以下、車載内燃機関の冷却液循環システムの一実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
まず、図1を参照してこの冷却液循環システムを搭載した車載内燃機関であるディーゼルエンジン10の構成を説明する。
図1に示されているように、ディーゼルエンジン10には、ターボチャージャ20が搭載されている。ディーゼルエンジン10の吸気通路11には、上流側から順に、エアクリーナ12、コンプレッサ21、インタークーラ41及び吸気絞り弁13が配置されている。エアクリーナ12は吸気通路11に取り込まれる空気を濾過し、コンプレッサ21は内蔵されているコンプレッサホイールの回転によって空気を圧縮して下流側に送り出す。インタークーラ41はコンプレッサ21において圧縮された空気を冷却し、吸気絞り弁13は開度の変更を通じて吸気通路11を流れる空気の流量、すなわち吸入空気量を調整する。
吸気通路11における吸気絞り弁13よりも下流側の部分は、吸気ポートを介してディーゼルエンジン10の各気筒によって構成されている燃焼室14に接続されている。各燃焼室14には、燃料噴射弁15がそれぞれ設置されている。そして、燃焼室14では、吸気通路11を通じて吸入された空気と、燃料噴射弁15から噴射された燃料との混合気の燃焼が行われる。
燃焼室14内での混合気の燃焼により生じた排気は、排気ポートを通じてディーゼルエンジン10の排気通路16に導かれ、排気通路16を通じて排出される。排気通路16には、その上流側から順に、タービン22及び排気浄化装置17が設置されている。タービン22には、コンプレッサホイールと一体回転可能にシャフトで連結されたタービンホイールが内蔵されている。タービン22は、コンプレッサ21と共にターボチャージャ20を構成している。また、排気浄化装置17は、排気中の粒子状物質を捕集し、排気を浄化する。なお、排気通路16におけるタービン22よりも上流側の部分には、排気中に燃料を添加する燃料添加弁18が設けられている。
ターボチャージャ20では、排気の流勢によりタービンホイールが回転することで、コンプレッサホイールが連動して回転する。これにより、燃焼室14に圧縮した空気を送り込む過給が行われる。すなわち、ターボチャージャ20は、排気の流勢によりタービンホイールを駆動することで、ディーゼルエンジン10の吸気を過給する。なお、タービン22におけるタービンホイールへの排気吹付口には、ノズル開度の変更に応じて同排気吹付口の開口面積を変化させる可変ノズル23が設けられている。これにより、可変ノズル23のノズル開度を調整することで、タービンホイールに吹き付けられる排気の流勢、ひいては過給後の吸気の圧力、すなわち過給圧を調整できるようになっている。
また、このディーゼルエンジン10には、排気通路16におけるタービン22よりも上流側の部分と、吸気通路11における吸気絞り弁13よりも下流側の部分とを連通する排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)通路(以下、EGR通路31と記載する)が設けられている。EGR通路31には、同EGR通路31を通って吸気中に再循環される排気を冷却するEGRクーラ32と、弁開度の変更により、吸気への排気の再循環量を調整するEGR弁33とが設けられている。また、EGR通路31には、EGRクーラ32を迂回させて排気を流すバイパス通路34が接続されている。EGR通路31におけるEGRクーラ32よりも下流側の部分には、バイパス通路34の出口を開閉するEGR切替弁35が設けられている。EGR切替弁35がバイパス通路34の出口を閉塞しているときには、排気はEGRクーラ32を通過して冷却された上で吸気中に再循環される。一方、EGR切替弁35がバイパス通路34の出口を閉塞していないときには、排気はEGRクーラ32を通過せずにバイパス通路34を通過して吸気中に再循環される。すなわち、この場合には排気はEGRクーラ32で冷却されずに吸気中に再循環される。
こうしたディーゼルエンジン10は、制御装置100により制御される。制御装置100には、ディーゼルエンジン10の各部に設けられた各種のセンサの検出信号が入力されている。そうしたセンサには、吸気圧センサ51、クランクポジションセンサ52、エアフロメータ53、出口液温センサ54及び車速センサ55が含まれる。吸気圧センサ51は、吸気通路11における吸気絞り弁13よりも下流側の部分における吸気の圧力である過給圧Pimを検出する。クランクポジションセンサ52は、ディーゼルエンジン10の出力軸であるクランクシャフトの回転速度である機関回転速度NEを検出する。エアフロメータ53は、吸気通路11におけるコンプレッサ21よりも上流側の部分における吸気の温度である外気温tha及び吸入空気量GAを検出する。出口液温センサ54は冷却液循環システムの冷却液の温度を検出する液温センサであり、ディーゼルエンジン10からの出口における冷却液の温度である出口液温ethwoutを検出する。車速センサ55はディーゼルエンジン10が搭載されている車両の速度である車速SPDを検出する。
次に、図2を参照してディーゼルエンジン10の冷却液循環システムについて説明する。
図2に示すように、ディーゼルエンジン10の冷却液循環システムは、ディーゼルエンジン10のウォータジャケット36,45を含む循環回路R10を備えている。循環回路R10の途中には冷却液を送り出して循環回路R10内の冷却液を移動させる電動ポンプ60が設けられている。循環回路R10は、第1循環経路R1、第2循環経路R2、第3循環経路R3及び第4循環経路R4の4つの経路を含んでいる。
