JP2013122395A - バイオ分析用基板および反応容器 - Google Patents

バイオ分析用基板および反応容器 Download PDF

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Abstract

【課題】核酸断片や核酸断片を担持する微粒子を高密度に固定可能な表面特性を有する生体固定膜を基板表面に有するバイオ分析用基板および該基板が容器の一部を構成するように組み込まれた操作性に優れる反応容器を提供する。
【解決手段】基体と、その表面に形成された生体固定膜とを具備し、核酸断片を含有する液状組成物を用いて前記生体固定膜表面に前記核酸断片を固定し、前記核酸断片に結合する蛍光体の発光を利用して分析を行うためのバイオ分析用基板であって、前記生体固定膜は、前記液状組成物のpHを超える等電点を有する無機化合物を主体とする最表層を有することを特徴とするバイオ分析用基板。
【選択図】図2

Description

本発明はバイオ分析用基板および反応容器に関する。
近年、核酸の塩基配列を決定するシーケンシングの技術が開発され利用されるようになった。この技術によって、医療現場において個人レベルのゲノム配列解読がルーチン・ワークとなれば、例えば、患者と健常者のゲノムの比較が可能となり、結果としてゲノム情報の価値の向上が期待される。このような基礎的データの取得は将来のテーラーメード医療への発展に大きく寄与することが予想されるが、そのためには、配列解読に係るコストの低減と配列解読の高速化が必要不可欠とされている。
ここで、シーケンシング技術においては、ガラス等の透明基材上に核酸断片を直接または核酸断片を担持させた微粒子を吸着等により固定し、さらにこれを蛍光体で標識したものに励起光を照射し、その発光を用いて解析を行う蛍光検出の技術が広く用いられている。上記配列解読に係るコストの低減と配列解読の高速化のためには、透明基材上に、個々の核酸断片からの発光の検出が可能な範囲で、できるだけ高密度にかつ密着性よく核酸断片を固定する技術が求められており、これに係る技術開発が進められている。
例えば、特許文献1には基材上に無機粒子を含む多孔質層を設けることで核酸断片を高密度かつ高精度に固定することを可能としたバイオチップ用基板の技術が記載されている。また、核酸断片を固定する生体固定膜とともに基板上に反射特性を有する誘電体多層膜を設ける技術も開発されている(例えば、特許文献2〜4を参照)。
しかしながら、これらのいずれの技術においても、配列解読の高速化に十分寄与できるレベルまで核酸断片を高密度に固定化できていないのが現状である。
国際公開第2004/109281号パンフレット 特開2006−90784号公報 特開2006−98213号公報 特開2006−184023号公報
本発明は、核酸断片や核酸断片を担持する微粒子を高密度に固定可能な表面特性を有する生体固定膜を基板表面に有するバイオ分析用基板および該基板が容器の一部を構成するように組み込まれた操作性に優れる反応容器の提供を目的とする。
本発明のバイオ分析用基板は、基体と、その表面に形成された生体固定膜とを具備し、核酸断片を含有する液状組成物を用いて前記生体固定膜表面に前記核酸断片を固定し、前記核酸断片に結合する蛍光体の発光を利用して分析を行うためのバイオ分析用基板であって、前記生体固定膜は、前記液状組成物のpHを超える等電点を有する無機化合物を主体とする最表層を有することを特徴とする。
本発明の反応容器は、流体を給排するための複数の穴を有する給排基板と、上記本発明のバイオ分析用基板と、前記2枚の基板の間隔を一定に保つためのスペーサであって、前記給排基板の裏側主面、前記バイオ分析用基板の前記生体固定膜表面、および前記スペーサの側面で囲まれた流体の保持が可能な反応セルを形成するように、前記2枚の基板に挟持されてなるスペーサと、を有することを特徴とする。
本発明によれば、核酸断片や核酸断片を担持する微粒子を高密度に固定可能な表面特性を有する生体固定膜を基板表面に有するバイオ分析用基板および該基板が容器の一部を構成するように組み込まれた操作性に優れる反応容器を提供可能である。
本発明のバイオ分析用基板の実施形態の一例を示す断面図およびその使用時における表面付近拡大図である。 本発明のバイオ分析用基板の実施形態の別の一例を示す断面図およびその使用時における表面付近拡大図である。 本発明の反応容器の実施形態の一例を示す外観図、構成部材の展開図および断面図である。 図3に示す本発明の反応容器の実施形態の一例を用いて蛍光検出を行う装置の一例を示す概要図である。 本発明の反応容器の実施形態の別の一例を示す平面図および断面図である。 本発明のバイオ分析用基板用として実施例で設計した生体固定膜の分光反射率[%]を示すグラフである。 実施例および比較例で作製した無機化合物層における蛍光ラベル付き核酸断片の吸着性試験結果を示す写真である。
以下に、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
[バイオ分析用基板]
図1は、本発明のバイオ分析用基板の実施形態の一例を示す断面図(a)およびその使用時における表面付近拡大図(b)である。
本実施形態におけるバイオ分析用基板10Aは、図1(a)の断面図に示す通り、基体1と、その表面に形成された生体固定膜2とを具備する。バイオ分析用基板10Aを用いて分析を行う際には、核酸断片を含有する液状組成物を用いて、図1(b)に示すように、まず、生体固定膜2の表面に核酸断片24を固定し、次いで、その核酸断片24に結合する蛍光体25に励起光を照射して得られる発光を利用して分析を行う。
