JP2020007959A - 内燃機関の制御システム及びその制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】バックファイアの発生を抑制してアトキンソンサイクルによる燃料消費量の低減を実現する内燃機関の制御システム及びその制御装置を提供することにある。【解決手段】内燃機関の負荷が減少するにしたがって、吸気側可変動弁機構によって吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を遅角側に制御し、更に点火時期制御手段によって点火時期(IgT)を進角側に制御すると共に、点火時期(IgT)を吸気閉時期(IVC)より遅角側で、しかも吸気閉時期(IVC)と点火時期(IgT)の間の角度差を常に所定の補正角度(Δθcmp)以上に維持する構成とした。吸気側可変動弁機構によって吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を大きく遅角してアトキンソンサイクルによる燃料消費量の低減効果を高め、且つ点火時期(IgT)を進角して機関トルクの低下を抑制すると共に、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)を超えて進角されないので、バックファイアを抑制することができる。【選択図】図8

Description

本発明は内燃機関の制御システム及びその制御装置に係り、特にアトキンソンサイクルを実施する内燃機関の制御システム及びその制御装置に関するものである。
一般的な内燃機関では、膨張行程の後半において、排気バルブが開弁する前の筒内(燃焼室)の圧力は比較的高く、排気バルブの開弁により筒内の圧力は、排気ポート内の圧力、例えば大気圧レベルにまで低下する。ところが、アトキンソンサイクルとして膨張比を大きくしていくと、膨張行程の後半において筒内の圧力が大気圧以下となり、その後に排気バルブが開弁して排気ポートの圧力によって筒内の圧力が上昇する。
このように膨張比を大きくすると、膨張行程の後半において筒内の圧力が大気圧以下になることによってポンピング損失が発生する。このような問題に対処するために、例えば、特開2008-157128号公報(特許文献1)では、機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、排気バルブの開弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構とを備えた内燃機関を提案している。
そして、内燃機関の低負荷運転時には最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされるが、このとき膨張行程の後半において、筒内の圧力が大気圧以下にならないように排気バルブの開弁時期が早められて、ポンピング損失を抑制するようにしている。
更に、上述した特許文献1においては、図13に示されているように、吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を、吸気下死点(BDC)の後のクランク角で90°を越えて圧縮行程側に大きく遅角して、アトキンソンサイクルによる燃料消費量の低減効果を高める例が示されている。
特開2008-157128号公報
このように、吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を、吸気下死点(BDC)を起点として遅角側(圧縮行程側)に大きく遅角すると、アトキンソンサイクルによる大きな燃料消費量の低減効果が得られる。ところで、最近では自動車の燃料消費量や排気ガス有害成分に関する規制が強化されており、今後もますます厳しくなる傾向にある。特に燃料消費量については、排出される二酸化炭素が地球温暖化へ与える影響が大きいことから、更なる燃料消費量の低減が要請されている。
そして、燃料消費量の低減を推し進めるために、アトキンソンサイクルでの吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を更に遅角させることが提案されている。また、アトキンソンサイクルの実行領域を低負荷側まで拡大すると、運転負荷全体として燃料消費量を低減することができる。一方で、アトキンソンサイクルでは低負荷領域での機関トルクの低下を抑制するため、熱効率を高めるために、点火時期を進角側に制御している。
このため、吸気行程においては、吸気ポート噴射や筒内直接噴射によって燃料が供給されているので、アトキンソンサイクルで吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を圧縮行程側に大きく遅角させると、吸気系側に可燃混合気が逆流することになる。
この状態で、吸気バルブの吸気閉時期(IVC)が遅角側へ大きく移行され、逆に点火時期(IgT)が進角側に移行されると、点火時期(IgT)が吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を超えるように進角されることがある。
したがって、点火プラグの発火によって筒内の可燃混合気に点火され、この点火によって発生した火炎は、吸気バルブがまだ開いているので吸気系側に流れ込み、吸気系側に滞留している可燃混合気を爆発的に燃焼させる、バックファイアという現象を生じる恐れがある。
本発明の目的は、バックファイアの発生を抑制してアトキンソンサイクルによる燃料消費量の低減を実現する内燃機関の制御システム及びその制御装置を提供することにある。
本発明の特徴は、内燃機関の負荷が減少するにしたがって、吸気側可変動弁機構によって吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を遅角側に制御し、更に点火時期制御手段によって点火時期(IgT)を進角側に制御すると共に、点火時期(IgT)を吸気閉時期(IVC)より遅角側で、しかも吸気閉時期(IVC)と点火時期(IgT)の間の角度差を所定の補正角度(Δθcmp)以上に維持する、ところにある。
本発明によれば、吸気側可変動弁機構によって吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を大きく遅角してアトキンソンサイクルによる燃料消費量の低減効果を高め、且つ点火時期(IgT)を進角して機関トルクの低下を抑制すると共に熱効率を高め、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)を超えて進角されないので、バックファイアを抑制することができる。
本発明に係る内燃機関の制御システムの全体概略図である。 吸気側可変動弁機構と排気側可変動弁機構の外観構成を示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態であって、第4負荷での排気バルブと吸気バルの開閉時期、及び点火時期の関係を説明する説明図である。 本発明の第1の実施形態であって、第3負荷での排気バルブと吸気バルの開閉時期、及び点火時期の関係を説明する説明図である。 本発明の第1の実施形態であって、第2負荷での排気バルブと吸気バルの開閉時期、及び点火時期の関係を説明する説明図である。 本発明の第1の実施形態であって、第1負荷での排気バルブと吸気バルの開閉時期、及び点火時期の関係を説明する説明図である。 本発明の第1の実施形態であって、回転角の進行に対応した第1負荷から第4負荷までの排気バルブと吸気バルブのリフトと開閉時期、及び点火時期の関係を説明する説明図である。 本発明の第1の実施形態であって、第1負荷から第4負荷までの排気バルブと吸気バルブの開閉時期の変化、及び点火時期の変化を説明する説明図である。 本発明の第1の実施形態になる内燃機関の制御システムでの制御を実行する制御フローの前半を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施形態になる内燃機関の制御システムでの制御を実行する制御フローの後半を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態になる制御フローを示すフローチャートである。 本発明の第3の実施形態になる制御フローを示すフローチャートである。 本発明の第4の実施形態であって、吸気側可変動弁機構に異常が発生した場合の第1負荷から第4負荷までの排気バルブと吸気バルブの開閉時期の変化、及び点火時期の変化を説明する説明図である。 本発明の第5の実施形態であって、内燃機関の回転数と回転補正カウ度の関係を説明する説明図である。 本発明の第5の実施形態であって、第1負荷から第4負荷までの排気バルブと吸気バルブの開閉時期の変化、及び点火時期の変化を説明する説明図である。 本発明の第5の実施形態になる制御フローを示すフローチャートである。 本発明の第6の実施形態であって、着座検出信号とノック検出信号の関係を説明する説明図である。 本発明の第6の実施形態になる制御フローを示すフローチャートである。 本発明の第7の実施形態であって、第1負荷から第4負荷までの排気バルブと吸気バルブの開閉時期の変化、及び点火時期の変化を説明する説明図である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
本発明の具体的な実施形態を説明する前に、本発明が適用される内燃機関の制御システムの構成、及び可変動弁機構の構成を簡単に説明する。
図1において、シリンダブロック01とシリンダヘッド02との間に、ピストン03を介して燃焼室04が形成されていると共に、シリンダヘッド02のほぼ中央位置に点火プラグ05が設けられている。ピストン03は、ピストンピンに一端部が連結されたコネクチングロッド06を介してクランクシャフト07に連結されている。
このクランクシャフト07は、冷機時の通常の始動やアイドリングストップ後の自動的な始動がピニオンギア機構09を介してスタータモータ08によって行われるようになっている。尚、クランクシャフト07は、後述するクランク角センサ010によってクランク角及び回転数が検出されるようになっている。
