以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1および図2は、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。図1には極低温冷凍機10の吸気工程が示され、図2には極低温冷凍機10の排気工程が示される。
極低温冷凍機10は、ガス駆動型のGM冷凍機として構成されている。
極低温冷凍機10は、作動ガス(例えばヘリウムガス)を圧縮する圧縮機12と、作動ガスを断熱膨張により冷却するコールドヘッド14と、を備える。圧縮機12は、圧縮機吐出口12a及び圧縮機吸入口12bを有する。圧縮機吐出口12a及び圧縮機吸入口12bはそれぞれ、極低温冷凍機10の高圧源及び低圧源として機能する。コールドヘッド14は膨張機とも呼ばれる。
詳しくは後述するように、圧縮機12は、圧縮機吐出口12aからコールドヘッド14に高圧PHの作動ガスを供給する。コールドヘッド14には作動ガスを予冷する蓄冷器15が備えられている。予冷された作動ガスは、コールドヘッド14内での膨張によって更に冷却される。膨張により減圧された作動ガスは蓄冷器15を通じて圧縮機吸入口12bに回収される。作動ガスは蓄冷器15を通るとき蓄冷器15を冷却する。圧縮機12は、回収した低圧PLの作動ガスを圧縮し、再びコールドヘッド14に供給する。
一般に高圧PH及び低圧PLはともに、極低温冷凍機10の周囲環境圧力(例えば大気圧)よりかなり高い。よって、高圧PH及び低圧PLはそれぞれ、第1高圧及び第2高圧と呼ぶこともできる。通例、高圧PHは例えば2〜3MPaである。低圧PLは例えば0.5〜1.5MPaである。
図示されるコールドヘッド14は単段式である。ただし、コールドヘッド14は、多段式であってもよい。
コールドヘッド14は、ガス駆動型であるから、コールドヘッド14は、ガス圧で駆動されるフリーピストンとしての軸方向可動体16と、気密に構成され軸方向可動体16を収容するコールドヘッドハウジング18と、を備える。コールドヘッドハウジング18は、軸方向可動体16を軸方向に往復動可能に支持する。モータ駆動型のGM冷凍機とは異なり、コールドヘッド14は、軸方向可動体16を駆動するモータおよび連結機構(例えばスコッチヨーク機構)を有しない。
軸方向可動体16は、軸方向(図1において上下方向、矢印Cで示す)に往復動可能なディスプレーサ20と、ディスプレーサ20を軸方向に駆動するようにディスプレーサ20に連結された駆動ピストン22と、を備える。駆動ピストン22は、ディスプレーサ20と同軸にかつ軸方向に離れて配設されている。
コールドヘッドハウジング18は、ディスプレーサ20を収容するディスプレーサシリンダ26と、駆動ピストン22を収容するピストンシリンダ28と、を備える。ピストンシリンダ28は、ディスプレーサシリンダ26と同軸にかつ軸方向に隣接して配設されている。詳細は後述するが、ガス駆動型であるコールドヘッド14の駆動部は、駆動ピストン22とピストンシリンダ28を含んで構成されている。
また軸方向可動体16は、ディスプレーサ20が駆動ピストン22と一体に軸方向に往復動するようディスプレーサ20を駆動ピストン22に剛に連結する連結ロッド24を備える。連結ロッド24もまたディスプレーサ20および駆動ピストン22と同軸にディスプレーサ20から駆動ピストン22へと延びている。
駆動ピストン22は、ディスプレーサ20に比べて小さい寸法を有する。駆動ピストン22の軸方向長さはディスプレーサ20のそれより短く、駆動ピストン22の径もディスプレーサ20のそれより小さい。連結ロッド24の径は駆動ピストン22のそれより小さい。
ピストンシリンダ28の容積はディスプレーサシリンダ26のそれより小さい。ピストンシリンダ28の軸方向長さはディスプレーサシリンダ26のそれより短く、ピストンシリンダ28の径もディスプレーサシリンダ26のそれより小さい。
なお、駆動ピストン22とディスプレーサ20の寸法関係は上述のものに限られず、それと異なっていてもよい。同様に、ピストンシリンダ28とディスプレーサシリンダ26の寸法関係は上述のものに限られず、それと異なっていてもよい。例えば、駆動ピストン22は、連結ロッド24の先端部であってもよく、駆動ピストン22の径は連結ロッド24の径と等しくてもよい。
ディスプレーサ20の軸方向往復動は、ディスプレーサシリンダ26によって案内される。通例、ディスプレーサ20およびディスプレーサシリンダ26はそれぞれ軸方向に延在する円筒状の部材であり、ディスプレーサシリンダ26の内径はディスプレーサ20の外径に一致するか又はわずかに大きい。同様に、駆動ピストン22の軸方向往復動は、ピストンシリンダ28によって案内される。通例、駆動ピストン22およびピストンシリンダ28はそれぞれ軸方向に延在する円筒状の部材であり、ピストンシリンダ28の内径は駆動ピストン22の外径に一致するか又はわずかに大きい。
ディスプレーサ20と駆動ピストン22は連結ロッド24によって剛に連結されているので、駆動ピストン22の軸方向ストロークはディスプレーサ20の軸方向ストロークと等しく、両者はストローク全体にわたって一体に移動する。ディスプレーサ20に対する駆動ピストン22の位置は軸方向可動体16の軸方向往復動の間、不変である。
また、コールドヘッドハウジング18は、ディスプレーサシリンダ26をピストンシリンダ28に接続する連結ロッドガイド30を備える。連結ロッドガイド30はディスプレーサシリンダ26およびピストンシリンダ28と同軸にディスプレーサシリンダ26からピストンシリンダ28へと延びている。連結ロッドガイド30には連結ロッド24が貫通している。連結ロッドガイド30は連結ロッド24の軸方向往復動を案内する軸受として構成されている。
ディスプレーサシリンダ26は、連結ロッドガイド30を介してピストンシリンダ28と気密に連結されている。こうして、コールドヘッドハウジング18は、作動ガスの圧力容器として構成されている。なお連結ロッドガイド30は、ディスプレーサシリンダ26またはピストンシリンダ28のいずれかの一部であるとみなされてもよい。
ロッドシール部32が、連結ロッド24と連結ロッドガイド30の間に設けられている。ロッドシール部32は、連結ロッド24または連結ロッドガイド30のいずれか一方に装着され、連結ロッド24または連結ロッドガイド30の他方と摺動する。ロッドシール部32は例えば、スリッパーシールまたはOリングなどのシール部材で構成される。ロッドシール部32によって、ピストンシリンダ28は、ディスプレーサシリンダ26に対し気密に構成されている。こうして、ピストンシリンダ28はディスプレーサシリンダ26から流体的に隔離されており、ピストンシリンダ28の内圧とディスプレーサシリンダ26の内圧は異なる大きさをとることができる。ロッドシール部32が設けられているので、ピストンシリンダ28とディスプレーサシリンダ26との直接のガス流通は生じない。
ディスプレーサシリンダ26は、ディスプレーサ20によって膨張室34と室温室36に仕切られている。ディスプレーサ20は、軸方向一端にてディスプレーサシリンダ26との間に膨張室34を形成し、軸方向他端にてディスプレーサシリンダ26との間に室温室36を形成する。室温室36は圧縮室と呼ぶこともできる。膨張室34はディスプレーサ20の下死点側に配置され、室温室36はディスプレーサ20の上死点側に配置されている。また、コールドヘッド14には、膨張室34を外包するようディスプレーサシリンダ26に固着された冷却ステージ38が設けられている。
蓄冷器15はディスプレーサ20に内蔵されている。ディスプレーサ20はその上蓋部に、蓄冷器15を室温室36に連通する入口流路40を有する。また、ディスプレーサ20はその筒部に、蓄冷器15を膨張室34に連通する出口流路42を有する。あるいは、出口流路42は、ディスプレーサ20の下蓋部に設けられていてもよい。加えて、蓄冷器15は、上蓋部に内接する入口リテーナ41と、下蓋部に内接する出口リテーナ43と、を備える。蓄冷材は、たとえば銅製の金網でもよい。リテーナは蓄冷材よりも粗い金網でもよい。
ディスプレーサシール部44が、ディスプレーサ20とディスプレーサシリンダ26の間に設けられている。ディスプレーサシール部44は、例えばスリッパーシールであり、ディスプレーサ20の筒部または上蓋部に装着されている。ディスプレーサ20とディスプレーサシリンダ26とのクリアランスがディスプレーサシール部44によって封じられているので、室温室36と膨張室34との直接のガス流通(つまり蓄冷器15を迂回するガス流れ)はない。
ディスプレーサ20が軸方向に動くとき、膨張室34および室温室36は相補的に容積を増減させる。すなわち、ディスプレーサ20が下動するとき、膨張室34は狭くなり室温室36は広くなる。逆も同様である。
