JP2020021561A - フロー電池およびフロー電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】負極と正極との導通を低減することができるフロー電池およびフロー電池システムの提供。【解決手段】フロー電池は、正極2および負極3と、電解液6と、流動装置とを備える。電解液は、正極および負極に接触する。流動装置は、電解液を流動させる。流動する電解液の流速は、正極と負極との中央部分が中央部分よりも負極寄りの負極側部分の2倍以上である。【選択図】図1
Description
開示の実施形態は、フロー電池およびフロー電池システムに関する。
従来、正極と負極との間に、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオン([Zn(OH)4]2−)を含有する電解液を循環させるフロー電池が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
また、亜鉛種などの活物質を含む負極を、選択的イオン伝導性を有するイオン伝導層で覆うことでデンドライトの成長を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
Y. Ito. et al.: Zinc morphology in zinc-nickel flow assisted batteries and impact on performance, Journal of Power Sources, Vol. 196, pp. 2340-2345, 2011
しかしながら、上記に記載のフロー電池では、依然として負極と正極とが導通する懸念があった。
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、負極と正極との導通を低減することができるフロー電池およびフロー電池システムを提供することを目的とする。
実施形態の一態様に係るフロー電池は、正極および負極と、電解液と、流動装置とを備える。電解液は、前記正極および前記負極に接触する。流動装置は、前記電解液を流動させる。流動する前記電解液の流速は、前記正極と前記負極との中央部分が前記中央部分よりも負極寄りの負極側部分の2倍以上である。
実施形態の一態様のフロー電池およびフロー電池システムによれば、負極と正極との導通を低減することができる。
以下、添付図面を参照して、本願の開示するフロー電池およびフロー電池システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係るフロー電池システムの概略を示す図である。図1に示すフロー電池システム100は、フロー電池1と制御装置40とを備える。フロー電池1は、筐体17に収容された反応部10および発生部9と、供給部14とを備える。反応部10は、正極2と、負極3と、隔膜4,5と、電解液6と、粉末7とを備える。フロー電池1は、発生部9で発生した気泡8を電解液6中で浮上させることにより反応部10内に収容された電解液6を流動させる装置である。発生部9は、流動装置の一例である。
なお、説明を分かりやすくするために、図1には、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。また、図1に示すフロー電池システム100と同様の構成については同じ符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
正極2は、例えば、ニッケル化合物、マンガン化合物またはコバルト化合物を正極活物質として含有する導電性の部材である。ニッケル化合物は、例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト化合物含有水酸化ニッケル等が使用できる。マンガン化合物は、例えば、二酸化マンガン等が使用できる。コバルト化合物は、例えば、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト等が使用できる。また、正極2は、黒鉛、カーボンブラック、導電性樹脂等を含んでもよい。電解液6が分解される酸化還元電位の観点からは、正極2はニッケル化合物を含有してもよい。また、正極2は、ニッケル金属、コバルト金属またはマンガン金属、あるいはそれらの合金であってもよい。
また、正極2は、例えば、上記した正極活物質や導電体その他の添加剤を複数の粒状体として含む。具体的には、正極2は、例えば、予め定められた割合で配合された粒状の活物質および導電体を、保形性に寄与するバインダとともに含有するペースト状の正極材料を発泡ニッケルなどの導電性を有する発泡金属へ圧入し、所望の形状に成形し、乾燥させたものを使用することができる。
負極3は、負極活物質を金属として含む。負極3は、例えば、ステンレスや銅などの金属板や、ステンレスや銅板の表面をニッケルやスズ、亜鉛でメッキ処理したものを使用することができる。また、メッキ処理された表面が一部酸化されたものを負極3として使用してもよい。
