JP2019218305A - アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類の製造方法、新規なシラン類、およびそれらの用途 - Google Patents

アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類の製造方法、新規なシラン類、およびそれらの用途 Download PDF

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【課題】アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類を効率的に製造する方法、それにより得られる新規なシラン類、およびそれらの用途の提供。【解決手段】メトキシ基またはエトキシ基と、他のアルコキシ基を有するアルコキシシラン類に、カルボン酸無水物を、酸触媒存在下で反応させる反応工程を含む、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類の製造方法、それにより得られる新規なシラン類、および、それらを含有する組成物からなる表面処理剤。【選択図】なし

Description

本発明は、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類の効率的な製造方法、それにより得られる新規なシラン類、およびそれらの用途に関する。
アルコキシシラン類は、医・農薬、電子材料等の精密合成用試薬、合成中間体として利用される他、表面修飾剤や、ゾル・ゲル材料、ナノ材料、有機無機ハイブリッド材料用の原料等として利用される機能性化学品である。
とくに、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと記載する)やテトラメトキシシラン(以下、TMOSと記載する)は、安価に製造できるシラン化合物であり、工業的に広く利用されている。
それらの化合物は、単独あるいは他の有機材料や無機材料と混合した形態で、各種材料の表面処理にも利用できるが、そのままでは反応性が低いために、液相系の表面処理では、通常、酸や塩基のような触媒存在下、水を含む溶媒中で、エトキシ基やメトキシ基を加水分解して、シラノールやそれらが縮重合したオリゴマーに変換してから使用されている(方法A、たとえば、特許文献1〜3、非特許文献1など)。
一方、シラノール以外の中間体に変換して表面処理を行う方法として、TEOSのエトキシ基やTMOSのメトキシ基の一部をアセトキシ基に変換することにより、材料表面との反応性を高めて、表面処理を行う方法が検討されている(方法B、特許文献4)。
特開2002−161262号公報 特開2005−255720号公報 特開2006−63358号公報 WO2016/143835
全面改訂版シランカップリング剤の効果と使用法、第1章、S&T出版(2012)
シラノールやそのオリゴマーに変換する方法(方法A)では、一般に、複数の反応種が存在する、単分子での表面修飾が難しい、等の問題点がある。また、TEOSのエトキシ基やTMOSのメトキシ基の一部をアセトキシ基に変換して表面修飾を行う方法(方法B)でも、置換基がエトキシ基とメトキシ基に限られている、等の問題点がある。
これらのことから、従来技術の問題点を解決できる、工業的により有利な方法が求められている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、TEOSやTMOS等の簡便に入手できるシラン類から容易に製造されるアルコキシシラン類を原料とし、表面処理剤として用いる場合に、修飾表面の疎水性・親水性等の性質や水や湿気に対する安定性を制御できる特徴を有するシラン類を製造する方法、それにより得られる新規なシラン類、およびそれらの表面処理剤としての用途を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、TEOSやTMOS等とアルコールとの反応により容易に製造できる、エトキシ基またはメトキシ基と、他のアルコキシ基(以下、「他のアルコキシ基」、すなわちエトキシ基またはメトキシ基以外のことを、単に「アルコキシ基」と記載する場合がある)を有するシラン類が、特定の触媒存在下で、カルボン酸無水物とスムーズに反応して、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類を効率よく与えること、および、得られたシラン類が固体材料の表面処理剤等として効果的に利用でき、修飾表面の疎水性や水に対する安定性等の性質を制御できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
<1> メトキシ基またはエトキシ基と、他のアルコキシ基を有するアルコキシシラン類に、カルボン酸無水物を、触媒存在下で反応させる反応工程を含む、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類の製造方法であって、前記アルコキシシラン類が、下記一般式(I)で表されるアルコキシシラン類であり、前記カルボン酸無水物が、下記一般式(II)で表されるカルボン酸無水物であり、前記触媒が、酸触媒であり、前記反応工程で得られるシラン類が、下記一般式(IIIA)で表されるシラン類であることを特徴とする、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類の製造方法。
Si(OR(OR4−p (I)
(式中、pは、1以上3以下の整数である。Rは、それぞれ独立して炭素数1〜24の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立してメチル基またはエチル基である。Rの炭化水素基の水素原子の一部または全部が、反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
(RCO)2O (II)
(式中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、炭化水素基の水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
Si(OR(OR4−(r+s)(OCOR (IIIA)
(式中、R、R、およびRは、それぞれ前記と同義であり、r、sは、1以上3以下の整数であり、(r、s)の組み合わせは、(1、1)、(1、2)、(1、3)、(2、1)、(2、2)、または(3、1)である。)
<2> 前記酸触媒が、無機系または有機系の酸である、<1>に記載のシラン類の製造方法。
<3> 前記無機系の酸が、無機系固体酸である、<2>に記載のシラン類の製造方法。<4> 前記無機系固体酸が、ゼオライトであり、USY型、ベータ型、またはY型からなる群より選ばれる少なくとも1種である、<3>に記載のシラン類の製造方法。
<5> 下記一般式(IIIB)で表されるシラン類。
Si(OR(OR4−(v+w)(OCOR (IIIB)
(式中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素基、または、炭素上の水素原子の一部または全部がアルコキシ基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基である。Rはメチル基またはエチル基であり、Rは、炭素数1〜3の炭化水素基、または、炭素上の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3の炭化水素基である。v、wは、1または2であり、(v、w)の組み合わせは、(1、1)、(1、2)、または(2、1)である。)
<6> <5>において、Rが、下記のいずれかの条件を満たす炭化水素基である(IIIB)のシラン類。
(1)Rが、2級または3級の脂肪族炭化水素基である。
(2)Rが、アルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基である。
