JP2020000033A - 経口免疫寛容誘導剤、これを含有する食品および医薬品、ならびに加工食品の製造方法 - Google Patents

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孝志 藤村
小埜 和久
Kazuhisa Ono
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松之助 樋口
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松之助 樋口
弘樹 山本
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義信 土屋
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幸治 角川
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Abstract

【課題】スギ花粉症の患者に、安全かつ簡便に免疫寛容を誘導できる、新規な技術を提供することを目的とする。【解決手段】微生物由来のペクテートリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクテートリアーゼの消化物、およびポリガラクツロナーゼの消化物からなる群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上を含有することを特徴とする、経口免疫寛容誘導剤、ならびにこれを含有する食品および医薬品。微生物由来のペクテートリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクテートリアーゼの消化物、およびポリガラクツロナーゼの消化物からなる群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の含有量が高められた加工物または精製品と、他の食品素材とを配合する工程を含むことを特徴とする、加工食品の製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、新規な経口免疫寛容誘導剤、ならびにこれを含有する食品および医薬品に関する。
また、本発明は、加工食品の製造方法に関する。
スギ花粉症は、早春に飛散するスギ(Cryptomeria japonica)の花粉を吸入することによって起こるアレルギー疾患であり、日本で特徴的に観察されるものである。
また、スギ花粉症は、IgE抗体と肥満細胞(マスト細胞)が関与する即時型のI型アレルギー反応によるものであり、その症状には、鼻炎や皮膚炎、喘息発作等がある。
近年、スギ花粉症の患者数は急増し、深刻な社会問題となっている。
スギ花粉症は、スギ花粉症のアレルギー反応を誘発するアレルゲン(スギ花粉アレルゲン)をヒトの免疫系が認識することが引き金となって発症することが知られており、これまでに、複数のスギ花粉アレルゲンが同定されている。
主要なスギ花粉のアレルゲンタンパク質として、抗原性の異なる2つの分子種(Cry j1およびCry j2)が知られている。
Cry j1は、ペクテートリアーゼ活性を有し、分子量が45〜50kDa、等電点が約9.0のタンパク質である(非特許文献1)。
Cry j2は、ポリガラクツロナーゼ活性を有し、分子量が約37kDa、等電点が約9.5のタンパク質である(非特許文献2)。
これらの2つの花粉アレルゲンタンパク質は、スギ花粉症患者血清中のIgEと高頻度に反応する。
一方、これらの主要な花粉アレルゲンの一方にのみ反応する花粉症患者や、これら以外の花粉アレルゲンに反応する患者が存在することも知られている。
従来から、スギ花粉症等のアレルギー疾患を治療するために、抗ヒスタミン剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ステロイド等の医薬品が使用されている。この治療法はアレルギー症状の改善を目的とした対症療法である。
よって、スギ花粉が飛散するシーズン中は、花粉症の症状を抑えるために、その医薬品を継続して使用する必要がある。
抗ヒスタミン剤の多くは、眠気や口渇等の副作用を引き起こすことが知られている。
このような状況下、花粉症等のアレルギー症状を改善するための機能性食品が提案されている。
例えば、特許文献1では、大麦を使用して、麹と酵母とを共生発酵させて得られる発酵液の上清により、アレルギー症状が改善されたことが記載されている。
一方、スギ花粉症等のアレルギー疾患を治療するために、免疫寛容の誘導が提案されている。
免疫寛容の誘導は、特定のアレルゲンに対するアレルギー反応を取り除くことを目的とした原因療法である。
免疫寛容は獲得免疫であり、一旦、免疫寛容が誘導されれば、その免疫寛容状態は持続するため、対症療法のような継続的な治療が不要となる。
なお、花粉症を突然発症する原因の1つは、花粉アレルゲンに対する免疫寛容が破綻したことによると考えられている。
免疫寛容を誘導する方法の1つとして、スギ花粉アレルゲンの皮下注射または舌下投与による減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法)がある。
特許文献2では、主要な花粉アレルゲンであるCry j1を舌下投与することにより、抗Cry j1抗体の産生が抑制されたことが記載されている。また、ペプシンで加水分解されたCry j1では、抗体産生量の低下が見られないことが記載されている。
特許文献3には、Cry j1と相同性が高い、野菜軟腐病菌由来のペクテートリアーゼを舌下投与することにより、抗Cry j1特異的抗体の産生量が抑制されたことが記載されている。
現在の減感作療法では、少量のスギ花粉アレルゲンを投与することから開始し、徐々に増量してゆき、アレルギー反応が起こりにくい体質に変えてゆく方法が採用されている。
免疫寛容を誘導する他の方法として、経口免疫寛容の誘導がある。この方法は、経口摂取された物質が腸管から吸収されることによって誘導されるものであり、減感作療法とは全く異なる作用機序による。
経口免疫寛容の誘導には、未解明な部分が多いが、いくつかの制御機構が関与していることが報告されている
アナジーと呼ばれる制御機構では、抗原提示細胞を介して抗原特異的なT細胞が不応答化して、免疫寛容が誘導される。このT細胞は、アレルゲン中の7〜30個のアミノ酸配列の一次構造(T細胞エピトープ)を認識して応答する(特許文献4)。
アクティブサプレッションと呼ばれる機構では、アレルゲン特異的な制御性T細胞が誘導されて、免疫寛容が誘導される。この制御性T細胞は、タンパク質アレルゲン中の7〜30個のアミノ酸配列の一次構造を認識して応答する。
また、アナジーは高用量の抗原が摂取された場合に起こり、アクティブサプレッションは比較的低用量の抗原が摂取された場合に起こり得るとの報告がある。
特許文献5では、スギ花粉アレルゲンにおける複数のT細胞エピトープのみからなるペプチドによる、経口免疫寛容の誘導が提案されている。このペプチドは、高次構造を有していないため、スギ花粉アレルゲンとIgE抗体との反応性が低減されている。
また、特許文献5では、花粉症患者由来の末梢血単核球に対するペプチドの刺激性の有無により、そのペプチドがスギ花粉アレルゲンに特異的に反応するヒトT細胞を不活性化できるかどうかを判定したことが記載されている。
一方、食物アレルギーについても、経口免疫寛容の誘導が検討されている。
特許文献6では、牛乳由来のカゼインをタンパク質分解酵素で分解して得られるペプチドを含むことを特徴とする、T細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤が提案されている。また、このペプチドには、IgE抗体との反応性が認められなかったことが記載されている。
特開2008−22794号公報 特開平9−56364号公報 特開平9−315998号公報 特開2014−240404号公報 特開2000−327699号公報 特開2011−173800号公報