作動ガスは、室温室36から入口流路40を通じて蓄冷器15に流入する。より正確には、作動ガスは、入口流路40から入口リテーナ41を通って蓄冷器15に流入する。作動ガスは、蓄冷器15から出口リテーナ43および出口流路42を経由して膨張室34に流入する。作動ガスが膨張室34から室温室36に戻るときは逆の経路を通る。つまり、作動ガスは、膨張室34から、出口流路42、蓄冷器15、および入口流路40を通って室温室36に戻る。蓄冷器15を迂回してクリアランスを流れようとする作動ガスはディスプレーサシール部44によって遮断される。
ピストンシリンダ28は、駆動ピストン22を駆動するよう圧力が制御されるピストン駆動室46を備える。ピストン駆動室46は、ピストンシリンダ28の内部空間にあたる。ピストン駆動室46は、駆動ピストン22によって、上部区画46aと下部区画46bに分けられている。駆動ピストン22は、軸方向一端にてピストンシリンダ28との間に上部区画46aを形成し、軸方向他端にてピストンシリンダ28との間に下部区画46bを形成する。駆動ピストン22が軸方向に動くとき、上部区画46aおよび下部区画46bは相補的に容積を増減させる。連結ロッド24は、駆動ピストン22の下面から下部区画46bを通って連結ロッドガイド30へと延びている。さらに、連結ロッド24は、室温室36を通ってディスプレーサ20の上蓋部まで延びている。
駆動ピストン22とピストンシリンダ28とのクリアランスであるピストンシール部48が、駆動ピストン22とピストンシリンダ28の間に設けられている。ピストンシール部48は、上部区画46aと下部区画46bのガス流通に対し流路抵抗として作用する。なおピストンシール部48は、このクリアランスを封じるよう駆動ピストン22の側面に装着されたスリッパーシールなどのシール部材を有してもよい。その場合、ピストン駆動室46の下部区画46bは、ロッドシール部32およびピストンシール部48によって密封されることになる。
駆動ピストン22が下動するとき下部区画46bは狭くなる。このとき下部区画46bのガスは圧縮され、圧力が高まる。下部区画46bの圧力は駆動ピストン22の下面に上向きに作用する。よって、下部区画46bは、駆動ピストン22の下動に抗するガスばね力を発生させる。下部区画46bは、ガスばね室と呼ぶこともできる。逆に、駆動ピストン22が上動するとき下部区画46bは広がる。下部区画46bの圧力は下がり、駆動ピストン22に作用するガスばね力も小さくなる。
コールドヘッド14は、使用される現場で図示の向きに設置される。すなわち、ディスプレーサシリンダ26が鉛直方向下方に、ピストンシリンダ28が鉛直方向上方に、それぞれ配置されるようにして、コールドヘッド14は縦向きに設置される。このように、冷却ステージ38を鉛直方向下方に向ける姿勢で設置されるとき極低温冷凍機10は冷凍能力が最も高くなる。ただし、極低温冷凍機10の配置はこれに限定されない。逆に、コールドヘッド14は冷却ステージ38を鉛直方向上方に向ける姿勢で設置されてもよい。あるいは、コールドヘッド14は、横向きまたはその他の向きに設置されてもよい。
作動ガス圧力により駆動ピストン22に作用する駆動力は、駆動ピストン22が下動するとき駆動ピストン22に下向きに働く。軸方向可動体16の自重による重力も下向きに働くから、コールドヘッド14が冷却ステージ38を鉛直方向下方に向ける姿勢で設置される場合、下動時の駆動力が重力と同じ向きとなる。反対に、上動時の駆動力は重力と逆向きとなる。ガスばね室(すなわちピストン駆動室46の下部区画46b)から駆動ピストン22に作用するガスばね力は、軸方向可動体16の上動と下動とで挙動に差異が生じることを緩和または防止するのに役立つ。
極低温冷凍機10は、ピストンシリンダ28(すなわちピストン駆動室46)とディスプレーサシリンダ26(すなわち膨張室34及び/または室温室36)との間に圧力差を生成するよう構成されている。この圧力差によって軸方向可動体16が軸方向に動く。ピストンシリンダ28に対しディスプレーサシリンダ26の圧力が低ければ、駆動ピストン22が下動し、それに伴ってディスプレーサ20も下動する。逆に、ピストンシリンダ28に対しディスプレーサシリンダ26の圧力が高ければ、駆動ピストン22が上動し、それに伴ってディスプレーサ20も上動する。
また、詳しくは後述するが、作動ガスの流路切替機構として、極低温冷凍機10は、スプールバルブ50と、一例としてロータリーバルブであってもよい圧力制御機構52とを備える。これに対して、典型的な極低温冷凍機は、作動ガスの流路切替機構としてロータリーバルブのみを有する。
スプールバルブ50は、バルブ駆動室(第1スプールバルブ室とも称しうる)54と、バルブ駆動室54の圧力に応じて第1位置と第2位置とを移動するスプール56と、を備える。スプール56は、第1位置で膨張室34を圧縮機吐出口12aに接続し、第2位置で膨張室34を圧縮機吸入口12bに接続する。スプールバルブ50は、スプール56の第1位置および第2位置間の往復動により膨張室34に周期的な圧力変動を生成する。図1にはスプール56の第1位置が示され、図2にはスプール56の第2位置が示されている。
圧力制御機構52は、スプール56が第1位置および第2位置間で往復動するようにバルブ駆動室54の圧力を制御するとともに、スプール56の往復動と同期して膨張室34の圧力変動とは逆位相の圧力変動をピストン駆動室46に生成するように構成されている。
本書において「逆位相」とは、同じ周期をもつ二室の周期的な圧力変動が約180度の位相差をもつことを意味しうるが、これに限定されない。二室(例えば、膨張室34とピストン駆動室46)の圧力変動の位相差は、極低温冷凍機10の熱力学的サイクルを形成するようにスプール56の往復動(およびそれによる膨張室34の圧力変動)と同期してディスプレーサ20の往復動(およびそれによる膨張室34の容積変動)を生じさせる大きさである限り、「逆位相」と言える。二室の圧力変動の位相差は、例えば、150度またはそれより大きく、160度またはそれより大きく、170度またはそれより大きく、または、175度またはそれより大きくてもよい。二室の圧力変動の位相差は、例えば、210度またはそれより小さく、200度またはそれより小さく、190度またはそれより小さく、または、185度またはそれより小さくてもよい。
圧力制御機構52は、具体的には、スプールバルブ圧力切替バルブ(以下、主圧力切替バルブともいう)58とピストン駆動室圧力切替バルブ(以下、副圧力切替バルブともいう)60とを備える。主圧力切替バルブ58は、主吸気開閉バルブV1と主排気開閉バルブV2とを有する。副圧力切替バルブ60は、副吸気開閉バルブV3と副排気開閉バルブV4とを有する。
主圧力切替バルブ58は、圧縮機吐出口12aまたは圧縮機吸入口12bをスプールバルブ50のバルブ駆動室54に選択的に連通するよう構成されている。主圧力切替バルブ58においては、主吸気開閉バルブV1および主排気開閉バルブV2がそれぞれ排他的に開放される。すなわち、主吸気開閉バルブV1および主排気開閉バルブV2が同時に開くことは禁止されている。なお主吸気開閉バルブV1および主排気開閉バルブV2が一時的にともに閉じられてもよい。
副圧力切替バルブ60は、圧縮機吐出口12aまたは圧縮機吸入口12bをピストンシリンダ28のピストン駆動室46に選択的に連通するよう構成されている。副圧力切替バルブ60は、副吸気開閉バルブV3および副排気開閉バルブV4がそれぞれ排他的に開放されるよう構成されている。すなわち、副吸気開閉バルブV3および副排気開閉バルブV4が同時に開くことは禁止されている。なお副吸気開閉バルブV3および副排気開閉バルブV4が一時的にともに閉じられてもよい。
副圧力切替バルブ60は、駆動ピストン22がディスプレーサ20の軸方向往復動を駆動するようにピストン駆動室46の圧力を制御するように構成されている。典型的には、ピストン駆動室46での圧力変動は、膨張室34での圧力変動と同じ周期でほぼ逆の位相で生成される。膨張室34が高圧PHのときピストン駆動室46は低圧PLとなり、駆動ピストン22はディスプレーサ20を上動させることができる。膨張室34が低圧PLのときピストン駆動室46は高圧PHとなり、駆動ピストン22はディスプレーサ20を下動させることができる。
圧力制御機構52がロータリーバルブの形式をとる場合、一群のバルブ(V1〜V4)がロータリーバルブに組み込まれており、同期して駆動される。ロータリーバルブは、バルブ本体(またはバルブステータ)に対するバルブディスク(またはバルブロータ)の回転摺動によってバルブ(V1〜V4)が適正に切り替わるよう構成されている。一群のバルブ(V1〜V4)は、極低温冷凍機10の運転中に同一周期で切り替えられ、それにより4つの開閉バルブ(V1〜V4)は周期的に開閉状態を変化させる。4つの開閉バルブ(V1〜V4)はそれぞれ異なる位相で開閉される。
