JP2020015924A - ゴム変性スチレン系樹脂組成物、ゴム変性スチレン系樹脂シート、その製造方法及び食品容器 - Google Patents

ゴム変性スチレン系樹脂組成物、ゴム変性スチレン系樹脂シート、その製造方法及び食品容器 Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム変性スチレン系樹脂シートの剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、且つ成形による偏肉が少なく、容器の複雑形状化や軽量化による座屈強度や落下強度の低下が少ないゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供する。【解決手段】マトリックス相を形成するスチレン系樹脂中にゴム状重合体粒子が分散してなるゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、ゲル分が1.0〜25.0質量%であり、マトリックス相のZ平均分子量(Mz)が50万以上であり、マトリックス相の、分子量150万以上における分岐比をgM1、分子量100万〜150万における分岐比をgM2とすると、gM1が0.70〜0.20であり、且つ(gM2−gM1)の値が0.05以上であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物、ゴム変性スチレン系樹脂シート、その製造方法及び食品容器に関する。より詳しくは、剛性と耐衝撃性に優れ、且つ成形による偏肉が少なく、圧縮強度や落下強度に優れる容器を得ることができるゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
ゴム変性スチレン系樹脂のシートは、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、且つ安価であることから、真空成形や真空圧空成形などの熱成形によって、食品トレー、弁当容器、カップ等の様々な容器に二次成形されている。このような成形品においては、近年、意匠性の観点から容器の複雑形状化が進んでおり、更にはコスト削減の観点から薄肉軽量化が求められている。
容器の複雑形状化により、特に容器の屈曲部や嵩上げ部等で厚みが極端に薄くなる傾向があり、このような容器の運搬時や陳列時において、薄肉部に応力が集中することで、容器の変形や割れが発生する場合がある。容器の全体厚みを上げることで、容器の腰強度や落下強度を上げることは可能であるが、使用する樹脂量が増えるために、軽量化の面で望ましくない。軽量化しても容器強度を維持するためには、耐衝撃性の向上と薄肉部の厚み減少の抑制、すなわち偏肉の改善が必須となる。
スチレン系樹脂の偏肉を改善するために超高分子量成分や分岐成分を含有させる方法が有効であることが知られている。
例えば、特許文献1ではゴム変性スチレン系樹脂の耐衝撃性と流動性のバランスを改良するために、アニオン重合においてカップリング剤を使用することで分岐構造を有するポリスチレンを重合し、これをゴム変性ポリスチレンとブレンドした樹脂組成物が開示されている。しかしながら、アニオン重合により超高分子量成分を得る方法は、工業規模での生産性に劣り、また、偏肉の改善効果も不十分であった。
また、特許文献2では複数のビニル基を有する化合物を重合で添加することにより、分岐構造を導入したゴム変性スチレン系樹脂組成物が開示されている。しかしながら、多官能ビニル化合物を用いる方法を連続塊状重合に適用した場合、長期の生産により重合反応器の壁面に存在する境膜と呼ばれる流動が停止している領域においてゲル化が進行するという問題点があり、これを避けようとすると多官能ビニル化合物の添加量に制限を受け、望ましい超高分量分岐成分を生成させることが困難であった。
上記の問題を解決するために、特許文献3では多分岐状マクロモノマーを重合時に添加することにより、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンをマトリックス相に含有するゴム変性スチレン系樹脂組成物を得る製造方法が開示されている。また、特許文献4では、分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体をゴム成分を溶解したモノビニル化合物に一定量添加し、連続重合することで、ゲル化を抑制しつつ分岐構造を導入したゴム変性スチレン系樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これらの方法では、超高分子量分岐成分の生成と溶融張力の向上が不十分であり、容器強度の向上の面で改良の余地を有していた。
特公平8−169920号公報 特開平7−165844号公報 特開2007−269848号公報 特開2013−100434号公報
本発明が解決しようとする課題は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、且つ成形による偏肉が少なく、容器の複雑形状化や軽量化による座屈強度や落下強度の低下が少ないゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供することである。
本発明に係るゴム変性スチレン系樹脂組成物は、マトリックス相を形成するスチレン系樹脂中にゴム状重合体粒子が分散してなるゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
ゲル分が1〜25質量%であり、マトリックス相のZ平均分子量(Mz)が50万以上であり、マトリックス相の、分子量150万以上における分岐比をgM1、分子量100万〜150万における分岐比をgM2とすると、gM1が0.70〜0.20であり、且つ(gM2−gM1)の値が0.05以上である。
本発明者らは、上記の課題を達成するため、鋭意研究を進めたところ、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のゲル分、マトリックス相のZ平均分子量(Mz)、マトリックス相の分岐比gM1,gM2を特定の範囲とする事で、前記目的が達成されることを見出し、本発明の完成に至った。
なお、上記のゴム変性スチレン系樹脂組成物は本発明の一態様であり、本発明のゴム変性スチレン系樹脂シートの製造方法、ゴム変性スチレン系樹脂シート、食品容器なども、同様の構成を有する。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、且つ成形による偏肉が少ないため、容器の圧縮強度や落下強度に優れ、容器の複雑形状化や薄肉軽量化が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同様な構成要素については繰り返しを避けるため適宜説明を省略する。なお、本明細書でA〜Bと記載するときには、A以上B以下を意味するものとする。
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物の特性>
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、マトリックス相を形成するスチレン系樹脂中にゴム状重合体粒子が分散してなるゴム変性スチレン系樹脂組成物である。
