以下に、本発明の一実施形態に係る電子部品について説明する。
(電子部品の構成)
まず、本発明の一実施形態に係る電子部品10の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、電子部品10の外観斜視図である。図2は、図1の電子部品10の分解斜視図である。図3は、図1の電子部品10のB−Bにおける断面構造図である。以下では、電子部品10の積層方向を上下方向と定義する。また、上側から見たときに、長辺が伸びている方向を前後方向(第1の直交方向の一例)と定義し、短辺が伸びている方向を左右方向(第2の直交方向の一例)と定義する。また、上下方向、前後方向及び左右方向は互いに直交している。なお、積層方向とは、後述する絶縁体層が積み重ねられる方向である。また、電子部品10の使用時における上下方向、左右方向及び前後方向は、図1等において定義した上下方向、左右方向及び前後方向と一致していなくてもよい。
電子部品10は、図1ないし図3に示すように、本体12、外部電極14a〜14f、接続部16a〜16f、引き出し部50〜55、磁芯100、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3を備えている。
本体12は、図1及び図2に示すように、直方体状をなしており、磁性体基板20a,20b、積層体22及び磁性体層24を含んでいる。本体12の左右方向の長さは、本体12の前後方向の長さよりも短い。磁性体基板20a、磁性体層24、積層体22及び磁性体基板20bは、上側から下側へとこの順に積み重ねられている。また、本体12は、上面、下面(積層方向の一方側又は他方側に位置する面の一例)、右面(第1の直交方向の一方側に位置する第1の面の一例)、左面(第1の直交方向の他方側に位置する第2の面の一例)、前面及び後面を有している。本体12の上面、下面、右面、左面、前面及び後面は、実質的に平面である。実質的に平面であるとは、電子部品10に対してバレル加工が施されることにより、これらの面が僅かに湾曲している面も含む意味である。
磁性体基板20a,20bは、上側から見たときに長方形状をなす板状部材である。以下では、磁性体基板20a,20bの上側の主面を上面と呼び、磁性体基板20a,20bの下側の主面を下面と呼ぶ。磁性体基板20bは、上側から見たときに、4つの角及び2本の長辺の中央が切り欠かれた構造を有している。より詳細には、磁性体基板20bの4つの角のそれぞれには、上側から見たときに、中心角が90度である扇形をなす切り欠きが設けられている。磁性体基板20bの2本の長辺の中央のそれぞれには、上側から見たときに、半円をなす切り欠きが設けられている。6つの切り欠きは、磁性体基板20bの上面から下面まで到達するように、磁性体基板20bの側面を上下方向に伸びている。
磁性体基板20a,20bは、焼結済みのフェライトセラミックスが削り出されて作製される。また、磁性体基板20a,20bは、フェライト仮焼粉末や金属粉等の磁性粉及び樹脂等のバインダーからなる磁性ペーストが熱硬化されるかアルミナ等のセラミックス基板に塗布されることによって作製されてもよいし、フェライト材料のグリーンシートが積層及び焼成されて作製されてもよい。
外部電極14a〜14fは、磁性体基板20bの下面(すなわち、本体12の下面)上に設けられており、長方形状をなしている。より詳細には、外部電極14a〜14cはそれぞれ、上側から見たときに、後述するコイル導体層30a,32a,34aよりも本体12の左面の近くに位置する部分を有している。本実施形態では、外部電極14aは、磁性体基板20bの下面の左後ろ側に位置する角に設けられている。外部電極14bは、磁性体基板20bの下面の左側に位置する長辺の中央に設けられている。外部電極14cは、磁性体基板20bの下面の左前側に位置する角に設けられている。これにより、外部電極14a〜14cは、後ろ側から前側(第1の直交方向の一方側から他方側の一例)へとこの順に並んでいる。
