JP2020020719A - 分析方法、試薬キット及び分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、より簡便で、より精度の高い分析方法及びキットを提供することを目的とする。【解決手段】 実施形態に従う分析方法は、試料中の標的物質を検出する方法であって、a)刺激応答性高分子と、刺激応答性高分子の一方の端に結合した環境応答性蛍光物質とを含む第1の物質、b)標的物質と特異的に結合する第1の捕捉体を含む第2の物質、及びc)刺激応答性高分子の凝集を阻害する凝集阻害物質で標識された、標的物質と特異的に結合する第2の捕捉体を含む第3の物質を、試料と混合し、この混合物を刺激応答性高分子が凝集する条件下に維持し、環境応答性蛍光物質からの蛍光を検出し、当該検出の結果に基づいて、試料中の標的物質の有無又は量を決定することを含む。【選択図】 図1

Description

本発明の実施形態は、分析方法、試薬キット及び分析装置に関する。
近年、刺激応答性高分子を用いて試料中の標的物質を検出する方法が行われてきている。刺激応答性高分子とは、温度、pH、光、塩濃度等の変化により極性が変化する高分子をいう。
例えば、特許文献1は、温度応答性高分子を結合させた、検出対象に親和性のある第1の親和性物質と、電荷を有する物質で標識した、検出対象に親和性のある第2の親和性物質と試料とを混合し、高温条件下で温度応答性高分子を疎水性にして凝集させ、凝集体を磁力により分離し、分離された分画の吸光度を測定し、それによって標的物質を検出する方法を開示している。
また、試料中の標的物質を高感度、ワイドレンジに検出する方法として、ELISA法やCLEIA法が用いられてきた。
特許第5276890号公報
しかしながら、特許文献1のような検出方法は、標的物質が微量である場合に検出や定量を正確に行うことが困難である。また、ELISA法やCLEIA法は工程途中での分離や洗浄が不可欠であり、操作が煩雑である。
本発明の実施形態によれば、より簡便で、より精度の高い分析方法、試薬キット及び分析装置が提供される。
実施形態に従う分析方法は、試料中の標的物質を検出する方法である。分析方法は、a)刺激応答性高分子と、刺激応答性高分子の一方の端に結合した環境応答性蛍光物質とを含む第1の物質、b)標的物質と特異的に結合する第1の捕捉体を含む第2の物質、及びc)刺激応答性高分子の凝集を阻害する凝集阻害物質で標識された、標的物質と特異的に結合する第2の捕捉体を含む第3の物質を、試料と混合し、この混合物を刺激応答性高分子が凝集する条件下に維持し、環境応答性蛍光物質からの蛍光を検出し、当該検出の結果に基づいて、試料中の標的物質の有無又は量を決定することを含む。
図1は、実施形態の第1〜第3の物質の一例を示す模式図である。 図2は、実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。 図3は、実施形態の複合体の一例を示す模式図である。 図4は、実施形態の複合体及び凝集体の一例を示す模式図である。 図5は、実施形態の複合体及び凝集体の一例を示す模式図である。 図6は、実施形態の自動分析装置の分析部の一例を示す平面図である。 図7は、実施形態の自動分析装置の一例を示すブロック図である。 図8は、実施形態の第1〜第3の物質の一例を示す模式図である。 図9は、実施形態の自動分析装置を用いた分析方法の工程を示す模式図である。 図10は、実施形態の第1〜第3の物質の一例を示す模式図である。 図11は、実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。 図12は、実施形態の複合体の一例を示す模式図である。 図13は、実施形態の複合体及び凝集体の一例を示す模式図である。 図14は、実施形態の複合体及び凝集体の一例を示す模式図である。
・分析方法
実施形態に従う分析方法は、試料中の標的物質を検出する方法である。実施形態に従う分析方法は、第1〜第3の物質を用いて行われる。図1は、第1〜第3の物質の一例を示す模式図である。
第1の物質は、刺激応答性高分子と、環境応答性蛍光物質とを含む。
刺激応答性高分子は、特定の条件を境に、水への溶解性が可逆的に変化する物質である。即ち、当該高分子は、水溶液中において、ある条件下で親水性であり凝集せず、当該条件とは異なる特定の条件下で疎水性となり疎水結合で凝集する。ここでは、刺激応答性高分子が温度応答性高分子1である例を示す。温度応答性高分子1は、低温条件下で親水性であり凝集せず、高温条件下で疎水性となり疎水結合で凝集する。刺激応答性高分子は、温度応答性高分子に限られるものではなく、他の高分子を用いてもよい。
環境応答性蛍光物質は、周囲の環境に依存して、生ずる蛍光の波長が変化する蛍光物質である。ここでは、環境応答性蛍光物質が極性応答性蛍光物質2である例を示す。極性応答性蛍光物質2は、周囲の極性、即ち、親水性又は疎水性に依存して、生ずる蛍光の波長が変化する蛍光物質である。環境応答性蛍光物質は、極性応答性蛍光物質に限られるものではなく、他の蛍光物質を用いてもよい。
極性応答性蛍光物質2は、温度応答性高分子1の一方の端3に結合している。
第2の物質は、第1の捕捉体5を含む。第1の捕捉体5は、標的物質と特異的に結合することができる物質である。この例において、第1の捕捉体5は抗体である。
第1の捕捉体5と、温度応答性高分子1の他方の端4とは、互いに結合することができるように構成される。温度応答性高分子1と結合する第1の捕捉体5の部位は、標的物質との結合に影響を与えない部位である。
第3の物質は、凝集阻害物質7で標識された第2の捕捉体6を含む。第2の捕捉体は、標的物質に特異的に結合する物質である。第1の捕捉体と第2の捕捉体とは、標的物質の互いに異なる部位にそれぞれ結合するように構成されることが好ましい。この例において、第2の捕捉体6は、抗体である。凝集阻害物質7は、温度応答性高分子1の近傍に存在する場合、温度応答性高分子1の凝集を阻害することができる物質である。凝集阻害物質7は、第2の捕捉体6の標的物質への結合に影響を与えない部位に結合されている。
