JP2020004654A - 正極成形体、電池およびフロー電池 - Google Patents

正極成形体、電池およびフロー電池 Download PDF

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Abstract

【課題】性能劣化を低減することができる正極成形体、電池およびフロー電池を提供する。【解決手段】正極成形体20は、活物質体21と、導電体22と、結着材23とを含む。導電体は、活物質体に対する質量比が40%以下である。正極成形体は、空隙率が8%以上28%以下である。正極成形体は、超音波で振動する強アルカリ性の電解液中に浸漬させた前後における質量損失率が5%以下である。【選択図】図2

Description

開示の実施形態は、正極成形体、電池およびフロー電池に関する。
従来、正極と負極との間に、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオン([Zn(OH)2−)を含有する電解液を循環させるフロー電池が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
Y. Ito. et al.: Zinc morphology in zinc-nickel flow assisted batteries and impact on performance, journal of Power Sources, Vol. 196, pp. 2340-2345, 2011
しかしながら、上記に記載のフロー電池では、電解液を長期にわたり流動させることで正極を構成する活物質が滑落し、電池性能が劣化する懸念があった。
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、性能劣化を低減することができる正極成形体、電池およびフロー電池を提供することを目的とする。
実施形態の一態様に係る正極成形体は、活物質体と、導電体と、結着材とを含む。導電体は、前記活物質体に対する質量比が40%以下である。正極成形体は、空隙率が8%以上28%以下である。正極成形体は、超音波で振動する強アルカリ性の電解液中に浸漬させた前後における質量損失率が5%以下である。
実施形態の一態様の正極成形体、電池およびフロー電池によれば、性能劣化を低減することができる。
図1は、第1の実施形態に係る正極成形体を有する正極の一例について説明する図である。 図2は、第1の実施形態に係る正極成形体の概略を示す図である。 図3は、第1の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。 図4は、第1の実施形態に係るフロー電池の電極間の接続の一例について説明する図である。 図5は、第2の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本願の開示する正極成形体、電池およびフロー電池の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<第1の実施形態>
[正極成形体]
図1は、第1の実施形態に係る正極成形体を有する正極の一例について説明する図であり、図2は、第1の実施形態に係る正極成形体の概略を示す図である。図1に示すように、正極2は、正極成形体20と、正極成形体20を収容する集電体30とを備える。
また、図2に示すように、正極成形体20は、活物質体21と、導電体22と、結着材23とを含む。活物質体21は、例えば、ニッケルを主成分とする粒状体である。ここで、「ニッケルを主成分とする」とは、活物質体21を構成する各種成分のうち、ニッケル元素が最も多く含有されていることをいい、活物質体21のうち、好ましくは50質量%以上、特に90質量%以上がニッケル元素であってもよい。
活物質体21は、ニッケル化合物またはニッケル金属を含んでもよい。ニッケル化合物は、例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト化合物含有水酸化ニッケル等が使用できる。
