JP2019216082A - 酵素電池正極用触媒、酵素電池正極用電極ペースト組成物、及びその用途 - Google Patents

酵素電池正極用触媒、酵素電池正極用電極ペースト組成物、及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、酵素電池における出力安定性、寿命、コスト等であり、同課題に対して酵素電池正極用炭素触媒を用いて作製される酵素電池正極とそれを具有する高寿命で出力安定性に優れた酵素電池を提供することである。【解決手段】前記課題は、炭素六角網面を基本骨格とした炭素材料であって、構成元素としてヘテロ元素を含み、ヘテロ元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされ、且つ酸素還元活性を有する酵素電池正極用炭素触媒によって解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、酵素電池正極用触媒、酵素電池正極用電極ペースト組成物、酵素電池用正極、酵素電池、自己発電型センサー、有機物センサー、水分センサーに関する。
現在、開発が進められている酵素電池は、糖やアルコール、有機酸等の有機物を燃料にして、酵素反応により生成した電子の有する電気エネルギーを利用する発電型デバイスである。
近年では、酵素電池から取り出した電気エネルギーを電源として使う以外にも、酵素が持つ基質選択性を利用し、糖やアルコール等の有機物をセンシングするための自己発電型センサーとして利用する方法も提案されている。自己発電型センサーは発電と有機物センシング機能を併せ持つため、電源フリーによる小型軽量化、低コスト化が可能となることに加え、酵素による微小量検知や高い基質選択性に由来する高いセンシング精度が特長となる。そのため、生体向けのウェアラブルデバイスやインプラントデバイス等に使われるセンサー用電源としての利用が期待されている。
他方、酵素電池においては、アノード及びカソードに酸化還元酵素を含み、多種多様な有機物と空気中の酸素を燃料として発電するエネルギーシステムであり、常温作動、豊富な有機エネルギー源、環境・生体への高い安全性等、複数の利点がある一方、出力安定性、寿命、コスト等に関する課題もある。
上記課題の解決に向け、これまでに様々な対策が取られてきた。例えば、発電性能向上に向け、多孔性カーボンを用いたポーラス型酵素燃料電池(特許文献1)や、親水性バインダーを用いた電極を作製し、酵素液の染みこみを改善させる方法(特許文献2)、また、酵素の寿命向上に向け、電解質の酸性基との接触による酵素の失活を緩和するために電極と電解質膜との間に保護膜を備える方法(特許文献3)、光硬化性樹脂を用いて酵素の溶出を抑制する方法(特許文献4)などが報告されている。しかし、性能向上が低い、用途が限定される等いずれも十分とは言えない。更に、酵素は一般的に電位に対する耐性が低いため、使用耐久性が低いという課題に対し、耐久性を向上させるため、正極側の酵素を白金等の貴金属触媒で代替する方法が知られている。しかし、不純物成分を多く含む生体試料やバイオマスなどを燃料として使用する酵素電池では、これら不純物が正極触媒を被毒し活性低下や出力不安定化を誘引する場合がある。加えて、高価な貴金属を使用するためデバイスの高コスト化も問題となる。
上記のように様々な取り組みがなされているが、現状において出力安定性、寿命、コスト等に関する課題が解消されているとは言い難い。
特開2009−181889号公報 国際公開第2013/065581号 特開2015−109188号公報 特許第5181576号
本発明の目的は、酵素電池用正極を構成する炭素触媒を提供することである。本発明の酵素電池用正極を用いることにより、それを具有する高寿命で出力安定性に優れた酵素電池を提供することである。
本発明者は、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、炭素六角網面を基本骨格とした炭素材料からなる酵素電池正極用炭素触媒であって、構成元素としてヘテロ元素を含み、ヘテロ元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされ、且つ酸素還元活性を有する酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、ヘテロ元素が窒素元素である上記酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、触媒表面の全元素に対する窒素原子のモル比をNとし、触媒表面の全窒素量に対する、XPSのN1sスペクトルのピーク分離により求めたN1型窒素原子量の割合とN2型窒素原子量の割合の合計(%)を(N1+N2)としたときの、表面末端窒素割合{N×(N1+N2)}が0.5〜25.0%であることを特徴とする上記酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、さらに、構成元素として卑金属元素を含む、上記酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、卑金属元素がCo及び/またはFeであることを特徴とする、上記酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、炭素触媒を構成する全元素に対する、炭素原子のモル比および窒素原子のモル比をそれぞれ、RCおよびRNとした際、RCに対するRNの割合が1〜40%である上記酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、炭素触媒を構成する全元素に対する、炭素原子のモル比、窒素原子のモル比および卑金属原子のモル比をそれぞれ、RC、RNおよびRMとした際、RCに対するRNの割合が1〜40%、RCに対するRMの割合が0.01〜20%である上記酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、窒素を吸着種としたBET比表面積(BETN2)が、50〜1200m2/gであることを特徴とする上記酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、CuKα線をX線源として得られるX線回折図において、回折角(2θ)が24.0〜27.0°の位置にピークを有し、該ピークの半値幅が8°以下であることを特徴とする上記酵素電池正極用炭素触媒に関する。
又、上記酵素電池正極用炭素触媒と、少なくとも溶剤と、バインダーとを含んでなる酵素電池正極用電極ペースト組成物に関する。
又、更に、分散剤を含んでなる上記酵素電池正極用電極ペースト組成物に関する。
又、上記酵素電池正極用電極ペースト組成物より形成された塗膜を有する酵素電池用正 極に関する。
又、上記酵素電池用正極を使用して形成される酵素電池に関する。
又、上記酵素電池用正極を使用して形成される自己発電型センサーに関する。
又、上記酵素電池用正極を使用して形成される有機物センサーに関する。
又、上記酵素電池を使用して形成される水分センサーに関する。
又、燃料がグルコース、乳酸、およびフルクトースからなる群より選ばれる少なくとも 一つである上記酵素電池に関する。
又、燃料および/またはセンシング対象物が、グルコース、乳酸、およびフルクトース からなる群より選ばれる少なくとも一つである上記自己発電型センサーに関する。
又、センシング対象物がグルコース、乳酸、およびフルクトースからなる群より選ばれ る少なくとも一つである上記有機物センサーに関する。
本発明の目的は、酵素電池用正極を構成する酵素電池正極用炭素触媒を提供することである。本発明の酵素電池用正極を用いることにより、それを具有する高寿命で出力安定性の優れた酵素電池並びに発電型センサーを提供することが可能となる。
図1は、酵素電池用正極(1)(実施例1)のグルコース濃度に対する酸化電流応答性を示す図である。 図2は、酵素電池(4)における0.1Mグルコース溶液の最大出力に対する、酵素電池(1)〜(4)における超純水の最大出力の割合を示す図である。 図3は、酵素電池(5)を用いた無線通信回路のブロック図を示す図である。 図4は、酵素電池用正極(1)の乳酸濃度に対する酸化電流応答性を示す図である。
以下、詳細に本発明について説明する。尚、本明細書では、「酵素電池正極用電極ペースト組成物」を、単に組成物ということがある。又、「樹脂」を「重合体」ということがある。又、「酵素電池正極用炭素触媒」を、単に「炭素触媒」ということがある。
<酵素電池正極用炭素触媒>
酵素電池正極用炭素触媒とは、炭素原子が六角網状に共有結合した網平面を形成した炭素六角網面を基本骨格とした炭素材料からなり、それらの構成単位間に物理的・化学的な相互作用(結合)を有し、異種元素、たとえばN、B、Pなどのヘテロ原子を含み、更に場合によって卑金属元素が含まれ酸素還元活性を有する触媒材料である。ここでいう卑金属元素とは、遷移金属元素のうち貴金属元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金)を除く金属元素であり、卑金属元素としては、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、銅、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、およびスズからなる群より選ばれる一種以上を含有することが好ましい。