核酸断片24への蛍光体25の結合は、通常、蛍光体25で標識されたヌクレオチドを核酸断片24へ相補的に結合(ハイブリダイゼーション)することで行われる。以下、核酸断片24に結合する蛍光体25とは、特に断りのない限り、核酸断片24にヌクレオチド等を介して結合する蛍光体25のことをいう。この結合は、生体固定膜2の表面に核酸断片24を固定する前に液状組成物中で行われてもよいし、固定後、バイオ分析用基板10A上で行われてもよい。バイオ分析用基板10Aが有する生体固定膜2は、核酸断片24を高密度に固定するために上記核酸断片を含有する液状組成物のpHを超える等電点を有する無機化合物を主体とする層で構成されている。
本発明のバイオ分析用基板においては、このような等電点特性を有する無機化合物を主体とする層を生体固定膜の少なくとも最表層として配置することで核酸断片を高密度に固定可能とし、また、これにより、一度に多量の核酸断片を分析することを可能とした。
なお、本実施形態のバイオ分析用基板10Aにおいては、生体固定膜2を単層で構成していることから、生体固定膜2自体が上記等電点特性を有する無機化合物層となる。本実施形態にバイオ分析用基板10Aにおける各構成部材について以下に説明する。
<基体>
基体1は、核酸断片24に結合する蛍光体25に照射される励起光の照射の方向により適宜材質が選択される。通常、蛍光検出装置は(1)バイオ分析用基板の生体固定膜2側に設置されてバイオ分析用基板上に照射した励起光による発光体の発光を受け取り分析するか、(2)バイオ分析用基板の基体1側に設置されてバイオ分析用基板を介して照射した励起光による発光体の発光を、バイオ分析用基板を介して受け取り分析するかのいずれかである。(1)の場合、基体1は透過性でない材質で構成される。あるいは、後述の生体固定膜2について基体1側に反射層を設けた構成とすれば、基体1は透過性に関係なく材質を選択できる。
すなわち(1)の場合の基体1としては、表面を鏡面状に平坦化が可能であるとともに、生体物質の処理に関わる耐薬品性や耐熱耐湿性が満たされるならば特に制限されない。具体的には、ガラスや金属、セラミックス等の材質が挙げられる。
(2)の場合、基体1には上記(1)の基体1が有する性質の他に透明性が要求される。このような透明基体としては、蛍光検出に通常用いられる波長の光を透過する性質を有する透明性の基体であれば特に制限されず、各種透明ガラス、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラスなどを使用できる。さらに各種透明樹脂、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂等のアクリル樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等を使用できる。
基体1の片側の主面には、以下の生体固定膜2が形成される。生体固定膜形成時における熱処理等を考慮すれば、基体1を構成する材料としては、ガラス、金属、セラミックスが好ましく、透明基体としてはガラスが好ましい。
また、用いる基体の厚さは特に制限されない。通常、蛍光検出に用いられる基体の厚さと同様とできる。(2)の場合、具体的には、0.05〜2mm程度の厚さの透明基体が好ましく用いられる。基体の大きさについても特に制限されない。これを用いて蛍光検出を行う各種装置に合わせて適宜調整される。
<生体固定膜>
本実施形態のバイオ分析用基板において生体固定膜2は、その表面に核酸断片を固定する際に用いる核酸断片を含有する液状組成物のpHを超える等電点を有する無機化合物(以下、「高−等電点無機化合物」ともいう。)を主体とする層(以下、「高−等電点層」ともいう)を有する。
生体固定膜2は図1の10Aのように単層でもよいし、必要に応じて、高−等電点層の他に各種機能層を有してもよい。その場合、高−等電点層は必ず生体固定膜2の最表層として形成される。
ここで、上記高−等電点層の表面に核酸断片を固定する際に用いる核酸断片を含有する液状組成物としては、通常、pH6〜8に調整された各種緩衝液、例えば、TEバッファ、Trisバッファ、HEPESバッファ等に核酸断片が所定の濃度で溶解した液状組成物等が用いられる。液状組成物のpHは、含有する核酸断片の種類や濃度、核酸断片に結合させる蛍光体の種類や結合方法、核酸断片に対する分析目的等により上記範囲内で適宜調整されるものである。本発明においては、このようにして選択される液状組成物のpHに応じて、そのpHより等電点の高い無機化合物を選択し高−等電点層の主たる構成材料とする。
高−等電点無機化合物としては、上記観点から等電点が6.0を超える無機化合物が好ましく、等電点が6.5を超える無機化合物がより好ましく、等電点が7を超える無機化合物が特に好ましい。
このような高−等電点無機化合物としては、アルミニウム、イットリウム、亜鉛、ニッケルもしくはマグネシウムの酸化物または水酸化物等が挙げられ、具体的には、酸化アルミニウム(等電点10.0)、水酸化アルミニウム(等電点8.3)、水酸化イットリウム(等電点9.0)、酸化亜鉛(等電点9.0)、水酸化亜鉛(等電点10.0)、酸化ニッケル(等電点10.0)、酸化マグネシウム(等電点12.0)等が挙げられる。これらのうちでも、上記核酸断片を含有する液状組成物のpHの上限より高い等電点を有する点から、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化マグネシウム等が好ましく、酸化アルミニウムが特に好ましい。これらの無機化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、高−等電点層は高−等電点無機化合物のみで構成されることが好ましいが、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲、具体的には、高−等電点無機化合物100質量部に対して80質量部以下の割合で、バインダ成分等の有機物を含んでいてもよい。