ここで、マトリックス相を形成するスチレン系樹脂の構成要素となるスチレン系単量体としては、スチレン、αメチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の単独または混合物が挙げられ、特に好ましくはスチレンである。また、スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル系モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系モノマーや無水マレイン酸、フマル酸等のα,β−エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類を本発明の効果を損なわない程度であれば共重合することができる。
また、マトリックス相に分散するゴム状重合体粒子は、ゴム状重合体にスチレン系単量体がグラフト重合したものであって、ここでのゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ローシスブタジエン、ハイシスブタジエン、ハイシスハイビニルポリブタジエン等のジエン系単量体の単独重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添(部分水添)ポリブタジエン、水添(部分水添)スチレン−ブタジエン共重合体、水添(部分水添)スチレン−ブタジエンブロック共重合体、エチレン−プロピレン系共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体、イソプレン重合体、スチレン−イソプレン共重合体等が挙げられるが、ジエン系単量体の単独重合体を用いることが好ましい。また、ゴム状重合体は、その1種のみ、若しくは2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いるゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状重合体粒子のゲル分は1.0〜25.0質量%であり、好ましくは5.0〜20.0質量%である。ゲル分が1.0質量%未満では得られる成形品の落下強度が低下し、25.0質量%を超えると粘度が上がり過ぎるため、超高分子量分岐成分の含有量が制限され、容器の偏肉が悪化する。ゲル分を調整する方法としては、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の重合工程においてゴム含有量を調整する方法、開始剤量を調整する方法の他、重合後にスチレンのホモポリマーとのブレンドにより調整する方法などが挙げられる。なお、ゲル分は、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、21.0、22.0、23.0、24.0、25.0質量%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
ゲル分はゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子の割合であり、質量1.00gのゴム変性スチレン系樹脂組成物を精秤し(W)、50%メチルエチルケトン/50%アセトン混合溶液35ミリリットルを加え溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H−2000B(ローター:H))にて、10000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降せしめ、デカンテーションにより上澄み液を除去して不溶分を得、セーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥し、更に真空乾燥機にて125℃で1時間減圧乾燥し、20分間デシケーター中で冷却した後、乾燥した不溶分の質量Gを測定して次のように求めることができる。
ゲル分(ゴム状分散粒子量)(質量%)=(G/W)×100
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相のZ平均分子量(Mz)は50万以上であり、好ましくは60万以上である。Mzが50万未満であると容器の肉厚分布と座屈強度が低下する。マトリックス相のMzを調整する方法としては、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の重合工程において、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量によって調整することができるが、これらの条件に加えて後述する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を重合工程のいずれかで添加したり、予めスチレン系単量体と溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を重合しておき、後でブレンドすることで、効率良くMzを上げることができる。なお、このZ平均分子量(Mz)は50万、55万、60万、65万、70万、75万、80万、85万、90万、95万、100万、105万、110万、115万、120万、125万、130万、135万、140万、145万、150万のうち任意の値以上、またはこれらのうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
なお、マトリックス相のZ平均分子量(Mz)の測定は、前記ゲル分の測定において遠心分離後の不溶分を除去した上澄み液にメタノール250ミリリットルを急激に加えて、メタノール不溶分(樹脂成分)を析出、沈殿させ、約10分間静置した後、ガラスフィルターで徐々にろ過してメタノール可溶分を分離し、真空乾燥機にて125℃で2時間減圧乾燥した後、デシケータ内で30分間放冷し、乾燥したサンプルを使用し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ―(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工社製Shodex GPC−101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製PLgel 10μm MIXED−B,300×7.5mm
移動相:テトラヒドロフラン 1.0ml/min
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
