JP2020004943A - 熱電素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】常圧焼結法を使用しながら、高い熱電性能を有する熱電素子を製造することが可能な熱電素子の製造方法を提供する。【解決手段】秤量工程S1において、原料となるマグネシウム粉末と、ケイ素粉末と、錫粉末と、ドーパント元素粉末の秤量を行う際、錫の量が、化学量論比で決まる量より多くなるように、錫の秤量を行う。混合工程S2で原料粉末を均一に混合し、成形工程S3で加圧成形することで合成用成形体を作製し、合成工程S4で熱処理を行うことで、Mg2SiSn系熱電材料を合成する。粉砕工程S5及び造粒工程S6を経て得られたMg2SiSn系熱電材料の粉末を、成形工程S7で加圧成形することで焼結用成形体を作製し、焼結工程S8で焼結用成形体の常圧焼結を行い、得られた焼結体に対して、焼結後熱処理工程S9で熱処理を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、熱電素子の製造方法、特に、Mg2SiSn系熱電素子の製造方法に関する。
従来より、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)系熱電材料の一種として、一部のSiをSnに置換したMg2SiSn系熱電材料が知られている。このMg2SiSn系熱電材料を使用した熱電素子は、通常、ホットプレス焼結法や放電プラズマ焼結法(SPS)等の加圧焼結法によって製造されていた。
しかしながら、加圧焼結法を使用した製造方法では、焼結体の形状や、一度に製造可能な量が限られてしまうことになる。一方、焼結時に加圧を行わない常圧焼結法を使用すれば、焼結体の形状や製造量についての制限は緩和されることになるが、従来、常圧焼結法を使用して製造したMg2SiSn系熱電素子は、充分な熱電性能が得られていなかった。
なお、特許第4726452号公報には、マグネシウム、ケイ素及び錫の混合物を、マグネシウムの融点温度以上、沸点温度未満の温度で熱処理して得られる固溶体を、750℃〜855℃の範囲の温度下で50〜80MPaの圧力をかけて焼結するマグネシウム−金属の化合物(Mg2Si1-XSnX)の製造方法が開示されている。
特許第4726452号公報
本発明の目的は、常圧焼結法を使用しながら、高い熱電性能を有する熱電素子を製造することが可能な熱電素子の製造方法を提供することにある。
本発明に係る熱電素子の製造方法は、Mg2SiSn系熱電材料の合成に使用される原料の秤量を行う秤量工程と、前記秤量工程で秤量された原料に対して熱処理を行って、Mg2SiSn系熱電材料を合成する合成工程と、前記合成工程で合成されたMg2SiSn系熱電材料を常圧焼結する焼結工程とを備え、前記秤量工程において秤量される錫の量は、化学量論比で決まる量より多いことを特徴とする。
この場合において、前記秤量工程で秤量された原料を加圧成形する成形工程を更に備え、前記合成工程は、前記成形工程で成形された合成用成形体に対して熱処理を行って、Mg2SiSn系熱電材料を合成するようにしてもよい。
また、以上の場合において、前記焼結工程で得られた焼結体に対して、熱処理を行う焼結後熱処理工程を更に備えるようにしてもよい。この場合において、前記焼結後熱処理工程は、前記焼結工程における焼結温度から室温まで冷却される過程で行われるようにしてもよいし、前記焼結工程における焼結温度から一旦室温まで冷却された後に行われるようにしてもよい。また、前記焼結後熱処理工程における熱処理は、錫の融点より高く、焼結温度より低い温度で行われるようにしてもよい。
以上の場合において、前記秤量工程において、化学量論比で決まる原料の総量に対して、0.1〜1.0質量%の錫が過剰添加されるように、前記原料の秤量を行うようにしてもよいし、0.1〜5.0質量%の錫が過剰添加されるように、前記原料の秤量を行うようにしてもよい。
また、以上の場合において、前記原料は、マグネシウム、ケイ素及び錫であるようにしてもよいし、マグネシウム、ケイ素、錫及びドーパント元素(例えば、アンチモン)であるようにしてもよい。
また、以上の場合において、前記熱電素子は、n型熱電素子であるようにしてもよい。
また、以上の場合において、前記Mg2SiSn系熱電材料は、Mg2Si(1-x)Snx(0<x<0.6)であるようにしてもよい。
本発明によれば、常圧焼結法を使用しながら、高い熱電性能を有する熱電素子を製造することが可能となる。
本発明による熱電素子の製造方法を説明するための図である。 各熱電素子の評価結果を示す表である。 各熱電素子の評価結果を示す表である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明による熱電素子の製造方法を説明するための図である。本発明による熱電素子の製造方法は、Mg2SiSn系熱電素子を製造するものである。