シリンダブロック01には、ノックの発生を検出するノックセンサ015や、ウォータジャケット内の水温を検出する水温センサ011が取り付けられていると共に、シリンダヘッド02には、燃焼室04内に燃料を噴射する燃料噴射弁012が設けられている。
更に、シリンダヘッド02の内部に形成された吸気ポート013や排気ポート014を開閉する1気筒当たりそれぞれ2つの吸気バルブ4及び排気バルブ5がそれぞれ摺動自在に設けられていると共に、吸気バルブ4側と排気バルブ5側には可変動弁機構が設けられている。
吸気バルブ側には吸気側バルブタイミング制御機構(以下、吸気側VTC機構と表記する)3が設けられ、排気バルブ側には排気側バルブリフト制御機構(以下、排気側VEL機構と表記する)1、及び排気側バルブタイミング制御機構(以下、排気側VTC機構と表記する)2が設けられる。制御手段(コントローラ)22には図示したようなセンサ信号が入力され、また制御要素の駆動信号が出力されている。
図1にあるスタータモータ08は、バッテリを動力源とするモ−タ本体と、フライホイ−ルの外周にはめこまれたリングギヤに噛み合い動力を伝達するピニオンギア機構09などから成る一般的なものである。始動時、或いは再始動時のスタータモータ08への通電時のみ、ピニオンギア機構09のピニオンギアが前進し、内燃機関のリングギヤに噛み合ってスタータモ−タ08の回転を周知のリングギヤに伝えクランキングが行なわれる。尚、内燃機関が始動に成功してスタータモータ08への通電を停止すると、ピニオンギアは押し戻され、リングギヤとの噛み合いは離脱されるようになっている。
ここで、本実施形態は後述するように排気バルブ5を所定の開閉時期に制御し、また、吸気バルブ4を所定の開閉時期に制御することを対象としているので、スタータの方式は限定されず、ピニオンギアとリングギヤが常時噛み合っているスタータや、ハイブリッド車用モ−タ等を用いてベルト駆動でクランクプ−リを回転させるものであっても差し支えない。
可変動弁機構は、図2に示すように、内燃機関の排気バルブ5のバルブリフト及び作動角(開期間)を制御する排気側VEL機構1と、排気バルブ5の開閉時期(バルブタイミング)を制御する排気側VTC機構2と、吸気バルブ4の開閉時期を制御する吸気側VTC機構3とを備えている。また、排気側VEL機構1と排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3は、制御手段22によって機関運転状態に応じてそれぞれの作動が制御されるようになっている。
排気側VEL機構1は、本出願人が先に出願した、例えば特開2003−172112号公報(吸気バルブ側に適用)に記載されたものと同様の構成であるで、詳細はこの公報を参照されたい。また、吸気側VTC機構3も本出願人が先に出願した、例えば特開2012−127219号公報に記載されたものと同様の構成であるで、詳細はこの公報を参照されたい。尚、排気側VTC機構2も吸気側VTC機構3と実質的に同じ構成である。
排気側VEL機構1について図2に基づいて簡単に説明すると、シリンダヘッド02の上部に有する軸受に回転自在に支持された中空状の駆動軸6と、駆動軸6の外周面に圧入等により固設された回転カム7と、駆動軸6の外周面に揺動自在に支持されて、排気バルブ5の上端部に配設されたバルブリフター8の上面に摺接して排気バルブ5を開作動させる2つの揺動カム9と、回転カム7と揺動カム9との間に介装されて、回転カム7の回転力を揺動運動に変換して揺動カム9に揺動力として伝達する伝達機構とを備えている。
駆動軸6(排気側)は、一端部に設けられたタイミングスプロケット31Aを介してクランクシャフト07からタイミングチェーンによって回転力が伝達されており、この回転方向は図2で時計方向(矢印方向)に設定されている。尚、駆動軸6とタイミングスプロケット31Aとの位相は変化しないシステムとしても良い。その場合、排気側VTC機構2は装着されているものの使用されず位相変換は行われない。したがって、排気側VTC機構2は省略し、固定のタイミングスプロケット31Aとしても良い。
排気側の回転カム7はほぼリング状を呈し、内部軸方向に形成された駆動軸挿通孔を介して駆動軸6に貫通固定されていると共に、カム本体の軸心が駆動軸6の軸心から径方向へ所定量だけオフセットしている。
揺動カム9は円筒状のカムシャフト10の両端部に一体的に設けられていると共に、カムシャフト10が内周面を介して駆動軸6に回転自在に支持されている。また、下面にベースサークル面やランプ面及びリフト面からなるカム面が形成されており、ベースサークル面とランプ面及びリフト面が、揺動カム9の揺動位置に応じて各バルブリフター8の上面の所定位置に当接するようになっている。
伝達機構は、駆動軸6の上方に配置されたロッカアーム11と、ロッカアーム11の一端部11aと回転カム7とを連係するリンクアーム12と、ロッカアーム11の他端部11bと揺動カム9とを連係するリンクロッド13とを備えている。ロッカアーム11は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カムに回転自在に支持されていると共に、一端部11aがピン14によってリンクアーム12に回転自在に連結されている一方、他端部11bがリンクロッド13の一端部13aにピン15を介して回転自在に連結されている。
リンクアーム12は、円環状の基端部12aの中央位置に有する嵌合孔に回転カム7のカム本体が回転自在に嵌合している一方、基端部12aから突出した突出端12bがピン14によってロッカアーム一端部11aに連結されている。リンクロッド13は、他端部がピン16を介して揺動カム9のカムノーズ部に回転自在に連結されている。
また、駆動軸6の上方位置に同じ軸受部材に制御軸17が回転自在に支持されていると共に、制御軸17の外周にロッカアーム11の支持孔に摺動自在に嵌入されて、ロッカアーム11の揺動支点となる制御カム18が固定されている。制御軸17は、駆動軸6と並行に機関前後方向に配設されていると共に、駆動機構19によって回転制御されている。一方、制御カム18は、円筒状を呈し、軸心位置が制御軸17の軸心から所定分だけ偏倚している。
駆動機構19は、ケーシングの一端部に固定された電動モータ20、電動モータ20の回転駆動力を制御軸17に伝達するボール螺子伝達手段21とから構成されている。電動モ−タ20は、比例型のDCモータによって構成され、機関運転状態を検出する制御手段22からの制御信号によって駆動するようになっている。
ボール螺子伝達手段21は、電動モータ20の駆動シャフトとほぼ同軸上に配置されたボール螺子軸23と、ボール螺子軸23の外周に螺合する移動部材であるボールナットと、制御軸17の一端部に直径方向に沿って連結された連係アーム25と、連係アーム25とボールナット24とを連係するリンク部材26とから主として構成されている。
ボール螺子軸23は、両端部を除く外周面全体に所定幅のボール循環溝が螺旋状に連続して形成されていると共に、一端部にモータ駆動軸を介して連結され電動モータ20によって回転駆動されるようになっている。
ボールナット24は、ほぼ円筒状に形成され、内周面にボール循環溝と共同して複数のボールを転動自在に保持するガイド溝が螺旋状に連続して形成されていると共に、各ボールを介してボール螺子軸23の回転運動をボールナット24の直線運動に変換しつつ軸方向の移動力が付与されるようになっている。
また、このボールナット24は、付勢手段であるコイルスプリング30のばね力によって電動モータ20側(最小リフト側)に付勢されている。したがって、機関停止時には、かかるボールナット24が、コイルスプリング30のばね力によってボール螺子軸23の軸方向に沿って最小リフト側に移動するようになっている。
次に、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3についてであるが、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3は、いわゆるベーンタイプのものであって、上述した特開2012−127219号公報に記載されたものと同様の構成であるので、ここでは説明は省略する。尚、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3は「最進角位置」がデフォルト位置になっている。ここで、デフォルト位置とは、非作動時、つまり、油圧が作用しない場合に機械的に安定する位置のことである。
以上に説明したように、排気バルブ5は、排気側VEL機構1と排気側VTC機構2の動作に対応して、排気バルブ5のリフトと作動角、及び開閉時期が制御される。一方、吸気バルブ4は、吸気側VTC機構3の動作に対応して開閉時期が制御されが、吸気バルブ4のリフトと作動角は変化しない。この吸気バルブのリフト/作動角は、図5に示す第2負荷領域における排気側VEL機構1によるにリフト/作動角と略同じに設定されている。
次に、制御手段22は、コントロールユニット(ECU)の内部に組み込まれており、クランク角を検出するクランク角センサ010からの検出信号、アクセル開度センサからの検出信号、車速センサからの検出信号、ギア位置センサからの検出信号、ブレーキ踏込みセンサからの検出信号、水温センサ011からの検出信号、ノックセンサ015からの検出信号等から現在の機関運転状態や自動車の運転状態を検出している。
また、駆動軸6の回転角度を検出する駆動軸角度センサ28からの検出信号や、制御軸17の回転位置を検出するポテンショメータ29からの検出信号を入力して、駆動軸6のクランク角に対する相対回転角度や排気バルブ5のバルブリフト量や作動角を検出するようになっている。
