JP2020002196A - ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐候性を有しながら、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性に優れる樹脂フィルムを提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤とを含有し、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が80%以上である、ポリイミドフィルム。【化1】(一般式(1)中の各符号は、明細書に記載の通りである。)【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
薄い板ガラスは、硬度、耐熱性等に優れている反面、曲げにくく、落とすと割れやすく、加工性に問題があり、また、プラスチック製品と比較して重いといった欠点があった。このため、近年、樹脂基材や樹脂フィルム等の樹脂製品が、加工性、軽量化の観点でガラス製品と置き換わりつつあり、ガラス代替製品となる樹脂製品の研究が行われてきている。
一方、液晶や有機EL等のディスプレイや、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスには従来、薄い板ガラス上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、この薄い板ガラスを樹脂フィルムに変えることにより、パネル自体の耐衝撃性の強化、フレキシブル化、薄型化や軽量化が図れる。
ポリイミド樹脂は、耐熱性、寸法安定性、絶縁特性といった性能に優れることから、半導体素子の中のチップコーティング膜や、フレキシブルプリント配線板の基材等、電子部品の絶縁材料として盛んに利用されており、近年においては、ガラス代替製品として、透明性を向上したポリイミド樹脂を用いた樹脂製品の研究も行われている。
しかし、ポリイミド樹脂は一般に紫外線領域に吸収を有しているため、屋外で使用した場合に変色しやすいという問題があり、耐候性の向上が求められている。
特許文献1には、光照射試験後にも高い透明性を有する樹脂フィルムとして、例えば、高い透明性を有するポリイミド系高分子を使用するとともに、紫外線吸収剤を樹脂フィルム中に含ませることが記載されている。
国際公開第2017/014279号
しかしながら、紫外線吸収剤を含有する従来のポリイミドフィルムは、長期間保存した際にヘイズ値が上昇する場合があった。
また、画面が折り畳めるモバイル機器に搭載されるフレキシブルディスプレイには、繰り返し屈曲させても表示不良が発生しないことが求められるため、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材においても、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性(以下、動的屈曲耐性という場合がある)が求められる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、優れた耐候性を有しながら、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性に優れる樹脂フィルムを提供することを主目的とする。
また、本発明は、前記樹脂フィルムを有する積層体、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材、並びに、前記樹脂フィルム又は前記積層体を有するタッチパネル部材、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
本発明のポリイミドフィルムは、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、
炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤とを含有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が80%以上である。
(一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、下記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
(一般式(A)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合を表し、R10はそれぞれ独立して、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基を表し、R11はそれぞれ独立して、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の2価の飽和脂肪族炭化水素基を表す。kは0〜200の数である。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
本発明のポリイミドフィルムは、前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾエート系紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種であり、少なくとも1つの芳香族環上の少なくとも1つの水素原子が、−O−結合又は−CO−O−結合を含んでいても良い炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基によって置換された構造を有することが、長期保存後のポリイミドフィルムのヘイズ値の上昇を抑制する点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、Rの総量の2.5モル%以上10モル%未満が、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基であり、残りのRが、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記残りのRのうちの半分よりも多くが、1,4−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性が向上し、表面硬度の低下を抑制する点から好ましい。
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
本発明のポリイミドフィルムは、前記一般式(A)で表されるジアミンにおいて、前記一般式(A)中のkが0又は1であることが、屈曲耐性と表面硬度の両立の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度が20.0以下であり、
JIS K7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値が2.0%以下であり、
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.040以下であることが、光透過性の点、及び光学的歪みを低減する点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、少なくとも一方の面において、JIS B0601に準拠して測定される算術平均粗さRaが10nm以下であることが、透明性の低下を防ぎ、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ用表面材として用いたときのディスプレイの視認性に優れる点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRが、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることが、光透過性と、屈曲耐性及び表面硬度との点から好ましい。
本発明の積層体は、前記本発明のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
本発明の積層体は、前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物であることが、密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から好ましい。
本発明は、前記本発明のポリイミドフィルム、又は、前記本発明の積層体であるディスプレイ用表面材を提供する。
本発明のディスプレイ用表面材は、フレキシブルディスプレイ用とすることができる。
本発明は、前記本発明のポリイミドフィルム、又は、前記本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部を有する透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備えるタッチパネル部材を提供する。
本発明は、前記本発明のポリイミドフィルム、又は、前記本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、
を有する液晶表示装置を提供する。
本発明は、前記本発明のポリイミドフィルム、又は、前記本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、
を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
本発明によれば、優れた耐候性を有しながら、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性に優れる樹脂フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、前記樹脂フィルムを有する積層体、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材、並びに、前記樹脂フィルム又は前記積層体を有するタッチパネル部材、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
本発明の積層体の一例を示す概略断面図である。 本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図である。 図2に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図である。 図2及び図3に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の別の一例を示す概略平面図である。 本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。
I.ポリイミドフィルム
本発明のポリイミドフィルムは、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、
炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤とを含有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が80%以上である、ポリイミドフィルムである。
(一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、下記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
(一般式(A)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合を表し、R10はそれぞれ独立して、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基を表し、R11はそれぞれ独立して、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の2価の飽和脂肪族炭化水素基を表す。kは0〜200の数である。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
本発明のポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤とを組み合わせて含有することにより、優れた耐候性を有しながら、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、動的屈曲耐性に優れる。この理由については、以下のように推定される。
本発明のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤を含有することにより、耐候性が向上したものである。中でも、本発明のポリイミドフィルムは、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する前記一般式(A)で表されるジアミンに由来する骨格を特定量導入したポリイミドと、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤とを組み合わせて含むことにより、ポリイミドフィルム中のポリイミドと紫外線吸収剤との相溶性が優れると考えられる。本発明のポリイミドフィルムにおいては、ポリイミドと紫外線吸収剤との相溶性が優れることにより、紫外線吸収剤がブリードアウトし難く、長期間保存した場合であっても紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制されるため、長期間保存後のヘイズ値の上昇が抑制されると考えられる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、芳香族環又は脂肪族環を含む剛直な分子骨格の間に、前記一般式(A)で表されるジアミンに由来する柔軟な骨格を特定量導入したポリイミドを含有することにより、分子運動による応力緩和が可能になり、屈曲時にフィルムにかかる応力が低減されるため、動的屈曲耐性に優れると推定される。
更に、本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミド中に芳香族環又は脂肪族環を含む剛直な分子骨格を有することにより、表面硬度が維持されるため、保護フィルムとしての十分な表面硬度と、動的屈曲耐性との両立が可能である。
以下、本発明に係るポリイミドフィルムについて詳細に説明する。
本発明に係るポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤とを含有するものである。本発明の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良いし、他の構成を有していてもよい。
1.ポリイミド
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。本発明に用いるポリイミドとしては、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によってポリアミド酸を得て、イミド化することにより得られるポリイミドが好ましい。
本発明に係るポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する。
前記一般式(1)のRにおけるテトラカルボン酸残基は、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基、又は、脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基とすることができる。
芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、中でも、光透過性の点、及び屈曲耐性及び表面硬度の点から、前記一般式(1)中のRがシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることが好ましい。
前記Rにおいて、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
特に光透過性と表面硬度のバランスが良い点から、前記一般式(1)中のRは、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることがより好ましく、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、及び4,4’−オキシジフタル酸無水物残基から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることがより更に好ましい。
前記一般式(1)のRとしては、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、及び、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基からなる群から選択される少なくとも一種のような剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選択される少なくとも一種のような光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)とを混合して用いることも好ましい。この場合、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)との含有比率は、光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、より更に0.3モル以上4モル以下であることが好ましい。