(3)Rが、アラルキル基である。
<7> <5>または<6>に記載のシラン類を含有する組成物からなる表面処理剤。
<8> <1>〜<4>の何れかに記載の製造方法で得られるシラン類並びに<5>または<6>に記載のシラン類からなる群より選ばれる少なくとも1種類のシラン類を含有す
る組成物からなる表面処理剤を用いて、固体材料の表面を処理する工程を含む、表面処理方法。
本発明の製造方法を用いることにより、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類を効率的に製造できるとともに、新規なシラン類、およびそれらを用いる表面処理剤を提供できるという効果を有する。
詳細には、本発明の製造方法は、次のような特徴を有する。
(1)原料や触媒が入手し易く、取り扱いが容易で安全性も高い。
(2)固体触媒を使用する反応系では、触媒の分離・回収等も容易である。
(3)反応条件を制御することにより、複数のメトキシ基またはエトキシ基の一部をアシロキシ基に変換することが可能である。
(4)本発明の製造方法により、アルコキシ基とアシロキシ基を有する新規なシラン類を提供できる。
(5)材料表面の物性や安定性を多様に制御できる表面処理剤を提供できる。
本発明の製造方法は、表面処理剤等として有用なシラン類を、効率的に、また安全に製造することを可能にするもので、従来技術に比べて、経済性、環境負荷性等の面でも、大きな利点を有すると考える。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の一実施形態である製造方法は、TEOSやTMOS等から容易に製造できるアルコキシシラン類を、酸触媒の存在下で、カルボン酸無水物と反応させる反応工程を含むことを特徴とする。
以下、本発明の原料として使用する、アルコキシシラン類、酸触媒、カルボン酸無水物、反応工程を説明する。
本発明において、原料として使用するアルコキシシラン類は、下記一般式(I)
Si(OR(OR4−p (I)
で表される。
一般式(I)において、Rは、炭素数1〜24の炭化水素基であり、その具体例としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられ、それらの基の炭素上の水素原子の一部または全部が、反応に関与しない基で置換されていてもよい。また、Rは、メチル基またはエチル基であり、pは、1以上3以下の整数である。
炭化水素基がアルキル基の場合、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18であり、炭素上の水素原子の一部または全部が、反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基の具体例としては、炭素数が1〜6のアルコキシ基、炭素数が1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数が1〜6のジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられ、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子をより具体的に示せば、メトキシ基、エトキシ基、ヘキソキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を挙げることができる。
それらの基等を有するアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル
基、2−オクチル基、デシル基、メンチル基(以下、メンチル基は、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル基を示す)、2−メトキシエチル基、3−エトキシプロピル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−ジメチルアミノエチル基、2−シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル基等が挙げられる。
また、炭化水素基がアリール基の場合、炭化水素環系または複素環系の1価の芳香族有機基を使用できる。アリール基が炭化水素環系の場合、炭素数が好ましくは6〜22、より好ましくは6〜14であり、それらアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。また、アリール基が複素環系の場合、複素環中のヘテロ原子は硫黄、酸素原子等であり、炭素数が好ましくは4〜12、より好ましくは4〜8であり、それらアリール基の具体例としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられる。
アリール基の水素原子の一部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基の具体例としては、上記のアルキル基の場合に示したもの等を挙げることができる。また、その他の反応に関与しない基として、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基やオキシエチレンオキシ基等が挙げられる。それらの基等を有するアリール基の具体例としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ジメチルフェニル基、イソプロピル(メチル)フェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、オクトキシフェニル基、メチル(メトキシ)フェニル基、フルオロ(メチル)フェニル基、クロロ(メトキシ)フェニル基、ブロモ(メトキシ)フェニル基、2,3−ジヒドロベンゾフラニル基、1,4−ベンゾジオキサニル基等が挙げられる。
さらに、炭化水素基がアラルキル基の場合には、炭素数が好ましくは7〜23、より好ましくは7〜16であり、炭素上の水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基の具体例としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。
それらの基等を有するアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、2−ナフチルメチル基、9−アントリルメチル基、(4−クロロフェニル)メチル基、1−(4−メトキシフェニル)エチル基等が挙げられる。
また、炭化水素基がアルケニル基の場合には、炭素数が好ましくは2〜23、より好ましくは2〜20であり、炭素上の水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基の具体例としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等の他、上記に示したアリール基等を挙げることができる。
それらの基等を有するアルケニル基の具体例としては、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、5−ヘキセニル基、9−デセニル基、シトロネロイル基(以下、シトロネロイル基は、3,7−ジメチル−6−オクテニル基を示す)、2−フェニルエテニル基、2−(メトキシフェニル)エテニル基、2−ナフチルエテニル基、2−アントリルエテニル基等が挙げられる。
したがって、それらの炭化水素基等を有する(I)のアルコキシシラン類の具体例としては、ジヘキソキシジメトキシシラン(Si(OHex)(OMe))、シクロヘキソキシトリメトキシシラン(Si(O−cyc−Hex)(OMe))、ジシクロヘキソキシジメトキシシラン(Si(O−cyc−Hex)(OMe))、トリメトキシ
