JP2020012142A - 高清浄鋼の溶製方法 - Google Patents
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Abstract
Description
脱酸には、酸素と結合して酸化物を生成する元素の添加が一般に行われており、Al(アルミニウム)の他、Si(珪素)、C(炭素)、Ti(チタン)、Ca(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)、REM(希土類金属)等を、脱酸材として用いることが知られている。
このうち、脱酸材として用いるAlは、安価で、かつ、強い脱酸効果があり、これを用いて製造した鋼材は、飲料缶や自動車用部品材料等の用途を含めて使用実績があるため、汎用性が高い。
更に、溶鋼中にアルミナが多量に存在すると、鋳造時において、浸漬ノズル内面へのアルミナの付着や凝集が促進され、鋳型(モールド)内での偏流発生や浸漬ノズル閉塞が生じることに起因して、湯面の変動量が大きくなり、モールドパウダーの混入(パウダー系介在物)による品質劣化の原因となる。
例えば、特許文献1には、RH真空脱ガス装置(環流型脱ガス装置)での脱炭処理に続いて、真空槽内圧力を一定あるいは更に減圧して、Alを添加すること及び取鍋内の溶鋼に対する浸漬管の浸漬深さを浅くすることが記載されている。なお、一般に、処理中に浸漬管の浸漬深さを浅くする操作は行わないが、特許文献1では、この操作によって真空槽内の溶鋼深さを浅くすることができ、この状態で環流処理を行うことにより、非金属介在物の凝集浮上を促進させることが記載されている。具体的には、浸漬管の浸漬深さを浅くする操作により、環流処理時の真空槽内の溶鋼深さを50mm以上100mm未満の範囲とすることが、効率的な介在物除去条件として記載されている。
また、特許文献2に記載の方法は、特許文献1に記載の方法と同様、例えば10Torr以下の低圧真空下で処理を行うことから相応の清浄化効果は得られる。しかし、加窒処理の条件は、加窒に対して最適化された条件であるため、介在物を浮上除去する観点からは、以下の課題があることを本発明者らは知見した。
上記した20分程度の加窒処理は、処理時間として長時間であるため、低圧真空処理中に槽内に付着した地金の再溶解や耐火物の欠損等の発生頻度が大きくなる。この地金中には種々の粒径の介在物も含まれており、また、耐火物の欠損はそれ自体が外来系の介在物となってしまう。
本発明は、以上の知見をもとになされたものであり、その要旨は以下の通りである。
前記真空脱ガス処理の前半に、前記真空槽内を1.3kPa以下の低圧真空雰囲気とした上で、15〜45分間の脱ガス処理を行い、
前記真空脱ガス処理の後半に、前記真空槽内を20〜40kPaの高圧真空雰囲気とした上で、5〜15分間の脱ガス処理を行った後、
溶鋼を受け入れる受湯部と該溶鋼を連続鋳造する鋳型に注入する排湯部とに区切る堰が内部に設けられ、前記受湯部と前記排湯部を連通する1又は複数の溶鋼流路が前記堰に形成され、しかも、前記溶鋼流路の受湯部側に位置する開口部の前記受湯部の底面からの高さ位置を、前記受湯部の溶鋼深さの0.2倍以下としたタンディッシュに、前記真空脱ガス処理した溶鋼を注湯し、前記溶鋼流路を流れる溶鋼を誘導加熱する。
一方、前記した特許文献1に記載の方法は、真空槽内の圧力を変更することなく(低圧真空雰囲気のまま)、取鍋内の溶鋼に対する浸漬管の浸漬深さを浅くする特殊な操作を記載しており、本発明のように高圧真空雰囲気とすることは記載されていない。
更に、特許文献2は、前記したように、加窒処理時間として19〜20分を記載して、本発明の高圧真空雰囲気での脱ガス処理とは異なる条件を例示し、不活性ガスの吹込み量を、低圧真空雰囲気での脱ガス処理と比較して減少させる高圧真空雰囲気での脱ガス処理では、清浄化効果が損なわれることを実質的に記載している。