中でも、前記グループBとしては、フッ素原子を含む、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、及び3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基の少なくとも一種を用いることが、表面硬度と光透過性の向上の点から好ましい。
前記一般式(1)のRにおける、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基の含有割合は、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下であり、中でも、動的屈曲耐性と表面硬度の点から、好ましくは2.5モル%以上40モル%以下であり、動的屈曲耐性と表面硬度の点、及び光学特性の点から、より好ましくは2.5モル%以上20モル%以下であり、高温高湿環境下での動的屈曲耐性を向上し、表面硬度を向上する点から、より更に好ましくは2.5モル%以上10モル%未満である。
前記一般式(A)中のR10で表される炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。中でも、屈曲耐性、表面硬度及び光学特性の観点から、前記R10は、炭素数1以上3以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
前記一般式(A)中のR11で表される炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の2価の飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基等を挙げることができ、中でも、屈曲耐性、表面硬度及び光学特性の観点から、前記R11は、炭素数2以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素数2以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることがより好ましい。
前記一般式(A)中のkは、0以上200以下の数であり、屈曲耐性の点から、好ましくは0以上8以下の数であり、より好ましくは0以上2以下の数であり、より更に好ましくは0又は1である。前記一般式(1)中のRの総量の2.5モル%以上10モル%未満が、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基である場合において、前記一般式(A)中のkが0又は1であると、表面硬度の低下を抑制しながら、高温高湿環境下における動的屈曲耐性を向上する点、及び製膜性を向上してフィルム表面に凹凸が生じ難くなる点から好ましい。
前記一般式(A)中のLは、直接結合又は−O−結合であり、特に限定はされないが、入手容易性の観点及びフィルムのヘイズ値の上昇を抑制する観点から、直接結合であることが好ましい。
前記一般式(A)で表されるジアミンの分子量は、屈曲耐性の向上と表面硬度の両立性の点から、3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがより更に好ましく、800以下であることがより更に好ましく、500以下であることがより更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(A)で表されるジアミンとしては、具体的には、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン残基、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン及び1,3−ビス(5−アミノペンチル)テトラメチルジシロキサンから選ばれる少なくとも1種であることが、入手容易性や光透過性と表面硬度の両立の観点、屈曲耐性の観点及びフィルムのヘイズ値の上昇を抑制する観点から好ましい。
前記一般式(1)のRにおける、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミン残基は、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
前記芳香族環を有するジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等、及び、前記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1)のRにおける、ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミン残基は、脂肪族環を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
前記脂肪族環を有するジアミンとしては、例えば、trans−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1)のRは、Rの総量のうち、50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。なお、前記一般式(1)のRに、前記一般式(A)で表されるジアミン及びケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンとは異なる他のジアミン残基を含むことを妨げるものではない。当該他のジアミン残基は、Rの総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。当該他のジアミン残基としては、例えば、ケイ素原子を有さず、芳香族環及び脂肪族環を有しないジアミン残基等が挙げられる。
中でも、Rの総量(100モル%)のうち、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をxモル%(2.5≦x≦50)とすると、Rの(100−xモル%)である50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基としては、中でも、表面硬度の点、製膜性を向上してフィルム表面に凹凸が生じ難くなる点、及び光学特性の点から、1,4−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいては、前記の好ましいジアミン残基の合計が、前記R中のケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の総量のうち、50モル%以上であることが好ましく、更に70モル%以上であることが好ましく、より更に90モル%以上であることが好ましい。
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、表面硬度の低下を抑制しながら、高温高湿環境下でのポリイミドフィルムの動的屈曲耐性を向上する点、製膜性を向上してフィルム表面に凹凸が生じ難くなる点、及び光学特性の点から、前記一般式(1)中のRの総量の2.5モル%以上10モル%未満が、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基であり、残りのRが、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記残りのRのうちの半分よりも多くが、1,4−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び前記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基(以下「前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基」という場合がある)であることが好ましい。
ここで、残りのRとは、Rの総量(100モル%)のうち、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をxモル%(2.5≦x<10)とすると、Rの(100−x)モル%である90モル%超過97.5モル%以下のことをいい、前記残りのRのうちの半分よりも多くとは、Rの{(100−x)/2}モル%超過をいう。すなわち、Rの(100−x)モル%である90モル%超過97.5モル%以下がケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、Rの{(100−x)/2}モル%超過が、前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。中でも、前記残りのRのうちの前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基の割合、すなわち、前記ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の総量を100モル%としたときの前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基の割合は、表面硬度及び光透過性の点から、70モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがより更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。なお、Rは、前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基とは異なる、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有する他のジアミン残基を含有していても良い。
前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基としては、中でも、表面硬度と光透過性の点から、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び前記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。前記一般式(2)で表される2価の基としては、中でも、R及びRがパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、中でも、炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基又はパーフルオロエチル基であることがより好ましい。また、前記一般式(2)中のR及びRにおけるアルキル基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基としては、中でも光透過性の点から、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び前記一般式(2)で表される2価の基において前記一般式(2)中のR及びRがパーフルオロアルキル基である2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基がより好ましく、前記一般式(2)で表される2価の基において前記一般式(2)中のR及びRがパーフルオロアルキル基である2価の基がより更に好ましい。
前記一般式(1)のRが、前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基とは異なる、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含有する場合、その含有割合は、特に限定はされないが、表面硬度及び光透過性の点から、Rの総量(100モル%)のうち、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがより更に好ましい。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドとしては、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から、中でも、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミドであることが好ましい。前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基から選ばれる少なくとも一種を含むことにより、分子骨格が剛直となり配向性が高まり、表面硬度が向上するが、剛直な芳香族環骨格は吸収波長が長波長に伸びる傾向があり、可視光領域の透過率が低下する傾向がある。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むとポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドとしては、中でも、フッ素原子を含むポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から好ましく用いられる。
フッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
また、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、表面硬度が向上する点から、前記一般式(1)におけるR及びRの合計を100モル%としたときに、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
また、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、表面硬度と光透過性が向上する点から、Rのテトラカルボン酸残基、及びRのケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の少なくとも1つが、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましく、更に、Rのテトラカルボン酸残基、及びRのケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の両方が、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましい。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、表面硬度と光透過性が向上する点から、前記一般式(1)におけるR及びRの合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
また、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、光透過性を向上し、ヘイズ値を低減しやすい点から、Rのテトラカルボン酸残基、及びRのケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の少なくとも1つが、パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を有することが好ましく、更に、Rのテトラカルボン酸残基、及びRのケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の両方が、パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を有することが好ましい。
ポリイミドにパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むと、ポリイミドと紫外線吸収剤との相溶性が向上し、フィルム化した際のヘイズ値が低減しやすく、光学フィルムとしての特性を向上することができる。ポリイミドにパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むことで、嵩高く疎(低密度)な構造になりやすく、ポリイミド樹脂の分子鎖間の距離が広がり易くなり、ポリイミド樹脂の分子鎖間の相互作用が低下し易いことから、紫外線吸収剤がポリイミド樹脂の分子鎖間に生じる隙間に存在し易くなることで、ポリイミドと紫外線吸収剤との相溶性が向上するため、フィルム化した際のヘイズ値が低減すると推察される。
前記パーフルオロアルキル基は、特に限定はされないが、炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基が好ましい。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、中でも、前記一般式(1)におけるR及びRの合計を100モル%としたときに、パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及びパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
また、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から好ましく用いられる。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、60%以上であることが好ましく、より更に70%以上であることが好ましい。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られたポリイミドの分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
前記一般式(1)で表される構造において、nは繰り返し単位数を表し、1以上である。
ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、特に限定されないが、後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択することが好ましい。
