JP2019214004A - 水処理方法および水処理装置 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、生物処理の前処理または後処理に、フェントン反応、オゾン酸化等の促進酸化処理を行う方法が提案されている。促進酸化処理は、ヒドロキシラジカルを発生させ、その強力な酸化力を利用して有機物等を酸化する処理であり、難生物分解性有機物や生物毒性成分を分解することが可能である。
特許文献1〜2には、排水を連続処理する場合に反応槽を分割できること、分割した各槽に過酸化水素を分割して添加すると過酸化水素の自己分解を抑制できることが記載されている。しかし、特許文献1〜2には、過酸化水素を分割添加する場合の具体的な分割割合について記載されていない。
[1]被酸化性の汚染物質を含む排水に対して、直列に接続されたn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽にて順次、促進酸化処理を行って前記汚染物質を酸化する酸化工程を有し、
前記酸化工程にて、前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽に、下記式(1)を満たす条件で酸化剤を添加する、水処理方法。
ただし、Wnは、前記n個の反応槽のうち下流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wallは、前記酸化剤の総添加量を示し、xは、前記酸化剤を添加する反応槽の数を示す。
[2]前記酸化工程にて、前記式(1)を満たし、かつ下記式(2)を満たす条件で前記酸化剤を添加する[1]の水処理方法。
Wxi−1≧Wxi ・・・(2)
ただし、Wxiは、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wxi−1は、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端から(i−1)番目の反応槽への酸化剤の添加量を示す。
[3]被酸化性の汚染物質を含む排水に対して、直列に接続されたn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽にて順次、促進酸化処理を行って前記汚染物質を酸化する酸化工程を有し、
前記酸化工程にて、前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽に、下記式(3)を満たす条件で酸化剤を添加する、水処理方法。
W1>Wxi ・・・(3)
ただし、W1は、前記n個の反応槽のうち上流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wxiは、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽への酸化剤の添加量を示す。
[4]被酸化性の汚染物質を含む排水に対して、直列に接続されたn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽にて順次、促進酸化処理を行って前記汚染物質を酸化する酸化工程を有し、
前記酸化工程にて、前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽に、下記式(4)を満たす条件で酸化剤を添加する、水処理方法。
Wx1>Wall/n ・・・(4)
ただし、Wx1は、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wallは、前記酸化剤の総添加量を示す。
[5]前記促進酸化処理が、フェントン反応による促進酸化処理である[1]〜[4]のいずれかの水処理方法。
[6]前記n個の反応槽のうち少なくとも1個の反応槽に鉄還元触媒を添加し、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを前記鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元する[5]の水処理方法。
[7]前記鉄還元触媒が活性炭である[6]の水処理方法。
[8]直列に接続された、排水に含まれる被酸化性の汚染物質の促進酸化処理を行うn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽と、
前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽それぞれに酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記酸化剤が下記式(1)を満たす条件で添加されるように前記酸化剤添加手段を制御する制御部と、
を備える、水処理装置。
Wall/x>Wn ・・・(1)
ただし、Wnは、前記n個の反応槽のうち下流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wallは、前記酸化剤の総添加量を示し、xは、前記酸化剤を添加する反応槽の数を示す。
[9]前記制御部は、前記酸化剤が前記式(1)を満たし、かつ下記式(2)を満たす条件で添加されるように前記酸化剤添加手段を制御する[8]の水処理装置。
Wxi−1≧Wxi ・・・(2)
ただし、Wxiは、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wxi−1は、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端から(i−1)番目の反応槽への酸化剤の添加量を示す。
