以下、図面を参照しながら、MRI装置の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で参照する各図面は概念的な構成を示すものであり、各構成要素の形状や大きさは実物と異なる場合がある。また、各図面において、同一の役割を果たす構成要素には同一の符号が付されている。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の全体的な構成例を示す図である。
例えば、図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイルユニット20、傾斜磁場電源3、全身用コイル4、局所用コイル5、寝台6、送信回路7、受信回路8、架台9、インタフェース10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び処理回路13〜16を備える。
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、内周側に配置された撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有する。なお、静磁場磁石1は、例えば、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
傾斜磁場コイルユニット20は、被検体Sが配置される撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイルユニット20は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、径方向に積層された略円筒状の複数の傾斜磁場コイルを有する。ここで、複数の傾斜磁場コイルは、傾斜磁場電源3から供給される電流に基づいて、内周側に配置された撮像空間に、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させる。
より具体的には、傾斜磁場コイルユニット20は、傾斜磁場コイルとして、X軸方向に沿った傾斜磁場コイルを発生させるXコイルと、Y軸方向に沿った傾斜磁場コイルを発生させるYコイルと、Z軸方向に沿った傾斜磁場コイルを発生させるZコイルとを有する。ここで、X軸、Y軸、及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、X軸は、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に直交する水平方向に設定され、Y軸は、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に直交する鉛直方向に設定される。また、Z軸は、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に沿って設定される。
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイルユニット20が有するXコイル、Yコイル、及びZコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、X軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を撮像空間に発生させる。具体的には、傾斜磁場電源3は、Xコイル、Yコイル、及びZコイルそれぞれに適宜に電流を供給することによって、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる。ここで、リードアウト方向に沿った軸、位相エンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。
そして、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳されることによって、被検体Sから発生したMR信号に空間的な位置情報を付与する。具体的には、リードアウト方向の傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、リードアウト方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。また、位相エンコード方向の傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、位相エンコード方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。また、スライス方向の傾斜磁場は、スライス方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。例えば、スライス方向の傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させるために用いられる。
全身用コイル4は、被検体Sが配置される撮像空間にRF(Radio Frequency)磁場を印加し、当該RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信するRFコイルである。具体的には、全身用コイル4は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、送信回路7から供給されるRFパルス信号に基づいて、内周側に配置された撮像空間にRF磁場を印加する。また、全身用コイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路8へ出力する。例えば、全身用コイル4は、バードケージ型のQD(quadrature)コイルである。