平均繰り返し単位数は、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
なお、各繰り返し単位におけるRは各々同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位におけるRは各々同一でも異なっていても良い。
本発明に用いられるポリイミドは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを1種又は2種以上含有することができる。
また、本発明に用いられるポリイミドは、本発明の効果が損なわれない限り、その一部に前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造を有していても良い。本発明に用いられるポリイミドは、前記一般式(1)で表される構造が、ポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、芳香族環又は脂肪族環を有しないテトラカルボン酸残基等が含まれる場合や、ポリアミド構造が挙げられる。
含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
なお、ポリイミド中の各繰り返し単位の含有割合、各テトラカルボン酸残基や各ジアミン残基の含有割合(モル%)は、ポリイミド製造時には仕込みの分子量から求めることができる。ポリイミド中の各テトラカルボン酸残基や各ジアミン残基の含有割合(モル%)は、上述のようにして得られるポリイミドの分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMSを用いて求めることができる。
本発明のポリイミドフィルムに用いられるポリイミドは、ポリイミドフィルムの動的屈曲耐性の点から、重量平均分子量が60000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましく、130000以上であることがより更に好ましく、160000以上であることが特に好ましい。ポリイミドの重量平均分子量が前記下限値以上であると、ポリイミドフィルムの強度が向上し、屈曲の繰り返しにより変形又は破断が生じ難くなる。また、本発明のポリイミドフィルムに用いられるポリイミドの重量平均分子量の上限は、特に限定はされないが、通常、10000000以下であり、500000以下であることが好ましい。
なお、前記ポリイミドの重量平均分子量は、ポリイミドを溶解した溶液を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミド粉体15mgを、15000mgのN−メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、ウォーターバスで60℃に加熱しながら、スターラーを用いて回転速度200rpmで、目視で溶解を確認するまで3〜60時間撹拌することにより、ポリイミドを溶解したNMP溶液を得る。得られたNMP溶液を用いてGPCにより重量平均分子量を測定する。GPCにおいて、展開溶媒は、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
本発明のポリイミドフィルムに用いられるポリイミドとしては、NMPに溶解しないポリイミドも、動的屈曲耐性の点から好ましい。すなわち、本発明のポリイミドフィルムに用いられるポリイミドとしては、NMPに可溶であり重量平均分子量が前記下限値以上のポリイミド、及び、NMPに不溶のポリイミドからなる群から選択される1種以上であることが、動的屈曲耐性の点から好ましい。ここで、NMPに可溶か不溶かは、上述のGPC測定方法時のNMP溶液作製方法と同様の方法で、NMPにポリイミドを溶解させて判断することができる。溶剤に溶解しないポリイミドは、ポリイミドフィルムの強度の低下を抑制することができるため、屈曲の繰り返しによるフィルムの変形又は破断を生じ難くする傾向がある。
また、本発明に用いられるポリイミドは、150℃以上400℃以下の温度領域にガラス転移温度を有することが好ましい。前記ガラス転移温度が150℃以上であることにより、耐熱性に優れ、更に、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより更に好ましい。また、ガラス転移温度が400℃以下であることにより、ベーク温度を低減することができ、更に、380℃以下であることが好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミドは、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましく、これにより、ポリイミドフィルムの室温での表面硬度を向上することができる。また、本発明に用いられるポリイミドは、0℃超過150℃未満の温度領域に更にtanδ曲線のピークを有していても良い。
本発明に用いられるポリイミドのガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって得られる温度−tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))曲線のピーク温度から求められるものである。ポリイミドのガラス転移温度は、tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの温度をいう。動的粘弾性測定としては、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を−150℃〜400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。
本発明において、tanδ曲線のピークとは、極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の細かい上下変動については、前記ピークと解釈しない。
本発明に用いられるポリイミドフィルムに含まれる前記ポリイミドの含有量は、後述する紫外線吸収剤を十分に含有できるように適宜調整され、特に限定はされないが、屈曲耐性及び表面硬度の点から、90質量%以上であることが好ましく、一方で、紫外線吸収剤を十分に含有させ、耐候性を向上する点から、99.9質量%以下であることが好ましい。
2.紫外線吸収剤
本発明に係るポリイミドフィルムは、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤を含有する。前記紫外線吸収剤は、ポリイミドフィルムの波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上となるように含有されることが好ましい。また、前記紫外線吸収剤としては、波長250nm以上380nm以下に極大吸収波長を有し、且つ下記条件(i)、(ii)のいずれか一方を満たしさえすれば、一般的に紫外線吸収剤として括られるものに限らず用いることができる。
条件(i) 波長380nmの吸光度が0.005以上であり、波長380nm超過780nm以下の可視光領域における吸光度が、波長380nmの吸光度よりも小さく、波長450nmの吸光度が0.1以下
条件(ii) 波長380nmにおけるモル吸光係数が50以上500000以下であり、且つ波長450nmにおけるモル吸光係数が、波長380nmにおけるモル吸光係数以下で、10以上500000以下
なお、紫外線吸収剤の吸光度及びモル吸光係数は、紫外線吸収剤を溶媒に溶解させて、紫外可視分光法(UV‐vis)を用いて求めることができる。吸光度を求める際に紫外線吸収剤を溶解する溶媒としては、波長380nm以上780nm以下に吸光度が検出されない溶媒の中から、紫外線吸収剤を溶解可能なものを適宜選択して用いることができる。具体的には、吸収波長が紫外線領域でより短波長側にある溶媒、例えば、アセトニトリル等を好ましく用いることができ、更にジメチルアセトアミド(DMAc)等を適宜用いてもよい。また、吸光度を求める際の濃度は、通常、紫外線吸収剤1mgに対して溶媒100mlになるように調整を行う。
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノクリエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤等が挙げられ、市販品を用いても良い。
本発明に用いられる紫外線吸収剤の市販品としては、具体的には、Sumisorb 200、Sumisorb 250、Sumisorb 300、Sumisorb 340、Sumisorb 350(以上、住化ケムテックス(株)製)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;Sumisorb 130(住化ケムテックス(株)製)、ユビナール 3049((株)尾関製)、KEMISORB 11、KEMISORB 11S、KEMISORB 12、KEMISORB 111(以上、ケミプロ化成(株)製)等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;Sumisorb 400(住化ケムテックス(株)製)、KEMISORB 112、KEMISORB 113、KEMISORB 114(以上、ケミプロ化成(株)製)等のベンゾエート系紫外線吸収剤;KEMISORB 102(ケミプロ化成(株)製)等のトリアジン系紫外線吸収剤;ユビナール 3035、ユビナール 3039、ユビナール 3030(以上、(株)尾関製)等のシアノクリエート系紫外線吸収剤;KEMISTAB 29、KEMISTAB 62、KEMISTAB 77、KEMISTAB 94等のヒンダードアミン系紫外線吸収剤;Hostavin PR−25、Hostavin B−CAP(以上、クラリアントケミカルズ(株)製)等のマロン酸エステル系紫外線吸収剤;Hostavin VSU(クラリアントケミカルズ(株)製)等のシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は、ポリイミドフィルムの耐候性の点、及びヘイズ値の上昇を抑制する点から、中でも、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基を有することが好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、中でも、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドとの相溶性が良好で、ポリイミドフィルムのヘイズ値の上昇を抑制する点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾエート系紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種であり、少なくとも1つの芳香族環上の少なくとも1つの水素原子が、−O−結合又は−CO−O−結合を含んでいても良い炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基によって置換された構造を有する紫外線吸収剤が好ましく、中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
そのような好ましい紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3、−テトラメチルブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−tert−ペンチルフェニル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤を挙げることができる。
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、中でも、下記一般式(3)で表される紫外線吸収剤及び下記一般式(4)で表される紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
(一般式(3)及び一般式(4)において、Lはそれぞれ独立して直接結合又は−O−結合を表し、R20はそれぞれ独立して、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)
また、本発明に用いられる紫外線吸収剤が有する炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、ポリイミドフィルムの耐候性の点、及びヘイズ値の上昇を抑制する点から、中でも4以上8以下であることが好ましく、6以上8以下であることがより好ましい。
前記紫外線吸収剤は、製造上溶剤を乾燥させる点から、融点が100℃以上のものが好ましく、一方で、溶解性の点から前記紫外線吸収剤の融点は、200℃以下であることが好ましい。
また、前記紫外線吸収剤は、波長250nm以上380nm以下に極大吸収波長を有し、且つ波長380nmの吸光度が0.005以上であり、波長380nm超過780nm以下の可視光領域における吸光度が、波長380nmの吸光度よりも小さく、波長450nmの吸光度が0.1以下のものが好ましい。前記紫外線吸収剤の波長380nmの吸光度は、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることがより更に好ましい。また、前記紫外線吸収剤の波長450nmの吸光度は、0.01以下であることがより好ましく、0.005以下であることがより更に好ましい。
本発明に用いられるポリイミドフィルムに含まれる前記紫外線吸収剤の含有量は、特に限定はされないが、耐候性を向上する点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより更に好ましく、一方で、ポリイミドフィルムのヘイズ値の上昇を抑制する点から、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがより更に好ましい。
3.添加剤
本発明のポリイミドフィルムは、前記ポリイミド及び前記紫外線吸収剤の他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
本発明に用いられるポリイミドフィルムが、前記添加剤を含有する場合、ポリイミドフィルム中の前記添加剤の含有量は、添加剤の種類により適宜調整され、特に限定はされないが、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがより更に好ましい。
4.ポリイミドフィルムの特性
本発明のポリイミドフィルムは、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、80%以上であることが好ましい。透過率が高いと、透明性が良好になり、ガラス代替材料として好適に用いることができる。本発明のポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、更に83%以上であることが好ましく、より更に85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、更に83%以上であることが好ましく、より更に85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、厚み55μm±5μmにおいて、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、更に83%以上であることが好ましく、より更に85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、20.0以下であることが好ましい。黄色度が低いと、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる。JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、中でも11.0以下であることが好ましく、7.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることが更に好ましく、4.0以下であることがより更に好ましく、3.0以下であることが特に好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が20.0以下であることが好ましく、11.0以下であることがより好ましく、7.0以下であることが更に好ましく、5.0以下であることがより更に好ましく、4.0以下であることが特に好ましく、3.0以下であることが最も好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、厚み55μm±5μmにおいて、JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、20.0以下であることが好ましく、11.0以下であることがより好ましく、7.0以下であることが更に好ましく、5.0以下であることがより更に好ましく、4.0以下であることが特に好ましく、3.0以下であることが最も好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、QUV耐候性試験機を用い、1W/m/nmに設定した出力で、UVB313nmランプを使用して、24時間照射することにより行う耐候性試験の前後のいずれにおいても、JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、20.0以下であることが好ましく、11.0以下であることがより好ましく、7.0以下であることが更に好ましく、5.0以下であることがより更に好ましく、4.0以下であることが特に好ましく、3.0以下であることが最も好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、JIS K7373:2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの250nm以上800nm以下の間の1nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))が0.60以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.05以下であることがより更に好ましく、0.04以下であることが特に好ましい。