Yasueda, H. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 71, 77−86 (1983) Sakaguchi, H. et al., Allergy, 45, 309−312 (1990)
従来の抗ヒスタミン剤等の医薬品により、アレルギー反応によって生じる症状を改善することができる。
しかしながら、その効果を維持するためには、花粉が飛散するシーズン中、その医薬品を継続的に使用しなければならない。
また、眠気や口渇等の副作用を引き起こす問題がある。
従来の抗アレルギー作用を有する食品により、アレルギー反応により生じる症状を改善することができる。
しかしながら、医薬品により生じる副作用の可能性を低減させることができたとしても、その効果を維持するためには、抗ヒスタミン剤等の医薬品と同様に、その食品を継続的に摂取しなければならない。
従来の減感作療法により、花粉症に対するアレルギー反応を持続的に抑制することができる。
しかしながら、スギ花粉アレルゲンそのものやその断片、またはそれらの改変物等を用いるため、皮下注射ではアナフィラキシー、舌下投与でも局所のアレルギー反応等の副作用を引き起こす危険性を伴う。また、この危険性を回避するために、アレルゲンを少量から投与して徐々に増量して、体を慣れさせてゆく必要があるため、その治療期間は3〜5年もの長期にわたる。
現在提案されている経口免疫寛容の誘導により、減感作療法と比較して短期間でスギ花粉アレルゲンに対するアレルギー反応を持続的に抑えることができる可能性がある。
しかしながら、食経験のないスギ花粉アレルゲンのペプチド断片を用いた食品の開発には、医薬品と同様の臨床試験が要求されるため、実用化までに時間がかかる。
また、このペプチドは組み換え体であるために、その摂取に対して不安に思う者もいる。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、スギ花粉症の患者に、安全かつ簡便に免疫寛容を誘導できる、新規な技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、スギ花粉症の患者に、安全かつ簡便に免疫寛容を誘導できる、新規な技術を提供することを目的として、鋭意検討を行った。
その結果、発酵食品の製造に用いられてきた微生物が産生するペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼに特異的に応答するT細胞が、スギ花粉アレルゲンに対して、交差反応性を有していることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、以下の構成を含む。
(構成1)
微生物由来のペクテートリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクテートリアーゼの消化物、およびポリガラクツロナーゼの消化物からなる群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上を含有することを特徴とする、経口免疫寛容誘導剤。
(構成2)
上記微生物がアスペルギルス属に属する微生物である、構成1に記載の経口免疫寛容誘導剤。
(構成3)
上記微生物が食品用微生物である、構成1または2に記載の経口免疫寛容誘導剤。
(構成4)
上記食品用微生物が麹菌である、構成3に記載の経口免疫寛容誘導剤。
(構成5)
上記麹菌がアスペルギルス・オリゼである、構成4に記載の経口免疫寛容誘導剤。
(構成6)
構成1〜5のいずれか1つに記載の経口免疫寛容誘導剤を含有することを特徴とする、経口免疫寛容誘導用食品。
(構成7)
構成1〜5のいずれか1つに記載の経口免疫寛容誘導剤を含有することを特徴とする、経口免疫寛容誘導用医薬品。
(構成8)
微生物由来のペクテートリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクテートリアーゼの消化物、およびポリガラクツロナーゼの消化物からなる群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の含有量が高められた加工物または精製品と、他の食品素材とを配合する工程を含むことを特徴とする、加工食品の製造方法。
本発明によれば、経口免疫寛容を誘導するための新規な技術が提供される。
各種タンパク質をSDS−PAGEに供し、染色した結果を示す図である。 (a)は各種タンパク質に対して、抗Cry j1ポリクローナル抗体(anti−Cry j1 pAb)による免疫染色を行った結果を示す図であり、(b)は同様の各種タンパク質に対して、抗Cry j2ポリクローナル抗体(anti−Cry j2 pAb)による免疫染色を行った結果を示す図である。 (a)は各種タンパク質に対して、抗Cry j1モノクローナル抗体(anti−Cry j1 mAb)による免疫染色を行った結果を示す図であり、(b)は同様の各種タンパク質に対して、抗Cry j2モノクローナル抗体(anti−Cry j2 mAb)による免疫染色を行った結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、例示的に説明する。当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内において、本発明を変形や改良することが可能である。また、本発明の単純な変形または変更は、いずれも本発明の範囲に属するものである。よって、以下に記載する実施形態は、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
(微生物由来のペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼ)
本発明に用いる、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼ(以下、いずれか一方または両方を指して、単に「本発明に用いる酵素」ということがある)は、植物の細胞壁であるペクチンを分解する酵素の1種であり、微生物が産生するものである。
微生物が産生するペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼと主要なスギ花粉アレルゲンとの配列同一性は、必ずしも高くない。
例えば、本発明の好ましい実施形態において用いられる、アスペルギルス属が産生するペクテートリアーゼとCry j1の配列同一性は約32%、相同性は約65%である。
また、アスペルギルス属が産生するポリガラクツロナーゼとCry j2との配列同一性は約30%、相同性は約62%である。
本発明に用いられる、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼは、食品用微生物によっても、産生されている。
「食品用微生物」とは、食品で使用され、食品用として一般に安全と認められている微生物を意味する。
食品用微生物としては、発酵食品の種菌として用いられる微生物のほか、プロバイオティクスとして用いられる乳酸菌やビフィズス菌が挙げられる。
発酵食品に用いられる食品用微生物としては、味噌、醤油、漬け物、日本酒に用いられる麹菌、味噌、醤油、パン、ビール等に用いられる酵母、ヨーグルト、キムチ等に用いられる乳酸菌、納豆に用いられる納豆菌等が挙げられる。
麹菌は、野菜、穀類等の植物素材を原料として発酵を行うことができる。
麹菌としては、黒麹菌、白麹菌、黄麹菌、紅麹菌等が挙げられ、例えば、アスペルギルス属、モナスカス属に属する微生物が挙げられる。
麹菌は、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖等の様々な糖質やペクチンなどの多糖類を分解することができるため、ペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼの産生量が多い傾向にある。