負極3は、正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3aおよび負極3bを含む。正極2および負極3は、負極3aと、正極2と、負極3bとが予め定められた間隔でY軸方向に沿って順に並ぶように配置されている。このように隣り合う正極2と負極3との間隔をそれぞれ設けることにより、正極2と負極3との間における電解液6および気泡8の流通経路が確保される。
隔膜4,5は、正極2の厚み方向、すなわちY軸方向の両側を挟むように配置される。隔膜4,5は、電解液6に含まれるイオンの移動を許容する材料で構成される。具体的には、隔膜4,5の材料として、例えば、隔膜4,5が水酸化物イオン伝導性を有するように、陰イオン伝導性材料が挙げられる。陰イオン伝導性材料としては、例えば、有機ヒドロゲルのような三次元構造を有するゲル状の陰イオン伝導性材料、または固体高分子型陰イオン伝導性材料などが挙げられる。固体高分子型陰イオン伝導性材料は、例えば、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族より選択された少なくとも一種類の元素を含有する、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物およびリン酸化合物からなる群より選択された少なくとも一つの化合物とを含む。
隔膜4,5は、好ましくは、水酸化物イオンよりも大きいイオン半径を備えた[Zn(OH)4]2−等の金属イオン錯体の透過を抑制するように緻密な材料で構成されると共に所定の厚さを有する。緻密な材料としては、例えば、アルキメデス法で算出された90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上の相対密度を有する材料が挙げられる。所定の厚さは、例えば、10μm〜1000μm、より好ましくは50μm〜500μmである。
この場合には、充電の際に、負極3a,3bにおいて析出する亜鉛がデンドライト(針状結晶)として成長し、隔膜4,5を貫通することを低減することができる。その結果、互いに向かい合う負極3と正極2との間の導通を低減することができる。
電解液6は、6mol・dm−3以上のアルカリ金属を含有するアルカリ水溶液である。アルカリ金属は、例えばカリウムである。具体的には、例えば、6〜6.7moldm−3の水酸化カリウム水溶液を電解液6として使用することができる。また、酸素発生抑制を目的に、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属を水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム)として添加してもよい。
また、電解液6は、亜鉛成分を含有する。亜鉛成分は、[Zn(OH)4]2−として電解液6中に溶存している。亜鉛成分としては、例えば酸化亜鉛または水酸化亜鉛を使用することができる。また、1dm−3の水酸化カリウム水溶液に対し、0.5molの割合でZnOを添加し、必要に応じて後述する粉末7を追加することにより電解液6を調製することができる。未使用、あるいは放電終了後の電解液6は、例えば1×10−4mol・dm−3以上5×10−2mol・dm−3以下、好ましくは1×10−3mol・dm−3以上2.5×10−2mol・dm−3以下の亜鉛成分を含有することができる。
粉末7は、亜鉛を含む。具体的には、粉末7は、例えば粉末状に加工または生成された酸化亜鉛、水酸化亜鉛等である。粉末7は、アルカリ水溶液中には容易に溶解するが、亜鉛種の飽和した電解液6中には溶解せずに分散または浮遊し、一部が沈降した状態で電解液6中に混在する。電解液6が長時間静置されていた場合、ほとんどの粉末7が、電解液6の中で沈降した状態になることもあるが、電解液6に対流等を生じさせれば、沈降していた粉末7の一部は、電解液6に分散または浮遊した状態になる。つまり、粉末7は、電解液6中に移動可能に存在している。なお、ここで移動可能とは、粉末7が、周囲の他の粉末7の間にできた局所的な空間の中のみを移動できることではなく、電解液6の中を別の位置に粉末7が移動することにより、当初の位置以外の電解液6に粉末7が晒されるようになっていることを表す。さらに、移動可能の範疇には、正極2および負極3の両方の近傍まで粉末7が移動できるようになっていることや、筐体17内に存在する電解液6中の、ほぼどこにでも粉末7が移動できるようになっていることが含まれる。電解液6中に溶存する[Zn(OH)4]2−が消費されると、電解液6中に混在する粉末7は、粉末7および電解液6が互いに平衡状態を維持するよう電解液6中に溶存する[Zn(OH)4]2−が飽和濃度に近づくように溶解する。粉末7は、電解液6中の亜鉛濃度を調整するとともに、電解液6のイオン伝導度を高く維持することができる。
気泡8は、例えば正極2、負極3および電解液6に対して不活性な気体で構成される。このような気体としては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、またはアルゴンガスなどが挙げられる。電解液6に不活性な気体の気泡8を発生させることにより、電解液6の変性を低減することができる。また、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である電解液6の劣化を低減し、電解液6のイオン伝導度を高く維持することができる。なお、気体は空気を含有してもよい。
