[第1の態様]
以下、第1の態様に係る組立構造体、及びその組立て方法について、図1〜6を参照しつつ説明する。
図1は、第1の態様に係る組立構造体1の正面図を示しており、図2は平面図を示している。なお、本態様の組立構造体1は、流動性のある材料を型枠等に流し込み、その後硬化させる、硬化物全般に適用可能である。具体的には、例えば、RC(Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート)、SRC(Steel Reinforced Concrete:鉄筋鉄骨コンクリート)、PCa(Precast concrete:プレキャストコンクリート)、PC(Prestressd Concrete:プレストレストコンクリート)などのコンクリート構造(コンクリート材料を用いた構造体)、並びに、モルタル、ALC(軽量気泡コンクリート)、ガラス等も含まれる。また、本態様の組立構造体1は、例えば、柱梁接合部、基礎柱接合部、鉄骨造の柱脚と基礎フーチングの接合部などの接合部に適しているが、建物における適用箇所については特に限定されない。なお、本例では、鉄骨造の柱脚部の基礎コンクリートと基礎フーチングの接合部に適用可能な組立構造体1について説明する。すなわち、本例の組立構造体1は、基礎フーチング部に配置される第1構造体10と、柱脚部の基礎コンクリートに配置される第2構造体20とを備える。
図1に示す本例の組立構造体1は、部分的に重なるように配置された状態で接合される第1構造体10と第2構造体20とを備える。また、組立構造体1は、第1構造体10と第2構造体20との接合部を補強するための接合部補強材30を備える。
第1構造体10と第2構造体20は、それぞれ複数本の長尺状の補強材(11、12、13、21、22)により形成されている。本例の補強材(11、12、13、21、22)は、鉄筋である。すなわち、第1構造体10及び第2構造体20は、所謂「鉄筋かご」であり、組立構造体1は、2つの鉄筋かごを組み合わせた鉄筋かご組立体を構成している。また、組立構造体1が内部に配置されたコンクリート構造が、鉄筋コンクリートとなる。なお、補強材(11、12、13、21、22)としては、例えば異形鉄筋を用いることができるが、これに限られず、例えば、丸鋼、プレート(板状部材)、繊維補強材、竹など、コンクリートを補強することができる部材であれば特に限定されない。
ここで、図3Aは、図1の組立構造体1における第1構造体10を単独で示す正面図であり、図3Bは平面図であり、図3Cは側面図である。
第1構造体10は、複数本の補強材(11、12、13)を立体的に組み上げることで形成することができる。具体的に、第1構造体10は、主筋11と、スターラップ12と、フープ筋13とを有する。主筋11、スターラップ12及びフープ筋13は、挿入空間Sを避けるように配置されている。
本例の第1構造体10は、横長の直方体状に形成されており、その上面には、第2構造体20を挿入するための挿入空間Sが形成されている。なお、第2構造体20を挿入するための挿入空間Sの形状は特に限定されず、第1構造体10と第2構造体20とが部分的に重なるように配置可能であればよく、例えば、図1の形態に加えて、図4A〜図4Cに示す形態等も含むものである。本例の挿入空間Sは、第1構造体10の上面に開口し、下面まで貫通せずに第1構造体10の内部で終端する凹部で構成されている。また、第1構造体10の下面には、他の構造体としての杭Pの上端部を挿入可能な杭用空間K(他の挿入空間)が左右両側に1箇所ずつ設けられている。杭用空間Kは第1構造体10の下面に開口し、上面まで貫通せずに第1構造体10の内部で終端する凹部で構成されている。なお、他の構造体は杭に限られず、他の挿入空間も杭用の空間に限られない。
主筋11は、長尺棒状の直線状の鉄筋を4箇所で折り曲げて略C字状に形成し、鉄筋の両端が所定の間隔をあけて配置されるようにしたものである。このように略C字状に形成された主筋11は、その両端の間に形成される欠損部11aを有しており、この欠損部11aが挿入空間Sを形成している。なお、主筋11の欠損部11aは、略矩形の環状に形成した鉄筋の一部を所定の長さだけ切断することにより形成することも可能である。
図3B、3Cに示すように、本例の第1構造体10においては、前後両側にそれぞれ3本の主筋11が相互に間隔をあけて平行に配置されており、合計6本の主筋11が設けられている。なお、前側の3本の主筋11と後側の3本の主筋11とは、杭用空間Kに対応する間隔をあけて配置されている。つまり、前側の3本の主筋11と後側の3本の主筋11との間に、杭の上端部を下方から挿入可能となっている。
