JP2008268186A - 磁気センサーの感度向上材料及び方法 - Google Patents

磁気センサーの感度向上材料及び方法 Download PDF

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優 海江田
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Abstract

【課題】磁気センサーを用いたバイオセンサーにおいて、反応性や分散性を保ちつつ、検出感度を向上させる材料に関し、特に半導体ホール素子や磁気抵抗効果素子のような簡便な磁気バイオセンサーを用いて高感度化を可能とする材料を提供すること。
【解決手段】磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用される捕捉体部材であって、前記標的物質を捕捉するための捕捉体と、前記磁気マーカーが凝集するための核となる標識材とを有し、前記捕捉体が前記標識材によって標識されることを特徴とする捕捉体部材である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、検体液中の標的物質の有無、濃度を検出するセンサーの反応効率及び検出感度を向上するための材料及び方法に関する。
バイオセンサーは、生体や生体分子の持つ分子認識能を活用した計測デバイスである。生体内には、互いに親和性のある物質の組み合わせとして、例えば、酵素−基質、抗原−抗体、DNA−DNA等がある。バイオセンサーは、これらの組み合わせの一方を基材に固定もしくは担持して用いることによって、もう一方の物質を選択的に計測できるという原理を利用している。
近年では、バイオセンサーは医療分野のみならず、環境や食料品等への幅広い応用が期待され、その使用領域を広げるためにも、あらゆる場所に設置あるいは持ち運び可能な小型、軽量、高感度なバイオセンサーが望まれている。
現在、高感度センシング方式の1つとして、磁気センサーを用いた、検出領域の表面近傍に位置する磁性マーカーの有無、数の検知により、検体液中の標的物質の有無、濃度を検出するバイオセンサーの研究が盛んに進められており、固相分析にも用いられている。
図1に、従来の磁性マーカーを用いた固相分析法の一例を示す。図1に示される方法においては、まず予め、基体表面に、標的物質の一方の領域(抗原抗体反応の場合はエピトープと呼ばれる)を特異的に認識し捕捉することができる第一の捕捉体成分(抗原抗体反応の場合は一次抗体と呼ばれる)を固定化する。次に、標的物質を含む検体液を接触させる。この操作により、標的物質が第一の捕捉体成分に特異的に捕捉される。次に、第一の捕捉体成分により特異的に捕捉された標的物質の他方の領域を特異的に認識し、捕捉することができる第二の捕捉体成分(抗原抗体反応の場合は二次抗体と呼ばれる)を有する磁性マーカーを液中に投入する。この操作により、第二の捕捉体成分が、基体表面に固定化された第一の捕捉体成分に特異的に捕捉された標的物質に捕捉され(サンドイッチ法)、結果的に図1のように、標的物質を介して、磁性マーカーが基体表面に固定化される。
また、異なる方法として、予め、標的物質を含む検体液中に、第二の捕捉体成分を有する磁性マーカーを加えて、“標的物質−第二の捕捉体成分”複合体を形成させる。その複合体を基体上に固定化された第一の捕捉体成分と接触させることによって、結果的に、図1のように、標的物質を介して、磁性マーカーを基体表面に固定化することも可能である。
そして、このような基体表面に固定化された磁性マーカーの数を何らかの手法で測定する事で、目的とする標的物質の数、濃度を計算することが可能となる。
このような磁気検出の手法を用いたバイオセンサーとして、以下の手法が提案されている。
特許文献1では、標識としての磁性体を抗原抗体反応により検体液中に含まれる標的物質に結合させ、該標識を磁化した上で、磁気センサーとしてのSQUID(超電導量子干渉計)により該標識を検出する免疫検査方法が開示されている。ここで使用される磁気マーカーは20‐40nmの磁性粒子をポリマーで被覆し、40‐100nmのサイズと規定することが前記SQUIDの感度向上に寄与することを開示している。前記SQUIDは、極めて高い検出感度を有するが、液体ヘリウムを用いて極低温環境下で検出を行う必要があり、小型化、軽量化が困難、高いランニングコストを必要とするという課題がある。
そこで、上記問題を解決する為に、小型で且つ室温での測定が可能である磁気センサーを用いたバイオセンサーが提案されている。磁性粒子を検出可能な小型の磁気センサーには、様々な種類が有り、例えばホール効果素子(特許文献2)、磁気抵抗効果素子(特許文献3)、磁気インピーダンス素子(特許文献4)等が挙げられる。
特開2001−033455号公報 国際公開第03−067258号パンフレット 米国特許5981297号明細書 特開平10‐234694号公報
磁性球体が磁性球体の中心からベクトルr の位置点Pに作る磁界H は下式で表される。
Figure 2008268186
ここでμは透磁率、m は磁性球体の磁化を磁性球体の中心に有る小磁石に置き換えた場合の磁気モーメントを表す。単位体積当りの磁化の大きさが一定であるならば、磁性球体の体積が大きいほど、m の値は大きくなり、点Pには大きな磁界が印加されることがわかる。したがって、磁気マーカーを磁気センサーで検出する場合には、良好に検出を行うために、磁気マーカーの粒子径は大きい方が好ましいが、反応性、分散性が悪くなり、バイオセンサーとしての使用に支障をきたす場合がある。
本発明は、磁気センサーを用いたバイオセンサーにおいて、反応性や分散性を保ちつつ、検出感度を向上させる方法に関し、特に半導体ホール素子や磁気抵抗効果素子のような簡便な磁気バイオセンサーを用いて高感度化を可能とする方法を提供するものである。
上記課題を解決するための本発明の捕捉体部材は、以下の通りである。
本発明の第一は、磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用される捕捉体部材であって、
前記標的物質を捕捉するための捕捉体と、
前記磁気マーカーが凝集するための核となる標識材とを有し、
前記捕捉体が前記標識材によって標識されることを特徴とする捕捉体部材である。
本発明の第二は、磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出するための方法であって、
検体液中の標的物質を捕捉する第一の捕捉体と前記標的物質を反応させる工程と、
前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体を有する捕捉体部材と、前記第一の捕捉体と反応した前記標的物質とを反応させる工程と、
前記第二の捕捉体を有する捕捉体部材の少なくとも一部に標識された標識材を核として磁性マーカーを凝集させる工程と、
を含む検出方法である。
本発明の第三は、磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用するキットであって、
センサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含み、
前記センサー素子はセンサー素子部材と、該部材表面に固定された、前記標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有し、
前記捕捉体部材は前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、検体液中において表面電荷を有する標識材とを有し、
前記磁性マーカーは前記標識材と異なる極性の電荷を有する磁性材料を含む、或いは、磁性材料と前記標識材と異なる極性の電荷を有する材料とを含む、
ことを特徴とするキットである。
本発明の第四は、磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用するキットであって、
センサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含み、
前記センサー素子はセンサー素子部材と、該部材表面に固定された、前記標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有し、
前記捕捉体部材は前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、材料親和性ペプチドを少なくとも一部に含む標識材とを有し、
前記磁性マーカーは磁性材料と、前記材料親和性ペプチドと親和性を有する材料とを含む、
ことを特徴とするキットである。
本発明の第五は、磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用するキットであって、
センサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含み、
前記センサー素子はセンサー素子部材と、該部材表面に固定された、前記標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有し、
前記捕捉体部材は前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、刺激応答性ポリマーを少なくとも一部に含む標識材とを有し、
前記磁性マーカーは磁性材料と、前記刺激応答性ポリマーとを含む、
ことを特徴とするキットである。
本発明によれば、サンドイッチ法における第二の捕捉体は、反応性、分散性を良好に保ち、第二の捕捉体が標的物質を捕捉後に、第二の捕捉体に固定された標識材を核として磁性粒子を凝集させることによって磁気マーカーの検出感度を向上させることができる。
また、磁性粒子の凝集核となる標識材を第二の捕捉体に結合することによって、被捕捉体と反応した第二の捕捉体に結合する標識材に選択的に磁性粒子を凝集させることが可能となり、検出感度の向上が可能となる。
これらにより、本発明は、標的物質の高感度な検出を可能とするバイオセンサーを提供することができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について、詳細に説明する。
本発明にかかる捕捉体部材は、磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーにおいて使用される部材であって、磁性マーカーが凝集するための核となる標識材を有することを特徴とする。