また、外部電極14d〜14fはそれぞれ、上側から見たときに、後述するコイル導体層30a,32a,34aよりも本体12の右面の近くに位置する部分を有している。これにより、外部電極14d〜14fは、外部電極14a〜14cよりも右側(第2の直交方向の一方側の一例)に位置している。外部電極14dは、磁性体基板20bの下面の右後ろ側に位置する角に設けられている。外部電極14eは、磁性体基板20bの下面の右側に位置する長辺の中央に設けられている。外部電極14fは、磁性体基板20bの下面の右前側に位置する角に設けられている。これにより、外部電極14d〜14fは、後ろ側から前側(第1の直交方向の一方側から他方側の一例)へとこの順に並んでいる。外部電極14a〜14fは、Au膜、Ni膜、Cu膜、Ti膜、Ag膜、Sn膜等がスパッタ法により成膜又は重ねて成膜されることによって作製されている。なお、外部電極14a〜14fは、金属を含有するペーストが印刷及び焼き付けされて作製されてもよいし、AgやCu等が蒸着やめっき工法によって成膜されることによって作製されてもよい。
接続部16a〜16fはそれぞれ、磁性体基板20bに設けられた6つの切り欠きに設けられている。接続部16aは、磁性体基板20bの左後ろ側に位置する切り欠きに設けられており、その下端において外部電極14aに接続されている。接続部16bは、磁性体基板20bの左側の長辺の中央に位置する切り欠きに設けられており、その下端において外部電極14bに接続されている。接続部16cは、磁性体基板20bの左前側に位置する切り欠きに設けられており、その下端において外部電極14cに接続されている。接続部16dは、磁性体基板20bの右後ろ側に位置する切り欠きに設けられており、その下端において外部電極14dに接続されている。接続部16eは、磁性体基板20bの右側の長辺の中央に位置する切り欠きに設けられており、その下端において外部電極14eに接続されている。接続部16fは、磁性体基板20bの右前側に位置する切り欠きに設けられており、その下端において外部電極14fに接続されている。接続部16a〜16fは、外部電極14a〜14fと同様の材料及び製法により作製されている。
積層体22は、絶縁体層26a〜26e(複数の絶縁体層の一例)が上側から下側へとこの順に並ぶように積層されて構成されている。積層体22は、上側から見たときに長方形状をなしており、磁性体基板20bの上面と略同じ形状をなしている。ただし、上側から見たときに、絶縁体層26b〜26eの4つの角及び2本の長辺の中央が切り欠かれている。
絶縁体層26a〜26eは、ポリイミドにより作製されている。また、絶縁体層26a〜26eは、ベンゾシクロブテン等の絶縁性樹脂により作製されていてもよいし、ガラスセラミックス等の絶縁性無機材料で作製されていてもよい。以下では、絶縁体層26a〜26eの上側の主面を上面と呼び、絶縁体層26a〜26eの下側の主面を下面と呼ぶ。
磁性体層24は、積層体22と磁性体基板20aとの間に設けられており、積層体22の上面を平坦化するとともに、積層体22と磁性体基板20aとを接合する。磁性体層24は、例えば、前述の磁性ペーストにより作製される。
1次コイルL1は、積層体22内に設けられており、端部t1(他方側の端部の一例)及び端部t2(一方側の端部の一例)を有している。端部t1は、1次コイルL1において外部電極14aに近い方の端部である。端部t2は、1次コイルL1において外部電極14dに近い方の端部である。1次コイルL1は、外部電極14aと外部電極14dとの間に電気的に接続されている。また、1次コイルL1は、コイル導体層30a(第1のコイル導体層・1次コイル導体層の一例)を含んでいる。
コイル導体層30aは、絶縁体層26eの上面上に設けられており、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側に向かう渦巻状をなしている。本実施形態では、コイル導体層30aは、約4.25周分の長さを有している。コイル導体層30aの中心は、上側から見たときに、電子部品10の中心(対角線交点)と略一致している。コイル導体層30aの外周側の端部は、1次コイルL1の端部t1である。コイル導体層30aの内周側の端部は、1次コイルL1の端部t2である。また、コイル導体層30aに囲まれた領域を領域A1と呼ぶ。領域A1は、上側から見たときに、前後方向に延びる長辺及び左右方向に延びる短辺を有する長方形状をなしている。また、渦巻状とは2次元の螺旋(spiral)を意味する。