スターラップ12は、長尺棒状の鉄筋を長方形の環状(フープ状)に折り曲げて両端を接合することにより形成することができる。なお、本例のスターラップ12は、主筋11に内接するように配置されているが、主筋11に外接するように配置されていてもよい。
本例では、第1構造体10の長手方向(図3A〜3Cにおけるx方向)に沿って、8本のスターラップ12が間隔をあけて配置されている。8本のスターラップ12は、相互に平行に配置されている。また、スターラップ12は、挿入空間Sを避ける位置に配置され、挿入空間Sの左右両側に4本ずつ配置されている。また、左右両側に位置する4本のスターラップ12のうちの各1本には、杭用空間Kに対応する欠損部12aが形成されており、当該欠損部12aが杭用空間Kの入口を構成する。
フープ筋13は、長尺棒状の鉄筋を長方形の環状(フープ状)に折り曲げて両端を接合することにより形成することができる。フープ筋13は、主筋11及びスターラップ12を外側から取り囲むように配置されている。なお、本例のフープ筋13は、主筋11及びスターラップ12に外接するように配置されているが、主筋11及びスターラップ12に内接するように配置されていてもよい。
第1構造体10を構成する主筋11、スターラップ12及びフープ筋13は、交差する部分において針金や結束バンド等の緊結部材により緊結されることで、立体的な形状を維持することができる。あるいは、第1構造体10は、主筋11、スターラップ12及びフープ筋13が交差する部分を溶接等により固定して形状を維持するようにしてもよい。
ここで、主筋11は、図3A〜3Cに示すz軸方向に垂直となるように、つまり、xy平面に平行となるように配置されている。また、スターラップ12は、x軸方向に垂直となるように、つまり、yz平面に平行となるように配置されている。フープ筋13は、y軸方向に垂直となるように、つまり、xz平面に平行となるように配置されている。
なお、主筋11、スターラップ12及びフープ筋13の形状及び相互の位置関係は図示例に限定されず、適宜変更可能である。例えば、主筋11は、挿入空間Sを形成可能な位置に配置されていれば、欠損部11aを持たない閉じた環状となっていてもよい。また、スターラップ12及びフープ筋13は、強度の観点から、環状であることが好ましいが、必ずしも環状である必要はなく、欠損部を有していてもよい。また、主筋11、スターラップ12及びフープ筋13の延在方向も、適宜変更可能である。例えば、主筋11は、必ずしもz軸方向に垂直である必要はなく、つまりxy平面に対して斜めに傾斜する方向に配置されていてもよい。また、複数の主筋11が全て平行である必要もない。同様に、スターラップ12及びフープ筋13の位置関係、また、延在角度もそれぞれ適宜変更可能である。また、主筋11、スターラップ12及びフープ筋13のうち、何れか1種類の補強材を除いた構成でもよい。すなわち、第1構造体10は、例えばフープ筋13を除いて主筋11及びスターラップ12のみで構成してもよいし、スターラップ12を除いて主筋11及びフープ筋13のみで構成してもよい。
第2構造体20は、複数本の補強材(21、22)を立体的に組み上げることで形成することができる。具体的に、第2構造体20は図1、2に示すように、立上り筋21と、フープ筋22とを有する。また、第2構造体20は、縦長の直方体状に形成されており、その下部が、第1構造体10の挿入空間S内に配置されている。第1構造体10と第2構造体20とは、略T字状、すなわち、第1構造体10の延在方向(長手方向)に第2構造体20の軸方向が直行し、且つ、第1構造体10を第2構造体20が貫通しないように配置されている。
立上り筋21は、長尺棒状の直線状の鉄筋の一方の端部をU字状に折り返して形成されている。立上り筋21は、第2構造体20の軸方向(図1の上下方向)に対して平行となるように、直線状に延在し、下端部がU字状に折り返されている。
本例においては、図2に示すように、第2構造体20の正面側及び背面側にそれぞれ4本の立上り筋21が配置されるとともに、左右両側に2本ずつ立上り筋21が配置されている。
フープ筋22は、複数本の立上り筋21を外側から取り囲むように配置されている。フープ筋22は、立上り筋21に外接するように配置されているが、内接するように配置してもよい。また、本例においては、第2構造体20の軸方向に沿って、複数本のフープ筋22が間隔をあけて(最上部は間隔を空けずに)配置されている。
接合部補強材30は、第1構造体10と第2構造体20との接合部を補強するための部材である。接合部補強材30は、少なくとも第1構造体10と第2構造体20とが重なる領域に配置されている。
