[包接化合物]
包接化合物では、ホスト化合物(ホスト又はホスト分子)により形成された空間内に、ゲスト化合物(ゲスト又はゲスト分子)として小分子が取り込まれ、共有結合によらずゲストが安定に存在する。
(ホスト化合物)
本発明におけるホスト化合物としては、下記式(1)で表されるアダマンタン骨格を有する化合物を用いる。
(式中、Zはそれぞれ独立してアレーン環、R1及びR2はそれぞれ独立して置換基、kはそれぞれ独立して1以上の整数、mはそれぞれ独立して0以上の整数、nは0〜14の整数を示す)。
前記式(1)において、Zで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10−16アレーン環が挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14−20アレーン環などが挙げられる。好ましい環縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10−16アレーン環、好ましくは縮合多環式C10−14アレーン環が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環、テルアレーン環などが挙げられる。ビアレーン環としては、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環などのビC6−12アレーン環などが挙げられる。フェニルナフタレン環としては、例えば、1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環などが挙げられる。テルアレーン環としては、例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビC6−10アレーン環などが挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
2つの環Zの種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6−12アレーン環などが好ましく、なかでも、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6−10アレーン環が好ましく、特に、ベンゼン環が好ましい。
なお、アダマンタン骨格の2位の炭素原子(又はメチレン基)に結合する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがベンゼン環の場合、いずれの位置であってもよく、環Zがナフタレン環の場合、1位又は2位のいずれかの位置であってもよく、環Zがビフェニル環の場合、2位、3位、4位のいずれかの位置であってもよい。
ヒドロキシル基の置換数kは、環Zの種類に応じて選択してもよく、例えば、1〜4程度の整数から選択でき、好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1又は2、特に1が好ましい。また、2つの置換数kの値は同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。
また、ヒドロキシル基の置換位置は、特に制限されず、例えば、Zがベンゼン環である場合、アダマンタン骨格の2位に置換する環Z(フェニル基)に対して、2〜6位のいずれの位置であってもよく、好ましくは2〜4位、さらに好ましくは2位、4位であり、特に、4位が好ましい。また、環Zがナフタレン環である場合、アダマンタン骨格の2位の炭素原子に置換する環Z、すなわち、1−ナフチル基又は2−ナフチル基に対して、ヒドロキシル基が5〜8位の位置に置換することが多く、特に、kが1である場合、1−ナフチル基に対して5位(1,5位の位置関係)又は2−ナフチル基に対して6位(2,6位の位置関係)にヒドロキシル基が置換するのが好ましく、2,6位の位置関係がさらに好ましい。環Zがビフェニル環である場合、アダマンタン骨格の2位の炭素原子に結合するベンゼン環にヒドロキシル基が置換することが多く、特に、kが1である場合、3−ビフェニリル基に対して4位(3,4位の位置関係)又は6位(3,6位の位置関係)にヒドロキシル基が置換するのが好ましく、3,6位の位置関係がさらに好ましい。
置換基R1の種類は、ゲスト化合物の包接を損なわない限り特に制限されず、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよい炭化水素基、基−OR10、基−SR10、基−COOR10、基−COR10、基−CON(R10)2(各式中、R10はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などを示す。)などの広い範囲から選択できる。前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
代表的なR1としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基などが挙げられる。
なお、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基は、アルキル基、ハロゲン原子などに置換されていてもよく、例えば、アルキルフェニル基などを形成してもよい。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基などが挙げられる。
シクロアルコキシ基としては、例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルコキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基などが挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基などの前記アルコキシ基に対応するC1−10アルキルチオ基などが挙げられる。シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基などが挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基などが挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基などが挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル基などのC1−6アシル基などが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基などが挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1−4アルキル−カルボニル)アミノ基などが挙げられる。
置換基R1を有する場合、好ましい置換基R1としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基が挙げられ;より好ましくはアルキル基、アリール基、又は、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基などのアルコキシ基が挙げられ;さらに好ましくはアルキル基又はアリール基である。特に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、又はC6−12アリール基であり、なかでも、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、又はフェニル基などのC6−10アリール基である。
置換基R1の置換数mは、環Zの種類や前記置換数kに応じて適宜選択してもよく、例えば、0〜4程度の整数から選択でき、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0である。2つの異なる環Zにおける2つの置換数mは、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である。2つの異なる環Zに置換するR1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、mが2以上である場合、同一の環Zに置換する2以上のR1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
置換基R2としては、例えば、置換されていてもよい炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基又は置換アミノ基などが挙げられる。
前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。また、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、例えば、前記R1の項に例示した基とそれぞれ同様の基が挙げられる。
また、これらの炭化水素基は置換(又は修飾)されていてもよく、代表的な置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基(ただし、炭化水素基がアリール基の場合を除く)、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、シアノ基、メチル基などのアルキル基などが挙げられる。これらの置換基は、単独で又は2種以上組み合わせることもできる。また、置換数も特に制限されない。置換された炭化水素基として具体的には、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシイソプロピル基などのヒドロキシアルキル基;カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、3,3−ジカルボキシプロピル基などのモノ又はジカルボキシアルキル基;ブロモメチル基などのハロアルキル基;メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのアルキルフェニル基などが挙げられる。
R2で表されるアルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子としては、例えば、前記R1の項に例示した基とそれぞれ同様の基が挙げられる。
また、置換アミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基などのモノ又はビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。