単分散ポリスチレンの溶出曲線により各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出した。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の分子量150万以上における分岐比gM1は、0.70〜0.20であり、0.65〜0.30であることが好ましい。分岐比gM1は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれる超高分子量分岐成分の分岐の程度を表しており、分岐比gM1が低いほど分岐が多いことを表している。容器の肉厚分布や座屈強度の向上効果を得るためには、この超高分子量領域における分岐の多さが必要であり、分子量150万以上における分岐比gM1が0.70を超えると、本発明の効果が十分に得られない。また、分岐比gM1が0.20未満として分岐を増やしても、それ以上の改良効果が得られないため好ましくない。分岐比gM1を調整する方法としては、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の重合工程において、後述する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を単独、若しくは溶剤可溶性多官能ビニル共重合体と多官能重合開始剤、及び/または多官能連鎖移動剤とを併用して使用する方法や、予めスチレン系単量体と溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を重合しておき、後でブレンドする方法等が挙げられる。なお、この分岐比gM1は0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の分子量100万〜150万における分岐比gM2は、分子量150万以上における分岐比gM1よりも0.05以上大きい。(gM2−gM1)の値は、分子量100万〜150万における分岐の多さと、分子量150万以上における分岐の多さのバランスを表しており、この値が0.05以上である場合に、容器の肉厚分布や座屈強度の向上効果がより顕著に現れる。分子量150万以上における分岐を多くし、且つ、分子量100万〜150万における分岐を少なくすることで、超高分子量分岐成分中の分岐点間、若しくは分岐点から分子末端までの分子鎖長を適度な長さに調整することができ、その結果、分子鎖の絡み合いが強くなり、溶融張力を効率良く向上させることができるためと考えられる。(gM2−gM1)の値は、例えば、スチレン系単量体と溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を重合したスチレン系樹脂(a)を予め作成し、ゴム変性ポリスチレン(b)と後からブレンドするという方法でゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造することによって0.05以上にすることが容易である。(gM2−gM1)の値は、好ましくは0.05〜1であり、さらに好ましくは0.1〜0.75であり、さらに好ましくは0.2〜0.6である。この値は、具体的には例えば、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
分岐比gMはゲルパーミエイションクロマトグラフィー多角度レーザー光散乱光度計(GPC−MALS法)により、分子量と回転半径の測定を行い、スチレン系樹脂組成物の回転半径<rbrと直鎖ポリスチレンの回転半径<rlinから分岐比gM=<rbr/<rlinを計算し、分子量150万以上の平均値、若しくは分子量100万〜150万の平均値として算出した。なお、分岐の大きいポリマーは回転半径が小さいため、分岐比gMの値は小さくなり、分岐が少ないポリマーほど1に近い数値となる。GPC−MALSの測定は次の条件にて行った。
GPC機種:Waters社製 MODEL515
検出器:示差屈折率計 Waters社製RI−2410型
MALLS機種:Wyatt Technology社製 DAWN EOS
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHXL(2本)
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.1質量%
温度:カラム 23℃、検出器 35℃
流速:1.0mL/min
注入量:0.2mL
本発明の分岐比gMは直鎖多分散ポリスチレンの分岐比gMを1とした場合に対する数値を算出したものである。
なお、GPC測定と同様に、試料はゴム状重合体粒子を除去したものを使用した。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状重合体粒子のグラフト率は0.50〜3.50であることが好ましい。グラフト率が0.50未満であると衝撃強度が低下し、3.50を超えると剛性が低下する。なお、このグラフト率は0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、1.50、1.60、1.70、1.80、1.90、2.00、2.10、2.20、2.30、2.40、2.50、2.60、2.70、2.80、2.90、3.00、3.10、3.20、3.30、3.40、3.50のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状重合体粒子のグラフト率は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゲル分(質量%)とゴム変性スチレン系樹脂中のゴム分(質量%)から次のように求めることができる。
グラフト率=(ゲル分−ゴム分)/ゴム分
なお、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム分はゴム変性スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から求めることができる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状重合体粒子の体積中位粒子径は2.0〜8.0μmであることが好ましく、更に好ましくは2.3〜7.0μmである。体積中位粒子径が2.0μm未満では得られる成形品の落下強度が低下し、8.0μmを超えると剛性が低下する。なお、この体積中位粒子径は2.0、2.1、2.2、2.3、02.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
ゴム状重合体粒子の体積中位粒子径はゴム変性スチレン系樹脂組成物を電解液(3%テトラ−n−ブチルアンモニウム/97%ジメチルホルムアミド溶液)に溶解させ、コールターマルチサイザー法(コールター社製マルチサイザーII:アパチャーチューブのオリフィス径30μm)により測定して求めた体積基準の粒径分布曲線の50体積%粒子径をもって本発明の体積中位粒子径とする。
本発形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状重合体粒子の膨潤度SIは8.0〜20.0であることが好ましい。膨潤度SIが8.0未満であると強度が低下し、膨潤度SIが20.0を超えると強度と剛性が低下する。なお、この膨潤比SIは8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20.0のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
ゴム変性スチレン系樹脂のゴム状重合体粒子の膨潤度SIは、ゴム変性スチレン系樹脂組成物1.00gを精秤し、トルエン30ミリリットルを加えて溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H−2000B(ローター:H))にて、10000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降せしめ、デカンテーションにより上澄み液を除去して、トルエンで膨潤した不溶分の質量Sを測定し、続いてトルエンで膨潤した不溶分をセーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥し、更に真空乾燥機にて125℃で1時間減圧乾燥し、20分間デシケータ―中で乾燥した後、不溶分の乾燥質量Dを測定して次のように求めることができる。