極低温冷凍機10は、圧縮機12をスプールバルブ50および圧力制御機構52に接続する高圧ライン13aおよび低圧ライン13bを備える。高圧ライン13aは、圧縮機吐出口12aから延び、高圧ライン分岐部17aで分岐し、スプールバルブ50の高圧ポート62、主吸気開閉バルブV1、および副吸気開閉バルブV3に接続されている。低圧ライン13bは、圧縮機吸入口12bから延び、低圧ライン分岐部17bで分岐し、スプールバルブ50の低圧ポート64、主排気開閉バルブV2、および副排気開閉バルブV4に接続されている。
また、極低温冷凍機10は、主圧力切替バルブ58をスプールバルブ50に接続する第1ガスライン66aと、スプールバルブ50をコールドヘッド14のディスプレーサシリンダ26に接続する第2ガスライン66bと、副圧力切替バルブ60をピストンシリンダ28に接続する第3ガスライン66cと、を備える。第1ガスライン66aは、バルブ駆動室54から延び、途中で分岐して、主吸気開閉バルブV1と主排気開閉バルブV2に接続されている。第2ガスライン66bは、第2スプールバルブ室55から延び、コールドヘッド14の室温室36に接続されている。第3ガスライン66cは、ピストン駆動室46の上部区画46aから延び、途中で分岐して、副吸気開閉バルブV3と副排気開閉バルブV4に接続されている。
高圧ライン13aおよび低圧ライン13bはそれぞれ、圧縮機12とコールドヘッド14と圧力制御機構52を接続する剛性または可撓性の配管であってもよい。同様に、第1ガスライン66a、第2ガスライン66b、第3ガスライン66cはそれぞれ、剛性または可撓性の配管であってもよい。
スプールバルブ50は、スプール56を収容するとともにスプール56の移動を案内するスリーブ68を有する。バルブ駆動室54は、スプール56の一端とスリーブ68との間に形成されている。第2スプールバルブ室55は、スプール56の他端とスリーブ68との間に形成されている。バルブ駆動室54と第2スプールバルブ室55は、スプール56に対して互いに反対側に位置する。
スプール56は、バルブ駆動室54と第2スプールバルブ室55の圧力差によってスリーブ68に対して移動することができる。バルブ駆動室54が第2スプールバルブ室55より低圧であるとき、スプール56は、バルブ駆動室54を縮小し第2スプールバルブ室55を拡張するようにスリーブ68内を移動する(図において上向きに動く)。逆に、バルブ駆動室54が第2スプールバルブ室55より高圧であるとき、スプール56は、バルブ駆動室54を拡張し第2スプールバルブ室55を縮小するようにスリーブ68内を移動する(図において下向きに動く)。
スリーブ68は、高圧ポート62および低圧ポート64として働く2つの貫通穴を有する。また、スリーブ68には、別の2つの貫通穴が設けられ、その一方を通じてバルブ駆動室54が第1ガスライン66aに連通し、他方を通じて第2スプールバルブ室55が第2ガスライン66bに連通している。
一例として、スプール56は、円柱状の部材であり、スリーブ68は、スプール56と同軸配置された円筒状の内周面を有する部材である。スプール56およびスリーブ68はそれぞれ、ピストンおよびシリンダと呼ぶこともできる。高圧ポート62および低圧ポート64はスリーブ68の側面に形成され、別の2つの貫通穴はそれぞれスリーブ68の端面に形成されている。なおスプール56とスリーブ68の延在方向は、コールドヘッド14の軸方向Cに一致してもよいし、あるいは、他の方向であってもよい。
また、スプールバルブ50は、スプール56とスリーブ68との間のクリアランスに配置された複数のシール部材、具体的には、第1シール部材70a、第2シール部材70b、第3シール部材70c、および第4シール部材70dを有する。これらシール部材は、互いに異なる軸方向位置でスプール56に装着され、スプール56の周方向に延びている。シール部材は、例えばスリッパーシールまたはOリングなどの作動ガスを密閉する部材であるが、望まれるシール性能を有する限り、その他の接触シールまたは非接触シールであってもよい。
スプールバルブ50の内部の作動ガス空間は、シール部材によって、バルブ駆動室54と第2スプールバルブ室55を含む5つの区画に分離されている。残りの3つの区画は、スプール56とスリーブ68との間のクリアランスに形成されている。すなわち、クリアランスは、第1クリアランス領域72a、第2クリアランス領域72b、および第3クリアランス領域72cに分離され、これらはスプール56の軸方向に互いに隣接している。
第1シール部材70aは、バルブ駆動室54と第1クリアランス領域72aとの間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成されている。第2シール部材70bは、第1クリアランス領域72aと第2クリアランス領域72bとの間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成されている。第3シール部材70cは、第2クリアランス領域72bと第3クリアランス領域72cとの間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成されている。第4シール部材70dは、第3クリアランス領域72cと第2スプールバルブ室55との間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成されている。
スプール56は、スプール主流路74を有する。スプール主流路74の一端は第2クリアランス領域72bに連通し、スプール主流路74の他端は第2スプールバルブ室55に連通している。スプール主流路74は、スプール56の側面から端面へとスプール56を貫通して形成されていてもよい。
また、スプール56とスリーブ68との間には、戻しバネ76が設けられている。戻しバネ76は、例えば、スプール56の上死点と下死点との中間の初期位置にスプール56を付勢する。戻しバネ76は、スプール56が上死点にあるときスプール56を下向きに引き戻し、スプール56が下死点にあるときスプール56を上向きに引き戻すことができる。戻しバネ76は、第2スプールバルブ室55に収容されている。なお戻しバネ76は、バルブ駆動室54に設けられてもよい。また、戻しバネ76を設けることは必須ではなく、スプールバルブ50は戻しバネ76を備えなくてもよい。
スプールバルブ50は、コールドヘッドハウジング18の中に配設され、圧縮機12および圧力制御機構52と配管で接続されていてもよい。例えば、スプールバルブ50は、室温室36に隣接して配置されるようにコールドヘッド14に搭載されていてもよい。このようにすれば、第2ガスライン66bの長さを短くすることができる。スプール主流路74、第2スプールバルブ室55、および第2ガスライン66bは、極低温冷凍機10の冷凍能力に寄与しないいわゆる死容積(デッドボリューム)を形成する。したがって、第2ガスライン66bの長さを短くすることにより、死容積を小さくすることができる。これは、極低温冷凍機10の冷凍能力の向上に役立つ。
あるいは、スプールバルブ50は、コールドヘッド14から離れて配置され、コールドヘッド14と配管で接続されていてもよい。
図3は、ある実施の形態に係る極低温冷凍機10に適用可能な圧力制御機構52の例示的な構成を概略的に示す図である。圧力制御機構52は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをバルブ駆動室54に交互に接続するとともに、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをピストン駆動室46に交互に接続するロータリーバルブ78を備える。
ロータリーバルブ78は、例えば回転電動機などのモータ78a、バルブロータ78b、バルブステータ78c、およびバルブハウジング78dを備える。バルブロータ78bおよびバルブステータ78cはバルブハウジング78dに収容され、両者はバルブ摺動面78eで互いに面接触するように隣接して配置されている。バルブステータ78cは、バルブハウジング78dに固定されている。モータ78aは、バルブハウジング78dの外側に設置され、モータ78aの出力軸がバルブハウジング78dを貫通してバルブロータ78bへと延びている。
バルブハウジング78dの内部には、圧力室78fが形成され、バルブロータ78bおよびバルブステータ78cは、圧力室78fに配置されている。一例として、圧力室78fには、高圧ライン13aが接続され、高圧PHが導入されている。バルブステータ78cには、低圧ライン13b、第1ガスライン66a、および第3ガスライン66cが接続されている。バルブステータ78cとバルブハウジング78dの間には少なくとも2つのシール部材が装着され、1つのシール部材によって低圧ライン13bが圧力室78f(すなわち高圧ライン13a)からシールされ、他の1つのシール部材によって第1ガスライン66aおよび第3ガスライン66cが低圧ライン13bからシールされる。第1ガスライン66aと第3ガスライン66cも、適宜のシール部材によって互いシールされる。したがって、ロータリーバルブ78の内部において高圧ライン13a、低圧ライン13b、第1ガスライン66a、および第3ガスライン66cの間での直接の作動ガスの流通は防止される。