アスペルギルス属に属する麹菌としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アルペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus luchuensis var. awamori)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus luchuensis var. usamii)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus luchuensis mut. Kawachii)、アスペルギルス・リューチューエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)等を挙げることができる。
酵母は、野菜、果実、穀類等の植物素材を原料として発酵を行うことができる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、トルロプシス属、ミコトルラ属、トルラスポラ属、キャンディダ属、ピキア属、ロードトルラ属に属する微生物が挙げられる。
酵母は、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖等の様々な糖質やペクチンなどの多糖類を分解することができるため、ペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼの産生量が多い傾向にある。
具体的な酵母の例としては、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、サッカロマイセス・ロキシー(Saccharomyces rouxii)、トルロプシス・ユチリス(Torulopsis utilis)、ミコトルラ・ジャポニカ(Mycotorula japonica)、トルラスポラ・デルブルエキ(Torulaspora delbrueckii)、トルラスポラ・ファーメンタチ(Torulaspora fermentati)、キャンディダ サケ(Candida sake)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ユチリス(Candida utilis)、ピキア・ファリノーサ(Pichia farinosa)等を挙げることができる。
植物性乳酸菌は、野菜、豆類、穀類等の植物素材を原料として発酵を行うことができる。
植物性乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ペディオコッカス属、ロイコノストック属、バチルス属に属する微生物が挙げられる。
植物性乳酸菌は、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖等の様々な糖質やペクチンなどの多糖類を分解することができるため、ペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼの産生量が多い傾向にある。
具体的な植物性乳酸菌の例としては、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)等を挙げることができる。
動物性乳酸菌は、動物由来のミルクや肉を原料として発酵を行うことができるが、ペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼも産生している。
動物性乳酸菌としては、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、リューコノストック・メゼンテロイデス(Leuconostoc mesentoroides)等を挙げることができる。
植物素材等の食品素材に種菌を添加して製造される発酵食品には、微生物が産生するペクテートリアーゼおよび/またはポリガラクツロナーゼが含まれている。
よって、当業者に公知の任意の発酵食品の製造方法を用いて、菌株に適当な温度および時間を設定することにより、本発明に用いる酵素を含む発酵食品を製造することができる。
上記の発酵食品に用いられる微生物を培養して得られる培養物にもまた、ペクテートリアーゼおよび/またはポリガラクツロナーゼが含まれている。
よって、それぞれの菌種に適した培地を用いて、発酵食品の製造条件に用いられる、菌株に適当な温度および時間等の条件で培養することにより、本発明に用いる酵素を含む培養物が得られる。
本発明に用いる酵素を含む培養物に対して、下記に例示する当業者に公知の任意の処理工程を施すことにより、任意の工程において、培養物の加工物を得ることができる。また、本発明に用いる酵素の精製品を得ることができる。
培養物の代わりに、発酵食品やその製造の任意の工程において得られる発酵物を原料として、発酵物の加工物を得ることができる。また、本発明に用いる酵素の精製品を得ることができる。
培養物に、遠心分離やろ過処理を施すことにより、本発明に用いる酵素が含まれている培養上清を得ることができる。
培養上清に対して、硫酸アンモニウム等の塩を添加して、タンパク質を析出させた後に、遠心分離等の処理により、本発明に用いる酵素を含む沈殿物を回収することができる。
得られた沈殿物を、透析膜や限外濾過膜を用いて脱塩または低分子化合物を除去した後、減圧濃縮や限外濾過等の処理を行うことにより、乾燥重量換算で本発明に用いる酵素の含有量が高められた液体(加工物)を得ることができる。
このようにして得られた液体を、当業者に公知の凍結乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥等の乾燥処理をすることにより、本発明に用いる酵素の含有量が高められた濃縮液や乾燥物等の加工物を得ることができる。
続いてこの濃縮物もしくは乾燥物に対して、酵素活性を指標としながら、イオン交換クロマトグラフィーやゲル濾過クロマトグラフィー等のカラム操作を行うことにより、本発明に用いる酵素の含有量をさらに高めることができる。精製度は、電気泳動法により確認することができる。このようにして、本発明に用いる酵素の精製品を製造することができる。
上記の精製操作の任意の工程で、本発明に用いる酵素の含有量が高められた加工物が得られる。
「本発明に用いる酵素の含有量が高められた加工物」とは、原料とした発酵物または培養物中のペクテートリアーゼおよび/またはポリガラクツロナーゼの含有量と比較して、乾燥重量換算で本発明に用いる酵素の含有量が高められたものをいう。
そのような加工物としては、例えば、培養物から菌体を除去して得られる培養上清、これからタンパク質分画を回収したもの、あるいはさらに限外濾過等を施すことにより、低分子分画を除去したもの等が挙げられる。
本発明に用いる酵素の含有量は、酵素活性を基準とすることができる。酵素活性は、後述の実施例に記載のようにして、乾燥重量あたりのunitとして規定することができる。
また、本発明に用いる酵素の含有量は、比活性(総タンパク質量あたりの酵素活性)を基準とすることができる。加工物のタンパク質の量は、例えば、当業者に公知のタンパク質の定量方法である、Lowry法を用いて、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準物質として定量することができる。このようにして、比活性(unit/総タンパク質量)を算出することができる。
これらの加工物や精製品は、必要に応じて安定化剤や抗酸化剤等の添加物を添加して、液状、半固形状、乾燥した固形状の形態にすることができる。
現在、発酵食品には用いられていないが、食品添加物に分類される食品用の酵素剤を産生する微生物が、工業的に広く用いられている。
発酵食品として用いられていない微生物に由来するものであっても、微生物が産生する、ペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼとして、本発明に用いることができる。
食品添加物として用いられる酵素を産生する微生物として、例えば、α―ガラクトシダーゼを産生するアスペルギルス・アクレアツス(Aspergillus aculetus)等が挙げられる。
(経口免疫寛容誘導剤)
