JP2019210346A - 熱可塑性エラストマー及びその成形体 - Google Patents

熱可塑性エラストマー及びその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】架橋剤を用いて架橋される動的架橋型熱可塑性エラストマー及びその成形体において、ゴム弾性を保持しつつ臭気が低減された熱可塑性エラストマー及びその成形体を提供する。【解決手段】下記成分(A)〜(D)を含む混合物を、下記成分(E)の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマーであって、該混合物中の成分(A)100質量部に対する成分(B)の割合が12〜200質量部で、成分(A)と成分(B)と成分(C)の合計100質量部に対する成分(D)の割合が0.05〜3質量部である熱可塑性エラストマー。成分(A):エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン系共重合体ゴム成分(B):鉱物油系ゴム用軟化剤成分(C):ポリプロピレン系樹脂成分(D):2以上のビニル基を有するポリジメチルシロキサンからなる架橋助剤成分(E):有機過酸化物【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー及びその成形体に関し、より詳細には、低臭気化した動的架橋型熱可塑性エラストマー及びその成形体に関する。
従来より、熱可塑性エラストマーは加硫工程が不要であり、通常の熱可塑性樹脂の成形機で加工が可能であるという特徴をいかして、自動車部品、家電部品、雑貨など広い分野の用途に使用されている。代表的なオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物としては、例えば、特許文献1に開示されている。
熱可塑性エラストマーを有機過酸化物などの架橋剤の存在下に動的架橋するにより、熱可塑性エラストマー中のゴムに加硫ゴムの機能を付与し、ゴム弾性を発現させることができるが、この動的架橋には化学的な反応を伴うことから、組成物そのものやその組成物を成形して得られる成形体に臭気が発生する問題があった。また、架橋剤と共に併用される共架橋剤としての二官能以上の多官能化合物に起因して臭気が発生する場合もある。発生した臭気は、不快な臭いとして残り、自動車内装材などの密閉空間で使用される製品にあっては、特に不快感を増す要因となっていた。
特許文献2には、上記の臭気の問題を解決する方法として、特定の臭気中和剤を配合する技術が開示されているが、その効果は十分なものではなかった。
特開昭48−26838号公報 特開2008−163098号公報
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、架橋剤を用いて架橋される動的架橋型熱可塑性エラストマー及びその成形体において、ゴム弾性を保持しつつ臭気が低減された熱可塑性エラストマー及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、臭気を低減した熱可塑性エラストマーとその成形体を得るべく鋭意検討した結果、架橋助剤として、ある特定の構造を持つシリコーンオイルを特定量配合することで、臭気が低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は以下の[1]〜[4]に存する。
[1] 下記成分(A)〜(D)を含む混合物を、下記成分(E)の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマーであって、該混合物中の成分(A)100質量部に対する成分(B)の割合が12〜200質量部で、成分(A)と成分(B)と成分(C)の合計100質量部に対する成分(D)の割合が0.05〜3質量部である熱可塑性エラストマー。
成分(A):エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン系共重合体ゴム
成分(B):鉱物油系ゴム用軟化剤
成分(C):ポリプロピレン系樹脂
成分(D):2以上のビニル基を有するポリジメチルシロキサンからなる架橋助剤
成分(E):有機過酸化物
[2] 前記成分(C)が、ポリプロピレン及び/またはプロピレン・α−オレフィン共重合体である[1]に記載の熱可塑性エラストマー。
[3] 前記成分(D)が、下記一般式(1)で表される、ビニル基が両末端及び/又はポリマー鎖中のSi原子に結合しているポリジメチルシロキサンである[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー。
RMeSiO−(RMeSiO)a−(MeSiO)b−SiMeR (1)
(但し、Rはメチル基又はビニル基を表し、aは0〜10の整数、bは0〜300の整数であり、Meはメチル基を表す。なお、複数のRは同一であっても異なるものであってもよい。)
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマーよりなる成形体。
本発明によれば、柔軟性を持ちゴム弾性を有しながら、臭気が低減された熱可塑性エラストマー及びその成形体を得ることができる。これによって、比較的密閉度の高い空間で使用される環境下において、特に自動車内装用途において、本発明の熱可塑性エラストマー及びその成形体を適用することで、臭気等を低減するための添加剤や処理を不要とすることができ、経済的メリットも期待できる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[熱可塑性エラストマー]
本発明の熱可塑性エラストマーは、下記成分(A)〜(D)を含む混合物を、下記成分(E)の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマーであって、該混合物中の成分(A)100質量部に対する成分(B)の割合が12〜200質量部で、成分(A)と成分(B)と成分(C)の合計100質量部に対する成分(D)の割合が0.05〜3質量部であることを特徴とする。
成分(A):エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン系共重合体ゴム
成分(B):鉱物油系ゴム用軟化剤
成分(C):ポリプロピレン系樹脂
成分(D):2以上のビニル基を有するポリジメチルシロキサンからなる架橋助剤
成分(E):有機過酸化物
以下、各成分について詳細に説明する。
<成分(A)>