[10]直列に接続された、排水に含まれる被酸化性の汚染物質の促進酸化処理を行うn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽と、
前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽それぞれに酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記酸化剤が下記式(3)を満たす条件で添加されるように前記酸化剤添加手段を制御する制御部と、
を備える、水処理装置。
W1>Wxi ・・・(3)
ただし、W1は、前記n個の反応槽のうち上流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wxiは、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽への酸化剤の添加量を示す。
[11]直列に接続された、排水に含まれる被酸化性の汚染物質の促進酸化処理を行うn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽と、
前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽それぞれに酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記酸化剤が下記式(4)を満たす条件で添加されるように前記酸化剤添加手段を制御する制御部と、
を備える、水処理装置。
Wx1>Wall/n ・・・(4)
ただし、Wx1は、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wallは、前記酸化剤の総添加量を示す。
[12]前記促進酸化処理が、フェントン反応による促進酸化処理である[8]〜[11]のいずれかの水処理装置。
[13]前記n個の反応槽のうち少なくとも1個の反応槽に鉄還元触媒を添加する触媒添加手段をさらに備える[12]の水処理装置。
[14]前記鉄還元触媒が活性炭である[13]の水処理装置。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
本実施形態の水処理方法に用いる水処理装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態の水処理装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、水処理装置1は、3個の反応槽11a、11b、11cと、不溶化槽21と、調整槽41と、貯留槽61と、を備える。3個の反応槽11a、11b、11cは直列に接続されている。
以下、直列に接続された反応槽のうち上流側末端からi番目の反応槽を第iの反応槽ともいう。3個の反応槽11a、11b、11cをまとめて反応槽11ともいう。
水処理装置1は、制御部19を備える。
水処理装置1は、不溶化槽21と第1の反応槽11aとの間に、懸濁液返送手段32を備える。
水処理装置1は、調整槽41と貯留槽61との間に、分離手段42を備える。
水処理装置1による水処理では、被酸化性の汚染物質を含む排水に対し、フェントン反応による促進酸化処理を行う。被酸化性の汚染物質としては、有機物、または、亜リン酸や次亜リン酸等の無機物が挙げられる。
被酸化性の汚染物質は、本発明の有用性の点から、難生物分解性成分を含むことが好ましい。「難生物分解性成分」とは、生物処理による分解が困難である成分を意味し、具体的には、有機物であれば化学的酸素要求量(以下「COD」と略する。)または有機体炭素(以下「TOC」と略する。)で測定可能、且つ、生物化学的酸素要求量(以下「BOD」と略する。)測定による検出ができない成分であることを意味する。
難生物分解性成分としては、難生物分解性有機物、生物毒性成分等が挙げられる。
生物毒性成分は、例えば、化学工場排水、メッキ工場排水、薬品工場排水、染色工場排水等の産業排水に含まれる。生物毒性成分としては、例えば亜リン酸、次亜リン酸等が挙げられる。亜リン酸や次亜リン酸は、メッキ工場の工場排水等に含まれる。
排水は、難生物分解性成分を含む排水を生物処理した生物処理水であってもよい。生物処理水は、易生物分解性成分の含有量が低減されている。
反応槽11は、排水に含まれる被酸化性の汚染物質の促進酸化処理を行う槽である。
本実施形態では、3つの反応槽11のうち少なくとも2個の反応槽11は、促進酸化処理のための酸化剤である過酸化水素を添加するものである。3つの反応槽11のうち少なくとも1個の反応槽11は、第一鉄イオン(Fe2+)を発生させる鉄試薬を添加するものである。また、3つの反応槽11のうち少なくとも1個の反応槽11では、鉄還元触媒を添加するものである。鉄試薬、酸化剤および鉄還元触媒が添加された反応槽では、鉄試薬と酸化剤によるフェントン反応による促進酸化処理が行われ、排水中に含まれる被酸化性の汚染物質が酸化されるとともに、上記フェントン反応により生成した第二鉄イオンが鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元される。