核酸断片を含有する液状組成物中で核酸断片は分子鎖のリン酸由来部分が負に帯電している。生体固定膜の最表層を該液状組成物のpHより高い等電点の無機化合物で主として構成することにより、核酸断片を含有する液状組成物をバイオ分析用基板の生体固定膜上に供給した際に、最表層の表面は正に帯電し、該表面への核酸断片の高密度な固定が可能となる。
基体1の主面に、高−等電点無機化合物を主体とする高−等電点層(生体固定膜)2を形成する方法としては、無機化合物の膜を基体上に形成する際に用いられる従来公知の方法が特に制限なく使用できる。高−等電点無機化合物をバインダ成分や溶媒を含む組成物として湿式塗布し乾燥、必要に応じて硬化させる方法や、高−等電点無機化合物を純度よく成膜できる真空成膜法が挙げられる。本発明においては真空成膜法が好ましく用いられる。
真空成膜法として、具体的には、スパッタ法、蒸着法、イオンアシスト蒸着法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、p−CVD(Plasma−CVD)法などを使用できる。
高−等電点層の厚さは、層としての形状が維持できる厚さであって、上記(1)の方法や(2)の方法において、核酸断片の蛍光分析に用いる励起光や蛍光の反射や透過を阻害しない厚さであれば特に制限されない。具体的には、高−等電点層が単層で生体固定膜2を構成する場合、1〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。
このようにして基体1上に、生体固定膜2となる高−等電点層を形成することで、本発明の実施形態のバイオ分析用基板10Aが得られる。
上記実施形態のバイオ分析用基板10Aにおいては、核酸断片24を単独で用いて生体固定膜2表面に固定した例を説明したが、核酸断片は核酸種別の操作性等の点から微粒子に担持された形で用いられることもある。本発明のバイオ分析用基板は、このように核酸断片が微粒子に担持されたものを用いた蛍光分析にも適用可能である。
核酸断片を担持する微粒子を用いる場合は、例えば、核酸断片の複数個が微粒子に担持された形で液状組成物に含有され、微粒子が担持する核酸断片の一部が上記生体固定膜表面に固定され、別の一部が蛍光体と結合するようにして用いられる。微粒子が担持する核酸断片の一部への蛍光体の結合、具体的には、蛍光体で標識されたヌクレオチドの核酸断片へ相補的な結合(ハイブリダイゼーション)は、生体固定膜の表面に、担持する核酸断片の一部を介して微粒子が固定される前に、液状組成物中で行われてもよいし、固定後、バイオ分析用基板上で行われてもよい。
なお、この場合の液状組成物は、上記核酸断片を含有する液状組成物において核酸断片のかわりに核酸断片を担持した微粒子を含有する以外は、同様に調製された液状組成物とできる。
核酸断片の担持に用いる微粒子の大きさは、蛍光分析に用いる光学系の様式が全反射照明によるか、落射照明によるか等で異なるが、平均一次粒子径で概ね100nm〜2μm程度が好ましい大きさとされる。また、微粒子を構成する材料としては、核酸断片を担持可能なさまざまな無機または有機材料、例えば、ガラス、シリカ、ジルコニア、架橋ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、二酸化チタン、ラテックス、ポリスチレンなどが挙げられる。好ましくはガラスが用いられる。各材質からなる微粒子は、核酸断片との結合を確保するために、必要に応じてその表面を修飾や処理して使用される。
上にも説明した通り、通常、蛍光検出装置は(1)バイオ分析用基板の生体固定膜側に設置されるか、(2)バイオ分析用基板の基体側に設置される。それぞれの場合について、好適に適用できるように、本発明のバイオ分析用基板は基体を上記のように選択するが、生体固定膜についても、必要に応じて高−等電点層の他に、それぞれの場合に応じて各種機能層を基体側に設けてもよい。
例えば、蛍光検出装置がバイオ分析用基板の基体側に設置される場合には、基体が透明基体であり、生体固定膜が上記高−等電点層である最表層に加えて該最表層の透明基体側に屈折率の異なる2種の無機物層が交互に積層された多層膜を有し、前記透明基体側から照射される前記蛍光体を蛍光発光させる励起光および該励起光による前記蛍光体の発光を、蛍光検出を可能とする透過率で透過する光学特性を有するバイオ分析用基板が好ましい。
以下、このような蛍光検出装置がバイオ分析用基板の基体側に設置される場合に好ましく用いられるバイオ分析用基板の実施形態の一例について、図2を参照しながら説明する。図2は、バイオ分析用基板10Bの断面図(a)、その使用時における表面付近拡大図(b)を示す。なお、本実施形態のバイオ分析用基板の使用時における表面付近拡大図、図2(b)は、核酸断片として、核酸断片24を担持した微粒子23を用いた場合の表面付近拡大図である。
本実施形態のバイオ分析用基板10Bは、透明基体1と、その表面に形成された生体固定膜2とを具備する。透明基体1は上記バイオ分析用基板10Aにおいて、基体として透明基体を用いる場合の透明基体と同様とできる。生体固定膜2は、透明基体1側から順に屈折率の異なる2種の無機物層が交互に積層された多層膜21と、上記バイオ分析用基板10Aが有するのと同様な高−等電点無機化合物を主体とする最表層(高−等電点層)22を有する。以下、多層膜21を構成する2種の無機物層のうち、屈折率が高い材料で構成された無機物層を高屈折率層、これより低い屈折率の材料で構成された無機物層を低屈折率層という。