成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、共重合成分としてエチレンとα−オレフィンと非共役ジエン化合物とを含有する共重合体である。エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムには、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物(以下、「油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム」と称することもある。)である油展タイプのものと、炭化水素系ゴム用軟化剤を含まない非油展タイプのものがあり、本実施形態では油展タイプの共重合体ゴムを意図しているが、低油展タイプあるいは非油展タイプのものも好適に用いることができる。すなわち、本発明において、成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、油展タイプと非油展タイプのいずれでも使用可能であり、非油展タイプのもの又は油展タイプのものの1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよく、油展タイプの1種又は2種以上と非油展タイプの1種又は2種以上とを任意の組み合わせ及び比率で用いることもできる。
なお、ここで、成分(A)が油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムである場合、この油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムに含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤としての鉱物油系ゴム用軟化剤は、成分(B)としての鉱物油系ゴム用軟化剤に含まれるものである。
成分(A)中のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜8のα−オレフィンが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテンが好ましく、より好ましくはプロピレン、1−ブテンである。なお、α−オレフィンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
成分(A)中の非共役ジエン化合物としては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロへキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロオクタジエン、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビニリデンノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)等のエチリデンノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)等のメチレンノルボルネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性等の観点から、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニリデンノルボルネンが好ましく、より好ましくはジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ビニリデンノルボルネンである。なお、非共役ジエン化合物は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの具体例としては、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体ゴム等のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)や、エチレン・1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムなどが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。なお、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中のエチレン単位の含有量は、特に限定されないが、50〜90質量%が好ましく、より好ましくは55〜85質量%であり、さらに好ましくは60〜80質量%である。エチレン単位の含有量が上記好ましい範囲内であると、機械的強度やゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマーが得られ易い傾向にある。
また、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中のα−オレフィン単位の含有量は、特に限定されないが、10〜50質量%が好ましく、より好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。α−オレフィン単位の含有量が上記好ましい範囲内であると、機械的強度、適度な柔軟性、ゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマーが得られ易い傾向にある。
さらに、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中の非共役ジエン単位の含有量は、特に限定されないが、0.5〜30質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは2〜10質量%である。非共役ジエン単位の含有量が上記好ましい範囲内であると、架橋性や成形性の調整が容易となり、機械的強度やゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマーが得られ易い傾向にある。
なお、成分(A)の各構成単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
本発明において、成分(A)としては、特に、エチレン単位の含有量が55〜75質量%であり、プロピレン単位の含有量が15〜40質量%であり、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、及びビニリデンノルボルネンよりなる群から選択される少なくとも1種の非共役ジエン単位の含有量が1〜10質量%のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム共重合体が好ましい。