同図に示すように、まず、原料の秤量を行う(S1)。例えば、原料となるマグネシウム(Mg)粉末と、ケイ素(Si)粉末と、錫(Sn)粉末と、ドーパント元素粉末(例えば、アンチモン(Sb)粉末)の秤量を行う。この際、錫の量が、化学量論比で決まる量より多くなるように(錫が過剰添加されるように)、錫の秤量を行う。例えば、化学量論比で決まる原料粉末の総量に対して、0.1〜1質量%程度あるいは0.1〜5.0質量%程度の錫が過剰添加されるように、錫の秤量を行う。
次に、秤量工程S1において秤量された原料粉末が均一になるように、原料粉末の混合を行う(S2)。例えば、混合機等を使用して、原料粉末の混合を行う。
次に、混合工程S2で均一に混合された原料粉末を加圧成形することで合成用成形体を作製する(S3)。例えば、面圧200〜300MPaという条件で冷間一軸プレス加工を行うことで、合成用成形体を作製する。
次に、成形工程S3で作製された合成用成形体に対して熱処理を行うことで、Mg2SiSn系熱電材料を合成する(S4)。例えば、合成用成形体を半密閉可能な容器(例えば、炭素製容器)内に収容した上で、電気炉内に入れて、真空中又はアルゴン(Ar)雰囲気中、600℃〜800℃(例えば、700℃)の温度に2〜10時間程度保持することで、Mg2SiSn系熱電材料を合成する。
次に、合成工程S4で合成されたMg2SiSn系熱電材料を粉砕する(S5)。例えば、自動乳鉢やボールミル等によって、粒径が1〜200μm程度(例えば、10μm以下)になるように粉砕する。
次に、粉砕工程S5で粉砕されたMg2SiSn系熱電材料が所望の粒径になるように造粒を行う(S6)。例えば、粉砕されたMg2SiSn系熱電材料に対して、0.5〜3質量%程度のバインダー(例えば、ポリビニルブチラール(PVB))を添加して乾燥させた上で、仮成形及び粗粉砕を行うことで、所望の粒径(例えば、37〜93μm)になるように造粒を行う。
次に、造粒工程S6で造粒されたMg2SiSn系熱電材料の粉末を加圧成形することで焼結用成形体を作製する(S7)。例えば、面圧200〜300MPaという条件で冷間一軸プレス加工を行うことで、焼結用成形体を作製する。
次に、成形工程S7で作製された焼結用成形体の常圧焼結を行う(S8)。例えば、焼結用成形体を電気炉内に入れて、真空中又はアルゴン雰囲気中、焼結温度700〜900℃、焼結時間2〜5時間という条件で、常圧焼結を行う。なお、焼結温度まで昇温する過程で、脱バインダー処理(例えば、PVBの熱分解)についても行われる。
次に、焼結工程S8で得られた焼結体に対して、焼結後熱処理を行う(S9)。例えば焼結工程後、焼結温度から300〜400℃の温度まで降温させた後、300〜400℃の温度に、一定時間以上(例えば、2〜5時間程度)保持することで、熱処理を行う。なお、焼結後熱処理については、焼結工程後、一旦、室温まで冷却した後、再び、300〜400℃の温度まで昇温させて行うようにしてもよい。
以上のような工程S1〜S9を経て製造された熱電素子は、必要に応じて、所望の形状に加工されて使用されることになる。
本発明による熱電素子の製造方法においては、原料粉末の秤量の際、化学量論比で決まる量より多く錫が含まれるように秤量を行うと共に、合成前に、合成用成形体を作製するようにすることで、常圧焼結法を使用しながら、高い熱電性能を有する熱電素子が得られるようにしている。
更に、焼結後に、錫の融点より高く、焼結温度より低い温度で焼結後熱処理を行うことで、錫を過剰に添加したことに起因する内部応力を除去・削減するようにしている。
なお、上述した実施形態においては、ドーパント元素として、アンチモンを使用しているが、他のドーパント元素(例えば、n型の場合、アルミニウム(Al)やビスマス(Bi)等、p型の場合、リチウム(Li)やナトリウム(Na)や銀(Ag)等)を使用することも考えられる。
また、本発明を使用して製造するのに適したMg2SiSn系熱電材料としては、例えば、Mg2Si(1-x)Snx(0<x<0.6)が挙げられる。
次に、本発明による熱電素子の製造方法の実施例について説明する。
まず、以下のようにして、秤量工程において過剰添加する錫の量を変えて、複数種の熱電素子を作製した。
《実施例1》
