A.実施形態:
A−1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、本実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された板状部材10およびベース部材20を備える。板状部材10とベース部材20とは、板状部材10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。
板状部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する板状の部材であり、例えばセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。板状部材10の直径は例えば50mm〜500mm程度(通常は200mm〜350mm程度)であり、板状部材10の厚さは例えば1mm〜10mm程度である。板状部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、板状部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」といい、図3に示すように、面方向の内、吸着面S1の中心点CPを中心とする円周方向を「円周方向CD」といい、面方向の内、円周方向CDに直交する方向を「径方向RD」という。
図2に示すように、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の吸着面S1に吸着固定される。
板状部材10の内部には、また、それぞれ導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された、ヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のためのドライバ電極層51および各種ビア53,54とが配置されている。本実施形態では、ヒータ電極層50はチャック電極40より下側に配置され、ドライバ電極層51はヒータ電極層50より下側に配置されている。これらの構成については、後に詳述する。
ベース部材20は、例えば板状部材10と同径の、または、板状部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm〜550mm程度(通常は220mm〜350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm〜40mm程度である。ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当し、ベース部材20の下面S4は、特許請求の範囲における第4の表面に相当する。
ベース部材20は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接着部30によって、板状部材10に接合されている。接着部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着部30の厚さは、例えば0.1mm〜1mm程度である。
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接着部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により板状部材10が冷却され、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
A−2.ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成:
次に、ヒータ電極層50の構成およびヒータ電極層50への給電のための構成について詳述する。上述したように、板状部材10には、ヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のためのドライバ電極層51および各種ビア53,54とが配置されている。また、静電チャック100には、ヒータ電極層50への給電のための他の構成(後述する端子用孔Htに収容されたパッド側給電端子72等)が設けられている。図4は、ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成を模式的に示す説明図である。図4の上段には、板状部材10に配置されたヒータ電極層50の一部のYZ断面構成が模式的に示されており、図4の中段には、板状部材10に配置されたドライバ電極層51の一部のXY平面構成が模式的に示されており、図4の下段には、ヒータ電極層50への給電のための他の構成のYZ断面構成が模式的に示されている。
ここで、図3に示すように、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10に、面方向(Z軸方向に直交する方向)に並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSE(図3において破線で示す)が設定されている。より詳細には、Z軸方向視で、板状部材10が、吸着面S1の中心点CPを中心とする同心円状の複数の第1の境界線BL1によって複数の仮想的な環状領域(ただし、中心点CPを含む領域のみは円状領域)に分割され、さらに各環状領域が、径方向RDに延びる複数の第2の境界線BL2によって円周方向CDに並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSEに分割されている。図4の上段には、一例として、板状部材10に設定された6つのセグメントSEが示されている。