なお、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)等の成分(A)の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が適用することができる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等でEPDMを製造することができる。ここで、チーグラー・ナッタ系触媒は、チタン化合物やバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒であり、メタロセン系錯体触媒は、チタン、ジルコニウム等の遷移金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒とからなる高活性の重合触媒である。一般的には、主に脂肪族炭化水素を溶媒とした溶液重合法が採用されており、一部ではモノマーを主溶剤としたスラリー重合法も採用されている。また、モノマーガス中で分散剤として種々の不活性材料(例えば、カーボンブラック)を用いて重合反応を進める気相重合法も工業化されている。溶液重合法による合成は、気相重合法と異なり、ポリマー中にカーボンブラック等を含まないためブルームアウトの抑制に優れる。さらに、メタロセン錯体触媒を用いるとブルームアウトの抑制効果が一層良好な結果となる。一方、気相重合法による合成は、溶液重合法やスラリー重合法より高分子量のポリマーを合成でき、その結果、ムーニー粘度を高くすることができ、耐油性、圧縮永久歪みの向上に有効である。
成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムのゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC法)によるポリプロピレン換算の質量平均分子量は、特に限定されないが、100,000以上が好ましく、より好ましくは200,000以上であり、さらに好ましくは300,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは900,000以下であり、さらに好ましくは800,000以下である。成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの質量平均分子量が上記好ましい範囲内であると、成形性や加工性等が向上し、また、成分(B)の鉱物油系ゴム用軟化剤のブリードアウトが抑制され易くなる傾向にある。
なお、本明細書において、成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムのGPC法に基づくポリプロピレン換算の質量平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
機器 :Waters 150C
カラム :Shodex AD806MS×3(8.0mm内径×300mm長さ)
検出器 :IR(分散型、3.42μm)
溶媒 :ODCB(o−ジクロロベンゼン)
温度 :140℃
流速 :1.0mL/分
注入量 :200μL
濃度 :10mg/mL
較正試料:多分散標準ポリエチレン
較正法 :Mark−Houwink式を用いてポリプロピレン換算
成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの密度は、特に限定されないが、0.850g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.860g/cm以上であり、一方、0.900g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.890g/cm以下である。成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの密度が上記好ましい数範囲内であると、加工性、成形性、柔軟性等に優れる熱可塑性エラストマーが得られ易い傾向にある。なお、かかる密度は、JIS K7112:1999に基づいて測定することができる。
成分(A)の非油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(油展前エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム)のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は特に限定されないが、好ましくは15〜400、より好ましくは30〜300で、油展エチレン・α−オレフィン・共役ジエン共重合体ゴム)のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、特に限定されないが、好ましくは15〜100、より好ましくは30〜80である。成分(A)のムーニー粘度が、上記下限値以上であると得られる成形体の外観を良好にする観点から好ましく、また、上記上限値以下であると成形性、低温耐衝撃性の観点から好ましい。
本発明において、成分(A)の油展前エチレン・α−オレフィン・共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4、125℃)は特開平1−103639号公報に記載されているように以下の方法により算出されるものである。即ち、以下のMLを実測し、ML(成分(A)のムーニー粘度(ML1+4、125℃))を計算値として求めることができる。
計算式:log(ML/ML)=0.0066(ΔPHR)
ML:油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの油展前ムーニー粘度
ML:油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度
ΔPHR:エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム100質量部当たりの油展量
前述の通り、成分(A)として油展タイプのエチレン・α−オレフィン・共役ジエン共重合体を用いることもできる。油展エチレン・α−オレフィン・共役ジエン共重合体において、炭化水素系ゴム用軟化剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを軟化させ、柔軟性と弾性を増加させるとともに、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性や流動性を向上させる等の目的のために使用される。