図2は、実施形態の分析方法の一例の概略フローを示す。分析方法は、以下の工程を含む:
(S1)第1の物質、第2の物質、及び第3の物質を用意すること;
(S2)試料と第1の物質、第2の物質及び第3の物質とを混合すること;
(S3)前記混合により得られた混合物を刺激応答性高分子が凝集する温度に維持すること;
(S4)前記環境応答性蛍光物質からの蛍光を検出すること;及び
(S5)前記検出の結果に基づいて、前記試料中の前記標的物質の有無又は量を決定すること。
以下、上記各工程を実行することにより標的物質が検出又は定量される原理について詳細に説明する。ここでは、刺激応答性高分子が温度応答性高分子1であり、環境応答性蛍光物質が極性応答性蛍光物質2である例を示す。
まず、工程(S1)において、上記第1〜第3の物質を用意する。次に工程(S2)において、試料と第1〜第3の物質とを混合する。図3は、試料中に標的物質8が存在する場合の、試料と第1〜第3の物質とを混合した際の混合物内の各成分の様子を示す。混合により、標的物質8を含む複合体9が形成され得る。複合体9は、例えば、極性応答性蛍光物質2と、温度応答性高分子1と、第1の捕捉体5と、標的物質8と、第2の捕捉体6と、凝集阻害物質7とが結合している(図3の(a))。第1の捕捉体5及び第2の捕捉体6がこの例のように複数の標的物質結合部位を有する物質である場合、それぞれの複数の標的物質結合部位に、更なる標的物質8と第1の捕捉体5又は第2の捕捉体6とが結合してもよい。一方、試料中に標的物質8が十分に存在しない場合、混合物中には複合体9を生成しない第1〜第3の物質も存在する(図3の(b))。その場合、第1の物質及び第2の物質が結合し得る。
工程(S3)において、前記混合により得られた混合物を温度応答性高分子1が凝集する温度に維持する。そのときの各成分の様子を図4に示す。第1〜第3の物質が複合体9を形成した場合(図4の(a))、凝集阻害物質7が温度応答性高分子1aの近傍に存在する。そのため、温度応答性高分子1aは親水性の状態が維持され、凝集が阻害される。したがって、極性応答性蛍光物質2aの周囲が親水性である状態が維持され、その蛍光の波長は変化しない。
一方、複合体9を形成しない第1及び第2の物質においては(図4の(b))、温度応答性高分子1bは、凝集阻害物質7が近傍に存在しない。そのため、温度応答性高分子1bは疎水性となって凝集する(以下、温度応答性高分子1bが凝集した第1の物質及び第2の物質を「凝集体10」と称する)。凝集体10は、図4の(b)に示すように、例えば、1つの温度応答性高分子1bが分子内で凝集したものであるか、或いは、複数の温度応答性高分子1bが分子間で凝集したものである。凝集した温度応答性高分子1bにおいては、極性応答性蛍光物質2bがその疎水性の内部に取り込まれる。即ち、極性応答性蛍光物質2bが疎水性条件下に存在することとなる。それによって、極性応答性蛍光物質2bの発する蛍光の波長が変化する。
図5は、標的物質の量の異なる試料における第1〜第3の物質の様子を示す。例えば、図5の(a)に示すように標的物質が多く存在する場合、複合体9がより多く生成される。その結果、蛍光の波長が変化しない極性応答性蛍光物質2aの数は、蛍光の波長が変化した極性応答性蛍光物質2bの数よりも多くなる。図5の(b)に示すように標的物質がより少ない場合、極性応答性蛍光物質2aの数は、極性応答性蛍光物質2bの数よりも少なくなる。図5の(c)示すように標的物質が存在しない場合、極性応答性蛍光物質2aは存在せず、極性応答性蛍光物質2bだけが存在する。
次に、工程(S4)において、極性応答性蛍光物質2からの蛍光を検出する。蛍光の検出は、例えば、蛍光の波長が変化した極性応答性蛍光物質2bの励起光を混合物に照射し、混合物から生じた蛍光を検出することにより行われる。その場合、例えば、図5の(a)に示すように標的物質が多く存在するとき、検出される蛍光強度は弱い。図5の(b)、(c)に示すように標的物質がよりも少ない又は存在しないとき、図5の(a)の場合よりも検出される蛍光強度は強い。即ち、標的物質が多く存在するほど検出される蛍光は弱くなる。
蛍光の検出は、上記のように極性応答性蛍光物質2bの励起光を照射しておこなってもよいが、波長が変化していない極性応答性蛍光物質2aの励起光を照射してもよい。その場合、蛍光強度に関して逆の結果が得られる。或いは、極性応答性蛍光物質2aと極性応答性蛍光物質2bの両方の励起光を照射し、両者の蛍光強度を測定してもよい。
蛍光強度の検出は、例えば、経時的に行ってもよい。経時的とは、間隔を置いて複数の時点で行ってもよいし、継続して行ってもよい。
次に、工程(S5)において、上記検出の結果に基づいて、試料中の標的物質8の有無又は量を決定する。例えば、蛍光の波長が変化した極性応答性蛍光物質2bの励起光を照射し、蛍光が検出されなかった場合、標的物質が存在すると決定してもよい。又は、当該蛍光の強度が予め設定した閾値よりも弱い場合に標的物質が存在すると決定し、閾値よりも強い場合に標的物質が存在しないと決定してもよい。閾値は、例えば、標的物質の濃度が既知の標準試料によって蛍光強度を測定することによって予め決定される。或いは、このような標準試料の蛍光強度測定によって検量線を作成し、その検量線に従って、分析されるべき試料の標的物質の量を決定してもよい。或いは、蛍光の立ち上がり時間と標的物質との関係を示す検量線を作成し、蛍光の立ち上がり時間から標的物質の量を決定してもよい。
以上に説明した分析方法によれば、検出工程が極性応答性蛍光物質からの蛍光強度を測定することにより行われる。そのため従来よりも精度よくワイドレンジに標的物質を検出することができる。例えば、従来の温度応答性高分子を用いる方法の100倍〜1000倍以上の精度で標的物質の検出及び定量を行うことができる。また、ELISA法、CLEIA法よりも更に精度よく検出及び定量を行うことができる。
加えて、この方法によれば、蛍光を指標とするため夾雑物による影響を受けにくいことから、従来のように試料と試薬とを含む混合物を分離したり、洗浄したりする必要がない。したがって、実施形態の分析方法は、試料に第1〜第3の物質を添加し、混合物の温度制御をすればよい。そのためコンタミネーションを防止でき、従来の方法よりもはるかに簡単に、精度の高い検出又は定量が可能である。このように手順が簡単であるため、実施形態の分析方法は一般的な分析方法に用いる機器を用いて行うこともできる。