ヘテロ元素と卑金属元素を含有することは、酸素還元活性を有する上で重要な意味をなす。酵素電池正極用炭素触媒は、その触媒活性点として、例えば、炭素触媒の基本骨格を構成する炭素六角網面のエッジ部の炭素元素を置換するようにドープされた窒素原子やその近傍の炭素原子、また触媒表面上に卑金属元素を中心に4個の窒素が平面上に並んだ卑金属−N4構造における窒素原子や卑金属原子などが挙げられる。
本発明における酵素電池正極用炭素触媒は、比表面積が大きく、電子伝導性が高いほど好ましい。酸素還元反応は触媒の表面で起こるため、比表面積が大きいほど、酸素とプロトン、電子との反応場が多くなり、触媒活性の向上に繋がるため好ましい。また、電子伝導性が高いほど、電極中における酸素還元反応に必要な電子を前記反応場に供給できるため、電流の増加に繋がりやすく、好ましい。また、触媒表面のヘテロ原子、特に窒素量が多いほど表面の活性点の数が多くなりやすいため好ましく、更にNが後述のN1型窒素原子を主とした末端窒素であるとより好ましい。
本発明における酵素電池正極用炭素触媒は、触媒を構成する全元素に対する、炭素原子のモル比、窒素原子のモル比および卑金属原子のモル比をそれぞれ、RC、RNおよびRMとした際、炭素原子のモル比RCに対する窒素原子のモル比RNの割合が1〜40%、炭素原子のモル比RCに対する卑金属原子のモル比RMの割合が0.01〜20%の範囲にあると好ましい。より好ましくは、炭素原子のモル比RCに対する窒素原子のモル比RNの割合が1.5〜20%、炭素原子のモル比RCに対する卑金属原子のモル比RMの割合が0.05〜10%である。
炭素原子に対する窒素原子や卑金属原子の元素比が上記範囲にあると、活性点形成段階において、卑金属金属元素が炭素の結晶化促進、細孔の発達、エッジの生成等の炭素化触媒として効果的に作用することで活性点の数や質を向上させることが期待できる。更に、酸素還元触媒反応段階においても、金属種が、主に窒素由来の活性点で生成する過酸化水素の還元触媒として作用することで、効果的に水までの還元(四電子還元)を促進させることが期待できるため好ましい。
また、X線光電子分光法(XPS)によって測定した、触媒表面の全元素に対する窒素原子のモル比を(N)とし、触媒表面の全窒素量に対する、XPSのN1sスペクトルのピーク分離により求めたN1型窒素原子量の割合とN2型窒素原子量の割合の合計(%)を(N1+N2)としたときの、表面末端窒素割合{N×(N1+N2)}が0.5〜25%であることが好ましい。より好ましくは1〜18%である。
例えば、触媒表面の全元素に対する窒素原子のモル比Nが0.1、触媒表面の全窒素量に対する、XPSのN1sスペクトルのピーク分離により求めたN1型窒素原子量の割合N1が30%、N2型窒素原子量の割合N2が20%である酵素電池正極用炭素触媒の場合は、下記計算式により表面末端窒素割合は5%となる。
{N×(N1+N2)}= 0.1×(30%+20%)= 5%
下記構造式に示すように、酵素電池正極用炭素触媒中の窒素原子は様々な状態で炭素六角網面中の炭素元素を置換するように存在する。本発明において、N1型窒素原子とは、N1s電子の結合エネルギーが398.5±0.5eVであり、ピリジン類似の構造をしているものである。N2型窒素原子とは、N1s電子の結合エネルギーが400±0.5eVであり、ピロール類似の構造をしているものである。これらはそれぞれピリジンN、ピロールNと呼ばれ、本発明ではこれらを合わせ末端窒素と呼称する。これらのピークが重なっている場合には、各成分をガウス関数としてピーク強度、ピーク位置、ピーク半値全幅をパラメーターとして最適化することにより、フィッティングを行ってピークを分離する。ここで、ピリドン類似の構造をしているものはピークの分離が困難なため、便宜上、末端窒素に含まれていてよいものとする。
上記以外の窒素原子は、N3型窒素原子(主に炭素環の内部に存在する、3つの炭素原子と結合している4級のもの)、N4型窒素原子(酸化された状態で、酸素のような異種元素が結合しているもの)に分類される。
上記末端窒素は、非共有電子対を有しており、末端窒素は周囲の炭素の電子状態に影響を及ぼし、隣接する炭素原子が活性サイトとして働くことに加え、卑金属に窒素原子が配位する卑金属−N4構造形成に有利に働くことが報告されている。そのため、活性の高い触媒表面には末端窒素が多く存在していると考えられ、表面末端窒素割合は、表面に存在する末端窒素の量を表す指標となる。
本発明における酵素電池正極用炭素触媒は、窒素を吸着種としたBET比表面積(BETN2)が、50〜1200m2/gであることが好ましい。BET比表面積が上記の範囲にあると、反応が起こる反応場を多くできるため好ましい。より好ましくは100〜1000m2/gである。
本発明における比表面積とは試料単位質量当たりの表面積のことであり、ガス(N2又はH2O)吸着法によって求めることができる。解析法はBET法を用い、相対圧(P(吸着平衡圧)/P0(飽和蒸気圧)=0.05〜0.3)とガス吸着量のプロットより得られる直線の切片と勾配から、単分子吸着量を求めることで、BET比表面積を算出できる。
本発明における酵素電池正極用炭素触媒は、CuKα線をX線源として得られるX線回折(XRD)図において、回折角(2θ)が24.0〜27.0°の位置にピークを有し、該ピークの半値幅が8°以下であることが好ましい。
CuKα線をX線源として得られる酵素電池正極用炭素触媒のX線回折線図においては、24.0〜27.0°付近に炭素の(002)面回折ピークが現れる。炭素の(002)回折ピーク位置は、炭素六角網面の面間距離によって変化し、ピーク位置が高角側であるほど炭素六角網面の距離が近いことから、構造の黒鉛的規則性が高いことが示される。また、上記ピークがシャープである(半値幅が小さい)ほど、結晶子サイズが大きく、結晶構造が発達していることを示すものである。
上記ピークの半値幅が8°以下である場合には、酵素電池正極用炭素触媒の結晶性が高く、電子伝導性が高い。これにより、電極中における酸素還元反応に必要な電子を前記反応場に供給することができるため、電流の増加に繋がり、好ましい。
また、上記ピークの半値幅が1°以下であることは、さらに好ましい。
又、上述の触媒作用に対する機能が強いため、含有する卑金属としては、コバルト(Co)及び/又は鉄(Fe)が好ましい。
<酵素電池正極用炭素触媒の製造方法>
本発明における炭素触媒の製造方法としては、特に限定されず、
炭素系原料、ヘテロ元素を含む化合物及び卑金属元素を含む化合物を混合し炭化させる方法、
炭素系原料、ヘテロ元素を含む化合物を混合し炭化させる方法、
ヘテロ元素を含む炭素系原料と、卑金属元素を含む化合物とを混合し炭化させる方法、
フタロシアニンやポルフィリン等の大環状化合物などのヘテロ元素及び卑金属元素を含む化合物を炭化させる方法、
炭素系原料と、ヘテロ元素及び卑金属元素を含む化合物とを混合し炭化させる方法、
炭素系原料と、卑金属元素を含む化合物とを混合し炭化させた材料に気相法でヘテロ元素をドープする方法、
炭素系原料に気相法でヘテロ元素をドープする方法など、従来公知のものを使用することが出来る。
好ましい製造方法としては、少なくともヘテロ元素を含む炭素系原料と、卑金属元素を含む化合物とを混合し、熱処理する方法や、少なくとも炭素系原料と、ヘテロ元素及び卑金属元素を含む化合物とを混合し、熱処理する方法が挙げられる。また、前記熱処理により得られた炭素触媒を、酸で洗浄、及び乾燥する工程を含む方法が挙げられる。更に、前記酸洗浄により得られた炭素触媒を、熱処理する工程を含む方法が挙げられる。
<炭素系原料>
本発明における酵素電池正極用炭素触媒を製造するための、炭素系原料としては、無機炭素系原料が好ましい。例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック)、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン、炭素繊維等が挙げられる。上記無機炭素系原料の中でも、種類やメーカーによって、炭素六角網面の大きさや積層構造は様々で、結晶性、粒子径、形状、BET比表面積、細孔容積、細孔径、嵩密度、DBP吸油量、表面酸塩基度、表面親水度、導電性などの様々な物性や、コストが異なるため、使用する用途や要求性能に合わせて最適な材料を選択することができる。
市販の無機炭素系原料としては、例えば、
ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD、ライオナイトEC−200L等のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製ケッチェンブラック;
トーカブラック#4300、#4400、#4500、及び#5500等の東海カーボン社製ファーネスブラック;
プリンテックスL等のデグサ社製ファーネスブラック;
Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、Conductex SC ULTRA、975 ULTRA、PUER BLACK100、115、及び205等のコロンビヤン社製ファーネスブラック;
#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、及び#5400B等の三菱化学社製ファーネスブラック;
MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、及びBlackPearls2000等のキャボット社製ファーネスブラック;
Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、及びSuperP−Li等のTIMCAL社製ファーネスブラック;
デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35等のデンカ社製アセチレンブラック;
