JP2019211662A - 親水性シリカ多孔質膜、光学部材、および光学機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐擦傷性に優れる親水性シリカ多孔質膜を有し、該親水性シリカ多孔質膜を有することで長時間の屋外環境暴露時においても低ヘイズを維持することのできる、信頼性の高い光学部材を提供する。【解決手段】本発明に係る親水性シリカ多孔質膜は、基材の、膜厚が350nm以上900nm以下の親水性シリカ多孔質膜であって、550nmの波長を有する光の屈折率が1.230以上1.260以下であり、且つ2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数がヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下の範囲で含むことを特徴とする親水性シリカ多孔質膜である。【選択図】図1
Description
本発明は、親水性シリカ多孔質膜、並びに親水性シリカ多孔質膜を用いた光学部材および光学機器に関する。
現在、店舗、ホテル、銀行、駅などの様々な場所において防犯等の目的により監視カメラが使用されている。監視カメラ本体には様々な環境からの保護を目的としてカメラカバーが取り付けられており、透明性や耐衝撃性の観点からアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂が基材の材料として用いられている。監視カメラは、屋外に設置される場合も多く、雨天時は水滴が球状にカメラカバーに付着し撮影画像に悪影響を及ぼす。そのため、カメラカバー表面に親水膜を形成し、水滴が付着した際にも水滴を液膜化させることで、雨天時の撮影画像への悪影響を軽減する技術が知られている。
特許文献1には、樹脂基材上に鎖状のシリカ粒子と加水分解性有機珪素化合物を含むシリカ混合物を加水分解および脱水縮合により固化させることにより、密着性および耐擦傷性に優れた親水膜を形成する発明が記載されている。
特許文献1に記載の発明では、シリカ粒子に対する加水分解性有機珪素化合物の割合を上げることで多孔質シリカ親水膜の樹脂基材への密着性および耐擦傷性を高めている。
しかしながら、監視カメラカバーに用いるアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂基材上に多孔質シリカ親水膜を形成し屋外で使用した場合、樹脂基材は吸水や劣化により膨張する。一方で多孔質シリカ親水膜側は膜中に残留している未反応の加水分解性有機珪素化合物の脱水縮合により収縮するため、多孔質シリカ膜に微小な割れ(以下、「クラック」と称する。)が発生する。クラックの発生により膜のヘイズ値が増加し画像に曇りが生じることで、監視カメラの画像分解能が低下してしまう。
このようにシリカ粒子と加水分解性有機珪素化合物から成る多孔質シリカ親水膜においては耐擦傷性と耐候性の両立が困難であるという課題があった。
上記課題は、以下の本発明によって解決される。すなわち、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜は、基材の上の、膜厚が350nm以上900nm以下の親水性シリカ多孔質膜であって、550nmの波長における屈折率が1.230以上1.260以下であり、且つ2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数が4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下の範囲で含むことを特徴とする親水性シリカ多孔質膜である。
また、本発明の別の態様は、基材の上に二酸化ケイ素からなる鎖状粒子を含む分散液を塗布する塗工工程と、前記分散液の塗膜を乾燥させる乾燥工程と、を含む、膜厚が350nm以上900nm以下の親水性シリカ多孔質膜の製造方法であって、前記分散液が、2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数が4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、前記乾燥工程が、前記化合物を0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下の範囲で親水性シリカ多孔質膜が含むように行われることを特徴とする、親水性シリカ多孔質膜の製造方法である。
本発明によれば、耐擦傷性に優れ、長時間の屋外環境暴露時においても低ヘイズを維持することのできる、信頼性の高い親水膜を形成した光学部材を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[光学部材]
図1は、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜および光学部材の一実施形態を示す模式図である。光学部材1は、基材2の上に、二酸化ケイ素(シリカ)からなる鎖状粒子(以下、「鎖状粒子」とも称する。)4を含む親水性シリカ多孔質膜3を有している。鎖状粒子4と鎖状粒子4の接点は、鎖状粒子4同士が直接結合した部分でもよく、またはバインダー6を介して結合した部分でもよい。複雑な形状を有する鎖状粒子4が結合することで、親水性シリカ多孔質膜3は、鎖状粒子4と鎖状粒子4の間に空隙5を有している。
[光学部材]
図1は、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜および光学部材の一実施形態を示す模式図である。光学部材1は、基材2の上に、二酸化ケイ素(シリカ)からなる鎖状粒子(以下、「鎖状粒子」とも称する。)4を含む親水性シリカ多孔質膜3を有している。鎖状粒子4と鎖状粒子4の接点は、鎖状粒子4同士が直接結合した部分でもよく、またはバインダー6を介して結合した部分でもよい。複雑な形状を有する鎖状粒子4が結合することで、親水性シリカ多孔質膜3は、鎖状粒子4と鎖状粒子4の間に空隙5を有している。
バインダー6はアルコキシシランの加水分解縮合物から成り、鎖状粒子4との間でシロキサン結合を形成することができる。そのため、特許文献1のように、鎖状粒子4に対するバインダー6の割合を上げることで粒子間の接合力を高めることで耐擦傷性を得ることができる。しかし、バインダー6の割合を増すことにより、屋外使用時の親水性シリカ多孔質膜3の収縮が大きくなるため、光学部材1はクラックの発生により耐候性が低下してしまうという問題が存在する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、親水性シリカ多孔質膜3中のバインダー6の割合が低くても、十分な膜強度を有し、且つ屋外使用時においても光学部材1のクラックの発生を抑制するための条件を見出した。
図2には、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜の膜厚と膜強度の関係を示した。各膜厚において、親水性シリカ多孔質膜に含まれる二酸化ケイ素からなる鎖状粒子とバインダーの割合は一定である。図2に示すように、親水性シリカ多孔質膜の膜厚を厚くすることで膜強度(JIS K5600−5−4にしたがった鉛筆硬度)が増加することが分かる。また、図3には、各膜厚での親水性シリカ多孔質膜の550nmの波長を有する光の屈折率の変化を示した。図3に示すように、親水性シリカ多孔質膜の膜厚を厚くすることに伴い、屈折率が増加していることが分る。親水性シリカ多孔質膜の屈折率の増加は、親水性シリカ多孔質膜中の空隙率が減少し、二酸化ケイ素からなる鎖状粒子の密度が増大していることを表していると考えられる。
本発明者らは、このような効果が得られる理由について以下のように考えた。