油展エチレン・α−オレフィン・共役ジエン共重合体ゴムに用いる炭化水素系ゴム用軟化剤としては、例えば鉱物油系ゴム用軟化剤、合成樹脂系ゴム用軟化剤等が挙げられ、これらの中でも、他の成分との親和性等の観点から、鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。鉱物油系ゴム用軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子に対し、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50質量%以上のものはパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30〜45質量%のものはナフテン系オイル、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35質量%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中でも、成分(A)の油展エチレン・α−オレフィン・共役ジエン共重合体ゴムの炭化水素系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系ゴム用軟化剤(パラフィン系オイル)が好ましい。なお、炭化水素系ゴム用軟化剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることがきる。
成分(A)の油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムに用いるパラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常20cSt(センチストークス)以上、好ましくは50cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものである。また、流動点は通常−40℃以上、好ましくは−30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。また、流動点は、通常−40℃以上、好ましくは−30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。さらに、引火点(COC)は、通常200℃以上、好ましくは250℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
成分(A)として油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを用いる際の、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤との含有比率は、特に限定されないが、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対し、炭化水素系ゴム用軟化剤の含有量が、通常10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上であり、一方、通常、200質量部以下であり、好ましくは160質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下である。
油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを調製する方法(油展方法)は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。油展方法としては、例えば、ミキシングロールやバンバリーミキサーを用い、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤を機械的に混練して油展する方法、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムに所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤を添加し、その後スチームストリッピング等の方法により脱溶媒する方法、クラム状のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤の混合物をヘンシェルミキサー等で撹拌して含浸させる方法等が挙げられる。高分子量の油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを調製する観点からは、成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの重合反応溶液又は懸濁液中に、所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤を添加した後、溶媒を除去する方法が好ましい。
なお、成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとしては、各種グレードのものが国内外のメーカから数多く市販されており、その市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、JSR社製のJSR EPR、三井化学社製の三井EPT、住友化学社製のエスプレン(登録商標)、ARLANXEO社製のKeltan(登録商標)等が挙げられる。
<成分(B)>
本発明の熱可塑性エラストマーは、柔軟性や弾性を増加させるとともに、加工性や流動性を向上させる観点から、成分(B)として鉱物油系ゴム用軟化剤を含有する。なお、この成分(B)には、上述した成分(A)として油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを使用する際、その中に鉱物油系ゴム用軟化剤が含まれる場合、成分(A)としての油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとは別に成分(B)として鉱物油系ゴム用軟化剤を別添加してもよい。この場合、別添加する鉱物油系ゴム用軟化剤は、成分(A)の油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中の鉱物油系ゴム用軟化剤と同一、同種、異種の鉱物油系ゴム用軟化剤のいずれでも用いることができる。成分(C)〜成分(E)に鉱物油系ゴム用軟化剤が含まれる場合についても同様である。