膨潤度SI=S/D
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のメタノール可溶分は1.0〜7.0質量%であることが好ましく、1.5〜4.5質量%であることがさらに好ましい。メタノール可溶分が1.0質量%未満であると、容器の強度が低下し、メタノール可溶分が7.0質量%を超えた場合、耐熱性が低下する。なお、このメタノール可溶分は1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
メタノール可溶分とは、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のメタノールに可溶な成分を指し、例えばゴム変性スチレン系樹脂の重合工程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)の他に、流動パラフィンやシリコンオイル等の各種添加剤や残存スチレンモノマー、及び重合溶媒等の低分子量成分が含まれる。メタノール可溶分を調整する方法としては、開始剤の種類や量によって重合工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)の発生量を調整する方法や、流動パラフィン、シリコンオイルの添加量によって調整することができる。
なお、メタノール可溶分はゴム変性スチレン系樹脂1.00gを精秤し(P)、メチルエチルケトン40ミリリットルを加えて溶解し、メタノール400ミリリットルを急激に加えて、メタノール不溶分(樹脂成分)を析出、沈殿させる。約10分間静置した後、ガラスフィルターで徐々にろ過してメタノール可溶分を分離し、真空乾燥機にて125℃で2時間減圧乾燥した後、デシケータ内で25分間放冷し、乾燥したメタノール不溶分の質量Nを測定して、次のように求めることができる。
メタノール可溶分(質量%)=(P−N)/P×100
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレート(MFR)は、0.5〜5.0g/10分であることが好ましく、更に好ましくは0.8〜2.5g/10分である。5.0g/10分を超えるとゴム変性スチレン系樹脂シートの偏肉が大きくなり、容器の圧縮強度と落下強度が低下する。また、0.5g/10分未満の場合、粘度が上がり過ぎるため、ゴム変性スチレン系樹脂シートの2次成形時において、加熱時間やヒーター温度を上げる必要があり、生産性が低下する。なお、このメルトマスフローレート(MFR)は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0g/10分のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。MFRはJIS K−7210に基づき測定することができる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物の200℃で測定した溶融張力(MT)は7〜20gfであることが好ましく、8〜15gfであることがより好ましい。溶融張力が7gf未満では、ゴム変性スチレン系樹脂シートの偏肉が大きくなるとともに、容器の圧縮強度と落下強度が低下する。また、溶融張力が20gfを超えるとゴム変性スチレン系樹脂シートの低温成形時の伸びが低下するため、加熱時間やヒーター温度を上げる必要があり、生産性が低下する。なお、溶融張力(MT)は、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20gfのうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
溶融張力値は、東洋精機製「キャピログラフ1B型」を使用し、バレル温度200℃、バレル径9.55mm、キャピラリー長さ:L=10mm、キャピラリー径:D=1mm(L/D=10)、バレル内の押出し速度10mm/分にて樹脂を押出し、荷重測定部をダイから60cm下方にセットし、キャピラリーより流出してきたストランド状の樹脂を巻き取り器にセットし、巻き取り線速度を4m/分から徐々に速度を上昇していき、ストランドが破断するまでの荷重を測定する。荷重は巻き取り線速度を上げていくと、一定値に安定するので、荷重が安定した範囲を平均化して溶融張力値とした。
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物の重合方法としては塊状重合法、溶液重合、懸濁重合法等の公知のスチレン重合法が挙げられる。また、溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。反応器の様式としては、完全混合型反応器、プラグフロー反応器、重合を進行させながら一部の重合液を抜き出すループ型反応器等が挙げられ、これらと未反応の単量体等を除去する揮発分除去工程を組み合わせた所謂、連続重合方式が好適に用いられる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造方法としては、上記重合工程のいずれかにおいて、1分子中に複数の二重結合を有し、且つ分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を、スチレン単量体に対して、質量基準で50ppm〜1000ppm添加し、重合させることが好ましく、スチレン系単量体に対して、1分子中に複数の二重結合を有し、且つ分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を質量基準で50ppm〜1000ppm添加し、重合して得られるスチレン系樹脂(a)と、ゴム変性ポリスチレン(b)を(a)/(b)=5/95〜95/5の質量比率でブレンドして得ることが更に好ましい。多官能ビニル共重合体はスチレン単量体と共重合されることで、超高分子分岐成分を生成する。多官能ビニル共重合体の配合量が50ppm未満の場合は、超高分子量分岐成分の生成が少なく、本実施形態の効果が得られない場合がある。また、1000ppmを超える場合、重合工程において重合溶液の粘度が著しく上昇し、生産が困難となる場合があり、添加量に見合った効果も得られない。また、スチレン系単量体と溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を重合したスチレン系樹脂(a)を予め作成し、ゴム変性ポリスチレン(b)と後からブレンドすることで、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に超高分子量分岐成分を効率良く導入することができる。この場合、それぞれの組成はブレンド後の特性が本発明の範囲内となるように調整されるが、スチレン系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は35万以上であることが好ましく、40万以上であることが更に好ましい。