一般に、粒子からなる膜(以下、「粒子膜」と称す。)では、膜形成時において粒子を含む分散液の塗膜を基材上に塗布し、溶媒などの揮発成分を除去することにより、膜中の粒子の密度が増大する。また、揮発成分が除去される過程で、基材と粒子および粒子同士といった固体同士の相互作用により粒子の動きが束縛されていく。そのため、粒子膜の固定面である基材からの束縛が大きいため、基材と粒子膜との界面付近の膜の粒子密度は低くなる。本発明に係る親水性シリカ多孔質膜に含まれる二酸化ケイ素からなる鎖状粒子は、二酸化ケイ素の中実粒子が連なったものであり、単軸方向の長さに比べて長軸方向の長さが長く、形状も複雑に屈曲している。そのため、鎖状粒子が基板に束縛される領域は、長軸方向の長さの3倍程度の長さまでの領域である。そのため、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜の膜厚を、鎖状粒子が基板に束縛される領域よりも厚い膜厚にすることで、鎖状粒子の密度を高めることができる。また、鎖状粒子は複雑な形状を有するため、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜中の鎖状粒子の密度が高まることにより、鎖状粒子同士の接触面が増え、且つ接触面の方位が複雑に配向しているために膜の靱性が向上するという相乗効果を供すると考えられる。
一般に、粒子からなる膜(以下、「粒子膜」と称す。)では、膜形成時において粒子を含む分散液の塗膜を基材上に塗布し、溶媒などの揮発成分を除去することにより、膜中の粒子の密度が増大する。また、揮発成分が除去される過程で、基材と粒子および粒子同士といった固体同士の相互作用により粒子の動きが束縛されていく。そのため、粒子膜の固定面である基材からの束縛が大きいため、基材と粒子膜との界面付近の膜の粒子密度は低くなる。本発明に係る親水性シリカ多孔質膜に含まれる二酸化ケイ素からなる鎖状粒子は、二酸化ケイ素の中実粒子が連なったものであり、単軸方向の長さに比べて長軸方向の長さが長く、形状も複雑に屈曲している。そのため、鎖状粒子が基板に束縛される領域は、長軸方向の長さの3倍程度の長さまでの領域である。そのため、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜の膜厚を、鎖状粒子が基板に束縛される領域よりも厚い膜厚にすることで、鎖状粒子の密度を高めることができる。また、鎖状粒子は複雑な形状を有するため、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜中の鎖状粒子の密度が高まることにより、鎖状粒子同士の接触面が増え、且つ接触面の方位が複雑に配向しているために膜の靱性が向上するという相乗効果を供すると考えられる。
図4には、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜の膜断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。画像中、白っぽく見える部分が空隙に相当する。図4に示すように、親水性シリカ多孔質膜3において、基材2の近傍の鎖状粒子4の密度は低く、基材2から膜の表面に近づくにつれて鎖状粒子4の密度が高くなっていることが分かる。言い換えると、基材2の近傍の空隙率が、膜の表面近傍の空隙率よりも大きいことが分かる。
また、本発明者らは、親水性シリカ多孔質膜3を有する光学部材の屋外使用時のクラックの発生を抑制するために、鎖状粒子に対するバインダー6の割合を下げ、且つ親水性シリカ多孔質膜の膜中に2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を親水性シリカ多孔質膜中に残溶させることが、効果があることを見出した。以下、親水性シリカ多孔質膜3中に残溶した2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を、「残溶媒7」と称する場合がある。
残溶媒7としての2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルとしては、1−プロポキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールなどがあげられる。また、2級水酸基を有する炭素数4のヒドロキシ酸エステルとしては、乳酸メチルがあげられる。また、親水性シリカ多孔質膜3は残溶媒7として、1種または2種以上の化合物を含んでいてもよい。
親水性シリカ多孔質膜3に含まれる残溶媒7の量は、0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下であることが好ましい。残溶媒7の量が0.5mg/cm3以上であると、屋外使用時に、光学部材のクラックの発生を防ぐことができる。また、残溶媒7の量が2.0mg/cm3以下であると、親水性シリカ多孔質膜3は、十分な膜強度を得ることができる。
本発明者らは、親水性シリカ多孔質膜3が残溶媒7を含むことで、光学部材のクッラクの発生を抑制することができる理由について以下のように考えている。
従来、樹脂基材上に親水性シリカ膜を形成した光学部材は、屋外での使用により、紫外線や雨の影響により、樹脂基材が膨張するのに対し、親水性シリカ膜は、膜中のバインダーが収縮するためにクラックが発生していた。親水性シリカ多孔質膜3中の残溶媒7は、2級水酸基を有し適度な大きさを有する化合物であるため、鎖状粒子4やバインダー6の表面に存在する水酸基と相互作用することにより、鎖状粒子4とバインダー6との縮合、およびバインダー6の縮合を阻害すると考えられる。この、残溶媒7の働きにより、本発明の光学部材1は、屋外で使用した際でも、親水性シリカ多孔質膜3が収縮しないため、クラックの発生を抑制することができると考えられる。
以上説明したように、本発明の親水性シリカ多孔質膜は耐擦傷性に優れ、光学部材として用いた際には、耐擦傷性と耐候性の両立した信頼性の高い光学部材を実現することができる。
以下、光学部材1の各構成要素について詳細に説明する。
(基材)
基材2としては、アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂などを用いることができる。基材2の形状は限定されることはなく、平面、曲面、またはドーム形状であって良く、平板状であってもフィルム状であっても良い。
(基材)
基材2としては、アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂などを用いることができる。基材2の形状は限定されることはなく、平面、曲面、またはドーム形状であって良く、平板状であってもフィルム状であっても良い。
(親水膜)
親水性シリカ多孔質膜3は、基材2の表面に鎖状粒子4が複数積み重なっており、鎖状粒子4同士の間は、直接またはバインダー6で結合されている。空隙5に含まれる空気(屈折率1.0)によって親水性シリカ多孔質膜3の屈折率は中実粒子が鎖状につながった鎖状粒子4自体の屈折率より低い屈折率になる。空隙5は単独の孔でも、連通孔でもよい。親水性シリカ多孔質膜3中の空隙5の割合は、鎖状粒子4とバインダー6との比、および親水性シリカ多孔質膜3の膜厚により決定される。
親水性シリカ多孔質膜3は、基材2の表面に鎖状粒子4が複数積み重なっており、鎖状粒子4同士の間は、直接またはバインダー6で結合されている。空隙5に含まれる空気(屈折率1.0)によって親水性シリカ多孔質膜3の屈折率は中実粒子が鎖状につながった鎖状粒子4自体の屈折率より低い屈折率になる。空隙5は単独の孔でも、連通孔でもよい。親水性シリカ多孔質膜3中の空隙5の割合は、鎖状粒子4とバインダー6との比、および親水性シリカ多孔質膜3の膜厚により決定される。
鎖状粒子4を含む親水性シリカ多孔質膜3の厚さは、350nm以上900nm以下が好ましい。この範囲で膜の厚さを設計することによって、鎖状粒子4の膜密度を上げ、親水性シリカ多孔質膜3の耐擦傷性を向上させることができる。350nm以上900nm以下の膜厚における親水性シリカ多孔質膜3の500nmの波長を有する光の屈折率が1.230以上1.260以下の範囲であるとき、親水性シリカ多孔質膜3を用いた光学部材は耐擦傷性と耐候性の両立が可能となるため好ましい。
(粒子)
鎖状粒子4は平均粒子径が10nm以上50nm以下の中実粒子が、平均で2から8個連なったものが好ましい。鎖状粒子4は、不規則に折れ曲がった形状を有する。中実粒子の平均粒子径が10nm以上であることにより、鎖状粒子4間にできる空隙5の大きさが十分に大きくなり、屈折率を下げることができる。鎖状粒子4としては、例えば、日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)−OUP、スノーテックス(登録商標)−UP、IPA−ST−UP(登録商標)、MEK−ST−UP(登録商標)などが挙げられる。