そして、この溶鋼を、受湯部と排湯部とに区切る堰が内部に設けられ、この堰の所定高さ位置に受湯部と排湯部を連通する溶鋼流路が形成されたタンディッシュに注湯し、溶鋼流路で誘導加熱しながら連続鋳造するので、上記した真空脱ガス処理により凝集促進と強度向上が図られた溶鋼中の介在物を、その破壊を抑制して浮上除去できる。
従って、従来の技術よりもアルミナ介在物を低減した高清浄鋼を製造でき、特に従来技術では困難であった、粒径(長径)が20μmクラスのアルミナ介在物の個数を低減し、全酸素量(T.[O]値)が例えば10ppm以下の極めて高度な清浄性の鋼を安定して鋳造することが可能となる。
まず、本発明の高清浄鋼の溶製方法に想到した経緯について説明する。
前記した特許文献1、2等の従来技術では、ある程度の清浄化効果は認められるものの、いずれも単一の真空脱ガス工程(RH真空脱ガス装置)のみの処理であるため、例えば、鋼材製品中に残存する粒径20μmクラスの介在物の個数を低減したうえで、極めて厳しい清浄度(例えば、全酸素量(T.[O]値)≦10ppm)が求められる鋼材の製造への対応は困難であった(更なる清浄化に関する記載はなかった)。
この方法では、真空槽内の溶鋼量が少なくなり、真空槽内の溶鋼の単位体積当たりの撹拌力が大きくなるため、及び、溶鋼の浮上に要する時間が短くなるため、溶鋼中の介在物の凝集や浮上が促進されるとしている。
しかしながら、真空槽内の少量容積の溶鋼に対する撹拌が激しすぎると、凝集合体した粒子の一部は合体直後に剪断による崩壊を起こすこととなり、崩壊により再度細粒化した粒子が取鍋内へと排出されることとなる。
このため、真空槽内と取鍋内を循環する溶鋼について、循環時における高低差は一定であり、循環する単位時間当たりの溶鋼量も一定であるため、本発明者らは、介在物の凝集合体以外に、循環する環流の剪断力による介在物の崩壊が発生して、高清浄化が進みにくいものと考えた。
即ち、上記した高圧真空雰囲気での処理により、真空槽内の溶鋼の湯面を低下させ、取鍋の底面から真空槽内の溶鋼の湯面までの距離を短縮させて、環流時における溶鋼の循環高さ方向の距離を短くし位置エネルギーを低減することで撹拌エネルギーを弱め、かつ、撹拌を弱める(高圧真空化)ことでも撹拌エネルギーを弱め、これにより、凝集した介在物の崩壊を防止し、介在物の凝集合体を緩やかに促進する。また、一定の時間(5〜15分)処理することで、凝集合体した介在物の強度向上を図る。
図1に示すRH法に用いるRH真空脱ガス装置(以下、単に脱ガス装置とも記載)10は従来公知のものであり、真空槽11と、この真空槽11の下部に連通する2本の浸漬管、即ち、溶鋼の上昇側と下降側の浸漬管12、13とを有するものである。使用にあっては、取鍋14内の溶鋼を、2本の浸漬管12、13を通じて真空槽11内に吸い上げ、上昇側の浸漬管(上昇管)12から不活性ガスの吹き込み(通常、5〜15NL/分/トン程度。溶鋼1トンに対する1分あたりのガス吹込み量)を行い、ガスリフト効果によって上昇側と下降側の浸漬管12、13を通じて、取鍋14と真空槽11との間で循環させる。
この介在物の凝集合体に関しては、「介在物粒子が耐火物壁へ衝突することにより、壁面での介在物の凝集が促進される」ことや、「溶鋼流動における乱流成分中での介在物粒子同士の衝突による凝集合体促進」などの現象が唱えられている。
一般的に、真空脱ガス処理においては、溶鋼環流量が増加することにより、ある程度のレベルまでの介在物の凝集合体及び浮上除去が促進されることが知られており、その効果は低圧真空処理で顕著である。