図4の上段に示すように、ヒータ電極層50は、複数のヒータ電極500を含んでいる。ヒータ電極層50に含まれる複数のヒータ電極500のそれぞれは、板状部材10に設定された複数のセグメントSEの1つに配置されている。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに、1つのヒータ電極500が配置されている。換言すれば、板状部材10において、1つのヒータ電極500が配置された部分(主として該ヒータ電極500により加熱される部分)が、1つのセグメントSEとなる。
図5は、各セグメントSEに配置されたヒータ電極500のXY断面構成を模式的に示す説明図である。図5に示すように、ヒータ電極500は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部502と、ヒータライン部502の両端部に接続されたヒータパッド部504とを有する。本実施形態では、ヒータライン部502は、Z軸方向視で、セグメントSE内の各位置をできるだけ偏り無く通るような形状とされている。他のセグメントSEに配置されたヒータ電極500の構成も同様である。
なお、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに1つのヒータ電極500が配置されているが、ここで言う1つのヒータ電極500とは、独立して制御可能なヒータ電極500の単位を意味しており、必ずしも単一のヒータ電極500に限定されるものではない。例えば、1つのセグメントSEに、互いに共通に制御される複数のヒータ電極500が配置されているとしてもよい。また、1つのセグメントSEに配置されたヒータ電極500のヒータライン部502の構成が、Z軸方向における位置が互いに異なる複数層のヒータライン部502の部分が互いに直列に接続された構成であるとしてもよい。
また、図4の中段に示すように、板状部材10に配置されたドライバ電極層51は、複数のドライバ電極510を有している。本実施形態では、ドライバ電極510は、Z軸方向視で、ある程度の幅を有する線状の導電部材である。複数のヒータ電極500のそれぞれについて、ヒータ電極500の一端は、ビア53を介して、1つのドライバ電極510に電気的に接続されており、該ヒータ電極500の他端は、ビア53を介して、他の1つのドライバ電極510に電気的に接続されている。なお、図4に示す例のように、各ヒータ電極500の一端については、互いに同一のドライバ電極510に電気的に接続されていてもよい。
また、図2および図4に示すように、静電チャック100には、複数の端子用孔Htが形成されている。図6は、静電チャック100における端子用孔Ht付近の部分(図4におけるX1部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図である。図6に示すように、各端子用孔Htは、ベース部材20を上面S3から下面S4まで貫通する第1の貫通孔22と、接着部30を上下方向に貫通する第2の貫通孔32と、板状部材10の下面S2側に形成された凹部12とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。端子用孔Htの延伸方向に直交する断面形状は任意に設定できるが、本実施形態では円形である。なお、本実施形態では、端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22と接着部30の第2の貫通孔32とは、略同径であるが、板状部材10に形成された凹部12の径は、第1の貫通孔22および第2の貫通孔32の径より小さい。また、本実施形態では、端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22は、その下端部(以下、「第1の貫通孔下端部23」という)において拡径している。
板状部材10の下面S2における各端子用孔Htに対応する位置(Z軸方向において端子用孔Htと重なる位置)には、導電性材料により構成された複数の給電パッド(給電電極)70が形成されている。各給電パッド70は、ビア54を介して、ドライバ電極層51のドライバ電極510に電気的に接続されている。給電パッド70は、特許請求の範囲における給電電極に相当する。
図2、図4および図6に示すように、各端子用孔Htにおいて、各給電パッド70上には、導電性材料により構成されたパッド側給電端子72が設けられている。各パッド側給電端子72は、基部74と、基部74から延びる棒状部76とを有している。パッド側給電端子72の基部74は、例えばろう材78を用いたろう付けにより給電パッド70に接合されている。パッド側給電端子72は、特許請求の範囲における第1の給電端子に相当する。
また、図2、図4および図6に示すように、各端子用孔Ht内には、上側コネクタ200が収容されている。上側コネクタ200は、端子用孔Ht内における上側の端部付近に位置している。上側コネクタ200は、第1のハウジング210と、第2のハウジング220と、ソケット230とを備える。上側コネクタ200は、特許請求の範囲における接続部材に相当する。