第1循環経路R1は、ディーゼルエンジン10のシリンダブロック40内に設けられているブロック側ウォータジャケット45とシリンダヘッド30内に設けられているヘッド側ウォータジャケット36とを含んでいる。なお、ヘッド側ウォータジャケット36のうち排気冷却部36aは、排気ポートを冷却する部分である。
電動ポンプ60から吐出された冷却液は、シリンダブロック40内のブロック側ウォータジャケット45に導入され、ブロック側ウォータジャケット45を通過してシリンダヘッド30内のヘッド側ウォータジャケット36に流れ込む。なお、シリンダブロック40における隣り合うシリンダの間に位置するボア間領域にはブロック側ウォータジャケット45とヘッド側ウォータジャケット36を繋ぐドリルパスDPが設けられている。ブロック側ウォータジャケット45に導入された冷却液の一部は、このドリルパスDPを通じてヘッド側ウォータジャケット36に導かれる。
ヘッド側ウォータジャケット36を通過した冷却液はシリンダヘッド30に設けられた出口から配管を通じて空調装置のヒータ64と自動変速機の作動油であるATF(Automatic Transmission Fluid)を温めるATFウォーマ65とに導かれる。なお、シリンダヘッド30に設けられている冷却液の出口はヘッド側ウォータジャケット36における排気冷却部36aに設けられている。これにより、ディーゼルエンジン10のウォータジャケット45,36を通過した冷却液は、排気冷却部36aに設けられた出口から配管を通じてヒータ64及びATFウォーマ65に導かれる。
図2に示されているように、出口液温センサ54は、第1循環経路R1におけるこの出口の近傍に設けられており、この出口を通じて排気冷却部36aから出てきた冷却液の液温である出口液温ethwoutを検出する。
ヒータ64及びATFウォーマ65を通過した冷却液は、サーモスタット62を通過して電動ポンプ60の吸入口に戻る。このように、第1循環経路R1は、まずディーゼルエンジン10のウォータジャケット45,36を通り、その後にヒータ64やATFウォーマ65を経由して電動ポンプ60に戻る経路になっている。なお、第1循環経路R1におけるヒータ64の直前の部分には第1遮断弁66が設けられており、第1循環経路R1におけるATFウォーマ65の直前の部分には第2遮断弁67が設けられており、ヒータ64やATFウォーマ65への冷却液の導入は必要に応じて遮断される。
第2循環経路R2は、シリンダブロック40内におけるブロック側ウォータジャケット45よりも上流側の部分で第1循環経路R1から分岐して、冷却液をディーゼルエンジン10の潤滑油を冷却するオイルクーラ63に導く経路である。オイルクーラ63を通過した冷却液は、配管を通じてターボチャージャ20と燃料添加弁18とに導かれる。そして、ターボチャージャ20や燃料添加弁18を通過した冷却液は、第1循環経路R1におけるヒータ64及びATFウォーマ65よりも下流側且つサーモスタット62よりも上流側の部分に導入され、電動ポンプ60の吸入口に戻る。このように、第2循環経路R2は、まずオイルクーラ63を通り、その後にターボチャージャ20や燃料添加弁18を経由して電動ポンプ60に戻る経路になっている。
第3循環経路R3は、第2循環経路R2におけるシリンダブロック40よりも下流側且つオイルクーラ63よりも上流側の部分から分岐して、冷却液をEGRクーラ32、EGR切替弁35及びEGR弁33に導く経路である。EGRクーラ32を通過した冷却液はEGR切替弁35を経由してEGR弁33に至る。EGR弁33を通過した冷却液は配管を通じて吸気絞り弁13に導かれる。そして、吸気絞り弁13を通過した冷却液は、第1循環経路R1におけるヒータ64及びATFウォーマ65よりも下流側の部分に導入され、電動ポンプ60の吸入口に戻る。また、EGRクーラ32に導入された冷却液の一部は、配管を通じて第1循環経路R1におけるヒータ64及びATFウォーマ65よりも下流側且つサーモスタット62よりも上流側の部分に導入され、電動ポンプ60の吸入口に戻る。このように、第3循環経路R3は、EGRクーラ32、EGR切替弁35、EGR弁33及び吸気絞り弁13に冷却液を循環させる経路である。
第4循環経路R4は、第1循環経路R1における排気冷却部36aから分岐して冷却液をラジエータ61に導く経路である。ラジエータ61を通過した冷却液はサーモスタット62を経由して電動ポンプ60に戻る。なお、ラジエータ61から電動ポンプ60に戻る経路は、サーモスタット62によって開閉される。すなわち、第1循環経路や第2循環経路や第3循環経路を流れてサーモスタット62を通過する冷却液の温度がサーモスタット62の開弁温度未満である冷間時には、第4循環経路R4はサーモスタット62によって閉塞されている。そのため、このときには、第4循環経路R4を通じた冷却液の循環は行われず、ラジエータ61での放熱が行われないため、ディーゼルエンジン10の暖機が促進される。一方で、冷却液の温度が上昇し、第1循環経路や第2循環経路や第3循環経路を流れてサーモスタット62を通過する冷却液の温度がサーモスタット62の開弁温度以上になると、サーモスタット62が開弁し、ウォータジャケット45,36を通過した冷却液の一部が第4循環経路R4を流れ、ラジエータ61を経由して循環するようになる。これにより、ウォータジャケット45,36を通過して温度が高くなった冷却液の熱がラジエータ61で放熱され、ディーゼルエンジン10の過熱が抑制されるようになる。