本例の接合部補強材30は、長尺の直線状に延びる鉄筋である。接合部補強材30は、挿入空間Sを構成する第1構造体10の補強材(主筋11)の欠損部11aを補うように配置されている。より具体的に、本例では、主筋11に沿って隣接配置された前後2本ずつ、つまり4本の接合部補強材30と、主筋11から離れた位置(前後方向中央部)に配置された2本の接合部補強材30とが設けられている。主筋11に沿うように隣接配置された2本の接合部補強材30は、欠損部11aの両側の主筋11に架け渡されるように配置されている。6本の接合部補強材30は、全て、第1構造体10の上面を構成する平面上で、第1構造体10の長手方向全体(全長)にわたって配置されている。6本の接合部補強材30のうち、前後方向中央側に位置する4本の接合部補強材30は、第1構造体10の挿入空間Sに挿入配置された第2構造体20を貫通するように配置される。このような構成とすることで、第2構造体20に引張り方向の力(挿入空間Sから上方に引き抜かれる方向の力)が加わった際に接合部補強材30が引抜力に対して抵抗する機構となる。これにより、接合部の靱性(粘り強さ)が向上するため、接合部の構造性能をより向上させることができる。接合部の構造性能とは、接合部の強度のみならず、粘り強さ、靱性等も含まれる。
また、接合部補強材30は、第1構造体10と第2構造体20との接合部を補強するものであれば、その形状、材料、本数及びそれぞれの位置も特に限定されない。例えば、本例の接合部補強材30の形状は全て一直線状であるが、屈曲部、湾曲部等を有する形状としてもよい。
なお、第1構造体10及び第2構造体20は、鉄筋等の補強材を立体的に、すなわち、少なくとも互いに交差する2平面に沿って補強材が配置されるように組み上げられているが、形状はこれに限定されない。
第1構造体10と第2構造体20とは、部分的に重なるように配置されている。ここで、第1構造体10と第2構造体20とが「部分的に重なるように配置」されるとは、第1構造体10及び第2構造体20の少なくとも一方側に形成された孔部または凹部等の欠損部分に他方側が入り込むように配置されていることを意味する。例えば、図1の形態に加えて、図4A〜図4Cに示す形態とすることができる。
図4Aの例は、第1構造体10の一方側の側面に設けられた凹部(挿入空間S)に第2構造体20の一部が入り込むように配置される場合を示している。図4Bの例は、第1構造体10の中央部に形成された貫通孔(挿入空間S)に、第2構造体20が貫通している場合を示している。また、図4Cの例は、第1構造体10の中央部に形成された凹部(挿入空間S)に、第2構造体20が貫通しないように挿入配置されている場合を示す。なお、第1構造体10と第2構造体20の両方に凹部(挿入空間S)が形成され、当該凹部同士を組み合わせるように第1構造体10と第2構造体20を組み合わせてもよい。
ここで、組立構造体1の組立て方法は、それぞれ複数の長尺状の補強材で構成された第1構造体10と第2構造体20とを部分的に重なるように配置する配置工程と、部分的に重なるように配置された第1構造体10と第2構造体20の接合部を補強するように、接合部補強材30を配置する接合部補強工程を含む。
具体的に、組立構造体1を使用する際には、予め工場や現場ヤードなどの工場等において形成した第1構造体10及び第2構造体20を建設現場に搬入し、配置工程において、第1構造体10の上方から挿入空間Sに第2構造体20を挿入し、第1構造体10と第2構造体20とが部分的に重なるように配置する。そして、接合部補強工程において、第2構造体20を貫通するように接合部補強材30を配置する。また、必要に応じて緊結部材による緊結等により各部材同士を仮固定する。そして、組立てた組立構造体1をコンクリートの型枠内の所定の位置に配置し、型枠内にコンクリートを流し込んで固めることにより、鉄筋コンクリートとなる。なお、本例の場合、組立構造体1は、予め地面に埋設された杭Pの上端部を第1構造体10の下面に形成された杭用空間Kに挿入するようにして配置する。
組立構造体1の組立て方法としては、建設現場に搬入した第1構造体10と第2構造体20とを組立ててから、コンクリートの型枠内の所定の位置に配置してもよいし、あるいは、図5に示すように、コンクリートの型枠内において、予め地面に埋設された杭Pの上端部を杭用空間Kに挿入するように第1構造体10を上方から配置し、その後、第1構造体10の挿入空間Sに第2構造体20を上方から挿入するようにしてもよい。
このように、予め工場等において形成した第1構造体10及び第2構造体20を建設現場で組み立てることにより、建設現場での施工効率が向上する。また、複雑な作業が不要となるため、作業者の習熟度によるバラツキが生じ難く、組立構造体1の精度も高くなる。