制御手段22は、マイクロコンピュータを主たる構成要素とするものであり、このマイクロコンピュータは、制御プログラムにしたがって演算処理を実行する演算部と、制御プログラムや演算に使用する定数等を記憶したROM領域部と、プログラムの実行過程で必要なデータを一時的に記憶するワークエリアとしてのRAM領域部を備えている。更にセンサ信号を取り込むと共に排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、吸気側VTC機構3等の駆動アクチュエータに駆動信号を供給するI/OLSI等を備えている。
マイクロコンピュータは制御プログラムによって、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、吸気側VTC機構3等で実行される制御に関する種々の演算処理を行っているが、その演算は所定の制御機能を実行するためのものであり、本実施形態では演算によって実行される処理を機能として捉えるものとする。更に、マイクロコンピュータは点火プラグ05の点火時期を制御する点火時期制御機能や、燃料噴射弁012の噴射量や噴射時期を制御する燃料噴射制御機能等が設けられている。
ここで、本実施形態になる制御手段22は、以下に述べる少なくとも2つの形態のいずれかに構成されている。
1つは、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、吸気側VTC機構3を制御する可変動弁機構制御手段と、点火プラグの点火時期を制御する点火時期制御手段(燃料噴射制御手段を含む場合もある)とを別々の制御手段として構成する形態である。
この場合は、可変動弁機構制御手段と点火時期制御手段とは通信線を介して接続されており、夫々の制御情報が通信によって送受信されて、後述する制御フローが実行される。
もう1つは、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、吸気側VTC機構3を制御する可変動弁機構制御手段と、点火プラグの点火時期を制御する点火時期制御手段(燃料噴射制御手段を含む場合もある)とを一体的に制御手段として構成する形態である。この場合は、可変動弁機構制御手段と点火時期制御手段とは相互に関連付けられて、後述する制御フローが実行される。
また、本実施形態では、特に点火時期を制御するものであるので、点火時期制御について簡単に説明する。点火時期は、回転数と負荷によって定まる基本点火時期を求め、これに種々の補正点火時期を加算、或いは減算して最終点火時期を求めている。補正点火時期としては、水温補正、加速補正、減速補正、ノックフィードバック補正といった補正点火時期が用いられる。
更に、本実施形態では、アトキンソンサイクルの実行を行なう場合は、負荷テーブルに負荷が減少するにつれて進角する進角側の補正点火時期を記憶させておき、このテーブルから負荷に対応した補正点火時期を読み出し、基本点火時期に加算して最終点火時期の演算を行なうことができる。尚、基本点火時期が記憶されている基本点火時期マップに負荷テーブルの補正点火時期を反映させておくこともできる。
このような動作を行う排気VEL1機構、排気VTC機構2、及び吸気側VTC機構3を併用して、本実施例では以下に示すようなアトキンソンサイクルを実行している。
図3は負荷率が100%の第4負荷(全負荷)の吸気/排気バルブの開閉時期と点火時期を示し、図4は負荷率が50%の第3負荷(中負荷)の吸気/排気バルブの開閉時期と点火時期を示し、図5は負荷率が20%の第2負荷(低負荷)の吸気/排気バルブの開閉時期と点火時期を示し、図6は負荷率が0%の第1負荷(アイドル、軽負荷負荷)の吸気/排気バルブの開閉時期と点火時期を示している。
また、図7は、上述した負荷での回転角の進行に対応した、排気バルブ5と吸気バルブ4のバルブリフトと開弁状態、及び点火時期を示し、図8は第1負荷から第4負荷までの排気バルブと吸気バルブの開閉時期の変化、及び点火時期の変化を示している。
尚、図3〜図6においては、4ストロークエンジンの、排気行程〜吸入行程〜圧縮行程〜膨張行程〜排気行程(戻り)に至る1サイクル/エンジン2回転の過程を示しているので、上死点(TDC)としては、排気(吸気)上死点(TDC)、圧縮上死点(TDC)があり、下死点(BDC)としては、排気(膨張)下死点(BDC)、吸気下死点(BDC)があるので、これらは動作行程に合せて区別して説明する。
≪第4負荷(全負荷)≫
図3、図7に示す第4負荷(全負荷:負荷率100%)、及び図8において、全負荷である第4負荷では、吸気バルブ4の開弁時期(IVO:以下、吸気開時期と表記する)は、吸気(排気)上死点(TDC)より大きく排気行程側に進角された吸気開時期(IVO4)に設定され、また、吸気バルブ4の閉弁時期(IVC:以下、吸気閉時期と表記する)は、吸気下死点(BDC)付近、ここでは吸気下死点(BDC)より少し圧縮行程側に遅角された吸気閉時期(IVC4)に設定されている。
一方、排気バルブ5の開弁時期(EVO:以下、排気開時期と表記する)は、排気(膨張)下死点(BDC)より少し進角された排気開時期(EVO4)に設定され、排気バルブ5の閉弁時期(EVC:以下、排気閉時期と表記する)は、吸気バルブ4の吸気開時期(IVO4)と同じ角度である排気閉時期(EVC4)に設定されている。このように、吸気バルブ4の開時期(IVO4)と排気バルブ5の閉時期(EVC4)は同じ角度となって、ゼロオーバーラップが形成される。これによって、内部EGRによる燃焼速度の低下を抑制して、熱効率を向上することができる。
また、第4負荷の点火時期(IgT)は、圧縮上死点(TDC)より進角側で点火時期(IgT4)に設定されている。この点火時期(IgT4)は後述する第1負荷〜第3負荷の中で、最も遅角側であり圧縮上死点(TDC)に近接し、圧縮上死点(TDC)より少し進角側に設定されている。
このように、第4負荷では、吸気バルブの吸気閉時期(IVC4)は、吸気下死点(BDC)に近い位置に設定されているので、充填効率を高くすることができ、充分な機関トルクを得ることができる。
≪第3負荷(中負荷)≫
図4、図7に示す第3負荷(中負荷:負荷率50%)、及び図8において、中負荷である第3負荷では、第4負荷に比べて吸気バルブ4の吸気時期(IVO3)は、遅角側に移行されて吸気(排気)上死点(TDC)と一致する吸気開時期(IVO3)に設定され、また、吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)も遅角側に移行されて、吸気下死点(BDC)と圧縮上死点(TDC)の中間点である吸気閉時期(IVC3)に設定されている。
一方、排気バルブ5は排気側VEL機構1によってリフトと作動角がやや増大されるので、排気バルブ5の排気開時期(EVO)は、第4負荷に比べて進角側に移行されて排気開時期(EVO3)に設定され、逆に排気バルブ5の閉時期(EVC)は、第4負荷に比べて遅角側に移行されて排気閉時期(EVC3)に設定されている。
また、第3負荷の点火時期(IgT)は、第4負荷の点火時期(IgT4)に比べて進角側の点火時期(IgT3)に設定されている。
この第3負荷では、第4負荷の吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC4)に比べて吸気閉時期(IVC3)が遅角されているので、ポンプ損失を抑制することができる。更に、排気バルブ5の排気開時期(EVO3)が進角されるので、第4負荷に比べて負荷の低下に伴い、膨張行程で筒内圧が大気圧まで低下するタイミングが早まるが、排気バルブ5を排気開時期(EVO3)で開くことで、いわゆる膨張行程のポンプ損失を抑制して、中負荷での燃費を低減することができる。
また、吸気バルブ4の吸気開時期(IVO3)の遅角に合せて、排気バルブ5の排気閉時期(EVC3)も同じ角度だけ遅角しているので、ゼロバルブオーバーラップを維持することができる。これによって、内部EGRによる燃焼速度の低下を抑制して、熱効率の向上を図れ、結果的に燃料消費量を低減することができる。
ここで、点火時期(IgT3)は第4負荷に比べて進角側に設定しているが、これは第3負荷では、吸気閉時期(IVC3)が吸気下死点(BDC)から大きく離間して有効圧縮比が低下し、また、混合ガスが減少して燃焼速度が遅くなるため、点火時期(IgT3)を、第4負荷の点火時期(IgT4)より進角することで、ピーク燃焼圧が生じる時期を高熱効率が得られる時期に合せるためである。
このように、アトキンソンサイクルにおいては、第4負荷から第3負荷に移行するように負荷を減少させていくと、吸気閉時期(IVC)を遅角する方向に移行することになる。吸気閉時期(IVC)を遅角側に制御すると、ポンプ損失を抑制できるので燃料消費量を低減することができる。
ところが、吸気閉時期(IVC)を負荷の減少に対応させて遅角させていくと、有効圧縮比が低下していき、圧縮上死点(TDC)で混合ガスの温度が低下し、更に充填混合気ガス量の減少とも相俟って、混合気の燃焼速度が遅くなって熱効率が低下する。
この場合、熱効率を高めるには点火時期(IgT)を進角することがもっと効果的である。つまり、ピーク燃焼圧の発生時期を熱効率の高くなる、例えば圧縮上死点(TDC)の後の10〜15°付近に合わせるためには、低下した燃焼速度に合せて点火時期(IgT)を進角してやれば良い。
≪第2負荷(低負荷)≫
図5、図7に示す第2負荷(低負荷:負荷率20%)、及び図8において、低負荷である第2負荷では、第3負荷に比べて吸気バルブ4の吸気開時期(IVO2)は、吸気(排気)上死点(TDC)より遅角側に移行されて吸気開時期(IVO2)に設定され、また、吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)もさらに遅角側に移行されて、吸気下死点(BDC)と圧縮上死点(TDC)の中間点より遅角されて吸気閉時期(IVC2)に設定されている。
一方、排気バルブ5は排気側VEL機構1によってリフトと作動角が増大されるので、排気バルブ5の排気開時期(EVO)は、第3負荷に比べて進角側に移行されて排気開時期(EVO3)に設定され、逆に排気バルブ5の閉時期(EVC)は、第3負荷に比べて、排気上死点(TDC)を超える遅角側に移行されて、排気閉時期(EVC3)に設定されている。