なお、本発明において、前記黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた値とする。
本発明のポリイミドフィルムは、前記耐候性試験の前後のいずれにおいても、前記JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))が上記上限値以下であることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、前記耐候性試験前後でのYI値の差(△YI)が、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがより更に好ましい。
本発明のポリイミドフィルムのヘイズ値は、光透過性の点から、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることが更に好ましく、1.0%以下であることがより更に好ましい。当該ヘイズ値は、ポリイミドフィルムの厚みが5μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、熱風循環式加熱装置を用いて70℃±2℃の環境下にポリイミドフィルムを設置し、240時間放置することにより行う長期信頼性試験前後のいずれにおいても、ヘイズ値が前記上限値以下であることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、前記長期信頼性試験前後での前記ヘイズ値の差(△ヘイズ値)が、0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましく、0.2%以下であることがより更に好ましい。
なお、前記ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、150℃以上400℃以下の温度領域にガラス転移温度を有することが好ましい。前記ガラス転移温度を有する温度領域は、耐熱性に優れる点から、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがより更に好ましく、ベーク温度を低減することができる点から、380℃以下であることがより好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、表面硬度の点から、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、前述したポリイミドのガラス転移温度と同様にして測定することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を8mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が、0.8GPa以上5.2GPa以下であることが、動的屈曲耐性及び表面硬度の点から好ましく、更に、1.3GPa以上5.0GPa以下であることが好ましく、1.8GPa以上4.5GPa以下であることがより好ましく、2.0GPa以上4.0GPa以下であることがより更に好ましい。本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミド中のジアミン残基として前記群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を特定量含むことにより、分子鎖同士がパッキングしているため、引張弾性率が低い場合であっても、表面硬度の低下を抑制することができると推定される。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度8mm/分、チャック間距離は20mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが55μm±5μmであることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、光学的歪みが低減する点から、波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は0.040以下であることが好ましく、0.035以下であることがより好ましく、更に0.030以下であることが好ましく、更に0.025以下であることが好ましく、より更に0.020以下であることが好ましい。本発明のポリイミドフィルムの光学的歪みが低減したものであると、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ用表面材として用いた場合には、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。特に、本発明のポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.040以下であると、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ表面に設置して、偏光サングラスをかけてディスプレイを見た場合に、虹ムラの発生を抑制することができる点から好ましい。さらに、発明のポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であると、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ表面に設置して、ディスプレイを斜めから見たときの色再現性が向上する点から好ましい。
なお、本発明のポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、ポリイミドフィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光をポリイミドフィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、少なくとも一方の面におけるJIS B0601に準拠して測定する算術平均粗さRaが10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、2nm以下であることがより更に好ましい。前記算術平均粗さRaが前記上限値以下であることにより、フィルムの透明性の低下を防ぐことができ、また、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ用表面材として用いる場合において、前記算術平均粗さRaが前記上限値以下である面を視認される側となるように配置することで、ディスプレイの視認性を向上することができる。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、鉛筆硬度は3B以上であることが好ましく、更にB以上であることが好ましく、更にHB以上であることが好ましく、更にF以上であることが好ましく、更にH以上であることが好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。試験機としては、例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムにおいては、動的屈曲耐性に優れる点から、25℃、50%相対湿度(RH)の環境下で、下記動的屈曲試験方法に従って動的屈曲試験を行った場合に、ポリイミドフィルムが破断するまでの回数が80万回超過であることが好ましく、90万回以上であることがより好ましく、100万回以上であることがより更に好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムにおいては、高温高湿環境下での動的屈曲耐性に優れる点から、60℃、93%相対湿度(RH)の環境下で、下記動的屈曲試験方法に従って動的屈曲試験を行った場合に、ポリイミドフィルムが破断するまでの回数が80万回超過であることが好ましく、90万回以上であることがより好ましく、100万回以上であることがより更に好ましい。
[動的屈曲試験方法]
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定する。また、試験片を長辺の半分の位置で折り曲げ、折り畳まれた状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなり、試験片の折り曲げ部分の曲率半径が3mmとなるように折り畳まれた状態を設定する。その後、平坦に開いた状態から前記折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に90回の屈曲回数で破断するまで屈曲を繰り返し、試験片が破断するまでの屈曲回数を測定する。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のケイ素原子(Si)の原子%は0.1原子%以上10原子%以下が好ましく、0.2原子%以上5原子%以下がさらに好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
また好ましい一形態としては、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上1以下であることが好ましく、更に0.05以上0.8以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)とケイ素原子数(Si)の比率(F/Si)が、1以上50以下であることが好ましく、更に3以上30以下であることが好ましい。これらの範囲であることにより、本発明のポリイミドフィルムの表面にハードコート層等の機能層を形成する際の密着性が良好となる。
5.ポリイミドフィルムの構成
本発明のポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、1μm以上であることが好ましく、更に5μm以上であることが好ましく、より更に10μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、ポリイミドフィルムの厚さは、200μm以下であることが好ましく、更に150μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましい。フィルムの厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下し易いが、本発明のポリイミドフィルムは、厚さが大きい場合においても動的屈曲耐性を向上することができ、中でも、厚さ30μm以上100μm以下において、動的屈曲耐性を向上する効果が高い。
また、本発明のポリイミドフィルムには、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
6.ポリイミドフィルムの製造方法
本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、前述した本発明のポリイミドフィルムを製造することができる方法であれば、特に限定はされないが、前記ポリイミドと、前記紫外線吸収剤とを含有するポリイミド樹脂組成物を用いる方法が好ましい。ポリイミド樹脂組成物を用いる方法によれば、ポリイミドフィルム中の前記紫外線吸収剤の分解を抑制し、ポリイミドフィルムの耐候性を向上するができ、また、ポリイミドフィルムの黄色度(YI値)を低減しやすく、更に、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面の算術平均粗さRaを低減しやすい。
<第1の製造方法>
ポリイミド樹脂組成物を用いて本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、例えば、第1の製造方法として、
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤と、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布した後、溶剤を乾燥させてポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
前記第1の製造方法においては、更に、前記ポリイミド樹脂塗膜を延伸する工程(以下、延伸工程という)を有していてもよい。
以下、前記第1の製造方法の各工程について詳細に説明する。
(1)ポリイミド樹脂組成物調製工程
前記第1の製造方法において調製するポリイミド樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて更に添加剤等を含有していてもよい。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、前記ポリイミドフィルムにおいて説明したのと同様のポリイミドを用いることができる。前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、例えば、下記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体をイミド化することにより得ることができる。
(一般式(1’)において、R、R及びnは、前記一般式(1)と同様である。)
前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体は、前記一般式(1’)のRにおけるテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸成分と、前記一般式(1’)のRにおけるジアミン残基となるジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。
ここで、前記一般式(1’)のR、R及びnは、前記ポリイミドにおいて説明した前記一般式(1)のR、R及びnと同様のものを用いることができる。
前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体は、フィルムとした際の強度及び動的屈曲耐性の点から、数平均分子量が60000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましく、130000以上であることがより更に好ましく、160000以上であることが特に好ましい。一方、数平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
また、前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体は、フィルムとした際の強度及び動的屈曲耐性の点から、重量平均分子量が、60000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましく、130000以上であることがより更に好ましく、160000以上であることが特に好ましいい。一方、重量平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
前記ポリイミド前駆体溶液は、上述のテトラカルボン酸二無水物と、上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られる。ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成に用いる溶剤としては、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましく、中でも、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンもしくはこれらの組み合わせを用いることがより好ましい。なお、有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
前記ポリイミド前駆体溶液は、少なくとも2種のジアミンを組み合わせて調製されるが、少なくとも2種のジアミンの混合溶液に酸二無水物を添加し、ポリアミド酸を合成してもよいし、少なくとも2種のジアミン成分を適切なモル比で段階を踏んで反応液に添加し、ある程度、各原料が高分子鎖へ組み込まれるシーケンスをコントロールしてもよい。
例えば、前記一般式(A)で表されるジアミンが溶解された反応液に、前記一般式(A)で表されるジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に、前記一般式(A)で表されるジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、前記一般式(A)で表されるジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。
このような方法でポリアミド酸を重合することは、前記一般式(A)で表されるジアミンの残基を有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、前記紫外線吸収剤との相溶性を向上し、表面硬度を維持しつつ屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