本発明の捕捉体部材を好適に使用したセンサーにおける標的物質の検出方法の一例を図2に示す。図2において、センサー素子6上に固定された第一の捕捉体7と、標識材9によって標識される第二の捕捉体8を有する捕捉体部材とが、標的物質11を介してサンドイッチ型の抗原抗体反応を行う。前記標的物質11に結合する第二の捕捉体8を有する捕捉体部材に固定される標識材9を核として、磁性マーカー10を凝集させることにより、センサー素子6上に固定化された磁性マーカー10からの磁界信号を検出することによって、検体液中の標的物質の有無、濃度を検出することができる。
《捕捉体部材》
捕捉体部材とは、磁気センサーにおいて、標的物質に磁性マーカーを標識するための部材(試薬)であり、少なくとも、標的物質を捕捉するための捕捉分子(捕捉体)と標識材とを含んでなる。
《捕捉分子》
捕捉分子とは検体液中の標的物質の選択に係わる物質であり、例えば、検体液中の標的物質と選択的に直接反応する物質(いわゆるレセプター)、標的物質の反応に係わる物質(例えば、標的物質の反応に選択的に触媒作用をもたらす物質)等である。また、この捕捉分子は、検出の有無や程度の表示に係わる機能、例えば、レセプターが放出する物質や残余の物質と反応し発色する機能等を兼ねるものであってもよい。本発明に使用される捕捉分子には、酵素、糖鎖、触媒、抗体、抗体断片、抗原、核酸、呈色試薬、などが挙げられるがこれに限る物ではない。
尚、本発明の検出対象は、直接捕捉分子が反応する標的物質である必要は無く、間接的に測定できるものでもよい。例えば、検出対象に特異的に存在する標的物質を検出することで測定が可能となる。よって、検出対象は生体物質に限るものではなく、またそのサイズも限定されるものではない。ただし、標的物質は糖、蛋白質、アミノ酸、抗体、抗原や疑似抗原、ビタミン、核酸などの生物に含有される生体物質、及び、その関連物質や人工的に合成された擬似生体物質であることが望ましい。
また、前記捕捉体成分を複合して使用することも可能であり、本発明による捕捉分子として、例えば、複合酵素、抗体−酵素、などの複合体を構成することも可能である。
《標識材》
標識材とは、磁性検出に用いる磁性マーカーを、それ自体に接触するように或いはその近傍に選択的に凝集させることが可能な材料のことである。
好ましい標識材の材料としては、検体液中で表面電荷を有する無機材料、有機高分子およびアミノ酸等が挙げられる。これらの表面電荷を有する材料としては、検体液のpHから等電点が離れているものを選択することが、電荷強度の点で好ましい。
また後述する磁性マーカーの少なくとも一部に含有される材料に対して、親和性を有するペプチドや核酸も標識材として用いることができる。さらに、外的環境の微小変化(刺激)に応じて、相転移する材料を用いることもできる。そのような材料として例えば、刺激応答性ポリマーが挙げられる。
以下において、上記の各標識材の材料について例を挙げて示すが、これらに限定することを意図するものではない。
《電荷を有する材料》
<無機材料>
標識材として利用できる無機材料としては、酸化マグネシウム(MgO:等電点12.4)、酸化亜鉛(ZnO:同9.3)、フェライト(α-Fe23:同9.04)、二酸化珪素(SiO2:同1.8)等の無機酸化物が挙げられる。これらの無機酸化物以外にも検体液pHから離れた等電点を有し、検体液中で電荷を有する材料であれば、これらに限定されることはない。
<有機材料>
カルボキシル基、アミノ基またはホスホリル基を側鎖に含むポリマーを標識材として用いることができる。そのようなpH感受性材料としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、アミノエチルメタクリレート、ホスホリルエチルアクリレート、又はホスホリルエチルメタクリレートのようなpH感受性ビニルモノマーに基づくポリマーが挙げられる。このようなpH感受性ビニルモノマーの重合体や二種以上の単量体からなるコポリマーを利用することもできる。
<アミノ酸>
また、標識材として、電荷を有するアミノ酸やペプチドであっても良い。正電荷を有する標識材として好適に使用できるアミノ酸として、塩基性アミノ酸であるアルギニン(等電点10.76)、リジン(等電点9.74)が挙げられる。一方、負電荷を有する標識材としては、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸(等電点2.77)、グルタミン酸(等電点3.22)が挙げられる。
《親和性を有する材料》
<材料親和性ペプチド>
材料親和性ペプチドを標識材として使用することもできる。材料親和性ペプチドとしては、例えば、フェライト親和性ペプチド等が挙げられる。このような材料親和性ペプチドを選択する方法としては、M13ファージに代表されるウィルス外殻タンパク質や大腸菌、酵母等の細胞の表面に材料親和性ペプチドを提示する表面提示法が知られている。
<酵素とその自殺基質>
酵素には、自殺基質と相互作用することによって、本来の酵素触媒機能を失活し、酵素−自殺基質複合体を生成するものがある。例えば、RNA分解酵素であるBarnase(バーナーゼ)は、自殺基質となるタンパク質Barstar(バースター)と強固に結合し、その活性を阻害されることが知られている。このような酵素−自殺基質複合体を形成する酵素または自殺基質を本発明の標識材として用いることができる。標識材として酵素を利用する場合、磁性マーカー表面に前記酵素の自殺基質を修飾することで、磁性マーカーが標識材と結合することが可能になる。そのため、前記酵素を捕捉体に複数標識することによって、前記捕捉体上への磁性マーカーの凝集が可能となる。
<多価性タンパク質>
特定の物質に対する結合ドメインを、分子内に複数有するタンパク質(多価性タンパク質)を本発明の標識材とすることもできる。このような多価性タンパク質を本発明の標識材とする場合、定量性の向上が期待できる。たとえば、フェライト親和性ペプチドのような材料親和性ペプチドを標識材として用いた場合と比較すると、より高い精度で結合する磁性マーカーの数を制御することが可能となる。多価性タンパク質である(ストレプト)アビジンを標識材として用いる場合、(ストレプト)アビジンは、ビオチン1分子と結合可能なサブユニットを4つ有するため、(ストレプト)アビジン1分子は最大4分子のビオチンと結合することができる。ただし、使用する磁性マーカーの粒径によっては立体障害が生じるため、(ストレプト)アビジン1分子あたり1〜4個の磁性マーカーが結合する。そのため使用する磁性マーカーの粒径を考慮することによって、捕捉体部材に凝集する磁性マーカー数を制御することができ、定量性の向上が期待できる。
また、磁性マーカー表面に修飾されるビオチンの磁性マーカー表面からの距離も定量性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、磁性マーカー上にリンカーを介してビオチンを修飾する構成では次のような場合が考えられる。磁性マーカー表層からのビオチンの距離が離れすぎている場合、センサー基板上の標的物質に結合した捕捉体部材1分子の標識材として使用される(ストレプト)アビジン分子の複数のビオチン結合サイトに、同じ磁性マーカー上のビオチンが結合してしまう可能性がある。そのため、1分子の(ストレプト)アビジンに対して、同一の磁性マーカー上に存在する複数のビオチンが結合しない程度のリンカー長に制御することが定量性を向上させる上で好ましい。
また、磁性マーカー表面上のビオチン修飾密度を制御することによっても定量性を向上させることができる。たとえば、1つの磁性マーカー上に1分子のビオチンが修飾されている場合、同一磁性マーカー上に存在するビオチンが(ストレプト)アビジン1分子中の複数のビオチン結合サブユニットと結合することがないため、好ましい。また、(ストレプト)アビジンは6nm程度の大きさであることが知られている。磁性マーカー上に複数のビオチンが存在する場合においても、同一磁性マーカー上のビオチン間距離がアビジンの複数のサブユニットに結合できない距離だけ離れて存在するように制御した場合、(ストレプト)アビジンの1つのビオチン結合サブユニットと磁性マーカーが1対1で結合することができるため好ましい。
<核酸>
標識材として一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNAを用いることもできる。一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNAは、前記一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNAに相補的な配列を有する一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNAとTm値以下の温度範囲においてアニーリングすることが可能である。そのため、これら一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNAを本発明の標識材として用いることができる。標識材として用いられる一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNAは、次の条件を満たす限りにおいて、その配列及び長さは特に限定されない。その条件とは、後述する磁性マーカーに固定される一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNAと相補的にアニーリングし、前記相補的一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNA以外の配列と非特異的なアニーリングが生じないことである。このような一本鎖DNAまたは/及び一本鎖RNAの作成方法としては、ExonucleaseIIIやLambda exonucleaseを用いた特異的一本鎖DNAを作成することが可能である。またはDNA/RNAハイブリッドを作成後、DNA nucleaseまたはRNA Nnucleaseを用いて前記DNAまたはRNAを消化することにより、一本鎖DNAまたは一本鎖RNAを作成することもできる。
《刺激応答性材料》
刺激応答性材料とは、刺激に応答して体積、形状などの特性が変化する材料であり、代表的なものとして刺激応答性ポリマーが挙げられる。
<刺激応答性ポリマー>
刺激応答性ポリマーとは刺激に応じ、相転移するポリマーのことである。
<刺激>
刺激とは外的環境(検体液が存在する環境)の変化のことであり、制御の点から微小な変化であることが望ましい。具体的には温度やpHの変化、光照射等が挙げられる。
《刺激応答性ポリマーの材料》
標識材として用いられる刺激応答性ポリマーとして、温度応答性ポリマー、光感受性ポリマーおよびpH応答性ポリマーなどが利用でき、以下に具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