また、第1の態様の組立構造体1にあっては、第1構造体10と第2構造体20とが、部分的に重なるように配置されているため、第1構造体10と第2構造体20とを近接位置もしくは隣接位置に配置して接合する場合に比べて、接合部の強度を向上させることができる。
また、第1構造体10に挿入空間Sが形成されていることにより、第1構造体10に対して第2構造体20を配置する位置が外観上、判別し易く、また、コンクリートを流し込んで固定されるまでの位置ずれも生じ難い。
また、挿入空間Sを構成する第1構造体10の補強材(主筋11)の欠損部11aを補うように接合部補強材30を配置することにより、挿入空間Sを設けたことによる第1構造体10の強度の低下を抑制することができる。さらに、第2構造体20を貫通するように接合部補強材30を配置することで、第2構造体20が第1構造体10から引き抜かれた際に接合部補強材30が引抜力に対して抵抗する機構となる。これにより、接合部の靱性(粘り強さ)が向上するため、接合部の構造性能をより向上させることができる。
ここで、例えば、図6に示すように、第2構造体20の一方側の端部(図6の例では上端部20a)が、第1構造体10に形成された挿入空間S内に配置され、第2構造体20が第1構造体10を貫通しない場合、接合部補強材30を第1構造体10の外側から配置するとともに一部を第1構造体10の内部に差し込み、第2構造体20の上端部20aに接合するようにしてもよい。図6に示す接合部補強材30は、逆U字状であり、その両側の腕部30aを第1構造体10の上方から差し込み、第2構造体20の上端部20aに接合している。このような構成とすることにより、第1構造体10と第2構造体20との接合部の強度をさらに高めることができる。なお、図6に示す形態は、例えば、建物の最上階における柱梁接合部に適用することができる。
[第2の態様及び第3の態様]
以下、第2の態様及び第3の態様について、図7〜13を参照して説明する。各図において共通の構成には、同一の符号を付している。第2の態様及び第3の態様において、第1方向X1と、第2方向Y1と、第3方向Z1とは、それぞれ互いに異なる方向である。図7等に示す例では、第1方向X1と、第2方向Y1と、第3方向Z1とは、それぞれ互いに略直交する。具体的に、第1方向X1及び第2方向Y1は略水平面内で互いに略直交し、第3方向Z1は略水平面と直交する略鉛直方向である。
<構造体100>
図7は、第2の態様としての構造体100を示す斜視図である。構造体100は、コンクリート等の硬化物を補強するための、鉄筋籠等の構造体であり、上述の組立構造体1に適用可能である。ここで、硬化物は、流動状態から硬化状態に変異し得る材料であって、流動状態で型枠等の中に充填されると、所定時間経過後、特定の形状に硬化するものである。構造体100によりコンクリート等の硬化物が補強されてなる構造物は、例えばRC構造、SRC構造、PCa構造、又はPC構造等、コンクリート等の硬化物による構造物全般を含む。当該構造物が適用される部位は特に限定されないが、例えば杭頭接合部のフーチングが挙げられる。
図7に示すように、構造体100は、第1補強材110と、第2補強材130と、第3補強材150と、を備える。本態様の構造体100は、第1補強材110と、第2補強材130と、第3補強材150と、をそれぞれ複数備える。本態様の構造体100の第1補強材110、第2補強材130、及び第3補強材150は、仮想上の略直方体の表面に沿って位置している。第1補強材110、第2補強材130、及び第3補強材150は、それぞれ、硬化物を補強するための補強材であれば特に限定されず、例えば、異形鉄筋、丸鋼、プレート等の鉄筋、繊維補強材、又は竹等であってもよい。図7では、当該略直方体の紙面奥側の3面に位置する第1補強材110、第2補強材130、及び第3補強材150の図示を省略する。
図8は、1つの第1補強材110のみを示す正面図である。ここで、第2の態様及び第3の態様において「正面図」とは、第2方向Y1に沿って見た図を意味する。図7及び図8に示すように、第1補強材110は、第1方向X1に延在する第1延在部111と、第3方向Z1に延在する第2延在部121と、を有する。本態様の第1補強材110は、構造体100の主筋を構成する。本態様の第1補強材110は、途中で分岐することなく、第1延在部111と第2延在部121とが一体に連なって形成されている。本態様の複数の第1補強材110は、図7に示すように、互いに並行しながら、第2方向Y1でそれぞれ互いに異なる位置に配置されている。
