以下、本発明の吸収性物品をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、図1及び図2に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2と、非肌対向面を形成する裏面シート3と、これら両シート2,3間に位置する液保持性の吸収体4とを備えている。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、また縦方向Xにおいて、着用者の膣口などの排泄部に対向する排泄スポット部(図示せず)を含む排泄部対向部Bと、該排泄部対向部Bよりも着用者の腹側(前側)に配される前方部Aと、該排泄部対向部Bよりも着用者の背側(後側)に配される後方部Cとの3つに区分される。以下の説明において、特に説明しない場合、縦方向Xは、吸収性物品の縦方向X又はその構成部材における吸収性物品の縦方向Xに沿う方向であり、横方向Yは、吸収性物品の横方向Y又はその構成部材における吸収性物品の横方向Yに沿う方向である。吸収性物品の構成部材には、吸収性本体や後述する中央吸収部等、複数の構成部材からなる吸収性物品の部分も含まれる。
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体5と、吸収性本体5における排泄部対向部Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部7,7とを有している。吸収性本体5は、ナプキン1の主体をなす部分であり、前記の表面シート2、裏面シート3及び吸収体4を具備し、縦方向Xにおいて前方部A、排泄部対向部B及び後方部Cの3つに区分される。
なお、本発明の吸収性物品における排泄部対向部は、図1に示すナプキン1のように、吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域に相当し、ナプキン1を例にとれば、一方のウイング部7の縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部7の縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域である。また、図示していないが、ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、該吸収性物品を縦方向に三等分して3領域に区分したときの、縦方向中央の領域である。
図1及び図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、後述するサイド防漏シート6と共にサイドフラップ部(吸収体4から横方向Yの外方に延出する部材からなる部分)を形成している。裏面シート3とサイド防漏シート6とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。ナプキン1においてはこのように、吸収体4が表面シート2と裏面シート3とで挟持され、表面シート2又はサイド防漏シート6と裏面シート3とがナプキン1の外縁部全周で接合されている。ナプキン1を構成するシート間の接合には、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の任意の接合手段が用いられる。
前記サイドフラップ部は、図1に示すように、排泄部対向部Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部7,7が延設されている。ウイング部7は、図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有しており、その非肌対向面には、該ウイング部7をショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が設けられている。ウイング部7は、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。また、吸収性本体5の非肌対向面には、ショーツ等の着衣のクロッチ部への固定に用いられる本体粘着部(図示せず)が設けられている。前記ウイング部粘着部及び前記本体粘着部は、それぞれ、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
吸収性本体5の肌対向面すなわち表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイド防漏シート6,6が吸収性本体5の縦方向Xの略全長にわたって配されている。一対のサイド防漏シート6,6は、それぞれ縦方向Xに延びる接合線にて、接着剤等の公知の接合手段によって表面シート2等の他の部材に接合されている。図1に示す例では、一対のサイド防漏シート6,6は、それぞれ、排泄部対向部Bに位置する湾曲線状の第1接合線61と、第1接合線61の縦方向Xの前後に位置するジグザグ線状の第2接合線62とで表面シート2に接合されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、吸収体4の全長にわたって連続する直線状の接合線で、サイド防漏シート6と表面シート2とが接合されていてもよい。サイド防漏シート6は、図2に示すように、表面シート2に接合されていない自由端6aと、表面シート2に接合された接合線61の内側端部である固定端6bとを有しており、ナプキン1の使用時には、固定端6bと自由端6aとの間が表面シート2から離間し、側方への横漏れを防止する防漏ポケットPを形成する。
ナプキン1においては、図2に示すように、表面シート2と吸収体4との間に、不織布によって構成されたセカンドシート21が配されている。セカンドシート21は、表面シート2及び吸収体4とは別体の、当該技術分野においてサブレイヤーシートとも呼ばれるシートであり、表面シート2及び/又は吸収体4とはストライプ状又はスパイラル状に設けられた接着剤等によって部分的に接合されている。セカンドシート21は、表面シート2から吸収体4への液の透過性を向上させたり、吸収体4に吸収された液の表面シート2への液戻りを低減させたりする役割を担うシートである。なお、本発明の吸収性物品は、セカンドシートを具備しないものであってもよい。
表面シート2、裏面シート3、サイド防漏シート6としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。表面シート2は、肌対向面側に凹凸を有するものであっても良く、また構成繊維の表面に親水性を制御する目的の油剤等が付着しているものであっても良い。表面シート2が多層構造のものである場合、該表面シート2として、着用者の肌に近い側に位置する第1繊維層と、着用者の肌から遠い側に位置する第2繊維層とを有し、両繊維層が、部分的に形成された多数の接合部によって厚さ方向に一体化されており、第1繊維層における、複数の該接合部どうし間に位置する部分が凸状に隆起して、前記凹凸形状の凸部を形成している凹凸シートを用いることができる。凸部が中実構造である凹凸シートとしては、例えば特開2007−182662号公報や特開2002−187228号公報に記載のものを用いることができる。裏面シート3としては、樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布との積層体等を用いることができる。裏面シート3は、液不透過性(液難透過性も含む)又は撥水性のものが用いられ、透湿性の樹脂フィルム等を用いることも好ましい。サイド防漏シート6としては、耐水圧の高い積層不織布、樹脂フィルムと不織布との積層体等を用いることができる。