また、第2負荷の点火時期(IgT)は、第3負荷の点火時期(IgT3)に比べて、更に進角側の点火時期に(IgT2)に設定されている。
この第2負荷では、第3負荷の吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC3)に比べて吸気閉時期(IVC2)が遅角されているので、さらにポンプ損失を抑制することができる。更に、排気バルブ5の排気開時期(EVO2)が進角されるので、第3負荷に比べて負荷の低下に伴い膨張行程で筒内圧が大気圧まで低下するタイミングが早まるが、排気バルブ5を排気開時期(EVO2)で開くことで、いわゆる膨張行程のポンプ損失を抑制して、低負荷での燃費を低減することができる。
また吸気バルブ4の吸気開時期(IVO2)の遅角に合せて、排気バルブ5の排気閉時期(EVC2)も同じ角度だけ遅角しているので、ゼロバルブオーバーラップを維持することができる。これによって、内部EGRによる燃焼速度の低下を抑制して、熱効率の向上を図れ、結果的に燃料消費量を低減することができる。
ここで、点火時期(IgT2)は第3負荷に比べて進角側に設定しているが、これは第2負荷では吸気閉時期(IVC2)が吸気下死点(BDC)から大きく離間して有効圧縮比が低下し、また、混合ガスが減少して燃焼速度が遅くなるため、点火時期(IgT2)を、第3負荷の点火時期(IgT3)より進角することで、ピーク燃焼圧が生じる時期を高熱効率が得られる時期に合せるためである。
ところで、上述したように、吸気閉時期(IVC2)は遅角側に大きく移行され、逆に点火時期(IgT2)は大きく進角されていくので、吸気閉時期(IVC2)と点火時期(IgT2)が接近し、その実角度差Δθact(=IVC−IgT)が小さくなり、場合によっては、点火時期(IgT2)が吸気閉時期(IVC2)より進角されることがある。
この状態で、アトキンソンサイクルで吸気バルブの吸気閉時期(IVC2)が圧縮行程側に大きく遅角されると、吸気系側に可燃混合気が逆流する。したがって、点火時期(IgT2)が吸気閉時期(IVC2)を超える位置に進角されて可燃混合気に点火されると、この点火によって発生した火炎は、吸気バルブがまだ開いているので吸気系側に流れ込み、吸気系側に滞留している可燃混合気を爆発的に燃焼させる、バックファイアという現象を生じる。
このような課題に対応するために、本実施形態では吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)と点火時期(IgT)の実角度差(Δθact(=IVC−IgT))を求め、実角度差(Δθact)が予め定めた所定の角度差閾値(Δθsld)より小さくならないように、吸気閉時期(IVC)、或いは点火時期(IgT)、或いは吸気閉時期(IVC)と点火時期(IgT)の両方を制御することができる。
本実施形態では、点火時期(IgT)を制御することで吸気閉時期(IVC)に対して常に遅角側で点火する形態としている。
仮に吸気閉時期(IVC2)が遅角側に大きく移行され、逆に点火時期(IgT2)が大きく進角されて、点火時期(IgT2)が吸気閉時期(IVC2)に角度差閾値(Δθsld)を超えて接近した、或いは点火時期(IgT2)が吸気閉時期(IVC2)を超えて進角されたと想定した場合、図5及び図7の第2負荷に示すように、点火時期(IgT2)は、吸気バルブの吸気閉時期(IVC2)を起点として、遅角側で所定の補正角度(Δθcmp)を有する新たな点火時期(IgT2new)に設定される。
ここで、補正角度(Δθcmp)は、角度差閾値(Δθsld)と同じ値に設定されているが、これに限らず、補正角度(Δθcmp)を角度差閾値(Δθsld)より大きい値に設定することも可能である。
例えば、現時点で演算された点火時期(IgT2)が、吸気閉時期(IVC2)を超えて進角されていると判断されると、現時点で演算された吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC2)を起点として所定の補正角度(Δθcmp)だけを遅角した値を、新たな点火時期(IgT2new)と再設定すれば良い。これによって、点火時期(IgT)は吸気閉時期(IVC)を常に超えることなく、混合ガスに点火することができる。
≪第1負荷(アイドル/軽負荷))≫
図6、図7に示す第1負荷(アイドル/軽負荷:負荷率0%)、及び図8において、アイドルや軽負荷である第1負荷では、第2負荷に比べて、吸気バルブ4の吸気時期(IVO1)は、遅角側に移行されて吸気上死点(TDC)より更に遅角側に移行されて、吸気上死点(TDC)と吸気下死点(BDC)の中間点に近づく吸気開時期(IVO1)に設定され、また、吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)も遅角側に移行されて、吸気下死点(BDC)と圧縮上死点(TDC)の中間点より遅角されて吸気閉時期(IVC1)に設定されている。
一方、排気バルブ5は排気側VEL機構1によってリフトと作動角が更に増大されるので、排気バルブ5の排気開時期(EVO)は、第2負荷に比べて進角側に移行されて排気開時期(EVO1)に設定され、逆に排気バルブ5の閉時期(EVC)は、第2負荷に比べて遅角側に移行されて排気閉時期(EVC1)に設定されている。
また、第1負荷の点火時期(IgT)は、第2負荷の点火時期(IgT2)と同じ点火時期に設定されている。
この第1負荷では、第2負荷の吸気バルブの吸気閉時期(IVC2)に比べて吸気閉時期(IVC1)が遅角されているので、ポンプ損失を更に抑制することができる。また、排気バルブの排気開時期(EVO1)が進角されるので、第2負荷に比べて負荷の低下に伴い膨張行程で筒内圧が大気圧まで低下するタイミングが早まるが、排気バルブを排気開時期(EVO1)で開くことで、いわゆる膨張行程のポンプ損失を抑制して、部分負荷での燃費を低減することができる。
また、吸気バルブ4の吸気開時期(IVO1)の遅角に合せて、排気バルブ5の排気閉時期(EVC1)も同じ角度だけ遅角しているので、ゼロバルブオーバーラップを維持することができる。これによって、内部EGRによる燃焼速度の低下を抑制して、熱効率の向上を図れ、結果的に燃料消費量を低減することができる。
ここで、点火時期(IgT1)は、第1負荷では吸気閉時期(IVC1)が吸気下死点(BDC)から大きく離間して有効圧縮比が低下し、また、混合ガスが減少して燃焼速度が遅くなるため、点火時期(IgT1)を第2負荷の点火時期(IgT2)と同じように進角させることで、ピーク燃焼圧が生じる時期を高熱効率が得られる時期に合せている。
第2負荷の項で説明したように、吸気閉時期(IVC1)は遅角側に大きく移行され、逆に点火時期(IgT1)は大きく進角されていくので、吸気閉時期(IVC1)と点火時期(IgT1)が接近し、その実角度差(Δθact(=IVC−IgT))が小さくなり、場合によっては点火時期(IgT1)が吸気閉時期(IVC1)より進角されることがある。したがって、点火時期(IgT1)が吸気閉時期(IVC1)を超える位置に進角されて可燃混合気が点火されると、この点火によって発生した火炎は、吸気バルブがまだ開いているので吸気系側に流れ込み、吸気系側に滞留している可燃混合気を爆発的に燃焼させる、バックファイアという現象を生じる。
このため、第1負荷の場合も吸気バルブの吸気閉時期(IVC)と点火時期(IgT)の実角度差(Δθact(=IVC−IgT))を求め、実角度差(Δθact)が予め定めた所定の角度差閾値(Δθsld)より小さくならないように、点火時期(IgT)を制御している。
したがって、点火時期(IgT1)が、吸気閉時期(IVC1)に角度差閾値(Δθsld)を超えて接近した、或いは点火時期(IgT1)が吸気閉時期(IVC1)を超えて進角された場合、図6及び図7の第1負荷に示すように、点火時期(IgT1)は、吸気バルブの吸気閉時期(IVC1)を起点として、所定の補正角度(Δθcmp)だけ遅角された点火時期(IgT1new)に設定される。
この場合も第2負荷と同様に、現時点で演算された点火時期(IgT1)が、吸気閉時期(IVC1)を超えて進角されていると判断されると、現時点で演算された吸気バルブの吸気閉時期(IVC1)を起点として、所定の補正角度(Δθcmp)だけ遅角した値を、新たな点火時期(IgT1new)と再設定すれば良い。これによって、点火時期(IgT)は吸気閉時期(IVC)を常に超えることなく、混合ガスに点火することができる。
ここで、点火時期(IgT1)の遅角補正によりピーク燃焼圧の発生時期も遅角して熱効率もその分だけ低下するが、その遅角量(補正角度Δθcmp)はバックファイアの発生を防止するだけの僅かな量に抑制されるので、第1負荷での燃料消費量の低減効果の目減りを可及的に小さくすることができる。一方、この点火時期(IgT1)の遅角により、排気ガスの温度が上昇し、アイドル時や軽負荷時で問題となる排気ガス浄化用触媒の温度の低下による排気有害成分の増加を抑制できる。
ここで、補正角度(Δθcmp)は、クランク角で4°〜8°に設定されている。これによれば、吸気側VTC機構3により吸気閉時期(IVC)が変動した場合であっても、バックファイアを確実に防止しつつ、点火時期(IgT)の過度な遅角を抑制して燃料消費量の増大を抑制することができる。
すなわち、一般的な吸気側VTC機構3では、回転変動等による吸気閉時期(IVC)の変動はクランク角で±2°〜±4°程度である。したがって、補正角度(Δθcmp)を4°以上とすることが望ましい。一方で、補正角度(Δθcmp)をむやみに増加させると、その分だけ点火時期(IgT)が遅角していくので、燃料消費量の増大を招く。
そこで、種々の内燃機関毎の最大ばらつきを考慮し、更に安全率を想定してクランク角で8°の範囲に抑えている。このように、補正角度(Δθcmp)をクランク角で4°〜8°に設定すると、回転変動等による吸気閉時期(IVC)の変動を考慮し、且つ点火時期(IgT)の遅角による燃料消費量の増大をできるだけ抑制することができる。