このとき、第一鉄イオンは、過酸化水素の作用により酸化されて第二鉄イオンとなる。また、反応槽11では、第二鉄イオンが、過酸化水素の作用により還元されて第二鉄イオンとなる反応(還元反応)も生じる。この還元反応は一般に、フェントン反応と比較して非常に遅い。しかし、鉄還元触媒を併存させることにより、還元反応を促進でき、フェントン反応と還元反応とを同時に、十分な反応速度で行うことができる。
鉄試薬添加手段15は、反応槽11内に鉄試薬を添加するものである。
過酸化水素添加手段16は、反応槽11内に過酸化水素(酸化剤)を添加するものである。
第1のpH調整手段14は、槽内のpHに応じて、反応槽11内に酸またはアルカリを添加し、反応槽11内のpHを調整するものである。
触媒添加手段17は、反応槽11内に鉄還元触媒を添加するものである。
制御部19は、過酸化水素(酸化剤)が、後述する条件1、条件2、または条件3で添加されるように過酸化水素添加手段16を制御するものである。
不溶化槽21は、第一鉄イオン、およびフェントン反応により生成した第二鉄イオンを反応液から除去するために不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成させるものである。
第2のpH調整手段24は、槽内のpHに応じて、不溶化槽21内にアルカリを添加し、不溶化槽21内のpHを調整するものである。
濃縮手段22は、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥と処理水とに固液分離して、汚泥が濃縮された懸濁液を得るものである。
懸濁液返送手段32は、不溶化槽21から第1の反応槽11aに、汚泥が濃縮された懸濁液の少なくとも一部を返送するものである。懸濁液返送手段32は、第6の流路33を備える。第6の流路33は、懸濁液の少なくとも一部を不溶化槽21から排出し、第1の反応槽11aに流入(供給)させるものである。
第6の流路33には、ポンプ33aが設置されている。これにより、不溶化槽21内の懸濁液の少なくとも一部を不溶化槽21から第1の反応槽11aに返送することができる。
不溶化槽21から懸濁液の少なくとも一部を返送する反応槽11は、第3の反応槽11c、つまり下流側末端の反応槽11以外の反応槽11とすることが好ましい。
懸濁液の少なくとも一部を返送する反応槽11が上流側であるほど、懸濁液中の第二鉄化合物が溶解して第二鉄イオンとなり、さらに第一鉄イオンに還元されてからフェントン反応に使用されるまでの時間をより長くすることができる。したがって、返送した懸濁液中の第二鉄化合物をフェントン反応に効果的に再利用することができる。
調整槽41は、不溶化槽21から第5の流路31を介して供給される処理水を貯留するものである。
分離手段42は、濃縮手段22で分離した処理水を、処理水に含まれる被酸化性の汚染物質と、透過水とに膜分離するものである。ここで透過水とは、膜を透過した液体のことをいう。
第2の膜モジュール43にナノ濾過膜を用いる場合、その材質としては、ポリエチレン系、芳香族ポリアミド系や架橋ポリアミド系を含むポリアミド系、脂肪族アミン縮合系ポリマー、複素環ポリマー系、ポリビニルアルコール系、酢酸セルロース系ポリマー等が挙げられる。
第2の膜モジュール43に逆浸透膜を用いる場合、その材質としては、ポリアミド、ポリスルホン、セルロースアセテート等が挙げられ、芳香族ポリアミドまたは架橋芳香族ポリアミドを含むポリアミドが好ましい。
貯留槽61は、分離手段42から第8の流路51を介して供給される透過水を貯留するものである。
貯留槽61に貯留された透過水は、直接か、または工業用水等で希釈され、河川等に放流される。
本実施形態の水処理方法は、酸化工程と、不溶化工程と、濃縮工程と、分離工程と、懸濁液返送工程と、還元工程と、を有する。
酸化工程では、3個の反応槽11のうち少なくとも2個の反応槽11に、下記の条件1、条件2または条件3で酸化剤を添加する。過酸化水素を添加する前に、排水のpHを1.0以上4.0以下に調整する。また、3個の反応槽11のうち少なくとも1個の反応槽11に鉄試薬を添加し、少なくとも1個の反応槽11に鉄還元触媒を添加する。
さらに、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、濃縮手段22により鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥と処理水とに固液分離して、汚泥が濃縮された懸濁液を得る(濃縮工程)。
さらに、貯留槽61において、分離工程で分離した透過水を貯留する。
条件1は、下記式(1)を満たす。
Wall/x>Wn ・・・(1)
ただし、Wnは、n個の反応槽11のうち下流側末端の反応槽11への過酸化水素(酸化剤)の添加量を示し、Wallは、過酸化水素の総添加量を示し、xは、過酸化水素を添加する反応槽11の数を示す。
nは、水処理装置1において直列に接続された反応槽11の数を示し、2以上の整数である。本実施形態ではn=3である。過酸化水素の添加量の単位は質量%とし、Wall=100(質量%)である。以下においても同様である。
下流側末端の反応槽11、つまり第3の反応槽11cへの過酸化水素の添加量WnがWall/x未満であることで、上流側の反応槽11で過酸化水素を十分消費させることができ、反応槽11の下流の不溶化槽21および調整槽41に未反応の過酸化水素が流出することを抑制できる。また、添加した過酸化水素が十分に消費されることで、排水中の汚染物質の除去効率が優れる。