ナプキン1においては、吸収体4は、図1〜図4に示すように、繊維材料を含む本体吸収性シート401が複数層に積層された積層構造を有する。より具体的には、ナプキン1における吸収体4は、肌対向面側に位置する(吸収体4の肌対向面を形成する)表面側吸収性シート41と、非肌対向面側に位置する(吸収体4の非肌対向面を形成する)裏面側吸収性シート42とを含む積層構造を有し、該シート41,42が本体吸収性シート401から構成されている。本体吸収性シート401は、図4に示すように、その厚み方向Z(図4の上下方向)に、第1領域Eと、繊維材料の密度が該第1領域Eよりも高い第2領域Fとを有している。
またナプキン1においては、表面側吸収性シート41及び裏面側吸収性シート42は、それぞれ、1枚の本体吸収性シート401の一部であり、横方向Yの長さ(幅)が比較的長い1枚の本体吸収性シート401が横方向Yに折り畳まれることによって、表面側吸収性シート41と裏面側吸収性シート42とを含む積層構造が形成されている。より具体的には、両シート41,42を含む積層構造は、図2及び図4に示すように、1枚の本体吸収性シート401が、第1領域Eを外側にし、且つ該積層構造(吸収体4)の非肌対向面の横方向Yの中央部に該シート401の横方向Yの一端部と他端部との重なり部49が位置するように、折り畳まれて構成されている。
そして、このように1枚の本体吸収性シート401が折り畳まれることによって複数層に積層された積層構造(折り畳み構造)を有する吸収体4においては、図4に示すように、該シート401の一部である表面側吸収性シート41の第1領域Eが、吸収体4の肌対向面を形成し、該シート401の他の一部である裏面側吸収性シート42の第1領域Eが、該吸収体4の非肌対向面を形成している。すなわち、表面側吸収性シート41の第1領域Eが、吸収体4の肌対向面側表層部を形成し、裏面側吸収性シート42の第1領域Eが、該吸収体4の非肌対向面側表層部を形成している。また、第2領域Fは、吸収体4の肌対向面を形成する第1領域E及び非肌対向面を形成する第1領域Eそれぞれよりも厚み方向Zの内方に位置している。
またナプキン1においては、図1〜図4に示すように、本体吸収性シート401が複数層に積層された積層構造の内部に、繊維材料を含み且つ香料が配された賦香吸収性シート402を含む、中央吸収部43が配され、該中央吸収部43の肌対向面及び非肌対向面は本体吸収性シート401で覆われている。
ナプキン1においては、中央吸収部43を構成する賦香吸収性シート402は、図2及び図4に示すように、1枚の賦香吸収性シート402が折り畳まれていることによって、該シート402が複数層に積層された構造を有している。より具体的には、賦香吸収性シート402は、吸収体4の横方向Yに離間した2か所の折り曲げ部において三つ折りに折り畳まれていることによって3層の積層構造(折り畳み構造)を形成しており、全体として渦巻き状に折り畳まれている。賦香吸収性シート402の前記折り曲げ部は、中央吸収部43の縦方向Xに沿う側縁(横方向Yの端縁)43s(図3参照)に一致する。
なお、本発明においては、中央吸収部43は、図4に示す如き積層構造を有する形態に限定されず、賦香吸収性シート402が積層されていない単層構造を有する形態であってもよい。また、賦香吸収性シート402の積層構造は、図4に示す如き、1枚の該シート402が横方向Yに三つ折りされた形態に限定されず、例えば、1枚の該シート402が横方向Yに二つ折りされた形態でもよく、あるいは2枚の該シート402,402どうしが積層された形態でもよい。
本明細書において、吸収性シートとは、シート状に成型されている吸収体のことであり、一般的に吸収性材料を積もらせた積繊構造の吸収体とは区別される。吸収性シートの代表的なものとしては、特許第2963647号公報記載のものや、特許第2955223号公報記載のものなどが挙げられる。吸収性シートとしては、湿潤状態の高吸収性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維どうしの間や高吸収性ポリマーと構成繊維との間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。また、吸収性シートとしては、特開平8−246395号公報記載の方法にて製造されたパルプを含む吸収性シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び高吸収性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、パルプを含む紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後高吸収性ポリマーを散布して得られた吸収性シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸収性ポリマーを配合して得られた吸収性シート等を用いることができる。これらの吸収性シートは、一枚を所定形状に裁断して前述のシート状吸収体として用いることができる。
ナプキン1においては、中央吸収部43(賦香吸収性シート402)は、図1に示すように、排泄部対向部Bに配されている。より具体的には、中央吸収部43は、排泄部対向部Bにおいて、図1及び図2に示すように、吸収体4の横方向Yの中央部のみに配され、吸収体4の横方向Yの全長(全幅)にわたって配されておらず、また、図1及び図3に示すように、吸収体4の縦方向Xの一部のみに配され、吸収体4の縦方向Xの全長にわたって配されていない。なお、本発明においては、中央吸収部43は、本体吸収性シート401の積層構造の内部に配されていればよく、すなわち表面側吸収性シート41と裏面側吸収性シート42との間に配されていればよく、吸収体4の全幅にわたる幅を有していてもよいし、及び/又は、吸収体4の縦方向Xの全長にわたる長さを有していてもよい。
このように、ナプキン1における吸収体4は、該吸収体4の外形(輪郭)を形作る本体吸収性シート401の積層構造(折り畳み構造)の内部に、賦香吸収性シート402の積層構造(折り畳み構造)からなる中央吸収部43が内包された構成を有し、また、中央吸収部43は図1に示すように、排泄部対向部Bから後方部Cの一部にかけて、横方向Yの中央部に部分的に配されている。これにより、図2に示すように、吸収体4における中央吸収部43の配置部は、周辺部に比して厚みが大きく且つ着用者の肌側に隆起した肉厚部4Aとなっている。一方、吸収体4における肉厚部4A以外の部分は、賦香吸収性シート402を含まずに本体吸収性シート401の積層構造を含んで構成されており、肉厚部4Aに比して厚みの小さい標準吸収部4Bとなっている。
ナプキン1における肉厚部4Aは、図2に示すように、三つ折りされた賦香吸収性シート402から構成された中央吸収部43を表面側吸収性シート41及び裏面側吸収性シート42で挟んで形成された、合計5層の吸収性シートからなる。肉厚部4Aは、吸収体4の横方向Yの中央部に形成されており、また吸収体4の縦方向Xにおいては、主として排泄部対向部Bに形成されている。主として排泄部対向部Bに形成されているとは、肉厚部4Aの縦方向Xの全長の50%以上が排泄部対向部Bに存在することを意味する。肉厚部4Aは、標準吸収部4Bに比して、ナプキン1の着用時において着用者の肌と密着しやすく、ナプキン1のフィット性、防漏性の向上に寄与し得る。
吸収体4の肉厚部4Aにおける厚みは、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは1mm以上、そして、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。吸収体4の肉厚部4Aの厚みをこのような範囲とすることで、排泄部対向部Bにおける良好な装着感と高い吸収性能と高い抗菌効果を両立することが容易となる。また、本実施形態のナプキン1のように吸収性物品がウイング部を備えている場合には、装着時に排泄部対向部での吸収体のヨレを抑制しやすくなる。