活物質体21は、例えば、平均粒子径が5μm以上20μm以下である。活物質体21の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、正極成形体20の保形性が確保されやすくなる。ここで、活物質体21の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(湿式法)において、球相当径に換算した体積基準の粒度分布に基づいて得られた一次粒子のメジアン径(D50)である。平均粒子径は、正極成形体20の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察し、複数(例えば、10個以上)計測した結果から算出してもよい。その際、活物質体21は、導電体22、結着材23および他の活物質体21などによって隠れておらず、全体が見えるもの計測する。平均粒子径は、正極成形体20から分離した活物質体21で測定してもよい。また、活物質体21と導電体22の粒度分布が異なれば、活物質体21と導電体22とが混ざった状態で測定し、粒度分布の違いを用いて、活物質体21の平均粒子径を算出してもよい。
また、正極成形体20は、好ましくは55質量%以上、特に70質量%以上、さらに85質量%以上の活物質体21を含有する。このように活物質体21の含有量を規定することにより、正極2の充電容量を大きくできる。
なお、活物質体21は、上記したものに限らず、例えばマンガン化合物またはコバルト化合物を主成分としてもよい。マンガン化合物は、例えば、二酸化マンガン等が使用できる。コバルト化合物は、例えば、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト等が使用できる。正極成形体20が後述するフロー電池の正極に使用される場合、電解液が分解される酸化還元電位の観点からは、活物質体21はニッケル化合物を含有してもよい。
導電体22は、活物質体21と集電体30との間の導電性を高め、充放電時に生じる正極2でのエネルギー損失を低減する。導電体22は、例えば、炭素材料または金属材料などの導電性材料で構成される。汎用性の観点からは、導電体22は、例えば、炭素材料である。炭素材料としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、カーボンフェルトなどが使用できる。また、金属材料としては、例えば、ニッケル金属が使用できる。また、導電体22は、例えばコバルト金属またはマンガン金属、あるいはそれらの合金であってもよい。
導電体22は、例えば、楕円体状、柱状または鱗片状など、後述する所定の長軸径および短軸径を有する。導電体22の長軸径および短軸径は、正極成形体20のSEM観察により計測することができる。具体的には、SEM観察された導電体22に外接する長方形のうち、面積が最小となるものを規定し、当該長方形の長辺の長さを長軸径、短辺の長さを短軸径とする。例えば、導電体22が楕円形状の場合、長軸径は長軸の長さ、短軸径は短軸の長さである。また、SEM観察した導電体22が矩形状の場合、長軸径は長辺の長さ、短軸径は短辺の長さである。このような長軸径および短軸径の測定を複数(例えば、10個以上)の導電体22について実施し、その平均値を導電体22の長軸径および短軸径としてそれぞれ規定する。
このようにして得られた導電体22の長軸径は、40μm以上140μm以下とすることができる。導電体22の長軸径が40μm未満だと、例えば活物質体21の保形力が弱くなり、充放電時に活物質体21が正極成形体20から脱落して容量低下につながることがある。また、導電体22の長軸径が140μmを超えると、例えば導電体22自身の保形力が弱くなり、導電体22が正極成形体20から脱落して正極成形体20の導電性低下につながることがある。
一方、導電体22の短軸径は、20μm以上40μm以下とすることができる。導電体22の短軸径が20μm未満だと、例えば導電体22の電流パスとしての機能が低くなり、正極成形体20の電気抵抗が高くなることがある。また、導電体22の短軸径が40μmを超えると、例えば活物質体21の保形力が弱くなり、充放電時に活物質体21が正極成形体20から脱落して容量低下につながることがある。
また、導電体22は、活物質体21に対する質量比を、例えば40%以下、さらに10%以上40%以下とすることができる。活物質体21に対する導電体22の質量比をこのように規定することにより、活物質体21による電池容量と正極成形体20による導電性とを両立しやすくなる。
また、導電体22のアスペクト比(長軸径/短軸径)は、例えば2以上20以下、特に3以上3.5以下とすることができる。導電体22のアスペクト比をこのように規定することにより、例えば充放電時の放電容量を効率よく取り出すことが可能になる。
結着材23は、正極成形体20が有する活物質体21同士、導電体22同士および活物質体21と導電体22とを結着させて正極成形体20の保形性に寄与するとともに、集電体30との密着性を高めるバインダである。結着材23としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。