(2−オクトキシ)シラン(Si(O−2−Oct)(OMe))、ジメトキシジ(2−オクトキシ)シラン(Si(O−2−Oct)(OMe))、((−)−メンチルオキシ)トリメトキシシラン(Si(O−(−)−Mentyl)(OMe))、((−)−シトロネロイルオキシ)トリメトキシシラン(Si(O−(−)−Citronel)(OMe))、トリメトキシ(2−フェネチルオキシ)シラン(Si(OCHCHPh)(OMe))、ジメトキシジ(2−フェネチルオキシ)シラン(Si(OCHCHPh)(OMe))、(2−メチルフェノキシ)トリメトキシシラン(Si(O−2−MeC)(OMe))、ジ(2−メチルフェノキシ)ジメトキシシラン(Si(O−2−MeC)(OMe))、(5−イソプロピル−2−メチルフェノキシ)トリメトキシシラン(Si(O−5−Pr−2−Me−C)(OMe))、ジ(5−イソプロピル−2−メチルフェノキシ)ジメトキシシラン(Si(O−5−Pr−2−Me−C(OMe))、(2−イソプロピル−5−メチルフェノキシ)トリメトキシシラン(Si(O−2−Pr−5−Me−C)(OMe))、トリエトキシヘキソキシシラン(Si(OHex)(OEt))、ジエトキシジヘキソキシシラン(Si(OHex)(OEt))、シクロヘキソキシトリエトキシシラン(Si(O−cyc−Hex)(OEt))、トリエトキシデシルオキシシラン(Si(ODec)(OEt))、ジエトキシジ(2−メトキシエトキシ)シラン(Si(OCHCHOMe)(OEt))、(ベンジルオキシ)トリエトキシシラン(Si(OCHPh)(OEt))、ジ(ベンジルオキシ)ジエトキシシラン(Si(OCHPh)(OEt))。等を挙げることができる。
それらのアルコキシシラン類は、たとえば、TEOSまたはTMOSに、アルコールを酸触媒存在下で反応させることにより、容易に製造できるものである(製造法については、たとえば、WO2014/136822A1参照)。
一方、上記アルコキシシラン類と反応させるカルボン酸無水物は、下記一般式(II)
(RCO)2O (II)
で表される。
一般式(II)において、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、炭化水素基の水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
それら炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられ、反応に関与しない基の具体例としては、上記の一般式(I)のRの説明において示したもの等を挙げることができる。
炭化水素基R中の炭素数に関しては、炭化水素基がアルキル基の場合には、好ましくは1〜9、より好ましくは1〜8であり、アリール基の場合には、好ましくは6〜10、より好ましくは6〜8であり、アラルキル基の場合には、好ましくは7〜10、より好ましくは7〜9であり、アルケニル基の場合には、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜8である。また、Rが反応に関与しない基を含む場合には、炭素上の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜3の炭化水素基が好ましい。
それらの基の具体例としては、上記の一般式(I)のRの説明において示したもの等を挙げることができる。
したがって、それらの炭化水素基を有するカルボン酸無水物(II)の具体例としては、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、イソ酪酸無水物、吉草酸無水物、イソ吉草酸無水物、ピバル酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、オクタン酸無水物、ノナン酸無水物、デカン酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、安息香酸無水物、トルイル酸無水物、ナフトエ酸無水物、フェニル酢酸無水物、クロトン酸無水物、イソクロトン酸無水物、チグリン酸無水物等が挙げられる。
原料のアルコキシシラン類に対するカルボン酸無水物のモル比は任意に選ぶことができるが、アルコキシシラン類に対する生成シラン類の収率を考慮すれば、通常0.4以上100以下であり、より好ましくは0.5以上80以下であり、さらに好ましくは0.5以上50以下である。
本発明によれば、上記一般式(I)のアルコキシシラン類と、上記一般式(II)のカルボン酸無水物との反応により、下記一般式(IIIA)
Si(OR(OR4−(r+s)(OCOR (IIIA)
で表されるアシロキシシランを製造できる。
式中、R、R、およびRは、それぞれ上記一般式(I)中のR、R、一般式(II)中のRと同義であり、r、sは、1以上3以下の整数であり、(r、s)の組み合わせは、(1、1)、(1、2)、(1、3)、(2、1)、(2、2)、または(3、1)である。
一般式(IIIA)中のr、s、R、R、およびRは、前記と同義であり、それらの具体例としては、上記一般式(I)および(II)で示したもの等を挙げることができる。
本発明におけるアシロキシ化の反応工程は、原料のアルコキシシラン類に対するカルボン酸無水物による求核的置換反応を伴う反応工程である。
したがって、上記一般式(II)で表される非環状のカルボン酸無水物を用いた場合、本発明における反応はカルボン酸エステルの脱離を伴う反応となり、その反応工程は、1個のアルコキシ基と3個のメトキシ基またはエトキシ基を有するシラン類の反応では、たとえば、下記反応式で表すことができる。
Figure 2019218305
この反応において、原料のアルコキシシラン類におけるアルコキシ基の数は1〜3個のいずれであってもよく、残りの基はメトキシ基またはエトキシ基のいずれであってもよい。それらの反応で生成するシラン類は、メトキシ基、エトキシ基、あるいはアルコキシ基の一部が、アシロキシ基に変換されたものであるが、一般的には、メトキシ基またはエトキシ基が、アルコキシ基よりも優先的にアシロキシ基に変換される。また、メトキシ基、エトキシ基、あるいはアルコキシ基が、複数個、アシロキシ基に変換されてもよい。
すなわち、本発明の反応工程で得られるシラン類は、1種類のシラン類に限られるものではなく、たとえば、複数のメトキシ基またはエトキシ基を有するアルコキシシラン類から得られるアルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類としては、メトキシ基またはエトキシ基が1個置換されたシラン類、それらが2個置換されたシラン類、またはそれらの混合物等、であってもよいことを意味する。
なお、本発明の反応系では、前記のアシロキシ化反応だけでなく、原料あるいは生成物の分子の間で、置換基の交換による不均化反応も進行することがある。そのため、一般的な反応条件下では、アシロキシ基、アルコキシ基、および、メトキシ基またはエトキシ基の3つの群より選ばれる置換基を有する複数の種類のシラン類が同時に生成することが多
い。
本発明の製造方法により提供されるシラン類は、反応性が高いアシロキシ基を有しているため、原料のアルコキシシラン類に比べて一般に高い反応性を有する。そのため、表面処理剤、ゾル・ゲル材料等として利用する際の反応や、合成中間体として利用する際の反応を、原料のアルコキシシラン類を用いる場合よりも温和な条件で、より効率的に行うことができると考えられ、機能性化学品として高い利用価値を有する。
アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類を製造する本発明の反応工程では、酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする。
酸触媒としては、従来公知の各種の酸触媒を使用することができ、無機系または有機系の酸を好ましく使用することができる。
また、酸触媒としては、触媒の分離・回収等が容易な固体酸触媒を用いることができる。