VGCF、VGCF−H、VGCF−X等の昭和電工社製カーボンナノチューブ;
名城ナノカーボン社製カーボンナノチューブ;
xGnP−C−300、xGnP−C−500、xGnP−C−750、xGnP−M−5、xGnP−M−15、xGnP−M−25、xGnP−H−5、xGnP−H−15、xGnP−H−25等のXGSciences社製グラフェンナノプレートレット;
Easy−N社製ナノポーラスカーボン;
カイノール炭素繊維、カイノール活性炭繊維などの群栄化学工業社製炭素繊維;
クノーベルMHグレード、クノーベルP(2)010グレード、クノーベルP(3)010グレード、クノーベルP(4)050グレード、クノーベルMJ(4)030グレード、クノーベルMJ(4)010グレード、クノーベルMJ(4)150グレード等の東洋炭素社製クノーベル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明における炭素触媒を製造するための炭素系原料としては、無機炭素系原料だけでなく、熱処理後炭素粒子となる有機材料である有機炭素系原料も使用することができる。熱処理後に炭素粒子となる有機材料としては、炭素以外に他の元素を含有していても良い。熱処理後の炭素粒子に活性点となる窒素やホウ素等のヘテロ元素を含有させるため、予め同ヘテロ元素を含有する有機材料の使用が好ましい場合がある。具体的な有機材料としては、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアニリン系樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂系樹脂、ポリイミダゾール系樹脂、ポリピロール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、メラミン系樹脂、ピッチ、褐炭、ポリカルボジイミド、バイオマス、タンパク質、フミン酸等やそれらの誘導体などが挙げられる。その中でも窒素やホウ素などのヘテロ元素を含有する有機材料である、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアニリン系樹脂等が、窒素元素を含むため有機炭素系原料として好ましい。
<ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物>
本発明における炭素触媒として、ヘテロ元素、卑金属元素を導入する際に使用される原料としては、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、色素、ポリマー等の有機化合物、金属単体、金属酸化物、金属塩等の無機化合物が挙げられる。また、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用して用いても良い。卑金属元素とは、遷移金属元素のうち貴金属元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金)を除く金属元素であり、卑金属元素としては、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、銅、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、スズから選ばれる一種以上を含有することが好ましい。
好ましくは錯体もしくは塩であり、その中でも、卑金属元素を分子中に含有することが可能な、窒素を含有した芳香族化合物は、炭素触媒中に効率的に窒素元素と卑金属元素を導入しやすいため好ましい。具体的には、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザアヌレン系化合物等の大環状化合物が挙げられる。上記芳香族化合物は、電子吸引性官能基や電子供与性官能基を導入されたものであってもよい。特に、フタロシアニン系化合物は、様々な卑金属元素を含んだ化合物が入手可能であり、コスト的にも安価であるため、原料としては特に好ましい。中でも、コバルトフタロシアニン系化合物、ニッケルフタロシアニン系化合物、鉄フタロシアニン系化合物は、高い酸素還元活性も有することで知られていることから、これらを原料に使用した場合、安価で高い酸素還元活性を有する炭素触媒を得ることができるためより好ましい。
炭素触媒に導入される元素の由来としては複数の原料の組み合わせが考えられる。炭素元素は無機炭素系原料や有機炭素系原料、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物など、ヘテロ元素は、ヘテロ元素を含む、有機炭素系原料やヘテロ元素を含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物、アンモニアなどヘテロ元素を含む反応性気体など、卑金属元素は、卑金属元素を含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物などである。導入される元素の由来となる原料は、同一元素について一種でも複数種を混ぜても問題はない。
原料の組み合わせとしては例えば、
炭素元素を無機炭素系原料、ヘテロ元素を気相法のヘテロ元素ドープ由来の炭素触媒、
炭素元素を有機炭素系原料、ヘテロ元素を気相法のヘテロ元素ドープ由来の炭素触媒、
炭素元素とヘテロ元素を、少なくともヘテロ元素を一種以上含む有機炭素系原料由来の炭素触媒、
炭素元素を無機炭素系原料、ヘテロ元素と卑金属元素を、ヘテロ元素及び卑金属元素をそれぞれ少なくとも一種以上含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物由来の炭素触媒、
炭素元素を有機炭素系原料、ヘテロ元素と卑金属元素を、ヘテロ元素及び卑金属元素をそれぞれ少なくとも一種以上含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物由来の炭素触媒、
炭素元素を有機炭素系原料、ヘテロ元素を、卑金属元素を含まず少なくともヘテロ元素を一種以上含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物、卑金属元素を、ヘテロ元素を含まず少なくとも卑金属元素を一種以上含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物由来の炭素触媒、
炭素元素とヘテロ元素を、少なくともヘテロ元素を一種以上含む有機炭素系原料、卑金属元素を、少なくとも卑金属元素を一種以上含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物由来の炭素触媒、
炭素元素、ヘテロ元素及び卑金属元素を、炭素元素と、ヘテロ元素及び卑金属元素をそれぞれ少なくとも一種以上含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物由来の炭素触媒、
炭素元素を無機炭素系原料、ヘテロ元素と卑金属元素を、ヘテロ元素及び卑金属元素をそれぞれ少なくとも一種以上含む、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物由来の炭素触媒等が挙げられる。
原料の混合物である前駆体の作製方法としては、前駆体に炭素元素、ヘテロ元素、及び卑金属元素が含まれるよう、炭素系原料と、1種類又は複数種類のヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物とを混合する際は、原料同士が均一に混合・複合されていれば良く、混合法としては、乾式混合及び湿式混合が挙げられる。混合装置としては、以下のような乾式混合装置や湿式混合装置を使用できる。
乾式混合装置としては、例えば、2本ロールや3本ロール等のロールミル、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等の高速攪拌機、マイクロナイザーやジェットミル等の流体エネルギー粉砕機、アトライター、ホソカワミクロン社製粒子複合化装置「ナノキュア」、「ノビルタ」、「メカノフュージョン」、奈良機械製作所社製粉体表面改質装置「ハイブリダイゼーションシステム」、「メカノマイクロス」、「ミラーロ」等が挙げられる。
又、乾式混合装置を使用する際、母体となる原料粉体に、他の原料を粉体のまま直接添加しても良いが、より均一な混合物を作成するために、前もって他の原料を少量の溶媒に溶解、又、分散させておき、母体となる原料粉体の凝集粒子を解しながら添加する方法が好ましい。更に、処理効率を上げるために、加温することが好ましい場合もある。
ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物の中には、常温では固体であるが、融点、軟化点、又はガラス転移温度が100℃未満と低い材料がある。それらの材料を用いる場合、常温で混合するより、加温下で溶融させて混合する方がより均一に混合できる場合もある。
湿式混合装置としては、例えば、
ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;
エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社製「フィルミックス」等のホモジナイザー類;
ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;
湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械製作所社製「マイクロス」等のメディアレス分散機;