Wnが0であるとは、下流側末端の反応槽11に過酸化水素を添加しないことを意味する。したがって、過酸化水素添加手段16から過酸化水素を添加する反応槽11は、下流側末端の反応槽11以外の反応槽11とすることが好ましい。過酸化水素を添加する反応槽11が上流であるほど、フェントン反応にかかる時間をより長くして、過酸化水素をフェントン反応で十分消費させることができる。
過酸化水素はラジカルスカベンジャー効果により添加した全てがラジカルとなって有機物の分解に使用されるわけではない。そのため、過酸化水素の総添加量Wallは、具体的には、原水中の処理したいCOD、BOD又はTOC成分量に対して化学量論比から考えた必要量の1倍以上が必要であり、原水中の処理したいCOD、BOD、又はTOC成分以外の夾雑物質濃度が高いほど、化学量論比よりも多い過酸化水素の量を添加する必要がある。
Wxi−1≧Wxi ・・・(2)
ただし、Wxiは、過酸化水素を添加する反応槽11のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽11への過酸化水素の添加量を示し、Wxi−1は、過酸化水素を添加する反応槽11のうち上流側末端から(i−1)番目の反応槽11への酸化剤の添加量を示す。
条件2は、下記式(3)を満たす。
W1>Wxi ・・・(3)
ただし、W1は、n個の反応槽11のうち上流側末端の反応槽11への過酸化水素の添加量を示し、Wxiは、過酸化水素を添加する反応槽11のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽11への過酸化水素の添加量を示す。
Wall×0.5≦W1≦Wall×0.99 ・・・(5)
式(5)を満たすことは、W1が、過酸化水素の総添加量Wallに対して50〜99質量%であることを示す。W1が前記範囲の下限値以上であると、過酸化水素の流出を抑制する効果がより優れる。W1が前記範囲の上限値以下であると、過酸化水素の自己分解を抑制でき、添加した過酸化水素を汚染物質の除去に十分に利用でき、排水中の汚染物質の除去効率がより優れる。W1は、過酸化水素の総添加量Wallに対して50〜75質量%が好ましい。
条件3は、下記式(4)を満たす。
Wx1>Wall/n ・・・(4)
ただし、Wx1は、過酸化水素を添加する反応槽11のうち上流側末端の反応槽11への過酸化水素の添加量を示し、Wallは、過酸化水素の総添加量を示す。
Wx1は、W1であることが好ましい。
反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度は、好ましくは50000mg/L以下である。鉄還元触媒の質量濃度が50000mg/L以下であることにより、鉄還元触媒による過酸化水素の分解反応が抑制される。また、後述する濃縮装置を用いて鉄イオンを不溶化させた鉄化合物を含む汚泥を濃縮するのが容易になる。さらに、得られた懸濁液を懸濁液返送手段32により反応槽11に返送する際に、反応槽11内のpH調整に用いる酸の使用量が抑えられる。
過酸化水素の流出が抑制されているため、未反応の過酸化水素による処理水中の化学的酸素要求量の上昇を抑制することができる。また、処理水に対してさらに生物処理を行う場合、処理水中の過酸化水素の含有量が多いと、生物処理に悪影響があるため過酸化水素を分解除去する必要があるが、処理水中の過酸化水素の含有量が少ないため、処理水をそのまま生物処理できる。
しかし、本発明者らの検討によれば、一括添加に比べて少ない酸化剤の添加量で目標の処理を達成するには、実際には、分割割合に最適な範囲がある。分割割合を所定の範囲内とすること、具体的には、上記の条件1、条件2または条件3で酸化剤を分割添加することにより、一括添加に比べて少ない酸化剤の添加量で目標の処理を達成できる。この理由は以下のように考えられる。
ヒドロキシラジカルは反応性が高く、酸化分解の対象物である汚染物質以外の成分(過酸化水素等の酸化剤等)とも反応してしまうラジカルスカベンジャー効果が発生する。それによってヒドロキシラジカルの原料である酸化剤およびヒドロキシラジカルそのものを不要に消費してしまうことになる。分割添加によって各槽の酸化剤濃度を下げることでラジカルスカベンジャー効果を減らすことができる。一方で、下流側の反応槽11に過酸化水素を多く添加することは、一連の反応槽11における過酸化水素の滞在時間を減らすことになり、利用されずに流出する過酸化水素を増やしてしまう。結果、過酸化水素の添加量に見合った処理効率が得られず、分割添加の利点が損なわれる。
本実施形態では、上記の条件1、条件2または条件3で酸化剤を分割添加することで、各反応槽11の酸化剤濃度を下げ、ラジカルスカベンジャー効果を減らすことができるともに、流出する過酸化水素の量を抑制できる。
直列に接続されたn個の反応槽11のうち、過酸化水素を添加する反応槽11の数xは、2以上であればよい。設備の煩雑さ、コストを考慮すると、xは2〜5が好ましく、2〜3がより好ましい。
処理水中の過酸化水素の分解処理方法としては、ばっ気処理、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を用いた還元処理、金属触媒や活性炭触媒を用いた分解処理等が挙げられ、適宜選択して使用できる。
下流に生物処理槽を設ける場合、生物への短期または長期毒性がない濃度にまで過酸化水素を分解することが好ましい。このような濃度は実験的に確認できる。
水処理装置1において、貯留槽61の下流に生物処理槽を設け、前記生物処理槽にて処理水の生物処理を行ってもよい。排水が生物毒性成分を含む場合、生物処理の前処理として上記の促進酸化処理を行うと、生物毒性成分による生物処理効率の低下を抑制できる。