固体酸触媒の具体例としては、金属塩、金属酸化物等の固体無機物等が挙げられ、より具体的に示せば、プロトン性水素原子あるいは金属カチオン(アルミニウム、チタン、ガリウム、鉄、セリウム、スカンジウム等)を有する、ゼオライト、メソポーラスシリカ、モンモリロナイトなどのほか、シリカゲル、ヘテロポリ酸や、カーボン系素材を担体とする無機系固体酸が挙げられる。
これらの中では、触媒活性や生成物に対する選択性等の点で、規則的細孔および/または層状構造を有する無機系固体酸である、ゼオライト、メソポーラスシリカ、モンモリロナイト系等の固体酸が好ましく、ゼオライト、モンモリロナイト系の固体酸がより好ましく使用される。無機系固体酸の規則的細孔および/または層状構造の種類にとくに制限はないが、反応する分子や生成する分子の拡散のしやすさを考慮すると、細孔構造を有する固体酸触媒では、細孔径の範囲としては、0.2〜20nm、好ましくは、0.3〜15nm、より好ましくは0.3〜10nmの範囲内のものである。また、層状構造を有する固体酸触媒では、層間距離の範囲としては、0.2〜20nm、好ましくは、0.3〜15nm、より好ましくは0.3〜10nmの範囲内のものである。
規則的細孔構造を有する無機系固体酸触媒としてゼオライトを使用する場合、その種類としては、Y型、ベータ型、ZSM−5型、モルデナイト型、SAPO型等の基本骨格を有する各種のゼオライトが使用可能である。また、Y型ゼオライト(Na−Y)を二次的処理して得られる、SUSY型(Super Ultrastable Y)、VUSY型(Very Ultrastable Y)、SDUSY型(Super dealuminated ultrastable Y)等として知られるUSY型(Ultrastable Y、超安定Y型)のものも好ましく使用できる(USY型については、たとえば、“Molecular Sieves”、Advances in Chemistry、Volume 121、American Chemical Society、1973、Chapter 19、等を参照)。
反応速度の点では、これらゼオライトの中では、USY型、ベータ型、Y型、ZSM−5型、およびモルデナイト型が好ましく、USY型、ベータ型、およびY型がより好ましく、USY型およびベータ型がさらに好ましい。また、複数のメトキシ基またはエトキシ基の一部を選択的にアシロキシ基に変換するためのゼオライトとしても、USY型およびベータ型が好ましい。
これらゼオライトにおいては、プロトン性水素原子を有するブレンステッド酸型のものや金属カチオンを有するルイス酸型のものなど、各種のゼオライトを使用できる。この中
で、プロトン性水素原子を有するプロトン型のものは、H−Y型、H−SDUSY型、H−SUSY型、H−ベータ型、H−モルデナイト型、H−ZSM−5型等で表される。また、アンモニウム型のものである、NH−Y型、NH−VUSY型、NH−ベータ型、NH−モルデナイト型、NH−ZSM−5型等のゼオライトを焼成して、プロトン型に変換したものも使用することができる。
さらに、ゼオライトのシリカ/アルミナ比(物質量比)については、反応条件に応じて各種の比を選択できるが、通常は3〜1000であり、好ましくは3〜800、より好ましくは5〜600、さらに好ましくは5〜400である。
それらゼオライトとしては、市販品を含む各種のものを使用できる。市販品の具体例を示すと、USY型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV760、CBV780、CBV720、CBV712、およびCBV600等、Y型ゼオライトとしては、東ソー社より市販されているHSZ−360HOAおよびHSZ−320HOA等が挙げられる。また、ベータ型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CP811C、CP814N、CP7119、CP814E、CP7105、CP814CN、CP811TL、CP814T、CP814Q、CP811Q、CP811E−75、CP811E、およびCP811C−300等、東ソー社より市販されているHSZ−930HOAおよびHSZ−940HOA等、UOP社より市販されているUOP−Beta等が挙げられる。さらに、モルデナイト型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されているCBV21AおよびCBV90A等、東ソー社より市販されている、HSZ−660HOA、HSZ−620HOA、およびHSZ−690HOA等が挙げられ、ZSM−5型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV5524G、CBV8020、およびCBV8014N等が挙げられる。
また、上記の無機系固体酸のほかに、酸性官能基を有する有機系固体酸も効果的に使用できる。有機系固体酸は、酸性官能基を有するポリマー等であり、酸性官能基の種類としては、スルホ基、カルボキシ基、ホスホリル基等が挙げられ、ポリマーの種類としては、パーフルオロ側鎖を有するテフロン骨格ポリマーやスチレン−ジビニルベンゼン共重合ポリマー等が挙げられる。それらの具体例としては、スルホ基を有する、ナフィオン(Nafion、登録商標、デュポン社より入手可能)、ダウエックス(Dowex、登録商標、ダウ・ケミカル社より入手可能)、アンバーライト(Amberlite、登録商標、ローム&ハス社より入手可能)、アンバーリスト(Amberlyst、登録商標、ダウ・ケミカル社より入手可能)等が挙げられる。それらをより具体的に示せば、ナフィオンNR50、ダウエックス50WX2、ダウエックス50WX4、ダウエックス50WX8、アンバーライトIR120、アンバーライトIRP−64、アンバーリスト15、アンバーリスト36等を挙げることができる。さらに、シリカ等の無機物にナフィオン等の有機系固体酸を担持した触媒(たとえば、ナフィオンSAC−13等)を用いることもでき、無機系固体酸と有機系固体酸を複数組み合わせて使用することもできる。
さらに、ブレンステッド酸性またはルイス酸性を有する、固体酸以外の無機系または有機系の酸も触媒として使用できる。それらの具体例としては、無機系のものとしては、硫酸、硝酸、塩酸等のブレンステッド酸性の化合物や、塩化スカンジウム(III)、塩化イットリウム(III)、塩化チタン(IIIまたはIV)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、塩化ルテニウム(III)、塩化亜鉛(II)、フッ化ホウ素(III)、塩化ホウ素(III)、塩化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化ガリウム(III)、塩化インジウム(III)、塩化スズ(IV)、塩化ビスマス(III)等のルイス酸性の化合物が挙げられる。それらの化合物は、水和物の形態で使用してもよい。また、有機系のものとしては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等のブレンステッド酸性の化合物が挙げられる。加えて、有機系のものとしては、それらブレンス
テッド酸性の化合物の金属塩やトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等でルイス酸性の化合物も使用できる。ルイス酸性の金属塩中の金属カチオンの種類としては、スカンジウム(III)、イットリウム(III)、鉄(III)、コバルト(II)、銅(II)、銀(I)、亜鉛(II)、スズ(II)、ビスマス(III)等の他、ランタノイド系元素のランタン(III)、プラセオジム(III)、サマリウム(III)、ネオジム(III)、イッテリビウム(III)等が挙げられる。
それらの中で、触媒活性の点では、無機系の酸においては、鉄、ルテニウム、アルミニウム、スカンジウム、またはインジウムから選ばれる元素を含む、塩化物、臭化物、または、過塩素酸塩等が好ましく、それらの具体例としては、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、塩化ルテニウム(III)等が挙げられる。また、それらの元素の塩化物や臭化物に、過塩素酸銀等を添加し、塩化物や臭化物を過塩素酸塩に変換して使用することも、好ましい方法である。