次に、上述した本実施形態になるバルブタイミング特性を実行するための制御フローについて説明するが、この制御フローは制御手段22によって、所定時間の経過毎に実行されるものである。図9A、図9Bに基づき内燃機関の運転を開始する場合の制御フローから説明する。尚、この制御フローは、全ての運転負荷状態に亘って、点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)に接近するか、或いは、点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)を超えているかどうかを判断するものである。
≪ステップS10≫
まず図9Aにおいて、ステップS10においては、内燃機関を始動する機関始動情報や、内燃機関の運転状態情報を読み込む。内燃機機関を始動する機関始動情報としては、代表的にはキーオン信号、或いはスタータ起動信号があり、また、内燃機関の運転状態情報を示す信号としては数多くあるが、本実施形態では、内燃機関の回転数情報、吸気量情報、水温情報、要求負荷情報(アクセル開度)等があり、更に排気側VTC機構1Bや吸気側VTC機構1Aの実位置情報等がある。このステップS10で各種情報を読み込むとステップS11に移行する。
≪ステップS11≫
ステップS11においては、機関始動条件かどうかを判断する。この判断は、例えば、スタータ起動信号を監視しておけばよく、スタータ起動信号が入力されないとリターンに抜けて次の起動タイミングを待つことになる。一方、スタータ起動信号が入力されると、機関始動条件と判断してステップS12に移行する。
≪ステップS12≫
ステップS12においては、スタータ起動信号を受けてスタータモータによる内燃機関のクランキングを開始する。そして、クランキングが開始されるや否やステップS13に移行する。
≪ステップS13≫
ステップS13においては、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3にデフォルト位置に移行するように、少なくとも排気バルブ5の排気開閉閉時期(EVO)、(EVC)、及び吸気バルブ4の吸気開閉時期(IVO)、(IVC)の変換制御信号を、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3に出力する。そして、変換制御信号を排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3に出力するとステップS14に移行する。
≪ステップS14≫
ステップ14においては、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3の実位置情報から、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3がデフォルト位置に移行したかどうかが判断される。
そして、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3がデフォルト位置に移行していないと判断されると、再びステップS13に戻り、排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3がデフォルト位置に設定されていると判断されるとステップS15に移行する。
≪ステップS15≫
ステップS15においては、スタータモータの回転に合せて内燃機関を始動するため燃料噴射弁や点火装置へ出力制御信号を供給する。これによって内燃機関の回転数が増加していき、これに伴って油圧ポンプの作動油の油圧が上昇することになる。燃料噴射弁や点火装置へ出力制御信号を供給するとステップS16に移行する。
なお、ここで、前述のように、吸気側VTC機構3はデフォルト位置である「最進角位置」、すなわち具体的には図4(高負荷)に示す下死点に近い吸気閉時期(IVC4)になっているので、吸気充填効率を高め、機関フリクションの大きい冷機時において、燃焼トルクを高め、機関フリクションに打ち勝つ良好な始動燃焼を得ることができる。
また、前述のように、排気側VEL機構1はデフォルト位置である「最小リフト・最小作動角位置」に、 排気側VTC機構2はデフォルト位置である「最進角位置」になっており、具体的には、図4(高負荷)に示すように下死点に近い排気開時期(EVO4)になっているので、排気弁が開くのを遅らせて充分機関本体を燃焼ガスで暖めることで、冷機時における機関本体の暖機性を向上している。
また、図4(高負荷)に示すように上死点前の排気閉時期(EVC4)になっているので、同じく上死点前の吸気開時期(IVO4)とほぼ一致することで、ゼロバルブオーバーラップを実現して、不活性のEGRガスを減らして良好な冷機燃焼も実現できる。ここで、始動前から、これらの可変動弁機構1〜3は機械的安定位置であるデフォルト位置付近に元々位置することから、始動の初期段階から上記冷機時効果を遅れなく得ることができる。
≪ステップS16≫
ステップS16においては、内燃機関の機関温度(冷却水温度)を検出して所定温度を超えたかどうかを判断する。所定温度を超えていなければ冷機状態と判断してリターンに抜けて次の起動タイミングを待つ、或いは別の制御フローを実行することになる。一方、所定温度を超えていれば冷機状態から暖機完了したと判断して、ステップS17に移行する。尚、ステップS17より以降は図9Bに示している。
≪ステップS17≫
ステップS17においては、ステップS10で検出された運転状態情報に基づいて排気バルブ5の開閉時期(EVO)、(EVC)、及び吸気バルブ4の開閉時期(IVO)、(IVC)を演算する。この演算は基本的には回転数と負荷によってマッピングされた、排気バルブ5の開閉時期マップ、及び吸気バルブ4の開閉時期マップから求められている。
そして、マップから演算された排気バルブ5の開閉時期(EVO)、(EVC)、及び吸気バルブ4の開閉時期(IVO)、(IVC)は、対応する排気側VEL機構1、排気側VTC機構2、及び吸気側VTC機構3に送られて、排気バルブ5と吸気バルブ4を駆動、制御する。ステップS17の処理を完了するとステップS18に移行する。
≪ステップS18≫
ステップS18においては、ステップS10で検出された運転状態情報に基づいて点火時期(IgT)を演算する。この点火時期(IgT)は、まず回転数と負荷によってマッピングされた基本点火時期マップから求められる。マップから検索された基本点火時期は、種々の補正点火時期が加算、減算されて最終的な点火時期(IgT)が求められる。
このとき、アトキンソンサイクルを実行する場合は、点火時期(IgT)を進角する必要があるので、負荷の減少に対応して進角側に補正される補正テーブルから補正点火時期が読み出されて、基本点火時期に反映されている。点火時期(IgT)が求まるとステップS19に移行する。
≪ステップS19≫
ステップS19においては、ステップS17の演算で求めた吸気バルブの吸気閉時期(IVC)と、ステップS18の演算で求めた点火時期(IgT)の実角度差(Δθact)を求める。通常は、吸気バルブの吸気閉時期(IVC)の方が点火時期(IgT)より進角側に位置するため、演算式は(Δθact)=(IVC)−(IgT)とされている。
したがって、実角度差(Δθact)にマイナス(−)の符号が付けば、点火時期(IgT)の方が吸気閉時期(IVC)より進角側に設定されていることが判定できる。この判定は次のステップS20で実行される。
尚、吸気側VTC機構3に角度センサを取り付けて、実際の吸気閉時期(IVC)を実測して、吸気バルブの吸気閉時期(IVC)とすることもできる。これによれば、吸気閉時期(IVC)の実閉時期を高精度に検出できるので、バックファイアを確実に回避する制御を実行できる。また、後述する補正角度(Δθcmp)を小さくすることができ、この分だけ燃料消費量を低減できる。
≪ステップS20≫
ステップS20においては、先ずステップ19で求めた実角度差(Δθact)が、予め定めた所定の角度差閾値(Δθsld)より小さいかどうかを判断している。実角度差(Δθact)がプラス(+)の符号が付けば、吸気閉時期(IVC)の方が点火時期(IgT)より進角側に設定されることが判定できる。この場合、実角度差(Δθact)が角度差閾値(Δθsld)より大きければ、バックファイアの恐れはないと判定される。しかしながら、実角度差(Δθact)が角度差閾値(Δθsld)より小さければ、点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)に接近してバックファイアの恐れが高いと判定される。
更に、このステップS20においては、上述した判定動作の他に、実角度差(Δθact)を求める演算結果が、マイナス(−)の符号が付いているかどうかも併せ判断されている。したがって、実角度差(Δθact)にマイナス(−)の符号が付いていると、点火時期(IgT)の方が吸気比時期(IVC)より進角側に設定されているので、バックファイアの恐れがかなり高いと判定される。
このように、実角度差(Δθact)がプラス(+)の符号が付き、実角度差(Δθact)が角度差閾値(Δθsld)より大きければ、ステップS21に移行する。一方、実角度差(Δθact)がプラス(+)の符号が付き、実角度差(Δθact)が角度差閾値(Δθsld)より小さい場合、及び、実角度差(Δθact)にマイナス(−)の符号が付いている場合は、ステップS22に移行する。
≪ステップS21≫
ステップS20においては、実角度差(Δθact)がプラス(+)の符号が付き、実角度差(Δθact)が角度差閾値(Δθsld)より大きいと判断され、バックファイアの恐れはないと見做されている。
このため、ステップS21においては、ステップS18で演算された点火時期(IgT)がそのまま使用される。この点火時期(IgT)は、マイクロコンピュータのI/OLSIの点火用レジスタにセットされ、所定のタイミングで点火動作が実行される。
≪ステップS22≫