鎖状粒子4は平均粒子径が10nm以上50nm以下の中実粒子が、平均で2から8個連なったものが好ましい。鎖状粒子4は、不規則に折れ曲がった形状を有する。中実粒子の平均粒子径が10nm以上であることにより、鎖状粒子4間にできる空隙5の大きさが十分に大きくなり、屈折率を下げることができる。鎖状粒子4としては、例えば、日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)−OUP、スノーテックス(登録商標)−UP、IPA−ST−UP(登録商標)、MEK−ST−UP(登録商標)などが挙げられる。
中実粒子の平均粒子径、および鎖状粒子4がいくつの中実粒子が連なって構成されているかは、透過電子顕微鏡像の視野において、50個以上の鎖状粒子4について、中実粒子の粒子径および中実粒子の連なった数を計測し、それらを平均して求めることができる。
中実粒子には、二酸化ケイ素などのケイ素酸化物または有機ケイ素の中実粒子を用いることができる。中でも、製造が容易な、二酸化ケイ素の中実粒子が特に好ましい。
(バインダー)
バインダー6には、鎖状粒子4との間でシロキサン結合を形成して、鎖状粒子4同士を結合する材料が好ましい。バインダー6は、アルコキシシランの加水分解縮合物から成るバインダー6を形成するために必要な成分を含む溶液を用いことができる。
バインダー6には、鎖状粒子4との間でシロキサン結合を形成して、鎖状粒子4同士を結合する材料が好ましい。バインダー6は、アルコキシシランの加水分解縮合物から成るバインダー6を形成するために必要な成分を含む溶液を用いことができる。
バインダーを形成するために必要な成分を含む溶液として、アルコキシシランの加水分解縮合物を含む溶液を用いることができる。アルコキシシランの加水分解縮合物を含む溶液は、アルコキシシランを加水分解した後に縮合することにより作製できる。
アルコキシシランの加水分解縮合物の前駆体であるアルコキシシランは水に相溶しないため、反応初期はアルコキシシランと水の二層が分離した状態である。反応が進むと、アルコキシ基の加水分解によりアルコキシシランがシラノール化し、水層に溶解するため、均一に混合する。アルコキシシランの加水分解縮合物を含む溶液の調製のためには、アルコキシシランに対して水を5から20当量用いることが好ましい。加水分解を進めるために触媒として酸または塩基を加えてもよい。触媒としては硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、アンモニア、ホスフィン酸、ホスフォン酸からなる群より選択される1種または2種以上の酸または塩基を含む触媒を1wt%以下の濃度で用いることが好ましい。アルコキシシランの加水分解縮合物の調製の際には、反応温度は、5℃より高く30℃以下にすることが好ましい。反応温度が5℃より高いと、アルコキシシランの加水分解縮合物の加水分解が短い時間で完了するため生産性が高くなる。また、反応温度を30℃以下にすることで、アルコキシシランの加水分解物の縮合反応が適度に進行し、アルコキシシランの加水分解縮合物の過度の成長を抑制できる。このため、成膜後の親水性シリカ多孔質膜中の鎖状粒子間に形成される空隙サイズを適度な大きさとすることができ、散乱を抑制することができる。
アルコキシシランの加水分解と縮合反応の進行度は、アルコキシシランの加水分解縮合物の平均粒子径で評価することができる。アルコキシシランと水を含む反応溶液を、動的光散乱法で測定した際の、アルコキシシランの加水分解縮合物の平均粒子径が8nmから30nmであることが好ましい。また、平均粒子径は、8nmから15nmのであることがより好ましい。
アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどのメチル基が修飾された3官能シランや、テトラエトキシシランなどの4官能シランを挙げることができる。また、アルコキシシランは、1種または2種以上のアルコキシシランを用いてもよく、上記3官能シランおよび4官能シランを混合して用いても良い。シラノール基を増やすことで、鎖状粒子4との接点でシロキサン結合を形成する確率が高まり、親水性シリカ多孔質膜3の強度が高くなるため、4官能シランを用いることが好ましい。
[親水性シリカ多孔質膜および光学部材の製造方法]
次に、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜および光学部材の製造方法についてその一例を説明する。
次に、本発明に係る親水性シリカ多孔質膜および光学部材の製造方法についてその一例を説明する。
本発明の親水性シリカ多孔質膜3の製造方法を以下に示す。基材2の上に、バインダー6を形成するためのアルコキシシランの加水分解縮合物を含む溶液と、鎖状粒子4と、2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを含有する分散液を塗布し、塗膜を形成する。その後、基材2上の塗膜を乾燥させることにより、残溶媒7を含む鎖状粒子4同士が直接またはバインダー6を介して結合した単一の層からなる、親水性シリカ多孔質膜3を形成することができる。
以下に各工程の詳細を述べる。
(鎖状粒子を含む分散液を塗布する工程)
鎖状粒子4は、2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテル、2級水酸基を有する炭素数4のヒドロキシ酸エステルに分散させて用いることが好ましいが、これらの溶媒と他の溶媒の混合溶媒で分散させて用いてもよい。市販の鎖状粒子4が溶媒に分散されたものを用いる場合、溶媒の沸点が90℃以下であると溶媒が急激に気化することがある。これを避けるために、沸点が90℃以下である溶媒を、2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物に置換して用いることが好ましい。
(鎖状粒子を含む分散液を塗布する工程)
鎖状粒子4は、2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテル、2級水酸基を有する炭素数4のヒドロキシ酸エステルに分散させて用いることが好ましいが、これらの溶媒と他の溶媒の混合溶媒で分散させて用いてもよい。市販の鎖状粒子4が溶媒に分散されたものを用いる場合、溶媒の沸点が90℃以下であると溶媒が急激に気化することがある。これを避けるために、沸点が90℃以下である溶媒を、2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物に置換して用いることが好ましい。
鎖状粒子4の分散液に含まれる鎖状粒子4の濃度は、親水性シリカ多孔質膜3の膜厚が350nm以上から900nm以下となるように成膜できる濃度であれば良い。用いる溶媒や成膜条件によって分散液中の鎖状粒子4の濃度は適宜選択することができるが、二酸化ケイ素換算で5wt%以上20wt%以下であることが好ましい。
鎖状粒子4を含む分散液には、親水性シリカ多孔質膜3に強度をもたせるため、バインダー6を形成するために必要な成分としてアルコキシシランの加水分解縮合物を添加する必要がある。アルコキシシランの加水分解縮合物の濃度は、分散液中の鎖状粒子4の濃度によって適宜選択することができるが、アルコキシシランの加水分解縮合物をケイ素原子に換算した時の重量比が、鎖状粒子4に対して3wt%以上15wt%以下であることが望ましい。重量比が3wt%以上であると、親水性シリカ多孔質膜3は好適な膜強度を得ることができる。一方、重量比を15wt%より多くしても、親水性シリカ多孔質膜3の強度は変わらない。また、重量比が15wt%以下であると、親水性シリカ多孔質膜3を用いた光学部材の屋外使用時においてもクラック発生を防ぐことができる。バインダー6の鎖状粒子4に対する比を大きくしていくと、バインダー6が鎖状粒子4より小さいため、鎖状粒子4の間の空隙5をバインダー6が埋めてしまい、親水性シリカ多孔質膜3の屈折率が増加する。耐擦傷性と耐候性の両立が可能な上記膜厚とバインダー濃度における屈折率の範囲は、550nmの波長を有する光の屈折率が1.230以上1.260以下の範囲である。アルコキシシランの加水分解縮合物と鎖状粒子4のケイ素原子に換算した重量比が上記範囲であると、親水性シリカ多孔質膜3の屈折率をこの範囲とすることができる。