局所用コイル5は、被検体Sから発生したMR信号を受信するRFコイルである。具体的には、局所用コイル5は、被検体Sの部位ごとに用意されたRFコイルであり、被検体Sの撮像が行われる際に、撮像対象の部位の近傍に配置される。そして、局所用コイル5は、全身用コイル4によって印加されるRF磁場の影響によって被検体Sから発生したMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路8へ出力する。なお、局所用コイル5は、被検体SにRF磁場を印加する送信コイルの機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所用コイル5は、送信回路7に接続され、送信回路7から供給されるRFパルス信号に基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。例えば、局所用コイル5は、サーフェスコイルや、複数のサーフェスコイルで構成されたアレイコイルである。
寝台6は、被検体Sが載置される天板6aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板6aを撮像空間に移動する。例えば、寝台6は、天板6aの長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
送信回路7は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数(ラーモア周波数)に対応するRFパルス信号を全身用コイル4に出力する。具体的には、送信回路7は、パルス発生器、RF発生器、変調器、及び増幅器を有する。パルス発生器は、RFパルス信号の波形を生成する。RF発生器は、共鳴周波数のRF信号を発生する。変調器は、RF発生器によって発生したRF信号の振幅をパルス発生器によって発生した波形で変調することで、RFパルス信号を生成する。増幅器は、変調器によって発生したRFパルス信号を増幅して全身用コイル4に出力する。
受信回路8は、全身用コイル4又は局所用コイル5によって受信されたMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。具体的には、受信回路8は、プリアンプ、検波器、及びA/D(Analog/Digital)変換器を有する。プリアンプは、全身用コイル4又は局所用コイル5から出力されるMR信号を増幅する。検波器は、プリアンプによって増幅されたMR信号から共鳴周波数の成分を差し引いたアナログ信号を検波する。A/D変換器は、検波器によって検波されたアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成した生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
架台9は、略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成された中空のボア9aを有し、静磁場磁石1、傾斜磁場コイルユニット20、及び全身用コイル4を支持している。具体的には、架台9は、静磁場磁石1の内周側に傾斜磁場コイルユニット20を配置し、傾斜磁場コイルユニット20の内周側に全身用コイル4を配置し、全身用コイル4の内周側にボア9aを配置した状態で、静磁場磁石1、傾斜磁場コイルユニット20、及び全身用コイル4それぞれを支持している。ここで、架台9が有するボア9a内の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
なお、ここでは、MRI装置100が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイルユニット20及び全身用コイル4それぞれが略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構成を有する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイルユニット及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構成を有していてもよい。この場合には、一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイルユニット及び一対のRFコイルによって挟まれた空間が、トンネル型の構成におけるボアに相当する。
インタフェース10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、インタフェース10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路16に出力する。例えば、インタフェース10は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、インタフェース10は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路もインタフェース10の例に含まれる。
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。寝台制御機能13aは、制御用の電気信号を寝台6へ出力することで、寝台6の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、インタフェース10を介して、天板6aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板6aを移動するように、寝台6が有する天板6aの移動機構を動作させる。
処理回路14は、データ収集機能14aを有する。データ収集機能14aは、各種のパルスシーケンスを実行することで、被検体SのMR信号データを収集する。具体的には、データ収集機能14aは、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに従って、傾斜磁場電源3、送信回路7及び受信回路8を駆動することで、パルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス実行データは、パルスシーケンスを表すデータであり、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイルユニット20に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路7が全身用コイル4に供給するRFパルス信号の強さや供給タイミング、受信回路8がMR信号を検出する検出タイミング等を規定した情報である。そして、データ収集機能14aは、パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路8からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に記憶させる。ここで、データ収集機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に記憶される。