ステップS20においては、実角度差(Δθact)がプラス(+)の符号が付き、実角度差(Δθact)が角度差閾値(Δθsld)より小さいと判断されるか、実角度差(Δθact)がマイナス(−)の符号が付いているので、バックファイアの恐れがあると見做されている。
このため、ステップS22においては、ステップS18で演算された点火時期(IgT)はそのまま使用されず、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)より遅角側で、しかも吸気閉時期(IVC)から所定の補正角度(Δθcmp)だけ遅角された点火時期(IgTnew)が新たに設定される。新たな点火時期(IgTnew)は、例えば、(IgTnew)=(IVC)−(Δθcmp)の演算式で求めることができる。更に、補正角度(Δθcmp)は角度差閾値(Δθsld)と同じ値とすることができる。
この演算によって、新たな点火時期(IgTnew)は、常に吸気閉時期(IVC)より遅角側に設定されるので、バックファイアを生じる恐れを抑制することができる。この新たな点火時期(IgTnew)は、マイクロコンピュータのI/OLSIの点火用レジスタにセットされ、所定のタイミングで点火動作が実行される。
以上の通り、本実施形態によれば、内燃機関の負荷が減少するにしたがって、吸気側可変動弁機構によって吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を遅角側に制御し、更に点火時期制御手段によって点火時期(IgT)を進角側に制御すると共に、点火時期(IgT)を吸気閉時期(IVC)より遅角側で、しかも吸気閉時期(IVC)と点火時期(IgT)の間の角度差を常に所定の補正角度(Δθcmp)以上に維持している。
これによれば、吸気側可変動弁機構によって吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を大きく遅角してアトキンソンサイクルによる燃料消費量の低減効果を高め、且つ点火時期(IgT)を進角して機関トルクの低下を抑制すると共に、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)を超えて進角されないので、バックファイアを抑制することができる。
次に、本発明の第2の実施形態を図10に基づき説明する。上述した第1の実施形態は全ての運転負荷状態に亘って、点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)に接近するか、或いは点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)超えているかどうかを判断している。一方、以下に説明する第2の実施形態は、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)に接近する負荷は、所定の負荷より小さい負荷と判明しているので、所定負荷以下に限ってステップ19〜ステップS22を実行する形態としている。
尚、参照番号が図9Bと同一の制御ステップは、制御内容が同じであるので詳細な説明は省略する。ここで、ステップS26、S27は故障時の対応を示しており、これについては後述する。
≪ステップS23≫
図10において、ステップS18とステップS19の間には、ステップS23が新たに設けられている。このステップS23は、ステップS10で検出された運転状態情報に基づいて現在の負荷を判別しており、負荷が第2負荷より大きいと判定されるとステップS24に移行し、負荷が第2負荷より小さいと判定されるとステップS19に移行する。
尚、ステップS19からステップS22の処理は、図9Bに示す処理と同じなので、ここでは説明を省略する。
≪ステップS24≫
ステップS24においては、負荷が第2負荷より大きい第4負荷、及び第3負荷では、点火時期(IgT)は吸気閉時期(IVC)に接近する状態にならないので、ステップS18で演算された点火時期(IgT)がそのまま使用される。この点火時期(IgT)は、マイクロコンピュータのI/OLSIの点火用レジスタにセットされ、所定のタイミングで点火動作が実行される。
このように、この実施形態では所定負荷、例えば第2負荷より小さい負荷に限って、点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)に接近するか、或いは点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)を超えているかどうかを判断しているので、マイクロコンピュータの演算負荷を軽減できる。
次に、本発明の第3の実施形態を図11に基づき説明する。上述した第1及び第2の実施形態では、点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)に接近するか、或いは点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)を超えているかどうかを判断している。一方、以下に説明する第3の実施形態は、点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)に接近するか、或いは進角側に超えているかどうかを判断する制御ステップを省略したものである。尚、参照番号が図10と同一の制御ステップは、制御内容が同じであるので詳細な説明は省略する。
≪ステップS25≫
図11において、ステップS23は、ステップS10で検出された運転状態情報に基づいて現在の負荷を判別しており、負荷が第2負荷より大きいと判定されるとステップS24に移行し、負荷が第2負荷より小さいと判定されるとステップS25に移行する。
ステップS25においては、第2負荷より小さい負荷では、点火時期(IgT)は吸気閉時期(IVC)に接近する、或いは、点火時期(IgT)が、吸気閉時期(IVC)を超える恐れがあると見做して、ステップS17で求められた吸気閉時期(IVC)に対して、一律に所定の補正角度(Δθcmp)を減算して新たな点火時期(IgTnew)としている。
したがって、第2負荷、及び第1負荷では、ステップS18で演算された点火時期(IgT)は使用されず、吸気閉時期(IVC)を基に補正角度(Δθcmp)で遅角側に補正された新たな点火時期(IgTnew)が使用される。この新たな点火時期(IgTnew)は、マイクロコンピュータのI/OLSIの点火用レジスタにセットされ、所定のタイミングで点火動作が実行される。
このように、この実施形態においては、所定負荷、例えば第1負荷と第2負荷に限って、一律に吸気閉時期(IVC)に所定の補正角度(Δθcmp)を減算するだけなので、マイクロコンピュータの演算負荷を更に軽減できる。
次に、本発明の第4の実施形態を、図10、図12に基づき説明する。この実施形態は、吸気側VTC機構3に異常が生じて、点火時期(IgT)が正常な値を得られなくなる場合の対応方法を示している。
図12に示している通り、吸気側VTC機構3は何らかの異常があった場合には、吸気閉時期(IVC)の最遅角ストッパ位置と最進角ストッパ位置の間で、非制御状態で駆動される。このため、点火時期(IgT)も正確な点火時期とはならない恐れがある。場合によっては点火時期(IgT)が、非制御状態の吸気閉時期(IVC)より進角してしまう場合がある。このため、図10の破線で示すステップS26、S27が実行される。
≪ステップS26≫
図10の破線で示すステップS26においては、吸気側VTC機構3の異常状態を判断している。そして、異常が発生していないと判断されるとステップS18に移行し、吸気側VTC機構3に異常が発生していると判断されるとステップS27に移行する。
≪ステップS27≫
ステップS27においては、吸気側VTC機構3が異常状態となっているので、吸気側VTC機構3の最遅角ストッパ位置より遅角側の固定点火時期(IgTm)を設定する。この場合では圧縮上死点(TDC)より遅角側に固定点火時期(IgTm)が設定されている。したがって、吸気側VTC機構3の異常によって、吸気閉時期(IVC)の最遅角ストッパ位置と最進角ストッパ位置の間で、非制御状態で駆動されても、固定点火時期(IgTm)が最遅角ストッパ位置の吸気閉時期(IVC)を超えて進角されないので、バックファイアを抑制することができる。
ここで、ステップS26、S27は図10に示す第2の実施形態で説明したが、第1の実施形態の図9B、及び第3の実施形態の図11に示すステップS17の後で実行できることはもちろんである。
次に、本発明の第5の実施形態を、図13、図14、及び図15に基づき説明する。この実施形態は、高回転域で吸気バルブ4の実際の吸気閉時期(IVC)が変動して、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)を超える現象が発生する場合の対応方法を示している。
実際の内燃機関の動作においては、高回転域で吸気バルブ4がバルブシートに着座すると動的なバウンス現象が発生して、最終的に着座するタイミングが僅かに遅れる可能性がある。このため、制御上は点火時期(IgT)を吸気閉時期(IVC)より遅角側に設定していたとしても、バウンス現象によって吸気バルブ4が開いている時に点火が実行されるとバックファイアが発生する恐れがある。
このような課題に対応するため、本実施形態では、回転数の増加に対応して、補正角度(Δθcmp)を大きく設定することを特徴としている。例えば、図13は横軸に回転数(N)、縦軸に回転補正角度(ΔθcmpN)を設定した補正角度テーブルの値を示している。そして、例えば、3000rpmを境として、低回転側では破線で示す一定値の回転補正角度(ΔθcmpNL)が設定してあり、高回転側では実線で示す漸増する回転補正角度(ΔθcmpNH)が設定してある。
このため、図14にある通り、3000rpm以下の低回転側では、回転補正角度(ΔθcmpNL)を使用して、破線で示す新たな点火時期(IgTnewNL)が求められ、3000rpm以上の高回転側では、回転補正角度(ΔθcmpH)を使用して、実線で示す新たな点火時期(IgTnewNH)が求められる。