又は、その他ロールミル、ニーダー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、湿式混合装置としては、装置からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。又、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
又、各原料が均一に溶解した系でない場合、各原料の溶媒への濡れ性、分散性を向上させるために、一般的な分散剤である水系用分散剤もしくは溶剤系分散剤を一緒に添加し、分散、混合することができる。
<水系用分散剤>
市販の水系用分散剤としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
ビックケミー社製の分散剤としては、DISPERBYK−180、184、187、190、191、192、193、194、199、2010、2012、2015、2096等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の分散剤としては、SOLSPERSE12000、20000、27000、41000、41090、43000、44000、又は45000等が挙げられる。
BASFジャパン社製の分散剤としては、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、60、61、62、63、HPD−96、Luvitec K17、K30、K60、K80、K85、K90、VA64等が挙げられる。
川研ファインケミカル社製の分散剤としては、ヒノアクトA−110、300、303、又は501等が挙げられる。
ニットーボーメディカル社製の分散剤としては、PAAシリーズ、PASシリーズ、両性シリーズPAS−410C、410SA、84、2451、又は2351等が挙げられる。
アイエスピー・ジャパン社製の分散剤としては、ポリビニルピロリドンPVP K−15、K−30、K−60、K−90、又はK−120等が挙げられる。
丸善石油化学社製の分散剤としては、ポリビニルイミダゾールPVI等が挙げられる。
<溶剤系用分散剤>
市販の溶剤系用分散剤としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
ビックケミー社製の分散剤としては、Anti−Terra−U、U100、204、DISPERBYK−101、102、103、106、107、108、109、110、111、140、161、163、168、170、171等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の分散剤としては、SOLSPERSE3000、5000、9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、21000、22000、24000SC、24000GR、26000、28000、31845、32000、32500、32600、33500、34750、35100、35200、36600、37500、38500、又は53095が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の分散剤としては、アジスパーPB821、PB822、PN411、又はPA111が挙げられる。
川研ファインケミカル社製の分散剤としては、ヒノアクトKF−1000、1300M、1500、T−6000、8000、8000E、又は9100等が挙げられる。
BASFジャパン社製の分散剤としては、Luvicap等が挙げられる。
湿式混合の場合、湿式混合装置を用いて作製した分散体を乾燥させる工程が必要となる。この場合、用いる乾燥装置としては、棚式乾燥機、回転乾燥機、気流乾燥機、噴霧乾燥機 撹拌乾燥機、凍結乾燥機などが挙げられる。
炭素触媒の製造方法では、炭素系原料と、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物に対して、最適な混合装置、分散装置、又は乾燥装置を選択することにより、触媒活性の優れた炭素触媒を得ることができる。
次に、炭素系原料と、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物の混合物を熱処理する方法においては、原料となる炭素系原料、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物によって異なるが、加熱温度は500〜1100℃が好ましく、700〜1000℃がより好ましい。
この場合、ある程度高温で熱処理することで、窒素原子が、炭素六角網面のエッジ部の炭素元素を置換するようにドープされ、活性点の構造が安定化し、実用的な電池運転条件に耐え得る触媒表面となることが多い。このときの温度は600℃以上であることが好ましい。
加熱時間は特に限定されないが、通常は1時間から5時間であることが好ましい。
更に、熱処理工程における雰囲気に関しては、原料をできるだけ不完全燃焼により炭化させ、ヘテロ元素や金属元素などを炭素触媒表面に残存させる必要性があるため、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気や、窒素やアルゴンに水素が混合された還元性ガス雰囲気などが好ましい。また、熱処理時の炭素触媒中のヘテロ元素量低減を抑制するために、窒素元素を多量に含むアンモニアガス雰囲気下で熱処理を行なったり、炭素触媒の表面構造を制御するために、水蒸気、二酸化炭素、低酸素雰囲気下で熱処理したりしても良い。この場合では、雰囲気によっては酸化が進むと金属が酸化物となり粒子成分が凝集しやすくなるため、温度や時間などを適切に選択する必要がある。
また、熱処理工程に関しては、一定の雰囲気及び温度下で、1段階で処理を行う方法だけでなく、一度、不活性ガス雰囲気下、500℃程度の比較的低温で熱処理し、その後、不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気下、または賦活ガス雰囲気下で、1段階目を超える温度で熱処理することも可能である。そうすることで、触媒活性サイトとして考えられているヘテロ元素や金属元素からなる活性サイト部位を、より効率的且つ、多量に残存させられることがある。
炭素触媒の製造方法としては、さらに、前記熱処理により得られた炭素触媒を酸で洗浄、及び乾燥する工程を含む方法が挙げられる。ここで用いる酸は、前記熱処理により得られた炭素触媒表面に存在する活性点として作用しない卑金属成分を溶出させることができるものであれば、特に限定されない。炭素触媒との反応性が低く、卑金属成分の溶解力が強い濃塩酸や希硫酸等が好ましい。具体的な洗浄方法としては、ガラス容器内に酸を加え、炭素触媒を添加し、分散させながら数時間撹拌させた後、静置し、上澄みを除去する。そして、上澄みの着色が確認されなくなるまで上記方法を繰り返し行い、最後に、ろ過、水洗により酸を除去し、乾燥する方法が挙げられる。
触媒活性点としてエッジ部の窒素元素近傍の炭素元素を有する炭素触媒は、酸で洗浄することにより、表面の卑金属成分が除去され触媒活性が向上するため好ましい。
炭素触媒の製造方法としては、さらに、前記酸洗浄により得られた炭素触媒を再度熱処理する工程を含む方法が挙げられる。ここでの熱処理は、先に行った熱処理の条件と大きく変わるものではない。加熱温度は500〜1100℃が好ましく、700〜1000℃がより好ましい。また、雰囲気は、表面の窒素元素が分解し減少しにくい観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気や、不活性ガスに水素が混合された還元性ガス雰囲気、窒素元素を多量に含むアンモニアガス雰囲気下等が好ましい。
<酵素電池正極用電極ペースト組成物>
酵素電池正極用電極ペースト組成物は、酵素電池正極用炭素触媒と、少なくとも溶剤と、バインダーとを含み、酵素電池正極用炭素触媒の全表面が樹脂(バインダー)で覆われることなく活性点が露出できているため、目的とする触媒反応に対して活性点が効果的に機能できる。
また、酵素電池正極用電極ペースト組成物は、必要に応じて分散剤を含有する。酵素電池正極用炭素触媒及び溶剤と、バインダー、分散剤の割合は、特に限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択され得る。
<溶剤>
本発明に使用する溶剤としては、特に限定せず使用することができる。必要に応じて、例えば、分散性や導電性支持体への塗工性向上のために、複数の溶剤種を混ぜて使用しても良い。溶剤としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられる。中でも水や、炭素数が4以下のアルコール系溶剤が好ましい。
<バインダー>
本発明におけるバインダーとは、酵素電池正極用炭素触媒などの粒子を結着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
バインダーとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、パーフルオロカーボン及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。又、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
また、水性液状媒体を使用する場合、一般的に水性エマルションとも呼ばれるバインダーも使用できる。水性エマルションとは、バインダー樹脂が水中で溶解せずに、微粒子の状態で分散されているものである。