本発明は、上記した処理に加え、脱ガス処理の後半で高圧真空処理を行うことにより、緩やかな凝集合体を促進しつつ、介在物の崩壊防止や強度向上を実現することを特徴としている。このとき、一部の介在物の浮上除去は進行するが、当該精錬処理に続く連続鋳造工程において、タンディッシュにより、最終的に介在物を浮上除去させる特徴も有している。
連続鋳造においては、連続鋳造速度に対応する量で溶鋼がタンディッシュに注湯されるため(例えば、8トン/分以下程度の量)、タンディッシュ内での溶鋼の流動速度が、取鍋のガス撹拌における溶鋼の撹拌流速よりも小さく、介在物の凝集合体の効果が望みにくい。
また、タンディッシュ内で溶鋼温度が低下すると、溶解度積の低下によって新たな微細アルミナの生成(2Al+3O→Al2O3)を招き、鋳造した鋳片中のアルミナ介在物の増加が顕著になる場合がある。
一方、タンディッシュ内で溶鋼を加熱することにより、新たなアルミナ介在物の生成を抑制する効果が期待できる。また、タンディッシュの内部に堰(仕切り壁)を立設し、タンディッシュ内の溶鋼に上昇流を発生(加熱後の溶鋼に発生)させると、タンディッシュ内の湯面に存在するスラグの撹拌効果を抑制した状態で、30〜50μm程度の粒子径を有する溶鋼中の介在物を浮上させ、これをスラグに捕捉させる効果が期待できる。
従って、タンディッシュの内部に、受湯部と排湯部を分割(独立して配置)する堰を立設し、しかも、この堰に、受湯部と排湯部を連通する1又は複数の溶鋼流路を形成する中空耐火物を設け、この中空耐火物の領域で溶鋼を加熱する。
即ち、図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る高清浄鋼の溶製方法は、大気圧下で吹酸脱炭する一次精錬を行った溶鋼に金属アルミニウムを添加して、溶鋼中の溶存酸素濃度を40ppm以下とした取鍋14内の溶鋼に、RH真空脱ガス装置10を用いて真空脱ガス処理を行う際に、真空脱ガス処理の前半に低圧真空雰囲気で脱ガス処理を行い、引き続き、真空脱ガス処理の後半に高圧真空雰囲気で脱ガス処理を行った後、タンディッシュ15に注湯して連続鋳造する方法である。
以下、詳しく説明する。
通常、吹酸脱炭が行われた溶鋼中の溶存酸素濃度は100〜800ppm程度であるため、脱酸する必要がある。
本発明では、金属アルミニウムを添加する(金属アルミニウムを含むものを添加することも含む)ことで、溶鋼中の溶存酸素濃度を40ppm以下とすることを前提としている。
上記した処理により、溶鋼中にはアルミニウム酸化物(アルミナ:以下、介在物とも記載)が存在することとなる。
この高清浄化の手段としては、前記したRH真空脱ガス装置10を用いる。
具体的には、図1に示すように、溶鋼中の溶存酸素濃度を40ppm以下とした取鍋14内の溶鋼に、RH真空脱ガス装置10の浸漬管12、13を浸漬して、上昇側の浸漬管12から不活性ガスを吹き込み、真空槽11と取鍋14との間で溶鋼を環流させる真空脱ガス処理を行う。
この真空脱ガス処理は、以下のように、前半と後半に分けて行う。
この脱ガス処理の第一目的は、溶鋼の炭素濃度の調整(脱炭)であるため、上記した条件を採用する必要がある。ここで、真空槽11内の圧力が1.3kPaを超える場合、脱炭反応が遅くなって処理時間が遅延するため、溶鋼の温度低下を招く。
なお、上記した真空槽11内の圧力であれば、15〜45分程度の時間で、脱ガス処理を完了させることができる。
凝集合体により70μm以上となった介在物は、溶鋼中の流動において慣性力が高いものと推定され、真空槽11と取鍋14を循環する溶鋼流(環流)から外れ、取鍋内を浮上する傾向が強い。
従って、環流に残存することにより、剪断力を受けて破壊することが少ないものと推定される。
凝集合体により30〜50μmとなった介在物は、粒径の増加(凝集合体)は果たせたものの、顕著な浮上除去は起こりにくく、環流中に残存する傾向が強いものと推定される。