上側コネクタ200の第1のハウジング210は、略円柱状の部材であり、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されている。Z軸方向視での第1のハウジング210の直径は、端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22および接着部30の第2の貫通孔32の直径より小さく、かつ、板状部材10の凹部12の直径より大きい。なお、第1のハウジング210の下側部分214は、他の部分より縮径している。第1のハウジング210の上面における外周付近の領域は、板状部材10の下面S2に当接している。これにより、板状部材10に対する(すなわち、給電パッド70やパッド側給電端子72に対する)第1のハウジング210のZ軸方向の位置決めがなされる。また、第1のハウジング210には、Z軸方向に延びる複数の貫通孔212が形成されており、各貫通孔212にパッド側給電端子72の棒状部76が挿通されている。これにより、板状部材10に対する(すなわち、給電パッド70やパッド側給電端子72に対する)第1のハウジング210の面方向および回転方向の位置決めがなされる。なお、第1のハウジング210の上面と、板状部材10の凹部12の底面および側面とにより囲まれた空間には、各給電パッド70間や各パッド側給電端子72間の絶縁のために、樹脂接着剤79が充填されている。また、第1のハウジング210の側面は、端子用孔Htの側面(端子用孔Htを構成する第2の貫通孔32および第1の貫通孔22の側面)から離間しており、両者の間に空間が存在している。
上側コネクタ200の第2のハウジング220は、略円柱状の部材であり、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されている。Z軸方向視での第2のハウジング220の直径は、第1のハウジング210の直径と略同一である。第2のハウジング220の上面側には、第1のハウジング210の下側部分214と嵌合する凹部224が形成されている。第2のハウジング220は、第2のハウジング220の凹部224に第1のハウジング210の下側部分214が嵌合した状態で、第1のハウジング210の下面に当接している。これにより、第1のハウジング210に対する(すなわち、板状部材10や給電パッド70、パッド側給電端子72に対する)第2のハウジング220のZ軸方向および面方向の位置決めがなされる。また、図示しないが、第2のハウジング220の凹部224の側面と、第1のハウジング210の下側部分214の側面と、の一方には凸部が形成され、他方には該凸部と嵌合する凹部が形成されている。これらの凸部と凹部とが嵌合することにより、第1のハウジング210に対する(すなわち、板状部材10や給電パッド70、パッド側給電端子72に対する)第2のハウジング220の回転方向の位置決めがなされる。また、第2のハウジング220には、Z軸方向に延びる複数の貫通孔222が形成されており、各貫通孔222にはソケット230が挿入(圧入)されている。また、第2のハウジング220の側面は、端子用孔Htの側面(端子用孔Htを構成する第2の貫通孔32および第1の貫通孔22の側面)から離間しており、両者の間に空間が存在している。
上側コネクタ200のソケット230は、略円柱状の部材であり、例えば金属等の導電性材料により形成されている。ソケット230の上面側には、パッド側給電端子72の棒状部76が挿入される孔232が形成されている。ソケット230の孔232にパッド側給電端子72の棒状部76が挿入された状態では、ソケット230とパッド側給電端子72とが電気的に接続される。なお、この状態では、各パッド側給電端子72間は、樹脂接着剤79や第1のハウジング210、第2のハウジング220が介在することによって互いに絶縁される。ソケット230は、特許請求の範囲における第2の給電端子に相当する。
また、図2、図4および図6に示すように、各端子用孔Ht内には、下側コネクタ300が収容されている。下側コネクタ300は、端子用孔Ht内における下側の端部付近に位置している。下側コネクタ300は、ハウジング310と、ソケット330とを備える。
下側コネクタ300のハウジング310は、略円柱状の部材であり、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されている。Z軸方向視でのハウジング310の直径は、端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22の直径と略同一である。そのため、ハウジング310の側面は、端子用孔Htの側面(第1の貫通孔22の側面)と接している。ハウジング310には、Z軸方向に延びる複数の貫通孔312が形成されており、各貫通孔312にはソケット330が挿入(圧入)されている。
また、ハウジング310の側面には、面方向に延びるスリット314が形成されている。該スリット314には、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されたCリング352が挿入されている。Cリング352における外周側の一部分は、スリット314からはみ出しており、該はみ出した部分の上面は、ベース部材20の第1の貫通孔下端部23の上面に当接している。これにより、ベース部材20に対するハウジング310のZ軸方向の位置決めがなされる。また、この第1の貫通孔下端部23内には、ハウジング310の下側部分を取り囲むような略円筒状の押さえプレート356が配置されており、該押さえプレート356は、止めネジ354によりベース部材20に固定されている。これにより、ハウジング310(下側コネクタ300)が、ベース部材20に固定される。なお、押さえプレート356は、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されている。
また、ハウジング310におけるZ軸方向視での中心付近には、Z軸方向に延びる貫通孔315が形成されており、該貫通孔315には、例えば樹脂等の絶縁材料により形成された押さえ部材340が挿通されている。押さえ部材340は、ハウジング310の貫通孔315の内周面に形成されたネジに螺号することにより、ハウジング310に固定されている。また、押さえ部材340の上端は、上側コネクタ200の第2のハウジング220における下面226(すなわち、板状部材10に対向する側とは反対側の表面)に当接している。押さえ部材340の存在により、上側コネクタ200の第2のハウジング220の下方向への移動(すなわち、上側コネクタ200の第2のハウジング220のパッド側給電端子72からの抜け)が規制される。