さらに、有機系の酸においては、スルホン酸、スルホンイミド等が好ましく、それらの酸と、鉄、ルテニウム、アルミニウム、スカンジウム、またはインジウム等から選ばれる元素から生成する塩も好ましく使用される。それらのスルホン酸、スルホンイミドの具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられ、それらと塩を形成する元素のカチオン種としては、スカンジウム(III)、鉄(III)、ルテニウム(III)、アルミニウム(III)、ガリウム(III)、インジウム(III)、ビスマス(III)等が挙げられる。固体酸以外の無機系と有機系の酸は、それらを複数組み合わせて使用することもでき、上記の固体酸と組み合わせて使用することもできる。
原料に対する触媒量は任意に決めることができるが、重量比では、通常はアルコキシシランに対して触媒量は0.0001〜10程度で、好ましくは0.001〜8程度、より好ましくは0.001〜6程度である。
本発明の反応は、反応温度や反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。
反応温度は、通常は−20℃以上、好ましくは−10〜300℃、より好ましくは、−10〜200℃である。また、カルボン酸無水物の反応性を制御するために、室温で反応を行う場合には、室温の温度範囲としては、通常は0〜40℃、好ましくは5〜40℃、より好ましくは10〜35℃である。
さらに、反応圧力は、通常は0.1〜100気圧で、好ましくは0.1〜50気圧、より好ましくは0.1〜10気圧である。
反応時間は、原料や触媒の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性や効率を考慮すると、通常は0.1〜1200分、好ましくは0.1〜600分、より好ましくは0.1〜300分程度である。
また、反応を液相系で行う場合、溶媒の有無にかかわらず実施できるが、溶媒を用いる場合には、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン等の炭化水素、クロロベンゼン、1,2−または1,3−ジクロロベンゼン、1,2,3−または1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、tert−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル等、原料と反応するものを除いた各種の溶媒が使用可能で、2種以上混合して用いることもできる。また、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
本発明の反応は、マイクロ波照射下で行うこともできる。本反応系では、原料のカルボン酸無水物や酸触媒等の誘電損失係数が比較的大きく、マイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下ではカルボン酸無水物や触媒等が活性化され、反応をより効率的に
行うことができる。
マイクロ波照射反応では、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)等は、反応のスケールや種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3〜30GHzである。その中で好ましいのは、産業・科学・医療分野で使用するために割り当てられたIMS周波数帯で、さらにその中でも、2.45GHz帯、5.8GHz帯等がより好ましい。
また、マイクロ波照射反応では、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
本発明の反応工程は、密閉系の反応装置でも進行するが、反応装置を開放系にして、反応の共生成物であるエステルを反応系外に連続的に除去することにより、反応をより効率的に進行させることもできる。
本発明の製造方法で、固体酸触媒を用いる場合、反応工程後の触媒の分離・回収は、濾過、遠心分離等の方法により容易に行うことができる。
また、生成したシラン類の精製も、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
さらに、本発明の一実施形態は、下記一般式(IIIB)で表されるシラン類を提供する。
Si(OR(OR4−(v+w)(OCOR (IIIB)
一般式(IIIB)において、Rは、炭素数3〜20の炭化水素基、または、炭素上の水素原子の一部または全部がアルコキシ基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基である。Rはメチル基またはエチル基であり、Rは、炭素数1〜3の炭化水素基、または、炭素上の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3の炭化水素基である。v、wは、1または2であり、(v、w)の組み合わせは、(1、1)、(1、2)、または(2、1)である。
一般式(IIIB)のRにおいて、炭素数3〜20の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等を挙げることができ、それらの具体例としては、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−オクチル基、メンチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、シトロネロイル基、フェニル基、メチルフェニル基、イソプロピル(メチル)フェニル基、ベンジル基、2−フェネチル基等を挙げることができる。また、水素原子の一部または全部がアルコキシ基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基としては、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基等を挙げることができる。
さらに、一般式(IIIB)のRにおいて、炭素数1〜3の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等を挙げることができ、それらの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、プロペニル基等を挙げることができる。また、水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3の炭化水素基としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を挙げることができる。