このため、介在物は、剪断力を受けて破壊される傾向があるものと考えられた。
剪断力は、溶鋼流の存在に伴って不可避的に発生するものであり、その発生条件としては、脱ガス処理を長時間行う場合、溶鋼の搬送中に取鍋底からガスが吹き込まれる場合、取鍋からタンディッシュへ溶鋼を落下流で供給する場合、等があげられる。
20μm以下の介在物は、凝集合体を経ても30〜50μmと同様に顕著な浮上除去は起こりにくく、環流中に残存する傾向が強いものと考えられる。また、30〜50μmの介在物と同様に、剪断力を受けて破壊される傾向があるものと考えられる。
このような脱ガス処理を行うことで、溶鋼の高清浄化の効果が得られることについて、本発明者らは以下の機構が働いたものと考えた。
また、高圧真空とすることで、溶鋼の吸い上げ量が低減して環流速度を低減でき、撹拌エネルギーを弱めることもできる。
ここで、真空槽内の圧力が20kPa未満の低圧真空である場合、撹拌エネルギーが多く、凝集合体した介在物の顕著な破壊抑制効果が得られない。一方、真空槽内の圧力が40kPa超の場合、真空槽内に溶鋼を吸い上げること、即ち溶鋼の環流自体が困難となり、処理そのものができない場合がある。
具体的には、前記した低圧真空処理によって凝集合体した直後の介在物は強度が低く、溶鋼流の剪断力を受けて破壊する場合がある。このため、処理時間は15分以下とするとよい。一方、5分以上の処理であれば、凝集合体した介在物は強度を向上できる。
これにより、後述するタンディッシュでの処理まで介在物の破壊を抑制できる(タンディッシュでの浮上除去が可能となる)。
(70μm以上)
低圧真空処理時(前半処理時)に概ね取鍋14内での浮上が終了しており、一部溶鋼中に残存したとしても、高圧真空処理時(後半処理時)にも取鍋14内で浮上するものと考えらえる。
(30〜50μm)
低圧真空処理時の凝集合体により30〜50μmとなった介在物は、環流中に残存する傾向が強いが、高圧真空処理時にも溶鋼の環流中に存在し、破壊を抑制しながら強度は向上するものと考えられた。
これによって、介在物は破壊が進行することなく、真空脱ガス処理以降の工程に搬送される溶鋼中に存在することとなるが、この介在物は、後述するタンディッシュでの浮上除去につなげることができる。
低圧真空処理による凝集合体を経ても20μm以下の介在物は、高圧真空処理において破壊を防止しながら環流処理による凝集合体が緩やかに進み、強度も向上するものと考えられる。
従って、真空脱ガス処理以降に供給される溶鋼は、20μm以下の介在物が減少し、例えば、30〜50μm程度に凝集合体してその強度も向上しているものと考えられ、この介在物がタンディッシュで浮上除去される。
また、30〜50μm程度の介在物は、上記した脱ガス処理により従来技術に比べて破壊が発生しなくなったため、その存在割合を高位に維持でき、更に強度も向上させているため、存在割合が高位の状態で、溶鋼をタンディッシュまで搬送できる。
更に、20μm以下の介在物は、上記した精錬処理(一次精錬〜真空脱ガス処理)を経て、破壊を抑制した凝集合体(例えば、30μm以上に凝集合体)が起こり、従来の技術に比べて存在割合を低減させた(あるいは20μm以下の介在物の増加を抑制した)状態で、溶鋼をタンディッシュまで搬送できる。
タンディッシュ15は、その内部が堰17により、取鍋14からロングノズル16を介して溶鋼を受け入れる受湯部18と、この溶鋼を連続鋳造する鋳型(図示しない)に注入する排湯部19とに分割されている。なお、排湯部19の底部には浸漬ノズル20が設けられ、排湯部19内の溶鋼を浸漬ノズル20を介して鋳型に注入する構成となっている。