まず、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、純度99.9%、粒径180μmのマグネシウム(Mg)粉末、純度99.9%、粒径180μmのケイ素(Si)粉末、純度99.9%、粒径150μmの錫(Sn)粉末及び純度99.999%、粒径180μmのアンチモン(Sb)粉末の秤量を行った。すなわち、マグネシウム粉末が11.913g、ケイ素粉末3.407g、錫粉末が14.547g、アンチモン粉末0.132gとなるように秤量した。更に、秤量した原料粉末に対して、上記錫粉末が0.1質量%だけ過剰に含まれるように、上記錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。すなわち、0.03g(=30g×0.1%)の錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。
次に、原料粉末が均一になるように乳鉢内で混合した上で、面圧200MPaで冷間一軸プレス加工を行い、30×2×2mmの直方体状の合成用成形体を得た。
次に、得られた合成用成形体を、半密閉可能な蓋付き炭素製容器内に収容した上で、電気炉内に入れ、アルゴン雰囲気中、温度700℃にて2時間、熱処理を行い、Mg2SiSn系熱電材料の固溶体を得た。
次に、得られた固溶体を、自動乳鉢によって、粒径38μm以下となるように3時間程度粉砕を行い、得られた固溶体粉末に対して、1.0質量%のポリビニルブチラール(PVB)が添加されるように、PVBのエタノール溶液(PVB濃度5質量%)を添加した。
次に、得られた混成体を、90℃に保持したホットプレート上で加熱し、混成体に含まれるエタノールを蒸発させて乾燥させた。そして、乾燥させた混成体を、面圧50MPa程度で60φの円盤状に仮成型し、粗粉砕をしながら粒径38〜90μmに造粒した。
次に、造粒した混成体を、面圧200MPaで冷間一軸プレス加工を行い、30×2×2mmの直方体状の焼結用成形体を得た。
次に、得られた焼結用成形体を電気炉内に入れて、200°C/時の条件で昇温させ、アルゴン雰囲気中、焼結温度860°C、焼結時間3時間の条件で焼結を行った。
焼結終了後、200°C/時の条件で400℃まで降温させて、アルゴン雰囲気中、温度400℃にて2時間、焼結後熱処理を行った。
その後、室温まで自然冷却させ、得られた焼結体を、15×2×2mmの直方体に加工して、最終的な熱電素子を得た。
《実施例2》
まず、前述した実施例1と同様に、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、上記マグネシウム粉末、上記ケイ素粉末、上記錫粉末及び上記アンチモン粉末の秤量を行った。更に、秤量した原料粉末に対して、上記錫粉末が0.2質量%だけ過剰に含まれるように、上記錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。すなわち、0.06g(=30g×0.2%)の錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。
以下、前述した実施例1と同様にして、熱電素子を作製した。
《実施例3》
まず、前述した実施例1と同様に、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、上記マグネシウム粉末、上記ケイ素粉末、上記錫粉末及び上記アンチモン粉末の秤量を行った。更に、秤量した原料粉末に対して、上記錫粉末が1.0質量%だけ過剰に含まれるように、上記錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。すなわち、0.3g(=30g×1.0%)の錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。
以下、前述した実施例1と同様にして、熱電素子を作製した。
また、以下のようにして、焼結後熱処理に関する製造条件を変えて、複数種の熱電素子を作製した。
《実施例4》
まず、前述した実施例2と同様にして、焼結工程まで行った。焼結工程終了後、200°C/時の条件で400℃まで降温させ、アルゴン雰囲気中、400℃にて5時間、焼結後熱処理を行った。その後、室温まで自然冷却させ、得られた焼結体を、15×2×2mmの直方体に加工して、最終的な熱電素子を得た。
《実施例5》
まず、前述した実施例2と同様にして、焼結工程まで行った。焼結工程終了後、200°C/時の条件で300℃まで降温させ、アルゴン雰囲気中、300℃にて2時間、焼結後熱処理を行った。その後、室温まで自然冷却させ、得られた焼結体を、15×2×2mmの直方体に加工して、最終的な熱電素子を得た。
《実施例6》
まず、前述した実施例2と同様にして、焼結工程まで行い、焼結工程終了後、一旦、室温まで自然冷却させた。その後、200°C/時の条件で400℃まで昇温させ、アルゴン雰囲気中、温度400℃にて2時間、焼結後熱処理を行った。その後、室温まで自然冷却させ、得られた焼結体を、15×2×2mmの直方体に加工して、最終的な熱電素子を得た。