下側コネクタ300のソケット330は、略円柱状の部材であり、例えば金属等の導電性材料により形成されている。ソケット330の下面側には、電源側の端子が挿入される孔332が形成されている。また、ソケット330は、リード線80を介して、上側コネクタ200のソケット230と電気的に接続されている。
このような構成において、各ヒータ電極500は、電源(図示しない)に対して互いに並列に接続されている。電源から、下側コネクタ300のソケット330、リード線80、上側コネクタ200のソケット230、パッド側給電端子72、給電パッド70、ビア54、ドライバ電極510およびビア53を介して、ヒータ電極500に電圧が印加されると、ヒータ電極500が発熱する。これにより、ヒータ電極500が配置されたセグメントSEが加熱され、板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御(ひいては、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。本実施形態では、各ヒータ電極500がヒータ用電源に対して互いに並列に接続されているため、各ヒータ電極500単位で(すなわち、各セグメントSE単位で)ヒータ電極500の発熱量を制御することができ、セグメントSE単位での板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、よりきめ細かい単位での温度分布制御)を実現することができる。
A−3.端子用孔Ht付近の詳細構成:
静電チャック100における端子用孔Ht付近の部分の構成について、さらに詳細に説明する。図7は、静電チャック100における端子用孔Ht付近の部分のXY断面構成を拡大して示す説明図である。図7には、端子用孔Ht付近の部分における各部材(給電パッド70、パッド側給電端子72、ドライバ電極510等)のZ軸方向視での位置関係が示されている。
上述したように、本実施形態の静電チャック100では、各端子用孔Htに、複数の給電パッド70が配置されている。より具体的には、図7に示すように、本実施形態の静電チャック100では、各端子用孔Htに配置された給電パッド70の個数Mは、5個である。各給電パッド70上にはパッド側給電端子72が設けられているため、各端子用孔Htに配置されたパッド側給電端子72の個数や、パッド側給電端子72と接続される上側コネクタ200のソケット230の個数も、5個である。
図7に示すように、本実施形態の静電チャック100では、端子用孔Ht内に配置された5個の給電パッド70のすべてが、Z軸方向視で、単一の仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されている。なお、Z軸方向視において、給電パッド70の位置は、給電パッド70の中心P1の位置を意味する。また、Z軸方向視において、各給電パッド70が仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されているとは、仮想円VCの円周方向に沿って隣り合う2つの給電パッド70間の距離(仮想円VCの円周に沿った距離)の最大値と、該距離の最小値との差が、該距離の最大値の10%以下であることを意味する。なお、仮想円VCは、Z軸方向視での端子用孔Htの中心P0を中心とする仮想的な円である。
各給電パッド70上にはパッド側給電端子72が設けられているため、端子用孔Htに配置された5個のパッド側給電端子72も、Z軸方向視で、仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されている。なお、本実施形態では、Z軸方向視で、パッド側給電端子72の棒状部76は、給電パッド70の中心P1と重なっている。また、各パッド側給電端子72は上側コネクタ200のソケット230と嵌合しているため、端子用孔Htに配置された上側コネクタ200が備える5個のソケット230も、Z軸方向視で、仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されている。
また、図7に示すように、本実施形態の静電チャック100では、端子用孔Htに配置された5個の給電パッド70に電気的に接続された5個のドライバ電極510のそれぞれは、径方向部分512を有している。ここで、ドライバ電極510の径方向部分512は、Z軸方向視で、ドライバ電極510における給電パッド70との接続位置(すなわち、Z軸方向視で給電パッド70と重なる領域)から、上記仮想円VCの径方向外側に向かって延びる部分である。すなわち、ドライバ電極510の径方向部分512は、Z軸方向視で、端子用孔Htの中心P0と、該ドライバ電極510に電気的に接続された給電パッド70の中心P1と、を結ぶ仮想直線VLと重なっている。なお、ドライバ電極510の径方向部分512は、Z軸方向視で、少なくとも、ドライバ電極510における給電パッド70との接続位置から、端子用孔Htと重ならない領域まで延びていることが好ましい。
また、上述したように、下側コネクタ300の貫通孔315に挿通された押さえ部材340の上端は、上側コネクタ200の下面226に当接しているが(図6)、図7に示すように、本実施形態の静電チャック100では、押さえ部材340の上端は、上側コネクタ200の下面226の内、Z軸方向視で、上記仮想円VCの中心P0に重なる位置に当接している。