こうした冷却液循環システムの制御も、制御装置100によって行われる。すなわち、制御装置100は冷却液循環システムにおける制御装置を兼ねている。例えば、制御装置100は、出口液温センサ54によって検出される出口液温ethwoutに基づいて、第1遮断弁66や第2遮断弁67を開閉する。また、電動ポンプ60を制御して冷却液の循環量を制御する。
次に、制御装置100が実行する冷却液循環システムの制御、特に電動ポンプ60の制御について説明する。
制御装置100は、ディーゼルエンジン10の暖機が完了しているときには、出口液温センサ54によって検出される出口液温ethwoutを目標の温度に近づけるように、出口液温ethwoutに応じて電動ポンプ60の駆動デューティをフィードバック制御する出口液温フィードバック制御を行う。すなわち、電動ポンプ60の単位時間当たりの駆動量をフィードバック制御する。なお、目標の温度はサーモスタット62の開弁温度よりも高く、且つ冷却液の沸点よりも低い温度である。
また、制御装置100は、機関始動時の出口液温ethwoutが閾値α以下であるときには、基本的に、電動ポンプ60を駆動させずに冷却液の循環を停止した状態にする循環停止制御を実行する。なお、閾値αは、サーモスタット62の開弁温度よりも若干低い温度に設定されている。すなわち、制御装置100は、ディーゼルエンジン10の暖機が完了していない冷間始動時に循環停止制御を実行する。冷却液の循環を停止させる循環制御を実行することにより、ディーゼルエンジン10内の冷却液の温度が、機関運転に伴って上昇しやすくなり、ディーゼルエンジン10の暖機が促進されるようになる。
なお、循環停止制御中は、循環回路R10内で冷却液の移動がほとんど生じないため、出口液温センサ54によって暖機の進行度合いを確認することができない。そこで、制御装置100は、循環停止制御中に排気冷却部36a内の冷却液の温度を推定して、推定した温度である推定液温ethwestに基づいて暖機の完了を判定して循環停止制御を終了させる。
制御装置100は、循環停止制御を開始するときの出口液温ethwoutを初期液温にして推定液温ethwestを算出する。推定液温ethwestの算出に際しては、所定の演算周期で単位時間当たりの温度上昇分を推定液温ethwestに積算して推定液温ethwestを更新する。なお、この冷却液循環システムでは、循環停止制御中の局所的な冷却液の沸騰の発生を抑制するため、ディーゼルエンジン10の中でも機関運転中に特に温度が高くなりやすい排気冷却部36a内の冷却液の温度を推定液温ethwestとして算出するようにしている。
具体的には、制御装置100は、機関回転速度NEと燃料噴射量Qと過給圧PimとEGR率とを用いることにより、単位時間当たりの受熱による冷却液の温度変化分を算出する。機関回転速度NEは単位時間当たりの燃焼の回数と相関関係があり、燃料噴射量Qは一回の燃焼における発熱量と相関関係がある。また、過給圧PimやEGR率は燃焼が行われるときの燃焼室14内の状態を示唆する指標であるため、機関回転速度NEと燃料噴射量Qと過給圧PimとEGR率とを用いることにより、単位時間当たりの受熱量を推定することができる。そのため、制御装置100は、これらの値を取得して受熱による冷却液の温度変化分を算出する。なお、過給圧Pimは燃焼室14内のガスの熱容量の指標であり、EGR率は燃焼室14内のガスの比熱の指標である。
また、制御装置100は、推定液温ethwestから外気温thaを引いた差と車速SPDとに基づいて、単位時間当たりの放熱による冷却液の温度変化分を算出する。車速SPDが高いほど単位時間当たりにディーゼルエンジン10に触れる外気の量が多くなるため、外気への放熱量は多くなる。また、外気温thaが低いほど放熱量は多くなるため、車速SPDと外気温thaとを用いて、推定液温ethwestから外気温thaを引いた差と車速SPDとに基づく演算を行うことにより、単位時間当たりの放熱量を推定することができる。そのため、制御装置100は、車速SPDと外気温thaを取得して放熱による冷却液の温度変化分を算出する。なお、放熱による冷却液の温度変化分を算出する際には、ディーゼルエンジン10の表面積やシリンダブロック40及びシリンダヘッド30の熱伝導率を反映させたかたちで演算を行う。
そして、算出した受熱による温度変化分と放熱による温度変化分の収支から冷却液の単位時間当たりの温度上昇分を算出し、この算出した温度上昇分を、推定液温ethwestに積算することにより、推定液温ethwestを更新する。
制御装置100は、推定液温ethwestが、所定の液温δ以上になったときに循環停止制御を終了させる。なお、所定の液温δは、推定液温ethwestが所定の液温δ以上であることに基づいてシリンダブロック40やシリンダヘッド30の暖機が完了したと判定することのできる温度であり、且つ冷却液の沸点よりも低い温度に設定されている。