温度応答性ポリマーとしては、上限臨界溶液温度を有するポリマーと下限臨界溶液温度を有するポリマーが挙げられる。上限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、例えば、アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N′−メタクロイルトリメチレンアミド、アクロイルグリシンアミド、アクロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクロイルニペコタミド及びアクロイルメチルウラシル等のうち少なくとも1種の単量体からなるポリマーが挙げられる。また、これらの少なくとも2種の単量体からなるコポリマーも利用することができる。
一方、下限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、例えば、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。また、これらの重合体及びこれらの少なくとも2種の単量体からなるコポリマーも利用可能である。
光感受性ポリマーは、通常、ポリマーの側鎖上に発色基を有する。典型的な発色基としては、例えば、芳香族ジアゾ色素が挙げられる(Ciardelli, Biopolymers 23: 1423-1437(1984); Kungwatchakun et al., Makromol. Chem., Rapid Commun. 9: 243-246(1988); Lohmann et al., CRC Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 5: 263(1989); Mamada et al., Macromolecules 23: 1517(1990))。芳香族ジアゾ色素を350〜410nmのUV光に曝した場合、比較的疎水性のトランス型から、双極性で、より親水性のシス型へと異性化されることにより、ポリマーコンフォメーション変化を引き起こされる。それにより、骨格への色素複合の程度及び骨格の主要単位の水溶性に応じて、濁っていたポリマー溶液が透明になる。一方、約750nmの可視光に曝露することによって、逆の現象を起こさせることができる。
pH応答性ポリマーは、通常、−OPO(OH)2基、−COOH基、又は−NH2基のような側鎖上のpH感受性基を含有している。pH感受性材料としては、典型的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、アミノエチルメタクリレート、ホスホリルエチルアクリレート、又はホスホリルエチルメタクリレートのようなpH感受性ビニルモノマーに基づくポリマーが挙げられる。pH感受性基を含有するポリマーは検体液中のpH変化により相分離を起こしうる。
《捕捉分子への標識材の固定方法》
捕捉分子への標識材の固定方法としては、標識材の材質によって様々な方法を取ることが可能である。捕捉分子の被捕捉分子への結合能を阻害することなく、また標識材が後述する磁性マーカーを凝集させるための核となることができる限りにおいて、捕捉分子への固定される位置や固定方法は特に限定されない。標識材の捕捉分子への固定は例えば、捕捉分子がタンパク質である場合、そのカルボキシル末端または/及びアミノ末端や、捕捉分子の機能を阻害しない限りにおいてはランダムな位置に固定することができる。また、標識材の捕捉分子への固定方法の一例としては物理吸着や化学結合、遺伝子連結による融合ペプチドとして生産する方法が挙げられる。
<物理吸着による固定>
捕捉分子への標識材の物理吸着は、捕捉分子と標識材を混合しておくことで非特異的に吸着させることが可能であり、操作の簡便性という点で好ましい。
<化学結合による固定>
一方、捕捉分子への標識材の固定方法として、共有結合のような化学結合を利用することもできる。前記化学結合は物理吸着に比べ結合が強固であるため好ましい。捕捉分子に標識材を共有結合的に固定する方法としては、例えば、捕捉分子がタンパク質である場合、タンパク質配列中に含まれるアミノ酸が持つアミノ基に、標識材材料表面に固定されたカルボキシル基とを当該分野既知の方法で固定することが可能である。
<遺伝子連結による融合ペプチド>
さらに、捕捉分子及び標識材がタンパク質、ペプチド、アミノ酸である場合、捕捉分子への標識材の固定は、捕捉分子のカルボキシ末端または/及びアミノ末端、またはランダムな位置に、捕捉分子と標識材の融合ポリペプチドとして固定することができる。前記融合ポリペプチドの作成方法としては、化学合成または生体を用いた合成において当該技術領域既知の方法が利用できる。
《標識材の構成》
<標識材に無機材料を用いる場合>
標識材として無機材料を用いる場合、特に制限はないが、平均粒径が、1nm以上、1000nm未満であることが好ましい。さらに、標識される捕捉体の目的物への認識性、反応性を高めるために、平均粒径が、3nm以上、200nm未満であることが特に好ましい。用いられる無機材料としては、検体液中で電荷を有する材料であれば限定されないが、例えば、酸化マグネシウム(MgO:等電点12.4)、酸化亜鉛(ZnO:同9.3)、フェライト(α-Fe23:同9.04)、二酸化珪素(SiO2:同1.8)等の金属酸化物が挙げられる。また、前記極性を失わない限りにおいて、検体液中での分散性を良好にするために親水性ポリマーで無機材料の一部または全部を覆うことも可能である。
<標識材に有機材料を用いる場合>
標識材として荷電性ポリマーを用いることもできる。電荷を有するポリマーとしては側鎖にアミノ基やカルボキシ基、ホスホリル基を有するポリマーを用いることができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、アミノエチルメタクリレート、ホスホリルエチルアクリレート、又はホスホリルエチルメタクリレートのようなpH感受性ビニルモノマーに基づくポリマーが挙げられる。このようなpH感受性ビニルモノマーの重合体や二種以上の単量体からなるコポリマーを利用することもできる。このようなポリマーを捕捉体の一部に共有結合的に固定することが可能である。例えば、捕捉体として抗体を用いる場合、抗体中に含まれるアミノ基とポリマー側鎖に含まれるカルボキシ基を当該技術領域既知の方法により反応させることによって、固定することが可能である。また、前記金属酸化物を前記極性を有するポリマーで覆うことによってできるポリマー被覆金属材料を標識材として用いることもできる。また、前記金属材料を親水性ポリマーで覆うことにより分散性を向上させ、前記親水性ポリマー末端にアミノ基やカルボキシ基を導入した材料を本発明における標識材として用いることもできる。
<標識材にアミノ酸を用いる場合>
捕捉分子及び標識材からなる捕捉体部材がタンパク質あるいはペプチドであり、標識材にアミノ酸を用いる場合、捕捉分子への標識材の固定は、捕捉分子のカルボキシ末端または/及びアミノ末端、またはランダムな位置に、捕捉分子と標識材の融合ポリペプチドとして固定することができる。アミノ酸は単独で標識材として用いることもできるが、検体液中で同一の極性を有する、複数個の同一または異種のアミノ酸を連ねたポリアミノ酸として利用することもできる。この場合、標識材として一つのアミノ酸を使用する場合よりも、電荷を有する領域が拡大し、標識材近傍に後述する磁性マーカーが凝集し易くなるため好ましい。また、標識材として使用するポリアミノ酸はリンカーで連結されることもできる。リンカーは磁性マーカーが標識材を核として凝集することを阻害しない限りにおいてどのような配列であってもよい。例えば、リンカーは検体液中において極性の弱い材料を使用することが、磁性マーカーを静電的に引き寄せ、凝集させる標識材の領域となるアミノ酸近傍に、磁性マーカーが凝集し易くなるため好ましい。そのような例としてGGGGS(G:グリシン、S:セリン)のような一般的リンカーが使用できる。また、アミノ酸を標識材として使用する場合の構造として、デンドリマー構造を用いることもできる。デンドリマーは、コアと呼ばれる中心分子と、デンドロンと呼ばれる側鎖部分から構成され、デンドロン部分の分岐回数を世代と言い表される。アミノ酸をデンドリマー構造のデンドロンとして利用したデンドリマーとして例えば、デンドリティックポリリジンが知られており、本発明における標識材として利用することもできる。
<標識材に材料親和性ペプチドを用いる場合>
捕捉分子及び標識材からなる捕捉体部材がタンパク質、ペプチドであり、標識材にペプチド配列を用いる場合、捕捉分子への標識材の固定は、捕捉分子のカルボキシ末端または/及びアミノ末端、またはランダムな位置に、捕捉分子と標識材の融合ポリペプチドとして固定することができる。材料親和性ペプチドは単独で標識材として用いることもできるが、リンカーを介して、または介さずに繰り返し連結した状態で使用することも可能である。材料親和性ペプチドを繰り返し連結することにより、磁性マーカーの結合できる領域を増加させるとともに、結合能を増加させることが可能であるため、より強固な磁性マーカーの凝集が可能となるため好ましい。また、材料親和性ペプチドを繰り返し連結する数を制御することにより、前記材料親和性ペプチドを介して凝集する磁性マーカーの凝集数を制御し、より定量的な凝集を行うことが可能となる。また標識材として用いられる材料親和性ペプチドは磁性マーカーに含有される一種の材料のみに結合するものを単独でまたは繰り返し用いることも可能である。または、磁性マーカー中に含まれる二つ以上の材料に対して親和性を有する材料親和性ペプチドそれぞれを融合して用いることも可能である。
《磁性マーカー》
磁性マーカーとして、マーカーの大きさは、センサー素子の形状、大きさ、或いは用途によって様々に選択する事が可能であり特に限定されない。好ましくは、数nmから数百nmが好ましく、更に10nmから200nmが分散性を良好に保つために好ましい。なお、磁性微粒子の平均粒径は、動的光散乱法で測定できる。
このような磁性マーカーを構成する磁性微粒子としては、例えば、フェライト、酸化ニッケル、コバルト鉄酸化物、バリウムフェライト、炭素鋼、タングステン鋼、KS鋼、希土類コバルト磁石及びヘマタイト等の微粒子が挙げられる。中でもフェライトは、生理活性条件下で十分な磁性を有し、溶媒中で酸化等の劣化が起こりにくいことから好ましい。フェライトは、マグネタイト(Fe34)、ヘマタイト(α−Fe23)、マグヘマイト(γ−Fe23)等の鉄酸化物、及びこれらのFeの一部を他の原子で置換した複合体から選択される。他の原子としては、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Ta、Wの少なくともいずれかが挙げられる。