上記分析方法に用いられる試料は、その中に標的物質を含み得る分析対象である。試料は、例えば、液体である。試料は、例えば、生物学的材料、環境由来の材料、食物若しくは飲料由来の材料、工業由来の材料、人工的に作製された調整物又はこれらの何れかの組み合わせなどである。
標的物質は、例えば、核酸、タンパク質、内分泌物、細胞、血球、ウイルス、微生物、有機化合物、無機化合物又は低分子化合物などである。
温度応答性高分子1は、例えば、0℃〜30℃で親水性であり、32℃以上で疎水性となって凝集する物質であることが好ましい。温度応答性高分子1として、例えば、下限臨界溶液温度(以下、LCSTとも称する)を有するポリマーや上限臨界溶液温度を有するポリマーなどを用いることができる。下限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。更に、これらのポリマー及びこれらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーも利用できる。また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーも利用できる。(メタ)アクリルアミド誘導体を含むポリマーを使用する場合、このポリマーにその他の共重合可能なモノマー上限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、アクロイルグリシンアミド、アクロイルニペコタミド、アクリロイルアスパラギンアミド及びアクリロイルグルタミンアミド等からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマーが利用できる。また、これらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーであってもよい。これらのポリマーには、アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N’−メタクロイルトリメチレンアミド、アクロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクロイルメチルウラシル等、その他の共重合可能なモノマーを、上限臨界溶液温度を有する範囲で共重合してもよい。
極性応答性蛍光物質2は、周囲が親水性から疎水性になると、例えば、少なくとも約400nm〜700nm、蛍光波長が変化する物質である。極性応答性蛍光物質2として、例えば、POLARIC(登録商標)などを用いることができる。
温度応答性高分子1への極性応答性蛍光物質2の結合は、例えば、カルボキシル基を利用した共有結合又はチオール基を利用した共有結合等の方法を用いて行うことができる。例えば、温度応答性高分子1への極性応答性蛍光物質2の結合は、極性応答性蛍光物質2をメタクリル基やアクリル基等の重合性官能基と結合させて付加重合性モノマーとし、他のモノマーと共重合することにより行うことができる。又は、ポリマーの重合時にカルボン酸、アミノ基又はエポキシ基等の官能基を持つモノマーを他のモノマーと共重合させ、この官能基を介して、当技術分野で周知の方法に従って共有結合させることにより行うことができる。
第1の捕捉体5として、例えば、抗体又は抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、F(ab’)、Fv、scFvなど)、或いは、天然由来核酸、人工核酸、アプタマー、ペプチドアプタマー、オリゴペプチド、酵素又は補酵素などを用いることができる。
第1の捕捉体5及び温度応答性高分子1の他方の端4は予め結合され、工程(S1)において第1の物質と第2の物質とが一体として用意されてもよい。当該結合は、直接的な結合であってもよいし、間接的な結合であってもよい。詳しくは後述するが、両者は、ビオチン及びストレプトアビジンを介して結合するように構成されていてもよい。
第2の捕捉体6として、例えば、抗体又は抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、F(ab’)、Fv、scFvなど)、或いは、天然由来核酸、人工核酸、アプタマー、ペプチドアプタマー、オリゴペプチド、酵素又は補酵素などを用いることができる。
凝集阻害物質7は、例えば、温度応答性高分子1との距離が近接した場合に温度応答性高分子1の凝集を阻害する物質である。凝集阻害物質7は、例えば、水溶性高分子を用いることができる。水溶性高分子は、例えば、天然高分子(例えば、植物由来の多糖類、微生物由来の水溶性高分子、動物由来の水溶性高分子等)、半合成高分子(セルロース系高分子、デンプン系高分子、アルギン酸高分子等)、合成高分子(ビニル系高分子等)を用いることができる。
凝集阻害物質7は、第2の捕捉体6の標的物質への結合に影響を与えない部位に結合させることが好ましい。第2の捕捉体6への凝集阻害物質7の結合は、公知の何れかの方法を用いて行うことができる。
第1〜第3の物質は、それぞれ適切な溶媒に含ませた状態で用意されてもよい。適切な溶媒は、例えば、水、緩衝液等の水溶液などである。
例えば、実施形態の分析方法において、温度応答性高分子以外の刺激応答性高分子を用いる場合、(S3)は、用いた刺激応答性高分子を凝集させることができる特定の条件、例えば、特定のpH、光、塩濃度などの条件に混合物を維持することにより行われればよい。
更なる実施形態において、上記工程(S2)即ち、試料と第1〜第3の物質とを混合する工程は、次の2つの工程により行われてもよい:(S2−1)試料に第2の物質及び第3の物質を混合し、標的物質に第1の捕捉体と第2の捕捉体を結合させること;及び(S2−2)次いで、試料に第1の物質を混合し、第1の捕捉体と、前記温度応答性高分子の他方の端とを結合させ、複合体を形成すること。このように第2及び第3の物質の添加と、第1の物質の添加とを分けて順次行うことによって、工程(S3)を行う前までにより多くの第2及び第3の物質が標的物質と結合することができる。このような方法が好ましい例については後述する。
