JP2006262916A - 吸収性物品 - Google Patents

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信也 佐藤
Taketo Ito
毅人 伊藤
Takao Kasai
孝夫 笠井
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Abstract

【課題】 吸収体の構造が破壊されにくく、しかも、高吸収性ポリマーが膨潤してもゲルブロッキングが起こりにくい吸収性物品を提供すること。
【解決手段】 吸収性物品は、親水性を有する長繊維2aのウエブ2を含む吸収体1を具備する。ウエブ2は、長繊維2aどうしの交点が結合した網目状構造を有し、該網目状構造内に高吸収性ポリマー3が埋没担持されている。長繊維2aどうしの結合状態は、ウエブ2が湿潤状態になることで弱められるか又は解除可能になっている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
吸水コアを上層、下層及び両層間に位置する吸収層から構成し、該吸収層として、高吸収性ポリマーの散布層上にアセテート繊維のトウからなる繊維層を配した吸収性物品が知られている(特許文献1参照)。高吸収性ポリマーはその一部が接着剤によって下層に結合されており、また別の一部はトウの繊維層内に収容されている。この吸水コアでは、高吸収性ポリマーの一部がトウの繊維層内に収容されてはいるものの、大部分の高吸収性ポリマーは下層に結合された状態になっている。つまりトウの繊維層と高吸収性ポリマーの散布層とが別個に存在している。その結果、着用者の動作に起因して、吸収性物品の着用中に吸水コアが変形した場合、その構造が壊れやすい。
この技術とは別に、吸収性物品の吸収体として、捲縮した短繊維が熱溶融性の高分子粒子を介して高吸収性ポリマーと強く結合しており、更に該短繊維が熱溶融性の高分子粒子とゆるく結合している構造を有するものが提案されている(特許文献2参照)。この吸収体においては、吸液によって高吸収性ポリマーが膨潤すると、高吸収性ポリマーと該短繊維との強い結合が維持されたままで、該短繊維と熱溶融性の高分子粒子とのゆるい結合が、捲縮に起因する該短繊維の弾性的な伸びによって解離する。その結果、繊維どうしの間隔が拡大すると共に高吸収性ポリマーどうしの間隔も拡大する。この技術では、この現象を利用して、高吸収性ポリマーのゲルブロッキングを起こさせ難くしようとしている。しかし、このような構造の吸収体を製造するには、原料として短繊維を用いることが必須である。換言すれば、長繊維を用いて、このような構造の吸収体を製造することは極めて困難である。
特表2004−500165号公報 特開2001−46434号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
本発明は、親水性を有する長繊維のウエブを含む吸収体を具備する吸収性物品であって、
前記ウエブは、前記長繊維どうしの交点が結合した網目状構造を有し、該網目状構造内に高吸収性ポリマーが埋没担持されており、
前記長繊維どうしの結合状態が、前記ウエブが湿潤状態になることで弱められるか又は解除可能になっている吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明によれば、吸収性物品の吸収体を、従来の吸収体と同程度の吸収容量を保ちつつ、薄型化及び低坪量化することができる。また、吸収体を構成する繊維が結合しているので、着用者が激しい動作を行っても吸収体の構造が破壊されにくい。しかも、その結合は、吸収体が湿潤することで弱められるか又は解除可能になっているので、高吸収性ポリマーが吸液しても膨潤阻害が起こりにくい。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。本発明の吸収性物品には例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
本発明の吸収性物品は、典型的には、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。表面シート及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば表面シートとしては、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルムを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