結着材23は、活物質体21に対する質量比を、例えば1.5%以上2.7%以下とすることができる。活物質体21に対する結着材23の質量比をこのように規定することにより、正極成形体20の保形性および集電体30との密着性を過不足なく発現させることができる。
上記したように配合された活物質体21、導電体22および結着材23の混合物を混練し、加圧して成形することにより、正極成形体20が得られる。必要に応じて、活物質体21、導電体22および結着材23の混合物に水またはアルコール等の液体を添加し、成形後、乾燥させて正極成形体20を作成してもよい。
このようにして得られた正極成形体20は、例えば、空隙率が8%以上28%以下である。正極成形体20の空隙率を8%以上とすることにより、例えば正極成形体20の外部と正極成形体20の内部とが空隙24を介して連通し、空隙24に侵入する電解液に含まれるイオンが空隙24を介して正極成形体20の内部にある活物質体21に到達しやすくなる。また、空隙率を28%以下とすることにより、正極成形体20の保形性が維持される。
正極成形体20の空隙率は、水銀ポロシメータを用いた圧入法により測定されるいわゆる見かけ気孔率である。
また、正極成形体20は、超音波で振動する強アルカリ性の電解液中に浸漬させた前後における質量損失率を、例えば、5%以下、特に1.5%以下とすることができる。質量損失率を5%以下とすることにより、例えば強アルカリ性の電解液中で使用される正極成形体20の保形性が長期にわたり維持される。
正極成形体20の質量損失率は、超音波洗浄器(AS ONE製、ASU-10規格(電源電圧:AC100V、50/60Hz、高周波出力:240W))内に、予め秤量した正極成形体20の試料を電解液に浸漬させたビーカーを3分間静置し、取り出した試料を乾燥した後で再度秤量し、初期質量からの減少率を算出した値である。なお、電解液は、6.7moldm−3の水酸化カリウム水溶液に対し、1dm−3当たり0.5molの割合でZnOを添加して溶解させたものである。かかる電解液は、後述するフロー電池に適用される電解液を模擬したものである。
また、正極成形体20は、例えば、厚みが3mm以下、特に1.5mm以上3mm以下の平板状を有する。正極成形体20の厚みを3mm以下とすることにより、後述する電圧効率が増加する。また、正極成形体20が平板状を有することにより、成形時に均等に加圧しやすくなり、保形性を維持しやすくなる。
また、正極成形体20は、例えば、抵抗率が0.009Ω・cm以上0.9Ω・cm以下である。正極成形体20の抵抗率を0.9Ω・cm以下とすることにより、例えば、エネルギー損失が低減する。なお、正極成形体20の抵抗率が0.009Ω・cm未満の場合、導電性の観点からは許容されるが、保形性および/または電池容量の低下が懸念される。
正極成形体20の抵抗率は、幅6mm×長さ45mmの平板状の試料を切り出し、面内の任意の箇所に探針を当て、4端子法で抵抗値R(Ω)を測定後、体積抵抗率に換算して得られた値である。体積抵抗率(Ω・cm)は、R(Ω)×試料の厚みt(cm)×RCF(換算系数:4.4)から算出される。なお、正極成形体20の抵抗率は、有効数字を考慮し、体積抵抗率の算出結果を有効数字1桁で示したものである。
次に、集電体30について説明する。集電体30は、正極成形体20を収容し、適切に保持するように少なくとも一方が開口した箱形状またはポケット形状を有する。集電体30は、例えばニッケル金属またはニッケル合金で構成された板状の部材である。集電体30は、正極成形体20とともに正極2として使用される。なお、集電体30の形状は、正極成形体20を適切に保持できれば図1に示したものに限らない。
図1に示した正極2は、例えばフロー電池に使用することができる。以下では、第1の実施形態に係るフロー電池について説明する。
[フロー電池]
図3は、第1の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図3に示すフロー電池1は、筐体17に収容された反応部10および発生部9と、供給部14とを備える。反応部10は、正極2と、負極3と、隔膜4,5と、電解液6と、粉末7とを備える。フロー電池1は、発生部9で発生した気泡8を電解液6中で浮上させることにより反応部10内に収容された電解液6を流動させる装置である。発生部9は、流動装置の一例である。
なお、説明を分かりやすくするために、図3には、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
負極3は、負極活物質を金属として含む。負極3は、例えば、ステンレスや銅などの金属板や、ステンレスや銅板の表面をニッケルやスズ、亜鉛でメッキ処理したものを使用することができる。また、メッキ処理された表面が一部酸化されたものを負極3として使用してもよい。