本態様の複数の第1補強材110は、構造体100の第2方向Y1での中央付近には配置されていない。また、本態様の第1補強材110は、第3方向Z1の一方側(図7、図8の上側)に位置する第1延在部111が分断されていることにより、構造体100の第1方向X1での中央付近に不存在の領域を形成している。さらに、本態様の複数の第2補強材130は、構造体100の第1方向X1での中央付近には配置されていない。このような構成により、構造体100とは別の構造体を、構造体100の第1方向X1及び第2方向Y1での中央付近に、構造体100に重畳させて配置することができる。当該別の構造体は、例えば構造体100が杭頭接合部のフーチングを構成する場合、例えば当該フーチングを柱に連接するための鉄筋籠等の構造体である。
本態様の複数の第1補強材110は、フープ状である。ここで、第1補強材110がフープ状であるとは、第1補強材110が、第1方向X1と第3方向Z1とを含む平面内で、上述の仮想上の略直方体の表面に沿う周囲全周のうち、4分の3以上の長さに亘って配置されている、又は、上述の仮想上の略直方体の表面に沿う4辺中3辺以上に亘って配置されていることを意味する。第1補強材110をフープ状とすることで、第1補強材110の一体性が向上するため、構造体100の施工上の安定性を向上させることができる。フープ状の態様の詳細については後述する。複数の第1補強材110は、全てがフープ状であることには限定されず、例えば10本中8本がフープ状であり、残りの2本がフープ状でなくてもよい。
本態様の複数の第1補強材110のうちの少なくとも1つは、第1方向X1と第3方向Z1とを含む平面内で全周に亘って位置するフープ筋であってもよい。第1補強材110をフープ筋とすることで、第1補強材110の一体性がより向上するため、構造体100により硬化物が補強されてなる構造物の強度をより向上させることができる。具体的に、当該構造物に対する圧縮力、引張力、それらを組み合わせた曲げモーメント、せん断力等に対する強度を向上させることができる。
第2補強材130は、図7に示すように、第2方向Y1に延在する第3延在部131と、第3方向Z1に延在する第4延在部141と、を有する。第3延在部131は、第1補強材110の第1延在部111と交差する位置において、第1延在部111に取り付けられている。具体的に、本態様の第2補強材130の第3延在部131は、第2方向Y1の互いに異なる位置で、複数の第1補強材110の第1延在部111それぞれに取り付けられている。また、本態様の第1補強材110の第1延在部111は、第1方向X1の互いに異なる位置で、複数の第2補強材130の第3延在部131それぞれに取り付けられている。ここで、第2の態様及び第3の態様において、一方の部材が他方の部材に「取り付けられる」とは、一方の部材と他方の部材とが、硬化物の打設時、吊り上げ時、及び搬送時等の施工作業時に、一体化された状態を維持する程度に固定されることを含む。具体的に、結束筋、溶接、クリップ等によって固定される。
本態様の第2補強材130は、主筋である第1補強材110のせん断応力の抑制等のためのスターラップ(STP)を構成する。本態様の第2補強材130は、途中で分岐することなく、第3延在部131と第4延在部141とが一体に連なって形成されている。本態様の第2補強材130は、第1補強材110よりも構造体100の内側に配置されている。本態様の複数の第2補強材130は、図7に示すように、互いに並行しながら、第1方向X1でそれぞれ互いに異なる位置に配置されている。
図7に示すように、本態様の複数の第2補強材130は、第2補強材130aと、第2補強材130bとを含む。図9Aは、第2補強材130aのみを示す側面図である。図9Bは、第2補強材130bのみを示す側面図である。ここで、第2の態様及び第3の態様において「側面図」とは、第1方向X1に沿って見た図を意味する。
図9Aに示すように、本態様の第2補強材130aは、第2方向Y1と第3方向Z1とを含む平面内で全周に亘って位置するフープ筋である。図9Aに示す例では、第2補強材130aは、第3延在部131と第4延在部141とで矩形状をなすように形成され、端部同士が溶接等で一体化されている。第2補強材130aをフープ筋とすることで、第2補強材130aの一体性がより向上するため、構造体100により硬化物が補強されてなる構造物の強度をより向上させることができる。
図9Bに示すように、本態様の第2補強材130bは、第3方向Z1の一方側(図7、図9Bの下側)に位置する第3延在部131が分断されており、構造体100の第2方向Y1での中央付近に不存在の領域を形成している。また、図7に示すように、第2補強材130bは、構造体100の第1方向X1での両端近傍で、第2補強材130aに第1方向X1の両側を挟まれるように配置されている。このような構成により、例えば構造体100が杭頭接合部のフーチングを構成する場合、第2補強材130bの当該不存在の領域に杭を配置することができる。