本実施形態の多官能ビニル共重合体は、特開2004−123873号公報、特開2005−213443号公報、WO2009/110453等に開示されている方法に準じて得ることができる。具体的には、ジビニル化合物と少なくとも1種以上のモノビニル化合物と、を含む原料を共重合させて、式(a1)で示される反応性のペンダントビニル基を有する共重合体を得るものである。さらに、上記特許文献に記載されるように末端にビニル基以外の他の末端基が導入されたものを使用することもでき、特にフェノキシメタクリレート類のような不飽和結合を分子内に有する化合物にて末端変性されたものは(a1)以外にも架橋点として作用することが可能となるため好ましい。この場合は、末端の不飽和結合含有構造単位(a2)もビニル基を有するので、式(a1)の構造単位との合計のモル分率(a3)は、全体のビニル基の存在量を示すことになる。

(式中、Rはジビニル芳香族化合物に由来する芳香族炭化水素基を示す。)
多官能ビニル共重合体を得るために使用するジビニル化合物としては、ジビニルベンゼンに代表されるジビニル芳香族化合物類やエチレングリコールジ(メタ)アクリレートに代表される脂肪族、脂環式(メタ)アクリレート類等が例示される。
また、ここで使用するモノビニル化合物としては、前述したようなスチレン等のモノビニル芳香族化合物を含むビニル系モノマー類が挙げられる。
多官能ビニル共重合体の製造方法としては、例えば、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物及び他のモノビニル化合物から選ばれる2種以上の化合物を、ルイス酸触媒、エステル化合物から選ばれる助触媒の存在下、カチオン共重合させることにより得ることができる。また(メタ)アクリレート系のジビニル、モノビニル化合物を使用する場合は、カチオン重合では反応が進行しないため過酸化物等のラジカル触媒の存在下でラジカル重合することにより得ることができる。
ジビニル化合物とモノビニル化合物の使用量は、本実施形態で使用される多官能ビニル共重合体の組成を与えるように決められるが、ジビニル化合物を、好ましくは全単量体の10〜50モル%、より好ましくは30〜50モル%使用する。モノビニル化合物を好ましくは全単量体の90〜50モル%、より好ましくは70〜50モル%使用する。ここで、2−フェノキシエチルメタクリレートのようなカチオン重合においては末端変性剤として作用するものは単量体としては計算しない。
多官能ビニル共重合体の製造で用いられるルイス酸触媒としては、金属イオン(酸)と配位子(塩基)からなる化合物であって、電子対を受け取ることのできるものであれば特に制限なく使用できる。分子量及び分子量分布の制御及び重合活性の観点から、三フッ化ホウ素のエーテル(ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等)錯体が最も好ましく使用される。ルイス酸触媒は単量体化合物1モルに対して、0.001〜10モルの範囲内で用いるが、より好ましくは0.001〜0.01モルである。ルイス酸触媒の使用量が過大であると、重合速度が大きくなりすぎるため、分子量分布の制御が困難となるので好ましくない。
助触媒としてはエステル化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。その中で、重合速度及び共重合体の分子量分布制御の観点から炭素数4〜30のエステル化合物が好適に使用される。入手の容易さの観点から、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチルが好適に使用される。助触媒は単量体化合物1モルに対して0.001〜10モルの範囲内で使用するが、より好ましくは0.01〜1モルである。助触媒の使用量が過大であると、重合速度が減少し、共重合体の収率が低下する。一方、助触媒の使用量が過少であると、重合反応の選択性が低下し、分子量分布の増大、ゲルの生成等が生じる他、重合反応の制御が困難となる。
また、ラジカル重合で多官能ビニル共重合体を製造する際に用いられる触媒としては、アゾビスイソブチロニトリルに代表されるアゾ系化合物、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の単官能性の過酸化物や1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンのような2官能性以上の多官能性の過酸化物が例示され、単独または2種以上を併用して使用することができる。
本実施形態で使用する多官能ビニル共重合体は上記のような製造方法で得ることができるが、単量体として使用するジビニル化合物のビニル基の一部は重合させずに残すことが必要である。そして、少なくとも平均して1分子中に2以上、好ましくは3以上のビニル基が存在するようにする。このビニル基は主として上記式(a1)で表わされる構造単位として存在する。そして、ビニル基の一部は重合させずに残すことにより架橋反応を抑制し、溶剤可溶性を与えることができる。ここで、溶剤可溶性とは、トルエン、キシレン、THF(テトラヒドロフラン)、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることをいい、具体的にはこれらの溶媒100gに、25℃において5g以上が溶解し、ゲルが発生しないことをいう。一方、ジビニル化合物の一部は2つビニル基が反応して架橋又は分岐することが必要であり、これにより分岐構造を有する共重合体とすることができる。このように、ジビニル化合物の一部については2つのビニル基の一つは反応させ、一つは重合させずに残し、他の一部については2つのビニル基を共に反応させることにより本実施形態で使用する多官能ビニル共重合体を得ることができる。このような多官能ビニル共重合体を得る重合方法は、上記のように公知であり、上記のようにして製造することができる。
多官能ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜70,000がより好ましい。1,000より小さい場合は、連続重合において、重合反応器の壁面に存在する境膜と呼ばれる流動が停止している領域においてゲル化が進行することがあるため好ましくない。
多官能ビニル共重合体に導入されるジビニル化合物由来のビニル基を含有するユニットは上記式(a1)で表わされる構造単位を有するが、この構造単位(a1)のモル分率は、0.05〜0.50である。0.05モルより少ない場合は、高分子量の高分岐型ポリスチレンが得られにくいため好ましくない。一方、0.50モルを超える場合は、高分岐型ポリスチレンの分子量が過度に増大し、ゲル化が起こりやすくなるため好ましくない。なお、この構造単位(a1)のモル分率は0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
ここで、構造単位(a1)、末端変性剤由来の二重結合(a2)および両者の合計のモル分率(a3)は日本電子製JNM−LA600型核磁共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により構造を決定した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
上記したように不飽和結合を分子内に有する化合物にて末端変性したものは、式(a1)で表わされる構造単位の他に、末端の不飽和結合含有構造単位(a2)もビニル基を有するので、両者の合計のモル分率(a3)が、0.05〜0.50である。