負極3は、正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3aおよび負極3bを含む。正極2および負極3は、負極3aと、正極2と、負極3bとが予め定められた間隔でY軸方向に沿って順に並ぶように配置されている。このように隣り合う正極2と負極3との間隔をそれぞれ設けることにより、正極2と負極3との間における電解液6および気泡8の流通経路が確保される。
正極2は、正極成形体20と、集電体30とを有する。正極成形体20は、負極3aと向かい合うように配置された第1成形体20aと、負極3bと向かい合うように配置された第2成形体20bとを含む。また、第1成形体20aと第2成形体20bとの間に挟まれた集電体30には、複数の貫通孔(不図示)が形成されており、正極成形体20および集電体30を通じた電解液6の流動が許容される。
なお、図3では、集電体30の両側に第1成形体20aおよび第2成形体20bが配置された正極2の構成例について示したが、これに限らず、例えば、第1成形体20aのみを有する集電体30と第2成形体20bのみを有する集電体30とをそれぞれ1または複数作製し、かかる集電体30がZ軸方向またはX軸方向に交互に並設された構成を有する正極2を用いてもよい。
正極2は、隔膜(不図示)によって被覆されたものであってもよい。隔膜は、例えば、正極2の厚み方向、すなわちY軸方向の両側を挟むように配置され、正極2が有する正極成形体20の保形性を向上させるとともに、正極2と負極3a,3bとを分離する。隔膜は、電解液6に含まれるイオンの移動を許容する材料で構成される。具体的には、隔膜の材料として、例えば、隔膜が水酸化物イオン伝導性を有するように、陰イオン伝導性材料が挙げられる。陰イオン伝導性材料としては、例えば、有機ヒドロゲルのような三次元構造を有するゲル状の陰イオン伝導性材料、または固体高分子型陰イオン伝導性材料などが挙げられる。固体高分子型陰イオン伝導性材料は、例えば、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族より選択された少なくとも一種類の元素を含有する、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物およびリン酸化合物からなる群より選択された少なくとも一つの化合物とを含む。
隔膜は、好ましくは、水酸化物イオンよりも大きいイオン半径を備えた[Zn(OH)2−等の金属イオン錯体の透過を抑制するように緻密な材料で構成されると共に所定の厚さを有する。緻密な材料としては、例えば、アルキメデス法で算出された90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上の相対密度を有する材料が挙げられる。所定の厚さは、例えば、10μm〜1000μm、より好ましくは50μm〜500μmである。
この場合には、充電の際に、負極3a,3bにおいて析出する亜鉛がデンドライト(針状結晶)として成長し、隔膜を貫通することを低減することができる。その結果、互いに向かい合う負極3と正極2との間の導通を低減することができる。
電解液6は、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である。電解液6中の亜鉛種は、[Zn(OH)2−として電解液6中に溶存している。電解液6は、例えば、KやOHを含むアルカリ水溶液に亜鉛種を飽和させたものを使用することができる。なお、電解液6は、後述する粉末7とともに調製すれば、充電容量を大きくできる。ここで、アルカリ水溶液としては、例えば、6.7moldm−3の水酸化カリウム水溶液を使用することができる。また、1dm−3の水酸化カリウム水溶液に対し、0.5molの割合でZnOを添加し、必要に応じて後述する粉末7を追加することにより電解液6を調製することができる。さらに、酸素発生抑制を目的に、水酸化リチウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を添加してもよい。
電解液6は、例えば、粘度が100mPa・s以下、特に、5mPa・s以上100mPa・s以下となる。このように粘度が低く、特に流動する電解液6中においても、所定の保形性を有する正極成形体20は質量損失率を低く保つことができる。