処理回路15は、画像生成機能15aを有する。画像生成機能15aは、記憶回路12に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能15aは、データ収集機能14aによって記憶回路12に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理、すなわち、フーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像の画像データを記憶回路12に記憶させる。
処理回路16は、主制御機能16aを有する。主制御機能16aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、主制御機能16aは、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ11に表示する。そして、主制御機能16aは、インタフェース10を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置100が有する各構成要素を制御する。例えば、主制御機能16aは、インタフェース10を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける。そして、主制御機能16aは、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、当該シーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、主制御機能16aは、操作者からの要求に応じて、記憶回路12から画像データを読み出してディスプレイ11に出力する。
ここで、上述した処理回路13〜16は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、記憶回路12から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。ここで、各処理回路は、複数のプロセッサによって構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、ここでは、単一の記憶回路12が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
以上、本実施形態に係るMRI装置100の全体的な構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、傾斜磁場コイルユニット20に含まれる傾斜磁場コイルを冷却するための構成を有する。
ここで、近年、MRI装置では、被検体が配置されるボアの大口径化や傾斜磁場の高出力化が進んでおり、それに伴って、より大きな電流が傾斜磁場コイルに流されるようになっている。このため、MRI装置では、傾斜磁場コイルの冷却が重要となっている。
一般的に、傾斜磁場コイルの冷却法としては、例えば、傾斜磁場コイルのパターンの付近に冷却管を配置して当該冷却管に冷媒を流通させる間接法や、傾斜磁場コイルのパターンを中空導体で形成して当該中空導体に冷媒を流通させる直説法が知られている。
しかしながら、間接法では、直接法と比較して、冷媒を同じ流量だけ流した場合の冷却効率が低いという欠点がある。また、直接法では、中空導体の太さが制限されるため、冷媒の圧力損失が大きくなる。そのため、直接法では、冷媒の流路を分岐(分割)することになり、その結果、傾斜磁場コイルユニットの構造が複雑になり、製造も難しくなるという欠点がある。
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、構造的及び製造的に容易な構成で傾斜磁場コイルを直接冷却することができるように構成されている。
具体的には、本実施形態に係るMRI装置100は、傾斜磁場コイルを内部に収容する容器を備える。そして、当該容器には、冷媒を流通させる流通口が設けられており、当該流通口を介して容器の内部に冷媒が充填される。
このような構成によれば、中空導体を用いずに、容器内に充填された冷媒によって、傾斜磁場コイルを直接冷却することができる。したがって、本実施形態によれば、中空導体を用いる場合と比べて、構造的及び製造的に容易な構成で傾斜磁場コイルを直接冷却することができる。
以下、上述したMRI装置100の構成について、より詳細に説明する。なお、本実施形態では、傾斜磁場コイルユニット20が、傾斜磁場を発生させるメインコイルと、漏洩傾斜磁場を打ち消すシールドコイルとを有するASGC(Actively Shielded Gradient Coil)として構成されている場合の例を説明する。
図2は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイルユニット20の構成例を示す断面図である。ここで、図2は、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸を通る鉛直方向に沿った断面を示しており、傾斜磁場コイルユニット20の円筒形状における上側の部分の断面を示している。図2において、上側は、傾斜磁場コイルユニット20の外周側を示しており、下側は、傾斜磁場コイルユニット20の内周側を示している。
例えば、図2に示すように、本実施形態に係る傾斜磁場コイルユニット20は、メインコイル21と、シールドコイル22と、シムトレイガイド23と、シムトレイ24と、容器25とを有する。