(親水膜を作製する工程)
鎖状粒子4を含む分散液を基材の表面に塗布することで、鎖状粒子4を含む分散液の塗膜を基材上に形成する(塗工工程)。鎖状粒子4を含む分散液の、塗布方法としてはディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スリットコート法、印刷法など、公知の手法を用いることができる。
鎖状粒子4を含む分散液を基材の表面に塗布することで、鎖状粒子4を含む分散液の塗膜を基材上に形成する(塗工工程)。鎖状粒子4を含む分散液の、塗布方法としてはディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スリットコート法、印刷法など、公知の手法を用いることができる。
鎖状粒子4を含む分散液の塗膜を乾燥することで、親水性シリカ多孔質膜3とする(乾燥工程)。乾燥は、乾燥機、ホットプレート、電気炉などを用いることができる。乾燥条件は、基材に影響を与えず、且つ塗膜中の鎖状粒子4に配位していない溶媒を気化し、親水性シリカ多孔質膜3中の残溶媒7が0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下となる温度および時間とする。一般的には、乾燥条件は150℃以下の温度、3時間以下とすることが好ましい。
(光学部材および光学機器)
本発明の光学部材としては、本発明の親水性シリカ多孔質膜を有する限りいかなる光学部材であっても良い。このような光学部材としては、光学フィルム、光学フィルター、センサー、反射防止板、監視カメラ用カバー等の保護カバー、自動車、電車、航空機等の窓、バイクのフロントカウル、ヘルメットのシールド等を挙げることができる。本発明の光学機器としては、本発明の光学部材が組み込まれた光学機器である限りいかなる光学機器であっても良い。このような光学機器としては、テレビ、プラズマディスプレイパネル、屋外用ディスプレイ等の各種ディスプレイ、スチールカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ等の各種カメラ、双眼鏡、望遠鏡、太陽電池等に用いることができる。
本発明の光学部材としては、本発明の親水性シリカ多孔質膜を有する限りいかなる光学部材であっても良い。このような光学部材としては、光学フィルム、光学フィルター、センサー、反射防止板、監視カメラ用カバー等の保護カバー、自動車、電車、航空機等の窓、バイクのフロントカウル、ヘルメットのシールド等を挙げることができる。本発明の光学機器としては、本発明の光学部材が組み込まれた光学機器である限りいかなる光学機器であっても良い。このような光学機器としては、テレビ、プラズマディスプレイパネル、屋外用ディスプレイ等の各種ディスプレイ、スチールカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ等の各種カメラ、双眼鏡、望遠鏡、太陽電池等に用いることができる。
図5(a)、(b)は、本発明の光学部材が組み込まれた光学機器の例を示す模式図である。図5(a)は定点観察型の監視カメラ20、図5(b)はパン・チルト・ズーム駆動が可能な旋回型の監視カメラ20である。監視カメラ20は、装置本体21と、保護カバー22とを有し、装置本体21は、映像データーを取得する光学系を備えている。また、保護カバー22は、少なくとも装置本体21の光学系を覆い、外部からの防塵や衝撃から防御する。図5(a)の保護カバー22は平面形状の箱型、図5(b)の保護カバー22は半球形状のドーム型であるが、保護カバーの形状はこれらに限定されない。
図6に、図5(a)に示した定点観察型の監視カメラ20の構成例を示す。監視カメラ20は、保護カバー22、装置本体21および出力部35からなり、装置本体21は、筐体36で囲まれた空間内に、光学系31、イメージセンサ32、映像エンジン33、圧縮出力回路34を備えている。
保護カバー22として、本発明の光学部材はシリカ多孔質膜3が設けられた面が外部を向くように配置される。
保護カバー22を介して入射する像は、光学系(レンズ)31によってイメージセンサ32の上に結像され、イメージセンサ32によって映像アナログ信号(電気信号)に変換される。映像アナログ信号は、イメージセンサ32から映像エンジン33へと送信され、映像デジタル信号に変換される。映像エンジン33で変換された映像デジタル信号は圧縮出力回路34へと送られ、デジタルファイルに圧縮される。映像エンジン33は、映像アナログ信号を映像デジタル信号に変換する過程で、輝度、コントラスト、色補正、ノイズ除去などの画質を調整する処理を行ってもよい。デジタルファイルは、出力部35から配線を介して外部機器へと出力される。
図5(b)に示したパン・チルト・ズーム駆動が可能な旋回型の監視カメラ20の場合も基本的な構成は同様であるが、さらに、画角調整するパンチルト、撮像条件等を制御するコントローラを備えている。
これらの監視カメラ20は、取得した映像データーを保存しておく記憶装置、出力部35から出力されたデーターを外部に転送する転送手段などとともに、監視システムを構成することができる。
このように、監視カメラの保護カバー22に本発明の光学部材を用いれば、長期にわたって、防塵および外部からの衝撃を防御するとともに、外部環境の変化によって保護カバー22に付着する水滴を液膜化させ、取得する映像の歪みを抑制することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
鎖状粒子を含む分散液と、バインダーを形成するために必要な成分を含有する溶液をそれぞれ下記の方法で調製した。
(a)鎖状粒子を含む分散液の調製
(分散液1)
平均粒子径が12nmの二酸化ケイ素の中実粒子が平均で7個連なった鎖状粒子の2−プロパノール分散液(商品名:IPA−ST−UP(登録商標)、日産化学工業株式会社製、)に、1−プロポキシ−2−プロパノールを加えながら2−プロパノールを除去し、分散液(固形分濃度31.07wt%)を作製した。以下、この分散液を鎖状粒子分散液という。
(分散液1)
平均粒子径が12nmの二酸化ケイ素の中実粒子が平均で7個連なった鎖状粒子の2−プロパノール分散液(商品名:IPA−ST−UP(登録商標)、日産化学工業株式会社製、)に、1−プロポキシ−2−プロパノールを加えながら2−プロパノールを除去し、分散液(固形分濃度31.07wt%)を作製した。以下、この分散液を鎖状粒子分散液という。
ケイ酸エチル62.6gと1−エトキシ−2−プロパノール36.8gの溶液に、0.01mol/Lの希塩酸54gを徐々に加え、室温で5時間攪拌し、固形分濃度11.8質量%のバインダー溶液を調製した。
上記で調整した鎖状粒子分散液9.01gに1−プロポキシ−2−プロパノール2.39gおよび乳酸メチル6.51gを添加し、さらに上記で調製したバインダー溶液2.37gを添加し、20℃で60分撹拌し、分散液1を調製した。分散液1の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液2)
鎖状粒子分散液5.15gに1−プロポキシ−2−プロパノール5.65gおよび乳酸メチル8.00gを添加し、さらにバインダー溶液1.36gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に分散液2を調製した。分散液2の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は8%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