受湯部18と排湯部19を分割する堰17には、この受湯部18と排湯部19を連通する溶鋼流路21を形成する中空耐火物22が設けられている。溶鋼流路21(中空耐火物22)は、受湯部18側の開口部23から溶鋼を受け、この溶鋼を排湯部19側の開口部24から排湯部19へ排出するものである。この溶鋼流路21を流れる溶鋼は、誘導加熱装置(ここでは、誘導加熱コイル25)によって誘導加熱されている。
ここで、堰17に設ける溶鋼流路21の数は、例えば、鋳造条件に応じて、1個でもよく、また、2個以上の複数個でもよい。なお、溶鋼流路21の数が複数個の場合は、全ての溶鋼流路21の受湯部側に位置する開口部の受湯部の底面からの高さ位置が、上記した条件を満足するように調整する。この溶鋼流路21の長さ(堰17の厚み)は、例えば、500〜1500mm程度である。
そして、堰17と中空耐火物22は、いずれも耐火物で構成されているが、使用用途に応じて、同一材質で構成してもよく、また、異なる材質で構成してもよい。
更に、溶鋼流路21は、受湯部18から排湯部19へかけて、下方に向けて傾斜させているが、水平でもよい。また、排湯部19の底面27の深さ位置は、受湯部18の底面26の深さ位置よりも深くしているが、同一の深さでもよい。
なお、溶鋼流路は、中空耐火物によって形成することに限定されるものではなく、例えば、堰に孔を貫通(貫通孔)させることで形成することもできる。
一般に、排湯部19の表層の溶鋼温度はタンディッシュ15内で低下するため、受湯部18の溶鋼温度に比べて排湯部19の表層の溶鋼温度は低くなり、排湯部19の深さ方向で溶鋼に温度差が生じる。このため、溶鋼流路21から排湯部19へ排出される溶鋼は、溶鋼流路21内で誘導加熱されない場合であっても、上記した温度差によって溶鋼の対流(上昇流)が生じ、この対流によって、溶鋼流路21から排湯部19へ排出される溶鋼中の介在物が浮上除去される。
なお、溶鋼流路21から排出された溶鋼流としては、上記した上昇流以外に、排湯部19を直進する流れがあり、この流れが排湯部19内の溶鋼流の主体となる。このとき、前記した低圧真空処理と高圧真空処理により凝集合体した介在物は、30〜50μm程度の介在物割合が高位に維持されているため、直進する溶鋼流であっても介在物には自己浮上力があり、浮上除去することが可能である。
また、鋳造時間が長くなってタンディッシュ15内で溶鋼温度が低下すると、溶鋼粘性の上昇に起因して介在物の浮力が弱まり、介在物の浮上効率の悪化を招くと共に、アルミナ生成反応(2Al+3O→Al2O3)の溶解度積が低下し、20μm未満の微細なAl2O3が新たに生成(二次生成)することが懸念される。
更に、前記した介在物の浮上を促進し、新たな微細Al2O3の生成を抑制するため、タンディッシュ15内に受湯部18と排湯部19に区切る堰17を設け、この受湯部18と排湯部19を、堰17に設けられた溶鋼流路21で連通させ、この溶鋼流路21内の溶鋼を誘導加熱する。
従って、得られた溶鋼を連続鋳造することで、従来よりもアルミナ介在物を低減した高清浄鋼を製造でき、特に従来技術では困難であった、粒径が20μmクラスのアルミナ介在物の個数を低減し、全酸素量(T.[O]値)が例えば10ppm以下の極めて高度な清浄性の鋼を安定して鋳造することが可能となる。
ここでは、以下の方法を基本として実機水準にて各条件を変更し、鋳造後の定常部鋳片の清浄性の評価を行った。ここで、定常部鋳片とは、鋳造するチャージの連続鋳造長さの概ね中央部分(品質が安定した部分)を意味する。なお、評価対象の鋼種は、高清浄性が求められる棒線材の鋼種(歯車用鋼)とした。
その後、更に取鍋を移動し、RH真空脱ガス装置による真空脱ガス処理を実施した。このとき、RH真空脱ガス装置の浸漬管の溶鋼に対する浸漬深さは、処理の開始から終了まで変更することなく、取鍋に対して一定の高さ位置に保持した。