したがって、一般式(IIIB)において、(R、R、R、v、w)の組み合わせとして好ましいものを例示すると、(ヘキシル基、メチル基、メチル基、1、1)、(ヘキシル基、メチル基、メチル基、2、1)、(ヘキシル基、メチル基、メチル基、1、2)、(シクロヘキシル基、メチル基、メチル基、1、1)、(シクロヘキシル基、メチル基、メチル基、2、1)、(シクロヘキシル基、メチル基、メチル基、1、2)、(2−オクチル基、メチル基、メチル基、1、1)、(2−オクチル基、メチル基、メチル基、2、1)、(2−オクチル基、メチル基、メチル基、1、2)、(メンチル基、メチル基、メチル基、1、1)、(メンチル基、メチル基、メチル基、2、1)、(メンチル基、メチル基、メチル基、1、2)、(シトロネロイル基、メチル基、メチル基、1、1)、(シトロネロイル基、メチル基、メチル基、2、1)、(シトロネロイル基、メチル基、メチル基、1、2)、(2−フェネチル基、メチル基、メチル基、1、1)、(2−フェネチル基、メチル基、メチル基、2、1)、(2−フェネチル基、メチル基、メチル基、1、2)、(2−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、1、1)、(2−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、2、1)、(2−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、1、2)、(5−イソプロピル−2−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、1、1)、(5−イソプロピル−2−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、2、1)、(5−イソプロピル−2−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、1、2)、(2−イソプロピル−5−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、1、1)、(2−イソプロピル−5−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、2、1)、(2−イソプロピル−5−メチルフェニル基、メチル基、メチル基、1、2)、(ヘキシル基、エチル基、メチル基、1、1)、(ヘキシル基、エチル基、メチル基、2、1)、(ヘキシル基、エチル基、メチル基、1、2)、(シクロヘキシル基、エチル基、メチル基、1、1)、(シクロヘキシル基、エチル基、メチル基、2、1)、(シクロヘキシル基、エチル基、メチル基、1、2)、(デシル基、エチル基、メチル基、1、1)、(デシル基、エチル基、メチル基、2、1)、(デシル基、エチル基、メチル基、1、2)、(2−メトキシエチル基、エチル基、メチル基、1、1)、(2−メトキシエチル基、エチル基、メチル基、2、1)、(2−メトキシエチル基、エチル基、メチル基、1、2)、(ベンジル基、エチル基、メチル基、1、1)、(ベンジル基、エチル基、メチル基、2、1)、(ベンジル基、エチル基、メチル基、1、2)、(2−メチルフェニル基、メチル基、エチル基、1、1)、(2−メチルフェニル基、メチル基、エチル基、2、1)、(2−メチルフェニル基、メチル基、エチル基、1、2)、(2−メチルフェニル基、メチル基、トリフルオロメチル基、1、1)、(2−メチルフェニル基、メチル基、トリフルオロメチル基、2、1)、(2−メチルフェニル基、メチル基、トリフルオロメチル基、1、2)等が挙げられる。
また、一般式(IIIB)のRが、下記のいずれかの条件を満たす炭化水素基である場合には、それらのシラン類を用いて表面処理を行った場合、水に対して比較的安定な修飾表面を得られるという特長がある。
(1)Rが、2級または3級の脂肪族炭化水素基である。
(2)Rが、アルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基である。
(3)Rが、アラルキル基である。
それらのRの具体例としては、(1)では、シクロヘキシル基、2−オクチル基、tert−アミル等が挙げられ、(2)、メチルフェニル基、イソプロピル(メチル)フェニル基等が挙げられ、(3)では、2−フェネチル基、ベンジル基等が挙げられる。
一般式(IIIB)で表されるシラン類は、本発明の製造方法により好ましく製造される。
本発明の製造方法で得られる一般式(IIIA)で表されるシラン類を含有する組成物からなる表面処理剤も本発明の一実施形態である。また、本発明の一実施形態に係る一般式(IIIB)で表されるシラン類からなる表面処理剤も本発明の一実施形態である。
また、本発明の一実施形態に係る表面処理方法は、本発明の製造方法で得られる一般式(IIIA)で表されるシラン類又は本発明の一実施形態に係る一般式(IIIB)で表されるシラン類を含有する組成物からなる表面処理剤を用いて、固体材料の表面を処理する工程を含む。
本発明の一実施形態に係る製造方法により提供されるシラン類及び本発明の一実施形態に係るシラン類は、アルコキシ基を有し、かつアルコキシ基よりも反応性が高いアシロキシ基を有しているため、原料のアルコキシシラン類に比べて高い反応性を有し、表面処理剤等の機能性化学品として利用価値が高い。
たとえば、表面処理剤に関しては、無機系および有機系の固体材料に対して使用できる。無機系の固体材料としては、たとえば、金属酸化物、金属、セラミックス、鉱物等が挙げられ、金属酸化物としては、たとえば、シリカ系、アルミナ系、チタニア系等のガラス状態あるいは結晶状態等の固体材料が挙げられる。たとえば、ホウケイ酸ガラス等のガラス状固体材料の表面処理剤として効果的に使用できる。また、有機系の固体材料としては、石油・石炭を原料とする非天然系のプラスチック、ゴム等や、木材、綿花等の植物より得られる天然系の材料が挙げられる。無機系または有機系の固体材料の形状に関しては、板状、膜状、繊維状、粒子状等、各種の形状の固体材料に対して適用可能である。
それらの固体材料に対して、本発明の表面処理方法を用いることにより、室温で数分程度の温和な条件下で迅速に表面処理を行うことが可能で、使用するシラン類の種類に応じて、固体材料表面の親水性・疎水性を容易に制御することができる。
本発明の表面処理方法で使用する化合物は、上記の反応等で製造されるアシロキシシラン類を組成物とするもので、単離精製した単独のシラン類だけでなく、複数の種類のシラン類を含む混合溶液を使用することもできる。
さらに、本発明によるシラン類の製造方法では、共生成物であるカルボン酸エステルが表面処理の工程を阻害することはないため、生成したシラン類を含む反応液を、そのまま表面処理の工程に使用する方法も、本発明の特長を示す方法である。
得られたシラン類を表面処理剤として用いる場合は、必要に応じて、トルエン、ヘキサン等の生成したシラン類と反応しない有機溶剤で希釈して用いてもよい。
固体材料の表面処理の方法については、ディップ法(浸漬法)、キャスト法、スピンコート法、スプレーコート法等、従来公知の各種の方法により行うことができる。具体的には、例えば、後述の実施例に示すように、アルコキシシランとカルボン酸無水物の反応で得られたシラン類を含む組成物を、適当な溶媒に希釈して、固体材料を浸漬させる方法等により行うことができる。
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で使用した原料である、メトキシ基またはエトキシ基と、他のアルコキシ基を有するアルコキシシラン類は、TMOSあるいはTEOSに、アルコールを酸触媒存在下で反応させて、蒸留により精製したもので、具体的には、下記のアルコキシシラン類を使用した(製造法は、たとえば、WO2014/136822A1参照、また、[]内は蒸留の際の沸点を示す)。
Ia2:ジヘキソキシジメトキシシラン(Si(OHex)(OMe))[162−164℃/26mmHg]
Ib1:シクロヘキソキシトリメトキシシラン(Si(O−cyc−Hex)(OMe))[88−90℃/10mmHg]
Ib2:ジシクロヘキソキシジメトキシシラン(Si(O−cyc−Hex)(OMe))[147−149℃/10mmHg]
Ic1:トリメトキシ(2−オクトキシ)シラン(Si(O−2−Oct)(OMe)
)[74−76℃/2.0mmHg]
Ic2:ジメトキシジ(2−オクトキシ)シラン(Si(O−2−Oct)(OMe))[137−139℃/2.0mmHg]
Id1:((−)−メンチルオキシ)トリメトキシシラン(Si(O−(−)−Mentyl)(OMe))[107−109℃/3.0mmHg]
Ie1:((−)−シトロネロイルオキシ)トリメトキシシラン(Si(O−(−)−Citronel)(OMe))[91−93℃/0.3mmHg]
If1:トリメトキシ(2−フェネチルオキシ)シラン(Si(OCHCHPh)(OMe))[98−99℃/1.0mmHg]
If2:ジメトキシジ(2−フェネチルオキシ)シラン(Si(OCHCHPh)(OMe))[173−174℃/1.0mmHg]