以上に説明した実施形態の分析方法は、例えば、生体外における疾患の診断、微生物感染の診断、食品検査、ドーピング検査等、様々な分野における物質の検出又は定量に用いることができる。実施形態の分析方法は、試料に含まれる微量な標的物質を検出する際に特に有用である。
・自動分析装置を用いた分析方法
実施形態の分析方法は、例えば、自動分析装置を用いて行うことができる。自動分析装置は、例えば、試料へ第1〜第3の物質を添加し、極性応答性蛍光物質の励起光を照射し、蛍光の測定を行い、蛍光に関するデータを生成する分析システムを備える。このような分析システムについて図6を用いて説明する。
図6は、分析システム200の一例を示す平面図である。分析システム200は、例えば、試料調製・検出部201及び分析制御部202を備える。
試料調製・検出部201は、反応装置211を備えている。反応装置211は、円環状の反応ディスク212と、反応ディスク212内に所望の間隙を保ってそれと同心円状に配置された円環状ブロック213とを備えている。
反応ディスク212は、図示しない駆動部材により、例えば反時計回り方向に間欠的に回転する。反応ディスク212上には、複数の反応容器214が円周方向に並んで埋設されている。なお、以後の反応ディスク212と他の部材の位置関係は、反応ディスク212を時計盤と見做し、例えば3時、6時、9時、12時等と表記する。
円環状ブロック213の上部には、円環状の凹部215が設けられ、当該凹部215より外周リング216及び内周リング217が形成されている。円環状ブロック213の外周面は、例えば、図示しない複数の歯を刻設したラックを有し、当該ラックの歯に歯合する駆動歯車によって、例えば反時計回り方向に間欠的に回転する。円環状ブロック213の凹部215には、複数の第2試薬容器218が円周方向に並んで固定されている。各第2試薬容器218は、一端が幅広で、他端に向けて幅を狭くしたテーパ形状を有する。各第2試薬容器218は、一端が外周リング216に、他端が内周リング217に、それぞれ当接され、外周リング216と当接する一端側に第2試薬取出口219を開口している。外周リング216より内側の円環状ブロック213部分は、第2試薬保冷庫として機能する。
第2試薬分注部材220は、反応ディスク212の時計盤の10時に位置する垂直方向に延びる軸(図示せず)の一端に連結されたアーム221を備えている。アーム221は、軸により往復回動可能な構造になっている。アーム221は、内部に流路(図示せず)を有し、かつその軸と反対側の端の下面に、流路と連通する吸引・吐出ノズル222が取付けられている。吸引・吐出ノズル222は、アーム221によって上下移動される。なお、アーム221内部には分注ポンプユニット(図示せず)が取り付けられている。このような第2試薬分注部材220において、アーム221の往復回動時、吸引・吐出ノズル222の軌跡(図中の破線)の下には反応容器214の1つ及び複数の第2試薬容器218の第2試薬取出口219の1つが位置される。
図示しない撹拌アームは、その下面に上下移動可能及び回転可能な撹拌子を有する。当該撹拌子は、反応ディスク212の時計盤の何れかの位置に配置される。このような撹拌アームにおいて、反応ディスク212の反時計回り方向への回転により移動される検出すべき反応容器214の直上に撹拌子が位置した時、当該撹拌子を下降させて反応容器214内に挿入し、当該撹拌子を回転させることにより214内の液体を撹拌できる。
検出ユニット223は、反応ディスク212の時計盤の6時に位置する外縁部に設けられている。検出ユニット223には、検出すべき反応容器214に向けて励起光の照射するための照射部材(図示せず)と、照射部材から励起光が照射された反応容器214からの蛍光を検出する検出器(図示せず)とを備えている。
サンプルディスク224は、反応装置211の反応ディスク212の時計盤の略5時の位置に対向して隣接する。サンプルディスク224の外周縁部上には、例えば試料又は標準試料を収容するための複数の試料容器225が円周方向に並べて固定されている。
試料分注部材226は、垂直方向に延びる軸(図示せず)を一端に連結されたるアーム227を備えている。アーム227は、軸により往復回動可能な構造になっている。アーム227は、流路(図示せず)を有し、かつ軸と反対側の端の下面に流路と連通する吸引・吐出ノズル228が取付けられている。吸引・吐出ノズル228は、アーム227によって上下移動される。なお、軸の内部には分注ポンプユニット(図示せず)が取り付けられている。このような試料分注部材226において、アーム227の往復回動時、吸引・吐出ノズル228の軌跡(図中の破線)の下には複数の反応容器214の1つ及び複数の試料容器225の1つが位置される。
第1試薬用円環状ブロック229は、反応ディスク212の時計盤の3時の位置に対向して隣接する。第1試薬用円環状ブロック229の上部には、円環状の凹部230が設けられ、当該凹部230により外周リング231及び内周リング232が形成される。第1試薬用円環状ブロック229の外周面は、例えば、図示しない複数の歯を刻設したラックを有し、当該ラックの歯に歯合する駆動歯車によって、例えば反時計回り方向に間欠的に回転する。第1試薬用円環状ブロック229の凹部230には、複数の第1試薬容器233が円周方向に並んで固定されている。各第1試薬容器233は、一端が幅広で、他端に向けて幅を狭くしたテーパ形状を有する。各第1試薬容器233は、一端が外周リング231に、他端が内周リング232に、それぞれ当接され、外周リング231と当接する一端側に第1試薬取出口234を開口している。外周リング231より内側の第1試薬用円環状ブロック229部分は、第1試薬保冷庫として機能する。