モータ78aの駆動により出力軸が回転し、それにより、バルブロータ78bがバルブステータ78cに対して回転摺動する。バルブロータ78bの回転摺動に伴ってバルブ摺動面78eで流路接続が周期的に切り替わり、ロータリーバルブ78は、高圧ライン13aと低圧ライン13bを第1ガスライン66aに交互に接続する。同様に、バルブロータ78bの回転摺動に伴ってバルブ摺動面78eで流路接続が周期的に切り替わり、ロータリーバルブ78は、高圧ライン13aと低圧ライン13bを第3ガスライン66cに交互に接続する。
バルブロータ78bとバルブステータ78cからなるロータリーバルブ78の具体的な流路構成は、種々の公知のものを適宜採用することができるので、詳細説明は省略する。上述の説明では、圧力室78fに高圧ライン13aが接続され、バルブステータ78cに低圧ライン13bが接続されているが、これとは逆に、バルブステータ78cに高圧ライン13aが接続され、圧力室78fに低圧ライン13bが接続される構成も可能である。
このように、圧力制御機構52がロータリーバルブ78として構成される場合には、極低温冷凍機のロータリーバルブの既存の設計を流用することができる。よって、圧力制御機構52を容易に製造することができ、有利である。
極低温冷凍機10の用途の一例は、強い磁場を発生する超伝導電磁石の冷却である。そのような強磁場環境で極低温冷凍機10が運転されるとき、磁場がモータ78aの定格トルクを低減するよう影響しうる。不十分なトルクはモータ78aに脱調や滑りを生じさせうる。例えばGM冷凍機の場合、ロータリーバルブ78の一定速度での運転が阻害され、冷凍能力が低下されうる。
強磁場がモータ78aに作用するのを防ぐために磁気シールドが極低温冷凍機10に設置されうる。強磁場の作用を効果的に防ぐためには、磁気シールドは十分な厚さをもつことが望まれる。しかし、そうした磁気シールドは、極低温冷凍機10の顕著な重量および寸法の増加という副作用をもたらしうる。また、強磁場によって磁気シールドが磁化され、不所望の強い電磁吸引力が発生するかもしれない。
そこで、圧力制御機構52、すなわちロータリーバルブ78は、コールドヘッド14から離れて配置され、コールドヘッド14と配管で接続されていてもよい。このようにすれば、コールドヘッド14および冷却すべき超伝導電磁石から十分に離れた場所にモータ78aを配置し、モータ78aへの強磁場の影響を十分に低減することが可能となる。モータ78aを囲む磁気シールドが不要となりうるので、上述のいくつかの問題を緩和しまたは対処することができる。
あるいは、極低温冷凍機10に強磁場が作用しない他の用途に使用される場合には、圧力制御機構52は、コールドヘッドハウジング18の中に配設され、圧縮機12およびスプールバルブ50と配管で接続されていてもよい。
図4は、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10のバルブタイミングと圧力変動を例示する図である。図4の上部には、各バルブ(V1〜V4)のバルブタイミングを極低温冷凍機10の冷凍サイクルの一周期にわたって示し、図4の下部には、膨張室34、ピストン駆動室46、およびバルブ駆動室54の圧力変動を示す。バルブタイミングの図示において実線はバルブが開いていることを示し、破線はバルブが閉じていることを示す。また、圧力変動は、バルブの開閉に伴う過渡的な変化は無視して概略的に図示している。
図1、図2、および図4を参照して、極低温冷凍機10の動作を説明する。上述のように、図1には極低温冷凍機10の吸気工程の様子が示され、図2には極低温冷凍機10の排気工程の様子が示されている。スプールバルブ50のスプール56は、吸気工程において第1位置に移動し、排気工程において第2位置に移動する。第1位置および第2位置はそれぞれ、吸気位置および排気位置と呼ぶこともできる。
ディスプレーサ20が下死点またはその近傍の位置にあるとき、極低温冷凍機10の吸気工程が開始される(なお、このときのディスプレーサ20の位置は図2に示されている。なぜなら、排気工程が終了したときに吸気工程が開始されるからである)。
吸気工程においては、図1および図4に示されるように、主排気開閉バルブV2が開かれ、主吸気開閉バルブV1は閉じている。圧縮機吸入口12bがバルブ駆動室54に連通され、バルブ駆動室54の圧力は、低圧PLとなる。このとき第2スプールバルブ室55は低圧PLより若干高い圧力を有する。なぜなら、コールドヘッド14(すなわち膨張室34および室温室36)内の圧力変動はバルブ駆動室54での圧力変動に対していくらか遅延しているからである。吸気工程の開始時点では、スプール56は下死点またはその近傍に位置する(図1において第2スプールバルブ室55に破線で示す)。バルブ駆動室54と第2スプールバルブ室55の圧力差によりスプール56はバルブ駆動室54を縮小するようにスリーブ68内を軸方向に移動する(破線の矢印で示す)。戻しバネ76の復元力もスプール56の上動に役立つ。
図1に示されるように、スプール56の上動によりスプール56が第1位置、すなわち上死点またはその近傍に到達すると、第2クリアランス領域72bが高圧ポート62に隣接する。高圧ポート62がスプール主流路74を通じて第2スプールバルブ室55に接続される。こうして、スプールバルブ50は、圧縮機吐出口12aを膨張室34に接続する。高圧PHの作動ガスが圧縮機吐出口12aからスプールバルブ50および第2ガスライン66bを経て、コールドヘッド14に供給される。さらに、作動ガスは室温室36から蓄冷器15を通じて膨張室34に流れる。膨張室34は、高圧PHとなる。このとき低圧ポート64には第3クリアランス領域72cが隣接する。低圧ポート64はスプール56によって塞がれているので、膨張室34と圧縮機吸入口12bとの接続は遮断されている。
膨張室34への吸気開始と同時に、または膨張室34への吸気開始から僅かに遅延して(例えば図4に示される第1遅延時間ΔT1)、ピストン駆動室46の排気が行われる。吸気工程においては、図1および図4に示されるように、副排気開閉バルブV4が開かれ、副吸気開閉バルブV3は閉じている。ピストン駆動室46から第3ガスライン66c、副排気開閉バルブV4および低圧ライン13bを通じて圧縮機吸入口12bに作動ガスが回収され、ピストン駆動室46は低圧PLに降圧される。なお、第1遅延時間ΔT1は、膨張室34が実質的に高圧PHにまで昇圧されてからディスプレーサ20が上動を開始するように設定されてもよい。これは極低温冷凍機10の冷凍能力の向上に寄与する。
したがって、吸気工程において駆動ピストン22にはピストン駆動室46と膨張室34との差圧による駆動力(すなわち差圧PH−PLに比例する駆動力)が上向きに作用する。よって、ディスプレーサ20は駆動ピストン22とともに、コールドヘッド14内で下死点から上死点に向けて動く。膨張室34の容積が増加されるとともに高圧ガスで満たされる。こうして、ディスプレーサ20が上死点またはその近傍の位置に達した状態が図1に示されている。
ディスプレーサ20が上死点またはその近傍の位置にあるとき、極低温冷凍機10の排気工程が開始される。図2および図4に示されるように、排気工程においては、主吸気開閉バルブV1が開かれ、主排気開閉バルブV2が閉じている。圧縮機吐出口12aがバルブ駆動室54に連通され、バルブ駆動室54の圧力は、高圧PHとなる。このとき第2スプールバルブ室55は高圧PHより若干低い圧力を有する。排気工程の開始時点では、スプール56は上死点またはその近傍に位置する(図2においてバルブ駆動室54に破線で示す)。バルブ駆動室54と第2スプールバルブ室55の圧力差によりスプール56はバルブ駆動室54を拡張するようにスリーブ68内を軸方向に移動する(破線の矢印で示す)。戻しバネ76の復元力もスプール56の下動に役立つ。
図2に示されるように、スプール56の下動によりスプール56が第2位置、すなわち下死点またはその近傍に到達すると、第2クリアランス領域72bが低圧ポート64に隣接する。低圧ポート64がスプール主流路74を通じて第2スプールバルブ室55に接続される。こうして、スプールバルブ50は、圧縮機吸入口12bを膨張室34に接続する。高圧ガスは膨張室34で膨張し冷却される。膨張したガスは、蓄冷器15を冷却しながら室温室36を経てスプールバルブ50に流れる。作動ガスは、スプールバルブ50および低圧ライン13bを通じて圧縮機12に回収される。膨張室34は、低圧PLとなる。このとき高圧ポート62には第1クリアランス領域72aが隣接する。高圧ポート62はスプール56によって塞がれているので、膨張室34と圧縮機吐出口12aとの接続は遮断されている。