使用するエマルションは特に限定されないが、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ジエン系エマルション(SBR(スチレンブタジエンゴム)など)、フッ素系エマルション(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)など)等が挙げられる。
<分散剤>
酵素電池正極用電極ペースト組成物において使用する分散剤は、酵素電池正極用炭素触媒に対して分散剤として有効に機能し、その凝集を緩和することができる。分散剤は酵素電池正極用炭素触媒に対して凝集を緩和する効果が得られれば特に限定されるものではない。
使用する分散剤としては、酵素電池正極用炭素触媒の前駆体の作製方法で例示した水系用、溶剤系用分散剤等が使用できる。
<分散機・混合機>
本発明の組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントシェーカー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
<酵素電池>
本発明の酵素電池は、正極(カソード)と負極(アノード)とから構成され、酵素と燃料とが酸化反応して電子を発生する。
<燃料>
本願の酵素電池で使用できる燃料としては、酵素で分解できる有機物であれば特に限定はされず、D−グルコース等の単糖類、デンプン等の多糖類、エタノール等のアルコール、有機酸などの有機物であれば幅広く利用できる。
<酵素電池用正極>
酵素電池用正極では、アノードで発生した電子を受け取り、電極中の還元反応によりこれを消費する。酵素電池用正極の構造としては、例えば、酸素を電子受容体として使用する酸素還元反応の場合では、反応場となる正極触媒の活性点まで電子及びプロトンの伝導パスや酸素の供給パスが確保されていることが効率的な発電を行う上では好ましい。
酵素電池用正極は、導電性支持体(カーボンペーパーや導電性カーボン層など)やセパレータ等の基材に前記組成物を直接塗布し乾燥することにより作製する方法や、転写基材などに前記組成物を塗布し乾燥することにより形成された塗膜を前記導電性支持体やセパレータ等に転写する方法等で作製される。
組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
<導電性支持体>
導電性支持体は、導電性を有する材料であれば特に限定はない。導電性の炭素材料からなる導電層やカーボンペーパーや、カーボンフェルト、カーボンクロス、金属箔、金属メッシュ等が使われる。上記導電層は導電性の炭素材料を含む、導電性カーボン層用導電ペースト組成物などを基材に塗工するなどして作製される。
<セパレータ>
セパレータとしては、負極と正極を電気的に分離できる(短絡の防止)ものであれば、特に限定されず従来公知の材料を用いる事ができる。具体的には、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維、樹脂不織布、ガラス不織布、フェルト、濾紙、和紙等を用いることができる。
<酵素>
本発明における酵素としては、反応により電子を授受できる酵素であれば特に制限はなく、供給する燃料やコスト、デバイスの種類等に応じて適宜選択される。
酵素としては、物質代謝など生体内での多くの酸化還元反応を触媒する酸化還元酵素が好ましい。本発明の酵素電池に用いるアノード電極においては電子を放出できる酵素であれば良く、糖や有機酸などのオキシダーゼやデヒドロゲナーゼなどが利用できる。中でも、他の酵素に比べ安価で、安定性が高く、人体の血液や尿などの生体試料に含まれるグルコースを燃料にできるグルコースオキシダーゼが好ましい場合がある。その他の酵素としては、汗や血液中の乳酸を使用できる乳酸オキシダーゼや乳酸デヒドゲナーゼ、フルクトースを燃料にできるフルクトースオキシダーゼやフルクトースデヒドゲナーゼ等が挙げられる。
<メディエータ>
酵素には電極に直接電子を伝達できる直接電子移動型(DET型)酵素と直接電子を伝達できない酵素が存在する。DET型でない酵素の場合には、燃料の酸化によって生じた電子を酵素から電極に伝達する役割を担うメディエータを併用する必要がある。メディエータとしては、電極に電子を伝達できる酸化還元物質であれば特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。メディエータの使用方法としては、電極に担持させる方法や電解液に溶解させて使用する方法等がある。メディエータとしては例えば、テトラチアフルバレン、フェロセン、キノン類、オスミウム錯体などが挙げられる。
<酵素電池用負極>
酵素電池用負極では、燃料の酸化反応により発生した電子をカソードに供給する。酵素電池用負極は、導電性支持体(カーボンペーパーや導電性カーボン層など)やセパレータ等の基材に前記組成物を直接塗布し乾燥した塗膜や、転写基材などに前記組成物を塗布し乾燥することにより形成された塗膜を前記導電性支持体やセパレータ等に転写して作製した塗膜に酵素やメディエータを担持させたり、導電性支持体に酵素やメディエータを直接担持させたり、酵素を含む酵素電池負極用電極ペースト組成物を基材に塗布し乾燥したりして作製される。
上記組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、酵素電池用正極の作製の際に使用するような一般的な方法を適用できる。
酵素やメディエータを担持する方法は、上記組成物に含ませて行っても良いし、塗布後乾燥した塗膜や、導電性支持体に後から行っても良い。後から行う場合では、酵素やメディエータを溶解させた液を上記塗膜や、導電性支持体に浸漬等させた後、乾燥させて担持する方法等が使用できる。
<センサー、自己発電型センサー、有機物センサー、水分センサー>
酵素電池は、アノード側で酵素反応を利用し、糖やアルコール、有機酸等の多様な有機物の燃料から電子及びイオン発生させ、カソード側の酸素還元反応を利用することによる発電デバイスである。従って、発電の有無や発電量を検知することにより、燃料となる有機物等を対象としたセンサー(有機物センサー)として利用することも可能となる。
更に、酵素反応により発電した電力を用いて、同センサーを駆動させることにより、外部から電力供給不要な電源フリーのセンサー(自己発電型センサー)として利用することが出来る。この自己発電型センサーは酵素電池の一種に含まれ、酵素電池の電源用途と共に特に生体向けのウェアラブル、インプラントセンサーとしての活用が期待されている。これら生体向けデバイスとして使用する場合は、血液中の血糖、尿中の尿糖、汗中の糖や乳酸、涙や唾液中の糖等を燃料及び/又はセンシング対象物として利用される。また、生体試料中に燃料として利用できる有機物を含まなくても、予め燃料となる有機物を電池に内蔵することで、水分などの液体成分を利用して発電することもでき、上記液体成分をセンシング対象物としたセンサー(例えば水分センサー)として利用することもできる。
酵素電池の構成としては、燃料を酸化するアノードと、酸素還元が起こるカソードと、アノードとカソードを分離するセパレータを含む。但し、アノードとカソードを電気的に分離することができればセパレータは必ずしもなくても構わない。カソードとしては、本発明における酵素電池正極用触媒並びに酵素電池正極用電極ペースト組成物を好適に使用することができる。
また、アノードからカソード側にイオンを伝達するためのイオン伝導体を含んでいても良い。生体向けデバイス等で利用の際、小型・軽量化や保存安定性等を考慮すると、燃料及び/又はセンシング対象物である尿や汗、血液中等に含まれるイオン伝導体を使用する形態の酵素電池の方が好ましい場合がある。
アノードとカソードが完全に分離していない、非セパレータ系や紙等をセパレータに使用する形態の酵素電池においては、燃料等に含まれる不純物成分がカソード反応の酸素還元触媒を被毒する場合があり、活性低下、出力不安定化が生じやすいため注意が必要となる。特に白金等の貴金属触媒は被毒されやすいため同系においての使用は好ましくない。一方、本発明に用いられる酵素電池正極用炭素触媒はこれら貴金属触媒よりも被毒に強いため、不純物が存在する系においても好適に使用できる。
加えて、不織布やフェルト、紙など易廃棄なセパレータに直接アノード及びカソードを塗布し作製されるデバイスに対して、本発明に用いられる酵素電池正極用炭素触媒をカソードに使用すると、高価な貴金属や酸素還元酵素を使用せず低コストで、使い捨て可能(易廃棄、リサイクル不要など)なデバイスを実現することが可能となる。
本発明における酵素電池は前述の様に、発電した電力を用いた電源、電源とセンサーを兼ねる自己発電型センサー、有機物センサーや水分センサー等として機能し、これらは様々な用途での利用が見込まれる。使い方としては、電源として別方式の電池(コイン電池など)、センサーとして本発明の酵素電池を利用したり、電源及びセンサーに本発明の酵素電池を1種類以上利用したり、電源として本発明の酵素電池、センサーとして別方式のセンサーを利用したりすることができる。
本発明における酵素電池の電源用途としては、例えば、家庭用電源、モバイル機器用の電源、使い捨て電源、生体用ウェアラブル電源・インプラント電源、バイオマス燃料用電源、IoTセンサー用電源、周囲の有機物を燃料として発電できる環境発電(エネルギーハーベスト)電源などが挙げられる。