<静電的相互作用で凝集する場合の構成>
捕捉体部材の標識材が検体液中で表面電荷を有する場合に用いられる磁性マーカーの構成としては、例えば、フェライトを少なくとも一部に含む磁性マーカーが好適に用いられる。ヘマタイト(α-Fe23)は等電点を9.04に示すため、検体液中でフェライトの表面電荷と異なる表面電荷を有する材料で標識される捕捉体部材を用いる場合、検体液中でフェライト粒子が自己凝集しない限りにおいて、前記標識材を核としてフェライト粒子を凝集させることができる。この場合、フェライト粒子表面にその他の処理を施す工程を必要としないため、粒子作成の工程が簡易であるという利点がある。
磁性微粒子の表面にアミノ基やカルボキシ基等の極性基を固定することもできる。磁性微粒子の表面に極性基を固定することは、捕捉体部材が標的物質を捕捉するのに好適なpHが磁性微粒子の等電点である場合においても、磁性マーカー表面に極性を有することが可能となるため好適である。磁性微粒子表面にアミノ基またはカルボキシ基を固定する方法としては、当該技術領域既知の方法で行うことができる。また、磁性微粒子の表面をポリエチレングリコール等の親水性ポリマーで被覆し、親水性ポリマーの末端にアミノ基やカルボキシ基のような極性基を固定することもできる。親水性ポリマーで磁性微粒子を被覆することにより、検体液中における磁性マーカーの分散性を良くすることができるため好適である。
<分子認識によって凝集する場合の構成>
捕捉体部材の標識材が材料親和性ペプチドである場合に用いられる磁性マーカーとしては、磁性マーカー表面の少なくとも一部に材料親和性ペプチドによって認識される材料が含まれていれば良い。そのような材料としては例えば、標識材としてフェライト親和性ペプチドを用いる場合、フェライトや、他の金属材料とフェライトとの合金、例えばバリウムフェライトを磁性微粒子として用いることができる。また、材料親和性ペプチドとの親和性を失わない限りにおいて、磁性マーカーは分散性を向上させるための親水性ポリマー等によって被覆されることもできる。
また、親和性ペプチドとして酵素や(ストレプト)アビジンを用いる場合、磁性マーカーの構成としては、酵素の自殺基質か、ビオチンまたはストレプトタグを磁性マーカー表面の少なくとも一部に修飾していれば良い。自殺基質やビオチン、ストレプトタグはリンカーを介して磁性マーカーに修飾することもできる。また、修飾方法は物理吸着や化学架橋のような当該領域既知の手法でよく、親和性ペプチドとして利用される酵素や(ストレプト)アビジンとの結合能さえ有していればどのような方法でもよい。
<刺激応答性ポリマーによって凝集する場合の構成>
捕捉体部材の標識材が刺激応答性ポリマーである場合に用いられる磁性マーカーとしては、磁性マーカーの少なくとも一部に刺激応答ポリマーを含有する磁性マーカーを用いることができる。
そのような磁性マーカーに使用可能な刺激応答性ポリマーとしては、温度応答性ポリマーや光応答性ポリマー、pH応答性ポリマー等が利用でき、具体的には、標識材で使用できる刺激応答性ポリマーとして例示した材料と同じものを用いることができる。刺激応答性ポリマーの磁性微粒子への被覆、固定化方法は当該技術領域既知の方法で行うことができる。例えば、特開2005−82538号公報において、多価アルコールや多価アルコール誘導体を介して熱応答性ポリマーを磁性粒子に固定化する方法が開示されている。
磁性マーカーに被覆、固定される各種の刺激応答性ポリマーは、捕捉体部材に固定される刺激応答性ポリマー(標識材)との組み合わせにおいて、外部刺激により標識材を核として凝集することが出来る限りにおいて、どのような組み合わせで用いられても構わない。具体的には、設定する所定の温度変化等の刺激に対して同様の応答を示すものであればよく、標識材と磁性マーカー被覆の両方に同じ材料を用いればこの条件を満たすことができる。また異なる材料であっても、新たなモノマーを少量添加して重合したポリマーや複数ユニットの組成比が異なるポリマーのように機能が保持される範囲で改変を施したもの、更には所定の刺激に対して磁性マーカーの凝集を生じさせる上で実質的に同等の応答を示すものであれば組せ合わせることができる。たとえば、下限臨界温度の異なる二種のポリマーを用い、一方は捕捉体部材の標識として、他方は磁性マーカーの被覆剤として用いることができる。あるいは、磁性マーカーを被覆する刺激応答性ポリマーにおいて、刺激の前後で磁性マーカー表面のゼータ電位を大きく変え得るようなポリマーを使用することもできる。この場合、前記磁性マーカーのゼータ電位が有する電荷と反対の電荷を有する材料を捕捉体部材の標識剤として使用することができる。また、外部刺激による応答性を損なうことがない限りにおいて、磁性マーカーの分散性を向上させることを目的として、親水性ポリマー等による被覆を行っても構わない。
《標識材と磁性マーカーの凝集方法》
標識材と磁性マーカーを凝集させる方法として、検体液中で表面電荷を有する材料を用いる場合と、分子認識材料を用いる場合と、外部刺激に応じて凝集する材料とを用いる場合とに分けて考えることができる。
<検体液中で表面電荷を有する材料を用いる場合>
捕捉体部材に固定される標識材に検体液中で表面電荷を有するものを使用する場合、磁性マーカーとして、検体液中で前記標識材と異なる表面電荷を有する磁性マーカーを用いることができる。前記捕捉体部材と前記磁性マーカーとを共存させることにより、前記捕捉体部材の標識材を核として前記磁性マーカーを凝集させることができる。例えば、捕捉体を標的物質に対して親和性を持つ抗体断片とし、標識材としてポリアスパラギン酸を用いる場合、前記抗体断片のアミノ末端または/及びカルボキシ末端に標識材としてアスパラギン酸を複数個融合したポリペプチドを作成する。アスパラギン酸は等電点が2.77あるため、例えば、pH7.0のバッファー中において負に帯電する。そのため、前記捕捉体部材のカルボキシ末端に標識されたポリアスパラギン酸は負電荷を示すことになる。前記捕捉体部材を含むpH7.0のバッファーに、フェライト微粒子を添加すると、フェライトの等電点は9.04であるため、pH7.0のバッファー中において正に帯電する。その結果、前記捕捉体部材の標識材であるアスパラギン酸を核として、前記フェライト微粒子の凝集が起こり、標識材を核とした磁性マーカーの凝集が確認できる。さらに標識材となるポリアスパラギン酸をリンカーを介して繰り返し融合することもできる。前期ポリアスパラギン酸を繰り返し融合することにより、負に帯電する領域がリンカーを介して複数領域存在することが可能となるため、正に帯電した磁性マーカーが凝集できる領域が増加するため好ましい。
<分子認識材料を用いる場合>
捕捉体部材に固定される標識材に材料親和性ペプチドを用いる場合、磁性マーカーとして、前記磁性マーカー表面の少なくとも一部に前記材料親和性ペプチドによって認識される材料が存在する磁性マーカーを用いることができる。前記材料親和性ペプチドによって標識される捕捉体部材と、前記磁性マーカーとを共存させることにより、前記捕捉体部材に固定される標識材を核として、前記磁性マーカーを凝集させることができる。
例えば、捕捉体を標的物質に対して親和性を持つ抗体断片とし、前記抗体断片のカルボキシ末端にリンカーを介してフェライト親和性ペプチドを融合したポリペプチドを作成する。前記フェライト親和性ペプチド融合ポリペプチド溶液に、フェライト微粒子を添加することで、前記フェライト親和性ペプチドにフェライト粒子が凝集し、捕捉体部材の標識部位への磁性マーカーの凝集が確認できる。また、このフェライト親和性ペプチドをリンカーを介して複数単位を捕捉体部材へ固定することもできる。このようにフェライト親和性ペプチドを複数単位繰り返すことにより、フェライトへの親和性を向上させることが期待できる。また、前記フェライト親和性ペプチドの繰り返し回数や、標識材中に含まれる前記フェライト親和性ペプチドの総数を適宜変えることで、凝集させる磁性マーカーの数を制御することも期待できる。
さらに、例えば、標識材に金属ナノ粒子と材料親和性ペプチドの複合体を用いることもできる。例えば、金ナノ粒子の表面に前記フェライト親和性ペプチドを物理吸着により固定化したものを標識材として用いることもできる。フェライト親和性ペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端にシステイン残基を融合しておくことで、システインのチオール基を介して金ナノ粒子にフェライト親和性ペプチドを固定することも可能である。上記のようにしてフェライト親和性ペプチドを表面に固定した金ナノ粒子を、標的物質に親和性を有する抗体に物理的に吸着固定させることによって、捕捉体部材を作成することも可能である。このような標識材を用いる場合、例えば、金ナノ粒子のサイズを選択することで、金ナノ粒子上に固定化されるフェライト親和性ペプチドの数を選択することが期待でき、磁性マーカーの凝集数の制御が期待できる。
<外部刺激に応じて凝集する材料を用いる場合>
捕捉体部材に含まれる標識材に刺激応答性ポリマーを用いる場合、磁性マーカーとして、磁性マーカー表面の少なくとも一部に外部刺激に応じて凝集する刺激応答性ポリマーを含んでなる磁性マーカーを用いることができる。捕捉体部材と磁性マーカーとを共存させ、刺激応答性ポリマーに適した外部刺激を加えることによって、捕捉体部材の標識材に磁性マーカーを凝集させることができる。