鎖状粒子分散液5.15gに1−プロポキシ−2−プロパノール5.65gおよび乳酸メチル8.00gを添加し、さらにバインダー溶液1.36gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に分散液2を調製した。分散液2の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は8%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液3)
鎖状粒子分散液10.30gに1−プロポキシ−2−プロパノール1.30gおよび乳酸メチル6.01gを添加し、さらにバインダー溶液2.71gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液3の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度16%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
鎖状粒子分散液10.30gに1−プロポキシ−2−プロパノール1.30gおよび乳酸メチル6.01gを添加し、さらにバインダー溶液2.71gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液3の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度16%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液4)
乳酸メチルの代わりに1−エトキシ−2−プロパノール8.00g添加した以外は分散液2と同様に調製した。分散液4の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−エトキシ−2−プロパノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は8%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
乳酸メチルの代わりに1−エトキシ−2−プロパノール8.00g添加した以外は分散液2と同様に調製した。分散液4の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−エトキシ−2−プロパノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は8%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液5)
乳酸メチルの代わりに1−エトキシ−2−プロパノール6.51g添加した以外は分散液1と同様に調製した。分散液5の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−エトキシ−2−プロパノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
乳酸メチルの代わりに1−エトキシ−2−プロパノール6.51g添加した以外は分散液1と同様に調製した。分散液5の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−エトキシ−2−プロパノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液6)
乳酸メチルの代わりに1−エトキシ−2−プロパノール6.01g添加した以外は分散液3と同様に調製した。分散液6の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−エトキシ−2−プロパノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は8%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
乳酸メチルの代わりに1−エトキシ−2−プロパノール6.01g添加した以外は分散液3と同様に調製した。分散液6の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−エトキシ−2−プロパノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は8%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液7)
鎖状粒子分散液9.01gに1−プロポキシ−2−プロパノール2.39gおよび乳酸メチル5.46gを添加し、さらにバインダー溶液3.56gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液7の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:15である。
鎖状粒子分散液9.01gに1−プロポキシ−2−プロパノール2.39gおよび乳酸メチル5.46gを添加し、さらにバインダー溶液3.56gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液7の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:15である。
(分散液8)
鎖状粒子分散液3.86gに1−プロポキシ−2−プロパノール6.74gおよび乳酸メチル8.50gを添加し、さらにバインダー溶液1.02gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液8の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は6%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10の分散液8である。
鎖状粒子分散液3.86gに1−プロポキシ−2−プロパノール6.74gおよび乳酸メチル8.50gを添加し、さらにバインダー溶液1.02gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液8の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は6%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10の分散液8である。
(分散液9)
鎖状粒子分散液11.59gに1−プロポキシ−2−プロパノール0.21gおよび乳酸メチル5.51gを添加し、さらにバインダー溶液3.05gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液9の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は18%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
鎖状粒子分散液11.59gに1−プロポキシ−2−プロパノール0.21gおよび乳酸メチル5.51gを添加し、さらにバインダー溶液3.05gを添加して撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液9の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は18%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液10)
乳酸メチルの代わりに1−ブタノール6.51g添加した以外は分散液1と同様に調製した。分散液10の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−ブタノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10の分散液10が得られた。
乳酸メチルの代わりに1−ブタノール6.51g添加した以外は分散液1と同様に調製した。分散液10の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−ブタノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10の分散液10が得られた。