これらの置換基R2は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。置換基R2を有する場合、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基又は置換アミノ基であることが多く、好ましい置換基R2としては、アルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子であり、特に、メチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基が好ましい。
R2の置換数nは、例えば、0〜12程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0〜10の整数、0〜8の整数、0〜6の整数、0〜4の整数、0〜3の整数、0〜2の整数であり、さらに好ましくは0又は1であり、特に、0が好ましい。また、nが2以上である場合、2以上のR2の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)で表される化合物として、代表的には、前記式(1)において、Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、kが1又は2、mが0〜2の整数、nが0〜4の整数である化合物が挙げられ、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(ヒドロキシナフチル)アダマンタンなどが挙げられる。
2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタンとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
2,2−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)アダマンタンとしては、例えば、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンなどの2,2−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
2,2−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)アダマンタンとしては、例えば、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンなどの2,2−ビス(C1−6アリール−ヒドロキシフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
2,2−ビス(ヒドロキシナフチル)アダマンタンとしては、例えば、2,2−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)アダマンタン、2,2−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)アダマンタンなどが挙げられる。
これらの前記式(1)で表されるアダマンタン骨格を有する化合物(ホスト化合物)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのうち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンなどの2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタンが好ましい。
これらの前記式(1)で表される化合物は、慣用の方法により合成できる。例えば、2−アダマンタノンなどのアダマンタン骨格の2位にオキソ基を有するアダマンタノン類と;フェノール、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、ビフェニル−2−オール、2−ナフトール、レゾルシノールなどのフェノール類とを;メタンスルホン酸などの酸触媒、及び3−メルカプトプロピオン酸などのチオール類(又は助触媒)の存在下で反応させる方法などにより合成できる。
(ゲスト化合物)
前記包接化合物は、ゲスト化合物として、所定の複素環化合物、すなわち、複数の窒素原子を環の構成原子として含む5又は6員複素環又はその縮合複素環を有する化合物を含んでいる。前記窒素原子は、例えば、塩基性窒素原子などであってもよく、前記窒素原子の数は、例えば、2〜5個、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個、特に2個である。前記5又は6員複素環は、脂肪族性複素環(又は非芳香族性複素環)又は芳香族性複素環のいずれであってもよい。また、前記5又は6員複素環は、脂肪族もしくは芳香族炭化水素環又は他の複素環のいずれの環と縮合して、前記縮合複素環を形成してもよい。
このような複素環化合物(又はゲスト化合物)としては、例えば、ピペラジン類、トリアジン類などの単環式複素環化合物、トリエチレンジアミン(DABCO;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)などの縮合多環式複素環化合物などが挙げられる。ピペラジン類としては、例えば、ピペラジン;N,N’−ジメチルピペラジンなどのN,N’−ジアルキルピペラジン;N−(アミノエチル)ピペラジンなどのN−アミノアルキルピペラジン;1−(2−ジメチルアミノエチル)−4−メチルピペラジンなどのN−ジアルキルアミノエチル−N’−アルキルピペラジンなどが挙げられる。トリアジン類としては、例えば、トリアジン、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンなどが挙げられる。
複素環化合物(又はゲスト化合物)は前記化合物を含んでいてもよいが、下記式(2)で表される化合物を含むのが好ましい。
(式中、R3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノアルキル基、又はトリアジン−アルキル基を示し;R4〜R6は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基はヒドロキシル基を有していてもよく;R3とR4とは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成してもよく;pは0〜3の整数を示し;実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す)。
前記式(2)において、R3で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−6のアルキル基である。
R3で表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基などが例示できる。好ましいシクロアルキル基は、C5−8シクロアルキル基、特にC5−6シクロアルキル基などである。
R3で表されるアリール基としては、単環式又は多環式アリール基であってもよく、多環式アリール基は、完全不飽和のみならず、部分飽和の基であってもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基などのC6−16アリール基などが例示できる。好ましいアリール基は、フェニル基、ナフチル基などのC6−10アリール基である。
R3で表されるアラルキル基(アリールアルキル基)としては、上記アリール基とアルキル基とが結合した基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニル−n−プロピル基、1−フェニル−n−へキシル基、ナフタレン−1−イル−メチル基、ナフタレン−2−イル−エチル基、1−(ナフタレン−2−イル)−n−プロピル基、インデン−1−イル−メチル基などのC6−12アリールC1−6アルキル基などが例示できる。好ましいアラルキル基は、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリールC1−4アルキル基である。
前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基などが例示できる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などのC1−6アルコキシ基などが挙げられる。アシル基としては、例えば、ホルミル基;アセチル基、プロピオニル基などのC1−10アルキル−カルボニル基などが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などのC1−6アルキル基などが挙げられる。
R3で表されるシアノアルキル基としては、例えば、シアノメチル基、シアノエチル基などのシアノC1−6アルキル基が挙げられる。好ましいシアノアルキル基としては、シアノC1−4アルキル基であり、さらに好ましくはシアノC1−2アルキル基であり、特に、シアノエチル基である。
R3で表されるトリアジン−アルキル基において、トリアジンは、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジンなどであってもよく、トリアジン環の炭素原子には、アミノ基、ヒドロキシル基などが置換していてもよい。代表的なトリアジン−アルキル基としては、例えば、4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル−メチル基、4−アミノ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル−メチル基、4,6−ジヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル−メチル基などの1,3,5−トリアジン−2−イル−C1−4アルキル基などが例示できる。好ましいトリアジン−アルキル基は、4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル−C1−2アルキル基である。
R3とR4とが環を形成しない場合、好ましいR3としては、水素原子、C1−4アルキル基、C6−10アリール基、C6−10アリールC1−4アルキル基、シアノC1−3アルキル基、又は1,3,5−トリアジン−2−イル−C1−2アルキル基などであり、通常、水素原子、シアノエチル基などである場合が多い。
R4〜R6で表されるハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