例えば、捕捉体を標的物質に対して親和性を持つ抗体とし、この抗体の少なくとも一部に標識材となる刺激応答性ポリマーで被覆された磁性粒子を物理吸着により固定化する。また、刺激応答性ポリマーの重合時にカルボン酸、アミノ基またはエポキシ基等の官能基を持つモノマーを他のモノマーと共重合させ、当技術分野で周知の方法に従い、この官能基を介して、抗体をポリマー上に固定する方法が利用できる。これらの方法により、刺激応答性ポリマーを標識材として固定化された抗体が得られ、本発明における捕捉体部材として利用することができる。例えば、刺激応答性ポリマーが下臨界溶液温度を有するポリマーである場合、捕捉体部材と、磁性マーカーとして下限臨界溶液温度を有するポリマーで被覆された磁性微粒子とを下限臨界溶液温度以下で混合する。この状態では、捕捉体部材及び磁性マーカーは良好な分散状態を維持している。この混合溶液を下限臨界温度以上に加熱することにより、下限臨界溶液温度を有するポリマーがゲル化し、捕捉体部材の標識材と磁性マーカーの凝集が確認できる。あるいは、刺激応答性ポリマーが光感受性ポリマーである場合の例として、光感受性ポリマーが芳香族ジアゾ色素である場合を挙げて説明する。まず、捕捉体部材と、磁性マーカーとして芳香族ジアゾ色素で被覆された磁性微粒子とを350〜410nmのUV光曝露下で混合する。芳香族ジアゾ色素はUV光曝露下においてより親水性のシス型として存在することが知られているため、捕捉体部材および磁性マーカーは反応溶液中で良好な分散状態を維持している。この混合溶液を例えば、約750nmの可視光に曝露すると、芳香族ジアゾ色素は比較的疎水性となるトランス型へ異性化されことにより、ポリマーコンフォメーション変化が引き起こされる。その結果、骨格への色素複合の程度及び骨格の主要単位の水溶性に応じて、前記ポリマー溶液の凝集が生じ、捕捉体部材と磁性マーカーの凝集が確認できる。このような光感受性ポリマーを標識剤として使用する場合、長時間のUV光曝露により捕捉体部材の変性が生じる可能性があるので、捕捉体部材の変性が生じない時間において混合および凝集工程を終えることが好ましい。また、刺激応答性ポリマーがpH応答性ポリマーである場合にも、外部刺激をpH変化とすることで同様に捕捉体部材と、磁性マーカーとを凝集させることができる。例えば、捕捉体部材と、磁性マーカーとしてpH応答性ポリマーで被覆された磁性微粒子とをpH応答性ポリマーが水溶性を維持し、溶液中で分散するpH範囲において混合する。その後、pH応答性ポリマーが相変化を起こすように溶液のpHを変化させることで、捕捉体部材の標識剤と磁性マーカーの凝集を生じさせることが可能である。
上記のような磁性マーカーの各種凝集方法は、単独で用いても組み合わせて用いても構わない。また磁性マーカーの自己凝集を抑制するために、例えば、反応溶液中に界面活性剤を添加することもできる。
《捕捉体部材による検出方法》
本発明における捕捉体部材と磁性マーカーを用いた検体液中の標的物質の検出方法としては、
1)検体液中の標的物質を捕捉する第一の捕捉体と前記標的物質を反応させる工程と、
2)前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体を有する捕捉体部材(以下、第二の捕捉体含有部材とも記す)と、前記第一の捕捉体と反応した前記標的物質と反応させる工程と、
3)前記第二の捕捉体成分の少なくとも一部に標識された標識材を核として磁性マーカーを凝集させる工程と、
を順次行い、センサー素子上に固定される捕捉体部材に凝集した磁性マーカーの有無を、検出することで、検体液中の標的物質の有無を検出することができる。よって、検出工程としては、4)凝集させた磁性マーカーを磁気検出する工程を有する。
前記1)〜3)の各工程間には洗浄工程を入れることもできる。洗浄工程を入れることにより、未反応の標的物質や捕捉体部材を除去することによりシグナルーノイズ比を向上させることが期待できる。1)の工程における第一の捕捉体は通常、検出領域であるセンサー素子上に固定されている。また、1)及び2)の工程は同時に行うこともできる。その場合、二つの工程を同時に行うため反応時間の短縮が期待できて好ましい。また、第二の捕捉体含有部材と標的物質をあらかじめ反応させておき、第二の捕捉体含有部材と標的物質の複合体を第一の捕捉体に反応させることもできる。上記のように工程1)及び2)は、第一の捕捉体と標的物質と第二の捕捉体含有部材によってサンドイッチ状の複合体が形成される限りにおいては、作業工程の順序は特に限定されない。一方、前記サンドイッチ状の複合体を形成後に工程3)を行うことで、第二の捕捉体含有部材と標的物質との反応性、分散性を良好に保つことが期待できる。工程3)により磁気センサーで検出可能な大きさに磁性マーカーを凝集させ検出感度の向上が期待できる。
上記工程における標的物質の検出方法として例えば、センサー素子上に第一の捕捉体として、一次抗体を固定化しておく。その後、検体液を検出領域に滴下する。このとき検体液中に所望の抗原が存在するならば、一次抗体と抗原が特異的に結合する。次に前記標識材によって標識された二次抗体を添加し、一次抗体と反応している標的物質と反応し、センサー素子上に二次抗体が固定される。続いて、二次抗体に固定された標識材を核として凝集する磁性マーカーを加え、前記捕捉体部材に固定されている標識材を核として磁性マーカーを凝集させる。前記磁性マーカーは反応性、分散性を良好とするため数nm〜数100nmのサイズの粒子を使用することが好ましい。このようなサイズの磁性マーカーの場合、半導体ホール素子等の簡便な磁気センサーでは熱ノイズの影響で磁性マーカーの磁気を検出することが困難であることが知られている。
そのため、本発明の捕捉体部材と磁性マーカーとの組み合わせにより、磁気センサーで前記磁性マーカーを検出し、間接的に標的物質の有無を検出することが可能となる。それは、標的物質と反応することによりセンサー上に固定された捕捉体部材に標識される標識材を核として、半導体ホール素子等の簡便な磁気センサーで検出が可能な大きさとなるよう磁性マーカーを凝集させることができるからである。また、各工程間に洗浄操作を入れることもできる。洗浄工程を入れることにより、検体液中に含まれる夾雑物や未反応の二次抗体等を反応系から除去することが可能であるので、シグナルーノイズ比の増強に効果があり好ましい。
《検出方式》
バイオセンサーを用いた検出方式は、バイオセンサー素子の表面近傍に位置する磁性マーカーの有無、数を検知する事により、検体液中の標的物質の有無、濃度を検出する磁気検出方法であれば、如何なる方法でもよい。中でも、磁界効果を利用する方式が好ましく、特に、磁気抵抗効果素子、ホール効果素子、磁気インピーダンス素子、超電導量子干渉計素子が好適に用いることができる。
《キット》
前記センサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを備えたキットを用いることによって、前記磁性マーカーがセンサー素子上に標的物質を捕捉して固定化される捕捉体部材に含有される標識材を核として凝集することが可能となる。本キットにより、センサー素子上に凝集する磁性マーカーを磁気抵抗効果素子、ホール効果素子、磁気インピーダンス素子、超電導量子干渉計素子等の磁気センサーを用いて検出することで間接的に検体液中に含まれる標的物質の有無、濃度を測定することが可能となる。本キットは、捕捉体部材と磁性マーカーとの凝集が、(i)静電的作用で行われる場合に用いるキットと、(ii)分子認識材料によって行われる場合に用いるキット、(iii)外部刺激によって行われる場合に用いるキットに分けられる。
(i)凝集が静電的作用で行われる場合に用いるキット
本キットは、以下に記載するセンサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含む。センサー素子は、磁気センサーとして働くセンサー部位を備える部材(以下、センサー素子部材ともいう)と、標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有する。この第一の捕捉体部材はセンサー素子部材表面に固定されている。捕捉体部材は、標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、検体中において表面電荷を有する標識材とを有する。磁性マーカーとしては、標識材の表面電荷と異なる極性の電荷を有する磁性材料を含む磁性マーカー、或いは、標識材の表面電荷と異なる極性の電荷を有する材料と、磁性材料とを含む磁性マーカーが、本キットに含まれる。
(ii)凝集が分子認識材料によって行われる場合に用いるキット
本キットは、以下に記載するセンサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含む。センサー素子は、センサー素子部材と、標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有する。この第一の捕捉体はセンサー素子部材表面に固定されている。捕捉体部材は、標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、材料親和性ペプチドを少なくとも一部に含む標識材とを有する。磁性マーカーとしては、標識材に含まれる材料親和性ペプチドと親和性を有する材料と、磁性材料とを含む磁性マーカーが、本キットに含まれる。
(iii)凝集が外部刺激によって行われる場合に用いるキット
本キットは、以下に記載するセンサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含む。センサー素子は、センサー素子部材と、標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有する。この第一の捕捉体はセンサー素子部材表面に固定されている。捕捉体部材は、標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、刺激応答性ポリマーを少なくとも一部に含む標識材とを有する。磁性マーカーとしては、磁性材料と、少なくとも一部に刺激応答性ポリマーとを含む磁性マーカーが、本キットに含まれる。
以下、実施例を用いて更に詳細に本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有するバイオセンサーが得られる範囲で自由に変えることができる。
(実施例1)
本実施例は、ニワトリ卵白リゾチーム(HEL)を捕捉する一次抗体を備えたセンサー素子と、ポリアスパラギン酸によって標識されたHELを捕捉する二次抗体断片と、フェライト粒子を少なくとも一部に含む磁性マーカーを作製する。これらをセンサーとしてHELを検出する例である。尚、センサーの検出方式としては、磁気抵抗効果素子を使用する。
《検体液中で電荷を有する材料を用いた磁性マーカーの凝集を利用した検出》
(1)ポリアスパラギン酸標識の抗HEL抗体断片(single chain Fv : scFv)の作成
(1−1)融合ポリペプチドの生産工程
HyHEL10のscFvペプチド(配列番号1)とポリアスパラギン酸(列番号3)をリンカー(配列番号5)で結合した融合ポリペプチド(配列番号7)をコードする遺伝子(配列番号8)を発現するための遺伝子発現ベクターを構築する。もととなるベクターとして、pGEX−6P−1ベクター(Amersham Biosciences製)を用いる。尚、scFvペプチド(配列番号1)、ポリアスパラギン酸(配列番号3)およびリンカー(配列番号5)の遺伝子配列はそれぞれ配列番号2,4,6とする(図9参照)。
上記融合ポリペプチド(配列番号7)をコードする遺伝子(配列番号8)は、遺伝子断片を取得する際によく行われるオーバーラップPCRにより取得する。取得される増幅遺伝子断片の5’末端にはBamHI、3’末端にはEcoRIの制限酵素サイトを付加しておき、pGEX−6P−1ベクターのフレームと合うように増幅遺伝子断片を導入する。その後、DNAシーケンサーにて配列を確認する。