前記ポリイミド前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)中のジアミンのモル数をX、テトラカルボン酸二無水物のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9以上1.1以下とすることが好ましく、0.95以上1.05以下とすることがより好ましく、0.97以上1.03以下とすることがさらに好ましく、0.99以上1.01以下とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
前記ポリイミド前駆体溶液の25℃での粘度は、取扱い性の点から、500cps以上200000cps以下であることが好ましい。
なお、本発明において、溶液又は組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で測定することができる。
前記第1の製造方法において、前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体をイミド化する方法としては、化学イミド化剤を用いて行う化学イミド化が好ましい。化学イミド化を行う場合は、脱水触媒としてピリジンやβ―ピコリン酸等のアミン、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、無水酢酸等の酸無水物等、公知の化合物を用いても良い。酸無水物としては無水酢酸に限らず、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられるが特に限定されない。また、その際にピリジンやβ―ピコリン酸等の3級アミンを併用してもよい。ただし、これらアミン類は、フィルム中に残存すると光学特性、特に黄色度(YI値)を低下させるため、前駆体からポリイミドへと反応させた反応液をそのままキャストして製膜するのではなく、再沈殿などにより精製し、ポリイミド以外の成分をそれぞれ、ポリイミド全重量の100ppm以下まで除去してから製膜することが好ましい。
前記ポリイミド前駆体の化学イミド化を行う反応液に用いる有機溶剤としては、例えば、前記ポリイミド前駆体の合成に用いる溶剤と同様のものを用いることができる。
ポリイミド樹脂組成物調製工程において、反応液から精製した前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを再溶解させる際に用いられる有機溶剤としては、当該ポリイミドが25℃で5質量%以上溶解するような溶剤溶解性を有する有機溶剤を適宜選択して用いることができ、特に限定はされない。例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−ノルマル−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、オルト−ジクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ノルマル−ブチル、酢酸ノルマル−プロピル、酢酸ノルマル−ペンチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、1.4−ジオキサン、テトラクロルエチレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル−ノルマル−ブチルケトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びこれらの混合溶剤等が挙げられ、中でも、ジクロロメタン、酢酸ノルマル−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。
ポリイミド樹脂組成物調製工程においては、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを、前記有機溶剤に溶解させたポリイミド溶液を調製した後、当該ポリイミド溶液に、前記紫外線吸収剤と、必要に応じて更に添加剤等を含有させることにより、前記ポリイミド樹脂組成物を調製することが好ましい。
前記ポリイミド溶液の粘度は、取扱い性の点、及びポリイミド樹脂組成物としたときに均一な塗膜を形成しやすい点から、500cps以上50000cps以下であることが好ましく、1000cps以上10000cps以下であることがより好ましい。
前記紫外線吸収剤及び前記添加剤としては、前記ポリイミドフィルムで説明したものと同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド樹脂組成物の全固形分中の前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドの含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミドフィルムを形成する点から、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより更に好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよい。
前記ポリイミド樹脂組成物の全固形分中の前記紫外線吸収剤の含有量は、ポリイミドフィルムの耐候性を向上する点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより更に好ましく、一方で、ポリイミドフィルムのヘイズ値の上昇を抑制する点から、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがより更に好ましい。
なお、本発明において固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。
前記ポリイミド樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、60質量%以上であることが好ましく、更に70質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
また、前記ポリイミド樹脂組成物は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。
本発明において、組成物中の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
前述のように含有水分量1000ppm以下とするには、使用する有機溶剤を脱水したり、水分量が管理されたものを用いた上で、湿度5%以下の環境下で取り扱うことが好ましい。
(2)ポリイミド樹脂塗膜形成工程
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
前記塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
前記ポリイミド樹脂塗膜形成工程において、溶剤を乾燥する方法は、前記ポリイミド樹脂組成物に含まれる有機溶剤の沸点に応じて適宜調製され、特に限定はされないが、前記紫外線吸収剤の分解を抑制する点から、200℃以下で乾燥することが好ましい。
また、前記ポリイミド樹脂塗膜形成工程では、タックフリーとなるまで塗膜を乾燥した後、残留溶剤を更に低減させるためにより高温で塗膜を乾燥することが、ポリイミドフィルムの屈曲耐性を向上する点から好ましい。
例えば、前記ポリイミド樹脂組成物に含まれる有機溶剤の沸点が100℃未満の場合は、前記ポリイミド樹脂塗膜がタックフリーとなるまで乾燥する際の乾燥条件としては、常圧下、30℃以上80℃未満とすることができ、或いは、自然乾燥しても良い。前記ポリイミド樹脂組成物に含まれる有機溶剤の沸点が100℃未満の場合に、前記ポリイミド樹脂塗膜中の残留溶剤量を更に低減させるためには、前記ポリイミド樹脂塗膜をタックフリーとなるまで乾燥した後、150℃以上200℃以下で、好ましくは60秒〜180分、より好ましくは90秒〜120分乾燥することが好ましい。
前記有機溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はないが、加熱して乾燥する場合は、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが最も好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
(3)延伸工程
前記第1の製造方法は、更に前記ポリイミド樹脂塗膜を延伸する工程を有していてもよい。当該延伸工程を有することにより、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上することができる。
前記第1の製造方法では、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミドのガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
ポリイミドフィルムの延伸倍率は、好ましくは101%以上10000%以下であり、さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの表面硬度をより向上することができる。
延伸時におけるポリイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
<第2の製造方法>
本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、第2の製造方法として、
前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体と、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程という)と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法を挙げることもできる。
前記第2の製造方法は、ポリイミドフィルムの複屈折率を低減しやすい点から好ましい。
以下、前記第2の製造方法の各工程について詳細に説明する。
(1)ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程
前記第2の製造方法のポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程では、前記第1の製造方法のポリイミド樹脂組成物調製工程において、ポリイミド前駆体溶液を製造する方法と同様の方法により製造したポリイミド前駆体溶液に、前記紫外線吸収剤と、必要に応じて更に添加剤を含有させることにより、ポリイミド前駆体樹脂組成物を調製することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の全固形分中の前記ポリイミド前駆体の含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミドフィルムを形成する点から、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより更に好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の全固形分中の前記紫外線吸収剤の含有量は、ポリイミドフィルムの耐候性を向上する点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより更に好ましく、一方で、ポリイミドフィルムのヘイズ値の上昇を抑制する点から、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがより更に好ましい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、50質量%以上であることが好ましく、更に60質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。ポリイミド前駆体樹脂組成物中に水分を多く含むと、ポリイミド前駆体が分解しやすくなる恐れがある。前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量を1000ppm以下とする方法としては、前記第1の製造方法において、前記ポリイミド樹脂組成物の含有水分量を1000ppm以下とする方法と同様の方法を用いることができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上200000cps以下であることが好ましい。
(2)ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程
前記第2の製造方法におけるポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程において、支持体や、塗布方法は、前記第1の製造方法のポリイミド樹脂塗膜形成工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布した後は、塗膜がタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30℃以上120℃以下で前記塗膜中の溶剤を乾燥する。溶剤の乾燥温度を150℃以下とすることにより、ポリアミド酸のイミド化を抑制することができる。
乾燥時間は、ポリイミド前駆体樹脂塗膜の膜厚や、溶剤の種類、乾燥温度等に応じて適宜調整されれば良いが、通常30秒〜240分、好ましくは1分〜180分、より好ましくは90秒〜120分とすることが好ましい。上限値を超える場合には、ポリイミドフィルムの作製効率の点から好ましくない。一方、下限値を下回る場合には、急激な溶剤の乾燥によって、得られるポリイミドフィルムの外観等に影響を与える恐れがある。
(3)イミド化工程
前記第2の製造方法においては、加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する。
前記第2の製造方法において、延伸工程を有する場合、イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
イミド化の温度は、ポリイミド前駆体の構造に合わせて適宜選択されれば良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
昇温速度は、得られるポリイミドフィルムの膜厚によって適宜選択することが好ましく、ポリイミドフィルムの膜厚が厚い場合には、昇温速度を遅くすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
昇温は、連続的でも段階的でもよいが、連続的とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化のコントロールの面から好ましい。また、上述の全温度範囲において、昇温速度を一定としてもよく、また途中で変化させてもよい。
イミド化の昇温時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が500ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
イミド化のための加熱方法は、上記温度で昇温が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、加熱炉、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を用いることが可能である。
中でも、延伸工程前に、ポリイミド前駆体のイミド化率を50%以上とすることがより好ましい。延伸工程前にイミド化率を50%以上とすることにより、当該工程後に延伸を行い、その後さらに高い温度で一定時間加熱を行い、イミド化を行った場合であっても、フィルムの外観不良や白化が抑制される。中でもポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から、延伸工程前に、当該イミド化工程において、イミド化率を80%以上とすることが好ましく、90%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。イミド化後に延伸することにより、剛直な高分子鎖が配向しやすいことから表面硬度が向上すると推定される。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
最終的なポリイミドフィルムを得るには、イミド化を90%以上、さらには95%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分〜180分、更に、5分〜150分とすることが好ましい。
(4)延伸工程
前記第2の製造方法においては、更に、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程を有する場合は、中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から好ましい。前記第2の製造方法における延伸工程において、塗膜の延伸方法は、前記第1の製造方法における延伸工程で説明した方法と同様にすることができる。
前記第2の製造方法において、延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
7.ポリイミドフィルムの用途