制御装置100は、循環停止制御を終了させると、出口液温フィードバック制御を実行する前に、微流量制御を実行する。微流量制御では、電動ポンプ60をゆっくりと駆動し、循環停止制御によって温まったシリンダブロック40やシリンダヘッド30の温度を低下させないように、低い流量で循環回路R10内の冷却液を循環させる。なお、微流量制御では、出口液温フィードバック制御よりも低い駆動量で電動ポンプ60を駆動する。これにより、循環回路R10内の冷却液がディーゼルエンジン10で発生する熱によって温められながら、少しずつ撹拌される。したがって、ウォータジャケット45,36内の冷却液だけでなく、循環回路R10内の冷却液の温度が次第に上昇していく。なお、微流量制御を実行しているときには、循環回路R10内の冷却液が移動するため、出口液温センサ54によって検出される出口液温ethwoutによって暖機の進行度合いを確認することができる。制御装置100は、出口液温ethwoutが、閾値α以上になったときに冷却液の温度が均一化されたとして微流量制御を終了させ、上述した出口液温フィードバック制御を開始する。
この冷却液循環システムでは、上述したように、基本的に機関始動時の出口液温ethwoutが閾値α以下であるときに循環停止制御を実行して、循環停止制御を通じてシリンダブロック40やシリンダヘッド30を優先的に暖機する。そして推定液温ethwestが所定の液温δ以上になると、微流量制御を実行し、シリンダブロック40やシリンダヘッド30を冷やさないようにしながら冷却液の温度を均一化させる。そして、冷却液の温度が均一化し、出口液温ethwoutが閾値α以上になると、暖機が完了したとして微流量制御を終了させ、出口液温フィードバック制御を開始する。
しかし、この冷却液循環システムでは、条件によっては循環停止制御や微流量制御の実行が禁止されることもある。例えば、制御装置100に接続されているセンサに異常が生じている場合や、ディーゼルエンジン10の運転状態が高負荷運転状態である場合には、循環停止制御や微流量制御の実行が禁止される。また、循環停止制御が開始されてからの積算燃料噴射量が終了判定値以上になった場合には、循環停止制御の実行が禁止され、循環停止制御を中断して微流量制御が実行される。なお、終了判定値は、冷却液が沸騰する可能性が高いことを判定するための閾値であり、積算燃料噴射量が終了判定値以上になったことに基づいて、ディーゼルエンジン10での発熱量が冷却液の沸騰に必要な発熱量に到達するほど積算燃料噴射量が多くなっていることを判定できる大きさの値に設定される。具体的には、制御装置100は初期液温が低いときほど大きな値を終了判定値として設定する。そして、制御装置100は循環停止制御中に燃料噴射量Qを積算することによって積算燃料噴射量を算出し、算出した積算燃料噴射量が終了判定値以上になったときに循環停止制御を終了させる。
ところで、この冷却液循環システムでは、上述したように循環停止制御中は、推定液温ethwestを算出し、推定液温ethwestが所定の液温δ以上になったときに循環停止制御を終了させるようにしている。そして、制御装置100は、推定液温ethwestの算出においては、循環停止制御を開始するときの出口液温ethwoutを初期液温にして推定液温ethwestを算出している。そのため、循環停止制御が継続される期間の長さは、循環停止制御を開始するときの出口液温ethwoutが低いほど長くなる。すなわち、制御装置100は、循環停止制御を開始するときに出口液温センサ54で検出した出口液温ethwoutに応じて循環停止制御を継続させる期間の長さを変化させている。
このように循環停止制御を開始するときに液温センサで検出した冷却液の温度に応じて循環停止制御を継続させる期間の長さを変化させる構成を採用している場合には、内燃機関内に液温センサが設けられている部分よりも冷却液の温度が高くなっている部分がある場合、その部分で冷却液が沸騰してしまうおそれがある。すなわち、循環停止制御を開始するときに検出した冷却液の温度に応じて循環停止制御の実行が継続されている間に、液温センサが設けられている部分よりも冷却液の温度が高くなっていた部分における冷却液の温度が沸点に到達してしまうおそれがある。
この冷却液循環システムの場合、上述したように、循環停止制御を開始するときの出口液温ethwoutを初期液温にして推定液温ethwestを算出している。そのため、循環停止制御を開始するときの排気冷却部36a内の冷却液の温度と出口液温ethwoutとの乖離が大きいと、推定液温ethwestが排気冷却部36a内の冷却液の温度から乖離したものになってしまう。例えば、ウォータジャケット45,36内の冷却液の温度に大きなばらつきがあり、循環停止制御を開始するときの排気冷却部36a内の冷却液の温度が出口液温ethwoutよりも高い場合には、推定液温ethwestが所定の液温δに到達する前に、排気冷却部36a内で冷却液が沸騰してしまうおそれがある。
そこで、この冷却液循環システムでは、機関始動時に冷却液の温度のばらつきの大きさを判定するばらつき判定制御を実行する。そして、ばらつき判定制御を通じてディーゼルエンジン10内の冷却液の温度のばらつきの大きさが所定の大きさ以下であるか否かを判定し、ばらつき判定制御を通じてばらつきの大きさが所定の大きさ以下であると判定されたことを条件に、循環停止制御を実行するようにしている。
次に、図3を参照してこのばらつき判定制御にかかる一連の処理について説明する。この一連の処理は、ディーゼルエンジン10が始動されたときに制御装置100によって実行される。なお、この一連の処理を実行している間、制御装置100は、所定の周期で出口液温ethwoutを繰り返し取得している。