上記のように構築される遺伝子発現ベクターにて大腸菌Escherichia coli BL21を形質転換する。16時間インキュベーションを行った後、培養プレートからシングルコロニーをつつき取る。これを3mlの2×YT培地(トリプトン;16wt%、イーストエクストラクト;10wt%、塩化ナトリウム;5wt%)(終濃度100μg/mlのアンピシリンを含む)に植菌して、37℃で振とう培養(前培養)を行う。12時間後、その培養物の3mlを250mlの2×YT培地(終濃度100μg/mlのアンピシリンを含む)に加え、28℃で振とう培養を行う。培養液の吸光度OD600が0.8に達したところで、培養液に終濃度1mMとなるようにIPTG(イソプロピル−β―D−ガラクトピラノシド)を添加してポリペプチドの生産を誘導し、12時間培養する。
(1−2)融合ポリペプチドの精製工程
IPTG誘導した大腸菌を集菌(8,000×g,2分、4℃)し、1/10量の4℃リン酸緩衝生理食塩水((PBS)NaCl;8g、Na2HPO4;1.44g、KH2PO4;0.24g、KCl;0.2g、精製水;1000ml)に再懸濁する。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8,000×g、10分、4℃)して固形夾雑物を取り除く。誘導され発現されたGST融合ポリペプチドをグルタチオン・セファロース4B(アマシャムバイオサイエンス(株)製)で業者推奨の方法にて精製する。使用するグルタチオン・セファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行う。すなわち、グルタチオン・セファロースを同量のPBSで3回洗浄(8,000×g、1分、4℃)した後、4%ウシ血清アルブミン含有PBSを同量加えて、4℃で1時間処理する。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁する。前処理したグルタチオン・セファロース 40μlを、無細胞抽出液1mlに添加し、4℃で静かに攪拌する。前記の手順で、GST融合ポリペプチドをグルタチオン・セファロースに吸着させる。吸着後、遠心(8,000×g、1分、4℃)してグルタチオン・セファロースを回収し、400μlのPBSで3回洗浄する。その後、10mMグルタチオン40μlを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合ポリペプチドを溶出する。遠心(8,000×g、2分、4℃)して上清を回収した後、PBSに対して透析しグルタチオンを除去し、GST融合ポリペプチドを精製する。SDS−PAGEにより、GST融合ポリペプチドのバンドを確認する。
GST融合ポリペプチドをPreScissionプロテアーゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク(株)製、5U)を用いて業者推奨の方法にて消化した後、グルタチオン・セファロースに通して前記プロテアーゼとGSTとを除去後、SDS−PAGEにより42kDaのバンドの確認を行う。
(2)抗HEL抗体断片(HyHEL10 scFv)の作成
配列番号1に記載のHyHEL10のscFvペプチドをコードする遺伝子を発現するための遺伝子発現ベクターをpGEX−6P−1(Amersham Biosciences製)ベクターをもとに構築する。上記(1−1)、(1−2)に記載と同様の方法でHyHEL10のscFvペプチドを生産、精製する。
(3)抗HEL抗体断片(D1.3 scFv)の作成
配列番号9に記載のD1.3のscFvペプチドをコードする遺伝子(配列番号10)を発現するための遺伝子発現ベクターをpGEX−6P−1(Amersham Biosciences製)ベクターをもとに構築する。上記(1−1)、(1−2)に記載と同様の方法でD1.3のscFvペプチドを生産、精製する。
(4)バイオセンサー素子の作製
次に、HELを捕捉する一次抗体を有するセンサー素子を作製する。
本実施例では、磁気センサーに磁気抵抗効果素子を使用するため、前記検出領域は磁気抵抗効果素子上部表面になる。
本実施例の磁気抵抗効果素子は次のプロセスで作製される。シリコンウエハ211上にTa(30nm)/PtMn(20nm)/CoFe(2nm)/Ru(0.8nm)/CoFe(2nm)/AlOx(1.6nm)/CoFe(3nm)/Ru(5nm)/Au(5nm)からなる磁気抵抗効果膜212を成膜する(図3(a))。センサー素子215およびリファレンス素子216とする領域にレジストマスクパターン213および214を形成し、反応性イオンエッチングによりセンサー素子215およびリファレンス素子216の周りをエッチングする。センサー素子215とリファレンス素子216は同一の形状のものとする。エッチングはAlOx膜で止まるようにコントロールし、AlOx膜より下の金属膜は残し、下部電極として機能させる(図3(b))。エッチング後にSiN絶縁膜(14nm)217を成膜し、層間絶縁膜とする(図3(c))。センサー素子215およびリファレンス素子216上部の絶縁膜を、ポリッシングによって研磨し、その後レジストマスクパターン213と214を溶剤で溶かすことによって、センサー素子215およびリファレンス素子216上部を開口する(図3(d))。上部電極を形成する為に、レジストマスクパターン218を形成し、その後Au(20nm)219を成膜する(図3(e))。溶剤を用いて不要なAu膜とレジストマスクパターンをリフトオフし、上部電極を形成する(図3(f))。さらにセンサー素子上部以外の電極表面を非固定化膜で覆うために、レジストマスクパターンを形成した後にSiN(20nm)220を成膜し、リフトオフを行う(図3(g))。
センサー素子215とリファレンス素子216は電気的に並列に接続され、同じ大きさの電圧が印加されるようにする。センサー素子215に流れる電流と、リファレンス素子216に流れる電流をI/V変換器221および222によって電圧値に変換し、その電圧の差を差動アンプ223によって出力し、抗原(標的物質)の有無や数を検出する(図4参照)。
本実施例では、一つのセンサー素子によるバイオセンサーデバイスとしたが、複数のセンサー素子を配置する態様も本発明に含まれる。この場合、選択トランジスターによって順次センサー素子を切り替えることによって、各センサー素子の検出信号を取得し、多数の抗原(標的物質)あるいは多種の抗原(標的物質)を検出することも可能である。
上記の様にして作製するセンサー素子215の表面に第一の捕捉体として、HELを捕捉する一次抗体として(3)で作成するD1.3のscFvを固定化する。まず、10-カルボキシ-1-デカンチオールのエタノール溶液を検出領域に塗布する。この操作により、Au膜表面にカルボキシル基が露出される。次に、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド水溶液と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩水溶液を同様に塗布する。これらの操作により、Au膜表面にスクシンイミド基が露出することになる。スクシンイミド基とD1.3scFvのアミノ基を反応させ、第一の捕捉体としてHELを捕捉する一次抗体断片D1.3scFvを固定化することができる。尚、Au膜表面上の未反応のスクシンイミド基は、塩酸ヒドロキシルアミンを添加して脱離させてもよい。
(5)磁性マーカーの凝集実験
前記(1)で作成した融合ポリペプチドと磁性マーカー粒子(nanomag−D-spio NH2修飾、粒径50nm;コアフロント株式会社製)を用いて、以下の操作を行うことで磁性マーカーを凝集させるこができる。
1) 融合ポリペプチドをリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解する。
2) 融合ポリペプチドを含むリン酸緩衝液に磁性マーカーを加える。
上記操作を行ったあと、数分間室温でインキュベートすることにより、フェライトの凝集が確認できる。磁性マーカーの凝集は動的光散乱法やTEMによる直接観察により確認することができる。
(6)磁性マーカーの凝集対照実験
前記(2)で作成したHyHEL10のscFvと(5)で用いた磁性マーカー粒子を用いて、前記(5)と同様の実験を行うとフェライトの凝集が起こらないことが確認できる。
(7)HEL検出
上述の(1)〜(4)において作製される捕捉体部材、バイオセンサー素子、及び(5)で用いた磁性マーカーを用い、以下の操作を行うことで、HELの検出を試みることができる。
1) 抗原(標的物質)であるHELを含むリン酸緩衝液に上記センサー素子を浸す。
2) 未反応のHELをリン酸緩衝液で洗浄する。
3) 標識材を固定した捕捉体部材を含むリン酸緩衝液に工程1)及び2)が終了した上記バイオセンサー素子を浸す。
4) 未反応の捕捉体部材をリン酸緩衝液で洗浄する。
5) 磁性マーカーを加える。
6) 未反応の磁性マーカーをリン酸緩衝液で洗浄する。
上記操作によって、図2に示すように、標的物質11が一次抗体(第一の捕捉体7)、二次抗体断片(第二の捕捉体8)により捕捉され、磁性マーカー10がセンサー素子6上に固定化される。つまり、検体液中に標的物質が存在しない場合には捕捉体部材はセンサー上に保持されず、磁性マーカーはセンサー上に凝集しないので、磁性マーカーの有無を検出することによって、標的物質の検出が可能である。また、固定化された磁性マーカーの数を検出することによって、検体液中に含まれる標的物質の量を間接的に知ることも可能である。本実施例の捕捉体部材を用いて磁性マーカーの選択的な凝集を行うことにより、磁気センサーの検出感度の向上を達成することができる。
(実施例2)
《分子認識による磁性マーカーの凝集を利用した検出》
実施例1の捕捉体部材と磁性マーカーを、本実施例の捕捉体部材と、磁性マーカーとしてマグネタイトを含有するシリカ粒子(コアフロント株式会社製のnanomag-silica(粒径130nm))に替えること以外は実施例1と同様にして評価する。
(1)二酸化珪素親和性ペプチド標識の抗HEL抗体断片(scFv)の作成
配列番号11に示される二酸化珪素親和性ペプチド(遺伝子配列は配列番号12)とHyHEL10 scFvとの融合ポリペプチド(配列番号13)を実施例1と同様にして生産、精製する。前記融合ポリペプチドを示す遺伝子配列は配列番号14とする(図10参照)。
(実施例3)