図1には本発明に係る吸収体の一実施形態の模式図が示されている。本実施形態の吸収体1は、十分な吸収容量を有しながらも、薄型で低坪量であることによって特徴付けられる。そのような特徴を有する吸収体1は、高吸収性ポリマー3を含む長繊維のウエブ(以下、ウエブという)2を備えている。
ウエブ2を構成する長繊維は親水性を有するものである。親水性を有する長繊維として本発明において用いられるものには、本来的に親水性を有する長繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された長繊維の双方が包含される。好ましい長繊維は本来的に親水性を有する長繊維であり、特にアセテートやレーヨンの長繊維が好ましい。とりわけアセテートは湿潤しても嵩高性が保持されるので特に好ましい。
長繊維としては捲縮しているもの又は捲縮していないものを用いることができる。長繊維が捲縮している場合その捲縮率(JIS L0208)は、好ましくは20〜90%であり、更に好ましくは40〜90%、一層好ましくは50〜80%である。捲縮した長繊維からウエブを形成することで、該ウエブ中に高吸収性ポリマーを安定的に且つ多量に埋没担持することが容易となり、高吸収性ポリマーを多量に用いた場合であってもその極端な移動や脱落が起こりにくくなる。長繊維を捲縮させる手段に特に制限はない。また、捲縮は二次元的でもよく或いは三次元的でもよい。捲縮率は、長繊維を引き伸ばしたときの長さと、元の長繊維の長さとの差の、伸ばしたときの長さに対する百分率で定義され、以下の式から算出される。
捲縮率=(A−B)/A × 100 (%)
元の長繊維の長さとは、長繊維が自然状態において、長繊維の両端部を直線で結んだ長さをいう。自然状態とは、長繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重で下方に垂らした状態をいう。長繊維を引き伸ばした時の長さとは、長繊維の捲縮がなくなるまで伸ばした時の最小荷重時の長さをいう。
長繊維の捲縮率は前述の通りであり、捲縮数は1cm当たり2〜25個、特に4〜20個、とりわけ10〜20個であることが好ましい。
埋没担持とは、高吸収性ポリマーが、長繊維どうしの交点が結合した網目状構造内に埋没担持されている状態、あるいは捲縮した長繊維によって形成される空間内に入り込んで、着用者の激しい動作によっても該ポリマーの極端な移動や脱落が起こりにくくなっている状態を言う。このとき、長繊維は高吸収性ポリマーに絡みつき、あるいは引っ掛かりを生じ、あるいはまた、高吸収性ポリマーは自身の粘着性により長繊維に付着している。長繊維が形成する空間は、外部から応力を受けても変形しやすく、また、長繊維全体で応力を吸収することができるので、空間が破壊されるのを防いでいる。さらには長繊維どうしの交点が結合した網目状構造内により高吸収ポリマーを担持する空間が破壊されるのを防いでいる。図1に示すように、高吸収性ポリマーは、そのほぼ全部がウエブ2中に均一に埋没担持されている。吸収体1の製造条件によっては高吸収性ポリマーの一部がウエブ2中に埋没担持される場合もある。
長繊維の繊維径に特に制限はない。一般に1.0〜7.8dtex、特に1.7〜5.6dtexの長繊維を用いることで満足すべき結果が得られる。本発明において長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、測定対象とするウエブの全長が100mm未満である場合には、当該ウエブ中の繊維の好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは80%以上がウエブ全長にわたって延びている場合に、当該ウエブの繊維は長繊維であるとする。本発明で用いられる長繊維は一般に連続フィラメントと呼ばれるものである。また、連続フィラメントの束が一方向に配向したものは一般にトウと呼ばれている。従って、本発明における長繊維とは、連続フィラメントを含む概念のものである。また長繊維が配向したウエブとは、連続フィラメントのトウ層を含む概念のものである。