《実施例7》
まず、前述した実施例2と同様にして、焼結工程まで行った。焼結工程終了後、焼結後熱処理を行うことなく、そのまま室温まで自然冷却させ、得られた焼結体を、15×2×2mmの直方体に加工して、最終的な熱電素子を得た。
また、以下のようにして、従来の製造方法と同様の方法によって複数種類の熱電素子を作製した。
《比較例1》
まず、前述した実施例1と同様に、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、上記マグネシウム粉末、上記ケイ素粉末、上記錫粉末及び上記アンチモン粉末の秤量を行った。
次に、原料粉末が均一になるように乳鉢内で混合し、半密閉可能な蓋付き炭素製容器に収容した上で電気炉内に入れ、アルゴンガス雰囲気中、700℃にて2時間、熱処理を行い、Mg2SiSn系熱電材料の固溶体を得た。
以下、前述した実施例1と同様にして、焼結工程まで行い、焼結工程終了後、室温まで自然冷却させた。次に、得られた焼結体を、15×2×2mmの直方体に加工して、最終的な熱電素子を得た。
《比較例2》
まず、前述した比較例1と同様にして、Mg2SiSn系熱電材料の固溶体を得た。
次に、得られた固溶体を、自動乳鉢によって、粒径38μm以下となるように3時間程度粉砕を行った。
次に、得られた固溶体粉末を、放電プラズマ焼結用の30φの円柱状冶具に充填した上で、放電プラズマ焼結装置内に入れて、焼結温度650℃、焼結時圧力50MPa、焼結時間30分の条件で焼結を行った。
その後、室温まで自然冷却させ、得られた焼結体(径30mm、厚み5mm)を、15×2×2mmの直方体に加工して、最終的な熱電素子を得た。
次に、以下のようにして、各熱電素子の評価を室温(25℃)にて行った。
まず、各熱電素子の一端をヒータで加熱しながら、各熱電素子の両端の温度差及び出力電圧の測定を行い、測定結果に基づいて、ゼーベック係数を算出した。また、直流4端子法によって、比抵抗の測定を行った。
また、各熱電素子の質量を測定した上で、寸法と質量とから(嵩)密度を算出した。
更に、各熱電素子を、4週間、大気中で静置した後、状態(脆化の有無)の確認を行った。なお、脆化の意味については後述する。
図2は、各熱電素子の評価結果を示す表である。同図において、「焼結後熱処理条件」における「タイプ」は、焼結後熱処理を、焼結温度から室温まで冷却する過程で行ったもの(「過程型」)か、一旦室温まで冷却した後に行ったもの(「分離型」)かを表している。また、αは、ゼーベック係数(単位:μV/K)、ρは、比抵抗(単位:mΩm)を表している。
まず、ゼーベック係数αに着目すると、同図に示すように、実施例1〜7及び比較例1〜2のいずれもが、マイナスの値となっており、n型の熱電素子(n型半導体素子)となっていることがわかる。
また、比較例1(常圧焼結体)との比較では、実施例1〜7のいずれもが、より小さい(より絶対値が大きい)ゼーベック係数α、及び、より低い比抵抗ρを有しており、相対的に高い熱電性能を示している。
また、比較例2(SPS体)との比較でも、実施例1〜7のいずれもが、より小さい(より絶対値が大きい)ゼーベック係数を有している。
また、実施例1〜3を見てみると、錫の過剰添加量が増えるに従って、ゼーベック係数αが低下(絶対値が増加)すると共に、比抵抗ρも低下している。また、密度については、錫の過剰添加量が増えるに従って、増加している。
以上の結果から、錫の過剰添加量を0.1〜1.0質量%程度とすれば、高い熱電性能を有する熱電素子が得られるものと考えられる。
但し、錫の過剰添加量を1.0質量%とした実施例3については、大気中で静置すると、脆化が進行し、4週間後には、その形状が維持できておらず、完全に粉末化してしまった。同様に、焼結後熱処理を行っていない実施例7についても、大気中で静置すると、脆化が進行し、4週間後には、完全に粉末化してしまった。
以上の結果から、焼結後熱処理を行わなかったり、錫の過剰添加量を多くしすぎたりすると、熱電素子の脆化が進んで、形状の維持が困難になるものと考えられる。
熱電素子の脆化が起きる原因としては、過剰に添加された錫に起因して、焼結体の内部に単体の錫が残存することで内部応力が大きくなっているためだと考えられ、焼結後熱処理を錫の融点より高い温度で行うことで、内部に残存する単体の錫の外部(表面側)への排出が起こり、過剰に添加された錫に起因する内部応力が除去・削減されて、熱電素子の脆化が防止されたものと考えられる。
更に、以下のようにして、秤量工程において過剰添加する錫の量を変えて、複数種の熱電素子を追加作製した。
《実施例8》