粉末7は、亜鉛を含む。具体的には、粉末7は、例えば粉末状に加工または生成された酸化亜鉛、水酸化亜鉛等である。粉末7は、アルカリ水溶液中には容易に溶解するが、亜鉛種の飽和した電解液6中には溶解せずに分散または浮遊し、一部が沈降した状態で電解液6中に混在する。電解液6が長時間静置されていた場合、ほとんどの粉末7が、電解液6の中で沈降した状態になることもあるが、電解液6に対流等を生じさせれば、沈降していた粉末7の一部は、電解液6に分散または浮遊した状態になる。つまり、粉末7は、電解液6中に移動可能に存在している。なお、ここで移動可能とは、粉末7が、周囲の他の粉末7の間にできた局所的な空間の中のみを移動できることではなく、電解液6の中を別の位置に粉末7が移動することにより、当初の位置以外の電解液6に粉末7が晒されるようになっていることを表す。さらに、移動可能の範疇には、正極2および負極3の両方の近傍まで粉末7が移動できるようになっていることや、筐体17内に存在する電解液6中の、ほぼどこにでも粉末7が移動できるようになっていることが含まれる。電解液6中に溶存する亜鉛種である[Zn(OH)2−が消費されると、電解液6中に混在する粉末7は、粉末7および電解液6が互いに平衡状態を維持するよう電解液6中に溶存する亜鉛種が飽和に近づくように溶解する。粉末7は、電解液6中の亜鉛濃度を調整するとともに、電解液6のイオン伝導度を高く維持することができる。
気泡8は、例えば正極2、負極3および電解液6に対して不活性な気体で構成される。このような気体としては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、またはアルゴンガスなどが挙げられる。電解液6に不活性な気体の気泡8を発生させることにより、電解液6の変性を低減することができる。また、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である電解液6の劣化を低減し、電解液6のイオン伝導度を高く維持することができる。なお、気体は空気を含有してもよい。
発生部9から電解液6中に供給された気体により発生した気泡8は、所定の間隔で配置された電極間、より具体的には、負極3aと正極2との間、正極2と負極3bとの間において、それぞれ電解液6中を浮上する。電解液6中を気泡8として浮上した気体は、電解液6の液面6aで消滅し、上板18と電解液6の液面6aとの間に気体層13を構成する。
ここで、フロー電池1における電極反応について、正極成形体20が有する活物質体21として水酸化ニッケルを適用したニッケル亜鉛電池を例に挙げて説明する。充電時における正極2および負極3での反応式はそれぞれ、以下のとおりである。
正極:Ni(OH) + OH → NiOOH + HO + e
負極:[Zn(OH)2− + 2e → Zn +4OH
一般的には、この反応に伴って負極3で生成したデンドライトが正極2側へ成長し、正極2と負極3とが導通する懸念がある。反応式から明らかなように、負極3では、充電により亜鉛が析出するのに伴い、負極3の近傍における[Zn(OH)2−の濃度が低下する。そして、析出した亜鉛の近傍で[Zn(OH)2−の濃度が低下する現象が、デンドライトとして成長する一因である。すなわち、充電時に消費される電解液6中の[Zn(OH)2−を補給することにより、電解液6中の亜鉛種である[Zn(OH)2−の濃度が高い状態に保持される。これにより、デンドライトの成長が低減され、正極2と負極3とが導通する可能性が低減される。
放電に伴って負極3から出る亜鉛種は、亜鉛種濃度の高い電解液6に対しても溶けやすい。したがって、放電後の電解液6は、亜鉛種濃度が高く、飽和量に近くなっている。一方、最初に用意する電解液6として、単に酸化亜鉛を溶かしたものを用いると、亜鉛種濃度は、飽和量よりも低く、デンドライトが成長しやすくなる。そのため、フロー電池1に最初に入れる電解液6としては、上述した方法などで作製した、亜鉛種濃度がほぼ飽和したもの、あるいは過飽和となったものを使用するのがよい。
第1の実施形態に係るフロー電池1では、電解液6中に亜鉛を含む粉末7を混在させるとともに、発生部9の吐出口9aから電解液6中に気体を供給して気泡8を発生させる。気泡8は、負極3aと正極2との間、正極2と負極3bとの間のそれぞれにおいて筐体17の下方から上方に向かって電解液6中を浮上する。
また、電極間における上記した気泡8の浮上に伴い、電解液6には上昇液流が発生し、負極3aと正極2との間、正極2と負極3bとの間では反応部10の内底10e側から上方に向かって電解液6が流動する。そして、電解液6の上昇液流に伴い、主に反応部10の内壁10aと負極3aとの間、および内壁10bと負極3bとの間で下降液流が発生し、電解液6が反応部10の内部を上方から下方に向かって流動する。