バイオ分析用基板10Bを用いて分析を行う際には、核酸断片を担持した微粒子を含有する液状組成物を用いて、図2(b)に示すように、まず、生体固定膜2の最表層(高−等電点層)22の表面に、微粒子に担持された核酸断片のうちの一部24aが固定されることにより微粒子23が固定される。次いで、その微粒子23が担持する別の核酸断片24bにヌクレオチドを介して結合する蛍光体25に、透明基体1側から励起光を照射して得られる発光を透明基体1側から検出して分析を行う。
ここで、生体固定膜2の最表層(高−等電点層)22は、上記バイオ分析用基板10Aが有する高−等電点層と同様の高−等電点無機化合物を主体とする層で構成され、バイオ分析用基板10Aが有する高−等電点層と同様に機能し、核酸断片を担持した微粒子を高密度に固定できる層である。
さらに、バイオ分析用基板10Bにおいて、透明基体1側から多層膜21、最表層(高−等電点層)22の順に積層されてなる生体固定膜2は、上記透明基体1側から照射される核酸断片を標識する蛍光体を蛍光発光させる励起光および該励起光による蛍光体の発光を、蛍光検出を可能とする透過率で透過する光学特性を有するように設計される。生体固定膜2における上記励起光および発光に対する透過性能は、これらの光の反射率を1%以下として透過する透過性能が好ましく、反射率0.5%以下がより好ましい。
生体固定膜2の光学特性に係り、透過が必要とされる光の波長域は、核酸断片の標識に用いられる蛍光体を蛍光発光させる励起光および該励起光による蛍光体の発光の波長域である。核酸断片を標識するために通常用いられる蛍光体を用いた分析を可能とするために、生体固定膜2には、これらの蛍光体を蛍光発光させるための励起光の波長領域:例えば、400〜780nm、および得られる蛍光発光の波長領域:例えば420〜800nmにおいて上記の光透過性が求められる。
蛍光検出においては、多くの場合、4種類の塩基をそれぞれ有するヌクレオチドにそれぞれ対応した4種類の蛍光体を結合した核酸断片が用いられる。この場合、4種の蛍光体はそれぞれが独立して検出可能なように、励起波長および発光波長が異なる。例えば、4種類の蛍光体として、一般的に用いられる、6−FAM、Cy3、テキサスレッド、Cy5を用いた場合には、最適励起光の波長は、順に495nm、512nm、590nm、650nmであり、蛍光発光のピーク波長はそれぞれ、約520nm、約570nm、約610nm、約670nmである。生体固定膜2は、このような少なくとも4種の蛍光体に対応する励起光波長および発光波長に対応する光透過性を有することが好ましく、よって上記に示す広範囲の波長領域における光透過性を有することが求められている。
生体固定膜2において、上記波長の光に対する反射率および透過率等の光学特性を蛍光分析が可能な範囲、好ましくは反射率を1%以下の範囲に調整する方法については、多層膜21の各層を構成する材料等と合わせて以下に説明する。なお、最表層(高−等電点層)22を主として構成する高−等電点無機化合物およびその形成方法については、上記バイオ分析用基板10Aにおける最表層(高−等電点層)22と同様とできる。ただし、最表層(高−等電点層)22の膜厚については、以下の方法で多層膜21と併せて調整される。さらに、用いられる高−等電点無機化合物の種類ついても、上記光学特性を達成する上で好ましい屈折率のものが選択される。具体的には、高−等電点無機化合物としては、上記各種の高−等電点無機化合物のうちでも、550nmにおける屈折率が1.63である酸化アルミニウムが好ましい。
高屈折率層を構成する高屈折率材料としては、波長400〜800nmにおける屈折率が、これと組合わせて用いられる低屈折率材料に比べて高い材料であれば特に制限されない。具体的には、550nmの波長の光に対する屈折率が1.6を超える材料が好ましい。より具体的には、Ta(2.16)、TiO(2.40)、Nb(2.33)、ZrO(2.03)などが挙げられる。これらのうちでも、本発明においては、成膜性と屈折率等をその再現性、安定性を含め総合的に判断して、Ta、ZrO、等が好ましく用いられる。なお、化合物の後ろの括弧内の数字は波長550nmの光に対する屈折率を示す。以下、低屈折率材料についても同様に化合物の後ろの括弧内の数字は波長550nmの光に対する屈折率を示す。
低屈折率層を構成する低屈折率材料としては、波長400〜800nmの光における屈折率が、これと組合わせて用いられる高屈折率材料に比べて低い材料であれば特に制限されない。具体的には、550nmの波長の光に対する屈折率が1.55未満の材料が好ましい。より具体的には、SiO(1.45)、MgF(1.38)などが挙げられる。これらのうちでも、本発明においては、SiOが成膜性における再現性、安定性、経済性などの点で好ましい。
ここで、生体固定膜2については、その表面に固定される核酸断片の蛍光検出の感度を上げる観点から、多層膜の層数や多層膜全体としての膜厚を少なくまたは小さく設計することが好ましく、そのために高屈折率材料と低屈折率材料における屈折率の差は、波長550nmの光に対する屈折率の差で、0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。