まず、前述した実施例1と同様に、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、上記マグネシウム粉末、上記ケイ素粉末、上記錫粉末及び上記アンチモン粉末の秤量を行った。更に、秤量した原料粉末に対して、上記錫粉末が0.5質量%だけ過剰に含まれるように、上記錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。すなわち、0.15g(=30g×0.5%)の錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。
以下、前述した実施例1と同様にして、熱電素子を作製した。
《実施例9》
まず、前述した実施例1と同様に、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、上記マグネシウム粉末、上記ケイ素粉末、上記錫粉末及び上記アンチモン粉末の秤量を行った。更に、秤量した原料粉末に対して、上記錫粉末が1.5質量%だけ過剰に含まれるように、上記錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。すなわち、0.45g(=30g×1.5%)の錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。
以下、前述した実施例1と同様にして、熱電素子を作製した。
《実施例10》
まず、前述した実施例1と同様に、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、上記マグネシウム粉末、上記ケイ素粉末、上記錫粉末及び上記アンチモン粉末の秤量を行った。更に、秤量した原料粉末に対して、上記錫粉末が5.0質量%だけ過剰に含まれるように、上記錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。すなわち、1.5g(=30g×5.0%)の錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。
以下、前述した実施例1と同様にして、熱電素子を作製した。
《実施例11》
まず、前述した実施例1と同様に、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、上記マグネシウム粉末、上記ケイ素粉末、上記錫粉末及び上記アンチモン粉末の秤量を行った。更に、秤量した原料粉末に対して、上記錫粉末が10.0質量%だけ過剰に含まれるように、上記錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。すなわち、3.0g(=30g×10.0%)の錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。
以下、前述した実施例1と同様にして、熱電素子を作製した。
《実施例12》
まず、前述した実施例1と同様に、化学量論比がMg2Si0.495Sn0.5Sb0.005となると共に、全体の質量が30gとなるように、上記マグネシウム粉末、上記ケイ素粉末、上記錫粉末及び上記アンチモン粉末の秤量を行った。更に、秤量した原料粉末に対して、上記錫粉末が15.0質量%だけ過剰に含まれるように、上記錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。すなわち、4.5g(=30g×15.0%)の錫粉末の秤量を行い、原料粉末に添加した。
以下、前述した実施例1と同様にして、熱電素子を作製した。
次に、前述した実施例1〜7と同様にして、追加作製した各熱電素子(実施例8〜12)の評価を室温(25℃)にて行った。
図3は、各熱電素子の評価結果を示す表である。同図において、「焼結後熱処理条件」における「タイプ」は、焼結後熱処理を、焼結温度から室温まで冷却する過程で行ったもの(「過程型」)か、一旦室温まで冷却した後に行ったもの(「分離型」)かを表している。また、αは、ゼーベック係数(単位:μV/K)、ρは、比抵抗(単位:mΩm)を表している。
まず、ゼーベック係数αに着目すると、同図に示すように、追加作製された実施例8〜12のいずれもが、マイナスの値となっており、n型の熱電素子(n型半導体素子)となっていることがわかる。
また、比較例1(常圧焼結体)との比較では、実施例8〜10については、より小さい(より絶対値が大きい)ゼーベック係数α、及び、より低い比抵抗ρを有しており、相対的に高い熱電性能を示している。
また、比較例2(SPS体)との比較では、実施例8〜12のいずれもが、より小さい(より絶対値が大きい)ゼーベック係数を有している。