水処理装置1において、不溶化槽21および第2のpH調整手段を省略して不溶化工程を行わなくてもよい。
水処理装置1において、濃縮手段22を省略して濃縮工程を行わなくてもよい。
水処理装置1において、懸濁液返送手段32を省略して懸濁液返送工程を行わなくてもよい。その場合、不溶化槽21内の懸濁液は、定期的に抜き出して、鉄と触媒の濃度を維持するために抜き出した分の鉄試薬または触媒を添加する。
水処理装置1において、触媒添加手段17を省略して還元工程を行わなくてもよい。
ハウジング内に濾過膜(精密濾過または限外濾過)の一次側と二次側が隔離されるように濾過膜が固定され、ハウジング内における濾過膜の一次側が、鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥および処理水を含有する懸濁液が貯留された貯留タンクと循環流路により連通し、濾過膜の二次側が吸引ポンプと接続された構成。
排水の処理の数値計算について説明する。対象とするプロセスの模式図を図2に示す。本プロセスでは、直列に接続された3つの反応槽を用いて原水を処理し、透過水とする。第1の反応槽11aへの過酸化水素の添加量をa%、第2の反応槽11bへの過酸化水素の添加量をb%、第3の反応槽11cへの過酸化水素の添加量をc%とした。ここでの「%」は「質量%」であり、a+b+c=100である。
処理対象とする原水は、化学工場の排水であり、前記排水中のTОC濃度は24ppm、1,4−ジオキサン濃度は30ppmである。
以上の式を図1に示す構成の水処理装置に適用し、aとbとcの比率を表1に示すように変更して、過酸化水素の分割添加の効果を比較した。
過酸化水素溶液の投入量は全体で1.39mL/hr、過酸化水素溶液中の過酸化水素濃度は30000ppm、反応槽11への原水の流入速度は167mL/hr、3個の反応槽11の大きさはそれぞれ330mLとした。実プロセスでは処理水をアルカリで中和したスラッジを第1の反応槽11aに返送することを想定し、計算上、3個の反応槽11の全鉄濃度は900ppmで維持されている。懸濁液の返送量は19mL/hrである。3個の反応槽11内のpHは2.8、不溶化槽21内のpHは8.0を想定している。
また、比較例1、実施例1、実施例2、比較例2および比較例4における1,4−ジオキサンおよび過酸化水素それぞれの出口濃度を図5に示す。図5は、第1の反応槽11aへの過酸化水素の添加量a(質量%)を横軸にとり、各出口濃度(ppm)を縦軸にとったグラフである。
3個の反応槽11の第1の反応槽11a、第2の反応槽11b及び第3の反応槽11cに50:30:20または50:40:10の割合で過酸化水素水を分割添加した実施例3〜4では、1,4−ジオキサンの出口濃度が排出基準の1.5ppm以下になり、過酸化水素濃度は2ppm以下になった。
第1の反応槽11aに過酸化水素を全量添加した比較例1、第1の反応槽11aおよび第2の反応槽11bに25:75の割合で過酸化水素を分割添加した比較例2では、1,4−ジオキサンの出口濃度が実施例1〜4に比べて高かった。3個の反応槽11に均等に過酸化水素を添加した比較例3では、過酸化水素の出口濃度が2ppmを超えていた。この場合、処理水に対して過酸化水素の除去処理が必要となる。
図5より、過酸化水素を分割添加し、かつ第1の反応槽11aへの添加量を全量の50%以上とした場合に、1,4−ジオキサンの分解効率が良いと推定された。
5個の反応槽を直列に接続し、各反応槽(上流側から反応槽A、反応槽B、反応槽C、反応槽D、反応槽Eとした。)に上流側から40:30:20:10:0の割合で過酸化水素を添加した以外は実施例1と同じ条件で検討した。
反応槽Eから排出された反応液中の1,4−ジオキサンおよび過酸化水素それぞれの濃度(以下、「出口濃度」ともいう。)を表2に示す。
Claims (14)
- 被酸化性の汚染物質を含む排水に対して、直列に接続されたn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽にて順次、促進酸化処理を行って前記汚染物質を酸化する酸化工程を有し、
前記酸化工程にて、前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽に、下記式(1)を満たす条件で酸化剤を添加する、水処理方法。
Wall/x>Wn ・・・(1)
ただし、Wnは、前記n個の反応槽のうち下流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wallは、前記酸化剤の総添加量を示し、xは、前記酸化剤を添加する反応槽の数を示す。 - 前記酸化工程にて、前記式(1)を満たし、かつ下記式(2)を満たす条件で前記酸化剤を添加する請求項1に記載の水処理方法。
Wxi−1≧Wxi ・・・(2)
ただし、Wxiは、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wxi−1は、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端から(i−1)番目の反応槽への酸化剤の添加量を示す。 - 被酸化性の汚染物質を含む排水に対して、直列に接続されたn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽にて順次、促進酸化処理を行って前記汚染物質を酸化する酸化工程を有し、