センサーの用途としては、例えば、各種有機物を対象とした有機物センサー、血液や汗、尿、便、涙、唾液、呼気などの生体試料中の有機物や体液を対象とした生体センサー、水分を対象にした水分センサー、果物や食品中の糖等を対象にした食品用センサー、IoTセンサー、大気や河川、土壌など環境中の有機物を対象にした環境センサー、動物や昆虫、植物を対象にした動植物センサー等が挙げられ、上記は電源とセンサーを兼ねる自己発電型センサーであっても良いし、電源としては利用しないセンサーとしての利用だけでも良い。生体センサーとしては、例えば、血液中の糖をセンシングする血糖値センサーや、尿中の糖をセンシングする尿糖値センサー、汗中の乳酸値をセンシングする疲労度センサーや熱中症センサー、汗や尿中の水分をセンシングする発汗センサーや排尿センサー等が挙げられる。また、生体向けのウェアラブルセンサーとしての用途として例えば、おむつ内にセンサーを仕込んだ排尿センサーや尿糖値センサー、肌貼付型の発汗、熱中症センサーなどが挙げられる。
IoTセンサーとしては、無線機とセンサーを組み合わせ、センシング情報をワイヤレスで外部に送信する使い方ができる。その場合、本発明の酵素電池を好適に使用することができる。
例えば、無線機の電源及びセンサーとして酵素電池を利用したり、無線機の電源に酵素電池、センサーとして別の酵素電池を利用したり、無線機の電源に酵素電池、センサーとして別方式のセンサーを利用したり、無線機及びセンサーの電源に1種以上の酵素電池、センサーとして別方式のセンサーを利用したり、無線機の電源に別方式の電池(コイン電池など)、センサーとして酵素電池を利用したりすることができる。
上記のIoTセンサーをおむつ用の生体センサーとして利用する場合は、おむつ内に酵素電池を仕込み、例えば下記の様な使い方が出来る。尿糖値センサーの場合、尿中の糖を燃料及びセンシング対象として利用し、得られた電力で無線機を作動したり、尿中の糖をセンシング対象として利用し、予め燃料を内蔵し尿中の水分を利用し発電し得られた電力で無線機を作動したり、尿中の糖をセンシング対象として利用し、別方式の電池(コイン電池など)の電力で無線機を作動したりできる。排尿センサーの場合、予め燃料を内蔵し尿中の水分をセンシング対象とし、また同時に水分を利用し発電し得られた電力で無線機を作動したり、予め燃料を内蔵し尿中の水分を利用し発電し得られた電力で無線機及び別方式の排尿センサーを作動したり、予め燃料を内蔵し尿中の水分をセンシング対象とし、別方式の電池(コイン電池など)の電力で無線機を作動したりできる。
肌貼付型のセンサー及び電源として利用する場合は、酵素電池を肌に直接貼り付けたり、衣類などに取り付けたりして使うことができる。汗中の乳酸センサーの場合、汗中の乳酸を燃料及びセンシング対象として利用し、得られた電力で無線機を作動したり、汗中の乳酸をセンシング対象として利用し、汗中の乳酸とは別に予め燃料を内蔵し汗中の水分を利用し発電し得られた電力で無線機を作動したり、汗中の乳酸をセンシング対象として利用し、別方式の電池(コイン電池など)の電力で無線機を作動したり、汗中の乳酸を燃料として利用し、得られた電力で別方式のセンサーや無線機等を作動したりできる。
肌に直接酵素電池を貼り付ける場合には、肌貼付用の粘着剤および粘着剤を用いてなるテープもしくはシートを利用することができる。
また、貼り付け部位は特に限定されないが、発汗の多い部位の方が発電に必要な燃料や水分を多く供給出来るため好ましい。
肌に貼付して酵素電池を使用する場合は、例えば汗の成分を分析するセンサー及び電源として使用される。汗中の乳酸や電解質濃度、pHなどをセンシングして対象の生体情報を取得することで、熱中症や疲労度、健康状態等の診断やモニタリングに活用することが可能となる。
また、ワイヤレス送信以外にも、アラーム機器とセンサーとを組み合わせ、センシング情報(On−Offなど)を光や音、振動などによって外部に発信する使い方もできる。
本発明の酵素電池を用いれば前述の様に、低コストで、使い捨て可能(易廃棄、リサイクル不要など)なデバイスを実現することが可能となる。易廃棄なデバイスの構成例として例えば、導電性支持体として紙に塗布した炭素材料からなる導電層、酵素電池用負極として前記導電性支持体に直接メディエータと酵素とを担持した負極、酵素電池用正極として前記導電性支持体に本発明における酵素電池正極用電極ペースト組成物を塗布した正極、セパレータに紙を使用し、貼りあわせ作製される酵素電池が挙げられる。更に酵素電池と酵素電池の電力によって作動させるデバイスとを接続するための配線に金属を使わない炭素配線(例えば、導電性支持体に使われる炭素材料からなる導電層やカーボンペーパーや、カーボンフェルト、カーボンクロスなど)を組み合わせることで、分別やリサイクル不要で安価なデバイスの実現が可能となる。
<イオン伝導体>
本発明におけるイオン伝導体はアノードとカソードの間でイオンの伝導を行うものである。イオン伝導体の形態はイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。イオン伝導体としては例えば、リン酸緩衝液などの液体に電解質が溶けている電解液や、固体のポリマー電解質などを使用しても良い。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
酵素電池正極用炭素触媒は、以下の測定機器を使用し、表1に示す元素モル比(N1型窒素原子量の割合とN2型窒素原子量の割合)、表面末端窒素割合、BET比表面積、X線回折角のピーク位置とピーク半値幅を求めた。また、炭素六角網面を構成する炭素原子と、炭素六角網面の炭素原子から置換された窒素原子の存在を確認した。
・表面末端窒素:X線分光分析(XPS)(島津/KRATOS社製 AXIS−HS)
・BET比表面積の測定:窒素吸着量測定(日本ベル社製 BELSORP−mini)
・X線回折:全自動水平型多目的X線回折装置(リガク社製 Smartlab)
・RC、RN、RM:CHN元素分析(パーキンエルマー社製 2400型CHN元素分析装置)、ICP発光分光分析(SPECTRO社製 SPECTROARCOS FHS12)
<酵素電池正極用炭素触媒の製造>
[実施例1]
グラフェンナノプレートレットxGnP−C−750(XGscience社製)と鉄フタロシアニン P−26(山陽色素社製)を、質量比1/0.5(グラフェンナノプレートレット/鉄フタロシアニン)となるようにそれぞれ秤量し、乾式混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、酵素電池正極用炭素触媒(1)を得た。
[実施例2]
ケッチェンブラックEC−600JD(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)とコバルトフタロシアニン(東京化成社製)を、質量比1/0.5(ケッチェンブラック/コバルトフタロシアニン)となるようにそれぞれ秤量し、乾式混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、700℃で2時間熱処理を行い、酵素電池正極用炭素触媒(2)を得た。
[実施例3]
カーボンナノチューブVGCF−H(昭和電工社製)と鉄フタロシアニン(山陽色素社製)を、質量比1/0.5(カーボンナノチューブ/鉄フタロシアニン)となるようにそれぞれ秤量し、乾式混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、酵素電池正極用炭素触媒(3)を得た。
[実施例4]
クノーベルMJ(4)150(東洋炭素社製)と鉄フタロシアニン(山陽色素社製)を、質量比1/0.5(クノーベル/鉄フタロシアニン)となるようにそれぞれ秤量し、乾式混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、酵素電池正極用炭素触媒(4)を得た。
[実施例5]
フェノール樹脂(群栄化学社製 PSM-4326)と鉄フタロシアニン P−26(山陽色素社製)を質量比3.3:1で秤量し、アセトン中で湿式混合した。上記混合物を減圧留去した後、乳鉢で粉砕し、前駆体とした。上記前駆体粉末をアルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、600℃で2時間熱処理を行い、炭素焼結体(1)を得た。上記炭素焼結体(1)を濃塩酸中でリスラリーし、静置させ、炭素焼結体(1)沈殿後、上澄み液を除去した。上記操作を上澄みの着色がなくなるまで、繰り返し行い、ろ過、水洗、乾燥した後、乳鉢で粉砕し、アルミナ製るつぼに充填、電気炉にてアンモニア雰囲気下、800℃で1時間熱処理し、炭素焼結体(2)を得た。上記炭素焼結体(2)を濃塩酸中でリスラリーし、静置させ、炭素焼結体沈殿後、上澄み液を除去した。上記操作を上澄みの着色がなくなるまで、繰り返し行った後、ろ過、水洗、乾燥し、乳鉢で粉砕し、酵素電池正極用炭素触媒(5)を得た。
[実施例6]
ポリビニルピリジン(PVP アルドリッチ社製)をジメチルホルムアミドに溶解させ、PVPに対して質量比2:1の塩化鉄六水和物を加え、室温で24時間攪拌し、ポリビニルピリジン鉄錯体を得た。上記ポリビニルピリジン鉄錯体を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、得られた炭化物を乳鉢にて粉砕し酵素電池正極用炭素触媒(6)を得た。
[実施例7]
ポリビニルピリジン(PVP アルドリッチ社製)をジメチルホルムアミドに溶解させ、PVPに対して質量比2:1の塩化鉄六水和物を加え、室温で24時間攪拌し、ポリビニルピリジン鉄錯体を得た。上記ポリビニルピリジンとケッチェンブラック(ライオン社製EC−600JD)を、質量比1:1で秤量し、乳鉢にて乾式混合を行い前駆体とした。上記前駆体粉末を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、得られた炭化物を乳鉢にて粉砕し酵素電池正極用炭素触媒(7)を得た。