図15は、図14に示す特性を実現するための制御フローを示している。この制御フローは、図9B、図10に示すステップS20の「YES」判定の後で実行され、また、図11に示すステップS23の「YES」判定の後で実行される。
≪ステップS28≫
ステップS28においては、ステップS10で検出された回転数(N)に基づいて、図13に示す特性が記憶された補正角度テーブルから回転補正角度(ΔθcmpN)を読み出す。この読み出された回転補正角度(ΔθcmpN)は、次のステップS29の演算に使用される。
≪ステップS29≫
ステップS29においては、ステップS18で演算された点火時期(IgT)はそのまま使用されず、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)より遅角側で、しかも吸気閉時期(IVC)から回転補正角度(ΔθcmpN)だけ遅角された点火時期(IgTnewN)が新たに設定される。新たな点火時期(IgTnewN)は、例えば、(IgTnew)=(IVC)−(ΔθcmpN)の演算式で求めることができる。この新たな点火時期(IgTnewN)は、マイクロコンピュータのI/OLSIの点火用レジスタにセットされ、所定のタイミングで点火動作が実行される。
このような演算によって、新たな点火時期(IgTnewN)は、常に吸気閉時期(IVC)より遅角側に設定されるので、バックファイアを生じる恐れを抑制することができる。更には、回転数(N)が高くなるほど回転補正角度(ΔθcmpN)は大きく設定されているため、バウンス現象によって吸気バルブ4が開いている時にも点火が実行されることがないので、バックファイアが発生する恐れを更に抑制することができる。
つまり、回転上昇とともに吸気バルブ4の挙動に不整状態が発生した場合であっても、バックファイアを確実に防止できる。すなわち、回転上昇とともに、動弁系が弾性変形してバルブジャンプやバルブバウンス(跳ね返り)が発生し、実際の吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)が、吸気側VTC機構3の制御に基づく吸気閉時期(IVC)より遅れてしまう場合がある。これに対して、本実施形態では点火時期(IgT)が更に遅れる方向に補正されるので、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)より常に遅角側となるので、バックファイアを確実に防止できる。
次に、本発明の第6の実施形態を、図16に基づき説明する。今まで説明した実施形態では、吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)を、吸気バルブ4の開閉時期マップによる吸気閉時期(IVC)、或いは角度センサによる実吸気閉時期(IVC)から求めているが、本実施形態ではノックセンサによって吸気閉時期(IVC)を求めるものである。
ノックセンサを使用する場合においては、吸気バルブ4の着座判定ウインドウを設定し、この着座判定ウインドウ内で検出された実際の吸気バルブ4の着座信号(振動信号)から、吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)を検出することができる。つまり、図16にあるように、ノックセンサの振動信号が、着座判定ウインドウ内の着座判定レベルより高いと判定されると、吸気バルブ4がバルブシートに着座して、吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)が発生したと判断できる。
このように、ノックセンサの着座信号を用いると、高回転域でのバウンス現象が生じても、高精度で吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)を検出できるので、確実に点火時期(IgT)を吸気閉時期(IVC)より遅角側に設定できる。このため、バックファイアを防止できると共に、点火時期(IgT)を吸気閉時期(IVC)に向けて可能な限り進角側に近づけることができるので、更に燃料消費量の低減が可能となる。
更に、動弁系におけるバルブクリアランス(カム−リフタ間のクリアランス)が、経時変化した場合にも着座位置は変化するが、この着座位置の変化も反映した吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)を検出できる。
ノックセンサは、従来から使用されているノックセンサを使用することができる。図16に示すように、ノック振動が発生する区間(ノック判定ウインドウに対応)と、吸気バルブの着座振動が発生する区間(着座判定ウインドウに対応)とが、時間的にずれているため、ノック発生の判定と吸気閉時期(IVC)の判定の両方が可能である。
つまり、ノック判定ウインドウで、ノック判定レベルを超えたらノック発生と判断でき、かつ、着座判定ウインドウで、着座判定レベルを超えたら吸気閉時期(IVC)と判断できる。尚、ノックセンサの装着位置は、シリンダブロックの吸気バルブ側のシリンダブロックの側面に取り付ければ、排気バルブの着座振動を検出し難いので有利である。
図17は、ノックセンサによる吸気閉時期(IVC)の検出方法の制御フローを示している。この制御フローは、図9B、図10、及び図11に示すステップS18の後で実行される。
≪ステップS30≫
ステップS30においては、着座検出ウインドウ内で、ノックセンサによって検出された振動信号が着座判定レベルを超えたかどうかが判定される。そして、ノックセンサの振動信号が着座判定レベルを超えないと判定されると、再びステップS30に戻って同様の判定動作を実行する。一方、ノックセンサの振動信号が着座判定レベルを超えたと判定されると、ステップS31に移行する。
≪ステップS31≫
ステップS31においては、ステップS30で判定した振動信号の発生時刻に対応したクランク角を、吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)と見做して設定する。この後は図9B、図10のステップS19、S20や、図11のステップS25の演算に使用される。
このように、ノックセンサの着座信号を用いると、高回転域でのバウンス現象が生じても、高精度で吸気バルブ4の吸気閉時期(IVC)を検出できるので、確実に点火時期(IgT)を吸気閉時期(IVC)より遅角側に設定できる。
なお、本実施例では、吸気バルブ4の実吸気閉時期(IVC)検出をノックセンサで兼用させる例を示したが、ノックセンサとは別に、実吸気閉時期(IVC)センサを設けても構わない。そうすると、振動レベル検出頻度を抑えられ、センサへの負担が軽減される。
次に、本発明の第7の実施形態を、図18に基づき説明する。第1の実施形態においては、第2負荷から第1負荷まで補正角度(Δθcmp)は一定の値であったが、本実施形態では負荷が小さくなるにしたがって、補正角度(Δθcmp)を大きく設定するものである。
図18に示す通り第2負荷においては、補正角度(Δθcmp)は補正角度(Δθcmp2)に設定されている。この補正角度(Δθcmp2)は、第1の実施形態にある補正角度(Δθcmp)と同じ値に設定されている。一方、第1負荷では補正角度(Δθcmp)は大きく設定されて補正角度(Δθcmp1)に設定されている。そして、(Δθcmp1)>(Δθcmp2)の関係を有している。尚、負荷が小さくなるにつれて、補正角度(Δθcmp)は、補正角度(Δθcmp2)から漸増して補正角度(Δθcmp1)に至る値に設定されている。
これによれば、第1負荷での点火時期(IgT1)が大きく遅角されるので排気ガスの温度が上昇する。このため、排気ガス浄化用触媒が温まり難い極低負荷において、排気ガス浄化用触媒を暖機することができ、排気ガス有害成分の発生を抑制することができる。特に、自動車の走行中に内燃機関の停止動作が頻繁に行われる、ハイブリッド車やアイドルストップ車では、排気ガス温度が低下し易いので、本実施形態を採用すると有利になる。
以上説明した実施形態においては、排気側VTC機構2、吸気側VTC機構3は油圧駆動式を示したが、油圧に限らず電動駆動式のVTC機構であっても差し支えない。本発明の主旨を満足するものであれば、可変動弁機構の具体的形態や構成等は限定されない。
また、適用される内燃機関の形態も限定されない。例えば、ターボチャージャのような過給器を備えた内燃機関に適用しても良い。その場合、過給による充填効率向上効果によって、自然吸気方式の内燃機関と同一負荷での吸気閉時期(IVC)が一層遅角されるので、自然吸気方式の内燃機関に比較して熱効率を高められるようになる。
その際、この吸気閉時期(IVC)の更なる遅角により、点火時期(IgT)と吸気閉時期(IVC)が接近してバックファイアが発生し易くなるが、本発明を使用すればバックファイアを有効的に抑制することができる。
更に、リーンバーン式の内燃機関や、多量のEGRを行なう内燃機関にも適用することができる。リーンバーン燃焼や、多量のEGRによる低温燃焼によって、燃焼温度を低くして冷却損失を低減することで燃料消費量を低減することが可能である。
ところが、低温燃焼により燃焼速度が低下するので、点火時期(IgT)を進角する必要がでてくる。この点火時期(IgT)の進角により、点火時期(IgT)と吸気閉時期(IVC)が接近してバックファイアが発生し易くなるが、本発明を使用すればバックファイアを有効的に抑制することができる。
以上述べた通り、本発明によれば、内燃機関の負荷が減少するにしたがって、吸気側可変動弁機構によって吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を遅角側に制御し、更に点火時期制御手段によって点火時期(IgT)を進角側に制御すると共に、点火時期(IgT)を吸気閉時期(IVC)より遅角側で、しかも吸気閉時期(IVC)と点火時期(IgT)の間の角度差を所定の補正角度(Δθcmp)以上に維持する、構成とした。