R4〜R6で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(パルミチル基)、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)などの直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキル基などが例示できる。好ましいアルキル基としては、以下、段階的に、直鎖状又は分岐鎖状C1−18アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−12アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基である。
また、R4〜R6で表されるアルキル基、特に、R5又はR6で表されるアルキル基は、ヒドロキシル基を有していてもよい。ヒドロキシル基を有するアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1−20アルキル基などが例示できる。好ましいヒドロキシアルキル基としては、以下、段階的に、ヒドロキシC1−18アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、ヒドロキシC1−12アルキル基、ヒドロキシC1−8アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−4アルキル基であり、さらに好ましくはヒドロキシC1−2アルキル基、最も好ましくはヒドロキシメチル基である。
R4〜R6で表されるシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、前記置換基R3と好ましい態様を含めて同様の基が例示できる。
R4〜R6で表されるアシル基は、水素原子;又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、もしくはヘテロアリール基などの有機基と、カルボニル基とが結合した基であればよい。アシル基としては、例えば、ホルミル基、直鎖状又は分岐鎖状アルキル−カルボニル基、置換基を有していてもよいアルケニル−カルボニル基、アルキニル−カルボニル基、アリール−カルボニル基、ヘテロアリール−カルボニル基などが例示できる。
直鎖状又は分岐鎖状アルキル−カルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、へプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、3−エチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1−メチルペンタデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、13,13−ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15−メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1−メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基、ヘナイコサノイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−26アルキル−カルボニル基などが挙げられる。
置換基を有していてもよいアルケニル−カルボニル基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリルカルボニル基、シンナモイル基などの、置換基を有していてもよいC2−6アルケニル−カルボニル基などが挙げられる。前記置換基としては、アリール基などが挙げられる。
アルキニル−カルボニル基としては、例えば、エチニルカルボニル基、プロピニルカルボニル基などのC2−6アルキニル−カルボニル基などが挙げられる。
アリール−カルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、ビフェニルカルボニル基、アントラニルカルボニル基などのC6−18アリール−カルボニル基などが挙げられる。
ヘテロアリール−カルボニル基としては、例えば、2−ピリジルカルボニル基、チエニルカルボニル基などの非芳香族又は芳香族5〜6員ヘテロアリール−カルボニル基などが挙げられる。
好ましいアシル基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキル−カルボニル基であって、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル−カルボニル基である。
R3とR4とは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成してもよい。前記環は、例えば、4〜12員環程度の範囲から選択してもよく、好ましくは5〜10員環である。
繰り返し数pは0〜3の整数を示し、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0又は1である。
実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示し、通常、R3とR4とが互いに結合して環(複素環)を形成する場合、単結合であってもよく、R3とR4とが環(複素環)を形成しない場合、二重結合である場合が多い。
R3とR4とが環を形成しない場合、好ましいR4としては、水素原子、アルキル基、アリール基が挙げられ、さらに好ましくはアルキル基である。
好ましいR5及び/又はR6としては、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基などが挙げられる。
前記式(2)で表される複素環化合物(ゲスト化合物)として、より具体的には、例えば、下記式(2a)で表される化合物及び/又は下記式(2b)で表される化合物が挙げられる。
(式中、qは0〜5の整数を示し;R3〜R6及び実線と破線との二重線は好ましい態様を含めて前記式(2)に同じ)。
また、前記式(2a)において、R3のより好ましい態様としては、水素原子、シアノエチル基、トリアジン−アルキル基が挙げられ、さらに好ましくは水素原子が挙げられる。
前記式(2a)において、R4のより好ましい態様としては、水素原子、直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキル基、C6−10アリール基が挙げられ、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−12アルキル基であって、なかでも、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基が好ましく、特に直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基が好ましい。貯蔵安定性が重要な用途では、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキル基が好ましく、硬化性が重要な用途では、メチル基が好ましい。特に、貯蔵安定性と硬化性とのバランスに優れる点から、エチル基が最も好ましい。
前記式(2a)において、R5のより好ましい態様としては、水素原子、C1−8アルキル基、ヒドロキシC1−4アルキル基が挙げられ、さらに好ましくは水素原子、C1−6アルキル基であってもよく、なかでも水素原子、C1−4アルキル基が好ましい。貯蔵安定性が重要な用途では、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基が好ましく、硬化性が重要な用途では、水素原子が好ましい。特に、貯蔵安定性と硬化性とのバランスに優れる点から、メチル基などのC1−2アルキル基が最も好ましい。
前記式(2a)において、R6のより好ましい態様としては、水素原子、ヒドロキシC1−4アルキル基が挙げられ、さらに好ましくは水素原子である。
前記式(2a)において、R5及びR6が結合した炭素原子間の結合の種類は、単結合(イミダゾリン化合物)であってもよいが、工業的に入手が容易な点などから、二重結合(イミダゾール化合物)であるのが好ましい。
前記式(2b)において、好ましい繰り返し数qは、0〜4の整数であって、さらに好ましくは0〜3の整数であり、特に0〜2の整数が好ましい。貯蔵安定性と硬化性とのバランスが特に優れる点から、qが1又は2、なかでも、qが1であるのが最も好ましい。
式(2a)で表される化合物として代表的にはイミダゾリン化合物、イミダゾール化合物が挙げられ、イミダゾリン化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール;1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−n−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾールなどの1−アルキルイミダゾール;2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−n−ブチルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどの2−アルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどの2−アリールイミダゾール;4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾールなどの4−アルキルイミダゾール;1,2−ジメチルイミダゾールなどの1,2−ジアルキルイミダゾール;2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの2,4−ジアルキルイミダゾール;2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどの2−アリール−4−アルキルイミダゾール;1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどの1−アラルキル−2−アルキルイミダゾール;1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどの1−アラルキル−2−アリールイミダゾール;1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールなどの1−シアノエチル−2−アルキルイミダゾール;1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどの1−シアノエチル−2−アリールイミダゾール;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの1−シアノエチル−2,4−ジアルキルイミダゾール;2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどの2−アリール−4−アルキル−5−ヒドロキシアルキルイミダゾール;2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾールなどの2−アリール−4,5−ビス(ヒドロキシアルキル)イミダゾールなどが挙げられる。
