得られた生成物を乳鉢にて解砕し、実施例1の焼成粉末を得た。
得られた実施例1の焼成粉末から、塊状の緑色粒子を採取した(実施例1の蛍光体)。この実施例1の蛍光体について、単結晶X線回折測定による結晶構造解析を実施したところ、実施例1の蛍光体は、斜方晶系に属し、P n m a空間群に属し、表1に示す結晶パラメータ及び原子座標を占める結晶であった。実施例1の蛍光体においては、LiとAlは別の結晶サイトに存在していた。また、Euを含まない場合の結晶組成は、SrLiAlであった。なお、表1中の席占有率は例示であり、記載通りの比率に限定されるものではない。
Figure 0007318924000001
さらに、実施例1の蛍光体について、元素分析(EDX測定)を行った。検出された元素は、Sr、Al、Eu、O及びClであった。Sr+Eu=1で規格化したカチオンのEDX測定組成は、Sr:Al:Eu=0.99:0.57:0.01であり、結晶構造解析結果との一致が良好であった。なお、Liは、EDX測定によっては検出されず、Clは、焼成粉末の作製過程において混入したものと考えられる。
次いで、実施例1の蛍光体を365nmの光源を用いて励起したときの発光スペクトルを図1に示す。実施例1の蛍光体は、発光ピーク波長509nm、半値幅46nmの狭帯域緑色発光を示した。
(実施例2)
蛍光体原料粉末としてLiNが9.6質量%、LiOが2.7質量%、Srが16.4質量%、SrOが3.9質量%、AlNが47.3質量%、Alが13.1質量%、EuFが2.3質量%、及びSrFが4.8質量%となるようにそれぞれ秤量した後、乳鉢に入れ、均一になるまで混合し、実施例2の原料混合粉末を得た。得られた原料混合粉末をモリブデン製容器に充填した。なお、これらの操作は、高純度窒素ガスで満たしたグローブボックス中ですべて行った。
次いで、容器を管状炉中に設置し、Nガスを流通させ、最高温度1100℃で12時間保持することによって焼成した。焼成後の容器をNガスで満たしたグローブボックス中へ導入した。
焼成後の容器壁面から、平板状の黄色粒子を採取した(実施例2の蛍光体)。この実施例2の蛍光体について、単結晶X線回折測定による結晶構造解析を実施したところ、実施例2の蛍光体は、単斜晶系に属し、P 21/m空間群に属し、表2に示す結晶パラメータ及び原子座標を占める結晶であった。実施例2の蛍光体においては、LiとAlは同一の結晶サイトに存在していた。また、Euを含まない場合の結晶組成は、Sr(Li、Al)であった。なお、表2中の席占有率は例示であり、記載通りの比率に限定されるものではない。
Figure 0007318924000002
次いで、実施例2の蛍光体を416nmの光源を用いて励起したときの発光スペクトル及び576nmの発光をモニターした励起スペクトルを図2に示す。実施例2の蛍光体は、発光ピーク波長577nm、半値幅71nmの黄色発光を示した。なお、実施例2の蛍光体の励起帯は、ピークが416nmであり、530nm付近まで伸びており(416nmで規格化した場合、400nmでの相対強度は0.89であり、450nmでの相対強度は0.89である。)、近紫外又は青色波長可視領域の光での励起に好適なものであることがわかる。
(実施例3)
表3に示す元素比率となるように、表4の質量割合(%)で、それぞれの原料を秤量した後、乳鉢に入れ、均一になるまで混合し、実施例3の原料混合粉末を得た。得られた原料混合粉末を、モリブデン製容器に充填した。なお、これらの操作は、高純度窒素ガスで満たしたグローブボックス中ですべて行った。
Figure 0007318924000003
Figure 0007318924000004
次いで、容器を管状炉中に設置し、Nガスを流通させ、最高温度1100℃で3時間保持することによって焼成した。焼成後の容器をNガスで満たしたグローブボックス中へ導入し、得られた生成物を乳鉢にて解砕し、実施例3の蛍光体を得た。
実施例3の蛍光体の粉末X線回折測定を行った結果を図3に示す。実施例3の蛍光体は実施例2で示した蛍光体を含有していた(不純物として、SrOとAlNを含む)。実施例3の蛍光体は、窒素を含有していることが推測される。
次いで、実施例3の蛍光体を405nmの光源を用いて励起したときの発光スペクトルを図4に示す。実施例3の蛍光体は、発光ピーク波長571nm、半値幅74nmの黄色発光を示した。
本発明の蛍光体は、従来の蛍光体とは異なる結晶構造及び発光特性を有し、近紫外又は短波長可視域の光により、緑色から黄色の範囲の何れかの光を発するものであるため、発光装置、照明装置及び画像表示装置等の各種用途において使用される蛍光材料として広く且つ有効に利用可能である。

Claims (12)

  1. M元素、A元素、B元素、C元素(但し、M元素はEu、Ce、Pr、Sm、Tb、Dy及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素、A元素は少なくともLiを含有し、必要に応じてNa及びKよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素をさらに含有し、B元素は少なくともSrを含有し、必要に応じてMg、Ca、及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素をさらに含有し、C元素は少なくともAlを含有し、必要に応じてGaをさらに含有する)及びOを少なくとも有し、更にNをeの割合で有する結晶相を含み、前記結晶相は斜方晶系の結晶構造を有し、下記式[1]で表される蛍光体。
    1-m [1]
    (上記式[1]中、m、a、c、e及びfは、各々独立に、下記式を満たす値である。
    0<m≦0.2
    0.31≦a≦0.51
    0.49≦c≦0.69
    0≦e≦0.38
    1.63≦f≦2.10
    0.95≦a+c≦1.05
    1.90≦e+f≦2.10)
  2. 少なくともA元素とC元素が別の結晶サイトに存在し、格子定数が下記範囲を満たす、請求項1に記載の蛍光体。
    10.06≦格子定数a≦12.29
    5.06≦格子定数b≦6.19
    5.99≦格子定数c≦7.32
  3. 前記結晶相は、Pnma空間群に属する、請求項2に記載の蛍光体。
  4. 300nm以上500nm以下の波長を有する励起光を照射することにより、480nm以上540nm以下の波長範囲に発光ピークを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光体。
  5. 発光スペクトルにおける半値幅が、50nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の蛍光体。
  6. 上記式[1]中、a=0.50、c=0.50、e=0、f=2.00である、請求項1~5のいずれか一項に記載の蛍光体。
  7. M元素が、Euである、請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光体。
  8. A元素が、Liである、請求項1~7のいずれか一項に記載の蛍光体。
  9. B元素が、Srである、請求項1~8のいずれか一項に記載の蛍光体。
  10. C元素が、Alである、請求項1~9のいずれか一項に記載の蛍光体。
  11. 前記蛍光体の含有率が20質量%以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の蛍光体。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
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