また、吸収体4の肉厚部4A以外の部分、すなわち標準吸収部4Bにおける厚みは、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.5mm以下である。吸収体4の標準吸収部4Bの厚みをこのような範囲とすることで、ナプキン1に高い吸収性能を付与すると共に、着用者の動きへの追従性を高めることが可能となる。吸収体及び吸収性シートの厚みは下記方法により測定される。
<吸収性シート及び吸収体の厚みの測定方法>
測定対象の吸収性シート又は吸収体を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、5cN/cm2の荷重下での厚みを測定する。本発明における厚みの測定には、厚み計 PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5−C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いた。このとき、厚み計の先端部と測定対象における測定部分との間に、平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、荷重が5cN/cm2となるようにプレートの大きさを調整する。
ナプキン1の主たる特徴の1つとして、吸収体4の肌対向面側表層部及び非肌対向面側表層部に抗菌剤が配されている点が挙げられる。ナプキン1においては前述したとおり、吸収体4の肌対向面側表層部は、本体吸収性シート401の一部をなす表面側吸収性シート41の第1領域Eから形成され、該吸収体4の非肌対向面側表層部は、該シート401の他の一部をなす裏面側吸収性シート42の第1領域Eから形成されているので、抗菌剤は該シート401の第1領域Eに配されている。
図5には、本体吸収性シート401の厚み方向の断面構造が示されている。本体吸収性シート401は、図5に示すように、繊維材料48を含んでおり、シートの厚み方向Z(図5の上下方向)に、第1領域Eと、繊維材料48の密度が該第1領域Eよりも高い第2領域Fとを有し、二層構造である。第1領域E及び第2領域Fは、賦香吸収性シート402の面と平行な方向の全域にわたっている。第1領域E及び第2領域Fは、第1領域Eと第2領域Fとの境界が明確なように層状に積層されていてもよく、あるいは、両者の境界部において、一方の繊維材料48が他方の繊維材料48の繊維間空隙に入り込む等によって、両者の界面が不明瞭となっていてもよい。そして、ナプキン1においては、相対的に繊維材料48の密度が低い第1領域Eの全域に、抗菌剤8が配されている。
本体吸収性シート401が含む繊維材料48としては、例えば、疎水性の繊維を親水化処理したもの、それ自体が親水性である親水性繊維が挙げられる。特に、それ自体が親水性で且つ保水性を有するものが好ましい。親水性繊維としては、天然系の繊維、セルロース系の再生繊維又は半合成繊維が好ましい例として挙げられる。保水性を有する親水性繊維としては、特に木材パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース繊維等のセルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。セルロース系繊維の原料パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ等の木材パルプ;木綿パルプ、ワラパルプ等の非木材パルプが挙げられる。セルロース系繊維としては、セルロースの分子内又は分子間を適当な架橋剤によって架橋させた架橋セルロース繊維(パルプ繊維)、あるいはセルロースの結晶化度を向上させたレーヨン繊維等の再生セルロース繊維等を用いることもできる。
本体吸収性シート401が含む繊維材料48としては、セルロース系繊維と共に又はセルロース系繊維に代えて、合成繊維、例えば熱可塑性繊維を用いることもできる。熱可塑性繊維としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の単一の合成樹脂を用いて形成された単一繊維、あるいは、これら2種以上の複合体等の合成樹脂を用いて形成された複合繊維、例えば、2種以上の合成樹脂を用いて形成した芯鞘型、サイドバイサイド型等の複合繊維を用いることもできる。
本体吸収性シート401において、第1領域E(相対的に繊維材料の密度が低い領域)と第2領域F(相対的に繊維材料の密度が高い領域)とは、該シート401の面方向の全域にわたって厚み方向に互いに重なっていてもよく、あるいは、該シート401の面方向の一部のみにおいて厚み方向に互いに重なっていてもよい。ナプキン1においては、図4に示すように前者が採用されており、すなわち本体吸収性シート401においては、該シート401の全域にわたって、吸収体4の肌対向面及び非肌対向面を形成する第1領域Eと、該第1領域Eと厚み方向Zにおいて重なる第2領域Fが設けられている。
本体吸収性シート401の如き吸収性シート(吸収体)において、繊維材料の密度が相互に異なる第1領域E及び第2領域Fを有するか否かは、例えば、以下の手法により判断することができる。
<繊維材料の密度の測定方法>
マイクロスコープ(例えばKEYENCE社製「VHX−1000」)や走査型電子顕微鏡(例えば日本電子(株)社製のJCM−5100)を用いて、測定対象(吸収性シート)の厚み方向に沿う切断面を拡大観察し、該切断面の画像データを取得する。観察時の倍率は、繊維断面が10〜70本程度観察できる程度の倍率であって、通常20〜200倍の倍率である。前記切断面の観察視野において、一定視野面積(0.02mm2)当たりの繊維の占める面積を画像解析によって測定する。具体的には、得られた画像をImageJなどの画像処理ソフトウェアを用いて、繊維と繊維が存在しない部分との明度境界に閾値を設定し、明度を二値化する。一般的に、白色と黒色とで二値化した場合、繊維は白色となり、繊維が存在しない部分は黒色となるため、吸収性シート等の測定対象の厚み方向において、白色部分が多い領域を第2領域F、黒色部分が多い領域を第1領域Eと識別することができる。次いで、前記一定視野面積(0.02mm2)における白色を有する面積及び黒色を有する面積それぞれを計算して、単位面積当たり(1mm2)の繊維の面積に換算し、これを繊維材料の密度(mm2/mm2)とする。なお、この繊維材料の密度の測定は、測定対象(本体吸収性シート401)の第1領域E及び第2領域Fそれぞれの任意の3箇所で行い、その平均値を当該領域の繊維密度とする。
本体吸収性シート401は、前述する方法により測定した第2領域Fの繊維材料の密度が、同様の方法により測定した第1領域Eの繊維材料の密度に対して、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは2倍以上、そして、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。第2領域Fの繊維材料の密度が第1領域Eのそれよりも高いことで、後述するように、疎密勾配による体液の移行促進効果が奏されると共に、賦香吸収性シート402に配された香料によるマスキング効果及び/又はハーモナージュ効果が長期間安定的に奏されるようになる。
一般に、この種の吸収性シートにおける繊維材料の密度は、繊維材料の種類や繊維径や含有量などの影響を受けるので、これらを適宜調整することで、該密度に関して「第2領域F>第1領域E」なる大小関係を成立させることが可能となる。例えば、繊維材料を叩解しフィブリル化する、繊維径が小さく細い繊維材料を用いるなどにより、当該領域の繊維材料の密度が高まり、また、繊維径が大きく太い繊維材料を用いると、当該領域の該密度が低下する傾向があるので、相対的に該密度が高い第2領域Fは、フィブリル化された繊維材料及び/又は繊維径が小さく細い繊維材料を主体として構成することが考えられる。また、第1領域Eを構成する第1シートと第2領域Fを構成する第2シートとを結合一体化して本体吸収性シート401を製造する場合には、斯かる結合一体化の前に予め第2シートを厚み方向に加圧するなどして圧縮しておくことで、製造結果物たる該シート401において第2領域Fの繊維材料の密度を第1領域Eのそれよりも高くすることができる。