第1試薬分注部材235は、垂直方向に延びる軸(図示せず)を一端に連結されたるアーム236を備えている。アーム236は、軸により往復回動可能な構造になっている。アーム236は、内部に流路(図示せず)を有し、かつ軸と反対側の下面に流路と連通する吸引・吐出ノズル237が取付けられている。吸引・吐出ノズル237は、アーム221によって上下移動される。なお、アーム236内部には分注ポンプユニット(図示せず)が取り付けられている。このような第1試薬分注部材235において、アーム236の往復回動時、吸引・吐出ノズル237の軌跡(図中の破線)の下には複数の反応容器214の1つ及び複数の第1試薬容器233の第1試薬取出口234の1つが位置される。
分析制御部202は、反応ディスク212、円環状ブロック213、サンプルディスク224及び第1試薬用円環状ブロック229の間欠的な回転タイミングを制御し、かつ第2試薬分注部材220、試料分注部材226、第1試薬分注部材235及び撹拌アームの撹拌子の駆動タイミングを制御し、さらに照射部材から励起光の照射タイミング、検出ユニット223の検出タイミング等を制御する。また、分析制御部202は反応容器214、試料容器225、第1試薬保冷庫及び第2試薬保冷庫の温度を制御する。
自動分析装置100の一例のブロック図を図7に示す。
自動分析装置100は、分析システム200で生成された蛍光に関するデータを受け取り、処理し、標的物質の有無又は量のデータ(以下、「分析データ」と称する)及び標準データを生成するデータ処理部30を備える。データ処理部30は、演算部31及び記憶部32を備える。演算部31は、標準試料に関し、蛍光値と標的物質の濃度との関係を示す標準データ(例えば、検量データ)を生成する。また、演算部31は、分析すべき試料に関し、例えば標準データを用いて分析データを生成する。また、記憶部32は、メモリデバイスを備え、演算部31で生成された標準データ及び分析データを保存する。
また、自動分析装置100は、データ処理部30で生成されたデータを出力する出力部40を備える。出力部40は、データ処理部30で生成された標準データや分析データを印刷出力する印刷部41及び/又はモニタなどに表示出力する表示部42を備える。
また、自動分析装置100は、分析に必要な分析パラメータを設定する入力、分析システム200を立ち上げる入力、キャリブレーションを実行させる入力等を行う操作部50を備えている。操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネルなどの入力デバイスを備える。
また、自動分析装置100は、分析システム200に含まれる分析制御部202、データ処理部30及び出力部40を制御するシステム制御部60を備える。システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備える。記憶回路には、操作部50から入力された情報、プログラム、蛍光に関するデータ、分析データ、標準データなどが記憶される。CPUは、入力情報及び/又はプログラムに従って、分析制御部202、データ処理部30及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
以上に説明した自動分析装置100を用いて行う分析方法について以下に説明する。
この例において、第1の物質と第2の物質とは、別体として用意される。図8は、この分析方法に用いられる第1〜第3の物質の一例を示す模式図である。この例において、温度応答性高分子1の他方の端4及び第1の捕捉体5は、両者が結合するための更なる構成成分を備えている。更なる構成成分は、互いに結合する2つの物質であればよい。これらの物質は、第1〜第3の物質の各構成成分の機能を阻害しない分子量を有する物質であることが好ましい。また、これら2つの物質の親和性は、第1及び第2の捕捉体と標的物質との親和性よりも高い物質であることが好ましい。例えば、このような物質として、ビオチン及びストレプトアビジン、プロテインA、プロテインG、メロンゲル、核酸などを用いることができる。図8に示す例においては、第1の物質の温度応答性高分子1の他方の端4にストレプトアビジン11が結合しており、第2の物質の第1の捕捉体5にビオチン12が結合している。それ以外の構成は、上述したものと同じものを用いることができる。
以下に、当該分析方法の工程について、前述した図6の分析システム200及び図9の第1〜第3の物質の挙動を示す模式図を参照して説明する。
まず、自動分析装置100の複数の試料容器225内に異なる試料をそれぞれ収容する。また、複数の第2試薬容器218に同種の第2試薬(即ち、第1の物質)をそれぞれ収容し、第1試薬容器233に同種の第1試薬(即ち、第2及び第3の物質)をそれぞれ収容する。各試料容器225は2℃〜20℃で維持されるように分析制御部202により制御する。第2試薬容器218及び第1試薬容器233は第2試薬保冷庫及び第1試薬保冷庫によりそれぞれ2℃〜20℃で維持されている。
次いで、試料分注部材226のアーム227をサンプルディスク224に向けて回転させて、その吸引・吐出ノズル228を検出すべき試料が収容された試料容器225の直上に位置させた後、当該吸引・吐出ノズル228の先端を試料容器225内の試料に下降させる。つづいて、吸引・吐出ノズル228で試料容器225に収容された試料を吸引させる。吸引・吐出ノズル228を上昇させ、アーム227を反応ディスク212に向けて回動させて、吸引・吐出ノズル228を反応ディスク212上の1つの反応容器214の直上に位置させた後、当該吸引・吐出ノズル228の先端を反応容器214内に下降させる。その後、吸引・吐出ノズル228内の試料を反応容器214内に吐出して、試料を反応容器214内に注入する。吸引・吐出ノズル228を上昇させ、アーム227を回動して元の位置に復帰させる。
反応ディスク212を反時計回り方向に回転させ、試料が収納された反応容器214を第1試薬用円環状ブロック229と対向する時計盤の3時に相当する箇所に移動する。第1試薬分注部材235を前記試料の注入と同様にアーム236を第1試薬用円環状ブロック229に向けて回転する操作等を行うことによって、第1試薬容器233から第1試薬を反応容器214内に注入し、第2の物質及び第3の物質を試料に添加する(図9の(a)参照)。