図3に示されているように、この一連の処理を開始すると、制御装置100は、ステップS100において出口液温ethwoutが閾値α以下であるか否かを判定する。そして、制御装置100は、ステップS100において出口液温ethwoutが閾値α以下であると判定した場合(ステップS100:YES)には、処理をステップS110に進める。
ステップS110では、制御装置100は、電動ポンプ60を駆動する。ここでは、微流量制御における電動ポンプ60の駆動デューティよりもさらに低い駆動デューティで電動ポンプ60を駆動する。そして、制御装置100は、次のステップS120において電動ポンプ60の駆動を開始してからの冷却液循環量が閾値β以上であるか否かを判定する。なお、閾値βは、循環回路R10における排気冷却部36aから出口液温センサ54が設けられている部分までの容積に基づいて排気冷却部36a内に存在していた冷却液が出口液温センサ54が設けられている部分まで移動するようになる循環量に設定されている。制御装置100は電動ポンプ60の駆動を開始してからの駆動時間に基づいて冷却液循環量が閾値β以上になったか否かを判定する。
制御装置100は、ステップS120において電動ポンプ60の駆動を開始してからの冷却液循環量が閾値β未満であると判定した場合(ステップS120:NO)には、処理をステップS110へと戻す。一方で、制御装置100は、ステップS120において電動ポンプ60の駆動を開始してからの冷却液循環量が閾値β以上であると判定した場合(ステップS120:YES)には、処理をステップS130へと進める。すなわち、制御装置100は、電動ポンプ60の駆動を開始してからの冷却液循環量が閾値β以上になるまで、電動ポンプ60を駆動し続ける。これにより、機関始動時に排気冷却部36a内に存在していた冷却液が出口液温センサ54が設けられている部分に到達するまでの期間に亘って電動ポンプ60が駆動されることになる。
ステップS130では、制御装置100は、電動ポンプ60を駆動している間に取得した出口液温ethwoutのうち最も高い温度である最大値と電動ポンプ60の駆動を開始する直前に取得した出口液温ethwoutとの乖離量ΔThが閾値γ以下であるか否かを判定する。具体的には、電動ポンプ60を駆動している間に取得した出口液温ethwoutのうち最も高い温度である最大値と電動ポンプ60の駆動を開始する直前に取得した出口液温ethwoutとの差の絶対値を算出することによって乖離量ΔThを算出し、閾値γと比較する。
閾値γは循環停止制御の実行を許可するか否かを判定するための閾値である。そのため、閾値γの大きさは、乖離量ΔThが閾値γ以下であることに基づいて、ディーゼルエンジン10内における冷却液の温度のばらつきの大きさが、循環停止制御を実行する上で適切な精度で推定液温ethwestを算出することができる範囲に収まっている、と判定できる大きさに設定されている。
制御装置100は、ステップS130において乖離量ΔThが閾値γ以下であると判定した場合(ステップS130:YES)には、処理をステップS140へと進め、循環停止制御を開始する。一方で、ステップS130において乖離量ΔThが閾値γよりも大きいと判定した場合(ステップS130:NO)には、処理をステップS150へと進め、循環停止制御を実行せずに、微流量制御を開始する。
なお、制御装置100は、ステップS100において出口液温ethwoutが閾値αより高いと判定した場合(ステップS100:NO)には、処理をステップS160に進め、循環停止制御及び微流量制御を実行せずに、出口液温フィードバック制御を開始する。
そして、制御装置100は、ステップS140又はステップS150又はステップS160の処理を実行すると、この一連の処理を終了させる。
この冷却液循環システムでは、上記の一連の制御におけるステップS110〜S130の処理がばらつき判定制御に相当する。すなわち、制御装置100は、機関冷間始動時に、所定の期間に亘って電動ポンプ60を駆動して循環回路R10内の冷却液を移動させることによって、出口液温ethwoutに基づいてディーゼルエンジン10内における冷却液の温度のばらつきの大きさが所定の大きさ以下であるか否かを判定するばらつき判定制御を実行する。そして、制御装置100は、ばらつき判定制御を通じてばらつきの大きさが所定の大きさ以下であると判定されたことを条件に、循環停止制御を実行する。
次にこうしたばらつき判定制御を実行することによる作用について、図4及び図5を参照して具体例を示しながら説明する。なお、図4及び図5はいずれも機関始動時の出口液温ethwoutが閾値α以下であるときの電動ポンプ60の駆動デューティの推移と出口液温ethwoutの推移との関係を示すタイミングチャートである。なお、図4はディーゼルエンジン10内における冷却液の温度のばらつきが小さい場合を示しており、図5はディーゼルエンジン10内における冷却液の温度のばらつきが大きい場合を示している。
まず、図4に示されている例(冷却液の温度のばらつきが小さい場合)について説明する。時刻t1においてディーゼルエンジン10が始動されると、ばらつき判定制御が開始される。これにより、電動ポンプ60が極めて低い駆動デューティで駆動され、循環回路R10内の冷却液が移動し始める。これにより、出口液温センサ54によって検出される出口液温ethwoutも変化する。制御装置100は、ばらつき判定制御を実行して電動ポンプ60を駆動している間、出口液温ethwoutを取得し続ける。そして、時刻t2において、電動ポンプ60の駆動を開始してからの冷却液の循環量が閾値β以上になると、電動ポンプ60を駆動している間に取得した出口液温ethwoutの最大値と電動ポンプ60の駆動を開始する直前に取得した出口液温ethwoutとの乖離量ΔThが閾値γ以下であるか否かを判定する。図4に示されているように、この場合には乖離量ΔThが閾値γ以下であるため、循環停止制御が開始され、時刻t2以降は電動ポンプ60の駆動が停止される(駆動デューティが0%にされる)。