本体吸収性シート401は、図5に示すように、繊維材料48及び抗菌剤8に加えてさらに高吸収性ポリマー46を含有する。高吸収性ポリマー46としては、一般に粒子状のものが用いられる。粒子状の高吸収性ポリマーの形状は特に制限されず、球状、塊状、俵状、繊維状又は不定形の何れでもよい。高吸収性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合物も用いることができる。
本体吸収性シート401において、高吸収性ポリマー46は該シート401の全体に均一に分布してもよく、偏在していてもよい。ナプキン1においては図5に示すように、吸収体4の肌対向面側表層部及び非肌対向面側表層部を形成し、相対的に繊維材料の密度が低い第1領域Eよりも、吸収体4の厚み方向内方に位置し、相対的に繊維材料の密度が高い第2領域Fの方が、高吸収性ポリマーの含有量が多い。第2領域Fには高吸収性ポリマーが必ず含有されるが、第1領域Eには高吸収性ポリマーは含有されていなくてもよい。
本体吸収性シート401は、例えば、第1領域Eを構成する第1シートの製造工程において抗菌剤を適用した後、該第1シートを、第2領域Fを構成する第2シートと結合一体化することにより製造することができる。第1シートに抗菌剤を適用する方法としては、1)第2シートとの結合前に、第1シートに抗菌剤を含む溶液や分散液を塗工する方法、2)第1シートと第2シートとが結合一体化してなる複合シートにおける第1シート側の面に、抗菌剤を含む溶液や分散液を塗工した後、加熱又は自然乾燥させる方法、3)該複合シートに対し、第1シート側から粒子状の抗菌剤を散布又は吹き付ける方法が挙げられる。抗菌剤を含む溶液や分散液を塗工する方法としては、スプレー法、転写法、ダイ塗工、グラビア塗工、インクジェット法、スクリーン印刷等の公知の液体塗工装置を用いる方法等が挙げられる。また、第1シートと第2シートとの結合一体化は、例えば、各シートをそれぞれ湿式抄造法や乾式抄造法等の任意の方法により個別に製造した後、それらを、接着剤やバインダー繊維、膨潤状態の高吸収性ポリマーの粘着力等により結合一体化させる方法が挙げられる。
本体吸収性シート401(シート41,42)が前述の如き構成を有しているのに対し、賦香吸収性シート402の構成は特に限定されず、単層構造のシートでもよく、本体吸収性シート401と同様の積層構造のシートでもよい。賦香吸収性シート402は、典型的には、繊維材料を主体とし、紙、各種不織布、又は紙と不織布との複合シートであり得る。賦香吸収性シート402は、香料が配されている点以外は、本体吸収性シート401と同様に構成してもよく、例えば、その厚み方向に、第1領域と、繊維材料の密度が該第1領域よりも高い第2領域とを有していてもよく、また、該第1領域及び/又は該第2領域に抗菌剤及び/又は高吸収性ポリマーが配されていてもよく、後述する消臭剤が配されていてもよい。また、賦香吸収性シート402が厚み方向に第1領域及び第2領域を有する場合、そのような積層構造を有するシート402は、例えば、第1領域を構成する第1シートと、第2領域を構成する第2シートとを、それぞれ湿式抄造法や乾式抄造法等の任意の方法により個別に製造した後、それらを、接着剤やバインダー繊維、膨潤状態の高吸収性ポリマーの粘着力等により結合一体化させることにより製造することができる。
前述した吸収性シート401,402それぞれの1枚あたりの厚みは、液拡散性、液保持性を十分に備え且つ装着感の良好なナプキン1とする観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。
中央吸収部43は、それを構成する賦香吸収性シート402の積層数が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、そして、好ましくは7以下、より好ましくは5以下である。また、吸収体4は、本体吸収性シート401及び賦香吸収性シート402それぞれの積層数の合計が、体液排出時の吸収容量や吸収速度、また装着時の違和感のなさの観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは7以下である。
ナプキン1においては、図1〜図3に示すように、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄スポット部を含む排泄部対向部Bに、吸収体4(肉厚部4A、標準吸収部4B)を厚み方向に貫通するスリット45が形成されている。スリット45は、吸収体4(吸収性シート401,402)に切り込みを入れることによって形成されたものであり、平面視において一方向に長い形状をなしている。図示の例では、複数のスリット45はそれぞれ平面視において、縦方向Xに延びる直線状をなしている。
ナプキン1の主たる特徴の他の1つとして、図2に示すように、スリット45の幅、すなわちスリット45の延在方向(本実施形態では縦方向X)と直交する方向の長さが、吸収体4の非肌対向面側(裏面シート3側)から肌対向面側(表面シート2側)に向かうに従って漸次減少している点が挙げられる。ナプキン1においては、吸収体4に形成されている複数のスリット45の全部が、このような、非肌対向面側から肌対向面側に向かって先細りの形状を有している。
またナプキン1においては、図3に示すように、縦方向Xに延びる複数のスリット45が、排泄部対向部Bのみならず、前方部Aにおける排泄部対向部B寄りの部分、及び後方部Cにおける排泄部対向部B寄りの部分にわたって分散配置されて、スリット領域45Sを形成している。スリット領域45Sは、縦方向Xの最も前方に位置するスリット45の前端から最も後方に位置するスリット45の後端までを縦方向長さとし、且つ横方向Yの最も一方側に位置するスリット45の外側縁から最も他方側に位置するスリット45の外側縁までを横方向長さとする、平面視四角形の範囲である。
ナプキン1においては、図3に示すように、スリット45、特にスリット45が分散配置されたスリット領域45Sが、吸収体4における、本体吸収性シート401(シート41,42)と賦香吸収性シート402(中央吸収部43)との積層領域である肉厚部4Aと重なっているため、ナプキン1の着用時に着用者の体の動きに追従してスリット45が開口し、抗菌剤が配された吸収体4の肌対向面側表層部及び非肌対向面側表層部、すなわち本体吸収性シート401の第1領域Eに体液が素早く誘導され得る。また、スリット45はいわゆる「切り込み」であり、吸収体(吸収性シート)の平面視における一部を切り取って形成した「開口」とは異なり、吸収体4の自然状態(外圧がかかっていない状態)では実質的に開口しておらず、閉じた状態であるため、本体吸収性シート401(第1領域E)に配された抗菌剤や中央吸収部43側に移動した体液が、スリット45を介してナプキン1の肌対向面(表面シート2の肌対向面)に移動する不都合が起こり難い。このように、スリット45の形成はナプキン1の抗菌効果及び吸収性能の向上に有用である。
スリット45は、表面シート2側の開口幅W45(図3参照)が、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。また、開口幅W45の下限値は、スリット45が切り込みで形成されていれば実質的に0mmであるが、0.01mm程度であってもよい。また、横方向Yにおけるスリット45,45どうしの間隔D45(図3参照)は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、そして、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.2mm以下である。スリット45の開口幅W45は下記方法により測定される。