膨張室34からの排気開始と同時に、または膨張室34への排気開始から僅かに遅延して(例えば図4に示される第2遅延時間ΔT2)、ピストン駆動室46への吸気が行われる。排気工程においては、図2および図4に示されるように、副吸気開閉バルブV3が開かれ、副排気開閉バルブV4は閉じている。圧縮機吐出口12aから高圧ライン13a、副吸気開閉バルブV3および第3ガスライン66cを通じてピストン駆動室46に作動ガスが供給され、ピストン駆動室46は高圧PHとなる。なお、第2遅延時間ΔT2は、膨張室34が実質的に低圧PLにまで降圧されてからディスプレーサ20が下動を開始するように設定されてもよい。これは極低温冷凍機10の冷凍能力の向上に寄与する。
したがって、排気工程において駆動ピストン22にはピストン駆動室46と膨張室34との差圧による駆動力(すなわち差圧PH−PLに比例する駆動力)が下向きに作用する。よって、ディスプレーサ20は駆動ピストン22とともに、コールドヘッド14内で上死点から下死点に向けて動く。こうして、膨張室34の容積が減少されるとともに低圧ガスは排出される。
このようにして、スプールバルブ50は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを膨張室34に交互に接続する極低温冷凍機10の流路切替機構として機能する。圧力制御機構52は、この流路切替機構の駆動源として機能する。圧力制御機構52は、
圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをスプールバルブ50のバルブ駆動室54に交互に接続し、スプール56を適切に往復動させるようにバルブ駆動室54の圧力を制御することができる。また、圧力制御機構52は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bをピストン駆動室46に交互に接続し、それによりディスプレーサ20を適切に往復動させるようにピストン駆動室46の圧力を制御することができる。
極低温冷凍機10はこのような冷凍サイクル(すなわちGMサイクル)を繰り返すことで、冷却ステージ38を冷却する。それにより、極低温冷凍機10は、冷却ステージ38に熱的に結合された超伝導装置またはその他の被冷却物(図示せず)を冷却することができる。
図4に描かれているバルブタイミングは、例示であって、限定的に解釈すべきではない。各バルブ(V1〜V4)のバルブタイミングは図示される例からいくらかずれていてもよい。例えば、図4においては、副吸気開閉バルブV3の閉鎖が主吸気開閉バルブV1の閉鎖よりもいくらか先行しているが、これは必須ではない。副吸気開閉バルブV3の閉鎖は、主吸気開閉バルブV1の閉鎖と同時あってもよいし、あるいは主吸気開閉バルブV1の閉鎖からいくらか遅延してもよい。同様に、副排気開閉バルブV4の閉鎖が主排気開閉バルブV2の閉鎖よりもいくらか先行しているが、これは必須ではない。
上述のように、典型的な極低温冷凍機は、流路切替機構としてロータリーバルブを用いており、ロータリーバルブの回転摺動面にはいくつかの作動ガスポートが設けられている。これら作動ガスポート間の相互接続を回転によって切り替えるために、これらポートは回転摺動面において径方向に互いに異なる場所に配置される。ロータリーバルブ内で作動ガスに生じる圧力損失を低減するにはポートを広くとる必要があるが、これはロータリーバルブの径の拡大、つまり回転摺動面の面積増加を招く。回転摺動面が大きくなれば回転時に働く摩擦抵抗が大きくなるから、ロータリーバルブを駆動するのに必要なトルクも増加し、モータなどの駆動源も大型のものが必要になる。これは、ロータリーバルブの製造コストの上昇や、極低温冷凍機の大型化などの不利益をもたらす。とくに、大きな冷凍能力を出力する大型の極低温冷凍機に関しては、こうした不利益が顕著となりうる。
ロータリーバルブを用いる極低温冷凍機では、例えばGM冷凍機のように、ロータリーバルブがコールドヘッドに設置されている。ロータリーバルブを回転させるモータもコールドヘッドの一部をなすことになり、大型の極低温冷凍機の既存設計では、大型のモータがコールドヘッドに直接設置されることになる。大型モータは相応の電磁気的ノイズ及び/または機械的振動の発生源となるので、好ましくない。また、上述のように、極低温冷凍機が強磁場環境で使用される場合には、モータへの強磁場の影響を抑制するために、分厚い磁気シールドが必要となり得る。
こうした問題を避けるために、ロータリーバルブユニットをコールドヘッドから離れた場所に配置し、両者を長い配管で接続する設計も考えられる。ところが、この設計では、ロータリーバルブの作動ガス出入口からコールドヘッドの蓄冷器までの配管容積も大きくなる。この容積は冷凍能力に寄与しない死容積であるから、その増加は望まれない。
このように、流路切替機構としてロータリーバルブを用いる既存の極低温冷凍機では、ロータリーバルブからコールドヘッドに伝達されるノイズ・振動の十分な低減を、死容積の増加および冷凍能力の低下を避けることなく実現することは困難である。
これに対して、実施の形態に係る極低温冷凍機10は、コールドヘッド14の膨張室34への流路切替機構としてスプールバルブ50を用いている。そのため、上述のようなロータリーバルブに起因する不利益が生じにくい。
スプールバルブ50においては、スプール主流路74などバルブ内部流路を拡張しても、それは駆動源の大型化に直接関係しない。スプールバルブ50はバルブ駆動室54の作動ガス圧によって流体的に動作する。そのため、バルブ駆動室54の容積は比較的小さくてよい。よって、バルブ駆動室54のサイズは小さく抑えつつ、スプールバルブ50の内部流路を拡張することができ、それにより、スプールバルブ50内で作動ガスに生じる圧力損失を低減することができる。ロータリーバルブを採用する場合に比べて、極低温冷凍機10のための流路切替機構の駆動源の大型化を抑制することができる。
また、圧力制御機構52にはロータリーバルブ78が採用されているが、ロータリーバルブ78はピストン駆動室46およびバルブ駆動室54に接続され、膨張室34には接続されていない。圧力制御機構52をコールドヘッド14から遠隔に配置した場合には圧力制御機構52をコールドヘッド14に接続する配管(例えば第1ガスライン66aおよび第3ガスライン66c)が長くなり、それらの容積が増えるが、コールドヘッド14への吸排気と逆位相になっているため、これは死容積にあたらない。したがって、コールドヘッド14に対する圧力制御機構52の配置が極低温冷凍機10の冷凍能力に与える影響は、ほとんど無いかまったく無い。
よって、実施の形態に係る極低温冷凍機10においては、圧力制御機構52をコールドヘッド14から離れて配置することが許容される。それにより、圧力制御機構52が発生させうるノイズ・振動のコールドヘッド14への伝達を抑制することができる。また、上述のように、圧力制御機構52に付設されうる磁気シールドを簡素化し、または不要とすることができる。
加えて、ピストン駆動室46およびバルブ駆動室54の容積はそれぞれ比較的小さくてよいので、圧力制御機構52も比較的小型でよい。よって、圧力制御機構52が発生させうるノイズまたは振動はそもそも小さく、コールドヘッド14に与えうる影響も小さい。
さらに、実施の形態に係る極低温冷凍機10においては、圧力制御機構52は、膨張室34の圧力変動とは逆位相の圧力変動を(ピストン駆動室46だけでなく)バルブ駆動室54にも生成するように構成されている。このようにすれば、図4に示されるように、吸気工程でピストン駆動室46およびバルブ駆動室54に作動ガスを供給する必要が無い。そのため、圧縮機12から膨張室34への作動ガス供給流量を低減することができ、これは圧縮機12の負荷低減および小型化に役立つ。
なお、圧力制御機構52は、膨張室34の圧力変動とは同位相または任意の位相差をもつ圧力変動をバルブ駆動室54にも生成するように構成されてもよい。圧縮機12は膨張室34とバルブ駆動室54に同時に作動ガスを供給しなければならないかもしれない。しかし、バルブ駆動室54の容積が比較的小さければ、顕著な影響は生じない。この構成においては、後述するように、スプール56の往復動とスプールバルブ50による膨張室34の圧力制御を適切に同期させるために、スプール主流路74が第2スプールバルブ室55に連通されずに第2スプールバルブ室55から分離されてもよい。第2スプールバルブ室55の圧力が適切に制御されてもよい。
また、実施の形態に係る極低温冷凍機10においては、スプールバルブ50は、バルブ駆動室54と反対側でスプール56に隣接する第2スプールバルブ室55と、バルブ駆動室54からシールされ、第2スプールバルブ室55を経由して膨張室34に接続された接続流路とを備える。接続流路は、スプール主流路74を含む。接続流路は、スプール56が第1位置にあるとき膨張室34を圧縮機吐出口12aに接続し、スプール56が第2位置にあるとき膨張室34を圧縮機吸入口12bに接続する。このようにすれば、スプールバルブ50内の作動ガス流路面積を比較的広くとりやすい。