これにより、充電によって電解液6中の[Zn(OH)2−が消費されると、これに追従するように粉末7中の亜鉛が溶解することで[Zn(OH)2−が電解液6中に補給される。このため、電解液6中の[Zn(OH)2−を濃度が高い状態に保つことができ、デンドライトの成長に伴う正極2と負極3との導通の可能性を低減することができる。
なお、粉末7としては、酸化亜鉛および水酸化亜鉛以外に、金属亜鉛、亜鉛酸カルシウム、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられ、酸化亜鉛および水酸化亜鉛が好ましい。
また、負極3では、放電によりZnが消費され、[Zn(OH)2−を生成するが、電解液6はすでに飽和状態であるため、電解液6中では、過剰となった[Zn(OH)2−からZnOが析出する。このとき負極3で消費される亜鉛は、充電時に負極3の表面に析出した亜鉛である。このため、元来亜鉛種を含有する負極を用いて充放電を繰り返す場合とは異なり、負極3の表面形状が変化するいわゆるシェイプチェンジが生じない。これにより、第1の実施形態に係るフロー電池1によれば、負極3の経時劣化を低減することができる。なお、電解液6の状態によっては、過剰となった[Zn(OH)2−から析出するのは、Zn(OH)や、ZnOとZn(OH)とが混合したものになる。
上記したように、負極3では、電解液6中の[Zn(OH)2−を濃度が高い状態に保つことによりデンドライトの成長が低減される。ただし、充電時に飽和状態または高濃度の[Zn(OH)2−を含有する電解液6が負極3の近傍に滞留すると、苔状に析出した亜鉛が負極3の表面に付着する場合がある。苔状に析出した亜鉛は、例えば嵩密度が4120kg・m−3程度である平常時に析出した亜鉛と比較して嵩高いため、正極2と負極3との間隔が狭まることで気泡8や電解液6の流れが阻害され、反応部10内に収容された電解液6が滞留しやすくなる。また、負極3に析出した苔状の亜鉛が正極2にまで到達すると、負極3と正極2とが導通する。
そこで、反応部10に収容される電解液6の単位時間当たりの流量に上限を設けるとよい。具体的には、気泡8の発生量、すなわち発生部9から反応部10の内部に吐出される気体の供給量を1分間当たり2dm以下、特に1dm以上2dm以下とすることができる。このように気泡8の発生量を規定することにより、負極3の表面における樹状または苔状の亜鉛の析出が低減する。このため、負極3と正極2とが導通する不具合が低減する。
第1の実施形態に係るフロー電池1についてさらに説明する。発生部9は、反応部10の下方に配置されている。発生部9は、後述する供給部14から供給された気体を一時的に貯留するよう内部が中空となっている。また、反応部10の内底10eは、発生部9の中空部分を覆うように配置されており、発生部9の天板を兼ねている。
また、内底10eは、X軸方向およびY軸方向に沿って並ぶ複数の吐出口9aを有している。発生部9は、供給部14から供給された気体を吐出口9aから吐出することにより、電解液6中に気泡8を発生させる。吐出口9aは、例えば0.05mm以上0.5mm以下の直径を有する。吐出口9aの直径をこのように規定することにより、吐出口9aから発生部9の内部の中空部分に電解液6や粉末7が進入する不具合を低減することができる。また、吐出口9aから吐出される気体に対し、気泡8を発生させるのに適した圧力損失を与えることができる。
また、吐出口9aのX軸方向に沿った間隔(ピッチ)は、例えば、2.5mm以上50mm以下であり、さらに10mm以下にしてもよい。ただし、吐出口9aは、発生した気泡8を互いに向かい合う正極2と負極3との間にそれぞれ適切に流動させることができるように配置されるものであれば、大きさや間隔に制限はない。
筐体17および上板18は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。筐体17および上板18は、好ましくは互いに同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。また、発生部9は、反応部10の内部に配置されてもよい。
供給部14は、配管16を介して筐体17の内部から回収された気体を、配管15を介して発生部9に供給する。供給部14は、例えば気体を移送可能なポンプ(気体ポンプ)、コンプレッサまたはブロワである。供給部14の気密性を高くすれば、気体や電解液6に由来する水蒸気を外部に漏出させることによるフロー電池1の発電性能の低下が起きにくい。
次に、フロー電池1における電極間の接続について説明する。図4は、第1の実施形態に係るフロー電池1の電極間の接続の一例について説明する図である。