次に、図5に示されている例(冷却液の温度のばらつきが大きい場合)について説明する。時刻t1においてばらつき判定制御が開始されると、出口液温センサ54によって検出される出口液温ethwoutが変化し始める。この場合には、ディーゼルエンジン10内における冷却液の温度のばらつきが大きいため、図4に示されている例の場合よりも出口液温ethwoutが大きく変化している。そして、制御装置100は、時刻t2において、図4に示されている例と同様に、乖離量ΔThが閾値γ以下であるか否かを判定する。図5に示されているように、この場合には乖離量ΔThが閾値γよりも大きいため、循環停止制御は実行されず、時刻t2以降は微流量制御が実行され、ばらつき判定制御を実行していたときよりも大きな駆動デューティで電動ポンプ60が駆動される。
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)ディーゼルエンジン10内の冷却液の温度のばらつきが大きいとき、すなわち、循環停止制御を開始するときに出口液温センサ54で検出した出口液温ethwoutが循環停止制御に用いるには相応しくない値である可能性が高い場合には、循環停止制御が実行されなくなる。これにより、冷却液の沸騰が発生してしまうことを抑制することができる。
(2)ディーゼルエンジン10内の冷却液の温度が不均一であったとしても沸騰が生じることがないように、例えば、所定の液温δをより低い温度に設定して、循環停止制御をより低い温度で終了させるようにすることもできる。しかし、この場合には、暖機が十分に行われていないうちに循環停止制御が終了するようになり、循環停止制御による暖機の促進効果が損なわれてしまうことになる。
これに対して、上記実施形態では、ディーゼルエンジン10内の冷却液の温度のばらつきが小さく、循環停止制御を開始するときに出口液温センサ54で検出した出口液温ethwoutに応じて適切な循環停止制御を実行することができるときに限って循環停止制御が実行される。そのため、ディーゼルエンジン10内の冷却液の温度が不均一であったとしても沸騰が生じることがないように、循環停止制御をより低い温度で終了させるようにする場合と比較して、循環停止制御がより長い期間に亘って継続されるようになり、循環停止制御によって効果的に暖機の促進を図ることができる。
(3)上記の(1)と(2)の効果により、冷却液の沸騰の抑制と効果的な暖機の促進との両立を図ることができる。
(4)排気冷却部36aは、燃焼室14に近く、且つ高温の排気に晒される排気ポートを冷却する部分であるため、この部分の冷却液は、冷却液の中でも特に温度が高くなる。一方で、ディーゼルエンジン10からの冷却液の出口は、外気によって冷却されるディーゼルエンジン10の表面に位置しているため、この部分の冷却液は、機関停止中に温度が低下しやすく、ディーゼルエンジン10の冷却液の中でも特に温度が低くなる。
この冷却液循環システムでは、ばらつき判定制御において、まずは温度が低い部分の冷却液の温度が出口液温センサ54で検出される。そして、機関始動時に排気冷却部36aに存在していた冷却液の温度を出口液温センサ54で検出できるようになるまで、電動ポンプ60を駆動する。そのため、ディーゼルエンジン10内の冷却液の全てが出口液温センサ54の設けられている部分を通過するようになるまで電動ポンプ60を駆動し続けなくても、排気冷却部36aにおける冷却液の温度と出口の部分における冷却液の温度とを検出して冷却液の温度のばらつきの大きさを推定することができる。
すなわち、ディーゼルエンジン10内の冷却液の全てが出口液温センサ54の設けられている部分を通過するようになるまで電動ポンプ60を駆動し続ける場合と比較して、ばらつき判定制御を速やかに終了させて、循環停止制御に移行させることができる。したがって、ばらつき判定制御を実行することによる冷却液の移動によって暖機の促進効果が損なわれてしまうことを極力抑制することができる。
(5)排気冷却部36aに存在する冷却液が出口液温センサ54の設けられている部分に到達するまで電動ポンプ60を駆動した時点で、電動ポンプ60を駆動している間に検出した冷却液の温度の最大値を用いてばらつきの大きさを判定することができる。したがって、電動ポンプ60を駆動している間に検出した冷却液の温度の情報を極力反映させたかたちで判定を行うことができる。
(6)ばらつき判定制御を通じてばらつきが小さいことが判定されたとき(ステップS130:YES)には、ディーゼルエンジン10の中で特に温度が高くなる排気冷却部36aに存在していた冷却液が出口液温センサ54の設けられている部分に移動している。そのため、ばらつきが小さいことが判定されたことに基づき、循環停止制御を開始するときに検出した出口液温ethwoutは、機関運転中に特に高温になりやすい排気冷却部36aの温度に近いものとなる。そして、この冷却システムでは、循環停止制御を開始するときに検出した温度を初期液温にして推定液温ethwestを算出するようにしているため、特に高温になりやすい排気冷却部36aにおける冷却液の温度を適切に推定できる。そのため、算出した推定液温ethwestに基づいて循環停止制御を終了させることにより、沸騰が起こらない範囲で極力長く循環停止制御を実行することができる。