透明基体1上に形成される多層膜21の具体的な層数や膜厚については、上記最表層(高−等電点層)22と合わせて、励起光領域、および蛍光発光領域において光を蛍光分析が可能な範囲で透過する、好ましくは反射率が1%以下となる範囲で透過するように、高屈折率および低屈折率を有する2種の無機物層の屈折率、層数および各層の膜厚、ならびに最表層の屈折率、層の厚さが従来の多層膜構造の反射防止膜の設計手法を用いて設定される。なお、設定に従い各層の材料を選択すれば、これを用いて各層の厚さを調整し積層する方法は確立されているので、多層膜構造の反射防止膜として、多層膜21と上記最表層(高−等電点層)22からなる生体固定膜2を設計通りに製造することは容易である。バイオ分析用基板10Bにおいて、生体固定膜2は、最表層(高−等電点層)22が核酸断片を高密度に固定する機能を有しながら、膜全体として多層膜構造の反射防止膜の機能を有する構成となっている。
なお、生体固定膜2における上記高屈折率層および低屈折率層の層数およびこれら各層と最表層(高−等電点層)22の膜厚の設計においては、透明基体1に接する層は高屈折率層であっても低屈折率層であってもよいが、その層から順に高屈折率層と低屈折率層が交互に積層され、最後に最表層(高−等電点層)22が積層される層・膜配置となるように設計される。
ただし、透明基体1として石英ガラスを用い、低屈折率材料としてSiOを用いる場合には、透明基体1に接する層は高屈折率層である。
多層膜21を構成する高屈折率層および低屈折率層の成膜方法としては、従来公知の方法が用いられる。具体的には、スパッタ法、蒸着法、イオンアシスト蒸着法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、p−CVD(Plasma−CVD)法などを使用できる。
このようにして所望の光学特性を有するように設計された多層膜構造の反射防止膜として機能する生体固定膜2を、透明基体1上に、その設計に従い、多層膜21を形成しその表面に最表層(高−等電点層)22を積層することにより、作製して、本発明の実施形態のバイオ分析用基板10Bが得られる。
本発明のバイオ分析用基板はさらに蛍光検出を高精度、高効率に行うための各種機能層を有してもよい。このような機能層として、例えば、本発明の実施形態のバイオ分析用基板10Bにおいて、透明基体1の生体固定膜2を有しない主面に配設される反射防止膜
等が挙げられる。
バイオ分析用基板10Bは、例えば、図2(b)に示すようにして核酸断片の蛍光検出に使用される。図2(b)では、バイオ分析用基板10Bの生体固定膜2の最表層(高−等電点層)22の表面に、増幅された核酸断片24を担持した微粒子23が一部の核酸断片24aを介して固定されている。一部の核酸断片24bには蛍光体25で標識されたヌクレオチドが相補的に結合(ハイブリダイゼーション)している。これを蛍光測定装置の所定位置にセットし、透明基体1側から蛍光体25を蛍光発光させる励起光を照射すると、励起光がまず微粒子23に照射され、上記ヌクレオチドの相補的な結合に伴って微粒子23上に取り込まれた蛍光体25が励起され、蛍光発光する。その蛍光体25の発光を透明基体1側から検出することにより核酸断片24bの配列の解析が行われる。
また、バイオ分析用基板10Bが有する上記多層膜21と最表層(高−等電点層)22とで構成される生体固定膜2は、透明基体1側から照射される励起光を蛍光検出が可能なように透過性をもって、好ましくは反射率1%以内で透過できるように、設計されている。これにより、微粒子23が担持する核酸断片24bに結合した蛍光体25に十分量の励起光が到達し蛍光体を励起し、蛍光発光させることができる。また、生体固定膜2は、生体固定膜2上で等方的に発光した蛍光を最表層(高−等電点層)22側から透明基体1側に、蛍光検出が可能なように透過性をもって、好ましくは反射率1%以内で透過できるように、設計されている。これにより、得られた発光は蛍光検出装置で十分に蛍光検出が可能となる。
このようにしてバイオ分析用基板を単体でも使用できるが、バイオ分析用基板を以下のように反応容器に組み込んで、本発明の反応容器として使用することが、蛍光検出の操作の簡便化や、外部からのコンタミネーションを防止できる等の点から好ましい。
[反応容器]
図3は、本発明の反応容器の実施形態の一例を示す外観図(a)、構成部材の展開図(b)および断面図(c)である。図4は、図3に示す本発明の実施形態の一例である反応容器30を用いて蛍光検出を行う装置の一例を示す概要図である。ここで、図3に示す本発明の反応容器の実施形態の一例に用いられたバイオ分析用基板は、その基体側から励起光が照射され、蛍光検出も基体側において行われる態様のバイオ分析用基板であり、したがって、図4の装置においても、反応容器30はその方向から励起光が照射されるように設置されているが、本発明の反応容器はこれに限定されるものではない。本発明の反応容器においては、使用するバイオ分析用基板の態様によっては、その生体固定膜側から励起光が照射され、蛍光検出も生体固定膜側において行われる態様も可能である。
図3に示す反応容器30は、流体を給排するための複数の穴13a、13bを有する給排基板12と、上記本発明の実施形態のバイオ分析用基板10Bの変形例であるバイオ分析用基板10Cと、前記2枚の基板の間隔を一定に保つためにこれらの基板に挟持されてなるスペーサ11を有する。
バイオ分析用基板10Cは、図2に示すバイオ分析用基板10Bと同様に透明基体1の片側主面に多層膜21と最表層(高−等電点層)22からなる生体固定膜2を有し、もう一方の主面に反射防止膜3を有するバイオ分析用基板10Cである。反射防止膜としては、通常、蛍光検出に用いられる反射防止膜が特に制限なく使用可能である。例えば、MgFからなる光学膜厚75〜200nm程度の単層膜が用いられる。図3におけるバイオ分析用基板10Cは、反射防止膜3以外の構成は、上に説明した図2に示すバイオ分析用基板10Bと同様とできる。