メインコイル21は、略円筒状に形成されたXコイル21x、Yコイル21y、及びZコイル21zが径方向に積層されて構成されている。ここで、メインコイル21が有するXコイル21x、Yコイル21y、及びZコイル21zは、内周側に配置された撮像空間に、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させる。具体的には、Xコイル21xは、サドル状に形成されたサドルコイルであり、X軸に沿って傾斜磁場を発生させる。また、Yコイル21yは、Xコイルと同様にサドルコイルであり、Y軸に沿って傾斜磁場を発生させる。また、Zコイル21zは、螺旋状に形成されたソレノイドコイルであり、Z軸に沿って傾斜磁場を発生させる。
シールドコイル22は、メインコイル21の外周側に配置されており、メインコイル21と同様に、略円周状に形成されたXコイル22x、Yコイル22y、及びZコイル22zが径方向に積層されて構成されている。ここで、シールドコイル22が有するXコイル22x、Yコイル22y、及びZコイル22zは、それぞれ、メインコイル21が有するXコイル21x、Yコイル21y、及びZコイル21zに流れる電流と逆の方向に電流を流すことで、傾斜磁場コイルユニット20の外側に漏洩する漏洩傾斜磁場を打ち消す磁場を発生させる。
シムトレイガイド23は、細長い直方体の筒状に形成された部材であり、長手方向の両端面にシムトレイ24を挿入するための開口部を有している。ここで、シムトレイガイド23は、メインコイル21とシールドコイル22との間に挟まれた領域に、各コイルの円周方向に沿って等間隔に複数配置されており、それぞれが互いに平行となるように配置されている。そして、各シムトレイガイド23には、シムトレイ24が挿入されている。
図3は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイルユニット20に含まれるシムトレイ24の構成例を示す斜視図である。
例えば、図3に示すように、シムトレイ24は、細長い箱状のトレイ本体24aと、細長い板状のトレイ蓋体24bとから構成されている。トレイ本体24aは、長手方向に沿って連続して並ぶように設けられた複数のシムポケット24dを有しており、各シムポケット24dに、撮像空間における静磁場の不均一性を補正するために必要な枚数の磁性体シム24cが収納されている。
図2に戻って、容器25は、メインコイル21、シールドコイル22、シムトレイガイド23、及びシムトレイ24を内部に収容している。具体的には、容器25は、内周部と外周部との間に中空部を有する略円筒状に形成されており、当該中空部にメインコイル21、シールドコイル22、シムトレイガイド23、及びシムトレイ24を収容している。
例えば、容器25は、軸方向の長さが同じであり径の大きさが異なる2つの略円筒状の部材を内周部及び外周部として用い、外周部の内側に内周部を配置した状態で、それぞれの軸方向の両端部を円環状の板部材で密閉することによって形成されている。この場合には、例えば、内周部と外周部との間にメインコイル21、シールドコイル22、及びシムトレイガイド23が配置され、さらに、磁性体シム24cを収納済みのシムトレイ24がシムトレイガイド23に挿入された後に、内周部及び外周部それぞれの両端部が円環状の板部材によって密閉される。
そして、容器25には、冷媒を流通させる流通口として、流入口25aと、流出口25bとが設けられており、流入口25aを介して容器25の内部に冷媒が充填される。ここで、冷媒は、例えば、フロリナート等の絶縁液体である。
具体的には、流入口25aは、容器25の軸方向における一端側の端面に設けられており、流出口25bは、容器25の軸方向における他端側の端面に設けられている。例えば、容器25には、複数の流入口25a及び複数の流出口25bが各コイルの軸周りに等間隔で設けられている。ここで、流入口25aは、配管を介して冷却装置(図示は省略)に接続されており、冷却装置から供給される冷媒26を容器25の内部に流入させることで、容器25の内部に冷媒26を充填する。一方、流出口25bも、配管を介して冷却装置に接続されており、容器25の内部から押し出される冷媒26を流出させて、冷却装置に戻す。これにより、中空導体を用いずに、容器25内に充填された冷媒26によって、メインコイル21及びシールドコイル22それぞれに含まれる各コイルを直接冷却することができるようになる。
そして、本実施形態では、このような構成に加えて、さらに、メインコイル21及びシールドコイル22に含まれる各コイルのパターンの間に隙間を設けることによって、各コイルの間に冷媒26の流路が形成されている。これにより、容器25内に充填された冷媒26によって、メインコイル21及びシールドコイル22それぞれに含まれる各コイルをより直接的に冷却することができるようになる。
なお、一般的に、MRI装置では、複数の傾斜磁場コイルを強固に一体化するため、各傾斜磁場コイルの間に樹脂が含浸されて各傾斜磁場コイルが固定されるが、本実施形態では、各傾斜磁場コイルの間に冷媒26の流路を形成するため、樹脂の含浸は行われない。
具体的には、本実施形態では、メインコイル21及びシールドコイル22に含まれるXコイル及びYコイルそれぞれのパターンに、冷媒26の流路となる溝が形成されている。
図4及び5は、第1の実施形態に係るメインコイル21に含まれるXコイル21xに形成される溝の一例を示す図である。ここで、図4は、Xコイル21xに含まれる複数の渦巻き状のパターンの1つを示しており、Xコイル21xの円周面に沿って配置された渦巻き状のパターンを平面状に展開した場合の様子を示している。また、図5は、Xコイル21xのパターンに含まれる溝が形成された部分の厚さ方向に沿った断面を示している。
例えば、図4に示すように、Xコイル21xには、Xコイル21xの周方向(図4における上下方向)に沿って等間隔に複数の溝21aが形成されている。ここで、各溝は、Xコイル21xの軸方向、すなわち、Z軸方向に沿って形成されており、それぞれが互いに平行となるように形成されている。また、例えば、図5に示すように、各溝は、Xコイル21xのパターンの厚さの半分程度の深さを有するように形成されている。
なお、ここでは、メインコイル21に含まれるXコイル21xを例に挙げて説明したが、メインコイル21に含まれるYコイル21y、シールドコイル22に含まれるXコイル22x及びYコイル22yにも、同様に複数の溝が形成されている。