また、多官能ビニル共重合体は、その重量平均分子量における慣性半径(nm)と上記構造単位(a1)のモル分率又は上記合計のモル分率(a3)との比が1〜100の範囲にあることが好ましい。高分岐型超高分子量体をゲル化を伴わずに調整するためには、10〜80の範囲が更に好ましい。上記の比が100を超える場合は、ゲル化は進行しないが、高分子量の高分岐型ポリスチレンが得られにくいため好ましくない。一方、1より小さい場合は、高分岐型ポリスチレンの分子量が過度に増大し、ゲル化が起こりやすくなるため好ましくない。なお、この慣性半径(nm)と構造単位(a1)のモル分率又はモル分率(a3)との比は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
ここで、慣性半径は、試料を0.5%のTHF溶液に調整した後、メンブランフィルターにてろ過し、ろ液についてGPC多角度光散乱法を用いて測定を行った。さらに、試料を0.2%THF溶液に調整後1日放置した。その後、THFを用いて4種類の濃度(0.02、0.05、0.10、0.12wt%)の溶液に希釈し、これらの溶液を用いてdn/dc測定を行い、得られたdn/dc値から試料の慣性半径を算出した。
多官能ビニル共重合体は分子量に分布を持つ重合体であり、当然、その慣性半径も分布を有しているため、重量平均分子量における慣性半径を全体の慣性半径の平均値として採用するものである。
ここで定義した慣性半径と二重結合の含有量を表わす指標である構造単位(a1)のモル分率又は上記合計のモル分率(a3)の比は、高分岐型超高分子量体を構成する際に、核となる多官能ビニル共重合体が重合反応溶液中でどのような広がりの中に、どれだけの反応点を有しているかを表す指標といえる。この比が小さ過ぎると、反応点が近傍にあり、ゲル化を引き起こしやすくなり、またこの比が大き過ぎると分岐型成分の高分子量化が困難となる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造する際には、重合反応の制御の観点から、必要に応じて重合溶媒、有機過酸化物等の重合開始剤や脂肪族メルカプタン等の連鎖移動剤を使用することができる。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N'−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
連鎖移動剤としては、連鎖移動基を1つ有する単官能連鎖移動剤、連鎖移動基を複数有する多官能連鎖移動剤のいずれを用いてもよく、単官能連鎖移動剤としては、例えば、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられ、多官能連鎖移動剤としては、例えば、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸、またはメルカプトプロピオン酸でエステル化した多官能メルカプタン類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム変性スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂やゴム補強材を本発明の効果を損なわない範囲で配合する事ができる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ノルマルブチルアクリレート−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、マレイミド−スチレン共重合体、αメチルスチレン−スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリD、L−乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これら1種若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム補強材の具体例としては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系ゴム、さらにはエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム、ハイインパクトポリスチレンが挙げられ、これら1種若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、添加剤として、リン系、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸、及びその塩やエチレンビスステアリルアミド等の滑剤、タルク、炭酸カルシウム等の無機フィラー、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料、消臭剤等を必要に応じて添加する事ができる。
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物を製造するための原料には、ゴム変性スチレン系樹脂シートを二次成形した際に発生するスケルトンと呼ばれる打抜き屑やそのリサイクルペレット等のリサイクル材を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。その場合、リサイクル材混合後の特性が本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の範囲内となるように調整する。
<ゴム変性スチレン系樹脂シートおよびその製造方法>
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、公知のシート製造方法を用いて、各種シートに成形することができる。シート製造方法の具体例としては、溶融樹脂をTダイから押出して成形する方法や、カレンダー成形法、インフレーション成形法等が挙げられるが、生産性と膜厚精度の面からTダイを使用することが好ましい。また、シートは単層でも良く、多層シートの最外層や内層のみに本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いてもよい。多層シートの製造方法としては、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイを使用した共押出法や、予め表面層を単独で作成しておき、基材シートと熱ラミネートする方法が挙げられる。シートの厚みに特に制限は無いが、成形品の強度と剛性の面から0.2mm以上とするのが好ましい。
本実施形態のシートは真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、マッチドモールド法、リバースドロー法、エアストリップ法、リッジ法、プラグアンドリッジ法、熱盤成形法等などの公知の成形法により、ヨーグルト容器、デザート容器、惣菜容器や弁当容器、トレー、飲料容器、冷菓容器、ミルクポーション等の食品容器、コーヒーカップ蓋材等の食品容器蓋材など各種形状の食品容器に成形することができ、特に深絞り形状や複雑形状用途に適している。
本実施形態のシートを成形して得られる容器は、容器屈曲部や嵩上げ部等の座屈強度や落下強度に優れるため、容器の複雑形状化や軽量化が可能となる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形で説明することもできる。
即ち、本実施形態は、別の観点から表現すれば、下記(1)〜(6)に示す形でも表すことができる。