本発明の経口免疫寛容誘導剤は、微生物由来のペクテートリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクテートリアーゼの消化物、およびポリガラクツロナーゼの消化物からなる群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上を含有することを特徴とする。
本発明は、本発明に用いる酵素が有する、アミノ酸配列の一次構造を利用するものであり、ヒトの体内で分泌される消化酵素等の作用後に生成するポリペプチドを利用するものでもある。
その作用は、本発明に用いる酵素に特異的に応答するT細胞が、スギ花粉アレルゲンに対しても交差反応性を有することを利用して、実質的にスギ花粉アレルゲン特異的なT細胞を刺激することにより、スギ花粉に対する免疫寛容を誘導するものである。
本発明の経口免疫寛容誘導剤は、本発明に用いられる酵素を経口的に摂食して、消化、吸収されることにより、その効果が得られるものである。
よって、本発明に用いる酵素に対して、事前にヒトの体内で起こるのと同様の消化処理を施して得られる、ペクテートリアーゼの消化物およびポリガラクツロナーゼの消化物もまた、本発明の経口免疫寛容誘導剤として用いることができる。
ヒトの体内で起こるのと同様の消化処理としては、例えば、塩酸等による酸処理、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン等のタンパク質分解酵素により、タンパク質を分解する処理が挙げられる。ヒト由来の酵素でなくとも、同様の作用を有する酵素を用いて処理したものも、本発明に用いる酵素の消化物として用いることができる。
本発明に用いる酵素の消化物は、発酵用の原材料(例えば、麹菌の場合には白米)に、発酵中に、発酵食品の製造の任意の工程において得られる発酵物に、または発酵食品に、タンパク質分解酵素等を添加して得ることができる。
また、培養物においても同様にして、その消化物を得ることができる。
本発明に用いる酵素を含む発酵食品は、そのまま本発明の経口免疫寛容誘導剤として提供することができる。
発酵終了後に固液分離を伴わない味噌等の場合には、最終製品中にペクテートリアーゼおよび/またはポリガラクツロナーゼが含まれているため、これはそのまま、本発明の経口免疫寛容誘導剤として提供することができる。
発酵食品が日本酒の場合、その製造工程において得られる醪、その後に固液分離して得られる日本酒および酒粕には、ペクテートリアーゼおよび/またはポリガラクツロナーゼが含まれており、これらもそのまま、本発明の経口免疫寛容誘導剤として提供することができる。
上記のようにして得られる、本発明に用いる酵素を含む発酵物、培養物、およびこれらの加工物、ならびに精製品は、液状、半固形状、固形状のような任意の形態で、本発明の経口免疫寛容誘導剤として提供することができる。
あるいはこれらと、食品もしくは医薬品等の製品に用いられる他の素材もしくは添加物とを組み合わせた組成物を、本発明の経口免疫寛容誘導剤として提供することができる。
固形状の形態で提供する場合、乾燥方法としては、当業者に公知の乾燥方法を採用することができる。そのような方法としては、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、流動層乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。デキストリン等の賦形剤を添加して混合した後に、噴霧乾燥を行うこともできる。
また、乾燥した後に、当業者に公知の方法により粉砕、または造粒することにより、粒度を調整することができる。
また、発酵物、培養物、精製品を製造する任意の工程において、これらを殺菌もしくは滅菌処理する工程を設けることができる。
殺菌もしくは滅菌方法としては、当業者に公知の方法を採用することができる。そのような方法としては、例えば、加熱殺菌、ろ過滅菌等が挙げられる。
また、これらと他の素材等とを組み合わせた組成物もしくは最終製品の段階で、殺菌もしくは滅菌処理を行うことができる。
本発明の経口免疫寛容誘導剤は、サプリメント、特定の用途に用いられる食品用の添加剤、医薬品もしくはその原材料等として用いられる。
また、本発明の経口免疫寛容誘導剤をそのまま、食品用の添加物、医薬品用の添加物等の製品とすることができる。
本発明者らは、本発明に用いる酵素に特異的に応答するT細胞が、スギ花粉アレルゲンに対して交差反応性を有することを見出して本発明を完成させた。この交差反応性は、当業者に公知の方法を用いて、確認することができる。
例えば、本発明に用いる酵素やその消化物を免疫原として投与していた実験動物から分離された脾臓細胞が、スギ花粉アレルゲンによって活性化するかを観察することにより、確認することができる。
その分離された脾臓細胞がスギ花粉アレルゲンの刺激によって、特異的に増殖する場合、先の免疫原により誘導されたT細胞が、スギ花粉アレルゲンに対して交差反応性を有することを意味する。
また、ヒト以外の動物由来のスギ花粉アレルゲン特異的なポリクローナル抗体が、本発明に用いる酵素が有するアミノ酸配列からなる一次構造に対して、交差反応性を有するか否かを観察することによっても、確認することができる。
本発明に用いるペクテートリアーゼは、Cry j1との配列同一性が高くないにもかかわらず、Cry j1に特異的なポリクローナル抗体との交差反応性があり、驚くべきことに酵素種が異なるCry j2に特異的なポリクローナル抗体との交差反応性をも有していた。
また、本発明に用いるポリガラクツロナーゼは、Cry j2との配列同一性が高くないにもかかわらず、Cry j2に特異的なポリクローナル抗体との交差反応性があり、驚くべきことに酵素種が異なる、Cry j1に特異的な抗体との交差反応性をも有していた。
よって、本発明に用いる酵素は、当業者が予測できない反応可能性を有しているといえる。
本発明に用いる酵素に特異的に応答するT細胞が、スギ花粉アレルゲンに対して交差反応性を有することは、本発明に用いる酵素が、スギ花粉アレルゲン特異的に応答するT細胞が認識するエピトープ(T細胞エピトープ)を有することを意味する。
一方、スギ花粉アレルゲンの各種エピトープの位置や構造については、様々な報告があり、研究者によって必ずしも一致しない。
よって、本発明に用いる酵素およびその消化物は、スギ花粉アレルゲン特異的なT細胞が応答し得る複数のT細胞エピトープを有している可能性があり、多くの花粉症患者に対して効果が期待できる。
抗原特異的なT細胞が認識するT細胞エピトープは、7〜30個のアミノ酸配列からなる一次構造である。
よって、さまざまな加工工程において加熱や酸処理等の処理が施されたとしても、そのアミノ酸の一次構造の全てが破壊されることはない。
また、本発明に用いる酵素が摂取されて、胃酸や消化酵素によって、タンパク質の高次構造や一次構造が分解されたとしても、その酵素に由来する7〜30個のアミノ酸配列からなる一次構造の全てが分解されることはない。
よって、本発明に用いる酵素の消化物は、スギ花粉特異的なT細胞が応答し得るT細胞エピトープが保存されたまま、腸管から吸収されるか、腸間膜上皮細胞に取り込まれて抗原提示細胞に貪食される。
一方、これらの酵素の高次構造は、ヒトの体内における消化により分解されるため、本発明に用いる酵素が血液中でスギ花粉アレルゲン特異的なIgE抗体と反応することは考え難い。
本発明の経口免疫寛容誘導剤は、アレルギー症状を一時的に改善するものではなく、アレルギー反応を取り除くための原因療法のために用いるものであるため、対症療法に用いられてきた従来の医薬品や食品に比べて優れている。
本発明の経口免疫寛容誘導剤は、スギ花粉アレルゲンに対する免疫寛容を誘導することを目的として、経口的に摂取され、消化管から吸収されて作用するため、舌下投与による減感作療法とはその作用機序が全く異なる。
よって、減感作療法において観察される副作用の症状を引き起こすことは考え難い。
本発明の経口免疫寛容誘導剤は、スギ花粉アレルゲンやその断片、あるいはそれらの改変物を用いるのではなく、食経験がある食品成分を、これまでどおり、食して利用するものである。
よって、人によっては、組み換え体と比べると、その経口摂取に安心感がある。