反応容器30において、給排基板12、バイオ分析用基板10Cおよびスペーサ11は、前記給排基板12の裏側主面と、前記バイオ分析用基板10Cの前記生体固定膜2の表面と、前記スペーサ11の側面とで囲まれた流体の保持が可能な反応セル14を形成するように配置されている。
給排基板12は、反応セル14に流体を給排するために反応セル14に通じるように設けられた2個の貫通穴13a、13bを有する。一方は流体を反応セル14に供給する供給穴13aであり、もう一方は反応セルから反応容器外に流体を排出する排出穴13bである。給排基板12を構成する材料は、スペーサ11との接着性や励起光等の光透過性、反応セル内に供給される各種流体への溶出がない等の性質を有することが好ましく、具体的には、バイオ分析用基板10Cの透明基体1と同様の材料が挙げられる。好ましくは、透明ガラスが用いられる。給排基板12の厚さは、十分な強度を保つ点から0.05〜2mmの厚さが好ましい。大きさはバイオ分析用基板10Cと同様に用いられる蛍光検出装置により調整される。
スペーサ11の形状については、図3に示すように幅の広い反応セル14の1個が形成される形状であってもよいが、複数の反応セルが平行して形成されるような形状であってもよい。図5には、6本の反応セル14が独立に平行して形成された反応容器の平面図(a)およびそのA−A線における断面図(b)を示す。なお、給排基板12は6本の反応セル14のそれぞれに流体を供給する計6個の供給穴13aと、6本の反応セル14から反応容器外に流体を排出する計6個の排出穴13bを有する。複数本の反応セル14が形成された反応容器30においては、一度に多量の核酸断片の配列解析等が可能となり好ましい。
ここでスペーサ11の厚さにより反応セル14の高さが決定する。スペーサ11の好ましい厚さは、0.01〜1mmであり、より好ましくは、0.02〜0.5mmである。
スペーサ11を構成する材料としては、給排基板12やバイオ分析用基板10Cの透明基体1と同様の構成材料とできるが、加工性がよく、反応セル内に供給される各種流体への溶出がほとんどない点でシリコーンゴムやシリコーン樹脂が好ましく、特にポリジメチルシロキサン(PDMS)が好ましい。PDMSは、近紫外領域においてガラスよりも吸光度が小さく、さらに400〜500nmにおける自家蛍光がガラスよりも小さい点においてもスペーサ11の構成材料として好ましく用いられる。
反容容器30は、上記バイオ分析用基板10C、スペーサ11、給排基板12が順に積層した構成である。なお、各構成部材間の接着は、加熱圧着、接着剤等で行うことができる。
上記本発明の反応容器30は、例えば、以下の反応過程を得た後、図4に示す蛍光検出装置の所定位置にセットされて、蛍光検出に供される。なお、ここでは核酸断片を担持した微粒子を用いた場合であって、さらに蛍光標識をバイオ分析用基板への微粒子の固定後に行った場合を例に説明するものである。必要に応じて、微粒子が担持する核酸断片の一部が予め蛍光標識され、一部の核酸断片が標識されていない微粒子を用い、これを液状組成物として反応容器30に注入し、反応セル14内のバイオ分析用基板10Cの表面に形成された生体固定膜2の最表層(高−等電点層)22の表面に固定する方法も可能である。
まず、反応容器外で解析すべき核酸断片を複数担持する微粒子を含む液状組成物を調製する。ここで、液状組成物のpHは予め設定しておくことが好ましい。そしてこのpHよりも高い等電点を有する無機化合物を用いてバイオ分析用基板10Cにおける生体固定膜2の最表層(高−等電点層)22を形成しておく必要がある。ただし、酸化アルミニウム等の上記液状組成物において通常設定されるpHの上限以上の等電点層を有する無機化合物を用いて最表層(高−等電点層)22が形成されている場合には、液状組成物のpHは制限なく調整できる。
次いで、この液状組成物を反応容器30の供給穴13aから反応セル14内に注入する。液状組成物の注入は例えば、注射針などを供給穴13aに挿入し、液状組成物を注入することで行われる。この際、反応セル給排基板12に設けられた排出穴13bは空気抜きの役割を担う。液状組成物内には複数の核酸断片を担持する微粒子が多数存在している。また、液状組成物内では微粒子が担持する核酸断片はそのリン酸由来部位が負に帯電した状態で存在する。
一方、反応セル14内のバイオ分析用基板10Cの表面に形成された生体固定膜2の最表層(高−等電点層)22の表面は、その構成材料が液状組成物のpHより等電点が高いことから液状組成物が注入された状態では正に帯電する。上記負に帯電した核酸断片のリン酸由来部位が、正に帯電した最表層(高−等電点層)22の表面に接触した際に、静電吸着を形成し微粒子23が生体固定膜2表面に固定される。この静電吸着が効率よく形成されるように、上記液状組成物を満たした反応容器30に、例えば、温度制御や液流の制御等の処理を施してもよい。このようにして、複数の核酸断片24を担持した微粒子23は、図2(b)に示されるのと同様に最表層(高−等電点層)22上に微粒子23が担持する核酸断片の一部24aを介して固定される。
次いで、生体固定膜2の最表層(高−等電点層)22の表面に、核酸断片の一部24aを介して微粒子23が固定された状態の反応セル14内に、通常は4種類の異なる蛍光体で標識された4種類のヌクレオチドとポリメラーゼを含有する反応液が供給穴13aから注入される。この蛍光体としては、例えば、上記6−FAM、Cy3、テキサスレッド、Cy5の組合せが挙げられる。図2(b)に示されるように反応液が注入された反応セル14では微粒子23が担持する上記固定に寄与しなかった核酸断片の別の一部24bと蛍光体25で標識されたヌクレオチドとのハイブリダイゼーションがなされる。