そして、この取鍋内の溶鋼をタンディッシュに注湯して、連続鋳造を実施した。
試験条件とその結果及び評価を、表1に示す。
ここで、実施例1〜6と比較例1〜6には上記した各処理条件を記載しているが、従来法については、真空脱ガス処理の後半の高圧真空処理を行わず、処理終了まで低圧真空雰囲気下(1.3kPa以下)で脱ガス処理を行っているため、真空脱ガス処理の後半については「(処理なし)」と記載している。なお、従来法の真空脱ガス処理後に行う後述するタンディッシュの鋳造条件は実施例1と同一である。
ここで、「堰の形状」とは、タンディッシュ内に配置される堰の構造であり、「A」はタンディッシュ内を受湯部と排湯部に区切る堰の構造(図2参照)を、「B」は図3に示すタンディッシュ30に設置された上堰31の構造を、それぞれ指している。この上堰31は、受湯部32側の溶鋼深さをh(約1m)として、深さ方向の上部部分(湯面部分)「0.3×h(hの0.3倍)」のみを、受湯部32側と排湯部33側とに区切る堰である。この場合、溶鋼の深さ方向の上部分を流れる溶鋼流は、上堰31に沿って上堰31の下側に回り込む強制的な流れが発生(強制的な下降流が生成した後、上堰31の下側を通過して、強制的な上昇流が生成)する。
なお、上堰を用いた場合は、溶鋼流路が設けられていないため、誘導加熱は行われない。
「溶鋼流路の位置」とは、溶鋼流路の受湯部側の開口部の下端の、受湯部の底面からの高さ位置であり、受湯部の溶鋼深さをH(約1m)として、0×H(底面)、0.2×H(Hの0.2倍)、0.4×H(Hの0.4倍)の3水準を用いた。なお、上堰を用いた場合は、その浸漬深さを上記したように0.3×hに設定している。
「20μm以上の介在物検出個数の評価」には、定常部鋳片の代表位置から切り出したサンプル(一辺が概ね30mmの矩形)を鏡面研磨後に光学顕微鏡にて調査した、長径が20μm以上のアルミナ介在物個数(単位面積当たりのアルミナ介在物の検出個数に換算)を用いて行った。なお、表1では、比較例4の試験条件下で得られた長径20μm以上の介在物検出個数を「1.00」として、他の試験条件で得られた介在物検出個数を指数化し、この指数が1.00以上を「不合格」とし、1.00未満を「合格」として、評価した。
「T.[O]」の欄には、定常部鋳片の代表位置のトータル酸素濃度(全酸素量)を測定し、その値が10ppm以下の場合を○評価(合格)、11ppm以上であった場合を×評価(不合格)とした。なお、×評価の比較例の内、トータル酸素濃度が最も低い値であったのは比較例4であり、この比較例4は14ppmであっため、実施例には比較例の約3割程度かそれ以上の改善効果が見られた。
この場合、真空脱ガス処理(低圧真空雰囲気と高圧真空雰囲気での脱ガス処理)による介在物の凝集の促進効果と凝集合体した介在物の強度の向上効果、及び、タンディッシュによる凝集合体したアルミナ介在物の浮上除去効果が得られた。
その結果、表1に示すように、「20μm以上の介在物検出個数の評価」と「T.[O]」は共に良好であり、鋳片の清浄性を良好にできた(総合評価:○)。
これは、脱ガス処理後半での処理時間が長くなり過ぎ、凝集した介在物の破壊を招くため、タンディッシュでの介在物の浮上除去が不足したことによるものと考えられる。
これは、脱ガス処理後半での処理時間が不足し、凝集した介在物の強度向上が不足したため、真空脱ガス処理以降から鋳造までにおいて、凝集した介在物の破壊を招き、タンディッシュでの浮上除去が不足したことによるものと考えられる。
これは、真空槽内の圧力が低くなり過ぎ、脱ガス処理前半に対する、取鍋の底面から真空槽内の溶鋼湯面までの距離の短縮が不足する結果となり、撹拌エネルギーの低減が不足して凝集合体した介在物の破壊を招き、タンディッシュでの浮上除去が不足したことによるものと考えられる。