(7)積算燃料噴射量は、循環停止制御中における内燃機関での総発熱量と相関関係がある。そのため、積算燃料噴射量によって暖機の進行度合いを推定したり、沸騰の可能性を推定したりすることもできる。この冷却液循環システムでは、循環停止制御中の積算燃料噴射量が終了判定値以上になった場合には、循環停止制御の実行を禁止し、循環停止制御を中断して微流量制御を実行するようにしている。そのため、積算燃料噴射量を用いて沸騰の可能性が高いことを判定し、循環停止制御を終了させることができる。
(8)循環停止制御のあと、出口液温フィードバック制御を実行する前に微流量制御を実行しているため、出口液温フィードバック制御への移行に伴ってディーゼルエンジン10が冷えてしまうことを抑制することができる。
(9)ばらつき判定制御では、微流量制御よりもさらに低い駆動量で電動ポンプ60を駆動するようにしているため、電動ポンプ60を駆動することによる冷却液の撹拌を抑制し、冷却液のばらつきをより的確に判定することができる。
なお、上記の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・ディーゼルエンジン10の冷却液循環システムを例示したが、同様の構成を適用できる内燃機関はディーゼルエンジンに限らない。例えば、ガソリンエンジンを冷却する冷却液循環システムに同様の構成を適用することもできる。
・ばらつき判定制御における電動ポンプ60の駆動デューティは、微流量制御における電動ポンプ60の駆動デューティよりも低くなくてもよい。しかし、電動ポンプ60を駆動することによる冷却液の撹拌を抑制し、冷却液のばらつきをより的確に判定する上では、ばらつき判定制御では電動ポンプ60を極力低い駆動量で駆動することが好ましい。
・液温センサは、出口液温センサに限らない。すなわち、冷却液の温度を検出する液温センサは、内燃機関からの冷却液の出口の部分に限らない。例えば、内燃機関への冷却液の入口部分に液温センサを設けてもよい。ただし、この場合には、液温センサで検出した冷却液の温度を利用して内燃機関内の冷却液の温度のばらつきの大きさを判定するためには、ばらつき判定制御において循環回路R10を一巡させるまで電動ポンプ60を駆動し続ける必要がある。この場合には、内燃機関内に存在していた冷却液が液温センサが設けられている部分に到達するまでの間に、冷却液が撹拌されてしまい温度のばらつきの大きさを判定しにくくなってしまう。そのため、液温センサは内燃機関からの冷却液の出口に近い部分に設けることが好ましい。
・推定液温ethwestを算出する上での冷却液の温度上昇分の算出方法は適宜変更可能である。例えば、温度上昇分の算出に用いるパラメータに、受熱量や放熱量と相関関係がある他のパラメータを追加してもよい。
・推定液温ethwestとして推定する液温は、必ずしも排気冷却部36aにおける冷却液の液温でなくてもよい。しかし、沸騰の発生を抑制する上では、内燃機関内における温度が高くなりやすい部分の冷却液の温度を推定することが好ましい。
・制御装置100が、循環停止制御を開始するときに液温センサで検出した冷却液の温度に応じて循環停止制御を継続させる期間の長さを変化させる構成であれば、同様の課題は生じ得る。したがって、循環停止制御の終了条件は、適宜変更することができる。例えば、上記の実施形態では、循環停止制御中の積算燃料噴射量が終了判定値以上になったときにも循環停止制御を終了させるようにしているため、推定液温ethwestの算出を省略してもよい。この場合でも、終了判定値を初期液温が低いときほど大きな値に設定するようにしているため、循環停止制御を開始するときに液温センサで検出した冷却液の温度に応じて循環停止制御を継続させる期間の長さが変化する。そのため、この場合にも、ばらつき判定制御を実行して、ばらつきが小さいと判定されたことを条件に、循環停止制御を実行するようにすれば、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、循環停止制御中の積算吸入空気量も積算燃料噴射量と同様に、循環停止制御中の内燃機関の総発熱量の指標となり得る。そのため、循環停止制御中の積算燃料噴射量が終了判定値以上になったことを循環停止制御の終了条件とすることもできる。また、循環停止制御中の電動ポンプ60の積算停止時間が長いほど、暖機が進行していると推定することもできる。そのため、積算停止時間が終了判定値以上になったことを循環停止制御の終了条件とすることもできる。いずれの場合にも初期液温が低いほど終了判定値が大きくなるように終了判定値を設定する構成であれば、ばらつき判定制御を実行して、ばらつきが小さいと判定されたことを条件に、循環停止制御を実行することによって、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、上記実施形態のように、こうした終了条件を複数組み合わせて設定するようにしてもよい。