これらの式(2a)で表される化合物のうち、通常、イミダゾール化合物がよく利用される。イミダゾール化合物は、R3〜R6のうち少なくとも1つの基が水素原子以外の置換基である場合が多く、好ましくはR3〜R5のうち少なくとも1つの基が水素原子以外の置換基であり、さらに好ましくはR4又はR5のうち少なくとも1つの基が水素原子以外の置換基であり、なかでも、少なくともR4が水素原子以外の置換基であるのが好ましく、特に、貯蔵安定性と硬化性とのバランスに優れる点から、R4及びR5の双方の基が水素原子以外の置換基であるのが最も好ましい。
そのため、好ましいイミダゾール化合物として、具体的には、2−メチルイミダゾールなどの2−C1−4アルキル−イミダゾール;2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの2,4−ジC1−4アルキル−イミダゾールが挙げられる。貯蔵安定性と硬化性とのバランスに優れる点から、2,4−ジC1−3アルキル−イミダゾールが好ましく、特に、2−エチル−4−メチル−イミダゾールなどの2,4−ジC1−2アルキル−イミダゾールが最も好ましい。
式(2b)で表される化合物(二環式アミジン化合物)として代表的には、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、ジアザビシクロノネン(DBN:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)などが挙げられる。
これらの複素環化合物(ゲスト化合物)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの複素環化合物のうち、前記式(2b)で表される化合物が特に好ましい。なかでも、貯蔵安定性と硬化性とのバランスに優れる点から、DBNなどの前記式(2b)において、qが0〜2の整数である化合物が好ましく、qが1又は2である化合物がさらに好ましく、qが1である化合物が最も好ましい。
これらの複素環化合物は、酸、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソシアヌル酸などの有機酸又は塩酸などの無機酸との塩であってもよい。
ゲスト化合物は、上述した環の構成原子として複数の窒素原子を含む5又は6員複素環又はその縮合複素環を有するゲスト化合物(第1のゲスト化合物)に加えて、必ずしも必要ではないが、前記第1のゲスト化合物の範疇に属さない他のゲスト化合物(又は第2のゲスト化合物)を含んでいてもよい。
第2のゲスト化合物としては、特に制限されず、慣用のアミン化合物、例えば、脂肪族アミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類、複素環式アミン類(ただし、第1のゲスト化合物を除く)、変性アミン類などが挙げられ、具体的には、後述する他の硬化剤及び/又は硬化促進剤として例示するアミン系化合物などが挙げられる。これらの第2のゲスト化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
第1のゲスト化合物の割合は、ホスト化合物に包接されたゲスト化合物全体に対して、例えば、10質量%以上、具体的には、30〜100質量%程度の範囲から選択してもよい。好ましい範囲としては、以下、段階的に、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上であり、さらに好ましい範囲としては、90質量%以上、95質量%以上、特に100質量%(実質的に第1のゲスト化合物のみ)であるのが好ましい。なお、第2のゲスト化合物を含む場合、前記割合は、例えば、60〜99質量%、好ましくは80〜95質量%であってもよい。
前記式(2a)及び/又は(2b)で表されるゲスト化合物の割合は、第1のゲスト化合物全体に対して、例えば、10質量%以上、具体的には、30〜100質量%程度の範囲から選択してもよい。好ましい範囲としては、以下、段階的に、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上であり、さらに好ましい範囲としては、90質量%以上、95質量%以上、特に100質量%(実質的に前記式(2a)及び/又は(2b)で表されるゲスト化合物のみ)である。なお、前記式(2a)及び/又は(2b)の範疇に属さない第1のゲスト化合物を含む場合、前記割合は、例えば、60〜99質量%、好ましくは80〜95質量%であってもよい。
また、包接化合物において、ホスト化合物1モルに対するゲスト化合物の割合(又は包接比)は、例えば、0.1〜5モル程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.3〜4モル、0.5〜3モル、0.7〜2.5モル、0.8〜2.2モルであり、さらに好ましくは1〜2モルである。
なお、包接化合物において、フェノール性ヒドロキシル基は塩、例えば、塩基との塩を形成してもよい。本発明において、包接化合物は、包接形態を有する限り、このような塩を形成した化合物も含まれる。
[包接化合物の製造方法]
本発明において、包接化合物は、前記式(1)で表されるホスト化合物と、前記第1のゲスト化合物を含むゲスト化合物とを混合(又は反応)することにより調製でき、生成した包接化合物をろ取などにより回収することで得ることができる。
ホスト化合物及びゲスト化合物のうち、少なくとも一方の成分が混合温度で液体である場合、液体である一方の成分に他方の成分を添加して混合してもよい。例えば、ゲスト化合物が液体である場合、ゲスト化合物に、ホスト化合物を添加してもよい。なお、前記混合温度としては、例えば、常温又は30〜100℃程度、好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃であることが多い。
ホスト化合物とゲスト化合物との混合は、必要により溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒として、代表的には、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなど;エーテル類、例えば、2−メトキシエタノール(又はメチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(又はエチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(又はブチルセロソルブ)などのセロソルブ類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(又はメチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(又はエチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(又はブチルカルビトール)などのカルビトール類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類など;ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノンなどの鎖状ケトン類、イソホロン、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など;エステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどの酢酸エステル類など;エーテルエステル類、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(又はエチルセロソルブアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(又はエチルカルビトールアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど;脂肪族炭化水素類、例えば、ヘプタン、オクタンなど;脂環族炭化水素類、例えば、シクロヘキサンなど;芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレンなど;ハロゲン化炭化水素類、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなど;アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;スルホキシド類、例えば、ジメチルスルホキシドなどが例示できる。
溶媒は、アミド類、スルホキシド類などの非プロトン性極性溶媒であってもよい。これらの溶媒は単独で又は2種以上の混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、通常、メチルエチルケトンなどのケトン類がよく利用される。
ホスト化合物1モルに対するゲスト化合物の混合割合は、例えば、0.5〜5モル、好ましくは1〜4モル、さらに好ましくは2〜3モルである。
混合(又は反応)は、必要に応じて撹拌しながら行ってもよい。また、混合(又は反応)は、加熱下で行ってもよく、混合温度(又は加熱温度)は、例えば、30〜120℃、好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃である。なお、溶媒を用いる場合における混合温度は、溶媒の沸点以下である。また、加熱した場合、必要に応じて冷却し、生成した固体を回収してもよい。また、混合(又は反応)時間は、特に制限されず、例えば、1分〜72時間程度の範囲で行ってもよく、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは20分〜6時間、さらに好ましくは30分〜2時間である。