(1)マトリックス相を形成するスチレン系樹脂中にゴム状重合体粒子が分散してなるゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、ゲル分が1.0〜25.0質量%であり、マトリックス相のZ平均分子量(Mz)が50万以上であり、マトリックス相の、分子量150万以上における分岐比をgM1、分子量100万〜150万における分岐比をgM2とすると、gM1が0.70〜0.20であり、且つ(gM2−gM1)の値が0.05以上であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(2)前記(1)又は(2)に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、スチレン系単量体に対して、1分子中に複数の二重結合を有し、且つ分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を質量基準で50ppm〜1000ppm添加し、重合して得られるスチレン系樹脂(a)とゴム変性ポリスチレン(b)を(a)/(b)=5/95〜95/5の質量比率でブレンドして得られるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(3)前記(1)〜(2)のいずれかに記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、ゴム状重合体粒子の体積平均粒子径が2.0〜8.0μmであるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、200℃で測定した溶融張力(MT)が7〜20gfであるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物を成形する工程を含む、ゴム変性スチレン系樹脂シートの製造方法。
(6)前記(5)に記載の製造方法によって得られるゴム変性スチレン系樹脂シート。
(7)前記(6)に記載のゴム変性スチレン系樹脂シートを成形してなる食品容器。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<溶剤可溶性多官能ビニル化合物共重合体A(架橋剤A)の製造>
ジビニルベンゼン3.1モル(399.4g)、エチルビニルベンゼン0.7モル(95.1g)、スチレン0.3モル(31.6g)、2−フェノキシエチルメタクリレート2.3モル(463.5g)、トルエン974.3gを3.0Lの反応器内に投入し、50℃で42.6gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を添加し、6.5時間反応させた。重合反応を炭酸水素ナトリウム溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、多官能ビニル芳香族共重合体A(架橋剤A)372.5gを得た。この多官能ビニル共重合体A(架橋剤A)の重量平均分子量Mwは8000で、ジビニル化合物由来のビニル基を含有する構造単位(a1)のモル分率は0.44、末端の2−フェノキシエチルメタクリレート由来の二重結合(a2)は0.03、両者を合わせた合計のモル分率(a3)は0.47であった。また重量平均分子量8000における共重合体の慣性半径は6.3nmであった。本共重合体の慣性半径と二重結合のモル分率の比は13.4であり、かつ、直鎖型の分子量8000における慣性半径が15nmであることと比較すると本合成例における多官能ビニル共重合体は分岐構造をとっていることがわかる。
<スチレン系樹脂(a)の製造>
<樹脂A>
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロー型反応器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。スチレン単量体90質量部、エチルベンゼン10質量部、2,2−ジ(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.020質量部、架橋剤A0.030質量部からなる原料溶液を、14L/hrの供給速度にて第1反応器に連続的に供給し、第1反応器の温度を118℃、第2反応器の温度を125℃、第3反応器の温度は120〜135℃で重合を行った。得られた重合液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出しして冷却した後、切断してペレットとした。なお、1段目の脱揮槽内の樹脂温度は185℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は67kPaとし、2段目の脱揮層内の樹脂温度は240℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.4kPaとした。得られたスチレン系樹脂の特性を表1に示す。
<樹脂B〜D>
表1に示す樹脂の性状となるように、原料組成や重合温度等を調整し、樹脂Aと同様の方法で樹脂B〜Dを得た。なお、樹脂C、樹脂Dには架橋剤Aを添加しなかった。
<ゴム変性ポリスチレン(b)の製造>
<樹脂E>
容積25Lの攪拌翼付完全混合型反応器を第1反応器とし、容積第40Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器を第2反応器とし、容積50Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器を第3反応器とし、容積50Lのスタティックミキサー式プラグフロー反応器を第4反応器とし、それぞれを直列に接続して重合工程を構成した。スチレン単量体78.4質量%、エチルベンゼン13.8質量%、ゴム状重合体として旭化成ケミカルズ社製ポリブタジエン「ジエン55AE」7.8質量%からなる原料溶液を、20L/hrの供給速度で反応器に連続的に供給し、第1反応器の温度を125℃、第2反応器の温度を128〜130℃で重合を行った後、第2反応器の出口からの重合液に対し、t−ブチルクミルパーオキサイドを0.020質量%、t−ドデシルメルカプタン0.015質量部添加し、第3反応器の温度を128〜128℃、第4反応器の温度を135〜160℃で重合を行った。得られた重合液に、重合体に対して2.0質量%の濃度となるようにホワイトオイルを添加/混合し、直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出しして冷却した後、切断してペレットとした。なお、1段目の脱揮槽内の樹脂温度は190℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は60kPaとし、2段目の脱揮層内の樹脂温度は230℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.4kPaとした。得られたゴム変性ポリスチレンの特性を表2に示す。
<樹脂F〜G>
表2に示す樹脂の性状となるように、原料組成や重合温度等を調整し、樹脂Eと同様の方法で樹脂F〜Gを得た。なお、樹脂Gはゴム状重合体として、宇部興産社製ポリブタジエン「BR−15HB」を用いた。
<樹脂H>
スチレン単量体80.9質量部、エチルベンゼン14.3質量部、旭化成ケミカルズ社製ポリブタジエン「ジエン55AE」4.8質量部、架橋剤A0.050質量部からなる原料溶液を用い、第2反応器の出口からの重合液に対し、t−ブチルクミルパーオキサイドを0.030質量%、t−ドデシルメルカプタン0.020質量部添加し、第4反応器の温度を126〜137℃とした以外は樹脂Eと同様の方法で樹脂Hを得た。