・ばらつき判定制御において、電動ポンプ60の駆動を開始する直前に検出した出口液温ethwoutと電動ポンプ60を駆動している間に検出した出口液温ethwoutの最大値との乖離量ΔThが閾値δ以下であるか否かに応じて冷却液の温度のばらつきの大きさが所定の大きさ以下であるか否かを判定する例を示した。これに対して、判定に用いる乖離量の算出方法は、適宜変更してもよい。例えば、電動ポンプ60の駆動を開始する直前に検出した出口液温ethwoutに替えて、駆動を開始したときの出口液温ethwoutを用いてもよいし、駆動を開始した直後の出口液温ethwoutを用いてもよい。また、電動ポンプ60を駆動している間に検出した出口液温ethwoutの最大値に替えて、駆動を停止したときの出口液温ethwoutを用いてもよいし、駆動を停止した直後の出口液温ethwoutを用いてもよい。
・冷却液の温度のばらつきの大きさが所定の大きさ以下であることを判定する方法は適宜変更することができる。例えば、ばらつき判定制御中に取得した冷却液の温度の最大値と最小値との乖離量の大きさに基づいてばらつきの大きさが所定の大きさ以下であることを判定するようにしてもよい。また、乖離量の大きさによってばらつきの大きさを判定するものでなくてもよい。例えば、ばらつき判定制御中に取得した冷却液の温度の標準偏差を算出し、標準偏差の大きさに基づいてばらつきの大きさが所定の大きさ以下であることを判定するようにしてもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
・(請求項1)内燃機関のウォータジャケットを含む冷却液の循環回路と、前記循環回路の途中に設けられていて前記循環回路内の冷却液を移動させる電動ポンプと、前記循環回路内を流れる冷却液の温度を検出する液温センサと、前記電動ポンプを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、機関始動後に前記電動ポンプを駆動せずに冷却液の循環を停止させた状態にする循環停止制御を実行し、且つ前記循環停止制御を開始するときに前記液温センサで検出した冷却液の温度に応じて同循環停止制御を継続させる期間の長さを変化させる車載内燃機関の冷却液循環システムにおいて、前記制御装置が、機関始動後に所定の期間に亘って前記電動ポンプを駆動して前記循環回路内の冷却液を移動させることによって、前記液温センサによって検出される冷却液の温度に基づいて前記内燃機関内における冷却液の温度のばらつきの大きさが所定の大きさ以下であるか否かを判定するばらつき判定制御を実行し、且つ同ばらつき判定制御を通じてばらつきの大きさが所定の大きさ以下であると判定されたことを条件に、前記循環停止制御を実行することを特徴とする車載内燃機関の冷却液循環システム。
・(請求項2)前記液温センサが、前記内燃機関からの冷却液の出口における冷却液の温度を検出する出口液温センサであり、前記制御装置が、前記ばらつき判定制御において、前記所定の期間として、機関始動後に前記電動ポンプの駆動を開始してから前記ウォータジャケットのうち前記内燃機関の排気ポートを冷却する部分に存在する冷却液が前記出口液温センサの設けられている部分に到達するまでの期間に亘って前記電動ポンプを駆動する請求項1に記載の車載内燃機関の冷却液循環システム。
・(請求項3)前記制御装置が、前記ばらつき判定制御において、前記電動ポンプの駆動を開始する直前に前記出口液温センサで検出した冷却液の温度と前記電動ポンプを駆動している間に前記出口液温センサで検出した冷却液の温度の最大値との乖離量が所定値以下であるか否かに応じて前記内燃機関内における冷却液の温度のばらつきの大きさが所定の大きさ以下であるか否かを判定し、前記電動ポンプを駆動している間の冷却液の温度の最大値との乖離量が所定値以下であるときに、ばらつきの大きさが所定の大きさ以下であると判定する請求項2に記載の車載内燃機関の冷却液循環システム。
・(請求項4)前記制御装置は、前記循環停止制御を開始するときに前記液温センサで検出した冷却液の温度を、前記ウォータジャケットのうち前記内燃機関の排気ポートを冷却する部分における冷却液の温度の推定値である推定液温の初期液温にして前記循環停止制御中に前記ウォータジャケットのうち前記内燃機関の排気ポートを冷却する部分における冷却液の温度上昇分を積算することによって前記推定液温を算出し、算出した前記推定液温が所定の液温以上になったときに前記循環停止制御を終了させる請求項3に記載の車載内燃機関の冷却液循環システム。
・(請求項5)前記制御装置は、機関回転速度と、燃料噴射量と、過給圧と、EGR率と、車速と、外気温とを取得し、前記温度上昇分を算出する請求項4に記載の車載内燃機関の冷却液循環システム。
・(請求項6)前記制御装置は、前記循環停止制御を開始するときに前記液温センサで検出した冷却液の温度が低いときほど大きな値を終了判定値として設定し、前記循環停止制御中に燃料噴射量を積算することによって積算燃料噴射量を算出し、算出した積算燃料噴射量が前記終了判定値以上になったときに前記循環停止制御を終了させる請求項3〜5のいずれか一項に記載の車載内燃機関の冷却液循環システム。
・(請求項7)前記制御装置は、前記ばらつき判定制御及び前記循環停止制御の他に、前記液温センサによって検出される冷却液の温度に応じて前記電動ポンプの単位時間当たりの駆動量をフィードバック制御する液温フィードバック制御と、前記液温フィードバック制御よりも低い駆動量で前記電動ポンプを駆動する微流量制御とを実行する請求項1〜6のいずれか一項に記載の車載内燃機関の冷却液循環システム。
・(請求項8)前記制御装置は、前記ばらつき判定制御において、前記微流量制御よりも低い駆動量で前記電動ポンプを駆動する請求項7に記載の車載内燃機関の冷却液循環システム。