発生部9から電解液6中に供給された気体により発生した気泡8は、所定の間隔で配置された電極間、より具体的には、負極3aと正極2との間、正極2と負極3bとの間において、それぞれ電解液6中を浮上する。電解液6中を気泡8として浮上した気体は、電解液6の液面6aで消滅し、上板18と電解液6の液面6aとの間に気体層13を構成する。
ここで、フロー電池1における電極反応について、正極活物質として水酸化ニッケルを適用したニッケル亜鉛電池を例に挙げて説明する。充電時における正極2および負極3での反応式はそれぞれ、以下のとおりである。
正極:Ni(OH)2 + OH− → NiOOH + H2O + e−
負極:[Zn(OH)4]2− + 2e− → Zn +4OH−
負極:[Zn(OH)4]2− + 2e− → Zn +4OH−
一般的には、この反応に伴って負極3で生成したデンドライトが正極2側へ成長し、正極2と負極3とが導通する懸念がある。反応式から明らかなように、負極3では、充電により亜鉛が析出するのに伴い、負極3の近傍における[Zn(OH)4]2−の濃度が低下する。そして、析出した亜鉛の近傍で[Zn(OH)4]2−の濃度が低下する現象が、デンドライトとして成長する一因である。すなわち、充電時に消費される電解液6中の[Zn(OH)4]2−を補給することにより、電解液6中の亜鉛種である[Zn(OH)4]2−の濃度が高い状態に保持される。これにより、デンドライトの成長が低減され、正極2と負極3とが導通する可能性が低減される。
フロー電池1では、電解液6中に亜鉛を含む粉末7を混在させるとともに、発生部9の吐出口9aから電解液6中に気体を供給して気泡8を発生させる。気泡8は、負極3aと正極2との間、正極2と負極3bとの間のそれぞれにおいて筐体17の下方から上方に向かって電解液6中を浮上する。
また、電極間における上記した気泡8の浮上に伴い、電解液6には上昇液流が発生し、負極3aと正極2との間、正極2と負極3bとの間では反応部10の内底10e側から上方に向かって電解液6が流動する。そして、電解液6の上昇液流に伴い、主に反応部10の内壁10aと負極3aとの間、および内壁10bと負極3bとの間で下降液流が発生し、電解液6が反応部10の内部を上方から下方に向かって流動する。
これにより、充電によって電解液6中の[Zn(OH)4]2−が消費されると、これに追従するように粉末7中の亜鉛が溶解することで高濃度の[Zn(OH)4]2−を含有する電解液6が負極3の近傍に補給される。このため、電解液6中の[Zn(OH)4]2−を濃度が高い状態に保つことができ、デンドライトの成長に伴う正極2と負極3との導通の可能性を低減することができる。
なお、粉末7としては、酸化亜鉛および水酸化亜鉛以外に、金属亜鉛、亜鉛酸カルシウム、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられ、酸化亜鉛および水酸化亜鉛が好ましい。
また、負極3では、放電によりZnが消費され、[Zn(OH)4]2−を生成するが、電解液6はすでに飽和状態であるため、電解液6中では、過剰となった[Zn(OH)4]2−からZnOが析出する。このとき負極3で消費される亜鉛は、充電時に負極3の表面に析出した亜鉛である。このため、元来亜鉛種を含有する負極を用いて充放電を繰り返す場合とは異なり、負極3の表面形状が変化するいわゆるシェイプチェンジが生じない。これにより、実施形態に係るフロー電池1によれば、負極3の経時劣化を低減することができる。なお、電解液6の状態によっては、過剰となった[Zn(OH)4]2−から析出するのは、Zn(OH)2や、ZnOとZn(OH)2とが混合したものになる。
実施形態に係るフロー電池1についてさらに説明する。発生部9は、反応部10の下方に配置されている。発生部9は、後述する供給部14から供給された気体を一時的に貯留するよう内部が中空となっている。また、反応部10の内底10eは、発生部9の中空部分を覆うように配置されており、発生部9の天板を兼ねている。
また、内底10eは、X軸方向およびY軸方向に沿って並ぶ複数の吐出口9aを有している。発生部9は、供給部14から供給された気体を吐出口9aから吐出することにより、電解液6中に気泡8を発生させる。吐出口9aは、例えば0.05mm以上0.5mm以下の直径を有する。吐出口9aの直径をこのように規定することにより、吐出口9aから発生部9の内部の中空部分に電解液6や粉末7が進入する不具合を低減することができる。また、吐出口9aから吐出される気体に対し、気泡8を発生させるのに適した圧力損失を与えることができる。
上記したように、負極3では、電解液6中の[Zn(OH)4]2−濃度を高い状態に保つことによりデンドライトの成長が低減される。ただし、充電時に負極3の表面で生成したデンドライトは、放電によっても完全には電解液6中に溶解せずに残存することがある。そして、負極3の表面に残存したデンドライトは、充放電の繰り返しにより徐々に正極2側への成長を続け、やがて正極2と負極3とが導通する懸念がある。