《刺激応答性ポリマーによる磁性マーカーの凝集を利用した検出》
(1)刺激応答性ポリマーコートフェライト粒子の作製
(1-1)マグネタイト(10nm)の合成
FeCl3とFeCl24H2Oを蒸留水に溶解させて水溶液とした後、30分間窒素バブリングを行う。次に、この水溶液をスターラーで激しく攪拌しながら29%アンモニア水を添加することでマグネタイト1を合成する。合成したマグネタイト1は透析による精製後、凍結乾燥により粉末状態で保存する。マグネタイト1の粒子径をTEMにより評価したところ10nmサイズで粒子径分布が均一であることを確認する。
(1-2)マグネタイト表面への重合開始基導入
((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシランを無水トルエンに溶解させ、さらにその溶液に前記粉末状のマグネタイト1を添加し、4℃、攪拌条件下、超音波処理を行うことで溶液中にマグネタイト1を分散させる。この分散液をさらに室温、攪拌条件下、超音波処理しながら2時間静置することで、マグネタイト1表面に((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン由来のクロロメチル基を導入したマグネタイト2を合成する。マグネタイト2は透析による精製後、乾燥して粉末状態で保存する。
次に、N,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解させ、さらにその溶液に前記粉末状態のマグネタイト2を添加し、室温、攪拌条件下、超音波処理を行うことで溶液中にマグネタイト2を分散させる。この分散液をさらに室温、攪拌条件下、超音波処理しながら2時間静置することで、マグネタイト2表面にN,N-ジエチルジチオカルバミン酸を導入したマグネタイト3を合成する。マグネタイト3は透析による精製後、エバポレータで所定濃度に濃縮し水分散液として保存する。
(1-3)マグネタイト表面のポリマーコーティング
N-イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸を蒸留水に溶解させ、さらにその溶解液に前記マグネタイト3の水分散液を添加して重合溶液とした後、30分間の窒素バブリングを行う。次に、この重合溶液に照射波長312nm〜577nmの紫外線を照射することで光重合を行うことで、マグネタイト3表面にN-イソプロピルアクリルアミドとアクリル酸から構成される共重合体を有するマグネタイト4を合成する。マグネタイト4は透析により精製し、さらにフィルターを用いて凝集物を除去した後、エバポレータ―で所定濃度に濃縮し水分散液として保存する。動的光散乱法にてマグネタイト4の水中粒子径を評価したところ、32nmサイズでサイズ均一性に優れることを確認する。また、TEMにてマグネタイト4を評価したところ、コアにマグネタイト、シェルにN-イソプロピルアクリルアミドとアクリル酸から構成される共重合体を有するコアシェル型構造であることを確認する。
(2)刺激応答性ポリマー標識の抗HEL抗体断片(scFv)の作成
前記(1−3)で作成したマグネタイト4にN-ヒドロキシスルホスクシンイミド水溶液と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩水溶液を添加し、カルボキシ基を活性化する。その後、実施例1の(3)で作成した抗HEL抗体断片のアミノ基を反応させ、刺激応答性ポリマー標識抗HEL抗体断片を得る。
(3)磁性マーカーの凝集実験
前記(1)〜(2)で作成した刺激応答性ポリマー標識抗HEL抗体断片と刺激応答性ポリマーコートフェライト粒子を用いて、以下の操作を行うことで磁性マーカーを凝集させるこができる。
1)刺激応答性ポリマー標識抗HEL抗体断片を下限臨界温度以下である28℃のリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解する。
2)温度を28℃に維持し、前記溶液に刺激応答性ポリマーコートフェライト粒子を加える。
3)溶液温度を臨界温度以上である35度にする。
上記操作を行ったあと、数分間35℃でインキュベートすることにより、フェライトの凝集が確認できる。前記磁性マーカーの凝集は動的光散乱法やTEMによる直接観察により確認することができる。
(4)HEL検出
実施例1(4)において作成されるバイオセンサー素子、および、(1)(2)で作成される、刺激応答性ポリマーコートフェライト粒子と刺激応答性ポリマー標識抗HEL抗体断片とを用い、以下の操作を行うことで、HELの検出を試みることができる。
1) 抗原(標的物質)であるHELを含むリン酸緩衝液に上記センサー素子を浸す。
2) 未反応のHELをリン酸緩衝液で洗浄する。
3) 標識材を固定した捕捉体部材を含むリン酸緩衝液に工程1)及び2)が終了した上記バイオセンサー素子を浸す。
4) 未反応の捕捉体部材をリン酸緩衝液で洗浄する。
5) 刺激応答性ポリマーコート磁性マーカーを加える。
6) 溶液温度を35度にし、数分間インキュベートする。
7) 未反応およびセンサー上に固定されない磁性マーカーをリン酸緩衝液で洗浄する。
上記操作によって、検体液中に標的物質が存在しない場合には捕捉体部材はセンサー上に保持されず、磁性マーカーはセンサー上に凝集しないので、磁性マーカーの有無を検出することによって、標的物質の検出が可能である。また、固定化された磁性マーカーの数を検出することによって、検体液中に含まれる標的物質の量を間接的に知ることも可能である。本実施例の捕捉体部材を用いて磁性マーカーの選択的な凝集を行うことにより、磁気センサーの検出感度の向上を達成することができる。
(実施例4)
《分岐型の標識材利用》
実施例1の捕捉体部材と磁性マーカーを本実施例の捕捉体部材と、磁性マーカーとしてマグネタイトを含有するシリカ粒子(コアフロント株式会社製のnanomag-silica(粒径130nm))に替えること以外は実施例1と同様にして評価する。
(1)捕捉体部材の作成
二酸化珪素親和性ペプチド(配列番号11)を10回繰り返して融合したポリペプチド(配列番号15)を実施例1と同様にして生産、精製する。前記ポリペプチドの遺伝子配列は配列番号16に記載する。
実施例3の(1−3)で作成される磁性粒子(マグネタイト4)溶液に、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド水溶液と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩水溶液を添加し、前記磁性粒子表面に活性化スクシンイミド基を露出させる。前記スクシンイミド基と配列番号15で示される前記ポリペプチドのアミノ基を反応させ、前記磁性粒子表面に二酸化珪素親和性ポリペプチドを固定化する。その後、実施例1の(3)で作成するHyHEL10 scFvを添加し、同様に前記磁性粒子表面に固定化し、本発明の捕捉体部材を作成する(図5参照)。尚、前記磁性粒子表面上の未反応のスクシンイミド基は、塩酸ヒドロキシルアミンを添加して脱離させてもよい。
(2)(1)で作成される捕捉体部材において、磁性粒子表面に修飾される二酸化珪素親和性ペプチドと磁性マーカーを凝集させ、捕捉体部材1つに対する前記磁性マーカーの凝集数をTEMを用いて測定する。前記TEM測定によって観察される磁性マーカーの数と、磁気信号の検量線を作成し、検体中のHEL濃度を高感度かつ定量的に評価する。
(実施例5)
検出方式を実施例1の磁気抵抗効果素子からホール効果素子に替え、実施例1と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。半導体プロセスを用いて、GaAs基板上に、InSbからなるホール効果素子311を形成する。ホール効果素子311には検出電流を流すためのDC電流源312と、ホール起電力を検出するための検出手段が接続される。検出手段にはロックインアンプ313が使用される。検出時にはホール効果素子311膜面に垂直に、コイル314とDC電源315によって、磁性マーカーの磁化が飽和するに十分な大きさのDC磁界が印加される。これと同時にコイル316とAC電源317によって、ホール効果素子311の膜面内方向に比較的小さな大きさのAC磁界が印加される。そうすることによって、磁性マーカーの磁化は大きさを保ったまま左右に振動する。磁化が左右に振動することによって、磁性マーカーから生じる浮遊磁界の膜面垂直方向成分はAC磁界の2倍の周期で振動することになる。したがって、ホール効果素子311の電圧から、ロックインアンプ313によってAC磁界の2倍の周期の成分だけ取り出すことによって、磁性マーカーの有無や数に伴った信号を検出することができる(図6参照)。
(実施例6)
検出方式を実施例2の磁気抵抗効果素子からホール効果素子に替え、実施例2と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例7)
検出方式を実施例3の磁気抵抗効果素子からホール効果素子に替え、実施例3と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例8)
検出方式を実施例4の磁気抵抗効果素子からホール効果素子に替え、実施例4と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例9)
検出方式を実施例1の磁気抵抗効果素子から超電導量子干渉計素子に替え、磁性マーカーとしてコアフロント株式会社製のNH2で表面を修飾したmicromer-M(粒径2-12nm)を用いること以外は、実施例1と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例10)
検出方式を実施例2の磁気抵抗効果素子から超電導量子干渉計素子に替え、実施例2と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例11)
検出方式を実施例3の磁気抵抗効果素子から超電導量子干渉計素子に替え、実施例3と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例12)
検出方式を実施例4の磁気抵抗効果素子から超電導量子干渉計素子に替え、実施例4と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例13)
検出方式を実施例1の磁気抵抗効果素子から磁気インピーダンス素子に替え、実施例1と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