[実施例8]
グラフェンナノプレートレットxGnP−C−750(XGscience社製)を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にてアンモニア窒素雰囲気下、1000℃で2時間熱処理を行い、酵素電池正極用炭素触媒(8)を得た。
[実施例9]
ガラス瓶にイオン交換水90部と、塩化鉄(II)四水和物0.2部、銅フタロシアニン誘導体SOLSPERSE12000(日本ルーブリゾール社製)3.2部を秤量し均一な水溶液を作製後、グラフェンナノプレートレットxGnP−C−750(XGscience社製)6.6部を加え、更にメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェーカー(ミツワテック社製:スキャンデックス SK450)で分散し、前駆体混合ペーストを得た。この前駆体混合ペーストをロータリーエバポレータにて減圧留去し、得られた固形分を乳鉢で細かく粉砕し、均一な前駆体粉末を得た。得られた前駆体粉末を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、酵素電池正極用炭素触媒(9)を得た。
<酵素電池正極用電極ペースト組成物の調製>
酵素電池正極用炭素触媒(1)4.8部、水性液状媒体として水49.2部、更に増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液40部(固形分2%)をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散した。その後、バインダーとしてエマルション型アクリル樹脂分散溶液(トーヨーケム社製:W-168)6部(固形分50%)を加えミキサーで混合し、酵素電池正極用電極ペースト組成物(1)を得た。
酵素電池正極用炭素触媒(2)〜(9)を用い、上記酵素電池正極用電極ペースト組成物(1)と同様の方法で、酵素電池正極用電極ペースト組成物(2)〜(9)を得た。
[比較例1]
担持白金触媒TEC10E30E(田中貴金属社製)4.8部、水性液状媒体として水49.2部、更に増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液40部(固形分2%)をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散した。その後、バインダーとしてエマルション型アクリル樹脂分散溶液(トーヨーケム社製:W-168)6部(固形分50%)を加えミキサーで混合し、酵素電池正極用電極ペースト組成物(10)を得た。
[比較例2]
活性炭(CABOT社製)4.8部、水性液状媒体として水49.2部、更に増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液40部(固形分2%)をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散した。その後、バインダーとしてエマルション型アクリル樹脂分散溶液(トーヨーケム社製:W-168)6部(固形分50%)を加えミキサーで混合し、酵素電池正極用電極ペースト組成物(11)を得た。
<酵素電池用正極の作製>
実施例1〜9の酵素電池正極用電極ペースト組成物(1)〜(9)と、比較例1〜2の酵素電池正極用電極ペースト組成物(10)〜(11)を、ドクターブレードにより、乾燥後の酵素電池正極用炭素触媒の目付け量が2mg/cm2となるように、導電性支持体として炭素繊維からなる東レ社製カーボンペーパー基材上に塗布し、大気雰囲気中95℃、60分間乾燥し、酵素電池用正極(1)〜(11)を作製した。
[比較例3]
導電性炭素材料(1)(ファーネスブラック、VULCAN(登録商標)XC72、CABOT社製)ペーストをドクターブレードにより、東レ社製カーボンペーパー基材上に乾燥後の導電性炭素材料の目付け量が2mg/cm2となるように塗布した後、酸素還元酵素のビリルビンオキシダーゼ水溶液を滴下し、自然乾燥させ酵素電池用正極(12)を作製した。
<酵素電池負極用電極の作製>
導電性炭素材料(1)(ファーネスブラック、VULCAN(登録商標)XC72、CABOT社製)ペーストをドクターブレードにより、東レ社製カーボンペーパー基材上に乾燥後の導電性炭素材料の目付け量が2mg/cm2となるように塗布した後、テトラチアフルバレンのメタノール溶液と、グルコースオキシダーゼ水溶液をそれぞれ滴下し、自然乾燥させ酵素電池用負極(1)を作製した。
また、グルコースオキシダーゼ水溶液を乳酸オキシダーゼ水溶液に変更した以外は酵素電池用負極(1)と同様の方法で、酵素電池用負極(2)を作製した。
<出力安定性評価>
以下のようにして、酵素電池用正極の出力安定性評価を実施した。
上記で作製した酵素電池用正極(1)〜(12)を作用極、酵素電池用負極(1)を対極として、電解液(イオン伝導体)である0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中に入れ、30分間の酸素バブリングを行った後、燃料としてD-グルコースを0.01Mとなるように添加し、更に不純物としてアルブミン(タンパク質)を少量加え、ポテンショ・ガルバノスタット(VersaSTAT3、Princeton Applied Research社製)を用いて、pH7、室温下で、Linear Sweep Voltammetry(LSV)を行い、評価した。
LSV測定から得られた還元電流曲線から得られた最大出力(mW/cm2)の三回測定値の標準偏差を出力安定性の指標とし、評価した。
得られた結果を表1に示す。
<耐久性評価>
以下のようにして、酵素電池用正極の耐久性評価を実施した。
上記で作製した酵素電池用正極(1)〜(12)を作用極、白金コイル状電極を対極、銀-銀塩化銀電極(Ag/AgCl)を参照極として、電解液(イオン伝導体)である0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中に入れ、30分間の酸素バブリングを行った後、燃料としてD-グルコースを0.01Mとなるように添加し、更に不純物としてアルブミン(タンパク質)を少量加え、ポテンショ・ガルバノスタット(VersaSTAT3、Princeton Applied Research社製)を用いて、pH7、室温下で、Cyclic Voltammetry(CV)を50サイクル行った。
CV測定の前後でLSV測定を行い、電流密度が−50μA/cm2到達時点の電位を酸素還元開始電位とし、CV前後の酸素還元開始電位から得られる下記式で示される保持率を酵素電池用正極の耐久性の指標とし、評価した。酸素還元開始電位は、その電位が高いほど酸素還元活性が高いことを示すものである。
保持率 = (CV測定後の酸素還元開始電位))/(CV測定前の酸素還元開始電位)×100(%)
得られた結果を表1に示す。
出力安定性、耐久性の評価基準を以下に示す。
(出力安定性評価)
◎:最大出力 標準偏差(三回測定)4μW/cm2未満(良好)
〇:最大出力 標準偏差(三回測定) 8μW/cm2未満4μW/cm2以上
△:最大出力 標準偏差(三回測定)10μW/cm2未満8μW/cm2以上(実用上問題なし)
×:最大出力 標準偏差(三回測定)10μW/cm2以上(不良)
‐:発電が確認されず
(耐久性評価)
◎:酸素還元開始電位 保持率 90%以上(良好)
〇:酸素還元開始電位 保持率 50%以上90%未満(実用上問題なし)
△:酸素還元開始電位 保持率 10%以上50%未満(不良)
×:酸素還元開始電位 保持率 10%未満(極めて不良)
比較例に比べ実施例では、電池性能の高い出力安定性と耐久性を示した。これは比較例では燃料や不純物として含まれる有機物が触媒表面を被毒することにより、正極反応を阻害したことや、電位に対する触媒の安定性の低さが、出力安定性や耐久性の低下につながったためと考えられる。このように不純物などにより測定値がバラつきやすく、電位耐性が必要な酵素電池の作動環境においても、実施例では電池性能の高い出力安定性と耐久性を示すことが明らかとなった。
<グルコースに対するセンシング能評価>
酵素電池用正極(1)を作用極、酵素電池用負極(1)を対極として、電解液(イオン伝導体)である0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中に入れ、30分間の酸素バブリングを行った後、ポテンショ・ガルバノスタット(VersaSTAT3、Princeton Applied Research社製)を用いて、pH7、室温下におけるLSV測定において、燃料(センシング対象物)となるグルコース濃度0.001〜0.01Mに対する酸化電流の応答性を調べた。その結果を図1に示す。
図1から明らかなように、グルコース濃度の変化に応じて比例的にグルコース酸化活性が変化することが見出されたことから、本発明により作製された酵素電池用正極を用いた酵素電池は、グルコースのセンサー並びに自己発電型センサーとして使用できることが分かった。
<酵素電池の作製>
酵素電池用正極(1)を作用極、酵素電池用負極(1)を対極、セパレータに燃料としてグルコース(0.34mg/cm2)、イオン伝導体として塩化ナトリウムが担持されたろ紙(No.5C ADVANTEC社製)を使用し、正極、セパレータ、負極の順に貼りあわせ酵素電池(1)を作製した。セパレータのグルコースの担持量を、4及び7.8mg/cm2とした以外は酵素電池(1)と同様の方法で、酵素電池(2)及び(3)を作製した。更にセパレータにグルコースが担持されていない以外は酵素電池(1)と同様の方法で酵素電池(4)を作製した。