本発明のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本発明のポリイミドフィルムは、耐候性に優れ、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制されたものであり、動的屈曲耐性に優れるため、ディスプレイ用表面材として好適に用いることができ、特に、フレキシブルディスプレイ用の表面材として好適に用いることができ、折り畳み可能なフォルダブルディスプレイ用の表面材としても好適に用いることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本発明のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
II.積層体
本発明の積層体は、前述した本発明のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
図1に本発明の積層体の一例の概略断面図を示す。図1に示す積層体10は、前記本発明のポリイミドフィルム1と、ハードコート層2とを有する。
本発明の積層体は、前述した本発明のポリイミドフィルムを有するものであるため、耐候性に優れ、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、動的屈曲耐性が向上したものであり、更にハードコート層を有するため、表面硬度がより向上したものである。
1.ポリイミドフィルム
本発明の積層体に用いられるポリイミドフィルムとしては、前述した本発明のポリイミドフィルムを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
2.ハードコート層
本発明の積層体に用いられるハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。
(1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、更に、密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物が好ましい。例えば、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
前記ラジカル重合性化合物としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼンなどのビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(エチレンオキサイド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなど)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
(2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記脂環族エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(UVR−6105、UVR−6107、UVR−6110)、ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアディペート(UVR−6128)(以上、カッコ内は商品名で、ダウ・ケミカル製である。)が挙げられる。
また、上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−512、デナコールEX−521)、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−421)、グリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−313、デナコールEX−314)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(デナコールEX−321)、レソルチノールジグリシジルエーテル(デナコールEX−201)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−211)、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(デナコールEX―212)、ヒドロジビスフェノールAジグリシジルエーテル(デナコールEX−252)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、デナコールEX−811)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX―850、デナコールEX―851、デナコールEX―821)、プロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―911)、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―941、デナコールEX−920)、アリルグリシジルエーテル(デナコールEX−111)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(デナコールEX−121)、フェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−141)、フェノールグリシジルエーテル(デナコールEX−145)、ブチルフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−146)、ジグリシジルフタレート(デナコールEX−721)、ヒドロキノンジグリシジルエーテル(デナコールEX−203)、ジグリシジルテレフタレート(デナコールEX−711)、グリシジルフタルイミド(デナコールEX−731)、ジブロモフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−147)、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−221) (以上、カッコ内は商品名で、ナガセケムテックス製である。)が挙げられる。
また、その他の市販品のエポキシ樹脂としては、商品名エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828EL、エピコート828XA、エピコート834、エピコート801、エピコート801P、エピコート802、エピコート815、エピコート815XA、エピコート816A、エピコート819、エピコート834X90、エピコート1001B80、エピコート1001X70、エピコート1001X75、エピコート1001T75、エピコート806、エピコート806P、エピコート807、エピコート152、エピコート154、エピコート871、エピコート191P、エピコートYX310、エピコートDX255、エピコートYX8000、エピコートYX8034等(以上商品名、ジャパンエポキシレジン製)が挙げられる。
オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101)、1,4−ビス−3−エチルオキセタン−3−イルメトキシメチルベンゼン(OXT−121)、ビス−1−エチル−3−オキセタニルメチルエーテル(OXT−221)、3−エチル−3−2−エチルへキシロキシメチルオキセタン(OXT−212)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211)(以上、カッコ内は商品名で東亜合成製である。)や、商品名エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上商品名、宇部興産製)が挙げられる。
(3)重合開始剤
本発明に用いられるハードコート層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記以外にも、市販品が使用でき、具体的には、チバ・ジャパン(株)製のイルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(4)添加剤
本発明に用いられるハードコート層は、前記重合物の他に、必要に応じて、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レベリング剤、各種増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
3.積層体の構成
本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とを有するものであれば特に限定はされず、図1に示すように、前記ポリイミドフィルムの一方の面側に前記ハードコート層が積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が積層されたものであってもよい。また、本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、例えば、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよい。また、本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とが隣接して位置するものであってもよい。
本発明の積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、10μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に250μm以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、各ハードコート層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面にハードコート層を形成しても良い。
4.積層体の特性
本発明の積層体は、ハードコート層側表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、更に83%以上であることが好ましく、更に85%以上であることが好ましく、より更に90%以上であることが好ましい。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。
本発明の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることがより更に好ましく、10以下であることが特に好ましい。
本発明の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本発明の積層体のヘイズ値は、光透過性の点から、10%以下であることが好ましく、8%以下であることが更に好ましく、5%以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体のヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本発明の積層体の波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、0.040以下であることが好ましく、0.035以下であることが好ましく、更に0.030以下であることが好ましく、より更に0.020以下であることが好ましい。
本発明の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
5.積層体の用途
本発明の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本発明のポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
6.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法としては、例えば、
前記本発明のポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等を含有していてもよい。
ここで、前記ハードコート層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記ハードコート層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物を、公知の塗布手段により塗布する方法が挙げられる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜は必要に応じて乾燥することにより溶剤を除去する。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃以上110℃以下で乾燥させることが好ましい。
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性樹脂組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成することができる。
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
III.ディスプレイ用表面材
本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は本発明の積層体である。
本発明のディスプレイ用表面材は、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられる。本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルム及び本発明の積層体と同様に、耐候性に優れ、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、動的屈曲耐性に優れ、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
本発明のディスプレイ用表面材は、公知の各種ディスプレイに用いることができ、特に限定はされないが、例えば、前記本発明のポリイミドフィルムの用途で説明したディスプレイ等に用いることができる。
なお、本発明のディスプレイ用表面材が前記本発明の積層体である場合、ディスプレイの表面に配置した後の最表面となる面は、ポリイミドフィルム側の表面であってもよいし、ハードコート層側の表面であってもよい。中でも、ハードコート層側の表面が、より表側の面となるように本発明のディスプレイ用表面材を配置することが好ましい。また、本発明のディスプレイ用表面材は、最表面に指紋付着防止層を有するものであっても良い。
また、本発明のディスプレイ用表面材をディスプレイの表面に配置する方法としては、特に限定はされないが、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。前記接着層としては、ディスプレイ用表面材の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
IV.タッチパネル部材
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部を有する透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備える。
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体を備えるものであることから、耐候性に優れ、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、動的屈曲耐性に優れ、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
本発明のタッチパネル部材は、特に限定はされないが、本発明のポリイミドフィルムの両面にハードコート層を有する積層体を備えることが、表面硬度の点から好ましい。
また、本発明のタッチパネル部材は、特に限定はされないが、前記透明電極が、前記本発明の積層体の一方の面側に接して積層されてなるものであることが好ましい。
本発明のタッチパネル部材は、例えば、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いることができる。また、各種ディスプレイの表面に、本発明のタッチパネル部材と、表面材としての本発明の積層体とを、この順に配置して用いることもできる。