本発明に用いる酵素は、発酵食品に用いられてきた微生物が産生するものでもあり、日本で伝統的に食されてきた歴史に鑑みても、経口摂取において安全性が高い。
また、これまでに、発酵食品に含まれるペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼが原因となる食物アレルギーや口腔アレルギー症候群も報告されていない。
よって、本発明に用いる酵素は、経口摂取において、安全性が高く、実用化しやすい。
好ましい実施態様において、本発明は、微生物由来のペクテートリアーゼおよびペクテートリアーゼの消化物のうちの少なくとも1つと、ポリガラクツロナーゼおよびポリガラクツロナーゼの消化物のうちの少なくとも1つとを含有することを特徴とする、経口免疫寛容誘導剤に関する。
この構成により、本発明の経口免疫寛容誘導剤は、ペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼのいずれか一方のみが有する可能性があるT細胞エピトープの全てを含むことになる。
好ましい実施形態において、本発明に用いる酵素を産生する微生物は、アスペルギルス属に属する微生物である。
アスペルギルス属に属する微生物が用いられる発酵食品は、例えば、味噌として、日本人のほとんどが習慣的に食してきたものである。
よって、花粉症が多い日本人において、歴史的に安全性が確認されている。
1つの好ましい実施形態において、本発明に用いる酵素を産生する微生物は、食品用微生物である。
食品用として長く用いられてきており、より安全性が高いためである。
より好ましい実施形態において、本発明に用いる酵素を産生する食品用微生物は、麹菌である。
麹菌は、味噌以外の日本酒やその酒粕としても、日本では習慣的に食されてきたものであり、花粉症が多い日本人において、歴史的に安全性が確認されているためである。
さらに好ましい実施形態において、本発明に用いる酵素を産生する麹菌は、アスペルギルス・オリゼである。
アスペルギルス・オリゼは、麹菌の中でも特に汎用されており、日本人が慣れ親しんだ微生物であるためである。
本発明は、日本で特徴的に観察されるスギ花粉症の患者もしくは症状を発症する者が、安全かつ簡便に免疫寛容を誘導できる、新規な技術を提供することを目的とする。
以上の通り、本発明の経口免疫寛容誘導剤により、安全かつ簡便に、スギ花粉アレルゲンに対する免疫寛容を誘導することができる。
この経口寛容免疫誘導剤は、花粉症の原因を取り除くことができ、免疫寛容の誘導に用いられてきた従来の医薬品と比べると安全性が高い。
よって本発明の免疫寛容誘導剤は、極めて有用である。
(免疫寛容誘導剤を含む食品)
本発明の経口免疫寛容誘導用食品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤を含有することを特徴とする。
本発明の食品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤と同様に、経口免疫寛容を誘導するために用いられる。
本発明の食品は、ペクテートリアーゼおよび/またはポリガラクツロナーゼを含有する発酵食品をそのまま、経口免疫寛容誘導用として提供することができる。
また、本発明の食品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤と他の食品素材や添加物等と組み合わせた食品組成物として、当業者に公知の食品の製造方法により製造することができる。
本発明の食品は、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、固体成形物等の、経口摂取可能な任意の形態とすることができる。
本発明の食品は、例えば、茶、紅茶、コーヒー、清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、栄養ドリンク等の飲料、チョコレート、クッキー、ビスケット等の菓子類、アイスクリーム等の冷菓、ヨーグルト、加工乳等の乳製品、パン、ケーキミックス等の小麦粉製品、そば等の麺類、マヨネーズ、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂加工品、水産加工品、畜産加工品、農産加工品として製造することができる。これらの食品の製造時に、本発明の経口免疫寛容誘導剤を添加して含有させることにより、本発明の食品を製造することができる。
本発明の食品には、他の食品素材のほか、必要に応じて、甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化もしくは糊料、アスコルビン酸等の酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤もしくは防ばい剤、イーストフード、かんすい、苦味料、酵素、光沢剤、香料、酸味料、調味料、豆腐用凝固剤、乳化剤、pH調整剤、膨脹剤、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等の栄養強化剤、製造用剤等の添加物を添加することができる。
また、本発明の食品は、保健機能食品(特定保健機能食品、機能性表示食品、栄養機能食品)や、いわゆる健康食品、濃厚栄養剤、流動食、幼児食として製造することができる。
本発明の食品において、本発明の経口免疫寛容誘導剤の含有量は、食品の形態、摂取するヒトの年齢に応じて、本発明の医薬品と同様にして、適宜設定できる。
本発明の食品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤を含有することを特徴としているため、その利点を共有し、極めて有用である。
(免疫寛容誘導剤を含む医薬品)
本発明の免疫寛容誘導用医薬品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤を含有することを特徴とする。
本発明の医薬品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤と同様に、免疫寛容を導入するために用いられる。
本発明の医薬品は、経口的に投与される内服薬である。
本発明の医薬品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤を有効成分として添加し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドロップ、丸剤、内用液剤等の任意の剤形として製造することができる。
この場合、本発明の医薬品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤と経口剤の製造に通常用いられる他の添加物とを組み合わせて、当業者に公知の医薬品の製造方法により製剤化することができる。
本発明の医薬品の製造に用いられる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、分散剤、流動化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、着香剤、溶解補助剤、着色剤、粘稠剤等が挙げられる。
本発明の医薬品の投与量は、これを適用する者の年齢、体重、性別、症状に応じて、経口免疫寛容を誘導できる範囲で、適宜設定できる。
例えば、1日に摂取する用量を、酵素およびその酵素を構成していた消化物の重量として、適宜設定することができる。摂取回数は、任意であり、1日1〜数回で、適宜設定することができる。
また、酵素活性や酵素の比活性を指標として、用量を設定することもできる。
本発明の医薬品は、本発明の経口免疫寛容誘導剤を含有することを特徴としているため、その利点を共有し、極めて有用である。
(加工食品の製造方法)
1つの実施形態において、本発明は、微生物由来のペクテートリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクテートリアーゼの消化物、およびポリガラクツロナーゼの消化物からなる群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の含有量が高められた加工物または精製品と、他の食品素材とを配合する工程を含むことを特徴とする、加工食品の製造方法に関する。