<スリットの開口幅の測定方法>
吸収体(吸収性シート)に形成されたスリットの開口幅は、吸収性物品から測定対象の吸収体を取り出し、該吸収体を水平に置き、マイクロスコープ(例えば、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−1000)により測定倍率を調整して拡大することで測定される。
また、吸収体4を平面視したときのスリット45の長さ(スリット45の延在方向の長さ)L45(図3参照)は、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、そして、好ましくは35mm以下、より好ましくは25mm以下である。
吸収体4にスリット45を形成するためには、吸収体4(吸収性シート401,402の積層体)を、公知の切断手段により部分的に切断すればよい。斯かる切断装置としては、例えば、ロールの周面に、周方向に延びる切断刃が、ロールの周方向及び軸長方向に分散させて多数形成されたカッターロールと、該カッターロールの刃を受けるアンビルロールとを備えた切断装置を例示できる。前述したように、非肌対向面側から肌対向面側に向かって先細りの形状のスリット45を形成する場合には、斯かる形状に対応した外形形状を有する切断刃を用いればよい。
ナプキン1についてさらに説明すると、ナプキン1においては、表面シート2と吸収体4との間、及び吸収体4と裏面シート3との間は、接着剤を塗布して固定されていることが好ましい。また、吸収体4を構成する積層された吸収性シート401,402の層間は、接着されていても接着されていなくてもよいが、使用時において吸収体のヨレや、ズレなどの観点から接着剤により接合されていることが好ましい。接着剤は、公知の手段、例えば、スロットコートガン、スパイラルスプレーガン、スプレーガン、或いはドットガンを用いて塗布することができ、ナプキン1では、スパイラルスプレーガンを用いてスパイラル状に塗布することが好ましい。塗布する接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤が好ましく用いられる。ホットメルト接着剤の塗布量は、1.5g/m2以上10g/m2以下であることが好ましい。
ナプキン1においては、図1及び図2に示すように、吸収性本体5の肌対向面に、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥された平面視線状の圧搾溝9が形成されている。圧搾溝9は、表面シート2及び吸収体4が共に窪んでおり、圧搾溝9の形成位置における表面シート2及び吸収体4に関して、構成部材である各々の繊維の密度は、圧搾溝9の周辺部におけるそれに比して高くなっている。圧搾溝9は、連続線でも破線等のような不連続線でもよく、例えば、不連続な多数の点エンボスのなす列から構成されていてもよい。
ナプキン1は、排泄部対向部Bの縦方向Xに沿う両側部(横方向Yの両端部)それぞれに、圧搾溝9として、縦方向Xに延びる縦圧搾溝92を有し、また、前方部A及び後方部Cのそれぞれに、圧搾溝9として、横方向Yに延びる横圧搾溝91を有している。縦圧搾溝92の存在は、排泄された体液の横方向Yへの拡がりを抑えて漏れを防止するのに特に有効であり、また、抗菌剤を含む中央吸収部43(第2領域F)に体液を集める点でも有効である。
本実施形態のナプキン1は、通常の生理用ナプキンと同様に、ショーツのクロッチ部等に固定して使用される。
ナプキン1においては、経血等の体液が集中する排泄部対向部Bに位置する吸収体4には、前述したとおり、吸収体4を厚み方向に貫通するスリット45が形成されているため、吸収体4の肌対向面(第1領域E)に到達した体液は、スリット45の延在方向(本実施形態では縦方向X)に拡散しつつ、吸収体4の厚み方向に浸透するようになり、結果として吸収体4の内部(中央吸収部43)に速やかに吸収される。しかも、排泄部対向部Bに形成されたスリット45は、前述したとおり図2に示す如くに、非肌対向面側から肌対向面側に向かって先細りの形状を有しているため、スリット45の幅が吸収体4の厚み方向において一定である場合に比して、吸収体4の内部(中央吸収部43)に一旦吸収された体液が着用時の体圧等によって表面シート2側に戻る、いわゆる液戻りの防止効果に優れる。このようにナプキン1は、排泄された体液の引き込み性に優れ、液戻りを起こし難いため、液漏れを起こし難く、表面シート2の肌対向面のドライ感、着用感に優れる。
特に本実施形態のナプキン1においては前述したとおり、吸収体4の外面(表層部)を形成する本体吸収性シート401が、繊維材料の密度が相対的に低い第1領域Eとこれが高い第2領域Fとを厚み方向に有し、且つ第1領域Eが、吸収体4において体液と最初に接触する部分である、肌対向面側表層部及び非肌対向面側表層部をそれぞれ形成しているため、疎密勾配による体液の移行促進効果により、吸収体4の外部から内部への体液の移行がスムーズになされる。
前述した、第1領域Eと第2領域Fとにおける疎密勾配による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、吸収体4の外面(肌対向面及び非肌対向面)を形成し、繊維材料の密度が相対的に低い第1領域Eは、下記方法により測定される液通過時間が短いことが好ましい。斯かる液通過時間が短いほど、当該領域はその厚み方向における体液の透過性に優れ、いわゆる液通りがよく、抗菌剤が第1領域Eから脱落し、あるいは短期間で溶出するなどの不都合が起こりにくいことを意味する。斯かる観点から、第1領域Eを構成する第1シートと第2領域Fを構成する第2シートとを結合一体化して本体吸収性シート401を製造する場合、該第1シート(第1領域Eを構成するシート)は、下記方法により測定される液通過時間が、好ましくは100秒以下、より好ましくは75秒以下である。
<液通過時間の測定方法>
測定は23℃50±3%の恒温恒湿の部屋で行う。測定対象(第1シート)を60mm×60mmの平面視正方形形状にカットし、試験片とする。グリセリンにイオン交換水を加えグリセリンの濃度が85質量%の水溶液を調製し、該水溶液を試験液とする。クランプ付きのスタンドに、内径Φ35mmで長手方向両端が開口端であるフランジ付ガラス円筒(以下、「第1の円筒」ともいう。)を取り付ける。取り付けた第1の円筒の一方の開口端の全体をシリコンパッキンで覆い、さらに該シリコンパッキンに、試験片、別のシリコンパッキン、第2の円筒をこの順で重ね合わせる。第2の円筒は、第1の円筒と同じものであり、第2の円筒の一方の開口端の全体を別のシリコンパッキンで覆い、また、クランプを用いて、第1の円筒が固定されているスタンドに固定する。こうして、開口端どうしが対向配置された第1の円筒と第2の円筒との間に、2枚の同形状同寸法のシリコンパッキンを挟持固定し、更に該2枚のシリコンパッキン間に、1枚の試験片を挟持固定する。第1の円筒を上側、第2の円筒を下側にし、且つ両円筒の長手方向を鉛直方向に一致させて固定する。そして、試験液10gを、第1の円筒の他方の開口端から内部に一気に注入し、該試験液の全量が試験片を通過するのに要した時間を測定し、液通過時間とする。
また、本実施形態のナプキン1においては前述したとおり、第1領域Eよりも厚み方向内方に位置する第2領域Fに、第1領域Eよりも多量の高吸収性ポリマーが含有されているため、第1領域E(すなわち吸収体4の肌対向面側表層部及び非肌対向面側表層部)に存する体液は、該高吸収性ポリマーにより速やかに第2領域Fに引き寄せられ、該高吸収性ポリマーに吸収保持される。したがって本実施形態のナプキン1は、この高吸収性ポリマーの厚み方向における偏在による作用効果と、前述したスリット45による作用効果及び第1領域Eと第2領域Fとの繊維の疎密勾配による作用効果とが相俟って、高い液吸収能を発現し得る。