本態様の複数の第2補強材130は、フープ状である。ここで、第2補強材130がフープ状であるとは、第2補強材130が、第2方向Y1と第3方向Z1とを含む平面内で、上述の仮想上の略直方体の表面に沿う周囲全周のうち、4分の3以上の長さに亘って配置されている、又は、上述の仮想上の略直方体の表面に沿う4辺中3辺以上に亘って配置されていることを意味する。第2補強材130をフープ状とすることで、第2補強材130の一体性が向上するため、構造体100の施工上の安定性を向上させることができる。フープ状の態様の詳細については後述する。複数の第2補強材130は、全てがフープ状であることには限定されず、例えば10本中8本がフープ状であり、残りの2本がフープ状でなくてもよい。
図7に示すように、第3補強材150は、第1補強材110の第2延在部121と、第2補強材130の第4延在部141とに取り付けられている。このように、本態様の構造体100は、第1補強材110と第2補強材130とが互いに取り付けられている第1方向X1と第2方向Y1とを含む平面とは第3方向Z1に異なる位置で、第1補強材110及び第2補強材130に取り付けられた第3補強材150を備えるので、形状を安定させることができる。これにより、例えば構造体100をクレーン等で吊り上げることが可能となる。
詳細には、本態様の第3補強材150は、第2方向Y1に延在する第5延在部151と、第1方向X1に延在する第6延在部161と、を有する。第5延在部151は、第1補強材110の第2延在部121と交差する位置において、第2延在部121に取り付けられている。第6延在部161は、第2補強材130の第4延在部141と交差する位置において、第4延在部141に取り付けられている。具体的に、本態様の第3補強材150の第5延在部151は、第2方向Y1の互いに異なる位置で、複数の第1補強材110の第2延在部121それぞれに取り付けられている。また、本態様の第3補強材150の第6延在部161は、第1方向X1の互いに異なる位置で、複数の第2補強材130の第4延在部141それぞれに取り付けられている。
本態様の第3補強材150は、途中で分岐することなく、第5延在部151と第6延在部161とが一体に連なって形成されている。本態様の複数の第3補強材150は、図7に示すように、互いに並行しながら、第3方向Z1でそれぞれ互いに異なる位置に配置されている。
図10は、構造体100を示す上面図である。ここで、第2の態様及び第3の態様において「上面図」とは、第3方向Z1に沿って見た図を意味する。図10に示すように、本態様の第3補強材150は、第3方向Z1に沿って見た場合に、第1補強材110及び第2補強材130の外側に取り付けられている。具体的に、本態様の第3補強材150は、第3方向Z1に沿って見た場合に、第1補強材110及び第2補強材130の周囲を包囲するフープ状である。ここで、第3補強材150がフープ状であるとは、第3補強材150が、第1方向X1と第2方向Y1とを含む平面内で、上述の仮想上の略直方体の表面に沿う周囲全周のうち、4分の3以上の長さに亘って配置されている、又は、上述の仮想上の略直方体の表面に沿う4辺中3辺以上に亘って配置されていることを意味する。より具体的に、本態様の第3補強材150は、第1方向X1と第2方向Y1とを含む平面内で、第1補強材110及び第2補強材130の周囲全周に亘って位置するフープ筋である。図10に示す例では、第3補強材150は、第5延在部151と第6延在部161とで矩形状をなすように形成され、端部同士が溶接等で一体化されている。
第3補強材150は、フープ筋でなくてもよい。また、第3補強材150は、フープ状でなくてもよい。ただし、第3補強材150がフープ状であれば、第3補強材150の一体性がより向上するため、構造体100の施工上の安定性を向上させることができる。また、第3補強材150がフープ筋であれば、第3補強材150の一体性がより一層向上するため、構造体100により硬化物が補強されてなる構造物の強度をより向上させることができる。さらに、第3補強材150を所定の寸法に従ったフープ筋とすれば、構造体100の第1方向X1と第2方向Y1とを含む平面内での寸法精度を向上させることができるので、例えば構造体100を別の構造体と接合する際などに、寸法誤差の少ない施工を可能とすることができる。