本発明の加工食品の製造方法により、本発明に用いる酵素またはその消化物を含まないか、あるいは含有量が少ない他の食品素材に、本発明に用いる酵素またはその消化物が配合された、あるいはその含有量が高められた新規な加工食品を製造することができる。
好ましい実施態様において、本発明に用いる酵素の含有量が高められた加工物は、培養終了時に得られる培養物または発酵終了時に得られる発酵物のときと比べて、乾燥重量あたりの酵素の含有量もしくは酵素活性、または比活性が、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上高められた加工物である。
本発明に用いる酵素の消化物の含有量が高められた加工物は、培養終了時に得られる培養物または発酵終了時に得られる発酵物に含まれる酵素から得られる消化物の量と比べて、乾燥重量あたりの消化物の含有量が、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上高められた加工物である。
本発明に用いる酵素またはその消化物の含有量がより高められた加工物を用いて加工食品を製造するため、その加工物を少量配合することにより、経口免疫寛容を誘導するために有用な新規な加工食品を製造することができる。また、加工食品中に含まれる、本発明に用いる酵素またはその消化物の含有量をより高くすることができる。
本発明の製造方法により得られる新規な加工食品は、通常の加工食品に比べて、本発明に用いる酵素またはその消化物が付加され、あるいはそれらの含有量が高められているため、経口免疫寛容を誘導するために有用であり、その付加価値が高い。
よって、本発明の加工食品の製造方法は、極めて有用である。
<実施例1>
(微生物由来のペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼの精製)
(1)麹菌の培養
麹菌の培地となる麹原料に日本国産の白米を使用した。白米は500g量った後、浸る程度の水道水を用いて、4℃で17時間浸漬を行い、1〜2時間の水切りをした後、蒸し器で1時間蒸した。
次いで、40℃程度に冷ましてから、市販の麹菌(アスペルギルス・オリゼ)を植菌した。麹菌量は培地の1000分の1とした。植菌後プラスチック容器に移し、恒温器で、35℃で68時間培養して、本発明に用いる酵素を含有する培養物を得た。
(2)粗酵素液の抽出
15mlの遠心管に1.0gの試料(培養物)を入れ、これにMcilvaine緩衝液(pH4.5)を5ml加え、ボルテックスで攪拌した後、3800rpmで15分間遠心分離を行い、上清を粗酵素抽出液とした。
この粗酵素抽出液は、培養物の加工物として、本発明に用いることができる。
(3)ペクテートリアーゼ活性の測定
1.0gのペクチン(かんきつ類由来(和光純薬工業株式会社))を50mM トリス塩酸緩衝液(pH9.0)で100mlに定量することにより、1% ペクチン溶液を調製した。
遠心管に、以下の反応混合液1を入れ、恒温水槽で、30℃で30分間反応させた後、分光光度計(HITACHI U−5100)を用いて235nmでの吸光度を測定した。
ペクテートリアーゼの酵素活性は、1分間に235nmでの吸光度を1.0増加させる酵素量を1unitと定義した。
(反応混合液1)
1% ペクチン溶液 400μl
3mM CaCl 400μl
0.2M トリス塩酸緩衝液(pH8.5) 200μl
酵素抽出液(粗酵素抽出液の場合もある) 200μl
(4)ポリガラクツロナーゼ活性の測定
1.41gのNaOHを蒸留水で30mlに定量し、1%DNS(和光純薬工業株式会社)溶液88mlと混合してA液とした。また、2.2mlの10% NaOH溶液に、1.0gの結晶フェノール(和光純薬工業株式会社)を加えて、蒸留水で10mlとし、この溶液の6.9mlに0.69gのNaHCO(和光純薬工業株式会社)を溶解してB液とした。次いで、B液にA液を加えて、室温で2日間安定させることにより、DNS(3,5−dinitrosalicylic acid)試薬を調製し、褐色瓶で保存したものを測定に使用した。
遠心管に、以下の反応混合液2を入れ、恒温水槽で、30℃で30分間反応させた。その後、DNS試薬を0.6mlずつ加え、沸騰水中で5分間加熱後、氷水に浸け反応を停止させた。
次いで、冷却した蒸留水で5mlに希釈し、分光光度計で500nmでの吸光度を測定した。また、ガラクツロン酸を標準物質として検量線を作成した。
ポリガラクツロナーゼの酵素活性は、1分間に反応混合液1mlあたり、ガラクツロン酸が1μmol生成される酵素量を1unitと定義した。
(反応混合液2)
1% ペクチン溶液 100μl
1M NaCl 20μl
0.5M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5) 20μl
酵素抽出液(粗酵素抽出液の場合もある) 60μl
(5)ペクテートリアーゼの精製
MLFTPP(Macroaffinity ligand−facilitated three phase partitioning)法により酵素の精製を行った。
上記のようにして得られた1mLの粗酵素抽出液と2mLの0.5%アルギン酸ナトリウム溶液(pH3.8(1M 酢酸溶液で調整))とを遠心管に加え、5分間攪拌後、恒温水槽で、30℃で30分放置した。
次いで、2mLの0.02M 塩化カルシウム溶液(pH3.8(1M 酢酸溶液で調整))を加え、恒温水槽で、30℃で15分間放置した。
続いて、恒温水槽から遠心管を取り出し、0.88gの硫酸アンモニウムと遠心管中の溶液と同量のt−ブチルアルコールを加え、恒温水槽で、30℃で1時間放置した。
さらに、2000gで10分間遠心分離を行い、中間のタンパク層以外の液相を除いた。得られたタンパク質を2mLの0.02M 塩化カルシウム溶液を用いて、3回洗浄した後、1.5mLの1M 塩化ナトリウム溶液(pH4.3(1M 酢酸溶液で調整))に溶解し、5分攪拌して恒温水槽で、30℃で2時間放置した。
続いて、1.5mLの0.2M 塩化カルシウム溶液(pH4.3((1M 酢酸溶液で調整))を加え、アルギン酸を沈殿させ、上清を透析して、酵素精製溶液(精製品)とした。
また、上記のようにして得られた粗酵素抽出液および酵素精製溶液に含まれるタンパク質量をLowry法により定量した。なお、標準物質として、BSA(ナカライテスク株式会社)を用いた。
上記の操作により得られた、酵素精製溶液のタンパク質量あたりのペクテートリアーゼの比活性(unit/mg)は、精製前の粗酵素抽出液に比べて、約10倍となった。
<実施例2>
(T細胞の交差反応性1)
日本チャールズリバー社より購入した7週齢のBALB/c AnNCrlCrylj(SPF/VAF)雌マウスに、免疫原として、以下に記載の(1)〜(4)のタンパク質を10日おきに、2回、腹腔内投与した。なお、非免疫のマウスを比較対照として飼育した。
(1)麹A(n=3)
日本国産米を麹原料として使用して、実施例1と同様にして麹菌(アスペルギルス・オリゼ)を植菌して得られた培養物を、リン酸緩衝生理食塩水中にて室温で4時間攪拌(rotate)して得られた抽出物(タンパク質量として100μg/回)
(2)麹B(n=3)
日本国産米50%およびタイ米50%からなる麹原料を使用して、実施例1と同様にして麹菌(アスペルギルス・オリゼ)を植菌して得られた培養物を、リン酸緩衝生理食塩水中にて室温で4時間攪拌(rotate)して得られた抽出物(タンパク質量として100μg/回)
(3)麹A+麹B/IFA(n=2)
麹Aと麹Bの等量混合物(タンパク質量として100μg/回)と非完全フロイントアジュバント(IFA、Difco Laboratories社)(100μl/回))との等量混合物(200μl/回)
(4)SBP/IFA(n=2)
スギ花粉粗抗原(SBP(Sugi basic protein)、Hayashibara社)(10μg/回)とIFA(100μl/回)の等容量混合物(200μl/回)
(5)非免疫(n=1)