前述した高吸収性ポリマーによる作用効果(体液の第2領域Fへの引き寄せ効果)をより一層確実に奏させるようにする観点から、本体吸収性シート401の第2領域Fに配される高吸収性ポリマーは、該シート401の面と平行な方向における第2領域Fの全域に分布していることが好ましい。また同様の観点から、第2領域Fにおける高吸収性ポリマーの含有量は、坪量として、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは15g/m2以上、そして、好ましくは60g/m2以下、より好ましくは40g/m2以下である。第2領域Fにおける高吸収性ポリマーの含有量が少なすぎるとこれを使用する意義に乏しく、逆に多すぎると、ゲルブロッキングによる吸収阻害が起こり、液戻りや漏れが起こるだけでなく、体液を吸収した高吸収性ポリマーがナプキン1の着用者の肌の近傍に多量に存在すると着用中のショーツ内湿度が上昇し、菌が繁殖しやすい環境を作りだすおそれがある。なお、第1領域Eには前述したとおり、高吸収性ポリマーが含有されていないか、又は第2領域Fよりも少量の高吸収性ポリマーが含有される。
また本実施形態のナプキン1においては、図2に示すように、スリット45が中央吸収部43(賦香吸収性シート402)を厚み方向に貫通しているため、体液の肌対向面側から非肌対向面側への移行がとりわけスムーズになされ得る。
またナプキン1は、液吸収能のみならず、抗菌性能に優れ、体液の排泄量が比較的多い場合や長時間使用の場合であっても、臭いを気にせずに使用することができる。すなわち、ナプキン1からの悪臭の発生の主な原因の1つとして、菌の繁殖が考えられるところ、吸収体4の肌対向面側表層部及び非肌対向面側表層部を形成する本体吸収性シート401の第1領域Eには、菌の繁殖を阻害し得る抗菌剤が配されているので、吸収体4の肌対向面及び非肌対向面での菌の繁殖が効果的に抑制される。また、菌の繁殖には十分な水分の存在が必要であるところ、吸収体4には前述したとおり、非肌対向面側から肌対向面側に向かって先細りの形状を有するスリット45が形成されていて第1領域Eに水分が残留し難いため、この点でも菌の繁殖が効果的に抑制される。このように、ナプキン1によれば、吸収体4の肌対向面側表層部及び非肌対向面側表層部(第1領域E)に配された抗菌剤と、先細り形状のスリット45との相乗効果により、悪臭の発生が効果的に抑制される。
特に本実施形態のナプキン1においては前述したとおり、本体吸収性シート401における抗菌剤が、繊維材料の密度が相対的に低く、それ故、体液の移動抵抗が比較的小さい第1領域Eに配されているため、体液の移行によって抗菌剤が第1領域Eから脱落し、あるいは短期間で溶出するなどの不都合が効果的に防止され、優れた抗菌性能が長期間にわたって安定的に発現され得る。
また、ナプキン1における吸収体4は前述したとおり、1枚の本体吸収性シート401が折り畳まれることによって複数層に積層されて構成されており、これにより図2及び図4に示すように、吸収体4の縦方向Xに沿う両側部(標準吸収部4B)においても、吸収体4の肌対向面及び非肌対向面と同様に、最外層が第1領域Eからなり且つ該最外層よりも内方に第2領域Fが位置するところ、例えば、一度に多量の体液が排泄されるなどして、体液が吸収体4の肌対向面を通過せずに直接標準吸収部4Bに到達した場合でも、該肌対向面を通過した場合と同様の作用効果が奏される。
また本実施形態のナプキン1においては、図2に示すように、本体吸収性シート401の横方向Yの一端部と他端部との重なり部49にスリット45が形成されている。重なり部49は、本体吸収性シート401どうしが重なっていない部分に比して、抗菌剤の単位面積当たりの重量(坪量)が大きい部分であり、このような抗菌剤坪量の高い重なり部49にスリット45が形成されていることにより、排泄された体液が、スリット45を通じて速やかに重なり部49に到達できるため、抗菌剤を有効に使用できるという効果が奏され、結果として高い抗菌効果が得られる。
中央吸収部43の抗菌性能をより一層高める観点から、第1領域Eのみならず、第2領域Fにも抗菌剤が配されていることが好ましい。経血等の体液には、脂質、糖質、タンパク質、血漿などが存在し、これらの物質により菌の繁殖が促進されることで悪臭がより発生しやすくなると考えられるところ、本実施形態のナプキン1における第2領域Fには前述したとおり、第1領域Eよりも多量の高吸収性ポリマーが配されていて、該高吸収性ポリマーの近傍に該物質が引き寄せられやすくなっているため、この第2領域Fに抗菌剤が配されていることにより、より優れた抗菌性能が得られるようになる。第2領域Fに配される抗菌剤は、第1領域Eに配されるものと同種であってもよく、異種であってもよい。また、第2領域Fに抗菌剤を配する場合、第2領域Fにおける抗菌剤の含有量(坪量)は、第1領域Eにおける抗菌剤の含有量(坪量)と同等以上でもよいが、通常はそれよりも少量で十分である。
体液との接触面積を増やし、抗菌効果を向上させる観点から、第1領域Eに配される抗菌剤は、本体吸収性シート401の面と平行な方向における第1領域Eの全域に分布していることが好ましい。抗菌剤の坪量は、抗菌剤の種類等に応じて適宜に決定することができるが、一例を挙げると、好ましくは0.005g/m2以上、より好ましくは0.03g/m2以上、そして、好ましくは5.0g/m2以下、より好ましくは3.0g/m2以下である。なお、第2領域Fに抗菌剤を配する場合の坪量は、第1領域Eにおけるそれと同じでもよく、異なっていてもよい。すなわち第2領域Fにおける抗菌剤の坪量は、第1領域Eにおけるそれよりも多くてもよく、少なくてもよい。
同様の観点から、本体吸収性シート401における抗菌剤の含有量は、該シート401の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは12質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
また、本実施形態のナプキン1においては前述したとおり、吸収体4の内部に賦香吸収性シート402を含む中央吸収部43が配されているため、仮に、使用中のナプキン1から悪臭が発生しても、該香料によるマスキング効果及び/又はハーモナージュ効果により、悪臭が効果的に消臭される。したがってナプキン1によれば、抗菌剤と香料との相乗効果により、体液の排泄量が比較的多い場合や長時間使用の場合であっても、臭いを気にせずに使用することができる。
また、吸収体4が単に賦香されているだけでは、ナプキン1の使用時に吸収体4からその賦香された香料成分がほとんど揮散してしまっていて、所定の消臭効果が発現しないおそれが懸念されるが、ナプキン1においては、賦香吸収性シート402(中央吸収部43)が本体吸収性シート401の積層構造(折り畳み構造)に内包され、しかも、該シート401は、繊維材料の密度が比較的高い(すなわち、通気性及び通液性に乏しい)第2領域Fを含んで構成されているため、斯かる懸念が払拭されており、優れた消臭性能が長期間にわたって安定的に発現され得る。
中央吸収部43を構成する賦香吸収性シート402の一方の面の面積は、本体吸収性シート401の一方の面の面積に比して小さいことが好ましい。斯かる構成により、排泄部対向部Bでの液吸収性とフィット性を高めながらも、本体吸収性シート401の非肌対向面側にも適度に体液が吸収され、非肌対向面側に配置されている抗菌剤を有効に利用できるという効果が奏される。
本発明で用いる香料としては、大気圧下で香気成分を大気中に揮散して、経血等の排泄液に起因する不快な臭いを香気によってマスキング及び/又はハーモナージュし得るものであればよく、常温常圧の環境下でその香気を知覚し得る通常の香料を特に制限なく用いることができ、使い捨ておむつなどの吸収性物品において従来用いられてきたものを用いることができる。香料としては例えば、特開2007−244764号公報に記載されているグリーンハーバル様香気を有する香料、植物の抽出エキス、柑橘類の抽出エキスなどが挙げられる。