そして、本実施形態では、メインコイル21及びシールドコイル22それぞれにおいて、径方向に積層されたXコイル、Yコイル、及びZコイルが、各コイルの層間に配置された絶縁部材に固定されて一体化されている。
図6は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイルユニット20におけるXコイル、Yコイル、及びZコイルの配置例を示す図である。ここで、図6は、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に直交する断面を示しており、メインコイル21に含まれるXコイル21x、Yコイル21y、及びZコイル21zそれぞれのパターンの一部、及び、1つのシムトレイガイド23を示している。図6において、上側は、傾斜磁場コイルユニット20の外周側を示しており、下側は、傾斜磁場コイルユニット20の内周側を示している。
例えば、図6に示すように、メインコイル21に含まれるXコイル21x、Yコイル21y、及びZコイル21zは、径方向に積層されている。そして、Xコイル21xとYコイル21yとの間には、円筒状に形成された絶縁部材27aが配置されており、両コイルが絶縁部材27aに接着剤等で強固に固定されている。また、Yコイル21yとZコイル21zとの間にも、円筒状に形成された絶縁部材27bが配置されており、両コイルが絶縁部材27bに接着剤等で強固に固定されている。
このような構成によれば、Xコイル21xに形成された溝21a及び絶縁部材27aによって、Xコイル21xとYコイル21yとの間に、メインコイル21の軸方向に沿って延びる隙間が設けられることになる。また、Yコイル21yに形成された溝21b及び絶縁部材27bによって、Yコイル21yとZコイル21zとの間にも、メインコイル21の軸方向に沿って延びる隙間が設けられることになる。これにより、容器25に冷媒26が充填された際には、それぞれの隙間に冷媒26が流れるようになる。すなわち、Xコイル21xとYコイル21yとの間、及び、Yコイル21yとZコイル21zとの間に、冷媒26の流路が形成されることになる。
ここで、通常、Xコイル及びYコイルとして用いられるサドルコイルは、それぞれが単体で作製されるため、溝を形成することが容易であるが、Zコイルとして用いられるソレノイドコイルは、円筒状の基材や他の傾斜磁場コイル等に平角銅線を巻き付けて作成されることが多いため、製造上、溝を設けることが難しい場合がある。
そのため、本実施形態では、Zコイルには溝を形成せず、その代わりに、Zコイルと、当該Zコイルに積層された部材との間にスペーサーを配置することによって、さらに、冷媒26の流路となる隙間を設けている。
例えば、図6に示すように、メインコイル21に含まれるZコイル21zと、当該Zコイル21zに積層されたシムトレイガイド23との間に、2つのスペーサー28が配置されている。ここで、各スペーサー28は、Zコイル21zとシムトレイガイド23との間で、メインコイル21の軸方向に沿って延在するように配置されており、Zコイル21z及びシムトレイガイド23が接着剤等で強固に固定されている。
このような構成によれば、2つのスペーサー28によって、Zコイル21zとシムトレイガイド23との間に、メインコイル21の軸方向に沿って延びる隙間が設けられることになる。これにより、容器25に冷媒26が充填された際に、当該隙間に冷媒26が流れるようになる。すなわち、Zコイル21zとシムトレイガイド23との間に、冷媒26の流路が形成されることになる。このように、Zコイル21zとシムトレイガイド23との間に冷媒26の流路が形成されることによって、Zコイル21zから発生する熱がシムトレイガイド23及びシムトレイガイド23に収納された磁性体シム24cに伝わることを抑止できるようになる。なお、図6では図示を省略しているが、シールドコイル22が配置された側も、メインコイル21が配置された側と同様に構成されている。
ここで、本実施形態では、上述したXコイル及びYコイルのパターンに形成される溝の幅、及び、Zコイルとシムトレイガイド23との間に配置されるスペーサーの幅は、冷媒26の圧力損失に応じて決められている。例えば、当該溝、及び、当該スペーサーの幅は、冷媒26を供給する冷却装置に含まれるポンプの性能に応じて決められている。より具体的には、例えば、当該溝、及び、当該スペーサーの幅は、容器25の内部に流れる冷媒26の圧力損失がポンプの最高許容圧力より小さくなるように決められている。
また、本実施形態では、傾斜磁場コイルユニット20は、円筒状に形成された支持部材(ボビンとも呼ばれる)29をさらに備えており、メインコイル21に含まれるXコイル21xが、当該支持部材29の外周部に固定されている。ここで、支持部材29は、前述した絶縁部材27a、27bと比較して、より強靭で剛性が高く、かつ絶縁性を有する材料で作製されている。
そして、例えば、Xコイル21xは、支持部材29の外周面に形成された固定溝に埋め込まれることで、当該支持部材29に強固に固定されている。なお、例えば、Xコイル21xは、固定溝で固定される代わりに、接着剤等で支持部材29の外周面に強固に固定されてもよい。または、Xコイル21xは、支持部材29の外周面に形成された固定溝に埋め込まれ、かつ、当該固定溝に接着剤で固定されてもよい。
上述したように、第1の実施形態では、中空導体を用いずに、容器25内に充填された冷媒26によって、メインコイル21及びシールドコイル22それぞれに含まれる各コイルを直接冷却することができる。したがって、第1の実施形態によれば、中空導体を用いる場合と比べて、構造的及び製造的に容易な構成で、メインコイル21及びシールドコイル22それぞれに含まれる各コイルを直接冷却することができる。また、メインコイル21及びシールドコイル22の全体を直接冷却することによって、中空導体を用いた場合より高い冷却性能も実現可能となる。