その後、反応ディスク212を反時計回り方向に回転し、反応容器214を図示しない撹拌アームの撹拌子の直下に位置させる。撹拌子を反応容器214内の混合物に下降させ、回転することにより、混合物を撹拌する。このとき、図9の(b)に示すように第2の物質と、試料中の標的物質と、第3の物質とが結合する。
次いで、反応ディスク212を反時計回り方向に回転し、反応容器214を時計盤の9時の位置に移動させる。第2試薬分注部材220を前記試料の注入と同様にアーム221を円環状ブロック213に向けて回動する操作等を行うことによって、第2試薬容器218から第2試薬を反応容器214に注入し、反応容器214内の混合物に添加する。第2試薬(第1の物質)の添加(図9の(c))によって、反応容器214に含まれる混合物の温度は低下する。また、図9の(d)に示すように第1の物質と第2の物質とが、ストレプトアビジン11及びビオチン12を介して結合し、複合体を形成する。その後、反応容器214は予め30℃〜40℃で維持されるように制御されているため、反応容器214に含まれる混合物は、例えば、約1分〜30分でその温度まで自動的に上昇する。それによって、複合体を形成していない第1の物質の温度応答性高分子が凝集し、凝集体が生成する(図9の(e))。
前記第2及び第3の物質の試料への添加(a)から(d)の工程後、温度が上昇するまでの時間は、例えば、約1分〜約30分である。この時間は、標的物質に第1の捕捉体及び第2の捕捉体が結合するのに十分な時間である。また、第1の物質の添加(c)から(d)の工程後、温度が上昇するまでの時間は、例えば、約1分〜約30分である。この時間は、(a)〜(d)の工程の直前までの時間よりも短いが、ストレプトアビジン11及びビオチン12の親和性がより高いことにより、この時間でも十分に結合することができる。このような方法により、標的物質に第1及び第2の物質が結合する前に温度が上昇して温度応答性高分子1が凝集することを防止することができる。即ち、第1の物質と第2の物質を予め結合させておく場合、この結合物の添加から温度上昇までの時間が約1分〜約30分であるために、第2の物質が標的物質に結合する前に凝集が起こる可能性がある。一方、前記方法によれば第2の物質の添加と第1の物質の添加とを分け、第2の物質を先に添加して第2の物質が標的物質に結合する十分な時間を設けることにより、第1の物質の添加から温度が戻るまでの時間が短い場合であっても標的物質に第2の物質が結合する前に温度応答性高分子1が凝集することが防止される。
反応容器214内の混合物が温度上昇した後、反応ディスク212を反時計回り方向に回転し、当該反応容器214を時計盤の6時に位置に検出ユニット223と対向させる。検出ユニット223の照射部材(図示せず)から疎水性条件下における極性応答性蛍光物質を励起する励起光を反応容器214内に混合物に照射する。つづいて、反応容器214内の混合物から生じる蛍光を検出ユニット223の検出器(図示せず)で検出する。
検出により得られた蛍光に関するデータは、図7に示すデータ処理部30に送られ、標的物質の有無又は量のデータ(分析データ)及び標準データが生成される。分析データ及び標準データは、出力部40に出力される。上記工程の一部又は全ては、書き込まれたプログラムによって自動的に行うことができる。
なお、前述した自動分析装置による試料中の標的物質の自動分析において、サンプルディスク224の試料容器225内の試料を反応容器214内に注入後、サンプルディスク224を、例えば反時計回り方向に回転して試料容器225を1コマ分移動する。第1試薬用円環状ブロック229の第1試薬容器233内の第1試薬を反応容器214内に注入後も、例えば反時計回り方向に回転して第1試薬容器233を1コマ分移動する。同様に、円環状ブロック213の第2試薬容器218内の第2試薬を反応容器214内に注入後、円環状ブロック213を、例えば反時計回り方向に回転して第2試薬容器218を1コマ分移動する。このような操作により、次の試料の自動分析の準備をする。
以上のようにして自動分析装置によって実施形態の分析方法を行うことができる。実施形態の分析方法によれば、このような自動分析装置を用いて行う場合であっても、試料の添加工程から蛍光の検出工程まで、例えば、各試薬を順次添加するごとに混合物を分離したり洗浄したりする必要がない。そのため、一つの反応容器214で標的物質の検出又は定量までを行うことができるため、コンタミネーションが防止でき、より簡単に制度の高い検出及び定量を行うことが可能である。
・競合法を用いた分析方法
更なる実施形態において、分析方法は、競合法を用いて行うことができる。
この方法に用いる第1〜第3の物質について、図10を用いて説明する。第1の物質及び第2の物質は、上記の何れかの第1の物質及び第2の物質と同じものを用いることができる。第3の物質は、凝集阻害物質7で標識された競合物質13を含む。凝集阻害物質7は、上記の何れかのものと同じものを用いることができる。
競合物質13は、第1の捕捉体に対して親和性を有し、第1の捕捉体への結合に対して標的物質と競合する物質である。競合物質は、例えば、標的物質の第1の捕捉体への結合部位と似た構造を有する部位を備える。例えば、第1の捕捉体5と競合物質13との親和性は、第1の捕捉体5と標的物質との親和性よりも弱いことが好ましい。
競合法を用いた分析方法の一例の概略フローを図11に示す。当該分析方法は、例えば、以下の工程を含む:
(S11)上述の第1の物質、第2の物質及び第3の物質を用意すること;
(S12)前記試料に第2の物質及び第3の物質を混合し、次いで第1の物質を混合すること;
(S13)前記混合により得られた混合物を刺激応答性高分子が凝集する温度に維持すること;
(S14)環境応答性蛍光物質からの蛍光を検出すること;及び
(S15)前記検出の結果に基づいて、試料中の標的物質の有無又は量を決定すること。
当該分析方法について以下に説明する。ここでは、刺激応答性高分子が温度応答性高分子1であり、環境応答性蛍光物質が極性応答性蛍光物質2である例を示す。