溶媒を用いる場合、混合(又は反応)終了後、溶媒は、必要に応じて常圧蒸留、減圧蒸留などの慣用の方法で留去してもよい。また、溶媒を含む混合物は、混合に用いた溶媒とは異なる溶媒と混合することにより、包接化合物を析出させてもよい。回収した包接化合物は、必要により洗浄又は乾燥してもよい。乾燥方法としては、減圧乾燥が好ましい。乾燥温度としては、例えば、50〜100℃、好ましくは70〜90℃である。
包接化合物におけるホスト化合物とゲスト化合物との組成比(又は包接比)は、慣用の分析方法、例えば、1H−NMRスペクトルの積分比により容易に決定できる。また、熱重量分析(TG−DTA)により、加熱に伴い、包接化合物から放出されたゲスト化合物の量に基づいて、ホスト化合物とゲスト化合物との組成比を決定することもできる。さらに、包接化合物の構造は、単結晶X線構造解析、粉末X線回折などの手法により決定することもできる。本明細書及び特許請求の範囲において、包接化合物のホスト化合物とゲスト化合物との組成比は、1H−NMRスペクトルにより分析した結果から、最も単純な整数比となるように決定した。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、前記式(1)で表されるホスト化合物が、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)の硬化剤及び/又は硬化促進剤として機能する所定の複素環化合物を安定に包接するためか、エポキシ樹脂と混合しても低温(常温若しくは貯蔵温度)では長時間に亘り安定である。一方、包接化合物は、加熱に伴って前記複素環化合物を放出するためか、所定温度に加熱すると、エポキシ樹脂を迅速に硬化させることができる。また、包接化合物において、ゲスト化合物である複素環化合物が、第二級アミノ基及び/又は第三級アミノ基を有しているためか、エポキシ樹脂の硬化剤として機能するとともに硬化促進剤として機能させることもできる。そのため、本発明の包接化合物は、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)を硬化させるための硬化剤及び/又は硬化促進剤として有効に利用でき、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)と組み合わせて硬化性組成物を調製するのに有用である。
(第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤)
本発明の硬化性組成物は、前記包接化合物(第1の硬化剤及び/又は硬化促進剤ともいう)とエポキシ樹脂とを含んでいればよく、必要により、慣用のエポキシ樹脂の硬化剤及び/又は硬化促進剤(第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤ともいう)を含んでいてもよい。このような硬化剤は、エポキシ樹脂のオキシラン環(又はエポキシ基)と反応してエポキシ樹脂を硬化させる化合物であれば、特に制限はなく、硬化促進剤もエポキシ樹脂の硬化反応を促進する化合物であれば、特に制限されない。このような硬化剤及び/又は硬化促進剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、エステル系化合物、フェノール系化合物、アルコール系化合物、チオール系化合物、エーテル系化合物、チオエーテル系化合物、尿素系化合物、チオ尿素系化合物、ルイス酸系化合物、リン系化合物、酸無水物系化合物、オニウム塩系化合物(又はカチオン重合開始剤)、活性珪素化合物−アルミニウム錯体などが例示できる。
具体的な第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤としては、例えば、以下の化合物などが挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、脂肪族アミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類、複素環式アミン類、変性アミン類などが挙げられる。
脂肪族アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状アルキレンジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類;ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミンなどのN,N−ジアルキルアミノアルキルアミン類;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールジアミンなどの(ポリ)エーテルジアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミンなどのN−アルキル置換アルキレンジアミン類;ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノールなどのアルカノールアミン類;モノ−t−アルキルアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状アルキルアミン類などが挙げられる。
脂環式アミン類としては、例えば、メンセンジアミン;イソホロンジアミン;ジメチルシクロヘキシルアミンなどのジアルキルシクロアルキルアミン類;後述する芳香族アミン類の水添物などが挙げられる。芳香族アミン類の水添物としては、例えば、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどのビス(アミノシクロヘキシル)アルカン類;1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミンなどのシクロヘキサンジアミン;m−キシリレンジアミンの水添物;1,3,5−トリス(アミノメチル)ベンゼンの水添物などが挙げられる。
芳香族アミン類としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン;m−キシリレンジアミン、1,3,5−トリス(アミノメチル)ベンゼンなどのモノ乃至トリ(アミノメチル)ベンゼン類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのモノ乃至トリ(ジアルキルアミノメチル)フェノール類;ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタンなどのビス(アミノフェニル)アルカン類;ビス(4−アミノフェニル)スルホンなどのビス(アミノフェニル)スルホン類;フタロシアニンテトラミンなどのフタロシアニンアミン類;ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、(α−メチルベンジル)メチルアミン、(α−メチルベンジル)エチルアミンなどのベンジルアルキルアミン類などが挙げられる。
複素環式アミン類は、1つの窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン類、複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン類に大別できる。1つの窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン類としては、例えば、ピリジン、ピコリンなどのピリジン類;ピペリジン、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのピペリジン類;ピロール、2H−ピロールなどのピロール類;モルホリン、メチルモルホリン、エチルモルホリンなどのモルホリン類などが挙げられる。
複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン類としては、例えば、ゲスト化合物の項で例示した複数の窒素原子を環の構成原子として含む5又は6員複素環又はその縮合複素環を有する化合物などが挙げられる。より具体的には、例えば、ゲスト化合物の項で例示したピペラジン類及びトリアジン類、前記式(2a)で表される化合物として例示したイミダゾリン類及びイミダゾール類などの単環式複素環化合物;ゲスト化合物の項で例示したトリエチレンジアミン類、前記式(2b)で表される化合物として例示した二環式アミジン化合物などの縮合多環式複素環化合物;3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのスピロ環式アミン類などが挙げられる。
変性アミン類としては、例えば、エポキシ化合物にアミンが付加したポリアミン(又はアミンアダクト)、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン(ケチミン)、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体などが例示できる。
これらのアミン系化合物は、酸、例えば、2−エチルヘキシル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソシアヌル酸などの有機酸又は塩酸などの無機酸との塩であってもよい。
アミド系化合物としては、例えば、ダイマー酸(重合脂肪酸又は多量体化脂肪酸)とポリアミンとの縮合により得られるポリアミド(又はポリアミノアミド)などが挙げられる。ダイマー酸としては、例えば、不飽和高級脂肪酸の二量体〜四量体などが挙げられる。ポリアミンとしては、例えば、アルキレンジアミン、ポリエチレンポリアミンなどが挙げられる。
エステル系化合物としては、例えば、カルボン酸のアリール及びチオアリールエステルなどの活性カルボニル化合物などが挙げられる。
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール樹脂硬化剤として、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型フェノ−ル樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、これらの変性樹脂、例えば、エポキシ化又はブチル化したノボラック型フェノール樹脂などのフェノ−ル樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、パラキシレン変性フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂などが例示できる。
アルコール系化合物としては、例えば、ポリオールなどが挙げられる。チオール系化合物としては、例えば、ポリメルカプタンなどが挙げられる。エーテル系化合物としては、ポリエーテルなどが挙げられる。チオエーテル系化合物としては、例えば、ポリスルフィドなどが挙げられる。尿素系化合物としては、例えば、ブチル化尿素、ブチル化メラミンなどが挙げられる。チオ尿素系化合物としては、例えば、ブチル化チオ尿素などが挙げられる。ルイス酸系化合物としては、例えば、三フッ化ホウ素などが挙げられる。