また、第1の実施形態では、メインコイル21及びシールドコイル22に含まれるXコイル、Yコイル、及びZコイルが、それぞれ絶縁部材に強固に固定され、かつ、Zコイル及びシムトレイガイド23が、それぞれスペーサーに強固に固定されている。したがって、第1の実施形態によれば、樹脂の含浸が行われなくても、メインコイル21及びシールドコイル22を強固に一体化することができる。さらに、第1の実施形態では、傾斜磁場コイルユニット20の最内層となるメインコイル21のXコイル21xが支持部材29に固定されることによって、傾斜磁場コイルユニット20全体をより強固に一体化することができる。
また、第1の実施形態では、メインコイル21及びシールドコイル22に含まれるXコイル及びYコイルのパターンに形成される溝の幅、及び、Zコイルとシムトレイガイド23との間に配置されるスペーサーの幅が、冷媒26の圧力損失に応じて決められている。したがって、第1の本実施形態によれば、当該溝、及び、当該スペーサーの幅を変えることによって、冷媒26の圧力損失を調整することができる。
なお、例えば、Xコイル及びYコイルのパターンに形成される溝の幅、及び、Zコイルとシムトレイガイド23との間に配置されるスペーサーの幅は、各コイルの性質に応じて決められてもよい。例えば、Xコイルはリードアウト方向の傾斜磁場を発生させるために用いられることが多く、Yコイルと比べて発熱が大きいと考えられる。そのため、例えば、Xコイルに形成される溝の幅を、Yコイルに形成される溝の幅より大きくしてもよい。
以上、第1の実施形態について説明したが、上述した傾斜磁場コイルユニット20の構成は、その一部を適宜に変更して実施することも可能である。そこで、以下では、第1の実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下で説明する各実施形態では、先に説明済みと異なる点を中心に説明することとし、先に説明済みの実施形態と共通する内容については詳細な説明を省略する。
(第2の実施形態)
例えば、上述した実施形態では、Xコイル、Yコイル、及びZコイルが絶縁部材に固定されている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、絶縁部材を用いる代わりに、第1の実施形態でメインコイル21のXコイル21xが固定された支持部材27と同様の支持部材が用いられてもよい。
図7は、第2の実施形態に係る傾斜磁場コイルユニット20におけるXコイル、Yコイル、及びZコイルの配置例を示す図である。ここで、図7は、図6と同様に、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に直交する断面を示している。
例えば、図7に示すように、本実施形態では、メインコイル21に含まれるXコイル21xとYコイル21yとの間に、円筒状に形成された支持部材29aが配置されている。また、Yコイル21yとZコイル21zとの間にも、円筒状に形成された支持部材29bが配置されている。ここで、各支持部材は、メインコイル21のXコイル21xが固定された支持部材27と同様に、前述した絶縁部材と比較して、より強靭で剛性が高く、かつ絶縁性を有する材料で作製されている。
そして、本実施形態では、Yコイル21yが、支持部材29aの外周面に形成された固定溝に埋め込まれることで、当該支持部材29aに強固に固定されている。また、Zコイル21zも、支持部材29bの外周面に形成された固定溝に埋め込まれることで、当該支持部材29bに強固に固定されている。なお、例えば、Yコイル21y及びZコイル21zは、固定溝で固定される代わりに、接着剤等で各支持部材の外周面に強固に固定されてもよい。または、Yコイル21y及びZコイル21zは、各支持部材の外周面に形成された固定溝に埋め込まれ、かつ、当該固定溝に接着剤で固定されてもよい。
このような構成によれば、Xコイル21xに形成された溝21a及び支持部材29aによって、Xコイル21xとYコイル21yとの間に、メインコイル21の軸方向に沿って延びる隙間が設けられることになる。また、Yコイル21yに形成された溝21b及び支持部材29bによって、Yコイル21yとZコイル21zとの間に、メインコイル21の軸方向に沿って延びる隙間が設けられることになる。これにより、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、Xコイル21xとYコイル21yとの間、及び、Yコイル21yとZコイル21zとの間に、冷媒26の流路が形成されることになる。なお、図7では図示を省略しているが、シールドコイル22が配置された側も、メインコイル21が配置された側と同様に構成されている。
このように、第2の実施形態では、Xコイルだけでなく、Yコイル及びZコイルも支持部材に固定されることによって、メインコイル21及びシールドコイル22をより強固に固定できるようになる。
(第3の実施形態)
また、例えば、上述した実施形態では、メインコイル21及びシールドコイル22に含まれるZコイルとシムトレイガイド23との間のみにスペーサーが配置されている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、XコイルとYコイルとの間、及び、YコイルとZコイルとの間に、さらに、スペーサーが配置されてもよい。
図8は、第3の実施形態に係る傾斜磁場コイルユニット20におけるXコイル、Yコイル、及びZコイルの配置例を示す図である。ここで、図8は、図6と同様に、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に直交する断面を示している。
例えば、図8に示すように、本実施形態では、図7に示した例と同様に、メインコイル21に含まれるXコイル21xとYコイル21yとの間に、円筒状に形成された支持部材29aが配置されている。また、Yコイル21yとZコイル21zとの間にも、円筒状に形成された支持部材29bが配置されている。
そして、本実施形態では、さらに、メインコイル21に含まれるXコイル21xと支持部材29aとの間に、Xコイル21xに形成された溝21aを間に挟むように2つのスペーサー28aが配置されている。ここで、各スペーサー28aは、Xコイル21xと支持部材29aとの間で、メインコイル21の軸方向に沿って延在するように配置されており、Xコイル21x及び支持部材29aが接着剤等で強固に固定されている。