工程(S12)において、試料に第2及び第3の物質を混合することにより、図12の(a)に示す第1の複合体14が生成する。第1の複合体14は、例えば、極性応答性蛍光物質2aと、温度応答性高分子1aと、第1の捕捉体5と、競合物質13と、第2の捕捉体6と、凝集阻害物質7とが結合している。第1の捕捉体5がこの例のように複数の標的物質結合部位を有する物質である場合、複数の標的物質結合部位に、更なる競合物質13と凝集阻害物質7とが結合してもよい。次いで、第1の物質を混合することにより、試料中に標的物質が存在する場合、第1の複合体14における第1の捕捉体5への競合物質13の結合が、標的物質8の結合に置き換わり、第2の複合体15が生成する(図12の(b))。第2の複合体15は、例えば、極性応答性蛍光物質2bと、温度応答性高分子1bと、第1の捕捉体5と、標的物質8とが結合している。
工程(S13)において、温度応答性高分子が凝集する温度に維持する。そのときの第1の複合体14、第2の複合体15を図13に示す。第1の複合体14の温度応答性高分子1aは凝集阻害物質7が近傍に存在することにより凝集しない(図13の(a))。そのため、極性応答性蛍光物質2aの蛍光の波長は変化しない。対して、第2の複合体15に含まれる温度応答性高分子1bは疎水性となって凝集し、凝集体10を形成する(図13の(b))。そのため、極性応答性蛍光物質2bの蛍光の波長は変化する。
したがって、図14の(a)に示すように、標的物質が多く存在する場合、より多くの前記置き換えが起こり、蛍光の波長が変化しない極性応答性蛍光物質2aの数が蛍光の波長が変化した極性応答性蛍光物質2bの数よりも少なくなる。図14の(b)に示すように標的物質がより少ない場合、極性応答性蛍光物質2aの数は、極性応答性蛍光物質2bの数よりも多くなる。
工程(S14)において、極性応答性蛍光物質2からの蛍光を検出する。蛍光の検出は、例えば、上記工程(S4)と同様の方法行うことができる。しかしながら、蛍光波長の変化した極性応答性蛍光物質2bの励起光を照射する場合、標的物質の存在量と得られる蛍光強度との関係は、工程(S4)と逆である。即ち、標的物質が多く存在するほど検出される蛍光強度が強くなる。
蛍光の検出は、上記のように極性応答性蛍光物質2bの励起光を照射してもよいが、波長が変化していない極性応答性蛍光物質2aの励起光を照射してもよい。その場合、蛍光強度に関して逆の結果が得られる。或いは、極性応答性蛍光物質2aと極性応答性蛍光物質2bの両方の励起光を照射し、両者の蛍光強度を測定してもよい。
工程(S15)において、上記検出の結果に基づいて、試料中の標的物質8の有無又は量を決定する。例えば、蛍光の波長が変化した極性応答性蛍光物質2bの励起光を照射したときに蛍光が検出された場合、標的物質が存在すると決定してもよい。又は、当該蛍光の強度が予め設定した閾値よりも強い場合に標的物質が存在すると決定し、閾値よりも弱い場合に標的物質が存在しないと決定してもよい。閾値は、例えば、標的物質の濃度が既知の標準試料によって蛍光強度を測定することによって予め決定される。或いは、このような標準試料の蛍光強度測定によって検量線を作成し、その検量線に従って、分析されるべき試料の標的物質の量を決定してもよい。或いは、蛍光の立ち上がり時間を基に標的物質の量を決定してもよい。
以上に説明した競合法を用いた分析方法は、上記の自動分析装置100を用いて行うこともできる。競合法を用いた分析方法によれば、より分子量の小さな標的物質もより精度よく検出又は定量することができる。
・試薬キット
更なる実施形態によれば、実施形態の分析方法に用いるための試薬キットが提供される。実施形態の試薬キットは、例えば、実施形態の第1の物質、第2の物質及び第3の物質を含む。第1〜第3の物質は、別々の容器に収容されていてもよいし、第2及び第3の物質が同じ容器に一緒に収容されていてもよい。或いは、第1の物質の温度応答性高分子1の他方の端4と、第2の物質の第1の捕捉体とが予め結合されて一つの容器に収容されていてもよい。
第1〜第3の物質は、例えば、上記の適切な溶媒に含まれていてもよい。
1、1a、1b…温度応答性高分子、2、2a、2b…極性応答性蛍光物質、
3…一方の端、4…他方の端、5…第1の捕捉体、6…第2の捕捉体、7…凝集阻害物質、
8…標的物質、9…複合体、11…ストレプトアビジン、12…ビオチン、
13…競合物質、14…第1の複合体、15…第2の複合体。

Claims (15)

  1. 試料中の標的物質を検出する方法であって、a)刺激応答性高分子と、前記刺激応答性高分子の一方の端に結合した環境応答性蛍光物質とを含む第1の物質、b)前記標的物質と特異的に結合する第1の捕捉体を含む第2の物質、及びc)前記刺激応答性高分子の凝集を阻害する凝集阻害物質で標識された、前記標的物質と特異的に結合する第2の捕捉体を含む第3の物質を、前記試料と混合し、この混合物を前記刺激応答性高分子が凝集する条件下に維持し、前記環境応答性蛍光物質からの蛍光を検出し、前記検出の結果に基づいて、前記試料中の前記標的物質の有無又は量を決定することを含む分析方法。
  2. (S1)a)刺激応答性高分子と、前記刺激応答性高分子の一方の端に結合した環境応答性蛍光物質とを含む第1の物質、b)前記標的物質と特異的に結合する第1の捕捉体を含む第2の物質、及びc)前記刺激応答性高分子の凝集を阻害する凝集阻害物質で標識された、前記標的物質と特異的に結合する前記第2の捕捉体を含む第3の物質を用意すること;
    (S2)前記試料と前記第1の物質、第2の物質及び第3の物質とを混合すること、ここで、前記試料中に前記標的物質が存在する場合、前記環境応答性蛍光物質と、前記刺激応答性高分子と、前記第1の捕捉体と、前記標的物質と、前記第2の捕捉体と、前記凝集阻害物質とが結合した複合体が生成する;
    (S3)前記混合により得られた混合物を前記刺激応答性高分子が凝集する条件に維持し、前記複合体を形成していない前記刺激応答性高分子を凝集させ、当該刺激応答性高分子に結合した前記環境応答性蛍光物質を疎水性条件下に存在させること;
    (S4)前記環境応答性蛍光物質からの蛍光を検出すること;及び
    (S5)前記検出の結果に基づいて、前記試料中の前記標的物質の有無又は量を決定すること;