鉱物油系ゴム用軟化剤は、炭化水素系ゴム用軟化剤の中でも特に他の成分との親和性が高いため、成分(B)として好ましい。
鉱物油系ゴム用軟化剤は、前述の通り、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子に対し、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50質量%以上のものはパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30〜45質量%のものはナフテン系オイル、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35質量%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中でも、鉱物油系ゴム用軟化剤としては、常温(23±2℃)で液体である液状鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましく、常温で液体である液状パラフィン系オイルがより好ましい。鉱物油系ゴム用軟化剤として液状鉱物油系ゴム用軟化剤を用いることで、本発明の動的架橋型熱可塑性エラストマーの柔軟性や弾性を増加させることができ、また加工性や流動性が飛躍的に向上する傾向にある。鉱物油系ゴム用軟化剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることがきる。
パラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常20cSt(センチストークス)以上、好ましくは50cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものである。また、流動点は通常−40℃以上、好ましくは−30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。また、流動点は、通常−40℃以上、好ましくは−30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。さらに、引火点(COC)は、通常200℃以上、好ましくは250℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
なお、成分(A)として油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを使用する際にも、成分(B)として鉱物油系ゴム用軟化剤を別添することにより、成分(B)の鉱物油系ゴム用軟化剤含有割合を油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中の炭化水素系ゴム用軟化剤の含有割合に依存せずに、任意に調整することが可能である。
成分(B)の鉱物油系ゴム用軟化剤の使用量は、成分(A)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して12〜200質量部であり、好ましくは20〜180重量である。成分(B)が成分(a)の100質量部に対して12質量部に満たない添加量の場合、柔軟性に欠け流動性が劣り満足な成形性が得られず、一方200質量部を超える添加量においてはブリードする可能性が高い。
なお、ここで、成分(B)の添加量とは、成分(A)として鉱物油系ゴム用軟化剤を含む油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを用いた場合、成分(A)中の鉱物油系ゴム用軟化剤と成分(A)とは別添される成分(B)としての鉱物油系ゴム用軟化剤との合計の添加量であり、成分(C)〜(E)中に鉱物油系ゴム用軟化剤が含まれる場合は、当該鉱物油系ゴム用軟化剤をも含む合計の添加量である。
<成分(C)>
成分(C)のポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンから誘導される繰り返し単位を含有する結晶性重合体である。ポリプロピレン系樹脂の中では、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体が好ましく、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。ここで、ホモポリプロピレンはプロピレンの単独重合体である。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、プロピレンとα−オレフィンがランダムに重合した共重合体である。プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、第一セグメント及び第二セグメントからなり、第一セグメントはプロピレン単独重合のホモポリプロピレン部であり、第二セグメントはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体部であるブロック共重合体として分散相を形成した構造からなる。プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の第一セグメントとして、第二セグメントとα−オレフィン単位含有量の異なるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いてもよい。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体中のプロピレン単位の含有量は55モル%以上が望ましく、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体においては、分散相成分の含有量はプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体中の5〜30質量%が望ましい。なお、成分(C)中の各構成単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
プロピレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィンは、エチレンを含む広義のα−オレフィン(ただし、プロピレンを除く)をさし、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも入手が容易の観点からエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好ましい。