A−4.静電チャック100の製造方法:
本実施形態の静電チャック100の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、ヒータ電極層50やドライバ電極層51、給電パッド70等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビア53,54の形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成することにより、板状部材10を作製する。
次に、板状部材10に形成された給電パッド70に、パッド側給電端子72を、例えばろう付けにより接合する。次に、上側コネクタ200を構成する第1のハウジング210を、樹脂接着剤79により、板状部材10に接合する。このとき、第1のハウジング210に形成された各貫通孔212に、パッド側給電端子72の棒状部76が挿通されるようにする。第1のハウジング210の設置が完了した状態では、第1のハウジング210の各貫通孔212から、パッド側給電端子72の棒状部76の先端部が突出している。
次に、上側コネクタ200を構成する第2のハウジング220を、第1のハウジング210に取り付ける。このとき、第2のハウジング220の各貫通孔222にはソケット230が圧入されており、また、ソケット230にはリード線80を介して下側コネクタ300(ソケット330が圧入されたハウジング310)が接続されている。第2のハウジング220の取り付けの際には、第1のハウジング210の下側部分214の側面、および、該側面に形成された凸部または凹部をガイドにして、第2のハウジング220の面方向および回転方向の位置決めを行う。第2のハウジング220の取り付けが完了した状態では、各ソケット230の孔232にパッド側給電端子72の棒状部76の先端部が挿入され、各ソケット230と各パッド側給電端子72とが電気的に接続される。
次に、例えばシート状の接着部30を用いて、板状部材10とベース部材20とを接合する。
次に、下側コネクタ300のハウジング310のスリット314にCリング352を取り付け、Cリング352の上面がベース部材20の第1の貫通孔下端部23の下面に当接した状態で、押さえプレート356を止めネジ354によりベース部材20に固定する。これにより、下側コネクタ300がベース部材20に固定される。次に、下側コネクタ300のハウジング310の貫通孔315に押さえ部材340を挿入し、押さえ部材340の上端が上側コネクタ200の第2のハウジング220の下面226に当接した状態でネジ止めすることにより、上側コネクタ200の第2のハウジング220のZ軸方向への移動(上側コネクタ200の第1のハウジング210のパッド側給電端子72からの抜け)を規制する。主として以上の工程により、本実施形態の静電チャック100が製造される。
A−5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、板状部材10と、ベース部材20と、接着部30とを備える。板状部材10は、Z軸方向に略直交する略平面状の吸着面S1と、吸着面S1とは反対側の下面S2とを有する。ベース部材20は、上面S3と、上面S3とは反対側の下面S4とを有し、上面S3が板状部材10の下面S2に対向するように配置されている。ベース部材20には、上面S3から下面S4まで貫通する複数の第1の貫通孔22と、冷媒流路21とが形成されている。接着部30は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置されて、板状部材10とベース部材20とを接着する。接着部30には、ベース部材20の第1の貫通孔22と連通して、第1の貫通孔22と共に端子用孔Htを構成する第2の貫通孔32が形成されている。また、本実施形態の静電チャック100は、板状部材10に配置され、抵抗発熱体により構成された複数のヒータ電極500と、板状部材10に配置され、ヒータ電極500に電気的に接続された複数のドライバ電極510を含むドライバ電極層51と、板状部材10の下面S2の内、端子用孔Htの底面を構成する領域に配置された給電パッド70とを備える。給電パッド70は、ドライバ電極510に電気的に接続されている。各端子用孔Htに配置された給電パッド70の個数Mは、5個である。また、本実施形態の静電チャック100は、端子用孔Ht内の各給電パッド70上に設けられたパッド側給電端子72と、端子用孔Ht内に収容された上側コネクタ200とを備える。上側コネクタ200は、各パッド側給電端子72と嵌合してパッド側給電端子72に電気的に接続されたソケット230を有する。また、本実施形態の静電チャック100では、各端子用孔Htに配置された5個の給電パッド70は、Z軸方向視で、仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されている。また、本実施形態の静電チャック100では、各端子用孔Htに配置された5個の給電パッド70に電気的に接続された5個のドライバ電極510のそれぞれは、Z軸方向視で、給電パッド70との接続位置から上記仮想円VCの径方向外側に向かって延びる径方向部分512を有する。
このように、本実施形態の静電チャック100では、各端子用孔Htに複数の(5個の)パッド側給電端子72が収容されているため、静電チャック100に設けられる端子用孔Htの個数を減らすことができ、Z軸方向視で端子用孔Htと重なる領域付近での板状部材10からベース部材20への伝熱性(熱引き性)の低下に起因して、板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)が低下することを抑制することができる。