2回目の免疫原の投与の7日後から、上記(1)〜(4)を投与した動物に対して、続けて、(1)には麹A(タンパク質量として100μg/回)、(2)には麹B(タンパク質量として100μg/回)、(3)には麹Aと麹Bの等量混合物(タンパク質量として100μg/回)、(4)にはSBP(5μg/回)を、10日おきに、2回、腹腔内投与した。なお、非免疫の動物には、何も投与しなかった。
最終免疫から14日後にマウスを安楽死させて、脾臓を摘出した。脾臓から脾細胞を分離し、1mlの溶血緩衝液(150mM 塩化アンモニウム、10mM 炭酸水素カリウム、100mM EDTAを含む水溶液)を加え、室温で2分間静置した後、9mlのリン酸緩衝液(PBS)を加え、遠心分離した。
上清を捨てた後、細胞を10mlのPBSを用いて洗浄し、血球計数盤を用いて光学顕微鏡下で生細胞数を計数し、RPMI培地(Sigma社)中で96−well平底細胞培養用プレート(Falcon, Corning社)にて、終濃度5μg/mlのSBP存在下にて、終細胞数5×10cells/mlにて37℃、5%CO環境下で2日間培養した。
培養2日目に細胞増殖を測定する試薬(Cell Titer 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega社))を各培養ウェルに10μl添加し、添加5時間後のOD490を測定することより細胞増殖を確認した。
結果を表1に示す。
表1の結果は、非免疫のマウスと比較して、あらかじめSBPを免疫原として投与したマウスから分離された脾細胞中に含まれ、抗原特異的に反応するT細胞が、SBPの刺激により、特異的に増殖したことを示す。
また、この結果は、麹A、麹B、もしくはそれらの混合物を免疫原として投与したマウスから分離されたT細胞が、SBPの刺激により、特異的に増殖したことを示す。
これらの結果より、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼを含有する抽出物である麹Aおよび麹Bに対して特異的に応答するT細胞が、SBP(スギ花粉粗抗原)に対して、交差反応性を有していることが理解できる。
<実施例3>
(T細胞の交差反応性2)
分離した脾細胞に対する刺激を、SBPに変えて主要なスギ花粉アレルゲンであるCry j1に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、T細胞の交差反応性を確認した。
すなわち、得られた脾細胞を終濃度5μg/mlのCry j1(Hayashibara社)存在下にて、終細胞数5×10cells/mlにて2日間培養した後、細胞増殖を測定する試薬を添加して、細胞増殖を観察した。
結果を表2に示す。
表2の結果は、非免疫のマウスと比較して、あらかじめSBPを免疫原として投与したマウスから分離されたT細胞が、主要なスギ花粉アレルゲンであるCry j1の刺激により、特異的に増殖したことを示す。
また、この結果は、麹A、麹B、もしくはそれらの混合物を免疫原として投与したマウスから分離されたT細胞が、Cry j1の刺激により、特異的に増殖したことを示す。
これらの結果より、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼを含有する抽出物である麹Aおよび麹Bに対して特異的に応答するT細胞が、主要なスギ花粉アレルゲンであるCry j1に対して、交差反応性を有していることが理解できる。
<実施例4>
(T細胞の交差反応性3)
日本チャールズリバー社より購入した7週齢のBALB/c AnNCrlCrylj(SPF/VAF)雌マウスに、免疫原として、以下に記載の(1)〜(4)のタンパク質を10日おきに、2回、腹腔内投与した。なお、非免疫のマウスを比較対照として飼育した。
(1)麹AB(n=4)
実施例3で使用したのと同様の麹Aと麹Bの抽出物の等量混合物(タンパク質量として100μg/回)
(2)麹AB/Alum(n=3)
上記麹AB(タンパク質量として100μg/回)と水酸化アルミニウムゲル(Alum、2mg/回)の混合物
(3)麹AB/IFA(n=4)
上記麹AB(タンパク質量として100μg/回)とIFA(100μl/回)の等量混合物(200μl/回)
(4)SBP/Alum(n=4)
SBP(5μg/回)とAlum(2mg/回)の混合物
(5)非免疫(n=2)
2回目の投与の4日後から、上記(1)〜(4)を投与した動物に対して、(1)〜(3)には、続けて、麹AB(タンパク質量として100μg/回)、(4)には、続けて、SBP(5μg/回)を腹腔内投与した。
最終免疫から10日後にマウスを安楽死させ脾臓を摘出した。脾細胞を分離し、1mlの溶血緩衝液を加え、室温で2分間静置した後、9mlのPBSを加え、遠心分離した。
上清を捨てた後、細胞を10mlのPBSにて洗浄し、血球計数盤を用いて光学顕微鏡下で生細胞数を計数し、RPMI培地中で96−well平底細胞培養用プレートにて、終濃度5μg/mlのSBP、Cry j1、ペクテートリアーゼ(アスペルギルス属由来Pectatelyase、Megazyme社)、またはポリガラクツロナーゼ(endo−polygalacturonanase M2 from Aspergillus aculetus(Galacturonase)、Megazyme社)存在下にて、終細胞数5×10cells/ml、37℃、5%CO環境下で3日間培養した。
培養終了18時間前に、終濃度が10μMとなるように臭化デオキシウリジン(BrdU)を加え、BrdU添加18時間後に遠心分離を行い、上清を捨てた後、細胞を60℃で乾燥させた。
乾燥後、細胞増殖ELISA、BrdU発色キット(Cell Proliferation ELISA, BrdU (colorimetric)、Roche社)にてBrdU取り込み量を測定し、細胞増殖を確認した。
結果を表3に示す。
表3の結果は、非免疫のマウスと比較して、あらかじめSBPを免疫原として投与したマウスから分離されたT細胞が、SBPまたはCry j1の刺激により、特異的に増殖したことを示す。
また、この結果は、麹Aと麹Bの混合物(麹AB)を免疫原として投与したマウスのT細胞が、SBPまたはCry j1の刺激により、特異的に増殖したことを示す。
これらの結果より、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼを含有する麹ABに対して特異的に応答するT細胞が、SBP(スギ花粉粗抗原)およびCry j1(主要なスギ花粉アレルゲン)に対して、交差反応性を有していることが理解できる。
また、この結果は、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼを含有する麹ABを免疫原として投与したマウスから分離されたT細胞は、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼによる刺激により、特異的に増殖したことを示す。
一方、SBPを免疫原として投与したマウスから分離されたT細胞では、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼの刺激による、特異的な増殖は観察されなかった。
これらの結果は、SBPに特異的に応答するT細胞は、必ずしもすべてのペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼに対して、交差反応性を有しているわけではないことを示す。
すなわち、ペクテートリアーゼまたはポリガラクツロナーゼを用いて、スギ花粉アレルゲン特異的なT細胞を誘導し、さらにこのT細胞を刺激することができるが、スギ花粉アレルゲンによって誘導されるT細胞は、麹由来のペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼによって刺激することができないことを示す。
よって、本発明の経口免疫寛容誘導剤の作用は、スギ花粉アレルゲンやその改変物を用いる従来の方法における作用とは、少なくとも部分的に異なる作用によるものであると考えられる。