前記酸化工程にて、前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽に、下記式(3)を満たす条件で酸化剤を添加する、水処理方法。
W1>Wxi ・・・(3)
ただし、W1は、前記n個の反応槽のうち上流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wxiは、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽への酸化剤の添加量を示す。 - 被酸化性の汚染物質を含む排水に対して、直列に接続されたn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽にて順次、促進酸化処理を行って前記汚染物質を酸化する酸化工程を有し、
前記酸化工程にて、前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽に、下記式(4)を満たす条件で酸化剤を添加する、水処理方法。
Wx1>Wall/n ・・・(4)
ただし、Wx1は、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wallは、前記酸化剤の総添加量を示す。 - 前記促進酸化処理が、フェントン反応による促進酸化処理である請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理方法。
- 前記n個の反応槽のうち少なくとも1個の反応槽に鉄還元触媒を添加し、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを前記鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元する請求項5に記載の水処理方法。
- 前記鉄還元触媒が活性炭である請求項6に記載の水処理方法。
- 直列に接続された、排水に含まれる被酸化性の汚染物質の促進酸化処理を行うn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽と、
前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽それぞれに酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記酸化剤が下記式(1)を満たす条件で添加されるように前記酸化剤添加手段を制御する制御部と、
を備える、水処理装置。
Wall/x>Wn ・・・(1)
ただし、Wnは、前記n個の反応槽のうち下流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wallは、前記酸化剤の総添加量を示し、xは、前記酸化剤を添加する反応槽の数を示す。 - 前記制御部は、前記酸化剤が前記式(1)を満たし、かつ下記式(2)を満たす条件で添加されるように前記酸化剤添加手段を制御する請求項8に記載の水処理装置。
Wxi−1≧Wxi ・・・(2)
ただし、Wxiは、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wxi−1は、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端から(i−1)番目の反応槽への酸化剤の添加量を示す。 - 直列に接続された、排水に含まれる被酸化性の汚染物質の促進酸化処理を行うn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽と、
前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽それぞれに酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記酸化剤が下記式(3)を満たす条件で添加されるように前記酸化剤添加手段を制御する制御部と、
を備える、水処理装置。
W1>Wxi ・・・(3)
ただし、W1は、前記n個の反応槽のうち上流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wxiは、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端からi番目(iは2以上n以下の任意の整数を示す。)の反応槽への酸化剤の添加量を示す。 - 直列に接続された、排水に含まれる被酸化性の汚染物質の促進酸化処理を行うn個(nは2以上の整数を示す。)の反応槽と、
前記n個の反応槽のうち少なくとも2個の反応槽それぞれに酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記酸化剤が下記式(4)を満たす条件で添加されるように前記酸化剤添加手段を制御する制御部と、
を備える、水処理装置。
Wx1>Wall/n ・・・(4)
ただし、Wx1は、前記酸化剤を添加する反応槽のうち上流側末端の反応槽への酸化剤の添加量を示し、Wallは、前記酸化剤の総添加量を示す。 - 前記促進酸化処理が、フェントン反応による促進酸化処理である請求項8〜11のいずれか一項に記載の水処理装置。
- 前記n個の反応槽のうち少なくとも1個の反応槽に鉄還元触媒を添加する触媒添加手段をさらに備える請求項12に記載の水処理装置。
- 前記鉄還元触媒が活性炭である請求項13に記載の水処理装置。
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