なお、α−オレフィンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(JIS K7210(1999)、230℃、21.2N荷重)は、通常0.05〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分である。メルトフローレートが0.05g/10分未満のものを用いた場合は、得られる熱可塑性エラストマーの成形性が悪化して外観不良が生じやすく、200g/10分を超えるものを用いた場合は、得られる熱可塑性エラストマーの機械的特性、特に引張強度が低下する傾向となる。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂は1種のみを用いてもよく、構成単位の種類や組成、物性等の異なるものを2種以上用いてもよい。
<成分(D)>
本発明に用いられる架橋助剤(D)である2以上のビニル基を有するポリジメチルシロキサンは、両末端及び/又はポリマー鎖中のSi原子にビニル基が結合したオイル状のものが好ましく、特に限定されないが、下記一般式(1)で表されるものが好ましく用いられる。
RMeSiO−(RMeSiO)a−(MeSiO)b−SiMeR (1)
(但し、Rはメチル基又はビニル基を表し、aは0〜10の整数、bは0〜300の整数であり、Meはメチル基を表す。なお、複数のRは同一であっても異なるものであってもよい。)
成分(D)に含まれる2以上のビニル基は、成分(E)による成分(A)の部分架橋を促進する成分であり、成分(D)のポリジメチルシロキサンに含まれるビニル基の数は、2〜10であることが好ましい。成分(D)のポリジメチルシロキサンに含まれるビニル基が10より多いと分子内での自己架橋が起きやすくなり、好ましくない。また、成分(D)のシロキサンの重合度、即ち、一般式(1)のaとbと両末端のシロキサンの合計の数は、2〜300が好ましく、特に5〜100が好ましい。シロキサンの重合度が300を超えると他の成分との相溶性が著しく劣ることに成り、好ましくない。
成分(D)のポリジメチルシロキサンとしては、両末端にビニル基を有するもの、ポリマー鎖中のSi原子に結合して側鎖としてビニル基を有するもの、これらの双方にビニル基を有するものが挙げられ、好ましくは、下記式(1a)〜(1c)に示すようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、以下において、Viはビニル基を、Meはメチル基を示す。
ViMeSiO−(MeSiO)n−SiMeVi(n=0〜300)
…(1a)
MeSiO−(MeViSiO)m−(MeSiO)p−SiMe(m=2〜10、p=0〜298) …(1b)
ViMeSiO−(MeViSiO)q−(MeSiO)r−SiMeVi(q=1〜10、r=0〜299) …(1c)
成分(D)のポリジメチルシロキサンとしては、より具体的には、以下のものが例示される。
ViMeSiO−(MeSiO)10−SiMeVi
ViMeSiO−(MeSiO)20−SiMeVi
ViMeSiO−(MeSiO)60−SiMeVi
ViMeSiO−(MeSiO)100−SiMeVi
ViMeSiO−(MeSiO)200−SiMeVi
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)10−SiMe
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)20−SiMe
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)60−SiMe
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)10−SiMe
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)20−SiMe
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)60−SiMe
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)10−SiMe
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)20−SiMe
MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)60−SiMe
ViMeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)10−SiMeVi
ViMeSiO−(MeViSiO)(MeSiO)20−SiMeVi
ViMeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)60−SiMeVi
なお、上記例示組成式において、前述の式(1a)〜(1c)におけるm、n、p、q、rが前記範囲であるものを同様に好適に用いることができる。
なお、ビニル基の代わりに、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等を有するポリシロキサンも適用できるが、工業的にはビニル基が最適である。また、メチル基の一部にエチル基、ブチル基、フェニル基等を含有するポリシロキサンも適用できるが、工業的にはメチル基が最適である。
成分(D)のポリジメチルシロキサンは、粘度が5〜2000cSt、特に10〜1000cStであることが好ましい。ポリジメチルシロキサンの粘度が上記下限未満であると揮発性が高くなり、上記上限を超えると相溶性が低下する傾向にある。なお、本発明において、ポリジメチルシロキサンの粘度とは粘度はオストワルド式動粘度測定器により25℃で測定された値である。
成分(D)のポリジメチルシロキサンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
成分(D)の架橋助剤の添加量は、成分(A)と(B)と(C)の合計量100質量部に対して、0.05〜3質量部であり、好ましくは0.1〜2質量部である。成分(D)の使用量が0.05質量部未満では架橋助剤としての効果を十分に得ることができず、3質量部を超えて配合しても、ゴム弾性が劣り添加量に見合う効果の向上は得られない。
<成分(E)>
本発明に用いられる成分(E)の有機過酸化物は、動的熱処理において、各成分を含有する混合物中で上述した成分(A)を部分的に架橋させるものであり、これにより動的架橋型熱可塑性エラストマーを得ることができる。なお、有機過酸化物は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