SBPによって誘導されるT細胞が、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼに対して交差反応性を示さないことは、ペクテートリアーゼおよびポリガラクツロナーゼを反復的に経口摂取しても、既往のスギ花粉症の原因となったアレルギー反応を引き起こさず、本発明の経口免疫寛容誘導剤の安全性が高い可能性を示す。
また、T細胞の交差反応性に関するこれらの結果は、本発明に用いる酵素に特異的に応答するT細胞の交差反応性が、単に酵素の種類や配列同一性に基づいて、当業者が容易に予測し得るものではないことを示す。
<実施例5>
(主要なスギ花粉に特異的なポリクローナル抗体の交差反応性)
SBP、ペクテートリアーゼ(Pectate Lyase from Aspergillus sp.(Pec)、Megazyme社)、ポリガラクツロナーゼ(endo−polygalacturonanase M2 from Aspergillus aculetus(Gal)、Megazyme社)、鶏卵アルブミン(OVA)(以上、それぞれ1μg)をジチオトレイトール(DTT)存在下にて、分子量マーカー(M.K.)であるLMW(Amersham社)とともに12.5% SDS−PAGEゲル上で電気泳動を行い、クマシー青(CBB)で染色した。
なお、この電気泳動では、DTTとSDSを用いているため、各タンパク質のアミノ酸配列の一次構造が、抗体によって認識可能な状態にある。
結果を図1に示す。
同様にして電気泳動を行い、ゲル中のタンパク質を1mA/cmで90分間、PVDF膜に転写した後、3% skim milk/PBST(0.1% Tween20を含有するPBS)にて室温で1.5時間ブロッキングした。
次いで、PBSTを用いてメンブレンを洗浄し、3% skim milk/PBSTにて2000倍希釈したウサギ由来の抗Cry j1ポリクローナル抗体(anti−Cry j1 pAb、Hayashibara社)もしくはウサギ由来の抗Cry j2 ポリクローナル抗体(anti−Cry j2 pAb、Hayashibara社)と1時間インキュベート後、PBSTにて3回洗浄し、2000倍希釈したanti−rabbit IgG抗体(Sigma社)と1時間インキュベート後、メンブレンをPBSTにて4回洗浄し、ECL prime(Amersham社)にて発光させ、X−ray film (Amersham社)にて陽性結合を検出した。
結果を図2に示す。
図2(a)の結果は、主要なスギ花粉アレルゲンである、Cry j1に特異的に結合するポリクローナル抗体が、SBPのほか、ペクテートリアーゼ(Pec)だけでなく、ポリガラクツロナーゼ(Gal)を認識して結合したことを示す。
すなわち、anti−Cry j1 pAbは、PecおよびGalのアミノ酸配列の一次構造に対して交差反応性を有していることが理解できる。
また、図2(b)の結果は、主要なスギ花粉アレルゲンである、Cry j2に特異的に結合するポリクローナル抗体も、SBPのほか、Galだけでなく、Pecを認識して結合したことを示す。
すなわち、anti−Cry j2 pAbは、GalおよびPecのアミノ酸配列の一次構造に対して交差反応性を有していることが理解できる。
<実施例6>
(主要なスギ花粉に特異的なモノクローナル抗体の交差反応性)
分子量マーカー(M.K.)としてBiotin−ladder(Cell Signaling社)を用い、実施例5で用いたポリクローナル抗体をモノクローナル抗体に変更したこと以外は、実施例5と同様にして、抗体の交差反応性を確認した。
実施例5で用いたポリクローナル抗体の変わりに、1000倍希釈したマウス由来の抗Cry j1モノクローナル抗体013(anti−Cry j1 mAb、Hayashibara社)およびマウス由来の抗Cry j2モノクローナル抗体T27(anti−Cry j2 mAb、Hayashibara社)と1時間インキュベート後、PBSTにてメンブレンを4回洗浄し、2000倍希釈したanti−mouse IgG抗体(Sigma社)および1000倍希釈したanti−Biotin抗体(Cell Signaling社)と1時間インキュベート後、メンブレンをPBSTにて4回洗浄し、ECL primeにて発光させ、X−ray filmにて陽性結合を検出した。
結果を図3に示す。
図3(a)の結果は、主要なスギ花粉アレルゲンである、Cry j1に特異的に結合するモノクローナル抗体が、SBPのほか、ペクテートリアーゼ(Pec)だけでなく、ポリガラクツロナーゼ(Gal)を認識して結合したことを示す。
すなわち、anti−Cry j1 mAbは、PecおよびGalのアミノ酸配列の一次構造に対して交差反応性を有していることが理解できる。
一方、実施例5に記載の通り、Cry j2に特異的に結合するポリクローナル抗体が、GalおよびPecに対して交差反応性を有していたのに対して、本実施例に用いたanti−Cry j2 mAbには、GalおよびPecに対する、交差反応性は観察されなかった(図3(b))。
抗体の交差反応性に関するこれらの結果は、本発明に用いる酵素に特異的に応答するT細胞の交差反応性が、単に酵素の種類や配列同一性に基づいて、当業者が容易に予測し得るものではないことを示す。
以上の通り、本発明に用いるペクテートリアーゼ(Pec)またはポリガラクツロナーゼ(Gal)により、経口免疫寛容の誘導において重要な役割を担う、スギ花粉アレルゲンに特異的に応答するT細胞を誘導し、刺激できることが確認された。
また、PecまたはGalを免疫原として誘導されるT細胞は、スギ花粉アレルゲンに対して交差反応性を有するのに対して、スギ花粉アレルゲンを免疫原として誘導されるT細胞は、必ずしもPecとGalに対する交差反応性を有していない。これは、PecまたはGalを反復的に経口摂取した場合の安全性が高い可能性を示す。
さらに、驚くべきことに、主要なスギ花粉アレルゲンに対して特異的なポリクローナル抗体は、酵素の種類に関係なく、PecおよびGalが有するアミノ酸配列からなる一次構造に対して交差反応性を有していた。このことは、本発明の経口免疫寛容誘導剤には、酵素の種類や主要なスギ花粉アレルゲンとの配列同一性では予測し得ない有用性があることを意味する。
以上のことから、本発明の経口免疫寛容誘導剤は、極めて有用である。
また、本発明の経口免疫寛容誘導剤に関連する技術も、極めて有用である。

Claims (8)

  1. 微生物由来のペクテートリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクテートリアーゼの消化物、およびポリガラクツロナーゼの消化物からなる群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上を含有することを特徴とする、経口免疫寛容誘導剤。
  2. 前記微生物がアスペルギルス属に属する微生物である、請求項1に記載の経口免疫寛容誘導剤。
  3. 前記微生物が食品用微生物である、請求項1または2に記載の経口免疫寛容誘導剤。
  4. 前記食品用微生物が麹菌である、請求項3に記載の経口免疫寛容誘導剤。
  5. 前記麹菌がアスペルギルス・オリゼである、請求項4に記載の経口免疫寛容誘導剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の経口免疫寛容誘導剤を含有することを特徴とする、経口免疫寛容誘導用食品。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の経口免疫寛容誘導剤を含有することを特徴とする、経口免疫寛容誘導用医薬品。
  8. 微生物由来のペクテートリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクテートリアーゼの消化物、およびポリガラクツロナーゼの消化物からなる群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の含有量が高められた加工物または精製品と、他の食品素材とを配合する工程を含むことを特徴とする、加工食品の製造方法。

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