絶縁体からなる基体411中に図7に示す様に埋め込まれた、アモルファスCoFeSiBからなる磁気インピーダンス素子412を形成する。磁性マーカーは基体411上には固定されず、基体411に覆われていない磁気インピーダンス素子412の上部にのみ固定される。磁気インピーダンス素子長手方向に対して垂直に磁界を印加するように電源413、切り替えスイッチ414、コイル415および416を有する。
図8に示すように磁気インピーダンス素子412には10MHzの高周波電流を流す為のAC電源417と、固定抵抗器418が直列に接続されている。固定抵抗器418にはその電圧を測定する為の電圧計419が接続されている。
磁性マーカーの検出はコイル415と416に交互に同じ大きさの電流を流し、磁気インピーダンス素子に印加する磁界の方向を変化させることで行う。磁界の印加方向が変化すると、磁気インピーダンス素子表面付近で、磁性マーカーから発生する浮遊磁界の大きさが変化する。この為に、磁気インピーダンス素子のインピーダンスが変化する。この変化量によって磁気マーカーの有無や数を検出することが可能である。
(実施例14)
検出方式を実施例2の磁気抵抗効果素子から磁気インピーダンス素子に替え、実施例2と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例15)
検出方式を実施例3の磁気抵抗効果素子から磁気インピーダンス素子に替え、実施例3と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例16)
検出方式を実施例4の磁気抵抗効果素子から磁気インピーダンス素子に替え、実施例4と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を高感度に検出することができる。
(実施例17)
《磁性マーカーの凝集数制御による定量性向上のための標識》
実施例1の捕捉体部材と磁性マーカーを本実施例の捕捉体部材と、磁性マーカーとしてビオチン修飾磁性粒子(コアフロント株式会社製 nanomag-D-silica (粒径250nm)に替えること以外は実施例1と同様にして評価する。
(1)捕捉体部材の作成
HyHEL10のscFvペプチド(配列番号1)とストレプトアビジン(アミノ酸配列番号17、遺伝子配列番号18)をリンカー(配列番号5)で結合した融合ポリペプチド(配列番号19)を実施例1と同様にして生産、精製する。前記ポリペプチドの遺伝子配列は配列番号20に記載する(図11参照)。
(2)検出実験
センサー素子上に捕捉される標的物質に結合した二次抗体断片に凝集する磁性マーカーは、前記二次抗体断片1分子に対して1個となる。その結果、標的物質の濃度と磁性マーカーのセンサー素子上の固定数が相関し、定量的な評価ができる。
(実施例18)
検出方式を実施例17の磁気抵抗効果素子からホール効果素子に替え、実施例17と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を定量的に検出することができる。
(実施例19)
検出方式を実施例17の磁気抵抗効果素子から超電導量子干渉計素子に替え、実施例17と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を定量的に検出することができる。
(実施例20)
検出方式を実施例17の磁気抵抗効果素子から磁気インピーダンス素子に替え、実施例17と同様にして評価する。本実施例のバイオセンサー素子における磁性マーカーの凝集を用いて、標的物質を定量的に検出することができる。
従来の磁性マーカーを用いた固相分析法の一例の模式図である。 本発明のバイオセンサーにおける素子の一例の模式図である。 本発明の一実施例に用いる磁気抵抗効果素子の作製プロセスを説明する模式図である。 本発明の一実施例に用いる検出回路の模式図である。 本発明の一実施例に用いる捕捉体部材の模式図である。 本発明の一実施例に用いるホール効果素子をセンサー素子としたバイオセンサーの検出回路の模式図である。 本発明の一実施例に用いる磁気インピーダンス素子をセンサー素子としたバイオセンサーの構成を説明する模式図である。 本発明の一実施例に用いる磁気インピーダンス素子をセンサー素子としたバイオセンサーの検出回路の模式図である。 本発明の配列番号1から8までの配列を示す図である。 本発明の配列番号9から14までの配列を示す図である。 本発明の配列番号15から20までの配列を示す図である。
符号の説明
1 基体
2 磁性マーカー
3 第一の捕捉体
4 第二の捕捉体
5 標的物質
6 センサー素子
7 第一の捕捉体
8 第二の捕捉体部材
9 標識材
10 磁性マーカー
11 標的物質
12 捕捉体
13 材料親和性ペプチド
14 微粒子
15 標識材
211 シリコン基板
212 磁気抵抗効果素子
213 レジストマスクパターン
214 レジストマスクパターン
215 センサー素子(磁気抵抗効果素子)
216 リファレンス素子(磁気抵抗効果素子)
217 SiN絶縁膜(層間絶縁膜)
218 レジストマスクパターン
219 Au膜
220 SiN膜(非固定化膜)
221 I/V変換器
222 I/V変換器
223 差動アンプ
224 DC電源
311 ホール効果素子
312 DC電流源
313 ロックインアンプ
314 コイル
315 DC電源
316 コイル
317 AC電源
411 基体
412 磁気インピーダンス素子
413 電源
414 切り替えスイッチ
415 コイル
416 コイル
417 AC電源
418 固定抵抗器
419 電圧計

Claims (15)

  1. 磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用される捕捉体部材であって、
    前記標的物質を捕捉するための捕捉体と、
    前記磁性マーカーが凝集するための核となる標識材とを有し、
    前記捕捉体が前記標識材によって標識されることを特徴とする捕捉体部材。
  2. 前記標識材が検体液中において表面電荷を有することを特徴とする請求項1に記載の捕捉体部材。
  3. 前記標識材が有する表面電荷が、前記磁性マーカーと異なる極性の電荷を有することを特徴とする請求項2に記載の捕捉体部材。
  4. 前記標識材が刺激応答性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の捕捉体部材。
  5. 前記磁性マーカーとして、刺激応答性ポリマーを少なくとも一部に含むものを検知することを特徴とする請求項4に記載の捕捉体部材。
  6. 前記標識材が材料親和性ペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の捕捉体部材。
  7. 前記材料親和性ペプチドが、前記磁性マーカーの少なくとも一部に含まれる材料に親和性を有することを特徴とする請求項6に記載の捕捉体部材。
  8. 磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出するための方法であって、
    検体液中の標的物質を捕捉する第一の捕捉体と前記標的物質を反応させる工程と、
    前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体を有する捕捉体部材と、前記第一の捕捉体と反応した前記標的物質とを反応させる工程と、
    前記第二の捕捉体を有する捕捉体部材の少なくとも一部に標識された標識材を核として磁性マーカーを凝集させる工程と、
    を含む検出方法。
  9. 前記磁性マーカーを凝集させる工程が静電的相互作用によって起こることを特徴とする請求項8に記載の検出方法。
  10. 前記磁性マーカーを凝集させる工程が分子認識によって起こることを特徴とする請求項8に記載の検出方法。
  11. 前記磁性マーカーを凝集させる工程が外部刺激によって起こることを特徴とする請求項8に記載の検出方法。
  12. 前記各工程間の少なくともいずれかに溶液により洗浄する工程を更に有することを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の検出方法。
  13. 磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用するキットであって、
    センサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含み、
    前記センサー素子はセンサー素子部材と、該部材表面に固定された、前記標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有し、
    前記捕捉体部材は前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、検体液中において表面電荷を有する標識材とを有し、
    前記磁性マーカーは前記標識材と異なる極性の電荷を有する磁性材料を含む、或いは、磁性材料と前記標識材と異なる極性の電荷を有する材料とを含む、
    ことを特徴とするキット。
  14. 磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用するキットであって、
    センサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含み、
    前記センサー素子はセンサー素子部材と、該部材表面に固定された、前記標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有し、
    前記捕捉体部材は前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、材料親和性ペプチドを少なくとも一部に含む標識材とを有し、
    前記磁性マーカーは磁性材料と、前記材料親和性ペプチドと親和性を有する材料とを含む、
    ことを特徴とするキット。
  15. 磁性マーカーの有無もしくは数を検知する事により検体液中の標的物質の有無もしくは濃度を検出する磁気センサーで使用するキットであって、
    センサー素子と捕捉体部材と磁性マーカーとを含み、
    前記センサー素子はセンサー素子部材と、該部材表面に固定された、前記標的物質を捕捉する第一の捕捉体とを有し、
    前記捕捉体部材は前記標的物質を捕捉する第二の捕捉体と、刺激応答性ポリマーを少なくとも一部に含む標識材とを有し、
    前記磁性マーカーは磁性材料と、前記刺激応答性ポリマーとを含む、
    ことを特徴とするキット。
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