有機過酸化物としては、芳香族系もしくは脂肪族系のいずれも使用でき、単一の過酸化物でも2種以上の過酸化物の混合物でもよい。具体的には、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類、アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類等が用いられる。この中では、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。
成分(E)有機過酸化物の添加量は、成分(A)と成分(B)と成分(C)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05〜3.0質量部であり、より好ましくは0.07〜2.0質量部である。成分(E)の使用量が上記下限未満では、架橋反応の効果が小さく、上記上限を超えると架橋反応の制御が困難になりやすい。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマーには、必要に応じて、安定剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、着色剤、充填材等の各種添加剤や必須成分以外の熱可塑性樹脂やゴムを配合してもよい。
特に本発明の熱可塑性エラストマーには、安定剤として酸化防止剤を添加しておくことが好ましい。
酸化防止剤として、例えばモノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、フェニレンジアミン系のものが挙げられる。これらの中では、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の使用割合は、成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部である。この添加量が0.01質量部未満では酸化防止剤の添加効果を十分に得ることができず、また5質量部を超えても添加量の増加に見合う向上効果を得ることができない。
充填材としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる。
必須成分以外の熱可塑性樹脂としては、例えばポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、生分解性樹脂、植物由来原料樹脂などを挙げることができる。
任意のゴムとしては、例えばポリブタジエン、スチレン系共重合体ゴムなどを挙げることができる。
<熱可塑性エラストマーの製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマーは、上記成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の各成分、さらにはその他の樹脂成分や各種添加剤等を、通常の押出機やバンバリーミキサー、ミキシングロール、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブラベンダー等を用いて常法で混合又は混練或いは溶融混練することで製造することができる。これらの中でも、押出機、特に二軸押出機を用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマーを押出機等で混練して製造する際には、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃に加熱した状態で溶融混練することが好ましい。なお、動的熱処理を行う際の処理時間は、特に限定されないが、生産性等を考慮すると、通常0.1〜30分である。
ここで、「動的熱処理」とは、上記成分(E)の存在下、溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うことが好ましく、二軸押出機を用いる場合には、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うことがより好ましい。このように上記成分(E)の存在下で溶融混練する動的熱処理を行うことにより、動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
[成形体]
本発明の熱可塑性エラストマーを射出成形機、単軸押出成形機、二軸押出成形機、圧縮成形機、カレンダー加工機等の成形機で成形することにより、本発明の成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、各種自動車部材をはじめ、建築部材、雑貨部材等の多くに適用出来るが、なかでもゴム弾性を有しながら臭気の低減化が強く望まれる自動車内装用途に好適であり、本発明の効果が充分に発揮される。
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原材料]
以下の実施例・比較例で使用した原材料は以下の通りである。
<成分(A)>
A−1:エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴム(ムーニー粘度(ML1+4、125℃):61、エチレン単位含有量:65質量%、エチリデンノルボルネン単位含有量:4.6質量%)/三井化学社製 三井EPT3092M
<成分(B)>
B−1:パラフィン系ゴム用軟化剤(40℃の動粘度:95.5cSt、流動点:−15℃、引火点:272℃)/出光興産株式会社製 ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW90
<成分(C)>
C−1:プロピレン単独重合体(MFR(JIS K7210(1999)):11g/10分(230℃、21.2N)、プロピレン単位含有量:100質量%)/日本ポリプロ株式会社製 ノバテック(登録商標)PP MA3
C−2:プロピレン・エチレンランダム共重合体(MFR(JIS K7210(1999)):30g/10分(230℃、21.2N)、プロピレン単位含有量:98質量%)/日本ポリプロ株式会社製 ノバテック(登録商標)PP MG03BD
C−3:プロピレン・エチレンブロック共重合体(MFR(JIS K7210(1999)):0.7g/10分(230℃、21.2N)、プロピレン単位含有量:79質量%)/三菱ケミカル株式会社製 Tefabloc 5013
<成分(D)>