高吸収性ポリマー3としては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状が不定形タイプ、塊状タイプ又は俵状タイプである場合には、ウエブに対して同量以上、10倍以下の坪量で埋没担持させることができる。また、球粒凝集タイプや球状タイプの場合には、ウエブに対して同量以上、5倍以下の坪量で埋没担持させることができる。これらの粒子形状は、特に高吸収量と薄型化を両立させたい場合は前者を、風合い(高吸収性ポリマーのしゃり感の低減)を重視する場合は後者を選択することが望ましい。高吸収性ポリマー3は、ウエブ2中に埋没担持されている。図1においては、高吸収性ポリマー3のほぼ全部がウエブ2中に均一に埋没担持されている状態が示されているが、吸収体1の製造条件によっては高吸収性ポリマー3が、ウエブ2の厚み方向中央部から下部にわたる部位に偏倚して存在している場合や、ウエブ2の厚み方向中央部から上部にわたる部位に偏倚して存在している場合もある。
「均一」とは、吸収体1の厚み方向あるいは幅方向において、高吸収性ポリマーが完全に一様に配されている場合、及び吸収体1の一部を取り出した時に、高吸収性ポリマーの存在量のばらつきが、坪量で2倍以内の分布を持つ場合をいう。このようなばらつきは、吸収性物品を製造する上で、まれに高吸収性ポリマーが過剰に供給され、部分的に散布量が極端に高い部分が生じることに起因して生ずるものである。つまり前記の「均一」は、不可避的にばらつきが生ずる場合を包含するものであり、意図的にばらつきが生じるように高吸収性ポリマーを分布させた場合は含まれない。
本実施形態においては長繊維が捲縮を有しているので、該長繊維は高吸収性ポリマーを保持し得る多数の空間を有している。その空間内に高吸収性ポリマーが保持される。その結果、多量の高吸収性ポリマーを散布してもその極端な移動や脱落が起こりにくくなる。また着用者が激しい動作を行っても吸収体1の構造が破壊されにくくなる。使用する高吸収性ポリマーによって、捲縮率や使用する長繊維の量を適宜調節する。従来の吸収体においても繊維材料の量を多くすれば高吸収性ポリマーを多量に保持することは可能であったが、その場合には吸収体の坪量及び厚みが大きくなってしまう。これに対して本発明においては、繊維材料の量に対して高吸収性ポリマーの量を相対的に大きくすることが容易である。具体的には、吸収体全体で見たとき、好ましくは高吸収性ポリマーの坪量が長繊維の坪量以上、更に好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上となっている。これによって吸収体1の薄型化及び低坪量化が図られている。長繊維の坪量に対する高吸収性ポリマーの坪量の比率の上限値は、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落防止の観点から決定される。長繊維の捲縮の程度にもよるが、該上限値が10倍程度であれば、着用者が激しい動作を行っても高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が起こりにくい。
本実施形態においては、吸収体1の構造を一層安定的に保つことを目的として、図1(b)に示すように、ウエブ2を構成する長繊維2aは、それらの交点が結合している。これによってウエブ2は三次元の網目状構造を有し、該網目状構造内に高吸収性ポリマー3を埋没担持させている。長繊維2aどうしの交点を結合することで、吸収体1に引っ張りやねじれ等の外力が加わっても、吸収体1が過度に変形しづらくなり、高吸収性ポリマー3の脱落が一層効果的に防止される。
高吸収性ポリマーが埋没担持される程度の評価法として、次の方法を用いることができる。100mm×200mmに作製したウエブの長手方向中央部を切断し、100mm×100mmの試験片を得る。この切断面を真下にして、振幅5cmで1回/1秒の速度で左右に往復20回振動を与える。切断面からの落下したポリマーの重量を測定する。脱落した高吸収性ポリマーの重量が、試験片中に存在していた高吸収性ポリマーの全量に対して、25重量%以下、特に20重量%以下、とりわけ10重量%以下である場合、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が起こり難くなっている状態であると言える。
前記の脱落評価の試験を行った試験片に対して、次の評価法を行うこともできる。脱落評価の試験を行った試験片に対して、生理食塩水(0.9重量%NaCl)を50g均等に散布して、試験片の膨らみ方を目視観察する。試験片の厚みのばらつきが2倍以内の場合、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が起こり難くなっている状態であると言える。