図5は、ある実施の形態に係る極低温冷凍機10に適用可能なスプールバルブ50の他の構成を概略的に示す図である。図1および図2を参照して説明した実施の形態ではスプール主流路74がスプール56の側面の1箇所に開口され第2スプールバルブ室55へと連通しており、スプール主流路74はスプール56の中心軸まわりに対称ではない。これに対して、図5に示されるように、スプールバルブ50は、スプール56の中心軸まわりに対称配置されたスプール内部流路75を備えてもよい。
スプール内部流路75は、スプール56の中心軸まわりに対称配置された複数の流路75aを有する。複数の流路75aはいずれも第2クリアランス領域72bに開口し、スプール56の周方向に等間隔に配置されている。また、スプール内部流路75は、複数の流路75aの合流点から中心軸に沿って延び、これら複数の流路75aを第2スプールバルブ室55に接続する連通路75bを有する。複数の流路75aに対応して、スリーブ68には、複数の高圧ポート62と複数の低圧ポート64が設けられている。複数の高圧ポート62は高圧ライン13aに接続され、複数の低圧ポート64は低圧ライン13bに接続されている。高圧ポート62および低圧ポート64も、スプール56の中心軸まわりに対称配置されている。
このように、スプールバルブ50がスプール56の中心軸まわりに対称配置された流路を備えることにより、スプール56の偏心を抑えることができる。スプール56が軸方向に往復動するときに生じうるスプール56の偏った摩耗を抑えることができる。
図6は、ある実施の形態に係る極低温冷凍機10に適用可能なスプールバルブ50の他の構成を概略的に示す図である。図示されるように、スプール56は、第1突起79aおよび第2突起79bを備える。この点を除いて、図6に示されるスプールバルブ50は、図1に示されるスプールバルブ50と共通する構成を有する。
第1突起79aは、バルブ駆動室54に面するスプール56の第1端面から突出している。第1突起79aは、スプール56が上死点またはその近傍に位置するときバルブ駆動室54への第1ガスライン66aの出口を閉塞するようにスプール56の第1端面に配置されている。第1ガスライン66aの出口は、スプール56の第1端面に対向するスリーブ68の上面に形成されている。スリーブ68の上面には、第1突起79aを受け入れる第1凹部79cが形成されている。第1突起79a、第1凹部79c、および第1ガスライン66aの出口はともに、スプール56の中心軸上に配置されている。第1突起79aは、スプール56が上死点から離れると、第1凹部79cから離脱する。
スプール56が上動して第1ガスライン66aの出口に第1突起79aが進入するときスプール56の第1端面とスリーブ68の上面との間に形成される作動ガス領域(バルブ駆動室54のうち外周部分)は実質的に密閉される。そのため、この作動ガス領域は、図1を参照して既に説明したピストン駆動室46の下部区画46bと同様に、ガスばね室として機能する。スプール56が上死点でスリーブ68と衝突または接触することを防止し、または、衝突または接触したとしてもその衝撃を和らげることができる。スプール56の往復動に伴って生じうる振動を低減することができる。
同様に、第2突起79bは、第2スプールバルブ室55に面するスプール56の第2端面から突出している。ただし、第2端面にはスプール主流路74が開口しているので、第2突起79bはこの開口を囲むようにして第2端面に形成されている。第2突起79bは、スプール56が下死点またはその近傍に位置するとき第2スプールバルブ室55への第2ガスライン66bの出口を閉塞するようにスプール56の第2端面に配置されている。第2ガスライン66bの出口は、スプール56の第2端面に対向するスリーブ68の下面に形成されている。スリーブ68の下面には、第2突起79bを受け入れる第2凹部79dが形成されている。第2突起79b、第2凹部79d、および第2ガスライン66bの出口はともに、スプール56の中心軸上に配置されている。第2突起79bは、スプール56が下死点から離れると、第2凹部79dから離脱する。
図6に破線で示すように、スプール56が下動して第2ガスライン66bの出口に第2突起79bが進入するときスプール56の第2端面とスリーブ68の下面との間に形成される作動ガス領域(第2スプールバルブ室55のうち外周部分)は実質的に密閉される。そのため、作動ガス領域はガスばね室として機能する。スプール56が下死点でスリーブ68と衝突または接触することを防止し、または、衝突または接触したとしてもその衝撃を和らげることができる。スプール56の往復動に伴って生じうる振動を低減することができる。
なお、第1突起79aおよび第2突起79bの両方をスプール56に設けることは必須ではなく、スプール56は、第1突起79aおよび第2突起79bのうち片方のみを有してもよい。
図7は、第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10は、作動ガス回路の配管接続に関して、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10と異なり、その余については第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10と共通する構成をもつ。以下、第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10について、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10においても、流路切替機構としてスプールバルブ50と圧力制御機構52の組み合わせが利用される。したがって、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10と同様に、流路切替機構としてロータリーバルブのみを採用する既存の典型的な極低温冷凍機に比べて、有利である。スプールバルブ50は、コールドヘッド14のコールドヘッドハウジング18に収容されている。
図7に示されるように、極低温冷凍機10は、バルブ駆動室54を圧力制御機構52に接続する脱着可能な継手80と、ピストン駆動室46を圧力制御機構52に接続するもう一つの脱着可能な継手80と、を備える。脱着可能な継手80は、第1ガスライン66aおよび第3ガスライン66cそれぞれの途中に設けられている。脱着可能な継手80は、例えば、セルフシーリング・カップリングである。
このようにして、圧力制御機構52を脱着可能な継手80を介してコールドヘッド14に接続しているので、第1ガスライン66aおよび第3ガスライン66cを長くして圧力制御機構52をコールドヘッド14から遠隔に配置することが容易となる。これは、圧力制御機構52で発生しうる電磁気的ノイズ及び/または機械的振動のコールドヘッド14への伝達を抑制することに役立つ。また、圧力制御機構52は、脱着可能な継手80によりコールドヘッド14から取り外し可能に接続されているから、作業者は、圧力制御機構52をコールドヘッド14から取り外してメンテナンスを施すことができる。
脱着可能な継手80は、極低温冷凍機10の作動ガス回路の他の場所に追加して設けられてもよい。図7に示されるように、例えば、脱着可能な継手80が、高圧ライン13aおよび低圧ライン13bの少なくとも一方に設けられてもよい。このようにすれば、圧縮機12からコールドヘッド14へのノイズや振動の伝達を抑制することができる。
また、極低温冷凍機10は、高圧ライン分岐部17aおよび低圧ライン分岐部17bを有するマニホールド81を備えてもよい。マニホールド81を介して、圧縮機12とコールドヘッド14が接続され、かつ圧縮機12と圧力制御機構52が接続されている。マニホールド81は、床面またはその他の静止部に固定されてもよい。圧縮機12は、マニホールド81から離れて配置され、配管により接続されている。このようにすれば、圧縮機12からコールドヘッド14へのノイズや振動の伝達を抑制することができる。
図7に示されるように、圧力制御機構52は、マニホールド81から離れて配置され、配管により接続されてもよい。あるいは、圧力制御機構52は、マニホールド81に搭載されてもよい。
図8は、第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10の他の構成を概略的に示す図である。極低温冷凍機10は、高圧ライン13a、低圧ライン13b、第1ガスライン66a、および第3ガスライン66cの少なくとも1つに設置されたノイズ遮断構造82を備えてもよい。ノイズ遮断構造82は、脱着可能な継手80に直接にまたは配管を介して連結され、ノイズ遮断構造82が設置された配管を伝達する電磁気的ノイズを遮断または低減するように構成されている。脱着可能な継手80は、ノイズ遮断構造82の少なくとも片側(図8においては両側)に設けられている。