賦香吸収性シート402(中央吸収部43)における香料の含有量は特に制限されず、香料の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、展開状態の賦香吸収性シート402における香料の含有量は、好ましくは0.1g/m2以上1g/m2以下、より好ましくは0.2g/m2以上0.6g/m2以下である。
本発明で用いられる抗菌剤としては、生理用ナプキンなどの吸収性物品において抗菌用途に用いられるものを特に制限なく用いることができる。例えば、抗菌性の金属、抗菌性金属担持物、有機系抗菌剤等が挙げられる。
抗菌性を有する金属としては、銅、銀、金、鉛、ニッケル、錫、亜鉛、鉄、ジルコニウム等が挙げられる。
抗菌性金属担持物としては、銀ゼオライト、ジビニルベンゼン−2−ビニルピリジン−2−ビニルピリジン銀共重合体(例えば特開2006−307404号公報記載のもの)、アルミニウム・銀・ナトリウム硝酸ケイ酸塩(例えば特開2005−232654号公報記載のもの)、銀又は亜鉛を担持した二酸化ケイ素・酸化亜鉛・酸化アルミニウムの複合物(具体的には、抗菌性金属を担持した金属置換カンクリナイト様鉱物)、リン酸銀ジルコニウム、銀・亜鉛ゼオライトの混合物、等の水難溶性又は水不溶性の抗菌剤が挙げられる。
有機系抗菌剤としては、第4級アンモニウム塩が好ましく、その中でも水難溶性のベンザルコニウムクロライド、セチルリン酸化ベンザルコニウム等が好適に挙げられる。
本体吸収性シート401で用いられる抗菌剤についてさらに説明すると、該シート401の各部(第1領域E、第2領域F)に配された抗菌剤は、その配置部分を厚み方向に水によって移動し易い状態のもの(水易動性を有して存在している抗菌剤)のみであってもよく、該水によって移動し難い状態のもの(水難移動性を有して存在している抗菌剤)のみであってもよいが、このような水移動性(シートにおける抗菌剤の配置部分を該シートの厚み方向に水が移動した場合の、該抗菌剤の移動の程度)が異なる複数種の抗菌剤を含むことが好ましい。すなわち本体吸収性シート401に配された抗菌剤は、相対的な関係において、該シート401を厚み方向に移動する水によって移動し易い状態のものと、該水によって移動し難い状態のものとを含むことが好ましい。そして、本体吸収性シート401に配された抗菌剤は、水溶性が相対的に高くて水移動性が高い抗菌剤と、水溶性が相対的に低くて水難移動性を有して存在している抗菌剤との両者を含むことがより好ましい。特に、吸収体4の肌対向面側表層部を形成する本体吸収性シート401(特に第1領域E)において、前記のように、水移動性が異なる複数種の抗菌剤を含むことが好ましい。
吸収体4の肌対向面側表層部を形成する本体吸収性シート401(第1領域E)において、水易動性を有して存在していた抗菌剤は、ナプキン1の使用時に経血等の体液が吸収体4を肌対向面側から非肌対向面側に移動するのに伴って、吸収体4の非肌対向面側に移動しやすい。また、吸収体4には前述したとおり、非肌対向面側から肌対向面側に向かって先細りの形状のスリット45が形成されていて、同方向への液の移動(液戻り)が起こり難いため、前記のように一旦非肌対向面側に移動した抗菌剤が、液戻りによって肌対向面側に移動することは起こり難い。したがって、ナプキン1の未使用時に吸収体4の肌対向面側(表面シート2側)に水易動性を有して存在していた抗菌剤は、ナプキン1の使用時には、ナプキン1の着用者の肌から比較的離れた部位である吸収体4の非肌対向面側(裏面シート3側)に比較的高濃度で存在するようになり、その結果、該裏面シート3側は抗菌効率及び抗菌性維持力が高く、不快な臭い成分が裏面シート3及び着衣を介して外部に蒸散される不都合が長時間にわたって効果的に抑制され得る。斯かる吸収体4の非肌対向面側における水易動性抗菌剤による作用効果は、特に裏面シート3が透湿性を有している場合に有効である。
一方、吸収体4の肌対向面側表層部を形成する本体吸収性シート401(第1領域E)において、水難移動性を有して存在していた抗菌剤は、ナプキン1の使用時に経血等の体液が吸収体4を肌対向面側から非肌対向面側に移動しても、その体液の移動によっては移動し難く、該抗菌剤が当初配置されていた吸収体4の肌対向面側(表面シート2側)に安定的に存在し得る。したがって、吸収体4の肌対向面側では、水難移動性抗菌剤によって安定的に抗菌・消臭がなされ、不快な臭い成分が表面シート2を介して着用者の肌側に蒸散される不都合が効果的に抑制され得る。
前記の水移動性に影響を及ぼす主な要素として、抗菌剤自体の性質や、抗菌剤の配置形態が挙げられる。
水易動性に関し、特に影響が大きいのは抗菌剤の配置形態であり、具体的には、水存在下で容易に移動し得る配置形態であれば、該抗菌剤は水易動性を有して存在しやすいと考えられる。一般には、抗菌剤が周辺部(例えば吸収体の繊維材料)に強固な固着手段(例えば接着剤)を介さずに配されている場合や、抗菌剤がその配置部分を構成する繊維どうしの空隙よりも小さいために繊維との絡み合いを介さずに配されている場合、具体的には例えば、繊維材料の集合体に固着手段無しで担持されている場合は、該抗菌剤は水易動性を有して存在しやすい。なお、水易動性に関しては、抗菌剤自体の性質、すなわち、抗菌剤が水溶性であるか、水難溶性であるか、水不溶性であるかは、あまり影響がないと考えられる。
一方、水難移動性に関し、特に影響が大きいのは抗菌剤自体の性質であり、具体的には、水に対する溶解性であると考えられる。すなわち、抗菌剤の水溶性の高低によって、当該抗菌剤の所定部分(例えば第1領域E)における水難移動性の程度を決定することが可能となる。一般には、抗菌剤の水に対する溶解性が低いほど、該抗菌剤は水難移動性を有して存在しやすく、すなわち水難溶性又は水不溶性の抗菌剤は、比較的水難移動性を有して存在しやすい。しかしながら、水溶性の抗菌剤であっても、上述したように、該抗菌剤の配置形態如何によっては、該抗菌剤は所定部分に水難移動性を付与することが可能である。例えば、本実施形態のナプキン1における本体吸収性シート401の第2領域Fは前述したとおり、第1領域Eに比して繊維材料の密度が相対的に高く、そのため、第1領域Eに比して体液の移行による抗菌剤の脱落が起こり難いため、第2領域Fに配された抗菌剤の水に対する溶解性が比較的高くても、該抗菌剤は第2領域Fに水難移動性を有して存在する可能性があり、体液の移行によって第2領域Fから脱落し難くなり得る。したがって、抗菌剤を第1領域Eあるいは第2領域Fといった所定部分に水難移動性を有して存在させるためには、抗菌剤の水に対する溶解性と抗菌剤の配置形態との双方を考慮する必要がある。
吸収体4を厚み方向に移動する水によって移動し難い(水難移動性を有して存在する)抗菌剤としては、水難溶性又は水不溶性のものが好ましい。ここで、抗菌剤が水難溶性であるとは、25℃のイオン交換水100g当たりに対する溶解度が20g未満であることを意味し、抗菌剤が水不溶性であるとは、該溶解度が0.1g以下である場合を意味する。斯かる定義から明らかなように、水不溶性の抗菌剤は、水難溶性でもある。ちなみに、抗菌剤が水溶性であるとは、前記溶解度が20g以上であること意味する。
前記溶解度は次の方法によって測定することができる。200mLビーカーに入れた25℃のイオン交換水100gに対して、十分乾燥させた測定対象(抗菌剤)を投入し、長さ20mm、幅7mm のスターラーチップを入れ、マグネチックスターラーで600rpmで撹拌し、1時間撹拌しても溶解できない直前の投入量を、当該抗菌剤の25℃の水に対する溶解度とする。なお、マグネチックスターラーとしてはアズワン株式会社製HPS−100等を使用できる。
水難溶性又は水不溶性の抗菌剤の25℃のイオン交換水100g当たりに対する溶解度は、好ましくは10g以下、より好ましくは1g以下である。また前述したとおり、抗菌剤の配置箇所が、繊維材料の密度が比較的高い第2領域Fであれば、その抗菌剤が水溶性であっても第2領域Fに水難移動性を有して存在し得るので、水溶性の抗菌剤を使用することは可能である。