図11Aは、第3補強材150の第1の変形例としての第3補強材150aを示す上面図である。図11Aに示すように、第1の変形例としての第3補強材150aは、1つの第5延在部151と、1つの第6延在部161とを有するL字筋である。このような第3補強材150aを、第1補強材110(図10等参照)及び第2補強材130(図10等参照)の周囲を包囲するように2つ配置することで、全体としてフープ状に配置することができる。このような構成により、上述の通り、構造体100の施工上の安定性を向上させることができる。第1補強材110及び第2補強材130も、上述の第3補強材150aと同様に、2つのL字筋を配置して全体としてフープ状とした構成であってもよい。
図11Bは、第3補強材150の第2の変形例としての第3補強材150bを示す上面図である。図11Bに示すように、第2の変形例としての第3補強材150bは、1つの第6延在部161と、当該第6延在部161の両端それぞれから第2方向Y1の一方側に延在した第5延在部151と、を有する。2つの第5延在部151のうちの一方は他方よりも短い。このような第3補強材150bを、第1補強材110(図10等参照)及び第2補強材130(図10等参照)の周囲を包囲するように2つ配置することで、全体としてフープ状に配置することができる。このとき、一方の第3補強材150bの短い第5延在部151と、他方の第3補強材150bの長い第5延在部151とが、第2方向Y1に沿う一部で第1方向X1に重なる重なり部152を形成するように配置することで、重ね継手を有するフープ筋として、2つの第3補強材150bの一体性を上述の第3補強材150aよりも向上させることができる。第1補強材110及び第2補強材130も、上述の第3補強材150bと同様に、重ね継手を有するフープ筋としてもよい。
図11Cは、第3補強材150の第3の変形例としての第3補強材150cを示す上面図である。図11Cに示すように、第3の変形例としての第3補強材150cは、第5延在部151と第6延在部161とで矩形状をなすフープ筋として形成されている。矩形状の第3補強材150cの1つの角部には、フックにより定着したフック定着部153が形成されている。このように、1つの矩形状に形成した第3補強材150cを、フック定着部153によって定着させたフープ筋とすることで、上述の第3補強材150bよりも一体性を向上させることができる。第1補強材110及び第2補強材130も、上述の第3補強材150cと同様に、フック定着部によって定着させたフープ筋としてもよい。
図7に示した本態様の第1補強材110及び第2補強材130は、第2延在部121と第4延在部141とが第3方向Z1に延在した状態を維持しつつ、第1延在部111と第3延在部131とが互いに回動可能に取り付けられている。第1延在部111及び第3延在部131は、例えば、第1方向X1及び第2方向Y1が略直交する状態から、第1方向X1が第2方向Y1に沿って(例えば30°以下の角度で交差して)延在する状態まで、互いに回動可能である。このように、第1補強材110及び第2補強材130は、ユニット170(図12A、図12B参照)を構成する。
図12Aは、第1補強材110及び第2補強材130で構成されるユニット170の展開状態を示す上面図である。図12Bは、ユニット170の折り畳み状態を示す上面図である。図12A及び図12Bに示すように、ユニット170は、第1補強材110の第1延在部111と、第2補強材130の第3延在部131と、が互いに交差する位置で、例えば、番線等の線材により回動可能な程度に緩く結束されることで、第1方向X1と第2方向Y1とを含む平面に沿って回動可能に構成されている。具体的に、図12Aに示す展開状態のユニット170は、上述した構造体100における第1補強材110及び第2補強材130と同様の形状であり、第1補強材110の第1延在部111が第1方向X1に延在し、かつ、第2補強材130の第3延在部131が第2方向Y1に延在している。図12Bに示す折り畳み状態のユニット170は、展開状態のユニット170から、第2補強材130の第3延在部131を第1補強材110の第1延在部111に対して右回りに回動させた状態である。このように、ユニット170は、展開状態よりも折り畳み状態の方が、第3方向Z1に沿う全長は変化せずに、第1方向X1と第2方向Y1とを含む平面内での面積を小さくすることができるので、全体としての体積を小さくすることができる。これにより、ユニット170を運搬する際の積載効率が向上する。
<施工方法>
図13は、第3の態様としての施工方法を説明するフローチャートである。本施工方法は、コンクリート等の硬化物を補強するための構造体の施工方法であり、一例として上述の構造体100の施工方法を説明する。図13に示すように、本施工方法は、ユニット形成工程S1と、ユニット展開工程S2と、取り付け工程S3と、を含む。