一例として、ノイズ遮断構造82は、一対のフランジ82aと、これらフランジ82aに挟持されたノイズ遮断体82bとを備える。ノイズ遮断体82bは、例えば、セラミックコーティングまたはフッ素樹脂コーティングなどの絶縁性コーティング材で被覆された金属体である。フランジ82aおよびノイズ遮断体82bは、ボルトやナットなどの適宜の締結具により相互に固定されている。フランジ82aおよびノイズ遮断体82bを貫通して、作動ガス流路が形成されている。
ノイズ遮断構造82を設けることにより、圧縮機12または圧力制御機構52からコールドヘッド14へのノイズの伝達をさらに抑制することができる。
図9は、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10は、スプールバルブ50の第2スプールバルブ室55に関して、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10と異なり、その余については第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10と共通する構成をもつ。以下、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10について、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
スプールバルブ50は、バルブ駆動室54と反対側でスプール56に隣接する複数の互いにシールされた区画を備える。スプール56は、バルブ駆動室54と複数の区画のうち少なくとも1つの区画との圧力差により第1位置と第2位置とを移動する。第2スプールバルブ室55が、背圧室としての第1区画55aと、コールドヘッド14への作動ガス流路の一部をなす第2区画55bとに分割されている。第1区画55aは第2スプールバルブ室55のうち外周部にあたり、第2区画55bは第2スプールバルブ室55のうち中心部にあたる。
第2スプールバルブ室55に面するスプール56の第2端面から第2突起79bが突出している。第2端面にはスプール主流路74が開口しているので、第2突起79bはこの開口を囲むようにして第2端面に形成されている。スリーブ68の下面には、第2突起79bを受け入れる第2凹部79dが形成されている。第2突起79bは、スプール56が下死点にあるときだけでなく上死点にあるときにも第2凹部79d内に配置される。第2突起79bの長さおよび第2凹部79dの深さは、スプール56の全ストロークにわたって第2突起79bの少なくとも先端部が第2凹部79d内に進入するように定められている。
スプールバルブ50は、第1区画55aと第2区画55bとの間に配置され、これらの間での直接の作動ガスの流通を防止または最小化するように構成された第5シール部材70eを備える。第5シール部材70eは、第2突起79bの先端に近い側面の外周に設けられ、スプール56の位置にかかわらず第2突起79bと第2凹部79dの間に挟み込まれている。従って、スプール56の往復動の間、第1区画55aと第2区画55bは第5シール部材70eによって常時シールされている。
第1区画55aには、中間圧バッファ83が接続されている。中間圧バッファ83は、高圧PHと低圧PLとの中間圧PM(例えば高圧PHと低圧PLの平均圧)を有する。よって、第1区画55aの圧力は、中間圧PMに保持される。なお、中間圧バッファ83は、後述するように圧力制御機構52がリニア圧縮機を有する場合には、リニア圧縮機の背圧室(例えば、図14に示す背圧室86d)であってもよい。
第2区画55bは、スプール主流路74を第2ガスライン66bに接続する。第2ガスライン66bの出口は、第2凹部79d内においてスプール56の第2端面に対向するスリーブ68の下面に形成されている。
第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10においても、図4に示されるバルブタイミングを採用することができる。
よって、極低温冷凍機10の吸気工程においては、主排気開閉バルブV2が開かれ、主吸気開閉バルブV1は閉じている。圧縮機吸入口12bがバルブ駆動室54に連通され、バルブ駆動室54の圧力は、低圧PLとなる。第1区画55aは中間圧PMを有するから、バルブ駆動室54と第1区画55aの圧力差によりスプール56はバルブ駆動室54を縮小するようにスリーブ68内を軸方向に移動する。スプール主流路74が高圧ポート62に接続される。高圧PHの作動ガスが圧縮機吐出口12aからスプールバルブ50を通じてコールドヘッド14の膨張室34に供給される。
排気工程においては、主吸気開閉バルブV1が開かれ、主排気開閉バルブV2が閉じている。圧縮機吐出口12aがバルブ駆動室54に連通され、バルブ駆動室54の圧力は、高圧PHとなる。第1区画55aは中間圧PMを有するから、バルブ駆動室54と第1区画55aの圧力差によりスプール56はバルブ駆動室54を拡張するようにスリーブ68内を軸方向に移動する。スプール主流路74が低圧ポート64に接続される。膨張室34で作動ガスが膨張し、その結果生じる低圧PLの作動ガスが膨張室34からスプールバルブ50を通じて圧縮機吸入口12bへと回収される。
このようにして、第3の実施の形態に係るスプールバルブ50は、第1の実施の形態に係るスプールバルブ50と同様に、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを膨張室34に交互に接続する極低温冷凍機10の流路切替機構として機能することができる。第1区画55aに中間圧PMが導入され、これとバルブ駆動室54との圧力差によってスプール56の駆動を支援することができるから、第3の実施の形態に係るスプールバルブ50は、図1および図2に示される戻しバネ76を有しなくてもよい。
図10は、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10の他の構成を概略的に示す図である。第1区画55aを一定の圧力に保持すること(すなわち第1区画55aを中間圧バッファ83を設けること)は必須ではない。圧力制御機構52は、スプール56の往復動を支援するように第1区画55aの圧力を制御してもよい。
圧力制御機構52は、バルブ駆動室54の圧力変動とは逆位相の圧力変動を第1区画55aに生成するように構成されている。圧力制御機構52は、既述の4つのバルブ(V1〜V4)に加えて、第3吸気開閉バルブV5および第3排気開閉バルブV6を備える。第3吸気開閉バルブV5は、圧縮機吐出口12aを第1区画55aに接続し、第3排気開閉バルブV6は、圧縮機吸入口12bを第2区画55bに接続する。
図11は、図10に示される圧力制御機構52のバルブタイミングを例示する図である。ここで、第1の実施の形態と共通する4つのバルブ(V1〜V4)については、図4に示されるバルブタイミングを採用することができる。第3吸気開閉バルブV5は、主排気開閉バルブV2と同時に開き、主排気開閉バルブV2が閉じる前に閉じる。第3排気開閉バルブV6は、主吸気開閉バルブV1と同時に開き、主吸気開閉バルブV1が閉じる前に閉じる。図11に示されるように、第3吸気開閉バルブV5は、主排気開閉バルブV2が開いている期間の当初のみ開き、第3排気開閉バルブV6は、主吸気開閉バルブV1が開いている期間の当初のみ開いている。
よって、吸気工程においては、最初に主排気開閉バルブV2と第3吸気開閉バルブV5が開かれる。圧縮機吐出口12aが第1区画55aに連通されて第1区画55aの圧力は高圧PHとなり、圧縮機吸入口12bがバルブ駆動室54に連通されてバルブ駆動室54の圧力は低圧PLとなる。バルブ駆動室54と第1区画55aの圧力差によりスプール56はバルブ駆動室54を縮小するようにスリーブ68内を軸方向に移動する。スプール主流路74が高圧ポート62に接続される。高圧PHの作動ガスが圧縮機吐出口12aからスプールバルブ50を通じてコールドヘッド14の膨張室34に供給される。
排気工程においては、最初に主吸気開閉バルブV1と第3排気開閉バルブV6が開かれる。圧縮機吐出口12aがバルブ駆動室54に連通されてバルブ駆動室54の圧力は高圧PHとなり、圧縮機吸入口12bが第1区画55aに連通されて第1区画55aの圧力は低圧PLとなる。バルブ駆動室54と第1区画55aの圧力差によりスプール56はバルブ駆動室54を拡張するようにスリーブ68内を軸方向に移動する。スプール主流路74が低圧ポート64に接続される。膨張室34で作動ガスが膨張し、その結果生じる低圧PLの作動ガスが膨張室34からスプールバルブ50を通じて圧縮機吸入口12bへと回収される。
図12は、第4の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第4の実施の形態に係る極低温冷凍機10は、主にスプールバルブ50に関して、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10と異なり、その余については第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10と共通する構成をもつ。以下、第4の実施の形態に係る極低温冷凍機10について、第1の実施の形態と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