そこで、実施形態に係るフロー電池システム100では、充電時に流動する電解液6の流速を、正極2と負極3との中央部分と、中央部分よりも負極3寄りの負極側部分とで異ならせ、デンドライトを積極的に成長させることで負極3と正極2との導通を低減することとした。この点について、図2を用いて説明する。
図2は、デンドライトの成長過程を説明する図である。なお、図2では、説明の簡略化を目的として、充放電により負極3の表面31で析出と溶解とを繰り返す亜鉛および電解液6中に混在する粉末7は図示を省略している。
図2(a)に示すように、充電時に負極3の表面31に付着した亜鉛の一部はデンドライト50を生成する。ここで、負極3と正極2との中央部分CPでは、中央部分CPよりも負極3寄りの負極側部分NPと比較して電解液6の流速が2倍以上、さらに3倍以上となるように電解液6が流動している。このため、充電時には、負極側部分NPよりも電解液6中に溶存する亜鉛成分の濃度が高い中央部分CPに向けてデンドライト50の端部51が成長する。
中央部分CPでは、充電中においても電解液6中に溶存する亜鉛成分の濃度が高い状態で推移する。このため、中央部分CPの近くまで到達したデンドライト50の端部51は、放射状に成長し、瘤状または塊状の先端部52が生成する(図2(b)参照)。先端部52は、充放電を繰り返すと、充電時に析出する亜鉛により、さらに成長を続ける(図2(c)、(d)参照)。
成長した先端部52は、自重および電解液6の流動に伴う圧力により、負極3側の端部であるネック部53で電解液6中に脱落する(図2(e)参照)。その後、先端部52が脱落したデンドライト50は、ネック部53を端部として図2(a)〜(e)に示す先端部52の成長および脱落を繰り返すこととなる。このように、中央部分CPと負極側部分NPとで電解液6の流速を異ならせることにより、デンドライト50を介した負極3と正極2との導通の可能性が低減する。
ここで、中央部分CPの厚み方向の幅dCは、例えば1mmとすることができる。また、負極側部分NPの負極3の厚み方向の幅dNと、中央部分CPよりも正極2寄りの正極側部分PPの負極3の厚み方向の幅dPはいずれも、同じとすることができる。なお、負極3と正極2との間の幅dが3mm以上の場合、dN=dC=dPとしてもよい。
また、電解液6の流速は、例えば、負極側部分NPで3.5mm/s以下とすることができ、中央部分CPで10mm/s以上とすることができる。このように電解液6の流速を調整し、デンドライト50を積極的に成長させることで負極3と正極2との導通の可能性を低減することができる。なお、正極側部分PPにおける電解液6の流速には特に制限はなく、例えば、消費電力が小さくなるように調整してもよい。例えば、正極側部分PPにおける電解液6の流速を、負極側部分NPと同じとしてもよく、中央部分CPと同じとしてもよい。以下、中央部分CPにおける電解液6の流速を負極側部分NPにおける電解液6の流速と異ならせる具体例について、図3、図4を用いて説明する。
図3は、吐出口の第1配置例を示す図である。図3および後述する図4は、図1に示すフロー電池1が有する反応部10の内底10eを平面視したものに相当する。
図3に示すように、吐出口9aは平面視で負極3aと正極2との間、正極2と負極3bとの間に配置されるようにX軸方向に沿って並設されている。このように配置された吐出口9aにおいて、X軸方向に沿った間隔(ピッチ)を変更することにより、中央部分CPにおける電解液6の流速を変動させることができる。具体的には、平面視で中央部分CPと重なるように配置された吐出口9aのピッチを密にすると、中央部分CPにおける電解液6の流速が大きくなり、吐出口9aのピッチを疎にすると、中央部分CPにおける電解液6の流速が小さくなる。
図4は、吐出口の第2配置例を示す図である。図4に示す吐出口9aは、負極3寄りに形成された第1吐出口9a1と、正極2寄りに形成された第2吐出口9a2とを含む。このようにY軸方向に複数の吐出口9aを配置することによっても、中央部分CPにおける電解液6の流速を負極側部分NPにおける電解液6の流速よりも大きくすることができる。なお、第1吐出口9a1および第2吐出口9a2はいずれも、平面視で中央部分CPと重なるように配置されてもよいが、これに限らず、例えば第1吐出口9a1は平面視で中央部分CPと重なり、第2吐出口9a2は平面視で正極側部分PPと重なるように配置されてもよい。
このようにX軸方向に沿うように並ぶ吐出口9aの疎密や、Y軸方向に並ぶ吐出口9aの数を変更することにより、中央部分CPにおける電解液6の流速を負極側部分NPにおける電解液6の流速よりも大きくすることができる。また、必要に応じて、吐出口9aから単位時間あたりに吐出される気体の吐出量を調節してもよい。
図1に戻り、さらに説明する。制御装置40は、制御部41と、記憶部42とを有する。制御部41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種回路を含む。かかるコンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部41として機能する。
また、制御部41をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