この比較例3は、前記した特許文献1の条件(真空槽内の低圧真空状態を変更せずに浸漬管の浸漬深さを浅くする条件)に近い条件である。従って、特許文献1の方法では、凝集合体した介在物の破壊を招き、タンディッシュでの浮上除去が不足するものと推察される。
なお、実施例5の条件に対し、脱ガス処理後半の真空槽内圧力の条件を適正範囲の上限値(40kPa)超とすることは、前記したように、真空槽内に溶鋼を吸い上げることが困難となり、処理そのものができない場合があることから、記載していない。
これは、本発明の真空脱ガス処理条件に従う処理を実施しても、タンディッシュでの介在物の浮上除去の際に、溶鋼加熱に伴う溶鋼の上昇流が発生しない場合は、溶鋼流路から排湯部側に吐出された溶鋼流のみで介在物を浮上させることとなるため、凝集した介在物が破壊される割合が増えたことによるものと推察される。
これは、排湯部における介在物の浮上時間が不足したため、清浄性の改善が不足し、また、一旦浮上除去した介在物が再度溶鋼中へ巻き込まれたことによるものと考えられる。
比較例6は比較例4に比べて、介在物検出個数は増加し、トータル酸素濃度(T.[O]ppm)も増加する結果が得られている(総合評価:×)。
比較例6では、溶鋼深さ方向の上部分を流れる溶鋼流が、上堰に沿って上堰の下側を回り込む強制的な流れが発生(強制的な下降流が生成した後、上堰の下側を通過して、強制的な上昇流が生成)するため、溶鋼に与える剪断力が実施例1や比較例4に比べて大きいものと推察され、凝集した介在物の破壊を招き、タンディッシュでの介在物の浮上除去が不足したものと推察された。
なお、定常部鋳片における20μm以上の介在物検出個数の評価は、実施例1よりも比較例6の方が多い結果が得られているが、タンディッシュで浮上除去しにくい20μm程度の介在物個数も比較例6の方が多い傾向にあった。このため、比較例6の条件である上堰は、介在物を崩壊させる剪断力が実施例1に比べて大きいものと推定された。
これは、凝集合体した介在物の強度向上の効果や、凝集した介在物の崩壊を防ぎながら更に凝集合体を促進する効果が不足し、タンディッシュでの浮上除去が不足したことによるものと考えられる。
Claims (1)
- 大気圧下で吹酸脱炭する一次精錬を行った溶鋼に金属アルミニウムを添加して、溶鋼中の溶存酸素濃度を40ppm以下とした取鍋内の溶鋼に、RH真空脱ガス装置の浸漬管を浸漬して、該浸漬管の上昇管から不活性ガスを吹き込み、前記RH真空脱ガス装置の真空槽と前記取鍋との間で溶鋼を環流させる真空脱ガス処理を行う際に、
前記真空脱ガス処理の前半に、前記真空槽内を1.3kPa以下の低圧真空雰囲気とした上で、15〜45分間の脱ガス処理を行い、
前記真空脱ガス処理の後半に、前記真空槽内を20〜40kPaの高圧真空雰囲気とした上で、5〜15分間の脱ガス処理を行った後、
溶鋼を受け入れる受湯部と該溶鋼を連続鋳造する鋳型に注入する排湯部とに区切る堰が内部に設けられ、前記受湯部と前記排湯部を連通する1又は複数の溶鋼流路が前記堰に形成され、しかも、前記溶鋼流路の受湯部側に位置する開口部の前記受湯部の底面からの高さ位置を、前記受湯部の溶鋼深さの0.2倍以下としたタンディッシュに、前記真空脱ガス処理した溶鋼を注湯し、前記溶鋼流路を流れる溶鋼を誘導加熱することを特徴とする高清浄鋼の溶製方法。
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JPH08291319A (ja) * | 1995-04-20 | 1996-11-05 | Nippon Steel Corp | 極低炭素鋼の溶製方法 |
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