リン系化合物としては、有機ホスフィン化合物、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィンなどのアルキルホスフィン、フェニルホスフィンなどのアリールホスフィンなどの第1ホスフィン類;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン、メチルエチルホスフィンなどのジアルキルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどのジアリールホスフィンなどの第2ホスフィン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなどの第3ホスフィン類などが挙げられる。
酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などの芳香族ポリカルボン酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水ハイミック酸、無水メチルハイミック酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸(無水メチルナジック酸)などの脂環族ポリカルボン酸無水物;無水マレイン酸、テトラメチレン無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物などの脂肪族ポリカルボン酸無水物;無水ヘット酸(無水クロレンド酸)、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸などのハロゲン化酸無水物などが挙げられる。
オニウム塩系化合物としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アリールメチルスルホニウム塩、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。アリールメチルスルホニウム塩などがよく利用され、例えば、ベンジルメチルスルホニウム塩などが挙げられる。
活性珪素化合物−アルミニウム錯体としては、例えば、トリフェニルシラノール−アルミニウム錯体、トリフェニルメトキシシラン−アルミニウム錯体、シリルペルオキシド−アルミニウム錯体、トリフェニルシラノール−トリス(サリシルアルデヒダート)アルミニウム錯体などが挙げられる。
これらの第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。前記包接化合物(第1の硬化剤及び/又は硬化促進剤)と、上記第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤との割合は、例えば、前者/後者(質量比)=100/0〜30/70、好ましくは100/0〜50/50、より好ましくは100/0〜70/30、さらに好ましくは100/0〜90/10、特に100/0(実質的に前記包接化合物のみ)が好ましい。
また、上記第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤を用いる場合、第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤におけるエポキシ基と反応可能な官能基の割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対して、例えば、0.7〜1.3当量、好ましくは0.8〜1.2当量、さらに好ましくは0.9〜1.1当量であり、通常、1当量である。前記エポキシ基と反応可能な官能基としては、例えば、アミノ基、酸無水物基、水酸基などが挙げられる。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、不飽和二重結合を酸化してエポキシ化したエポキシ樹脂などであってもよい。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(又は化合物)としては、例えば、アルカンモノオール類のグリシジルエーテル、アルカンポリオール類のポリグリシジルエーテル、単核多価フェノール類又はそのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル、多核多価フェノール類又はそのアルキレンオキシド付加体のポリグリジルエーテル、複素環化合物のポリグリジルエーテルなどが挙げられる。
アルカンモノオール類のグリシジルエーテルとしては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、s−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
アルカンポリオール類のポリグリシジルエーテルにおいて、前記アルカンポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
単核多価フェノール類又はそのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテルにおいて、前記単核多価フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどが挙げられる。
多核多価フェノール類又はそのアルキレンオキシド付加体のポリグリジルエーテルにおいて、多核多価フェノール類としては、例えば、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、ビスフェノール類、トリス又はテトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ノボラック又はノボラック樹脂、テルペンフェノールなどが挙げられる。
ビスフェノール類としては、例えば、メチレンビスフェノール(又はビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール(又はビスフェノールAD)、イソプロピリデンビスフェノール(又はビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン(又はビスフェノールS)、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレンなどが挙げられる。9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレンとしては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
前記アルキレンオキシド付加体としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシドの付加体などが挙げられる。アルキレンオキシドの付加モル数は、特に制限されず、例えば、前記フェノール類1モルに対して、例えば、1〜20モル、好ましくは2〜10モルである。
トリス又はテトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカンとしては、例えば、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが挙げられる。
ノボラック又はノボラック樹脂としては、例えば、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラックなどが挙げられる。
複素環化合物のポリグリジルエーテルとしては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂(又は化合物)としては、例えば、バーサティック酸グリシジルエステルなどのモノカルボン酸類のモノグリシジルエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸などの脂肪族、脂環族又は芳香族多価カルボン酸類のグリシジルエステル類;グリシジル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体などが挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(又は化合物)としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、ビス[4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル]メタン、N,N−ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノールなどが挙げられる。
不飽和二重結合がエポキシ化したエポキシ化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペートなどの環状オレフィン類のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物などのエポキシ化共役ジエン重合体などが挙げられる。
これらのエポキシ樹脂(又は化合物)は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、エポキシ樹脂(又は化合物)は、単量体であってもよく、二量体〜十量体程度の多量体を含んでいてもよい。また、アルカンモノオール類又はアルカンポリオール類のモノ又はポリグリシジルエーテル、モノカルボン酸類のグリシジルエステル、環状オレフィン類のエポキシ化物などは反応性希釈剤として使用する場合が多い。
好ましいエポキシ樹脂としては、分子内に複数のエポキシ基(又はオキシラン環)を有するポリグリシジルエーテル、例えば、メチレンビスフェノール(又はビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール(又はビスフェノールAD)、イソプロピリデンビスフェノール(又はビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレンなどのビスフェノール類又はそのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
さらに、エポキシ樹脂は、室温程度、例えば、10〜30℃、好ましくは15〜20℃で流動性を有する液体、流動性に乏しい高粘度(又は高粘稠)の半固体又は固体であってもよく、通常、前記包接化合物と混合する温度(混合温度又は加工温度)において流動性を有しており、混合温度において液状又は粘稠な液状エポキシ樹脂であってもよい。