また、実施例1〜3及び実施例8〜12を見てみると、ゼーベック係数αについては、錫の過剰添加量が増えるに従って、概ね低下(絶対値が増加)していく傾向を示している。一方、比抵抗ρについては、当初は、錫の過剰添加量が増えるに従って、低下していくが、錫の過剰添加量が一定量(1.0〜1.5質量%辺り)に達すると、低下しなくなり、その後は、錫の過剰添加量が増えるに従って、増加していく。また、密度については、錫の過剰添加量が増えるに従って、概ね増加していく傾向を示している。
以上の結果から、錫の過剰添加量を0.1〜5.0質量%程度とすれば、高い熱電性能を有する熱電素子が得られるものと考えられる。
但し、錫の過剰添加量を1.0質量%以上とした実施例3及び実施例9〜12については、大気中で静置すると、脆化が進行し、4週間後には、その形状が維持できておらず、完全に粉末化してしまった。
以上の結果から、錫の過剰添加量を多くしすぎると、熱電素子の脆化が進んで、形状の維持が困難になるものと考えられる。
S1 秤量工程
S2 混合工程
S3 (合成前)成形工程
S4 合成工程
S5 粉砕工程
S6 造粒工程
S7 (焼結前)成形工程
S8 焼結工程
S9 焼結後熱処理工程

Claims (13)

  1. Mg2SiSn系熱電材料の合成に使用される原料の秤量を行う秤量工程と、
    前記秤量工程で秤量された原料に対して熱処理を行って、Mg2SiSn系熱電材料を合成する合成工程と、
    前記合成工程で合成されたMg2SiSn系熱電材料を常圧焼結する焼結工程と
    を備え、
    前記秤量工程において秤量される錫の量は、化学量論比で決まる量より多い
    ことを特徴とする熱電素子の製造方法。
  2. 前記秤量工程で秤量された原料を加圧成形する成形工程を更に備え、
    前記合成工程は、前記成形工程で成形された合成用成形体に対して熱処理を行って、Mg2SiSn系熱電材料を合成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の熱電素子の製造方法。
  3. 前記焼結工程で得られた焼結体に対して、熱処理を行う焼結後熱処理工程を更に備える
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電素子の製造方法。
  4. 前記焼結後熱処理工程は、前記焼結工程における焼結温度から室温まで冷却される過程で行われる
    ことを特徴とする請求項3に記載の熱電素子の製造方法。
  5. 前記焼結後熱処理工程は、前記焼結工程における焼結温度から一旦室温まで冷却された後に行われる
    ことを特徴とする請求項3に記載の熱電素子の製造方法。
  6. 前記焼結後熱処理工程における熱処理は、錫の融点より高く、焼結温度より低い温度で行われる
    ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の熱電素子の製造方法。
  7. 前記秤量工程において、化学量論比で決まる原料の総量に対して、0.1〜1.0質量%の錫が過剰添加されるように、前記原料の秤量を行う
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱電素子の製造方法。
  8. 前記秤量工程において、化学量論比で決まる原料の総量に対して、0.1〜5.0質量%の錫が過剰添加されるように、前記原料の秤量を行う
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱電素子の製造方法。
  9. 前記原料は、マグネシウム、ケイ素及び錫である
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱電素子の製造方法。
  10. 前記原料は、マグネシウム、ケイ素、錫及びドーパント元素である
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱電素子の製造方法。
  11. 前記ドーパント元素は、アンチモンである
    ことを特徴とする請求項10に記載の熱電素子の製造方法。
  12. 前記熱電素子は、n型熱電素子である
    ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱電素子の製造方法。
  13. 前記Mg2SiSn系熱電材料は、Mg2Si(1-x)Snx(0<x<0.6)である
    ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱電素子の製造方法。
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