<樹脂I>
スチレン単量体80.9質量部、エチルベンゼン14.3質量部、旭化成ケミカルズ社製ポリブタジエン「ジエン55AE」4.8質量部、架橋剤A0.050質量部からなる原料溶液を用い、第2反応器の出口からの重合液に対し、t−ブチルクミルパーオキサイドを0.030質量%、t−ドデシルメルカプタン0.040質量部添加し、第4反応器の温度を126〜137℃とした以外は樹脂Eと同様の方法で樹脂Iを得た。
<実施例1〜6、比較例1〜6>
上記の方法で製造したスチレン系樹脂(樹脂A〜D)とゴム変性ポリスチレン(樹脂E〜G)を表3に示す質量部比率にてヘンシェルミキサーで混合し、180〜220℃に設定した二軸押出機(神戸製鋼所製、KTX30α)にて溶融コンパウンドした。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
次に、得られた樹脂ペレットを用いて、スクリュー径40mmのシート押出機に供給した。樹脂溶融ゾーンの温度は180〜220℃に設定し、Tダイ(コートハンガーダイ)より吐出量10kg/hで溶融押出した後、80℃に設定したキャストロール、タッチロールに圧着し、幅40mm、厚み0.75mmのシートを得た。得られたシートの特性を表3に示す。
なお、シート特性、容器特性は以下の方法により評価した。
(1)引張試験
シート成形品よりJISK−6251−1号ダンベル試験片を押出方向(MD)を長手として5本ずつ切り出した。次に、インテスコ社製5本掛け引張試験機を用い、チャック間70mmに調整したつかみ具に試験片をセットした後、23℃、引張速度5mm/minで引張試験を行った。測定により得られた応力−歪み曲線を用いて、下記式より引張破壊強さ、引張弾性率、を算出し、n=5の平均値を測定値とした。
引張破壊強さσ(MPa)=破断点における荷重F(N)/試験片の断面積A(mm
引張弾性率E(MPa)=応力−歪み曲線の初めの直線上の2点間の元の断面積による応力の差Δσ(MPa)/同じ2点間の歪みの差Δε
(2)デュポン衝撃強度
デュポン衝撃試験機(東洋精機社製)を使用し、23℃で、1/2インチ半球状撃芯、荷重200gにて測定を行った。結果はJIS K7211の50%破壊エネルギー値(単位:J)で表示した。
(3)容器の偏肉性
単発成形機を用いてシートを口径φ45mm、深さ50mm、容器の口部から底面に向かって35mmの位置の胴周部にR2.5の屈曲部を有するカップ形状容器に真空成形した。容器の側面厚みに対する屈曲部の厚みの割合が0.8以上のものを◎、0.8〜0.7のものを○、0.7〜0.5のものを△、0.5以下のものを×として容器の偏肉性を評価した。
(4)容器の座屈強度
上記で得られた容器について、小型卓上試験機Ez−test(島津製作所社製、型式:Ez−SX)を用い、容器の口部を下側とし2枚の板で挟んだ状態で、上側から100m/mmの速度で圧縮し、2.5mm座屈時(屈曲部の座屈時)の荷重を測定した。測定は成形容器30個について行い、その平均値を容器の座屈強度とした。
(5)容器の落下強度
上記で得られた容器について、80gの水を充填し、口部をシールした後、5℃に調整した恒温槽で24h状態調整を行った。これを、容器底面を下側にした状態で、70〜120cmの範囲の高さから10cm毎に高さを変え垂直落下させ、割れを確認した。110cm以上で割れが発生しないものを◎、100cmで割れが発生しないものを○、90cmで割れが発生しないものを△、90cm以下で割れが発生するものを×として評価した。
実施例のシートは、比較例に比べて引張強度と衝撃強度に優れ、それを成形した容器は偏肉が少ないため座屈強度が高く、且つ落下強度にも優れる。
比較例1では、分岐比gM1が高すぎたために容器の偏肉性、座屈強度、落下強度が低下した。
比較例2では、分岐比gM1が高すぎたことに加え、マトリックス相のZ平均分子量(Mz)が低すぎたために、容器の偏肉性、座屈強度、落下強度が低下した。
比較例3では、ゲル分が低すぎたことに加えて、(分岐比gM2−分岐比gM1)の値が小さすぎたためにシート強度や容器の落下強度が低下した。
比較例4では、ゲル分が高すぎたことに加えて、分岐比gM1、Z平均分子量(Mz)が低すぎたために、容器の偏肉性、座屈強度が低下した。
比較例5では、分岐比gM1が高すぎたことに加えて、(分岐比gM2−分岐比gM1)の値が小さすぎたために容器の偏肉性、座屈強度、落下強度が低下した。
比較例6では、分岐比gM1が高すぎたことに加えて、(分岐比gM2−分岐比gM1)の値が小さすぎたために容器の偏肉性、座屈強度、落下強度が低下した。
以上の結果から、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のゲル分、マトリックス相のZ平均分子量(Mz)、分岐比gM1,gM2を特定の範囲としたときにおいてのみ、シート強度が向上し、且つ、容器の偏肉が抑制され、座屈強度、落下強度が大きくなることが分かった。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いることで、剛性と耐衝撃性のバランスに優れるシートを得る事ができ、そのシートを成形した容器は偏肉が少ないため、容器の圧縮強度や落下強度に優れ、容器の複雑形状化や薄肉軽量化が可能となる。

Claims (7)

  1. マトリックス相を形成するスチレン系樹脂中にゴム状重合体粒子が分散してなるゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    ゲル分が1.0〜25.0質量%であり、
    マトリックス相のZ平均分子量(Mz)が50万以上であり、
    マトリックス相の、分子量150万以上における分岐比をgM1、分子量100万〜150万における分岐比をgM2とすると、
    gM1が0.70〜0.20であり、且つ(gM2−gM1)の値が0.05以上である
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    スチレン系単量体に対して、1分子中に複数の二重結合を有し、且つ分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を質量基準で50ppm〜1000ppm添加し、重合して得られるスチレン系樹脂(a)とゴム変性ポリスチレン(b)を(a)/(b)=5/95〜95/5の質量比率でブレンドして得られる
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    ゴム状重合体粒子の体積平均粒子径が2.0〜8.0μmである
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    200℃で測定した溶融張力(MT)が7〜20gfである
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物を成形する工程を含む
    ゴム変性スチレン系樹脂シートの製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法によって得られるゴム変性スチレン系樹脂シート。
  7. 請求項6に記載のゴム変性スチレン系樹脂シートを成形してなる食品容器。
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