一方、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で端子用孔Htと重なる領域付近に、該端子用孔Htに収容された5個の給電パッド70(5個のパッド側給電端子72)と電気的に接続される5個のドライバ電極510が密集して配置される。そのため、ドライバ電極層51における電流の流れる方向が集中することによって、ドライバ電極層51における特定の領域の発熱量が大きくなり、板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が低下するおそれがある。
しかしながら、本実施形態の静電チャック100では、各端子用孔Htに配置された5個の給電パッド70が、Z軸方向視で、仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されており、かつ、該5個の給電パッド70に電気的に接続された5個のドライバ電極510のそれぞれが、Z軸方向視で、給電パッド70との接続位置から上記仮想円VCの径方向外側に向かって延びる径方向部分512を有している。すなわち、各ドライバ電極510の径方向部分512が、Z軸方向視で、上記仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置される。そのため、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で端子用孔Htと重なる領域付近において、ドライバ電極層51における電流の流れる方向を略均等に分散させることができ、ドライバ電極層51における特定の領域の発熱量が大きくなることを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、ドライバ電極層51における特定領域での発熱量増大に起因して、板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)が低下することを抑制することができる。なお、板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御性の低下を抑制することができるとは、吸着面S1全体の温度分布にばらつきが発生することを抑制することができることと、セグメントSE毎に吸着面S1の温度分布にばらつきが発生することを抑制することができることとの少なくとも一方の意味を含む。
また、本実施形態の静電チャック100では、各端子用孔Htに配置された5個の給電パッド70のすべてが、Z軸方向視で、単一の仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されている。そのため、本実施形態の静電チャック100では、各端子用孔Htにおいて、給電パッド70間およびパッド側給電端子72間の絶縁性を確保しつつ、Z軸方向視での端子用孔Htの大きさをできるだけ小さくすることができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、端子用孔Htの存在に起因して板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)が低下することを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の静電チャック100は、さらに、ベース部材20に固定され、かつ、上側コネクタ200の第2のハウジング220の下面226(板状部材10に対向する側とは反対側の表面)の内、Z軸方向視で、上記仮想円VCの中心P0に重なる位置に当接する押さえ部材340を備える。本実施形態の静電チャック100では、上側コネクタ200の第2のハウジング220の下面226の内のZ軸方向視で上記仮想円VCの中心P0に重なる位置、すなわち、ソケット230が配置されていない位置に当接する押さえ部材340により、ベース部材20に対する上側コネクタ200の第2のハウジング220の下方向への移動(すなわち、上側コネクタ200の第2のハウジング220のパッド側給電端子72からの抜け)を規制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、Z軸方向視での端子用孔Htの大きさが大きくなることを抑制しつつ、上側コネクタ200の第2のハウジング220のパッド側給電端子72からの抜けを抑制することができる。
また、本実施形態の静電チャック100では、上側コネクタ200と端子用孔Htの側面(端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22および接着部30の第2の貫通孔32の側面)との間に空間が存在している。そのため、静電チャック100が熱サイクルにさらされた際にも、板状部材10とベース部材20との熱膨張差に起因して上側コネクタ200がベース部材20に接触することを抑制することができ、該接触に起因してパッド側給電端子72等の部材が破損することを抑制することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、各端子用孔Ht内に配置される給電パッド70およびパッド側給電端子72の個数M(上記実施形態では、M=5)は、3以上の任意の数に設定可能である。ただし、該個数Mが7以上であると、Z軸方向視における端子用孔Htの中心付近に、給電パッド70やパッド側給電端子72が配置されない大きな領域が形成されるおそれがあるため、該個数Mは、6以下であることが好ましい。また、静電チャック100の端子用孔Ht毎に、個数Mが異なっていてもよい。