(分散液11)
乳酸メチルの代わりにエチルセロソルブ6.51g添加した以外は分散液1と同様に調製した。分散液11の1−プロポキシ−2−プロパノールとエチルセロソルブの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
乳酸メチルの代わりにエチルセロソルブ6.51g添加した以外は分散液1と同様に調製した。分散液11の1−プロポキシ−2−プロパノールとエチルセロソルブの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液12)
乳酸メチルの代わりに1−ヘキサノール6.51g添加した以外は分散液1と同様に調製した。分散液12の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−ヘキサノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
乳酸メチルの代わりに1−ヘキサノール6.51g添加した以外は分散液1と同様に調製した。分散液12の1−プロポキシ−2−プロパノールと1−ヘキサノールの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:10である。
(分散液13)
鎖状粒子分散液9.01gに1−プロポキシ−2−プロパノール2.39gおよび乳酸メチル4.41gを添加し、さらにバインダー溶液4.75gを添加し、60分撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液13の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:20である。
鎖状粒子分散液9.01gに1−プロポキシ−2−プロパノール2.39gおよび乳酸メチル4.41gを添加し、さらにバインダー溶液4.75gを添加し、60分撹拌した以外は分散液1と同様に調製した。分散液13の1−プロポキシ−2−プロパノールと乳酸メチルの重量比は50:50、鎖状粒子の固形分濃度は14%、鎖状粒子とアルコキシシランの加水分解縮合物のケイ素原子に換算した固形分の重量比が100:20である。
(プライマー塗工液)
アミノ系シランである3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(商品番号:A0774、東京化成工業株式会社製)0.1gを1−メトキシ−2−プロパノール(関東化学製)100gに加えて室温で10分間撹拌し、プライマー塗工液とした。
アミノ系シランである3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(商品番号:A0774、東京化成工業株式会社製)0.1gを1−メトキシ−2−プロパノール(関東化学製)100gに加えて室温で10分間撹拌し、プライマー塗工液とした。
上記の分散液1〜13およびプライマー塗工液を用いて、以下の実施例および比較例に係る光学部材を作製した。
(実施例1)
直径(φ)50mm厚さ4mmの円形のポリカーボネート基板(nd=1.58、νd=30.2)と残溶媒の量を測定するための4cm×4cmの正方形のシリコン基板それぞれに分散液2を塗布した。初めに、プライマー塗工液を0.4mL滴下し、1500rpmで30秒スピンコートを行った。その後、熱風循環オーブン中90℃で10分間加熱した。続いて分散液2を0.4mL滴下し、2000rpmで20秒間スピンコートを行った。その後、熱風循環オーブン中90℃で15分間焼成した。こうして、ポリカーボネート基板上に親水性シリカ多孔質膜が形成された実施例1の光学部材および親水性シリカ多孔質膜が形成された実施例1の残溶媒の量を測定するための部材(以下、「残溶媒量測定部材」ともいう。)を作成した。
直径(φ)50mm厚さ4mmの円形のポリカーボネート基板(nd=1.58、νd=30.2)と残溶媒の量を測定するための4cm×4cmの正方形のシリコン基板それぞれに分散液2を塗布した。初めに、プライマー塗工液を0.4mL滴下し、1500rpmで30秒スピンコートを行った。その後、熱風循環オーブン中90℃で10分間加熱した。続いて分散液2を0.4mL滴下し、2000rpmで20秒間スピンコートを行った。その後、熱風循環オーブン中90℃で15分間焼成した。こうして、ポリカーボネート基板上に親水性シリカ多孔質膜が形成された実施例1の光学部材および親水性シリカ多孔質膜が形成された実施例1の残溶媒の量を測定するための部材(以下、「残溶媒量測定部材」ともいう。)を作成した。
(実施例2〜9および比較例1〜8)
分散液と焼成条件を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に、光学部材および残溶媒量測定用部材を作製した。
分散液と焼成条件を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に、光学部材および残溶媒量測定用部材を作製した。
[光学部材の評価]
上記実施例および比較例で得られた光学部材および残溶媒量測定用部材については、下記の方法に従って評価を行った。
上記実施例および比較例で得られた光学部材および残溶媒量測定用部材については、下記の方法に従って評価を行った。
(1)溶媒残存量
実施例1〜9および比較例1〜8で作成した残溶媒量測定用部材の親水性シリカ多孔質膜に含まれる残溶媒の量を測定した。測定には、サーモサイエンティフィック社製のヘッドスペースTRIPLUS300、マススペクトログラフィーLSQ LT、およびガスクロマトグラフィーTRAC GC ULTRAを用い、カラムはフロンティアラボ社製のUltraAlloyシリーズ(型式:UA+−5)を用いた。
測定条件はヘッドスペースのオーブン加熱温度160℃、平衡時間30分、パージタイム3分、マススペクトログラフィーのイオン源の温度を220℃、ガスクロマトグラフィーの注入口の加熱温度200℃、オーブンの加熱条件は初期40℃1分保持、5.0℃/minで200℃まで昇温し、200℃で10分保持、20.0℃/minで320℃まで昇温し、320℃で5分保持とした。
溶媒残存量は、検量線に基づいて算出した。検量線は、クロロホルムに検出ピーク強度比較用のナフタレンを0.15wt%になるように添加し、検出したい溶媒を濃度が0.13wt%、0.23wt%、0.35wt%、0.62wt%となるように添加した各溶液を用いて測定し、各溶媒濃度のピーク強度とナフタレン0.15wt%のピーク強度比を算出することで作成した。
続いて10mLのサンプル管に、実施例および比較例で作製した残溶媒量測定用部材とナフタレン0.15wt%のクロロホルム溶液2gをともに封入し、測定用サンプルを調整した。各実施例1〜9および各比較例1〜8の測定サンプルについて、上記の条件で測定した。検出溶媒とナフタレンの強度比から溶媒量を算出し、親水性シリカ多孔質膜の膜厚とシリコン基板の面積から1cm3あたりの膜中の溶媒残存量を計算した。結果を表1に示す。
実施例1〜9および比較例1〜8で作成した残溶媒量測定用部材の親水性シリカ多孔質膜に含まれる残溶媒の量を測定した。測定には、サーモサイエンティフィック社製のヘッドスペースTRIPLUS300、マススペクトログラフィーLSQ LT、およびガスクロマトグラフィーTRAC GC ULTRAを用い、カラムはフロンティアラボ社製のUltraAlloyシリーズ(型式:UA+−5)を用いた。
測定条件はヘッドスペースのオーブン加熱温度160℃、平衡時間30分、パージタイム3分、マススペクトログラフィーのイオン源の温度を220℃、ガスクロマトグラフィーの注入口の加熱温度200℃、オーブンの加熱条件は初期40℃1分保持、5.0℃/minで200℃まで昇温し、200℃で10分保持、20.0℃/minで320℃まで昇温し、320℃で5分保持とした。
溶媒残存量は、検量線に基づいて算出した。検量線は、クロロホルムに検出ピーク強度比較用のナフタレンを0.15wt%になるように添加し、検出したい溶媒を濃度が0.13wt%、0.23wt%、0.35wt%、0.62wt%となるように添加した各溶液を用いて測定し、各溶媒濃度のピーク強度とナフタレン0.15wt%のピーク強度比を算出することで作成した。