ユニット形成工程S1は、上述のユニット170を形成する工程である。具体的に、まず、第1補強材110と、第2補強材130と、を用意する。第1補強材110は、異なる2方向に延在する第1延在部111及び第2延在部121を有する。第2補強材130は、異なる2方向に延在する第3延在部131及び第4延在部141を有する。次に、第1補強材110の第1延在部111に、第2補強材130の第3延在部131を取り付けて一体化させることで、ユニット170を形成する。詳細には、第1補強材110の第2延在部121と、第2補強材130の第4延在部141と、が同一方向に延在し、かつ、第1補強材110の第1延在部111と、第2補強材130の第3延在部131と、が互いに回動可能となるように取り付けることで、ユニット170を形成する。ユニット形成工程S1は、通常、施工現場に運搬する前に実行されるが、施工現場で実行されてもよい。
ユニット形成工程S1の後、工場などからトラック等により施工現場に運搬する場合、ユニット170を折り畳み状態で積載して運搬することが好ましい。これにより、ユニット170の体積を展開状態よりも小さくすることができるので、ユニット170を積載するための容積を小さくすることができる。よって、ユニット170を運搬する際の積載効率が向上する。
ユニット展開工程S2は、ユニット170を展開状態に遷移させる工程である。具体的に、施工現場に運搬された折り畳み状態のユニット170を、クレーン等で吊り上げて取り出し、第2補強材130を第1補強材110に対して回動させることで、展開状態に遷移させる。すなわち、ユニット170を、第1補強材110の第2延在部121と第2補強材130の第4延在部141とが同じ方向(例えば第3方向Z1)に延在し、かつ、第1補強材110の第1延在部111と第2補強材130の第3延在部131とが互いに異なる方向(例えば第1方向X1及び第2方向Y1)に延在する状態に遷移させる。
取り付け工程S3は、展開状態のユニット170に対して、第3補強材150を取り付ける工程である。具体的に、展開状態のユニット170に対して、第1補強材110の第2延在部121及び第2補強材130の第4延在部141の周囲に、第3補強材150を取り付ける。より具体的に、第1補強材110の第2延在部121に第3補強材150の第5延在部151を交差させた状態で外側から取り付け、かつ、第2補強材130の第4延在部141に第3補強材150の第6延在部161を交差させた状態で外側から取り付ける。これにより、第3補強材150によって展開状態で保持されたユニット170と、第3補強材150と、を有する構造体100が施工される。
取り付け工程S3において、第3補強材150はフープ筋であることが好ましい。具体的に、フープ筋である第3補強材150を、ユニット170の周囲を全周に亘って包囲するように取り付けることが好ましい。これにより、構造体100により硬化物が補強されてなる構造物の強度をより一層向上させることができる。また、第3補強材150を所定の寸法に従ったフープ筋とすれば、構造体100の寸法精度を向上させることができるので、例えば構造体100を別の構造体と接合する際などに、寸法誤差の少ない施工を可能とすることができる。さらに、構造体100をクレーン等で吊り上げた際の形状を安定させることができる。
本発明は、上述した各態様で特定された構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、第1の態様における第1構造体10及び第2構造体20は直方体状に限らず、円柱状等であってもよい。また、第1構造体10及び第2構造体20は立体的な形状に限らず、平面(2次元)的な形状であってもよい。この場合、例えば壁用の補強鉄筋などに適用可能である。また、1つの第1構造体10に対して複数の第2構造体20を組み合わせるようにしてもよいし、逆に、複数の第1構造体10に対して1つの第2構造体20を組み合わせるようにしてもよい。
また、第2の態様及び第3の態様における、第1方向X1と、第2方向Y1と、第3方向Z1とは、それぞれ互いに略直交するとして説明したが、それぞれ互いに異なる方向であればよい。また、第1方向X1及び第2方向Y1は略水平方向であり、第3方向Z1は略鉛直方向であるとして説明したが、第1方向X1、第2方向Y1、及び第3方向Z1の向きは特に限定されない。
また、第2の態様及び第3の態様では、第1補強材110及び第2補強材130がフープ状であるとして説明したが、第1補強材110及び第2補強材130の少なくともいずれか一方は、必ずしもフープ状でなくてもよい。ただし、第1補強材110及び第2補強材130がフープ状であれば、構造体100の一体性がより向上するため、構造体100の施工上の安定性を向上させることができる。