なお、図2(b)においては、蛍光体で標識されたヌクレオチドは1種のみが示されているが、4種の異なる蛍光体標識ヌクレオチドが、それぞれ相補的な核酸断片に1塩基だけハイブリダイゼーションされる。その後、浮遊する蛍光体標識ヌクレオチドを洗浄により除去した後、例えば、図4に示す蛍光検出装置により蛍光検出を行う。
蛍光検出を行う際には、まず、反応容器30のバイオ分析用基板10C側から蛍光体25を励起する励起光を照射し、反応セル14内の生体固定膜2の最表層(高−等電点層)22の表面に核酸断片の一部24aを介して固定された、微粒子23が担持する別の核酸断片24bに結合する蛍光体25を励起させ蛍光発光させる。
図4に示す装置は、落射照明による蛍光検出装置である。光源31から発せられた光は、反応に用いた1種類の蛍光体に対応する励起光を選択的に透過させる励起光用バンドパスフィルタ32を通過し、ダイクロイックミラー33で上方(反応容器30の方向)に反射され、対物レンズ34により集光されて反応容器30のバイオ分析用基板10C側から照射される。
反応容器30のバイオ分析用基板10C側から照射されたこれらの光は反射防止膜3および透明基体1を透過して、生体固定膜2に到達する。ここで、励起光は図2(b)に示すようにバイオ分析用基板10Cの生体固定膜2を透過して微粒子23に照射される。生体固定膜2は、該生体固定膜2に対する励起光の透過性が、蛍光検出に十分な透過性、好ましくは反射率が1%以下で透過する透過性となるように設計されているため、照射に対して十分量の励起光が微粒子23に照射される。
励起光が照射されると、ハイブリダイゼーションに伴って微粒子23上に取り込まれた蛍光体25は励起され、蛍光発光する。生体固定膜2上で等方的に発光した蛍光のうち一部が生体固定膜2を透過して透明基体1側からバイオ分析用基板10C外に放出される。ここで、生体固定膜2は、蛍光体25による蛍光発光を、最表層(高−等電点層)22側から透明基体1側に、蛍光検出が可能なように透過性をもって、好ましくは反射率1%以内で透過できるように、設計されている。これにより、透明基体1側まで到達した蛍光発光は、以下の過程を経て、蛍光検出装置において十分に蛍光検出が可能となる。
上記バイオ分析用基板10C外に放出された蛍光発光は、再び対物レンズ34により回収され、平行光となる。さらに蛍光はダイクロイックミラー33、エミッションフィルタ36を通過し、集光レンズ37を経てCCDカメラ38の検出面で像を形成する。得られた蛍光像をCCDカメラ38で取得し画像解析用コンピュータ39に保存する。なお、CCDカメラによる蛍光像の取得の直前に、オートフォーカス用モータ35がピントを合わせるために、対物レンズ34と反応容器30との距離を調整するように駆動して、オートフォーカスを行う。
引き続いて、励起光用バンドパスフィルタ32、ダイクロイックミラー33、エミッションフィルタ36のセットを他の3種のうちの1種の蛍光体に適合するようにそれぞれ交換し、必要に応じてさらに光源を交換して上記同様の蛍光像の取得・保存を行う。これをさらに他の2種の蛍光体についてそれぞれ行うことで、4種の蛍光体に対応した蛍光像が取得され、これらの蛍光像データを画像解析用コンピュータ39が総合的に解析して蛍光検出が行われる。
以下に、本発明のバイオ分析用基板の実施例を説明するが、本発明はこの実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
ガラス基板(直径150mm、厚さ:0.525mm)の表面を3分間オゾン洗浄した後、その洗浄された表面に真空蒸着法によって、厚さ10nmのAl層(等電点:10.0)を、高−等電点層として形成した。25mm角、厚さ640μmの樹脂性のシートの中央に直径20mmの打ち抜き部を形成しスペーサとした。高−等電点層付きのガラス基板の高−等電点層上に接着剤を用いてスペーサを接着し、その上に接着剤を用いて上記と同サイズのガラス基板であって、スペーサの打ち抜き部に対応する部分に2つの穴(供給穴と排出穴、各直径1mm)を有するガラス基板を接着して試験用の反応容器を作製した。この反応容器における、高−等電点層付きのガラス基板と、スペーサと、上側ガラス基板とで囲まれたセルの容量は200μLであった。
6−FAMで蛍光標識されたDNA鎖(75mer)をTEバッファ(pH:8)に濃度10pg/μLで溶解させた液状組成物を調製した。マイクロピペットを用いて、上側ガラス基板が有する供給穴から得られた液状組成物を注入してセル内を液状組成物で充填した。上側ガラス基板の2つの穴(供給穴と排出穴)をシールして室温(25℃)で1時間静置した。
静置終了後、穴からシールを剥がして、セル内の液状組成物を、マイクロピペットを用いて吸い取った。TEバッファでセル内を充填した後、吸い出す操作を、3回繰り返し行いセル内を洗浄した後乾燥させた。その後、上側ガラス基板とスペーサを剥がして、高−等電点層に固定したDNA鎖の量を、これにFAMが励起して蛍光発光する励起光を照射し、得られた蛍光発光の蛍光イメージ画像により、高−等電点層を有しないガラス基板の場合と比較することにより評価した。
図7(a)に実施例1で得られた試験用反応容器による蛍光イメージ画像を、(b)に高−等電点層を有しないガラス基板を用いた反応容器による蛍光イメージ画像を示す。実施例1で得られた試験用反応容器では、6−FAMで蛍光標識されたDNA鎖が蛍光測定可能な程度に高密度で固定されていたことが確認できる。
[比較例1、2]
実施例1において、Al層のかわりに、上記液状組成物のpH(8)よりも等電点の低いZrO層(等電点:4.0)またはSiO層(等電点:2.0)を有する以外は実施例1と全く同様にして比較例1および比較例2の試験用反応容器を作製した。