続いて10mLのサンプル管に、実施例および比較例で作製した残溶媒量測定用部材とナフタレン0.15wt%のクロロホルム溶液2gをともに封入し、測定用サンプルを調整した。各実施例1〜9および各比較例1〜8の測定サンプルについて、上記の条件で測定した。検出溶媒とナフタレンの強度比から溶媒量を算出し、親水性シリカ多孔質膜の膜厚とシリコン基板の面積から1cm3あたりの膜中の溶媒残存量を計算した。結果を表1に示す。
(2)膜厚、屈折率測定
分光エリプソメータ(商品名:VASE(登録商標)、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製)を用い、実施例1〜9および比較例1〜8で作成した光学部材の親水性シリカ多孔質膜の屈折率を、それぞれ波長380nmから800nmまでの光を用いた測定を行った。膜厚と屈折率の計算は親水性シリカ多孔質膜を単層のCauchyモデルと仮定して解析を行い、波長550nmでの膜厚と屈折率を求めた。結果を表1に示す。
分光エリプソメータ(商品名:VASE(登録商標)、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製)を用い、実施例1〜9および比較例1〜8で作成した光学部材の親水性シリカ多孔質膜の屈折率を、それぞれ波長380nmから800nmまでの光を用いた測定を行った。膜厚と屈折率の計算は親水性シリカ多孔質膜を単層のCauchyモデルと仮定して解析を行い、波長550nmでの膜厚と屈折率を求めた。結果を表1に示す。
(3)耐擦傷性の評価
実施例1〜9および比較例1〜8で作成した光学部材の親水性シリカ多孔質膜の耐擦傷性の評価を以下のように行った。
光学部材の親水性シリカ多孔質膜上にエタノールを浸したシルボン紙を乗せ、さらにその上から直径(φ)5mmの円形の接触面を有するブタジエンゴムを介して荷重をかけながら、10往復擦った。荷重は0.2kg、0.5kg、1kg、2kgと段階的に上げていきキズの評価を目視で行った。評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
耐擦傷性:評価AおよびBの光学部材は、光学部材として好適に用いられる親水性シリカ多孔質膜を有する。
A:荷重2kgでもキズなし
B:荷重1kgまでキズなし
C:荷重0.5kgまでキズなし
D:荷重0.2kgでもキズあり
実施例1〜9および比較例1〜8で作成した光学部材の親水性シリカ多孔質膜の耐擦傷性の評価を以下のように行った。
光学部材の親水性シリカ多孔質膜上にエタノールを浸したシルボン紙を乗せ、さらにその上から直径(φ)5mmの円形の接触面を有するブタジエンゴムを介して荷重をかけながら、10往復擦った。荷重は0.2kg、0.5kg、1kg、2kgと段階的に上げていきキズの評価を目視で行った。評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
耐擦傷性:評価AおよびBの光学部材は、光学部材として好適に用いられる親水性シリカ多孔質膜を有する。
A:荷重2kgでもキズなし
B:荷重1kgまでキズなし
C:荷重0.5kgまでキズなし
D:荷重0.2kgでもキズあり
(4)サンシャインウェザー試験後のヘイズ測定
実施例1〜9および比較例1〜8で作成した光学部材の耐候性の評価として、サンシャインウェザー(SW)試験後の光学部材のクラックによるヘイズ測定を行った。サンシャインウェザー試験にはキセノンウェザーメーター(商品名:スーパーキセノンウェザーメーター CX75、スガ試験機株式会社製)を用いた。実施例1〜9および比較例1〜8で作成した各光学部材を試験機に投入し、光照射強度を180W/m2に設定し、光照射と放水を18分行い、その後光照射のみを1時間42分行うことを1サイクルとして、合計300サイクル試験を行った。
サンシャインウェザー試験後、各光学部材のヘイズ値をヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH2000)で測定した。評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
ヘイズ値:評価AおよびBの光学部材は、光学部材として好適に用いられる親水性シリカ多孔質膜を有する。
A:1%未満
B:1%以上2%未満
C:2%以上3%未満
D:3%以上
実施例1〜9および比較例1〜8で作成した光学部材の耐候性の評価として、サンシャインウェザー(SW)試験後の光学部材のクラックによるヘイズ測定を行った。サンシャインウェザー試験にはキセノンウェザーメーター(商品名:スーパーキセノンウェザーメーター CX75、スガ試験機株式会社製)を用いた。実施例1〜9および比較例1〜8で作成した各光学部材を試験機に投入し、光照射強度を180W/m2に設定し、光照射と放水を18分行い、その後光照射のみを1時間42分行うことを1サイクルとして、合計300サイクル試験を行った。
サンシャインウェザー試験後、各光学部材のヘイズ値をヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH2000)で測定した。評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
ヘイズ値:評価AおよびBの光学部材は、光学部材として好適に用いられる親水性シリカ多孔質膜を有する。
A:1%未満
B:1%以上2%未満
C:2%以上3%未満
D:3%以上
(5)サンシャインウェザー試験後の親水性評価
実施例1〜9および比較例1〜8で作成した光学部材の親水性シリカ多孔質膜の表面の親水性を評価した。上記のサンシャインウェザー試験後の各光学部材の親水性シリカ多孔質膜の表面に、純水2μLの液滴を滴下し、その液滴と親水性シリカ多孔質膜の表面が成す接触角を、全自動接触角計(商品名:DM−701、共和界面科学株式会社製)を用い、23℃50%RHで測定した。接触角40度未満の場合に親水性有りと判断し、接触角40度以上の場合に親水性無しと判断した。
結果を表1に示す。
実施例1〜9および比較例1〜8で作成した光学部材の親水性シリカ多孔質膜の表面の親水性を評価した。上記のサンシャインウェザー試験後の各光学部材の親水性シリカ多孔質膜の表面に、純水2μLの液滴を滴下し、その液滴と親水性シリカ多孔質膜の表面が成す接触角を、全自動接触角計(商品名:DM−701、共和界面科学株式会社製)を用い、23℃50%RHで測定した。接触角40度未満の場合に親水性有りと判断し、接触角40度以上の場合に親水性無しと判断した。
結果を表1に示す。
実施例および比較例の結果から、以下のことが確認できた。
実施例2、8および9並びに比較例7および8の結果から、焼成条件によって膜中に残存する溶媒の量が異なることが分かった。実施例8および比較例7に示されるように、焼成温度が高く焼成時間が長いほど溶媒残存量は少なくなった。一方、実施例9および比較例8に示されるように、焼成温度が低く焼成時間が短いほど溶媒残存量は多くなった。膜中の単位体積あたりの残溶媒の含有量が0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下であることによって、実施例2および8の光学部材の親水性シリカ多孔質膜は、耐擦傷性およびサンシャインウェザー試験後の親水性に優れ、光学部材はサンシャインウェザー試験後のヘイズ値が良好であることがわかった。
実施例2、8および9並びに比較例7および8の結果から、焼成条件によって膜中に残存する溶媒の量が異なることが分かった。実施例8および比較例7に示されるように、焼成温度が高く焼成時間が長いほど溶媒残存量は少なくなった。一方、実施例9および比較例8に示されるように、焼成温度が低く焼成時間が短いほど溶媒残存量は多くなった。膜中の単位体積あたりの残溶媒の含有量が0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下であることによって、実施例2および8の光学部材の親水性シリカ多孔質膜は、耐擦傷性およびサンシャインウェザー試験後の親水性に優れ、光学部材はサンシャインウェザー試験後のヘイズ値が良好であることがわかった。