前記の水難移動性を考慮して、本体吸収性シート401、特に第1領域Eで好ましく用いられる水難溶性又は水不溶性の抗菌剤としては、前記の抗菌性金属担持物を例示できる。なお、抗菌性金属担持物が水難溶性又は水不溶性であるとは、担持された金属は水溶性であっても、抗菌性金属を担持する担体(好ましくは、多孔性粒子)が水難溶性又は水不溶性であることを意味する。
一方、吸収体4を厚み方向に移動する水によって移動しやすい(水易動性を有して存在する)抗菌剤としては、イオン性のものが好ましい。水移動性が高い抗菌剤としては水溶性が高いものが好ましいが、吸収体の構成成分に対する接着等の固定がなされていないのであれば、水溶性が低くても、菌との親和性を考慮して、有機性の抗菌剤を好適に使用できる。特に、水移動性を考慮したイオン性で、且つ、菌との親和性を考慮した有機性の抗菌剤として、セチルリン酸ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等の陽イオン性の抗菌剤等が好ましい。
吸収体4には、抗菌性金属担持物とイオン性の有機性抗菌剤とが含まれている。吸収体4の肌対向面側から排泄液が浸入してくると、相対的に水移動性が高いイオン性の有機性抗菌剤が吸収体4の非肌対向面側へと移動し易く、相対的に水移動性が低い抗菌性金属担持物は吸収体4の厚み方向に関して移動し難いので、各抗菌剤の存在分布が排泄液の移動に伴って変化する。
吸収体4は、前述した抗菌剤に加えてさらに消臭剤を含んでいることが好ましく、特に賦香吸収性シート402(中央吸収部43)は消臭剤を含んでいることが好ましい。賦香吸収性シート402をはじめとする吸収体4に消臭剤を配合することで、抗菌剤との組み合わせにより、菌による不快な臭いの発生を一層効果的に抑制することができる。
賦香吸収性シート402(中央吸収部43)における消臭剤の含有量は、該シート402の全質量に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
消臭剤としては、それ自体が臭気(臭気物質)に直接作用して、すなわち臭気(臭気物質)を吸着、中和、分解等して、消臭効果を発現し得る物質であり、当該技術分野においても消臭用途に汎用されているものを用いることができる。本発明に用いられる消臭剤としては、例えば、多孔性粒子や、水溶性のpH緩衝剤が挙げられる。
消臭剤としての多孔性粒子は、少なくとも粒子表面に多数の細孔を有する粒子であって、揮発する臭い成分をその孔に捕集、吸着及び/又は包摂できるものである。多孔性粒子の材質としては、有機化合物、無機化合物若しくはそれらの重合体、又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。その具体例としては、例えば多孔メタクリル酸ポリマー、多孔アクリル酸ポリマー等のアクリル酸系ポリマー、多孔ジビニルベンゼンポリマー、多孔ピリジン共重合体等の芳香族系ポリマー、及びそれらの共重合体等の合成の多孔質ポリマー;キチン及びキトサン等の天然の多孔質ポリマー;酸化亜鉛、活性炭、シリカ、二酸化ケイ素(シリカゲル)、ケイ酸カルシウム、アルミノ珪酸塩化合物、ハイシリカゼオライト(疎水性ゼオライト)、セピオライト、カンクリナイト、ゼオライト、及び水和酸化ジルコニウム等の無機多孔質物質などの金属担持多孔質などが挙げられ、これらからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。消臭の対象となる尿や経血等の排泄液由来の臭い成分は、アンモニア、アミン類、脂肪酸類、硫化水素やメルカプタン類等の成分が複数混合されたものである。一般的に、これらの臭い成分の分子サイズは1nm以上であるので、平均細孔径が2nm以上である多孔性粒子を消臭剤として用いることで、複数の臭い成分を効果的に吸着することができる。
消臭剤としての多孔性粒子の平均細孔径は、細孔径分布における細孔径のピークを意味する。多孔性粒子の細孔径のピークは、臭気の吸着効果と、前述した香料から揮散される香気成分を吸着しにくく、香りが変質、低減しにくくする観点から、香気成分の大きさよりも小さいことが好ましく、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.04μm以下、そして、好ましくは0.005μm以上である。多孔性粒子の細孔径のピークは下記方法により測定される。
<多孔性粒子の細孔径のピークの測定方法>
多孔性粒子の細孔径のピークは、細孔分布測定装置(日本ベル株式会社、商品名:BELSORP mini II)を用いて、液体窒素を用いた多点法により測定することができる。細孔分布におけるピークトップを細孔径のピークとする。測定試料は110℃で1時間加熱する前処理を施す。
また、消臭剤としての水溶性のpH緩衝剤は、排泄液などの液相中に発生した酸性やアルカリ性の臭い成分を中和し、pHの変化を小さくする剤である。すなわち、平衡作用による中和消臭剤である。このような剤としては、特に制限されるものでないが、例えば弱酸やその共役塩基、あるいはそれらの混合物又はその塩、弱塩基やその共役酸、あるいはそれらの混合物又はその塩などが挙げられる。水溶性のpH緩衝剤の具体例としては、弱酸としてはクエン酸等が挙げられ、その塩としてはNa、K、Ca等の金属塩が挙げられる。また弱塩基としては、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンといったポリヒドロキシアミン化合物等が挙げられる。
消臭剤としての水溶性のpH緩衝剤として特に好ましいものは、クエン酸とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとを含有するものである。このような弱酸と弱塩基成分との組み合せによって、酸性及びアルカリ性の臭い成分由来の臭いだけでなく、pH緩衝性を有する消臭剤だけでは抑制できなかった中性付近の臭いも含めて、臭いの産生を強力に抑制することができる。斯かる好ましいpH緩衝剤を含む吸収体4を備えたナプキン1によれば、着用時間が比較的長時間となった場合でも、排泄された体液に由来した不快臭が着用者の周囲でほぼ気づかれることがない程度の高い消臭効果が実現され得る。
なお、前述した消臭剤のうち、多孔性粒子は抗菌性又は殺菌性の金属を担持することができる。その場合には、当該多孔性粒子は、消臭剤と抗菌剤の双方の性質を併せ持つものである。ナプキン1は、吸収体4(特に中央吸収部43)に抗菌性金属を担持した多孔性粒子を含むことが好ましい。その場合には、抗菌性金属を担持した多孔性粒子の含有量は、抗菌剤及び消臭剤の双方として含有量を考慮する。すなわち、吸収体4が、抗菌性金属を担持した多孔性粒子を含有している場合は、該吸収体4が、抗菌剤を含有しているとともに、消臭剤を含有していると解して、抗菌剤及び消臭剤それぞれの含有量を算出する。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の吸収性物品は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、前記実施形態における吸収体4は吸収性シート401,402を含んで構成されていたが、本発明に係る吸収体は、このような吸収性シートを含む構成のものに限定されず、要は、抗菌剤が配置可能な肌対向面側表層部及び非肌対向面側表層部を有し、且つ厚み方向に貫通するスリット(先細り形状のスリット)が形成可能であればよく、例えば、吸収性材料を積もらせて形成されたいわゆる積繊構造の吸収体でもよく、吸収性シートと積繊構造の吸収体との複合体でもよい。
また、本発明の吸収性物品は、前述した縦圧搾溝92及び横圧搾溝91の何れか一方若しくは双方又は全ての圧搾溝9を有しないものであってもよい。
本発明の吸収性物品は、図示の如き生理用ナプキンの他、パンティーライナー(おりものシート)等であってもよい。