また、上記実施形態では、各端子用孔Ht内に配置されたM個の給電パッド70のすべてが、Z軸方向視で、仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されているが、各端子用孔Ht内に配置されたM個の給電パッド70の内の一部のみが、Z軸方向視で、仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されており、M個の給電パッド70の内の残りの一部は、そのように配置されていないとしてもよい。すなわち、M個の給電パッド70の内、N(ただし、Nは3以上、かつ、M以下の整数)個の給電パッド70が、Z軸方向視で、仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されているとすればよい。なお、上記実施形態では、N=Mである。
また、上記実施形態では、各端子用孔Ht内に配置された複数の給電パッド70が、Z軸方向視で、単一の仮想円VCの円周上に略等ピッチで配置されているが、該複数の給電パッド70が、Z軸方向視で、径が異なる複数の仮想円VCの円周上に分かれて、各仮想円VCの円周上で略等ピッチで配置されているとしてもよい。
また、上記実施形態では、パッド側給電端子72が棒状部76を備え、上側コネクタ200のソケット230に孔232が形成されており、該棒状部76が該孔232に挿入されることにより、パッド側給電端子72と上側コネクタ200のソケット230とが電気的に接続されるが、反対に、パッド側給電端子72に孔が形成され、上側コネクタ200に棒状部が形成され、該棒状部が該孔に挿入されることにより、パッド側給電端子72と上側コネクタ200とが電気的に接続されるとしてもよい。
また、上記実施形態では、端子用孔Htの延伸方向に直交する断面形状は円形であるとしているが、該断面形状が円形以外の形状であってもよい。
また、上記実施形態では、押さえ部材340が、上側コネクタ200の第2のハウジング220の下面226の内、Z軸方向視で、上記仮想円VCの中心P0に重なる位置に当接しているが、押さえ部材340の当接位置はこれに限られない。例えば、押さえ部材340が、上側コネクタ200の第2のハウジング220の下面226の内、リード線80が接続された領域以外の領域に当接するとしてもよいし、押さえ部材340が、上側コネクタ200の第2のハウジング220の下面226の中心付近の領域(下面226の中心とリード線80が接続された位置との間の領域)に当接するとしてもよい。
また、上記実施形態における上側コネクタ200や下側コネクタ300の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、上側コネクタ200が2つのハウジング(第1のハウジング210および第2のハウジング220)を備えているが、上側コネクタ200が1つのみのハウジングを備えるとしてもよい。
また、上記実施形態では、ドライバ電極層51のZ軸方向における位置に関し、ドライバ電極層51の全体が同一位置にある(すなわち、ドライバ電極層51が単層構成である)としているが、ドライバ電極層51の一部が異なる位置にある(すなわち、ドライバ電極層51が複数層構成である)としてもよい。
また、上記実施形態におけるセグメントSEの設定態様(セグメントSEの個数や、個々のセグメントSEの形状等)は、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態では、各セグメントSEが吸着面S1の円周方向CDに並ぶように複数のセグメントSEが設定されているが、各セグメントSEが格子状に並ぶように複数のセグメントSEが設定されてもよい。また、例えば、上記実施形態では、静電チャック100の全体が複数のセグメントSEに仮想的に分割されているが、静電チャック100の一部分が複数のセグメントSEに仮想的に分割されていてもよい。また、静電チャック100において、必ずしもセグメントSEが設定されている必要はない。
なお、板状部材10に非常に多くの(例えば100個以上の)のセグメントSEが設定された構成では、板状部材10に配置されるヒータ電極500の個数が非常に多くなり、それに伴ってヒータ電極500への給電のためのパッド側給電端子72の個数が非常に多くなり、端子用孔Htの個数や、各端子用孔Htに収容されるパッド側給電端子72の個数が非常に多くなりやすいため、そのような構成に本発明を適用すると特に効果的である。
また、上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。また、上記実施形態では、板状部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、板状部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。
また、上記実施形態の静電チャック100の各部材(板状部材10、ベース部材20、接着部30等)の形成材料は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、板状部材10がセラミックスにより形成されているが、板状部材10がセラミックス以外の材料(例えば、樹脂材料)により形成されるとしてもよい。
また、本発明は、板状部材10とベース部材20とを備え、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、板状部材と、ベース部材と、板状部材とベース部材とを接着する接着部とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。