一方、比較例7に示すように残溶媒が親水性シリカ多孔質膜内に十分な量残存しなければ、サンシャインウェザー試験により、光学部材にクラックが発生し、ヘイズ値が大きくなることがわかった。また、比較例8に示すように低温かつ短時間で焼成した場合は、親水性シリカ多孔質膜内の残溶媒の含有量が多くなり、耐擦傷性が悪化していることがわかる。
また、比較例3〜5に示すように、残溶媒中に1級の水酸基を有する溶媒が残存することにより、2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数が4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物が、親水性シリカ多孔質膜内に0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下の範囲で含まれない場合も、サンシャインウェザー試験により、光学部材にクラックが発生しヘイズ値が大きくなることがわかった。
さらに、比較例1および2に示すように、親水性シリカ多孔質膜の膜厚が薄いと耐擦傷性が悪化し、厚いとサンシャインウェザー試験により、光学部材にクラックが発生しヘイズ値が大きくなることがわかった。
またさらに、比較例6に示すように、鎖状粒子に対するバインダーの重量比を上げると、膜密度が高まる(屈折率が増加する)ことにより、親水性シリカ多孔質膜の耐擦傷性は良好となった。一方、この場合、サンシャインウェザー試験により、光学部材にクラックが発生しヘイズ値が大きくなることがわかった。これは、親水性シリカ多孔質膜中のバインダー量が増えることでサンシャインウェザー試験中にバインダーの加水分解縮合反応が進行し、光学部材のクラックが大きくなるためと考えられる。
1 光学部材
2 基材
3 親水性シリカ多孔質膜
4 鎖状粒子
5 空隙
6 バインダー
7 残溶媒
20 監視カメラ
21 装置本体
22 保護カバー
31 光学系
32 イメージセンサ
33 映像エンジン
34 圧縮出力回路
35 出力部
36 筐体
2 基材
3 親水性シリカ多孔質膜
4 鎖状粒子
5 空隙
6 バインダー
7 残溶媒
20 監視カメラ
21 装置本体
22 保護カバー
31 光学系
32 イメージセンサ
33 映像エンジン
34 圧縮出力回路
35 出力部
36 筐体
Claims (19)
- 基材の上の、膜厚が350nm以上900nm以下の親水性シリカ多孔質膜であって、
550nmの波長を有する光の屈折率が1.230以上1.260以下であり、且つ
2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数が4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下の範囲で含むことを特徴とする、
親水性シリカ多孔質膜。 - 前記化合物が、1−プロポキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、および乳酸メチルからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の親水性シリカ多孔質膜。
- 二酸化ケイ素からなる鎖状粒子を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の親水性シリカ多孔質膜。
- 前記二酸化ケイ素からなる鎖状粒子が、平均粒子径が10nm以上50nm以下の二酸化ケイ素の中実粒子からなる鎖状粒子であることを特徴とする、請求項3に記載の親水性シリカ多孔質膜。
- 前記二酸化ケイ素からなる鎖状粒子同士の接点が、バインダーで結合された部分を含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の親水性シリカ多孔質膜。
- 前記バインダーが、シロキサン結合を含んでいることを特徴とする、請求項5に記載の親水性シリカ多孔質膜。
- 空隙を有していることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の親水性シリカ多孔質膜。
- 前記基材の近傍の空隙率が、表面近傍の空隙率よりも大きいことを特徴とする、請求項7に記載の親水性シリカ多孔質膜。
- 前記基材がポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の親水性シリカ多孔質膜。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の親水性シリカ多孔質膜を有することを特徴とする、光学部材。
- 前記光学部材がカメラ用カバーであることを特徴とする、請求項10に記載の光学部材。
- 前記光学部材が光学フィルムであることを特徴とする、請求項10に記載の光学部材。
- 請求項10に記載の光学部材を有することを特徴とする、光学機器。
- 前記光学機器が監視カメラであることを特徴とする、請求項13に記載の光学機器。
- 前記光学機器がディスプレイであることを特徴とする、請求項13に記載の光学機器。
- 基材の上に二酸化ケイ素からなる鎖状粒子を含む分散液を塗布する塗工工程と、
前記分散液の塗膜を乾燥させる乾燥工程と、
を含む、膜厚が350nm以上900nm以下の親水性シリカ多孔質膜の製造方法であって、
前記分散液が、2級水酸基を有する炭素数が5または6のグリコールエーテルおよび2級水酸基を有する炭素数が4のヒドロキシ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
前記乾燥工程が、前記化合物を0.5mg/cm3以上2.0mg/cm3以下の範囲で親水性シリカ多孔質膜が含むように行われることを特徴とする、
親水性シリカ多孔質膜の製造方法。 - 前記分散液がアルコキシシランの加水分解縮合物をさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の親水性シリカ多孔質膜の製造方法。
- 前記アルコキシシランの加水分解縮合物がシロキサン結合を含み、前記分散液中の前記アルコキシシランの加水分解縮合物の含有量が、前記二酸化ケイ素からなる粒子に対してケイ素原子に換算して3wt%以上15wt%以下であることを特徴とする、請求項17に記載の親水性シリカ多孔質膜の製造方法。
- 前記二酸化ケイ素からなる鎖状粒子が、平均粒子径が10nm以上50nm以下の二酸化ケイ素の中実粒子からなる鎖状粒子であることを特徴とする、請求項16から18のいずれか1項に記載の親水性シリカ多孔質膜。
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JP2018108443A JP2019211662A (ja) | 2018-06-06 | 2018-06-06 | 親水性シリカ多孔質膜、光学部材、および光学機器 |
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JP2019211662A true JP2019211662A (ja) | 2019-12-12 |
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ID=68845170
Family Applications (1)
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JP2018108443A Pending JP2019211662A (ja) | 2018-06-06 | 2018-06-06 | 親水性シリカ多孔質膜、光学部材、および光学機器 |
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JP (1) | JP2019211662A (ja) |
-
2018
- 2018-06-06 JP JP2018108443A patent/JP2019211662A/ja active Pending
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