前記の各評価法においては、ウエブを水平方向で見たときに、高吸収ポリマーが同一坪量で散布してある領域から試験片をサンプリングする。
ウエブ2を構成する長繊維2aどうしは、液の透過や拡散が阻害されないようにするために、図1(b)に示すように、多数の小さな結合点10によって散点状に結合されていることが好ましい。散点状に結合点10を形成するには例えば接着剤をスプレー方式で塗工する方法が挙げられる。スプレー方式としては、スロットスプレー法、カーテンスプレー法、メルトブローン法、スパイラルスプレー法等が挙げられる。或いは、繊維状の接着剤を長繊維と共に混合してウエブ2を形成した後に、繊維状の該接着剤によって長繊維2aどうしの交点を結合してもよい。なお、このような結合方法を用いると、長繊維2aどうしが結合することはもちろんのこと、長繊維2aと高吸収性ポリマー3の一部も接着する場合がある。
図2(a)には、図1(a)に示す吸収体1が液を吸収した状態が示されている。高吸収性ポリマーは、吸液によって膨潤し、吸液前に比較して大きくなっている。ところで、長繊維2aどうしの交点を結合してウエブ2中に網目状構造を形成すれば、高吸収性ポリマー3の脱落を効果的に防止されるが、その反面、高吸収性ポリマー3が吸液して膨潤した場合に、その膨潤が網目状構造によって阻害されることがある。膨潤が阻害されると、高吸収性ポリマーはその吸収性能を十分に発揮することができなくなり、吸収体全体としての吸収性能が低下してしまう。そこで、本実施形態においては、吸液によりウエブ2が湿潤状態になることで、長繊維2aどうしの結合状態が弱められるか又は解除可能になっている。この状態を、図2(b)を参照しながら説明する。
図2(b)においては、長繊維2aどうしの結合点10が接着剤によって結合している状態が示されている。ウエブが吸液して湿潤状態になると、長繊維2aどうしを結合している接着剤の接着力が低下して、同図中、符号10aで示されるように、長繊維2aどうしの結合状態が解除される。また符号10bで示されるように、接着剤が伸びて長繊維2aどうしの結合状態が弱められる。それらの結果、高吸収性ポリマー3の膨潤によって、ウエブ2中に形成されている網目状構造の網目が広がる。つまり、高吸収性ポリマー3は、網目状構造に起因する膨潤阻害を受けにくくなる。これによって、高吸収性ポリマー3は十分に膨潤することができ、吸収体1の吸収性能の低下が効果的に防止される。以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、高吸収性ポリマーの膨潤が起こる程度にウエブが吸液した状態であれば、ウエブは湿潤状態であると言える。
長繊維2aどうしの結合には、例えばポリビニルアルコール等の水溶性接着剤を用いることができる。水溶性接着剤は、ウエブ2の吸液によって液に溶解するので、ウエブ2が湿潤状態になることで、長繊維2aどうしの結合が弱められるか又は解除される。水溶性接着剤は、例えば液体、粉体、繊維の形態で用いられる。
長繊維2aが吸水性又は吸湿性の材料からなる場合、例えばアセテートからなる場合には、長繊維2aどうしの結合に、水溶性接着剤に代えて非水溶性接着剤やホットメルト接着剤を用いることができる。前記の材料からなる長繊維2aにおいては、吸水や吸湿によって水分が繊維2aの表面にブリードアウトしやすい。ブリードアウトによって、繊維2aと前記の接着剤との界面に水分が介在し、介在した水分によって繊維2aと前記の接着剤との結合が弱められる。その結果、ウエブ2中に形成されている網目状構造の網目が広がる。この実施形態においては、前記の接着剤が、長繊維2aをその周方向全域にわたって取り囲んでいない場合には、長繊維2aの表面と接着剤との界面にブリードアウトした水分によって、接着剤が繊維表面から乖離し結合が解除される。一方、前記の接着剤が、長繊維2aをその周方向全域にわたって取り囲んでいる場合には、ブリードアウトした水分によって長繊維2aどうしの結合が弱められるが、前記の接着剤が水に実質的に溶解しないので、結合が解除されることは希である。