上記実施例1と同様にして6−FAMで蛍光標識されたDNA鎖(75mer)をTEバッファ(pH:8)に濃度10pg/μLで溶解させた液状組成物を用いてDNA鎖の固定試験を行った。比較例1および比較例2の結果を、それぞれ図7(c)および(d)として示す。比較例1および比較例2においては、6−FAMで蛍光標識されたDNA鎖の固定は少量であることが分かる。
[実施例2]
本発明のバイオ分析用基板において、透明基体上に形成される、透明基体側から順に屈折率の異なる2種の無機物層が交互に積層された多層膜と高−等電点無機化合物からなる最表層(高−等電点層)とを有する生体固定膜について以下の方法で光シミュレーションを行った。
最表層(高−等電点層)側に水を存在させて、水側から光が入射し、最表層(高−等電点層)、多層膜を経て、透明基体側に出射するとし、出射光と入射光の強度比として400〜700nmの波長の光の反射率を求めた。
多層膜は、高屈折率層としてTa膜、低屈折率層としてSiO膜を想定した。具体的には、電子ビーム蒸着装置に、TaまたはSiOの蒸着材を用いて、Oガスを導入した反応性蒸着によりTa膜、SiO膜をサンプルとして作製した。得られたTa膜およびSiO膜の光学定数を、分光透過率測定により求めた。最表層(高−等電点層)は、Al(屈折率:1.63)層を想定した。電子ビーム蒸着装置に、Alの蒸着材を用いて、Oガスを導入した反応性蒸着によりAl膜をサンプルとして作製し、得られたAl膜の光学定数を、分光透過率測定により求めた。
本発明のバイオ分析用基板において、基体側から励起光を照射して蛍光検出装置で蛍光検出する場合に好ましい構成、すなわち透明基体上に高屈折率層と低屈折率層が交互に積層された多層膜が形成され、その表面に最表層(高−等電点層)が形成された構成において、最表層(高−等電点層)厚、多層膜の積層数、Ta膜(高屈折率層)の膜厚、SiO膜(低屈折率層)の膜厚、をパラメーターとして、シミュレーションし、波長400〜700nmの光に対して反射率が0.1%以下、透過率が99.9%以上となるような構成を求めた。結果を各層の厚さについて表1に、360〜700nmの波長の光に対する反射率については図6に示す。
Figure 2013122395
本発明によれば、核酸断片や核酸断片を担持する微粒子を高密度に固定可能な表面特性を有する生体固定膜を基板表面に有するバイオ分析用基板が提供可能である。また、該基板が容器の一部を構成するように組み込まれた操作性に優れるとともに、高精度かつ高効率の蛍光検出が可能な反応容器が提供可能である。これにより本発明は、核酸の塩基配列を決定するシーケンシングの技術における蛍光検出の高速化に寄与できる。
1…基体、2…生体固定膜、21…多層膜、22…最表層(高−等電点層)、3…反射防止膜、
10A,10B,10C…バイオ分析用基板
23…微粒子、24,24a,24b…核酸断片、25…蛍光体、
11…スペーサ、12…給排基板、13a…供給穴、13b…排出穴、14…反応セル
30…反応容器、31…光源、32…励起光用バンドパスフィルタ、33…ダイクロイックミラー、34…対物レンズ、35…オートフォーカス用モータ、36…エミッションフィルタ、37…集光レンズ、38…CCDカメラ、39…画像解析用コンピュータ

Claims (7)

  1. 基体と、その表面に形成された生体固定膜とを具備し、核酸断片を含有する液状組成物を用いて前記生体固定膜表面に前記核酸断片を固定し、前記核酸断片に結合する蛍光体の発光を利用して分析を行うためのバイオ分析用基板であって、
    前記生体固定膜は、前記液状組成物のpHを超える等電点を有する無機化合物を主体とする最表層を有することを特徴とするバイオ分析用基板。
  2. 前記核酸断片の複数個が微粒子に担持された形で前記液状組成物に含有され、前記微粒子が担持する核酸断片の一部が前記生体固定膜表面に固定され、別の一部が前記蛍光体と結合する請求項1記載のバイオ分析用基板。
  3. 前記無機化合物の等電点が6.0超である請求項1または2記載のバイオ分析用基板。
  4. 前記無機化合物がアルミニウム、イットリウム、亜鉛、ニッケルもしくはマグネシウムの酸化物または水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載のバイオ分析用基板。
  5. 前記基体が透明基体であり、前記生体固定膜がさらに前記最表層の透明基体側に屈折率の異なる2種の無機物層が交互に積層された多層膜を有し、前記透明基体側から照射される前記蛍光体を蛍光発光させる励起光および該励起光による前記蛍光体の発光を、蛍光検出を可能とする透過率で透過する光学特性を有する請求項1〜4いずれか1項記載のバイオ分析用基板。
  6. 前記生体固定膜における、前記蛍光体を蛍光発光させる励起光および該励起光による前記蛍光体の発光に対する反射率が1%以下である請求項5記載のバイオ分析用基板。
  7. 流体を給排するための複数の穴を有する給排基板と、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイオ分析用基板と、
    前記2枚の基板の間隔を一定に保つためのスペーサであって、前記給排基板の裏側主面、前記バイオ分析用基板の前記生体固定膜表面、および前記スペーサの側面で囲まれた流体の保持が可能な反応セルを形成するように、前記2枚の基板に挟持されてなるスペーサと、を有する反応容器。
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