    を含む請求項1に記載の分析方法。
  3. 前記工程(S2)は、
    (S2−1)前記試料に前記第2の物質及び前記第3の物質を混合し、前記標的物質に前記第1の捕捉体と前記第2の捕捉体を結合させること;及び
    (S2−2)次いで、前記試料に前記第1の物質を混合し、前記第1の捕捉体と、前記前記刺激応答性高分子の他方の端とを結合させ、前記複合体を形成すること;
    を含む請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1の捕捉体と前記第2の捕捉体とは、前記標的物質の互いに異なる結合部位にそれぞれ結合する請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
  5. 試料中の標的物質を検出する方法であって、a)刺激応答性高分子と、前記刺激応答性高分子の一方の端に結合した環境応答性蛍光物質とを含む第1の物質、b)前記標的物質と特異的に結合する第1の捕捉体を含む第2の物質、及びc)前記刺激応答性高分子の凝集を阻害する凝集阻害物質で標識された競合物質を含む第3の物質を用意し、ここで、前記競合物質は、前記第1の捕捉体に対して親和性を有し、前記第1の捕捉体への結合に対して前記標的物質と競合する物質であり、前記第1〜第3の物質を前記試料と混合し、この混合物を前記刺激応答性高分子が凝集する条件下に維持し、前記環境応答性蛍光物質からの蛍光を検出し、前記検出の結果に基づいて、前記試料中の前記標的物質の有無又は量を決定することを含む分析方法。
  6. (S11)a)刺激応答性高分子と、前記刺激応答性高分子の一方の端に結合した環境応答性蛍光物質とを含む第1の物質、b)前記標的物質と特異的に結合する第1の捕捉体を含む第2の物質、及びc)前記刺激応答性高分子の凝集を阻害する凝集阻害物質で標識された競合物質を含む第3の物質を用意すること、ここで、前記競合物質は、前記第1の捕捉体に対して親和性を有し、前記第1の捕捉体への結合に対して前記標的物質と競合する物質である;
    (S12)前記試料に第2の物質及び第3の物質を混合し、前記環境応答性蛍光物質と、前記刺激応答性高分子と、前記第1の捕捉体と、前記競合物質と、前記凝集阻害物質とが結合した第1の複合体を生成させ、次いで第1の物質を混合し、前記試料中に前記標的物質が存在する場合、前記第1の複合体の前記第1の捕捉体と前記競合物質との結合を、前記標的物質との結合に置き換え、前記刺激応答性高分子と、前記第1の捕捉体と、前記標的物質とが結合した第2の複合体を生成させること;
    (S13)前記混合により得られた混合物を前記刺激応答性高分子が凝集する条件に維持し前記第1の複合体を形成していない前記刺激応答性高分子を凝集させ、当該刺激応答性高分子に結合した前記環境応答性蛍光物質を疎水性条件下に存在させること;
    (S14)前記環境応答性蛍光物質からの蛍光を検出すること;及び
    (S15)前記検出の結果に基づいて、前記試料中の前記標的物質の有無又は量を決定することを含む請求項5に記載の分析方法。
  7. 前記第1の捕捉体の前記標的物質との結合に影響を与えない部位と、前記刺激応答性高分子の前記環境応答性蛍光物質が結合していない他方の端とは、互いに結合することができるように構成される請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
  8. 前記第1の物質の前記刺激応答性高分子の前記他方の端にストレプトアビジンが結合されており、前記第2の物質の前記第1の捕捉体にビオチンが結合されている請求項7に記載の方法。
  9. 前記環境応答性蛍光物質からの蛍光の検出は、疎水性条件下における前記環境応答性蛍光物質の励起光を前記混合物に照射し、前記混合物からの蛍光を検出することを含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
  10. 前記刺激応答性高分子が温度応答性高分子である請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
  11. 前記環境応答性蛍光物質が極性応答性蛍光物質である請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
  12. 試料中の標的物質を検出するためのキットであって、
    a)刺激応答性高分子と、前記刺激応答性高分子の一方の端に結合した環境応答性蛍光物質とを含む第1の物質、
    b)前記標的物質と特異的に結合する第1の捕捉体を含む第2の物質、及び
    c)前記刺激応答性高分子の凝集を阻害する凝集阻害物質で標識された、前記標的物質と特異的に結合する第2の捕捉体を含む第3の物質
    を含む試薬キット。
  13. 試料中の標的物質を検出するためのキットであって、
    a)刺激応答性高分子と、前記刺激応答性高分子の一方の端に結合した環境応答性蛍光物質とを含む第1の物質、
    b)前記標的物質と特異的に結合する第1の捕捉体を含む第2の物質、及び
    c)前記刺激応答性高分子の凝集を阻害する凝集阻害物質で標識された競合物質を含む第3の物質を含み、
    前記競合物質は、前記第1の捕捉体に対して親和性を有し、前記第1の捕捉体への結合に対して前記標的物質と競合する物質である
    試薬キット。
  14. 前記第1の物質の前記刺激応答性高分子の他方の端にストレプトアビジンが結合されており、前記第2の物質の前記第1の捕捉体にビオチンが結合されている請求項12又は13に記載の試薬キット。
  15. 請求項1に記載の分析方法に用いるための装置であって、
    前記試料と前記第1〜第3の物質とを混合し、この混合物に前記環境応答性蛍光物質の励起光を照射し、蛍光の測定を行い、蛍光に関するデータを生成する分析システム、および
    前記蛍光に関するデータから前記標的物質の有無又は量のデータを生成するデータ処理部
    を含む装置。
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