非水溶性接着剤としては、例えばエマルジョン系接着剤を好ましく用いることができる。エマルジョン系接着剤としては、酢酸ビニル樹脂系、酢酸ビニル共重合樹脂系、EVA樹脂系、アクリル樹脂系、合成ゴム系ラテックス等の合成樹脂等から選択されるベースポリマーを含むものを水中に均一に分散させたて用いることができる。特にこの中でアクリル樹脂系エマルジョン型接着剤を好ましく用いることができる。一方、ホットメルト接着剤としては、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等から選択されるベースポリマーを含むものを用いることができる。ホットメルト接着剤は一般に非水溶性であることが多いから、ホットメルト接着剤は、非水溶性接着剤の一部でもあるということができる。
以上の各種接着剤の使用量は、ウエブ2の坪量にもよるが、3〜30g/m2、特に5〜15g/m2であることが、吸収体1の剛性を過度に高めることなく、その強度を維持すると共に高吸収性ポリマーの膨潤阻害を防止する点から好ましい。
接着剤の坪量と関連して、本実施形態に係る吸収体1においては、高吸収性ポリマー3を含むウエブ2の坪量は、該吸収体1を例えば使い捨ておむつに用いる場合には、120〜400g/m2、特に150〜300g/m2とすることが好ましい。生理用ナプキンに用いる場合には、35〜200g/m2、特に50〜150g/m2とすることが好ましい。失禁パッドに用いる場合には、35〜500g/m2、特に50〜400g/m2とすることが好ましい。ウエブ2の坪量をこの範囲内にすることで、吸収体1を十分に薄型にすることが可能となる。
吸収体1の厚みは、これが使い捨ておむつに用いられる場合には、好ましくは1〜4mm、更に好ましくは1.5〜3mmである。生理用ナプキンに用いられる場合には、好ましくは0.5〜3mm、更に好ましくは1〜2mmである。失禁パッドとして用いられる場合には、好ましくは0.5〜4mm、更に好ましくは1〜3mmである。
本実施形態に係る吸収体1においては、ウエブ2を構成する長繊維が、吸収体1の平面方向に一方向に配向していることが好ましい。長繊維が一方向に配向していることに起因して、吸収体1に液が吸収されると、該液は長繊維の配向方向へ優先的に拡散する。つまり吸収体の平面方向に優先的に拡散する。逆に、長繊維の配向方向と直交する方向への拡散は抑制される。長繊維が吸収性物品の長手方向に配向している場合には、吸収性物品の側部からの液漏れ(横漏れ)が効果的に防止される。
長繊維の配向の程度は、配向度で表して1.2以上、特に1.4以上であることが好ましい。本実施形態において配向度はKANZAKI社のMicrowave molecular orientation analyzer MOA-2001Aを用いて測定する。サンプルサイズは長手方向100mm、幅50mmとし、3点の平均値を配向度とする。サンプルサイズがこの大きさに満たない場合は、複数のサンプルを互いに重ならないように配して測定する。
長繊維が吸収性物品の長手方向に配向している場合には、吸収体は、長繊維の配向方向を横切るような線状の接着ラインを有していないことが好ましい。かかる接着ラインが存在していると、長繊維の配向方向への液の円滑な拡散が遮断されてしまい、それに起因して横漏れが生じる可能性がある。
長繊維が吸収性物品の幅方向に配向している場合には、吸収性物品の長手方向への拡散が抑制され、スポット吸収性が得られる。この場合、側部からの液漏れ(横漏れ)を防止するために、吸収体は、長繊維の配向方向を横切るような線状の接着ラインを有していることが好ましい。「線状」とは、液体の浸透を抑制する連続的な線を意味し、個々のシール線等が途切れなく連続するものである必要はない。例えば、間欠のシール線を幾重にも重ねて並べることで液の移動を阻止できれば、それは線状である。また、線状は、直線状の他、曲線状、折れ線状であっても良い。線の幅は0.2〜15mm程度が好ましい。
接着ラインは、ウエブ2内にのみ形成されていても良い。或いは、吸収体1の厚み方向全体にわたって接着ラインが形成されていても良い。更に、表面シートを含んで形成されていても良い。何れの場合においても、少なくとも吸収性物品の長手方向中央部に接着ラインが形成されていることが好ましい。また、接着ラインは、吸収体の幅方向の両側縁よりも外方に形成されていてもよい。このように接着ラインを設けることで、毛細管現象に起因して液がウエブ内を移動したとしても、接着ラインに突き当たってそれ以上の移動が阻止されるので、側部からの液漏れが生じにくくなる。
次に本実施形態に係る吸収体1の好ましい製造方法は次の通りである。先ず、先に述べた捲縮を有する長繊維のウエブを用意する。このウエブを所定手段によって開繊する。開繊には例えば圧縮空気を利用した空気開繊装置を用いることができる。次に、該長繊維を所定の長さに引き伸ばす。この場合、長繊維を完全に引き伸ばすことを要せず、高吸収性ポリマーがウエブ内に安定的に埋没保持される程度に引き伸ばせば足りる。