また、本実施形態では、さらに、メインコイル21に含まれるYコイル21yと支持部材29bとの間にも、Yコイル21yに形成された溝21bを間に挟むように2つのスペーサー28bが配置されている。ここで、各スペーサー28bは、Yコイル21yと支持部材29bとの間で、メインコイル21の軸方向に沿って延在するように配置されており、Yコイル21y及び支持部材29bが接着剤等で強固に固定されている。
このような構成によれば、Xコイル21xに形成された溝21a、支持部材29a、及び2つのスペーサー28aによって、Xコイル21xとYコイル21yとの間に、メインコイル21の軸方向に沿って延びる隙間が設けられることになる。また、Yコイル21yに形成された溝21b、支持部材29b、及び2つのスペーサー28bによって、Yコイル21yとZコイル21zとの間に、メインコイル21の軸方向に沿って延びる隙間が設けられることになる。これにより、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、Xコイル21xとYコイル21yとの間、及び、Yコイル21yとZコイル21zとの間に、冷媒26の流路が形成されることになる。なお、図8では図示を省略しているが、シールドコイル22が配置された側も、メインコイル21が配置された側と同様に構成されている。
ここで、本実施形態でも、各スペーサーの幅は、冷媒26の圧力損失に応じて決められている。
なお、図8に示す例では、Xコイルと支持部材との間、及び、Yコイルと支持部材との間にスペーサーが配置される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、図6に示したように、支持部材の代わりに絶縁部材が用いられている場合には、Xコイルと絶縁部材との間、及び、Yコイルと絶縁部材との間に、図8に示す例と同様にスペーサーが配置されてもよい。
このように、第3の実施形態では、Zコイルとシムトレイガイド23との間だけでなく、XコイルとYコイルとの間、及び、YコイルとZコイルとの間にもスペーサーが配置されることによって、コイル間における冷媒26の圧力損失をより柔軟に調整できるようになり、所望の流量分布をより確実に実現できるようになる。
(第4の実施形態)
また、例えば、上述した実施形態では、メインコイル21及びシールドコイル22に含まれるZコイルとシムトレイガイド23との間にスペーサーが配置されている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、Zコイルとシムトレイガイド23とは、スペーサー28を介さずに積層されていてもよい。
図9は、第4の実施形態に係る傾斜磁場コイルユニット20におけるXコイル、Yコイル、及びZコイルの配置例を示す図である。ここで、図9は、図6と同様に、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に直交する断面を示している。
例えば、図9に示すように、本実施形態では、メインコイル21に含まれるZコイル21zとシムトレイガイド23とが、スペーサー28を介さずに連続して積層されており、Zコイル21zがシムトレイガイド23に接着剤等で強固に固定されている。この一方で、シールドコイル22に含まれるZコイル22zとシムトレイガイド23も、同様に、スペーサーを介さずに連続して積層されており、Zコイル21zがシムトレイガイド23に接着剤等で強固に固定されている。
このような構成によれば、前述したように、シムトレイガイド23はメインコイル21の円周方向に沿って等間隔に複数配置されているため、隣り合うシムトレイガイド23によって、メインコイル21のZコイル21zとシールドコイル22のZコイル22zとの間に、各コイルの軸方向に沿って延びる隙間が設けられることになる。これにより、メインコイル21のZコイル21zとシールドコイル22のZコイル22zとの間に、冷媒26の流路が形成されることになる。
このように、第4の実施形態では、Zコイルとシムトレイガイド23とがスペーサー28を介さずに積層されることによって、構造的及び製造的に、より容易な構成で傾斜磁場コイルを直接冷却できるようになる。
(第5の実施形態)
また、例えば、上述した実施形態では、Xコイル及びYコイルにおいて、複数の溝が各コイルの周方向に沿って等間隔に形成される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、Xコイル及びYコイルにおいて、それぞれのパターンにおける発熱が大きい箇所で密になるように複数の溝が形成されていてもよい。
図10は、第5の実施形態に係るメインコイル21に含まれるXコイル21xに形成される溝の一例を示す図である。ここで、図10は、図4と同様に、Xコイル21xに含まれる複数の渦巻き状のパターンの1つを示している。
例えば、図10に示すような渦巻き状のパターンでは、通常、パターンの導体が中心部で密集しており、中心部が最も大きく発熱する。そこで、本実施形態では、Xコイル21xには、複数の溝21cが、Xコイル21xの周方向(図10における上下方向)においてXコイル21xの中心部に集中するように、Xコイル21xの周辺部を通る本数と比べて、中心部を通る本数が多くなるように形成されている。ここで、各溝は、Z軸方向に沿って形成されており、それぞれが互いに平行となるように形成されている。
このように、第5の実施形態では、Xコイル及びYコイルにおいて、それぞれのパターンにおける発熱が大きい箇所で密になるように複数の溝が形成されることによって、Xコイル及びYコイルをより効率よく冷却できるようになる。
(第6の実施形態)
また、例えば、上述した実施形態では、メインコイル21及びシールドコイル22に含まれるXコイル及びYコイルにおいて、複数の溝がZ軸方向に沿って形成される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、Xコイル及びYコイルにおいて、複数の溝がZ軸方向に対して斜めの方向に沿って形成されてもよい。
図11は、第6の実施形態に係るメインコイル21に含まれるXコイル21xに形成される溝の一例を示す図である。ここで、図11は、図4と同様に、Xコイル21xに含まれる複数の渦巻き状のパターンの1つを示している。