図4に示すように、負極3aおよび負極3bは並列接続されている。このように負極3を並列に接続することにより、正極2および負極3の総数が異なる場合であってもフロー電池1の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
また、上記したように、フロー電池1は正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3a,3bを備える。このように1つの正極2に対して2つの負極3a,3bが対応したフロー電池1では、正極2と負極3とが1:1で対応するフロー電池と比較して負極1つ当たりの電流密度が低下する。このため、第1の実施形態に係るフロー電池1によれば、負極3a,3bでのデンドライトの生成がさらに低減されるため、負極3a,3bと正極2との導通をさらに低減することができる。
なお、フロー電池1では、合計3枚の電極が、負極3および正極2が交互に配置されるように構成されたが、これに限らず、5枚以上の電極を交互に配置するようにしてもよく、正極2および負極3をそれぞれ1枚ずつ配置させてもよい。また、図3に示すフロー電池1では、両端がともに負極3となるように構成されたが、これに限らず、両端がともに正極2となるように構成してもよい。さらに、一方の端部が正極2、他方の端部が負極3となるように同枚数の負極3および正極2をそれぞれ交互に配置してもよい。
また、フロー電池1は、例えば、クーロン効率が75%以上、特に80%以上である。正極成形体20のクーロン効率を75%以上とすることにより、充放電サイクルに伴う性能劣化が低減する。
ここで、フロー電池1のクーロン効率は、以下のようにして測定、算出することができる。まず、正極成形体20に含まれる活物質体21の量に基づき、理論容量(mAh)を算出する。次に、上限電圧2.0V、下限電圧1.2Vを設定し、フロー電池1の充放電を5サイクル繰り返す。そして、クーロン効率(%)=放電容量/充電容量×100の関係式を用いて、5サイクル後の効率を算出する。
また、フロー電池1の電圧効率は、電圧効率(%)=エネルギー効率/クーロン効率×100の関係式を用いて、算出することができる。電圧効率は、正極成形体20の厚みが約2/3倍になると、約3%増加する傾向がある。電圧効率は、例えば、75%以上、特に80%以上とすることができる。ただし、電圧効率は、75%未満であってもよい。
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図5に示すフロー電池1Aは、図3に示す発生部9、供給部14、配管15,16、に代えて、供給部14a、配管15a,16aを備えることを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。
供給部14aは、配管16aを介して筐体17の内部から回収された、粉末7が混在する電解液6を、配管15aを介して筐体17の下部に供給する。供給部14aは、流動装置の一例である。
供給部14aは、例えば電解液6を移送可能なポンプである。供給部14aの気密性を高くすれば、粉末7および電解液6を外部に漏出させることによるフロー電池1Aの発電性能の低下が起きにくい。そして、筐体17の内部に送られた電解液6は、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様に、各電極間を上方に流動する間に充放電反応に供されることとなる。
このように発生部9を有しないフロー電池1Aにおいても、電解液6中のカリウム成分および亜鉛成分の含有量を調整することにより、負極3と正極2との導通を低減することができる。
なお、図5に示すフロー電池1Aでは、配管16aに接続された開口が、各電極の主面と向かい合う内壁10b、すなわち反応部10のY軸方向側の端部に設けられているが、これに限らず、X軸方向側の端部に設けられてもよい。
また、図5に示すフロー電池1Aでは、供給部14aは、粉末7が混在する電解液6を筐体17に供給するとしたが、これに限らず、電解液6のみを供給することとしてもよい。かかる場合、例えば配管16aの途中に、粉末7が混在する電解液6を一時的に貯留するタンクを設け、タンク内部において電解液6中に溶解する[Zn(OH)2−の濃度を調整することとしてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記した各実施形態では、電解液6中に粉末7が混在されているとして説明したが、これに限らず、粉末7を有しなくてもよい。このとき、電解液6中に溶存する亜鉛成分は、飽和状態であってもよく、飽和状態よりも低い濃度であってもよい。さらに、電解液6は、過飽和状態となるように亜鉛成分を溶存させたものであってもよい。