長繊維を引き伸ばした状態下に、ホットメルト接着剤など、先に述べた各種接着剤をウエブにロールコーター方式やスクリーン印刷方式等の接触方式やスプレー方式等の非接触方式により塗工する。塗工には、非接触で各パターンの切り替えが容易で接着剤の量を調整可能なスプレー方式の塗工が好ましく、散点状の接着を首尾良く行い得るスプレー塗工を用いることが好ましい。スプレー方式としては、スロットスプレー法、カーテンスプレー法、メルトブローン法、スパイラルスプレー法等が挙げられる。繊維状の接着剤を用いる場合には、エアレイ法によって長繊維上に堆積させる。なお、繊維状の接着剤は、後述する高吸収性ポリマーの散布と同時に行うこともできる。
接着剤の塗工完了後に、ウエブ上に高吸収性ポリマーを散布する。次いで長繊維の引き伸ばし状態を解除する。これによって引き伸ばされていた長繊維が収縮する。その結果、高吸収性ポリマーは長繊維の収縮によって形成された空間内に保持される。このようにして、ウエブ中に高吸収性ポリマーが埋没担持される。また、接着剤によって長繊維どうしの交点が結合する。
本発明は前記実施形態に制限されない。例えばウエブ2内には高吸収性ポリマーのほかに、他の粒子、例えば、活性炭やシリカ、アルミナ、酸化チタン、各種粘度鉱物(ゼオライト、セピオライト、ベントナイト、カンクリナイト等)等の有機、無機粒子(消臭剤や抗菌剤)を共存させることができる。無機粒子は一部金属サイトを置換したものを用いることができる。或いは、各種有機、無機緩衝剤、即ち、酢酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、リンゴ酸、乳酸又はこれらの塩を単独あるいは組み合わせて用い、また各種アミノ酸を用いることができる。これら成分の働きは、吸収体1に吸収された排泄物のにおいや素材由来のにおいを抑制することである。また、各種有機、無機緩衝剤は、排泄物、例えば尿の分解による発生するアンモニアを中和し、おむつを中性〜弱酸性に保つ効果があり、それによって、万一おむつから肌への排泄物の液戻りがあっても、肌への影響を少なくすることができる。更に、各種有機、無機緩衝剤は、アンモニア等のアルカリを中和する働きがあるので、ウエブ2を構成する長繊維としてアセテート繊維のような分子構造内にエステル結合を有する繊維を用いた場合には、アルカリによるエステル結合の分解に起因する繊維の損傷が防止される効果も期待できる。
また、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性を有する繊維シートを用いて吸収体1の全体を包んで、高吸収性ポリマーの脱落を一層効果的に防止することもできる。
更に、ウエブ2の上側及び/又は下側に、高吸収性ポリマーを含むか又は含まないパルプの積繊層を配して、吸収体1の性能を更に高めてもよい。
図1(a)は、本発明の吸収性物品における吸収体の一実施形態を示す断面の模式図であり、図1(b)は図1(a)における要部拡大図である。 図2(a)は、図1(a)に示す吸収体が吸液した状態を示す模式図(図1(a)相当図)であり、図2(b)は、図2(a)における要部拡大図である。
符号の説明
1 吸収体
2 ウエブ
2a 長繊維
3 高吸収性ポリマー
10,10a,10b 結合点

Claims (5)

  1. 親水性を有する長繊維のウエブを含む吸収体を具備する吸収性物品であって、
    前記ウエブは、前記長繊維どうしの交点が結合した網目状構造を有し、該網目状構造内に高吸収性ポリマーが埋没担持されており、
    前記長繊維どうしの結合状態が、前記ウエブが湿潤状態になることで弱められるか又は解除可能になっている吸収性物品。
  2. 前記長繊維どうしの交点が、水溶性接着剤によって結合している請求項1記載の吸収性物品。
  3. 前記長繊維が吸水性又は吸湿性の材料からなり、長繊維どうしの交点が非水溶性接着剤又はホットメルト接着剤で結合している請求項1記載の吸収性物品。
  4. 前記長繊維がアセテートからなる請求項1ないし3の何れかに記載の吸収性物品。
  5. 前記長繊維が吸収体の平面方向に配向している請求項1ないし4の何れかに記載の吸収性物品。
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