Ig1:(2−メチルフェノキシ)トリメトキシシラン(Si(O−2−MeC)(OMe))[87−88℃/2.0mmHg]
Ig2:ジ(2−メチルフェノキシ)ジメトキシシラン(Si(O−2−MeC(OMe))[137−139℃/2.0mmHg]
Ih1:(5−イソプロピル−2−メチルフェノキシ)トリメトキシシラン(Si(O−5−Pr−2−Me−C)(OMe))[81−83℃/0.2mmHg]
Ih2:ジ(5−イソプロピル−2−メチルフェノキシ)ジメトキシシラン(Si(O−5−Pr−2−Me−C(OMe))[149−151℃/0.15mmHg]
Ii1:(2−イソプロピル−5−メチルフェノキシ)トリメトキシシラン(Si(O−2−Pr−5−Me−C)(OMe))[95−97℃/0.6mmHg]
Ij1:トリエトキシヘキソキシシラン(Si(OHex)(OEt))[85−87℃/1.1mmHg]
Ij2:ジエトキシジヘキソキシシラン(Si(OHex)(OEt))[123−125℃/1.1mmHg]
Ik1:シクロヘキソキシトリエトキシシラン(Si(O−cyc−Hex)(OEt))[84−86℃/1.1mmHg]
Il1:トリエトキシデシルオキシシラン(Si(ODec)(OEt))[130−132℃/1.1mmHg]
Im2:ジエトキシジ(2−メトキシエトキシ)シラン(Si(OCHCHOMe)(OEt))[114−116℃/10mmHg]
In1:(ベンジルオキシ)トリエトキシシラン(Si(OCHPh)(OEt))[108−110℃/1.5mmHg]
In2:ジ(ベンジルオキシ)ジエトキシシラン(Si(OCHPh)(OEt))[162−164℃/1.5mmHg]
(実施例1)
ジヘキソキシジメトキシシラン(Si(OHex)(OMe))(Ia2) 3.2mmol、酢酸無水物(IIa) 6.4mmol、ゼオライト CBV780(ゼオリスト社製) 5mgの混合物を反応管に入れ、60℃で10分攪拌した。生成物を、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析計、および核磁気共鳴スペクトル測定装置で分析し、生成物の収率を、核磁気共鳴スペクトル測定装置で測定した結果、アセトキシヘキソキシジメトキシシラン(Si(OHex)(OMe)(OAc))(IIIA1a)、アセトキシジヘキソキシメトキシシラン(Si(OHex)(OMe)(OAc))(IIIA2a)、アセトキシトリヘキソキシシラン(Si(OHex)(OAc))(IIIA3a)、ジアセトキシヘキソキシメトキシシラン(Si(OHex)(OMe)(OAc))(IIIA4a)、およびジアセトキシジヘキソキシシラン(Si(OHex)(OAc))(IIIA5a)が、それぞれ、19%、56%、2%、9%、および7%の収率で生成したことがわかった(表1参照)。
Figure 2019218305
Figure 2019218305
Figure 2019218305
Figure 2019218305
Figure 2019218305
Figure 2019218305
(実施例2〜29)
反応条件(触媒、原料、温度、時間等)を変えて、実施例1と同様に反応および分析を行い、生成物の収率をガスクロマトグラフ分析または核磁気共鳴スペクトル分析で測定した結果を表1(表1−1〜1−6)に示す。
上記実施例で得られたシラン類(IIIA)の29Si核磁気共鳴スペクトル(29Si−NMR)および質量分析スペクトルのデータを、原料のアルコキシシラン(I)のデータと合わせて、表2(表2−1〜2−7)に示す。
Figure 2019218305
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Figure 2019218305
Figure 2019218305
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Figure 2019218305
以下、上記の方法で得られたアシロキシシランを、固体材料の表面処理剤として使用した使用例について説明する。
(実施例30)
実施例1で得られたシラン類(IIIA1a)〜(IIIA5a)を含む反応液 0.043mL(全シラン量として約0.1mmol)を、トルエンで1mLに希釈して、表面処理用の溶液(全シラン量として約0.1M濃度)を調製した。
調製溶液にガラス板(ホウケイ酸ガラス、1.8cm×1.8cm)を室温で2分間浸漬し、トルエン3mLおよびアセトン3mLで順次洗浄し、80℃で5分間乾燥させた。ガラス板の水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学製 自動接触角計 DMe−201)で測定した結果、未処理の状態の20°から処理後の状態の87°に変化したことがわかった。このことは、ガラス板の表面が、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシランにより修飾され、撥水性が高くなったことを示している(表3参照)。
このガラス板を、水に1分間浸漬し、アセトン、トルエン、アセトンで洗浄し、80℃で5分間乾燥させて、水接触角を測定した結果は、81°(水浸漬時間が1分後の水接触角)であった。さらに、同じガラス板を、水に2分間浸漬した後、同様に、ガラス板を洗浄、乾燥させて、水接触角を測定した結果は、77°(水浸漬合計時間が3分後の水接触角)であった。
Figure 2019218305
(実施例31〜46)
実施例30と同様に、表1の実施例で得られたシラン類を用いて、表面処理用のトルエン溶液(全シラン量として約0.1M濃度)を調製した後、ガラス板の表面処理を行い、水接触角を測定した結果を表3に示す。
(比較例1)
TMOS(Si(OMe)) 2.0mmol、酢酸無水物(IIa) 2.2mmol、ゼオライト CBV780(ゼオリスト社製) 10mgの混合物を反応管に入れ、60℃で10分攪拌した。生成物を、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析計、および核磁気共鳴スペクトル測定装置で分析し、生成物の収率を、核磁気共鳴スペクトル測定装置で測定した結果、アセトキシトリメトキシシラン(Si(OMe)(OAc))およびジアセトキシジメトキシシラン(Si(OMe)(OAc))が、それぞれ、60%および20%の収率で生成したことがわかった。
生成したシラン類を含む反応液 0.025mL(全シラン量として約0.1mmol)を、トルエンで1mLに希釈して表面処理用の溶液(全シラン量として約0.1M濃度)を調製し、実施例30と同様に、ガラス板の表面処理を行い、水接触角を測定した。
その結果、表面処理後、水に浸漬前の測定では、水接触角は68°であったが、ガラス板を水に浸漬すると、水接触角は大きく低下し、水浸漬合計時間が、1分、3分、10分、20分、および30分では、水接触角は、それぞれ、56°、53°、46°、47°、および45°であった(表3参照)。
(比較例2)
TEOS(Si(OEt)) 1.5mmol、酢酸無水物(IIa) 1.65mmol、ゼオライト CBV780(ゼオリスト社製) 15mgの混合物を反応管に入れ、25℃で20分攪拌した。生成物を、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析計、および核磁気共鳴スペクトル測定装置で分析し、生成物の収率を、核磁気共鳴スペクトル測定装置で測定した結果、アセトキシトリエトキシシラン(Si(OEt)(OAc))およびジアセトキシジエトキシシラン(Si(OEt)(OAc))が、それぞれ、70%および20%の収率で生成したことがわかった。
生成したシラン類を含む反応液 0.034mL(全シラン量として約0.1mmol)を、トルエンで1mLに希釈して表面処理用の溶液(全シラン量として約0.1M濃度)を調製し、実施例30と同様に、ガラス板の表面処理を行い、水接触角を測定した。