本発明の硬化性組成物において、包接化合物の割合は、硬化方法に応じて適宜選択でき、第1のゲスト化合物としての複素環化合物が、通常、硬化剤及び/又は硬化促進剤として使用される割合であってもよい。例えば、第1のゲスト化合物又は複素環化合物(第1の硬化剤及び/又は硬化促進剤)が、エポキシ樹脂中のエポキシ基との反応により、硬化樹脂中に必ず共有結合により組み込まれる付加型硬化剤である場合、包接化合物の割合は、硬化樹脂の特性に応じて、通常、エポキシ基(又はオキシラン環)1モルに対して、包接された複素環化合物換算で、0.1〜1モル程度の範囲から選択でき、好ましくは0.2〜0.8モル、さらに好ましくは0.25〜0.5モルである。
また、複素環化合物が、硬化樹脂中に共有結合により組み込まれることなく、触媒的にエポキシ基の開環を誘発し、エポキシ化合物間の重合付加反応を生じさせる重合型硬化剤や光開始型硬化剤である場合、又は硬化促進剤として使用する場合などでは、包接化合物の割合は、エポキシ基(又はオキシラン環)1モルに対して、包接された複素環化合物換算で、1モル以下程度の範囲から選択でき、好ましくは0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.005〜0.1モルである。
また、通常、包接化合物の割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、包接化合物中の複素環化合物(第1のゲスト化合物)が、例えば、0.1〜25質量部、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.5〜20質量部、0.8〜15質量部、1〜10質量部、1.2〜8質量部、1.5〜6質量部、1.8〜5質量部であり、さらに好ましくは2〜4質量部、特に、2.5〜3.5質量部となる割合である。
本発明の硬化性組成物は、前記包接化合物を含む硬化剤及び/又は硬化促進剤成分と、エポキシ樹脂とを混合することにより製造できる。例えば、前記包接化合物を含む硬化剤及び/又は硬化促進剤成分と、エポキシ樹脂とを、ホモジナイザー、ミキサー又は混合機、ニーダー、ロール、押出機などの混練機、らいかい機(擂潰機)などを使用して、硬化反応(又はゲル化)が生じない又は抑制できる温度、時間で混合又は混練することにより調製してもよい。前記混錬は、例えば、溶融混練などであってもよい。
また、混合又は混練は加熱下、例えば、50〜100℃程度で行ってもよいが、低温、例えば、0〜50℃程度、好ましくは氷浴中で混合又は混練して、加熱下での混合又は混練を省略することが多い。なお、前記包接化合物の製造方法の項に例示の溶媒の存在下で混合又は混練してもよい。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、有機溶剤、反応性希釈剤、充填剤、補強剤、顔料などの着色剤、難燃剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、増量剤、増粘剤などを添加してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤などのアルカンジカルボン酸系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。
有機溶剤としては、前記包接化合物の製造方法の項に例示の溶媒などが例示できる。反応性希釈剤としては、前記例示のエポキシ化合物、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジエポキシドなどのエポキシ化合物、フェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールなどのフェノール類などが挙げられる。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩;シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;ホウ酸アルミニウムなどの金属ホウ酸塩;チタン酸カリウムなどの金属チタン酸塩;タルク、カオリン、クレー、マイカ、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノトライトなどの鉱物などが挙げられる。また、炭酸カルシウムとしては、例えば、重炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどが挙げられる。シリカとしては、例えば、天然シリカ、合成シリカ、溶融シリカなどが挙げられる。
補強剤としては、例えば、有機繊維、無機繊維に大別できる。有機繊維としては、例えば、セルロースファイバー、セルロースナノファイバーなどの天然繊維;ポリアルキレンアリレート繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維などの合成繊維などが挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラックなどの黒色顔料、酸化チタンなどの白色顔料、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料などのいずれであってもよい。
難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモシクロデカン、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA、トリス(ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、デカブロモジフェニルオキサイド、ビス(ペンタブロモ)フェニルエタン、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ポリブロモフェニルインダン、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネート、臭素化フェニレンエチレンオキシド、ポリペンタブロモベンジルアクリレートなどの臭素化物、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシリルジフェニルホスフェート、クレジルビス(ジ−2,6−キシレニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシレニル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモプロピル)ホスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロオキシエチル)アミノメチルホスホネートなどのリン酸エステル類、陰イオン蓚酸処理水酸化アルミニウム、硝酸塩処理水酸化アルミニウム、高温熱水処理水酸化アルミニウム、錫酸表面処理水和金属化合物、ニッケル化合物表面処理水酸化マグネシウム、シリコーンポリマー表面処理水酸化マグネシウム、プロコバイト、多層表面処理水和金属化合物、カチオンポリマー処理水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
離型剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウムなどの脂肪酸系離型剤;カルナバワックス、ポリエチレン系ワックスなどのワックス類;シリコーンオイルなどが挙げられる。
さらに、本発明の硬化性組成物は、必要であれば、エポキシ樹脂の他に、エラストマー(又はエラストマー変性剤)を含んでいてもよい。エラストマー(又はエラストマー変性剤)としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、液状ポリブタジエン、ポリブタジエン(ブタジエンゴム、BR)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、変性シリコーンゴム、架橋NBR、架橋BR、アクリル系ゴム(コアシェル型アクリルゴムを含む)、ウレタンゴム、ポリエステルエラストマー、官能基含有液状NBR、液状ポリエステル、液状ポリスルフィド、ウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
また、硬化性組成物は、必要であれば、エポキシ樹脂の他に、他の樹脂(又は第2の樹脂)を含んでいてもよい。第2の樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン含有樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。また、第2の樹脂は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチックであってもよい。
これらの添加剤、エラストマー、及び樹脂は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの添加剤、エラストマー及び/又は樹脂の割合は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。
本発明は、前記硬化性組成物が硬化した硬化物も包含する。このような硬化物は、硬化性組成物の用途に応じて、前記硬化性組成物を加熱して硬化させることにより調製できる。例えば、前記硬化性組成物を、基材へ塗布して硬化させてもよく、所定部に注入又は封止して硬化させてもよく、注型して硬化させてもよく、繊維基材などの基材に含浸してプリプレグを調製し、このプリプレグを、重ね合わせや巻回などの方法で積層して所定形状に成形加工して硬化させてもよい。硬化における加熱温度は、例えば、100〜250℃程度であってもよく、好ましくは110〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃である。また、本発明の硬化性組成物は、比較的低温であっても素早く硬化可能なため、加熱温度は、例えば、100〜160℃、好ましくは120〜150℃である。
また、本発明の硬化性組成物のゲル化時間は、加熱温度100℃において、例えば、30分以下程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、25分以下、20分以下、15分以下であり、さらに好ましくは13分以下、特に、11分以下である。また、前記ゲル化時間は、例えば、0.1〜15分、好ましくは5〜13分、さらに好ましくは8〜11分である。