D−1:ビニル基を両末端に有するポリジメチルシロキサン(粘度:10cSt、平均組成式:ViMeSiO−(MeSiO)10−SiMeViで表される。)
D−2:ビニル基を両末端に有するポリジメチルポリシロキサン(粘度:100cSt、平均組成式:ViMeSiO−(MeSiO)70−SiMeViで表される。)
D−3:ビニル基を両末端に有するポリジメチルシロキサン(粘度:400cSt、平均組成式:ViMeSiO−(MeSiO)150−SiMeViで表される。)
D−4:ビニル基を両末端に有するポリジメチルシロキサン(粘度:1000cSt、平均組成式:ViMeSiO−(MeSiO)220−SiMeViで表される。)
D−5:ビニル基を側鎖として有するポリジメチルシロキサン(粘度:15cSt、平均組成式:MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)−SiMeで表される。)
D−6:ビニル基を側鎖として有するポリジメチルシロキサン(粘度:20cSt、平均組成式:MeSiO−(MeViSiO)−(MeSiO)14−SiMeで表される。)
<成分(E)>
E−1:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物/化薬アクゾ株式会社製 AD40C
<その他の架橋助剤>
X−1:ジビニルベンゼン(和光純薬工業株式会社製 ジビニルベンゼン55質量%とエチルビニルベンゼン45質量%との混合物)
[評価方法]
以下の実施例・比較例における熱可塑性エラストマーの評価方法は以下の通りである。
(1)メルトフローレート(MFR)の測定
JIS K7210の規格に準拠した方法で測定温度230℃、測定荷重49Nで測定した。
(2)物性の評価
以下の物性の評価には、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)にて、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件で、熱可塑性エラストマーを射出成形して得られたシート(横120mm、縦80mm、肉厚2mm)を使用した。
(2−1) デュロA硬度:JIS K6253準拠(JIS−A)15秒後
(2−2) 引張物性(引張破壊強さ、引張破壊伸び):JIS K6251準拠(JIS−3号ダンベル、引張速度500mm/分)
(2−3) 圧縮永久歪:JIS K6262準拠(70℃、22時間、25%圧縮)
圧縮永久歪は60%以下が好ましい。
(3)臭気テスト
40mmφ押出機により、フライトタイプのスクリューを用い、下記温度条件にて、スクリュー回転数20rpmで、幅25mm×厚み1mmの熱可塑性エラストマーよりなるシートを押出し、水槽を通して冷却し、ベルト状の押出サンプルを得た。
<温度条件>
シリンダーC1:170℃
C2:180℃
C3:190℃
C4:190℃
ダイス :190℃
押出し方向にサンプルを50cmの長さに切断し、チャック付きポリエチレン製袋(チャック下170mm、幅120mm、厚み0.044mm)に入れて封入した。これを80℃で1時間放置した後、室温に冷却後、無造作に選んだ5人のモニター(モニター1〜5)により袋内の臭気とベルト状のサンプルに鼻を近づけた際の臭気を、以下の判断基準により評価を行った。
<臭気判断基準>
0 : 無臭
1.0: やや感知できるレベル
2.0 : 特に不快に感じない程度に臭気を感じる
3.0 : 臭気を検知・認知できる
4.0 : 臭気が強く不快に感じる
5.0 : 臭気が強烈に不快に感じる
なお、1.5は1と2の中間を示し、3.5は3と4の中間を示す。
[実施例1〜9、比較例1〜2]
表−1に示す配合量に対して、さらに安定剤としてテトラキス[メチレン−3−(3‘、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製 イルガノックス1010)を0.1質量部混合してヘンシェルミキサーで混合し、重量式フィーダーを用いてJSW製二軸押出機TEX30によりシリンダー温度:200℃、スクリュー回転数:400rpmで溶融混練、押出しを行い、熱可塑性エラストマーを得た。
得られた熱可塑性エラストマーについて、前述の評価を行い結果を表−1に示した。
Figure 2019210346
表−1より、成分(D)の架橋助剤として2以上のビニル基を有するポリジメチルシロキサンを用いた本発明の熱可塑性エラストマーであれば、架橋助剤としてジビニルベンゼンを用いた比較例1に比べて臭気を大幅に低減できることが分かる。
なお、比較例2は、成分(D)の使用量が多過ぎるものであり、臭気低減効果はむしろ損なわれる傾向にある一方で、デュロA硬度が高く、引張破壊強さ、引張破壊伸びが低く、また、圧縮永久歪が大きくゴム弾性が低下している。

Claims (4)

  1. 下記成分(A)〜(D)を含む混合物を、下記成分(E)の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマーであって、該混合物中の成分(A)100質量部に対する成分(B)の割合が12〜200質量部で、成分(A)と成分(B)と成分(C)の合計100質量部に対する成分(D)の割合が0.05〜3質量部である熱可塑性エラストマー。
    成分(A):エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン系共重合体ゴム
    成分(B):鉱物油系ゴム用軟化剤
    成分(C):ポリプロピレン系樹脂
    成分(D):2以上のビニル基を有するポリジメチルシロキサンからなる架橋助剤
    成分(E):有機過酸化物
  2. 前記成分(C)が、ポリプロピレン及び/またはプロピレン・α−オレフィン共重合体である請求項1に記載の熱可塑性エラストマー。
  3. 前記成分(D)が、下記一般式(1)で表される、ビニル基が両末端及び/又はポリマー鎖中のSi原子に結合しているポリジメチルシロキサンである請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー。
    RMeSiO−(RMeSiO)a−(MeSiO)b−SiMeR (1)
    (但し、Rはメチル基又はビニル基を表し、aは0〜10の整数、bは0〜300の整数であり、Meはメチル基を表す。なお、複数のRは同一であっても異なるものであってもよい。)
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマーよりなる成形体。
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