また、記憶部42は、例えば、ROMおよびHDDに対応する。ROMおよびHDDは、制御装置40における各種の設定情報を記憶することができる。なお、制御部41は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して各種情報を取得することとしてもよい。
制御装置40は、フロー電池1に対し、電解液6の組成に応じた充電制御を行うことにより、負極3と正極2との導通をさらに低減する。この点について、図5を参照してさらに説明する。
図5は、実施形態に係るフロー電池システムの機能的構成を示すブロック図である。図5に示すように、フロー電池システム100は、上述のフロー電池1と、制御装置40とに加えて、電流検出部26と、流速検出部27とを有する。
電流検出部26は、フロー電池1の充電時に測定される充電電流を検出して、かかる充電電流の情報を制御部41に送信する。流速検出部27は、充電時に正極2と負極3との間に流入する電解液6の流速を検出して、かかる流速の情報を制御部41に送信する。流速検出部27は、例えば負極3aと隔膜4との間、隔膜5と負極3bとの間にそれぞれ流入する電解液6の流速をそれぞれ検知する流速計である。流速計としては、例えば、機械式、音波式、電磁式、光学式などを利用することができる。また、電解液6と同速度で運動するマーカー粒子を予め電解液6中に混入させて撮像するPIV(Particle Image Velocimetry)を電流検出部26として適用してもよい。
そして、制御部41は、電流検出部26および流速検出部27から送られてくる情報と、記憶部42に記憶される設定情報とに基づいて、フロー電池1の充電を制御する。具体的には、制御部41は、電流検出部26から取得した情報に基づいて算出される電流密度D(単位:〔A/cm3〕)での充電時において、中央部分CPのうち、Y軸方向の幅1〔mm〕×X軸方向の幅10〔mm〕の範囲に亜鉛成分を含むイオンである亜鉛酸イオンによって1秒間に供給される電荷供給量Xが、X≧30×Dの関係を有する。ここで、電荷供給量Xは、電解液6中に溶存する亜鉛成分の濃度をB〔mol/dm3〕、中央部分CPを流動する電解液6の流速をC〔mm/s〕としたとき、96500×B/1000×2×Cである。このように電荷供給量Xを規定することにより、デンドライト50をさらに積極的に成長させることができ、負極3と正極2との導通の可能性を低減することができる。
なお、電荷供給量Xは、例えば0.4〔mol/dm3〕など、調製直後の電解液6と比較して濃度Bが大幅に低下する充電終了の前においても、上記した関係を有することが好ましい。これにより、充電中の電解液6中では常にデンドライト50を積極的に成長させることができ、負極3と正極2との導通の可能性を低減することができる。
実施形態に係るフロー電池システム100が備えるフロー電池1についてさらに説明する。筐体17および上板18は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。筐体17および上板18は、好ましくは互いに同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。また、発生部9は、反応部10の内部に配置されてもよい。
供給部14は、配管16を介して筐体17の内部から回収された気体を、配管15を介して発生部9に供給する。供給部14は、例えば気体を移送可能なポンプ(気体ポンプ)、コンプレッサまたはブロワである。供給部14の気密性を高くすれば、気体や電解液6に由来する水蒸気を外部に漏出させることによるフロー電池1の発電性能の低下が起きにくい。また、供給部14と発生部9との間に、吐出口9aから単位時間当たりに吐出される気体の量を調整するための調整弁(不図示)を設けてもよい。かかる調整弁は、例えば、制御部41からの制御信号に基づいて駆動するよう構成することができる。
次に、フロー電池1における電極間の接続について説明する。図6は、実施形態に係るフロー電池システムが備えるフロー電池の電極間の接続の一例について説明する図である。
図6に示すように、負極3aおよび負極3bは並列接続されている。このように負極3を並列に接続することにより、正極2および負極3の総数が異なる場合であってもフロー電池1の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
また、実施形態に係るフロー電池1では、正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3a,3bを備える。このように1つの正極2に対して2つの負極3a,3bが対応したフロー電池1では、正極2と負極3とが1:1で対応するフロー電池と比較して負極1つ当たりの電流密度が低下する。このため、実施形態に係るフロー電池1によれば、負極3a,3bでのデンドライトの生成がさらに低減されるため、負極3a,3bと正極2との導通をさらに低減することができる。