例えば、図11に示すように、本実施形態では、Xコイル21xには、複数の溝21dが、Z軸方向に対して斜めの方向に沿って形成されている。すなわち、本実施形態では、Xコイル21xの周方向(図11における上下方向)に対して斜めの方向に沿って形成されているともいえる。ここで、各溝は、それぞれが互いに平行となるように形成されていてもよいし、図10に示した例のように、Xコイル21xの周辺部を通る本数と比べて中心部を通る本数が多くなるように形成されていてもよい。
このように、第6の実施形態では、Xコイル及びYコイルにおいて、複数の溝がZ軸方向に対して斜めの方向に沿って形成されることによって、パターンが渦巻き状に形成されているような場合でも、パターン間に満たされた冷媒が流れやすくなり、Xコイル及びYコイルをより効率よく冷却できるようになる。
(第7の実施形態)
また、例えば、上述した実施形態では、傾斜磁場コイルユニット20の容器25において、複数の流入口25a及び複数の流出口25bが各コイルの軸周りに等間隔で設けられている場合の例を説明したが、例えば、流入口25a及び流出口25bが設けられる位置は、冷却効率の観点でより具体的に決められてもよい。
前述したように、Xコイル及びYコイルに含まれるような渦巻き状のパターンでは、通常、パターンの導体が中心部で密集しており、中心部が最も大きく発熱する。そこで、本実施形態では、流入口25a及び流出口25bは、Xコイル及びYコイルの周方向において、渦巻き状のパターンの中心部と同じ位置に設けられている。
図12は、第7の実施形態に係る容器25における流入口25a及び流出口25bの配置例を示す図である。ここで、図12は、容器25における流入口25a及び流出口25bが設けられた軸方向の一端側の端面を示している。
具体的には、Xコイルでは、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に直交する水平方向に設定されたX軸に沿って傾斜磁場を発生させるために、少なくとも2つの渦巻き状のパターンが、中心軸を挟んで水平方向に対向するように配置されている。また、Yコイルでは、傾斜磁場コイルユニット20の中心軸に直交する鉛直方向に設定されたY軸に沿って傾斜磁場を発生させるために、少なくとも2つの渦巻き状のパターンが、中心軸を挟んで鉛直方向に対向するように配置されている。
このため、例えば、図12に示すように、容器25の内部では、Xコイル及びYコイルの中心軸に直交する平面(X−Y平面)内で水平方向の一端を起点として軸回りに角度を定義した場合に、0°、90°、180°、270°の位置に渦巻き状のパターンの中心部が配置されることになる。この結果、例えば、図12において破線の矩形で示す部分で発熱が大きくなる。
このことから、本実施形態では、容器25の軸方向における一端側の端面において、容器25の内部で渦巻き状のパターンの中心部が配置される位置(上述した0°、90°、180°、270°の位置)ごとに、Xコイル及びYコイルの軸周りに、90°おきに、流入口25aが設けられている。また、容器25の軸方向における他端側の端面では、Xコイル及びYコイルの周方向において、各流入口25aと同じ位置に、流出口25bが設けられている。これにより、渦巻き状のパターンの中心部が配置されている部分に対して、容器25の一方の側から冷媒を流入させ、他方の側から流出させることができるようになり、発熱が大きい部分を重点的に冷却できるようになる。
このように、第7の実施形態では、流入口25a及び流出口25bが、Xコイル及びYコイルの周方向において、渦巻き状のパターンの中心部と同じ位置に設けられることによって、さらに効率よく、Xコイル及びYコイルを冷却できるようになる。
なお、上述した第1〜第7の実施形態では、傾斜磁場コイルユニット20がASGCとして構成されている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
例えば、傾斜磁場コイルユニット20は、シールドコイルを有さないNSGC(Non-Shielded Gradient Coil)であってもよい。その場合には、例えば、シールドコイルは、傾斜磁場コイルユニット20とは別体として、傾斜磁場コイルユニット20の外周側に配置されていてもよいし、静磁場磁石1の冷却容器内に収容されていてもよい。
また、上述した第1〜第7の実施形態では、容器25について、内周部と外周部との間にシムトレイガイド23が配置され、さらに、磁性体シム24cを収納済みのシムトレイ24がシムトレイガイド23に挿入された後に、内周部及び外周部それぞれの両端部が円環状の板部材によって密閉される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
例えば、シムトレイガイド23及び容器25は、容器25の内周部及び外周部それぞれの両端部が円環状の板部材によって密閉された後に、シムトレイ24をシムトレイガイド23に挿入できるように構成されていてもよい。この場合には、例えば、容器25の両端部に配置される円環状の板部材において、シムトレイガイド23が配置される位置に、シムトレイガイド23の開口部(シムトレイ24が挿入される開口部)と略同じ形状の貫通孔が設けられる。また、シムトレイガイド23は、容器25の軸方向と略同じ長さを有するように形成され、開口部が容器25の円環状の板部材に設けられた貫通孔と同じ位置に位置付けられるように配置される。そして、この場合には、容器25の内部が密閉されるように、シムトレイガイド23の開口部と容器25の円環状の板部材に設けられた貫通孔とが連続した状態で、シムトレイガイド23の端部と円環状の板部材とが密接して固定される。
なお、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)−ROM、FD(Flexible Disk)、CD−R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、構造的及び製造的に容易な構成で傾斜磁場コイルを直接冷却することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。