<水分に対するセンシング能評価>
以下のようにして、水分に対するセンシング能評価を実施した。
上記で作製した酵素電池(1)〜(4)のセパレータ部分にスポイトで超純水を滴下し、ポテンショ・ガルバノスタット(VersaSTAT3、Princeton Applied Research社製)を用いて、室温下におけるLSV測定を行った。LSV測定から得られた還元電流曲線から最大出力を算出した。酵素電池(4)について、超純水の代わりに、燃料としてD-グルコースを過剰量含む(0.1M)グルコース溶液をスポイトで滴下し同様にLSV測定を行い、得られた最大出力に対する上記測定の最大出力の割合を指標として、水分に対するセンシング能を評価した。得られた結果を図2に示す。
図2より、予め酵素電池に燃料となるグルコースを内蔵することで、水分によって発電の有無が変化することが見出されたため、本発明により作製された酵素電池用正極を用いた酵素電池は、水分センサーとして使用できることが明らかとなった。また、グルコースの担持量によっても出力に変化が見られた。グルコース担持量が4mg/cm2以上であれば、指標としている0.1Mのグルコース溶液を使用した条件の最大出力と同等の値を示した。これは、本条件においてはグルコース担持量が4mg/cm2以上あれば溶け出したグルコースによって超純水中のグルコース濃度が0.1M以上(過剰量)となり、同等の最大出力を示したものと考えられる。
本検討では、水分に対するセンシング能評価の1例を示したが、使用される系によって、酵素反応に対し過剰となるグルコース濃度の上限値は異なるため、燃料となる有機物の担持量は実際に使用される系によって適宜選択される。
<紙基材を用いた酵素電池の作製>
導電性炭素材料(2)(球状黒鉛 CGB−50、日本黒鉛社製)25.2部と導電性炭素材料(3)(ケッチェンブラック EC−300J、ライオン社製)6.3部、水性液状媒体として水40.8部、更に増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース水溶液22.5部(固形分2%)をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散した。その後、バインダーとしてエマルション型アクリル樹脂分散溶液(トーヨーケム社製:W−168)5.2部(固形分50%)を加え、ミキサーで混合し導電性カーボン層用導電ペースト組成物を得た。
上記で得られた導電ペースト組成物をドクターブレードにより、ろ紙基材(No.5C ADVANTEC社製)上に乾燥後の導電性炭素材料の目付け量が1mg/cm2となるように塗布した後、大気雰囲気中95℃、60分間乾燥し、ろ紙を基材とした導電性カーボン層を得た。
上記導電性カーボン層にメディエータとしてテトラチアフルバレンのメタノール溶液と、グルコースオキシダーゼ水溶液をそれぞれ滴下し、自然乾燥させろ紙を基材とした酵素電池用負極を作製した。上記導電性カーボン層に、酵素電池正極用電極ペースト組成物(1)をドクターブレードにより、ろ紙基材上に乾燥後の酵素電池正極用炭素触媒の目付け量が2mg/cm2となるように塗布した後、大気雰囲気中95℃、60分間乾燥し、ろ紙を基材とした酵素電池用正極を作製した。
セパレータに燃料としてグルコース、イオン伝導体として塩化ナトリウムが担持されたろ紙を使用し、上記ろ紙を基材とした酵素電池用正極、セパレータ、上記ろ紙を基材とした酵素電池用負極の順に貼りあわせ酵素電池(5)を作製した。
<無線通信回路の構築>
作製した酵素電池(5)、昇圧コンバータ(LTC3108 ストロベリー・リナックス社製)、無線機(送信モジュール IM315TX、受信モジュール IM315RX インタープラン社製)を組み合わせ、図3に示すブロック図のように無線通信回路を構築した。
<酵素電池を用いたワイヤレスセンサーシステム>
上記回路を構築後、酵素電池(5)のセパレータ部分にスポイトで超純水を滴下すると、受信モジュールにおいて信号の受信が確認された。これは水の滴下によって酵素電池で発電が起こり、その時の電力により送信モジュールが起動し信号が送られたことを示している。すなわち、本発明により作製された酵素電池用正極を用いた酵素電池は、電源を必要としないワイヤレス水分センサーシステムとして使用できることがわかった。
更に、酵素電池(5)は高価な貴金属や酸素還元酵素を使用せず且つ、基材に紙を使用しているため低コストで、且つ使い捨て可能(易廃棄、リサイクル不要など)なデバイスとなっている。そのため、酵素電池(5)を、例えば排尿センサーとして紙おむつに内蔵することで、使い捨て可能なワイヤレス排尿センサーとしての利用が出来ることが示された。
<乳酸に対するセンシング能評価>
酵素電池用正極(1)を作用極、酵素電池用負極(2)を対極及び参照極として、電解液(イオン伝導体)である0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中に入れ、ポテンショ・ガルバノスタット(VersaSTAT3、Princeton Applied Research社製)を用いて、pH7、室温下におけるLSV測定において、燃料(センシング対象物)となる乳酸濃度0.01〜0.1Mに対する0.1Vにおける出力密度を調べた。その結果を図4に示す。
図4から明らかなように、乳酸濃度の変化に応じて比例的に乳酸酸化活性が変化することが見出されたことから、本発明により作製された酵素電池用正極を用いた酵素電池は、乳酸のセンサー並びに自己発電型センサーとして使用できることが分かった。
更に、上記の電源を必要としないワイヤレスセンサーシステム等と組み合わせることにより、肌貼付型のセンサー及び/又は電源として、ワイヤレスの生体情報センサーとしての利用ができると考えられる。例えば、汗中の乳酸濃度をセンシングするセンサーとして使用したり、汗中の乳酸を燃料として発電し、センサーや送信モジュールを駆動したりする使い方ができることが示唆された。

Claims (19)

  1. 炭素六角網面を基本骨格とした炭素材料からなる酵素電池正極用炭素触媒であって、構成元素としてヘテロ元素を含み、ヘテロ元素が炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部を置換するようにドープされ、且つ酸素還元活性を有する酵素電池正極用炭素触媒。
  2. ヘテロ元素が、窒素元素である請求項1記載の酵素電池正極用炭素触媒。
  3. X線光電子分光法(XPS)によって測定した、触媒表面の全元素に対する窒素原子のモル比をNとし、触媒表面の全窒素量に対する、XPSのN1sスペクトルのピーク分離により求めたN1型窒素原子量の割合とN2型窒素原子量の割合の合計(%)を(N1+N2)としたときの、表面末端窒素割合{N×(N1+N2)}が0.5〜25.0%であることを特徴とする請求項2記載の酵素電池正極用炭素触媒。
  4. さらに、構成元素として卑金属元素を含む、請求項1〜3いずれか記載の酵素電池正極用炭素触媒。
  5. 卑金属元素が、Co及び/またはFeであることを特徴とする、請求項4記載の酵素電池正極用炭素触媒。
  6. 炭素触媒を構成する全元素に対する、炭素原子のモル比および窒素原子のモル比をそれぞれ、RCおよびRNとした際、RCに対するRNの割合が1〜40%である請求項2または3記載の酵素電池正極用炭素触媒。
  7. 炭素触媒を構成する全元素に対する、炭素原子のモル比、窒素原子のモル比および卑金属原子のモル比をそれぞれ、RC、RNおよびRMとした際、RCに対するRNの割合が1〜40%、RCに対するRMの割合が0.01〜20%である請求項4または5記載の酵素電池正極用炭素触媒。
  8. 窒素を吸着種としたBET比表面積(BETN2)が、50〜1200m2/gであることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の酵素電池正極用炭素触媒。
  9. CuKα線をX線源として得られるX線回折図において、回折角(2θ)が24.0〜27.0°の位置にピークを有し、該ピークの半値幅が8°以下であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の酵素電池正極用炭素触媒。
  10. 請求1〜9いずれかに記載の酵素電池正極用炭素触媒と、少なくとも溶剤と、バインダーとを含んでなる酵素電池正極用電極ペースト組成物。
  11. 更に、分散剤を含んでなる請求項10に記載の酵素電池正極用電極ペースト組成物。
  12. 請求項10または11記載の酵素電池正極用電極ペースト組成物より形成された塗膜を有する酵素電池用正極。
  13. 請求項12記載の酵素電池用正極を使用して形成される酵素電池。
  14. 請求項12記載の酵素電池用正極を使用して形成される自己発電型センサー。
  15. 請求項12記載の酵素電池用正極を使用して形成される有機物センサー。
  16. 請求項13記載の酵素電池を使用して形成される水分センサー。
  17. 燃料がグルコース、乳酸、およびフルクトースからなる群より選ばれる少 なくとも一つである請求項13記載の酵素電池。
  18. 燃料および/またはセンシング対象物が、グルコース、乳酸、およびフル クトースからなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項14記載の自己発電型セ ンサー。
  19. センシング対象物がグルコース、乳酸、およびフルクトースからなる群よ り選ばれる少なくとも一つである請求項15記載の有機物センサー。
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