なお、図1に示すフロー電池1では、合計3枚の電極が、負極3および正極2が交互に配置されるように構成されたが、これに限らず、正極2および負極3をそれぞれ1枚ずつ配置させてもよい。また、図1に示すフロー電池1では、両端がともに負極3となるように構成されたが、これに限らず、両端がともに正極2となるように構成してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記した各実施形態では、電解液6中に粉末7が混在されているとして説明したが、これに限らず、粉末7を有しなくてもよい。このとき、電解液6中に溶存する亜鉛成分は、飽和状態であってもよく、飽和状態よりも低い濃度であってもよい。さらに、電解液6は、過飽和状態となるように亜鉛成分を溶存させたものであってもよい。
また、上記した各実施形態では、隔膜4,5は正極2の厚み方向の両側を挟むように配置されるとして説明したが、これに限らず、正極2を被覆していてもよい。また、隔膜4,5は、必ずしも配置されなくともよい。
なお、供給部14は、常時動作させてもよいが、電力消費を低減する観点から、放電時には充電時よりも気体の供給レートを低下させてもよい。
また、上記した各実施形態では、制御部41は、電流検出部26および流速検出部27から送られてくる情報と、記憶部42に記憶される設定情報とに基づいて、フロー電池1の充電を制御するとして説明したが、これに限らず、フロー電池1の充放電を同様に制御することとしてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1 フロー電池
2 正極
3,3a,3b 負極
4,5 隔膜
6 電解液
7 粉末
8 気泡
9 発生部
9a 吐出口
10 反応部
14 供給部
17 筐体
18 上板
40 制御装置
41 制御部
50 デンドライト
100 フロー電池システム
2 正極
3,3a,3b 負極
4,5 隔膜
6 電解液
7 粉末
8 気泡
9 発生部
9a 吐出口
10 反応部
14 供給部
17 筐体
18 上板
40 制御装置
41 制御部
50 デンドライト
100 フロー電池システム
Claims (7)
- 正極および負極と、
前記正極および前記負極に接触する電解液と、
前記電解液を流動させる流動装置と
を備え、
流動する前記電解液の流速は、前記正極と前記負極との中央部分が前記中央部分よりも負極寄りの負極側部分の2倍以上であることを特徴とするフロー電池。 - 前記流動装置は、前記正極および前記負極の下に配置され、前記電解液中に気泡を発生させる発生部を含み、
前記気泡は、前記正極と前記負極との間を浮上することを特徴とする請求項1に記載のフロー電池。 - 電流密度D〔A/cm3〕での充電時において、前記中央部分のうち、前記負極の厚み方向の幅1mmの範囲に亜鉛成分を含むイオンによって1秒間に供給される電荷供給量Xが、X≧30×Dの関係を有することを特徴とする請求項1または2に記載のフロー電池。
- 前記電荷供給量Xは、前記電解液中に溶存する亜鉛成分の濃度をB〔mol/dm3〕、前記中央部分を流動する前記電解液の流速をC〔mm/s〕としたとき、96500×B/1000×2×Cであることを特徴とする請求項3に記載のフロー電池。
- 前記電荷供給量Xは、充電終了の前において、前記関係を有することを特徴とする請求項3または4に記載のフロー電池。
- 前記電解液中を移動可能に混在する粉末をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のフロー電池。
- 請求項1〜6のいずれか1つに記載のフロー電池と、
前記フロー電池を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、充電時の電流密度に基づいて前記正極と前記負極との間を流動する前記電解液の流速を制御することを特徴とするフロー電池システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018142604A JP2020021561A (ja) | 2018-07-30 | 2018-07-30 | フロー電池およびフロー電池システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018142604A JP2020021561A (ja) | 2018-07-30 | 2018-07-30 | フロー電池およびフロー電池システム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020021561A true JP2020021561A (ja) | 2020-02-06 |
Family
ID=69589886
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018142604A Pending JP2020021561A (ja) | 2018-07-30 | 2018-07-30 | フロー電池およびフロー電池システム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020021561A (ja) |
-
2018
- 2018-07-30 JP JP2018142604A patent/JP2020021561A/ja active Pending
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