また、上記した各実施形態では、隔膜は正極2の厚み方向の両側を挟むように配置されるとして説明したが、これに限らず、正極2と負極3との間に配置されていればよく、また、正極2を被覆していてもよい。
なお、供給部14,14aは、常時動作させてもよいが、電力消費を低減する観点から、放電時には充電時よりも気体または電解液6の供給レートを低下させてもよい。
また、図2または図3に示す正極2を、流動装置を有しない電池の正極2として使用してもよい。また、水系の電解液6に代えて、非水系の有機電解液を適用した電池の正極2に使用してもよい。さらに、流動性を有する電解液6に代えて、流動性を有しない固体電解質を適用した電池の正極2に使用してもよい。
以下、上記した第1の実施形態に係る正極成形体20およびフロー電池1を作製し、正極成形体20の抵抗率、保形性および空隙率、フロー電池1のクーロン効率をそれぞれ評価した。結果を表1に示す。
Figure 2020004654
なお、保形性の評価は、質量損失率が5%以下のものを○、5%を超えるものを×として表記した。また、試料No.12〜16では、フロー電池1の電圧効率についてもそれぞれ評価した。
表1に示すように、活物質体に対する導電体の質量比が40%を超えるもの(試料No.6、9、21、24、29、32、35)、保形性の評価が×のもの(試料No.1〜3、6、11、26)、抵抗率が0.9Ω・cmを超えるもの(試料No.7、8、22、23、30、31)では、フロー電池のクーロン効率も低く、実施形態に係る正極成形体として不適当なものであるとして評価された。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1,1A フロー電池
2 正極
3,3a,3b 負極
6 電解液
7 粉末
8 気泡
9 発生部
9a 吐出口
10 反応部
14,14a 供給部
20 正極成形体
21 活物質体
22 導電体
23 結着材
30 集電体

Claims (12)

  1. 活物質体と、
    前記活物質体に対する質量比が40%以下の導電体と、
    結着材と
    を含み、
    空隙率が8%以上28%以下であり、
    超音波で振動する強アルカリ性の電解液中に浸漬させた前後における質量損失率が5%以下である
    ことを特徴とする正極成形体。
  2. 前記活物質体に対する前記結着材の質量比が1.5%以上2.7%以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の正極成形体。
  3. 活物質体と、
    長軸径が40μm以上140μm以下、短軸径が20μm以上40μm以下の導電体と、
    前記活物質体に対する質量比が1.5%以上2.7%以下の結着材と
    を含み、
    空隙率が8%以上28%以下である
    ことを特徴とする正極成形体。
  4. 前記導電体が、炭素材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の正極成形体。
  5. 前記活物質体が、ニッケルを主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の正極成形体。
  6. 厚みが3mm以下の平板状を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の正極成形体。
  7. 前記活物質体に対する前記導電体の質量比が10%以上40%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の正極成形体。
  8. 抵抗率が、0.009Ω・cm以上0.9Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の正極成形体。
  9. 正極および負極と、
    前記正極および前記負極に接触する電解質と、
    を備え、
    前記正極が、請求項1〜8のいずれか1つに記載の正極成形体を含むことを特徴とする電池。
  10. 前記電解質が、100mPa・s以下の粘度を有する強アルカリ性の電解液であることを特徴とする請求項9に記載の電池。
  11. 請求項10に記載の電池と、
    前記電解液を流動させる流動装置と
    を備えることを特徴とするフロー電池。
  12. 亜鉛を含み、前記電解液中を移動可能に混在する粉末をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のフロー電池。
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