その結果、表面処理後、水に浸漬前の測定では、水接触角は73°であったが、ガラス板を水に浸漬すると、水接触角は大きく低下し、水浸漬合計時間が、1分および10分では、水接触角は、それぞれ、58°および47°であった(表3参照)。
<表面処理後の修飾表面の水接触角について>
実施例30〜46の結果は、本発明の方法で得られた、アルコキシ基とアシロキシシラン基を有するシラン類を組成物とする溶液に、室温で短時間浸すだけという簡便な手法により、ガラス板の表面処理を行うことができ、ガラス板表面の水に対する接触角を、未処理の約20°に対して、62〜90°の範囲で、疎水的に修飾できることを示している。
<修飾表面の水に対する安定性について>
さらに、本発明により、水に対する高い安定性を有する疎水処理を実現可能である。比較例1、2によると、TMOS又はTEOSをアシロキシ化した化合物を用いた場合も、68°、73°とガラス板表面を疎水的に修飾できるが、表面処理後の修飾状態の水に対する安定性については、実施例と比較例の間で大きい差が見られた。表面処理したガラス板を一定時間水に浸漬させて、水接触角を測定し、水に浸漬させる前の水接触角に対して何%変化しているか(変化率)を調べた結果、本発明の方法で得られたシラン類では、その変化率は小さかったが、比較例のTMOS、TEOSでは、大きな変化率が観察された。
具体的には、表3の変化率(水浸漬合計時間10分の変化率)の欄に示すように、原料のアルコキシシランより製造された、アルコキシ基とアシロキシ基と有するシラン類を用いて、ガラス板の表面処理を行い、水接触角の変化率を測定した結果は(以下、括弧内はアルコキシシランの種類を示す)、0%(Si(O−cyc−Hex)(OMe))(Ib2))、−9%(Si(O−2−Oct)(OMe))(Ic1))、−10%(Si(O−2−Oct)(OMe))(Ic2))、−16%(Si(O−(−)−Mentyl)(OMe)(Id1))、−8%(Si(OCHCHPh)(OMe)(If1))、−6%(Si(OCHCHPh)(OMe)(If2))、−2%(Si(O−5−Pr−2−Me−C)(OMe)(Ih1))、−11%(Si(O−2−Pr−5−Me−C)(OMe)(Ii1))、−32%(Si(OMe))、−36%(Si(OEt))であり、本発明の方法で得られたシラン類を用いた場合の変化率が、0〜−16%であったのに対して、比較例のTMOSおよびTEOSを用いた場合の変化率は、−32%および−36%と、大きく変化した。
このことは、メトキシ基またはエトキシ基以外のアルコキシ基を導入したアルコキシシランをアシロキシ化して表面処理に用いた場合、処理後のガラス板を水に浸漬させても、表面の状態が変化する程度は小さく、水に対して比較的安定な表面修飾を行うことが可能であることを示している。
とくに、表3の変化率の結果等より、前記一般式(IIIB)で表される、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類において、アルコキシ基(OR)の置換基Rが下記の種類である場合には、表面処理後の水に対する安定性を向上させる効果が大きいと考えられる。
(1)Rが、2級または3級の脂肪族炭化水素基である。
(2)Rが、アルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基である。
(3)Rが、アラルキル基である。
実施例29〜45の結果をまとめると、(1)本発明の方法で得られたシラン類を組成物とする溶液に、室温で短時間浸すだけという簡便な手法により、ガラス板の表面処理を行うことができ、ガラス板表面の水に対する接触角を、容易に制御できること、(2)アルコキシ基の種類により、水に対する安定性や分解性を自由に制御できることから、徐放性材料等、分解性を制御したさまざまな材料への応用も可能であることが示された。
本発明の製造方法により、機能性化学品として有用なシラン類を、効率的かつ安全に製造できるとともに、新規なシラン類、およびその用途を提供できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。

Claims (8)

  1. メトキシ基またはエトキシ基と、他のアルコキシ基を有するアルコキシシラン類に、カルボン酸無水物を、触媒存在下で反応させる反応工程を含む、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類の製造方法であって、前記アルコキシシラン類が、下記一般式(I)で表されるアルコキシシラン類であり、前記カルボン酸無水物が、下記一般式(II)で表されるカルボン酸無水物であり、前記触媒が、酸触媒であり、前記反応工程で得られるシラン類が、下記一般式(IIIA)で表されるシラン類であることを特徴とする、アルコキシ基とアシロキシ基を有するシラン類の製造方法。
    Si(OR(OR4−p (I)
    (式中、pは、1以上3以下の整数である。Rは、それぞれ独立して炭素数1〜24の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立してメチル基またはエチル基である。Rの炭化水素基の水素原子の一部または全部が、反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
    (RCO)2O (II)
    (式中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、炭化水素基の水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
    Si(OR(OR4−(r+s)(OCOR (IIIA)
    (式中、R、R、およびRは、それぞれ前記と同義であり、r、sは、1以上3以下の整数であり、(r、s)の組み合わせは、(1、1)、(1、2)、(1、3)、(2、1)、(2、2)、または(3、1)である。)
  2. 前記酸触媒が、無機系または有機系の酸である、請求項1に記載のシラン類の製造方法。
  3. 前記無機系の酸が、無機系固体酸である、請求項2に記載のシラン類の製造方法。
  4. 前記無機系固体酸が、ゼオライトであり、USY型、ベータ型、またはY型からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のシラン類の製造方法。
  5. 下記一般式(IIIB)で表されるシラン類。
    Si(OR(OR4−(v+w)(OCOR (IIIB)
    (式中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素基、または、炭素上の水素原子の一部または全部がアルコキシ基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基である。Rはメチル基またはエチル基であり、Rは、炭素数1〜3の炭化水素基、または、炭素上の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3の炭化水素基である。v、wは、1または2であり、(v、w)の組み合わせは、(1、1)、(1、2)、または(2、1)である。)
  6. 請求項5において、Rが、下記のいずれかの条件を満たす炭化水素基である(IIIB)のシラン類。
    (1)Rが、2級または3級の脂肪族炭化水素基である。
    (2)Rが、アルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基である。
    (3)Rが、アラルキル基である。
  7. 請求項5または6に記載のシラン類を含有する組成物からなる表面処理剤。
  8. 請求項1〜4の何れかの1項に記載の製造方法で得られるシラン類並びに請求項5または6に記載のシラン類からなる群より選ばれる少なくとも1種類のシラン類を含有する組成物からなる表面処理剤を用いて、固体材料の表面を処理する工程を含む、表面処理方法
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