図2は、本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図であり、図3は、図2に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図であり、図4は、図2及び図3に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。図2、図3及び図4に示すタッチパネル部材20は、本発明のポリイミドフィルム1の両面にハードコート層2a、2bを有する積層体10と、積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4と、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第一の透明電極4においては、x軸方向に伸長するように延在する短冊状の電極片である複数の第一の導電部41が、所定の間隔を空けて配置されている。第一の導電部41には、その長手方向の端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続される第一の取出し線7が接続されている。積層体10の端縁21まで延設された第一の取出し線7の端部には、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。第一の導電部41と第一の取出し線7とは、一般には、タッチパネルの使用者が視認可能なアクティブエリア22の外側に位置する、非アクティブエリア23内において接続される。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図2に示すように、接続部24を介在させた接続構造を採用することができる。接続部24は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア23内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部24上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、図2に示すような、接続部24を形成する構造には限定されない。例えば、図示は省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア23まで伸長させ、非アクティブエリア23内において、当該非アクティブエリア23まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図2では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本発明においては、1つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
図3に示すように、タッチパネル部材20は、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第二の透明電極5においては、y軸方向に伸長するように延在する複数の短冊状の電極片である第二の導電部51が、x軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続される第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、積層体10の端縁のうち、前述した第一の取出し線7が延設された端縁21における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。
積層体10の端縁21まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができる。
なお、図2及び図3に示すような、第一の取出し線7を長尺配線とし、第二の取出し線8を短尺配線とするパターンは、本発明のタッチパネル部材の一実施形態に過ぎず、例えば、第一の取出し線7を短尺配線とし、第二の取出し線8を長尺配線とするパターンとすることも可能である。また、第一の取出し線7の伸長方向及び第二の取出し線8の伸長方向も、図2及び図3に示す方向に限られず、任意に設計することが可能である。
本発明のタッチパネル部材が備える導電部は、タッチパネル部材において透明電極を構成するものを適宜選択して適用することができ、導電部のパターンは、図2及び図3に示すものに限定されない。例えば、静電容量方式によって、指などの接触または接触に近い状態による電気容量の変化を検知可能な透明電極のパターンを適宜選択して適用することができる。
前記導電部の材料としては、光透過性の材料であることが好ましく、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第二の導電部51を形成すると、タッチパネル部材の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で好ましい。
前記導電部の厚みは、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により導電部を形成する場合には、一般的には、10nm〜500nm程度に形成することができる。
本発明のタッチパネル部材が備える取出し線を構成する導電材料は、光透過性の有無を問わない。一般的には、取出し線は、高い導電性を有する銀や銅などの金属材料を用いて形成することができる。具体的には、金属単体、金属の複合体、金属と金属化合物の複合体、金属合金を挙げることができる。金属単体としては、銀、銅、金、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの3層構造体)等を例示することができる。金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロムとクロムの積層体等を例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APC(銀、パラジウム及び銅の合金)等を例示することができる。また、前記取出し線には、前述した金属材料に、適宜樹脂成分が混在していてもよい。
本発明のタッチパネル部材において、取出し線の端部に設けられる端子は、例えば、前記取出し線と同じ材料を用いて形成することができる。
前記取出し線の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは10nm〜1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm〜200μm程度に形成される。一方、スクリーン印刷などの印刷により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは5μm〜20μm程度に形成され、幅寸法は20μm〜300μm程度に形成される。
本発明のタッチパネル部材は、図2〜図4に示す形態には限られず、例えば、第一の透明電極と、第二の透明電極とが、それぞれ別個の積層体の上に積層されて構成されるものであってもよい。
図5及び図6は、各々本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。図5に示す第一の導電性部材201は、本発明の積層体10と、当該積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4とを有し、当該第一の透明電極4は、複数の第一の導電部41を有する。図6に示す第二の導電性部材202は、本発明の積層体10’と、当該積層体10’の一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを有し、当該第二の透明電極5は、複数の第二の導電部51を有する。
図7は、本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図であり、図7に示すタッチパネル部材20’は、図5に示す第一の導電性部材201と、図6に示す第二の導電性部材202とを備える。タッチパネル部材20’においては、第一の導電性部材201の第一の透明電極4を有しない面と、第二の導電性部材202の透明電極5を有する面とが、接着層6を介して貼り合わせられている。なお、本発明において、例えば、本発明の積層体と本発明のタッチパネル部材とを接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材同士を接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材と表示装置等とを接着するための接着層としては、光学部材に用いられている従来公知の接着層を適宜選択して用いることができる。本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材において、透明電極、取出し線及び端子の構成及び材料は、前述した本発明のタッチパネル部材に用いられる透明電極、取出し線及び端子と各々同様とすることができる。
V.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する。
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は本発明の積層体を備えるものであることから、耐候性に優れ、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性に優れ、フレキシブルディスプレイとして特に好適に用いることができる。
本発明の液晶表示装置は、本発明のポリイミドフィルムの両面にハードコート層を有する積層体を備えることが、表面硬度の点から好ましい。
また、本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の液晶表示装置が有する対向基板は、本発明のポリイミドフィルム又は本発明の積層体を備えるものであっても良い。
図8は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図8に示す液晶表示装置100は、本発明のポリイミドフィルム1の一方の面にハードコート層2を有する積層体10と、本発明のポリイミドフィルム1の両面にハードコート層2a、2bを有する積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置100において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の液晶表示装置に用いられる液晶表示部は、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有するものであり、従来公知の液晶表示装置に用いられている構成を採用することができる。
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができ、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。
本発明の液晶表示装置に用いられる対向基板としては、液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の積層体を備えるものを用いても良い。
液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
本発明の液晶表示装置において、対向配置された基板の間には、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部は、対向配置された基板の外側において、タッチパネル部材が位置する側とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
図9は、本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図9に示す液晶表示装置200は、本発明のポリイミドフィルム1の一方の面にハードコート層2を有する積層体10と、本発明のポリイミドフィルム1の両面にハードコート層2a、2bを有する積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明のポリイミドフィルム1の両面にハードコート層2a、2bを有する積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置200において、積層体10と第一の導電性部材201、及び第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図7に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の液晶表示装置に用いられる導電性部材としては、例えば、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
VI.有機エレクトロルミネッセンス表示装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は本発明の積層体を備えるものであることから、耐候性に優れ、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性に優れ、フレキシブルディスプレイとして特に好適に用いることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、本発明のポリイミドフィルムの両面にハードコート層を有する積層体を備えることが、表面硬度の点から好ましい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置が有する対向基板は、本発明のポリイミドフィルム又は本発明の積層体を備えるものであっても良い。
図10は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。図10に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置300は、本発明のポリイミドフィルム1の一方の面にハードコート層2を有する積層体10と、本発明のポリイミドフィルム1の両面にハードコート層2a、2bを有する積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置300において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示部(有機EL表示部)は、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層(有機EL層)を有するものであり、従来公知の有機EL表示装置に用いられている構成を採用することができる。
有機EL表示部は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。本発明の有機EL表示装置に用いられる対向基板としては、有機EL表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の積層体を備えるものを用いても良い。
図11は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図11に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置400は、本発明のポリイミドフィルム1の一方の面にハードコート層2を有する積層体10と、本発明のポリイミドフィルム1の両面にハードコート層2a、2bを有する積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明のポリイミドフィルム1の両面にハードコート層2a、2bを有する積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置400において、積層体10と第一の導電性部材201、第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図7に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる導電性部材としては、例えば、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
以下、特に断りがない場合は、25℃で測定又は評価を行った。
[評価方法]
<ポリイミドの重量平均分子量>
ポリイミドの重量平均分子量は、ポリイミド粉体15mgを、15000mgのN−メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、ウォーターバスで60℃に加熱しながら、スターラーを用いて回転速度200rpmで、目視で溶解を確認するまで3〜60時間撹拌することにより、0.1重量%の濃度のNMP溶液を得た。その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド溶液の粘度>
ポリイミド溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
<膜厚測定法>
10cm×10cmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片の四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、測定値の平均をポリイミドフィルムの膜厚とした。
<全光線透過率>
全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
<複屈折率>
位相差測定装置(王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定した。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出した。前記斜め40度入射の位相差値は、ポリイミドフィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光をポリイミドフィルムに入射させて測定した。
ポリイミドフィルムの複屈折率は、式:Rth/d(ポリイミドフィルムの膜厚(nm))に代入して求めた。
<引張弾性率>
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS K7127に準拠し、引張り速度を8mm/分、チャック間距離を20mmとして、25℃における引張弾性率を測定した。引張り試験機は(島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用いた。
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。
<算術平均粗さRa>
ポリイミドフィルムのフィルム作製時に基板(ガラス板)に触れていない側の面について、原子間力顕微鏡(AFM)(ブルカー社製、MultiMode 8 HR」を用いて表面観察をタッピングモードで行い、JIS B0601:2013に準拠して算術平均粗さRaを求めた。なお、10μm角の視野観察を4回行ってそれぞれ算術平均粗さRaを求め、それらの平均値をポリイミドフィルムの算術平均粗さRaとした。