本発明の硬化性組成物は、低温で素早く硬化できるにもかかわらず、意外にも貯蔵安定性(又は保存安定性)が高く、ポットライフは、例えば、1日以上、好ましい範囲としては、以下段階的に、2日以上、3日以上、5日以上であり、さらに好ましくは7日以上である。また、前記ポットライフは、例えば、1日〜1年程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、8〜180日、10〜90日、12〜30日であり、さらに好ましくは14〜21日、特に、15〜17日である。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、前記ゲル化時間及びポットライフは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において各種特性は次のようにして測定した。
(1H−NMR)
1H−NMRは、包接化合物を、重クロロホルム、重メタノール、重ジメチルスルホキシドなどに溶解し、ブルカー・バイオスピン社製「AVANCE III HD」(1H共鳴周波数:300MHz)を用いて測定した。
(XRD)
X線回折(XRD)は、リガク社製「SMART LAB」(X線源:Cu Kα)を用いて測定した。
(TGA)
熱重量分析(TGA)は、(株)パーキンエルマー製「TGA 4000」を用いて測定した。
1.アダマンタンビスフェノールの調製
[実施例1]
(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの合成)
2−アダマンタノン(75.1g、0.50mol)にフェノール(235.3g、2.50mol)を加え、50℃で30分撹拌し溶解した。次いで、3−メルカプトプロピオン酸(5.0g、47.1mmol)を加え、メタンスルホン酸(75.0g、0.78mol)を50℃で、滴下ロートを用いて30分かけて滴下し、4時間撹拌した。その後、室温まで放冷し、析出した結晶をろ取して粗結晶を得た。次いで、粗結晶にメタノール(500g)を加え、60℃で1時間撹拌した。その後、室温まで放冷し、結晶をろ取して乾燥させることにより、目的とする2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン113.1g(収率71%)を得た。なお、得られた2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの1H−NMR、XRD及びTGAを、図1、8及び12に示す。
2.包接化合物の調製
[実施例2]
(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:2E4MZの包接化合物の合成)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(16.0g、50mmol)に2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業(株)製、13.2g、120mmol)と、メチルエチルケトン(150g)とを加え、80℃で1時間撹拌した。撹拌後、加熱を止め、10℃まで冷却後、生じた固体をろ取、乾燥し、生成物を得た(白色固体、収量11.5g、収率53.5%)。図5、9及び16に得られた包接化合物の1H−NMR、XRD及びTGAの測定結果を示す。XRDにより、アダマンタン単体とは異なる結晶性の化合物であることを確認した。また、得られた包接化合物は、1H−NMRにより、包接比2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:2E4MZ=1:1の包接化合物であることを確認した。さらに、TGAからも、前記と同様の包接比であることを補足的に確認した。なお、比較のために、2E4MZ単体の1H−NMR及びTGAの測定結果を図2及び13に示す。
なお、実施例で得られた包接化合物のTGAチャートにおいて、横軸(温度)に平行に引かれた2本の破線は、測定開始時及びゲスト放出完了時を示し、「ΔY」は、包接化合物中のゲスト化合物の質量割合を示す(以下、同じ)。
[実施例3]
(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:2MZ−Hの包接化合物の合成)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(16.0g、50mmol)に2−メチルイミダゾール(2MZ−H、四国化成工業(株)製、9.9g、120mmol)と、メチルエチルケトン(150g)とを加え、80℃で1時間撹拌した。撹拌後、加熱を止め、10℃まで冷却後、生じた固体をろ取、乾燥し、生成物を得た(白色固体、収量16.3g、収率67.6%)。図6、10及び17に得られた包接化合物の1H−NMR、XRD及びTGAの測定結果を示す。XRDにより、アダマンタン単体とは異なる結晶性の化合物であることを確認した。また、得られた包接化合物は、1H−NMRにより、包接比2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:2MZ−H=1:2の包接化合物であることを確認した。さらに、TGAからも、前記と同様の包接比であることを補足的に確認した。なお、比較のために、2MZ−H単体の1H−NMR及びTGAの測定結果を図3及び14に示す。
[実施例4]
(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:DBNの包接化合物の合成)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン(16.0g、50mmol)にメチルエチルケトン(150g)を加え、80℃で1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN、関東化学(株)製、14.9g、120mmol)を加え、1時間撹拌した。撹拌後、加熱を止め、10℃まで冷却後、生じた固体をろ取、乾燥し、生成物を得た(白色固体、収量21.5g、収率96.8%)。図7、11及び18に得られた包接化合物の1H-NMR、XRD及びTGAの測定結果を示す。XRDにより、アダマンタン単体とは異なる結晶性の化合物であることを確認した。また、得られた包接化合物は、1H−NMRにより、包接比2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:DBN=1:1の包接化合物であることを確認した。さらに、TGAからも、前記と同様の包接比であることを補足的に確認した。なお、比較のために、DBN単体の1H−NMR及びTGAの測定結果を図4及び15に示す。
以下の表1に、各包接化合物の組成を示す。
3.硬化性組成物の作製及び試験
[実施例5]
液状エポキシ樹脂100質量部(jER 828、三菱化学(株)製)に11.7質量部の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:2E4MZ(2E4MZとして3質量部)を加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、エースホモジナイザーAM−10)で、15000rpmの回転数で氷浴中にて15分撹拌し、硬化性組成物を作製した。
[実施例6]
液状エポキシ樹脂100質量部(jER 828、三菱化学(株)製)に8.9質量部の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:2MZ−H(2MZ−Hとして3質量部)を加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、エースホモジナイザーAM−10)で、15000rpmの回転数で氷浴中にて15分撹拌し、硬化性組成物を作製した。
[実施例7]
液状エポキシ樹脂100質量部(jER 828、三菱化学(株)製)に10.7質量部の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン:DBN(DBNとして3質量部)を加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、エースホモジナイザーAM−10)で、15000rpmの回転数で氷浴中にて15分撹拌し、硬化性組成物を作製した。
[比較例1]
液状エポキシ樹脂100質量部(jER 828、三菱化学(株)製)に3質量部の2E4MZを加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、エースホモジナイザーAM−10)で、15000rpmの回転数で氷浴中にて15分撹拌し、硬化性組成物を作製した。
[比較例2]
液状エポキシ樹脂100質量部(jER 828、三菱化学(株)製)に3質量部の2MZ−Hを加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、エースホモジナイザーAM−10)で、15000rpmの回転数で氷浴中にて15分撹拌し、硬化性組成物を作製した。
[比較例3]
液状エポキシ樹脂100質量部(jER 828、三菱化学(株)製)に3質量部のDBNを加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、エースホモジナイザーAM−10)で、15000rpmの回転数で氷浴中にて15分撹拌し、硬化性組成物を作製した。
[ゲル化時間の測定]
ガラスサンプル管と、その外径と同じ径の穴をあけたアルミニウムブロックとを用意した。アルミニウムブロックは、ホットプレート上であらかじめ所定の温度に熱した。サンプル管に試料(硬化性組成物)を取り、上記アルミニウムブロックの穴にサンプル管を挿入し、サンプル管中をスパチュラで毎分60回ほどの速度で円状に(円を描くように)かき混ぜ、試料がゲル状になりスパチュラに付着しなくなった点又は糸引きがなくなった点を終点とし、サンプル管の挿入から終点までにかかった時間を計測した。結果を以下の表2に示す。
[硬化性組成物の貯蔵安定性試験]
作製した硬化性組成物を25℃で密閉容器に保存し、所定時間毎にE型粘度計(東機産業(株)製「TVE−22L」)を用いて、25℃における粘度(mPa・s/25℃)を測定した。初期粘度(作製直後に測定した粘度)から2倍の粘度を示した時間(日数)をポットライフとした。結果を以下の表3に示す。
以上の結果から明らかなように、本発明の包接化合物を用いた硬化性組成物は、低温(100℃〜150℃)で素早く硬化する特性を備え、なおかつ、優れた保存安定性を示す。特に、実施例7が硬化性と保存安定性とのバランスの点で最も優れていた。