これによれば、吸気側可変動弁機構によって吸気バルブの吸気閉時期(IVC)を大きく遅角してアトキンソンサイクルによる燃料消費量の低減効果を高め、且つ点火時期(IgT)を進角して機関トルクの低下を抑制すると共に、点火時期(IgT)が吸気閉時期(IVC)を超えて進角されないので、バックファイアを抑制することができる。
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
08…スタータ、012…燃料噴射弁、1…リフト制御機構(排気VEL)、2…バルブタイミング制御機構(排気VTC)、3…バルブタイミング制御機構(吸気VTC)、4…吸気バルブ、5…排気バルブ、22…制御手段、IgT…点火時期、IVO…吸気開時期、IVC…吸気閉時期、EVO…排気開時期、EVC…排気閉時期。

Claims (18)

  1. 内燃機関の燃焼室に燃料を供給する燃料噴射手段と、
    前記燃焼室内に形成された可燃混合気を点火する点火手段と、
    前記燃焼室に配置された吸気バルブの閉弁時期(以下、吸気閉時期(IVC)と表記する)を制御する可変動弁機構と、
    前記点火手段の点火時期(以下、点火時期(IgT)と表記する)を制御する点火時期制御手段、及び前記可変動弁機構を制御する可変動弁制御手段と
    を備えた内燃機関の制御システムであって、
    前記可変動弁制御手段は、前記内燃機関の負荷が減少するにしたがって、前記可変動弁機構によって前記吸気バルブの前記吸気閉時期(IVC)を遅角側に制御し、
    前記点火時期制御手段は、前記内燃機関の負荷が減少するにしたがって、前記点火時期(IgT)を進角側に制御すると共に、前記点火時期(IgT)を前記吸気閉時期(IVC)より遅角側で、しかも前記吸気閉時期(IVC)と前記点火時期(IgT)の間の角度差を所定の補正角度(Δθcmp)以上に維持する
    ことを特徴とする内燃機関の制御システム。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
    前記補正角度(Δθcmp)は、負荷が減少しても一定値の補正角度(Δθcmp)に設定されているか、或いは負荷が減少するにしたがって大きくなる補正角度(Δθcmp)に設定されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御システム。
  3. 請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
    前記補正角度(Δθcmp)は、クランク角で4°〜8°に設定されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御システム。
  4. 請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
    前記可変動弁機構が異常を生じた場合、前記点火時期制御手段は、前記可変動弁機構の機械的な最遅角位置での前記吸気閉時期(IVC)よりも遅角側に前記点火時期(IgT)を設定する
    ことを特徴とする内燃機関の制御システム。
  5. 請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
    前記補正角度(Δθcmp)は、前記内燃機関の回転数が高くなるにしたがって大きくなる補正角度(Δθcmp)に設定されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御システム。
  6. 請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
    前記吸気バルブの前記吸気閉時期(IVC)は、前記可変動弁機構に設けられた角度センサによって検出されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御システム。
  7. 請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
    前記吸気バルブの前記吸気閉時期(IVC)は、前記内燃機関に設けられたノックセンサからの前記吸気バルブの着座によって生じる振動信号から検出されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御システム。
  8. 請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
    前記内燃機関は、過給器を備えた内燃機関、或いはリーンバーン燃焼式の内燃機関、或いは多量のEGRを行なう内燃機関である
    ことを特徴とする内燃機関の制御システム。
  9. 内燃機関の燃焼室に燃料を供給する燃料噴射手段と、前記燃焼室内に形成された可燃混合気を点火する点火手段と、前記燃焼室に配置された吸気バルブの閉弁時期(以下、吸気閉時期(IVC)と表記する)を制御する可変動弁機構を備えた内燃機関に使用され、前記点火手段の点火時期(以下、点火時期(IgTと表記する)を制御する点火時期制御手段、及び前記可変動弁機構を制御する可変動弁制御手段を有する備えた内燃機関の制御装置であって、
    前記可変動弁制御手段は、前記内燃機関の負荷が減少するにしたがって、前記可変動弁機構によって前記吸気バルブの前記吸気閉時期(IVC)を遅角側に制御し、
    前記点火時期制御手段は、前記内燃機関の負荷が減少するにしたがって、前記点火時期(IgT)を進角側に制御すると共に、前記点火時期(IgT)を前記吸気閉時期(IVC)より遅角側で、しかも前記吸気閉時期(IVC)と前記点火時期(IgT)の間の角度差を所定の補正角度(Δθcmp)以上に維持する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  10. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記点火時期制御手段は、
    前記吸気バルブの前記吸気閉時期(IVC)と前記点火手段の前記点火時期(IgT)の間の角度差(Δθact)が所定の角度差閾値(Δθsld)より小さい場合に、前記吸気閉時期(IVC)を起点として前記補正角度(Δθcmp)分だけ遅角側に前記点火時期(IgTnew)を設定する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  11. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記点火時期制御手段は、
    前記内燃機関の負荷が所定の負荷より小さいく、前記吸気バルブの前記吸気閉時期(IVC)と前記点火手段の前記点火時期(IgT)の間の角度差(Δθact)が所定の角度差閾値(Δθsld)より小さい場合に、前記吸気閉時期(IVC)を起点として前記補正角度(Δθcmp)分だけ遅角側に前記点火時期(IgTnew)を設定する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  12. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記点火時期制御手段は、
    前記内燃機関の負荷が所定の負荷より小さい場合に、前記吸気閉時期(IVC)を起点として前記補正角度(Δθcmp)分だけ遅角側に前記点火時期(IgTnew)を設定する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  13. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記補正角度(Δθcmp)は、負荷が減少しても一定値の補正角度(Δθcmp)に設定されているか、或いは負荷が減少するにしたがって大きくなる補正角度(Δθcmp)に設定されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  14. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記補正角度(Δθcmp)は、クランク角で4°〜8°に設定されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  15. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記可変動弁機構が異常を生じた場合、前記点火時期制御手段は、前記可変動弁機構の機械的な最遅角位置での前記吸気閉時期(IVC)よりも遅角側に前記点火時期(IgT)を設定する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  16. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記補正角度(Δθcmp)は、前記内燃機関の回転数が高くなるにしたがって大きくなる補正角度(Δθcmp)に設定されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  17. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記吸気バルブの前記吸気閉時期(IVC)は、前記可変動弁機構に設けられた角度センサによって検出されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  18. 請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記吸気バルブの前記吸気閉時期(IVC)は、前記内燃機関に設けられたノックセンサからの前記吸気バルブの着座によって生じる振動信号から検出されている
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
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