<動的屈曲試験>
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定した。また、試験片を長辺の半分の位置で折り曲げ、折り畳まれた状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなり、試験片の折り曲げ部分の曲率半径が3mmとなるように折り畳まれた状態を設定した。その後25℃、50%相対湿度(RH)の環境下で、平坦に開いた状態から前記折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に90回の屈曲回数で破断するまで屈曲を繰り返し、試験片が破断するまでの屈曲回数を測定した。
<ヘイズ値>
ポリイミドフィルムの製造直後と、下記長期信頼性試験後に、それぞれポリイミドフィルムのヘイズ値を測定した。また、下記長期信頼性試験後のヘイズ値からポリイミドフィルムの製造直後のヘイズ値を差し引いた△ヘイズ値を算出した。なお、ポリイミドフィルムのヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
(長期信頼性試験)
熱風循環式加熱装置を用いて70℃±2℃の環境下にポリイミドフィルムを設置し、240時間放置した。
<YI値(黄色度)>
ポリイミドフィルムの製造直後と、下記耐候性試験後に、それぞれポリイミドフィルムのYI値を求め、更に、耐候性試験後のYI値からポリイミドフィルムの製造直後のYI値を差し引いた△YIを算出した。
また、YI値は、JIS K7373:2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
(耐候性試験)
ポリイミドフィルムを55mm×75mmに切り出した試験片を、QUV耐候性試験機(Q−LAB社製 QUV Accelerated Weathering Tester)を用い、1W/m/nmに設定した出力で、UVB313nmランプを使用して、24時間照射することにより、耐候性試験を行った。
(合成例1〜6、比較合成例1)
表1に記載のジアミン及び酸二無水物を用いてポリイミドを合成し、表1に記載の粘度になるように、得られたポリイミドをジクロロメタンに溶かして、ポリイミド溶液1〜6及び比較ポリイミド溶液1を得た。GPCによって測定した各ポリイミドの重量平均分子量を表1に示す。ポリイミドの合成方法の具体例として、ポリイミド溶液2に用いたポリイミド2の合成方法を以下に説明する。
5Lのセパラブルフラスコに、脱水されたN,N−ジメチルアセトアミド(2903g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(15.9g)を溶解させた溶液を入れ、液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(14.6g)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(387g)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(548g)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体が溶解したポリイミド前駆体溶液(固形分25質量%)を合成した。ポリイミド前駆体に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)は95:5であった。
窒素雰囲気下で、5Lのセパラブルフラスコに、室温に下げた上記ポリイミド前駆体溶液(400g)を加えた。そこへ、脱水されたジメチルアセトアミド(109g)を加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン(41.4g)と無水酢酸(53.4g)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液に酢酸ブチル(406g)を加え均一になるまで撹拌し、次にメタノール(902g)を徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りが見られる溶液にメタノール(2105g)を一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド2(91g)を得た。
表中の略称はそれぞれ以下のとおりである。
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
AprTMOS:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
(合成例7〜13)
前記ポリイミド2を合成した手順で、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)に代えて、表2に記載のジアミン1を用いて、各ポリイミドを合成し、表2に記載の粘度になるように、得られたポリイミドをジクロロメタンに溶かして、ポリイミド溶液7〜13を得た。
(実施例1〜6、比較例1)
合成例1〜6、比較合成例1で得られたポリイミド溶液1〜6及び比較ポリイミド溶液1に、紫外線吸収剤として、下記化学式(1)で表される紫外線吸収剤(Sumisorb 130、住化ケムテックス(株)製)を、固形分中に5質量%となる量で配合し、ポリイミド樹脂組成物を得た。
得られたポリイミド樹脂組成物を用いて、下記(i)〜(iii)の手順を行うことで、表3に記載の厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(i)ポリイミド樹脂組成物をガラス板上に塗布し、自然乾燥後、フィルムをガラス板より剥離した。
(ii)フィルムを50℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(iii)フィルムを、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却し、ポリイミドフィルムを得た。
(実施例7〜12、比較例2)
合成例1〜6、比較合成例1で得られたポリイミド溶液1〜6及び比較ポリイミド溶液1に、紫外線吸収剤として、下記化学式(2)で表される紫外線吸収剤(Sumisorb 340、住化ケムテックス(株)製)を、固形分中に5質量%となる量で配合し、ポリイミド樹脂組成物を得た。
得られたポリイミド樹脂組成物を用いて、前記(i)〜(iii)の手順を行うことで、表4に記載の厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(実施例13〜19)
合成例7〜13で得られたポリイミド溶液7〜13に、紫外線吸収剤として、前記化学式(2)で表される紫外線吸収剤(Sumisorb 340、住化ケムテックス(株)製)を、固形分中に5質量%となる量で配合し、ポリイミド樹脂組成物を得た。
得られたポリイミド樹脂組成物を用いて、前記(i)〜(iii)の手順を行うことで、表5に記載の厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(比較例3〜9)
実施例1〜6及び比較例1において、ポリイミド樹脂組成物に紫外線吸収剤を配合しなかった以外は、実施例1〜6及び比較例1と同様にして、表6に記載の厚みのポリイミドフィルムを作製した。
実施例1〜19及び比較例1〜9で得られた各ポリイミドフィルムについて、前記評価方法を用いて評価した。評価結果を表3〜6に示す。
表3に記載の実施例1〜6と比較例1との対比、表4に記載の実施例7〜12と比較例2との対比、及び表3及び表4に記載の実施例1〜12と表6に記載の比較例3〜9との対比から、本発明のポリイミドフィルムに相当する実施例1〜12のポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤とを組み合わせて含有することにより、優れた耐候性を有しながら、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制されており、動的屈曲耐性が向上した樹脂フィルムであることが示された。また、実施例1〜12のポリイミドフィルムは、光透過性が良好であり、ディスプレイ用表面材として実用可能な光学特性を有していた。また、実施例1〜12のポリイミドフィルムは、少なくとも一方の面の算術平均粗さRaが十分に小さく、ディスプレイ用表面材として用いたときの視認性の低下を抑制するものであった。
更に、表3に記載の実施例1〜3と実施例4〜6との対比、及び表4に記載の実施例7〜9と実施例10〜12との対比から、ポリイミドフィルムが含有する前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、Rの総量の2.5モル%以上10モル%未満が、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基であると、表面硬度の低下がより抑制されることが明らかとなった。
また、表5より、本発明のポリイミドフィルムに相当する実施例13〜19のポリイミドフィルムも、優れた耐候性を有しながら、長期保存後のヘイズ値の上昇が抑制され、動的屈曲耐性に優れ、光透過性が良好であり、少なくとも一方の面の算術平均粗さRaが十分に小さく、ディスプレイ用表面材として用いたときの視認性の低下を抑制するものであることが示された。中でも、実施例13〜18のポリイミドフィルムは、実施例19のポリイミドフィルムに比べて表面硬度の低下が抑制されていた。これにより、ポリイミドフィルムが含有する前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、Rのうち、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基以外の残りのRが、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記残りのRのうちの半分よりも多くが、1,4−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び前記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であると、更に表面硬度の低下が抑制されることが明らかになった。
更に、実施例1〜6で得られたポリイミドフィルムについて、前記動的屈曲試験を60℃、93%RHの環境下で行った結果、実施例1〜3のポリイミドフィルムは、実施例4〜6のポリイミドフィルムに比べて、動的屈曲耐性に優れていた。これにより、ポリイミドフィルムが含有する前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、Rの総量の2.5モル%以上10モル%未満が、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基であると、高温高湿環境下での動的屈曲耐性の低下が抑制されることが明らかとなった。
1 ポリイミドフィルム
2、2a、2b ハードコート層
10、10’、10” 積層体
4 第一の透明電極
41 第一の導電部
5 第二の透明電極
51 第二の導電部
6 接着層
7 第一の取出し線
71 第一の端子
8 第二の取出し線
81 第二の端子
20、20’ タッチパネル部材
21 積層体の端縁
22 アクティブエリア
23 非アクティブエリア
24 接続部
201 第一の導電性部材
202 第二の導電性部材
30 液晶表示部
40 有機エレクトロルミネッセンス表示部
100、200 液晶表示装置
300、400 有機エレクトロルミネッセンス表示装置

Claims (14)

  1. 下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、
    炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤とを含有し、
    JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が80%以上である、ポリイミドフィルム。
    (一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、下記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
    (一般式(A)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合を表し、R10はそれぞれ独立して、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基を表し、R11はそれぞれ独立して、炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の2価の飽和脂肪族炭化水素基を表す。kは0〜200の数である。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
  2. 前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾエート系紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種であり、少なくとも1つの芳香族環上の少なくとも1つの水素原子が、−O−結合又は−CO−O−結合を含んでいても良い炭素数1以上8以下の直鎖状又は分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基によって置換された構造を有する、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、Rの総量の2.5モル%以上10モル%未満が、前記一般式(A)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた残基であり、残りのRが、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記残りのRのうちの半分よりも多くが、1,4−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルム。
    (一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
  4. 前記一般式(A)で表されるジアミンにおいて、前記一般式(A)中のkが0又は1である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  5. JIS K7373:2006に準拠して算出される黄色度が20.0以下であり、
    JIS K7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値が2.0%以下であり、
    波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.040以下である、
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  6. 少なくとも一方の面において、JIS B0601に準拠して測定される算術平均粗さRaが10nm以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  7. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRが、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  8. 前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体。
  9. 前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物である、請求項8に記載の積層体。
  10. 前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は、前記請求項8又は9に記載の積層体である、ディスプレイ用表面材。
  11. フレキシブルディスプレイ用である、請求項10に記載のディスプレイ用表面材。
  12. 前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は、前記請求項8又は9に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部を有する透明電極と、
    前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備えるタッチパネル部材。
  13. 前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は、前記請求項8又は9に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、
    を有する液晶表示装置。
  14. 前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は、前記請求項8又は9に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、
    を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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