スプールバルブ50は、バルブ駆動室54と反対側でスプール56に隣接する背圧室84と、バルブ駆動室54および背圧室84からシールされた接続流路85とを備える。接続流路85は、スプール56が第1位置にあるとき膨張室34を圧縮機吐出口12aに接続し、スプール56が第2位置にあるとき膨張室34を圧縮機吸入口12bに接続する。
また、スプールバルブ50は、スプール56とスリーブ68との間のクリアランスに配置された複数のシール部材、具体的には、第1シール部材70a、第2シール部材70b、第3シール部材70c、第4シール部材70d、第5シール部材70e、および第6シール部材70fを有する。これらのシール部材によって、スプールバルブ50の内部の作動ガス空間は、バルブ駆動室54、第1クリアランス領域72a、第2クリアランス領域72b、第3クリアランス領域72c、第4クリアランス領域72d、第5クリアランス領域72e。および背圧室84に分離されている。背圧室84は、第6シール部材70fによって第5クリアランス領域72eからシールされている。
背圧室84には、ピストン駆動室46の下部区画46b(すなわちガスばね室)が接続されている。背圧室84は、第4ガスライン66dを通じて下部区画46bに接続されている。背圧室84およびガスばね室は、高圧PHと低圧PLとの中間圧PM(例えば高圧PHと低圧PLの平均圧)を有する。そのために、上述の実施の形態とは異なり、極低温冷凍機10は、スプール56が上死点に位置するとき駆動ピストン22は下死点に位置し、スプール56が下死点に位置するとき駆動ピストン22は上死点に位置するように構成されている。こうして、スプール56および駆動ピストン22が往復動するときの背圧室84およびガスばね室の合計容積の変動を抑制し、それにより背圧室84およびガスばね室の圧力変動も軽減される。
接続流路85は、第4クリアランス領域72dを第2クリアランス領域72bに接続するようにスプール56を貫通している。スプール56が上死点にあるとき低圧ポート64が第4クリアランス領域72dに接続され、高圧ポート62は第5クリアランス領域72eによって閉鎖される。スプール56が下死点にあるとき高圧ポート62が第4クリアランス領域72dに接続され、低圧ポート64は第3クリアランス領域72cによって閉鎖される。
また、第2ガスライン66bは、膨張室34から延び、途中で2つの枝路に分岐してスプールバルブ50に接続されている。第1枝路がスプールバルブ50から膨張室34への作動ガス供給に使用され、第2枝路が膨張室34からスプールバルブ50への作動ガス排出に使用される。スプール56が上死点にあるとき第2ガスライン66bの第2枝路が第2クリアランス領域72bに接続され、第2ガスライン66bの第1枝路が第3クリアランス領域72cによって閉鎖される。スプール56が下死点にあるとき第2ガスライン66bの第1枝路が第2クリアランス領域72bに接続され、第2ガスライン66bの第2枝路が第1クリアランス領域72aによって閉鎖される。
図13は、図12に示される圧力制御機構52のバルブタイミングを例示する図である。ここで、主吸気開閉バルブV1および主排気開閉バルブV2については、図4に示されるバルブタイミングとは反転したバルブタイミングが用いられる。を採用することができる。副吸気開閉バルブV3および副排気開閉バルブV4については、図4に示されるバルブタイミングを採用することができる。すなわち、図13に示されるように、主吸気開閉バルブV1が開いている間に副排気開閉バルブV4が開き、主排気開閉バルブV2が開いている間に副吸気開閉バルブV3が開く。
よって、吸気工程においては、主吸気開閉バルブV1と副排気開閉バルブV4が開く。圧縮機吐出口12aがバルブ駆動室54に連通され、バルブ駆動室54の圧力は、高圧PHとなる。背圧室84は中間圧PMを有するから、バルブ駆動室54と背圧室84の圧力差によりスプール56はバルブ駆動室54を拡張するようにスリーブ68内を軸方向に移動する。接続流路85が高圧ポート62を第2ガスライン66bに接続する。高圧PHの作動ガスが圧縮機吐出口12aからスプールバルブ50を通じてコールドヘッド14の膨張室34に供給される。
このとき、副排気開閉バルブV4の開放によりピストン駆動室46の上部区画46aが低圧PLとなり、駆動ピストン22は下部区画46bを拡張するようにピストン駆動室46内を軸方向に移動する。そのため、スプール56の移動により背圧室84から押し出される作動ガスを第4ガスライン66dを通じて下部区画46bに受け入れることができる。
排気工程においては、主排気開閉バルブV2と副吸気開閉バルブV3が開く。圧縮機吸入口12bがバルブ駆動室54に連通され、バルブ駆動室54の圧力は、低圧PLとなる。背圧室84は中間圧PMを有するから、バルブ駆動室54と背圧室84の圧力差によりスプール56はバルブ駆動室54を縮小するようにスリーブ68内を軸方向に移動する。接続流路85が低圧ポート64を第2ガスライン66bに接続する。膨張室34で作動ガスが膨張し、その結果生じる低圧PLの作動ガスが膨張室34からスプールバルブ50を通じて圧縮機吸入口12bへと回収される。
このとき、副吸気開閉バルブV3の開放によりピストン駆動室46の上部区画46aが高圧PHとなり、駆動ピストン22は下部区画46bを縮小するようにピストン駆動室46内を軸方向に移動する。そのため、今度は駆動ピストン22の移動により下部区画46bから押し出される作動ガスを第4ガスライン66dを通じて背圧室84に受け入れることができる。
このようにして、第4の実施の形態に係るスプールバルブ50は、第1の実施の形態に係るスプールバルブ50と同様に、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを膨張室34に交互に接続する極低温冷凍機10の流路切替機構として機能することができる。背圧室84に中間圧PMが導入され、これとバルブ駆動室54との圧力差によってスプール56の駆動を支援することができる。
なお、背圧室84の接続先はピストン駆動室46の下部区画46bには限られない。例えば、背圧室84は、図9に示される実施の形態と同様に、中間圧バッファ83に接続されてもよい。あるいは、背圧室84は、コールドヘッド14の室温室36に接続されてもよく、その場合、背圧室84を室温室36に接続する流路には流路抵抗(例えば、オリフィス、または絞り弁など)が設けられてもよい。背圧室84は、接続流路85に接続されてもよく、その場合、背圧室84を接続流路85に接続するスプール56内部の流路には流路抵抗が設けられてもよい。
図14は、ある実施の形態に係る極低温冷凍機10に適用可能な圧力制御機構52の他の構成を概略的に示す図である。図14に示されるように、圧力制御機構52は、バルブ駆動室54およびピストン駆動室46に接続されたリニア圧縮機86を備えてもよい。この場合、圧力制御機構52は、ロータリーバルブを有しない。
リニア圧縮機86は、電磁石などのアクチュエータ86aと、アクチュエータ86aの駆動により往復動する圧縮機ピストン86bと、バルブ駆動室54およびピストン駆動室46に接続された圧縮室86cと、背圧室86dとを備える。圧縮室86cにおいては、圧縮機ピストン86bが前進するとき(図14において圧縮機ピストン86bが下に移動するとき)作動ガスが圧縮され、高圧の作動ガスが圧縮室86cからバルブ駆動室54およびピストン駆動室46に供給される。圧縮機ピストン86bが後退するとき(図14において圧縮機ピストン86bが上に移動するとき)圧縮室86cの圧力は低下し、それにより、バルブ駆動室54およびピストン駆動室46の圧力も低下する。なお、リニア圧縮機86は、公知の構成のものを適宜採用することができる。
このようにして、圧力制御機構52は、図4に示されるものと同様の圧力変動をバルブ駆動室54およびピストン駆動室46に発生させることができる。したがって、圧力制御機構52は、圧縮機吐出口12aおよび圧縮機吸入口12bを膨張室34に交互に接続するようにスプールバルブ50を動作させることができる。
なお、必要とされる場合には、圧力変動の位相調整またはその他の理由により、リニア圧縮機86をバルブ駆動室54に接続する流路に第1流路抵抗88aが設けられ、リニア圧縮機86をピストン駆動室46に接続する流路に第2流路抵抗88bが設けられてもよい。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
例えば、第2の実施の形態において説明した脱着可能な継手80は、第3の実施の形態、または第4の実施の形態、またはその他の実施の形態に係る極低温冷凍機10に適用されてもよい。