引き出し部50は、1次コイルL1の端部t1(コイル導体層30aの外周側の端部)と外部電極14a(第4の外部電極の一例)とを電気的に接続する。引き出し部50は、引き出し導体層40a及び接続導体70aを含んでいる。接続導体70aは、絶縁体層26b〜26eの左後ろ側に位置する角に設けられた三角柱状の導体である。なお、図2では、理解の容易のために、接続導体70aは、4つに分割して記載されている。後述する接続導体70b〜70fも、接続導体70aと同様に、4つに分割して記載した。接続導体70aは、絶縁体層26bの上面から絶縁体層26eの下面まで上下方向に伸びており、その下端において接続部16aに接続されている。
引き出し導体層40aは、絶縁体層26eの上面上に設けられており、コイル導体層30aの外周側の端部に接続されていると共に接続導体70aに接続されている。引き出し導体層40aは、上側から見たときに、渦巻状をなしておらず、コイル導体層30aの外周側の端部から左側に向かって伸びている。コイル導体層30aと引き出し導体層40aとの境界は、図2の拡大図に示すように、コイル導体層30aが形成している渦巻状の軌跡から引き出し導体層40aが離脱する位置である。これにより、1次コイルL1の端部t1(コイル導体層30aの外周側の端部)と外部電極14aとが引き出し部50(引き出し導体層40a及び接続導体70a)及び接続部16aを介して接続されている。
引き出し部53(第1の引き出し部の一例)は、1次コイルL1の端部t2(コイル導体層30aの内周側の端部)と外部電極14d(第1の外部電極の一例)とを接続する。引き出し部53は、層間接続導体v1、引き出し導体層41a,60及び接続導体70dを含んでいる。接続導体70dは、絶縁体層26b〜26eの右後ろ側に位置する角に設けられた三角柱状の導体である。接続導体70dは、絶縁体層26bの上面から絶縁体層26eの下面まで上下方向に伸びており、その下端において接続部16dに接続されている。
層間接続導体v1(第1の層間接続導体の一例)は、上側から見たときに、領域A1において絶縁体層26b〜26dを上下方向に貫通している導体であり、前後方向に延在する線状をなしている。また、層間接続導体v1は、絶縁体層26eの上面上にも設けられている。層間接続導体v1は、上側から見たときに、領域A1の右側の長辺の後端近傍に位置している。
引き出し導体層41aは、絶縁体層26eの上面上に設けられており、コイル導体層30aの内周側の端部に接続されていると共に層間接続導体v1に接続されている。これにより、層間接続導体v1は、コイル導体層30aの内周側の端部に電気的に接続されている。引き出し導体層41aは、上側から見たときに、渦巻状をなしておらず、コイル導体層30aの内周側の端部から右前側に向かって伸びている。コイル導体層30aと引き出し導体層41aとの境界は、コイル導体層30aが形成している渦巻状の軌跡から引き出し導体層41aが離脱する位置である。
引き出し導体層60(第1の引き出し導体層の一例)は、絶縁体層26b(第4の絶縁体層の一例)の上面上に設けられており、層間接続導体v1に接続されていると共に接続導体70dに接続されている。より詳細には、引き出し導体層60は、端部t7(一方側の端部の一例)及び端部t8(他方側の端部の一例)を有している。引き出し導体層60の端部t7は、層間接続導体v1に接続されている。引き出し導体層60の端部t8は、上側から見たときに、コイル導体層30aよりも本体12の右面の近くに位置しており、外部電極14dと重なっている。更に、引き出し導体層60の端部t8は、接続導体70dに接続されている。これにより、1次コイルL1の端部t2(コイル導体層30aの内周側の端部)と外部電極14dとが引き出し部53(層間接続導体v1、引き出し導体層41a,60及び接続導体70d)及び接続部16dを介して接続されている。
2次コイルL2は、積層体22内に設けられており、端部t3(他方側の端部の一例)及び端部t4(一方側の端部の一例)を有している。端部t3は、2次コイルL2において外部電極14bに近い方の端部である。端部t4は、2次コイルL2において外部電極14eに近い方の端部である。2次コイルL2は、外部電極14bと外部電極14eとの間に電気的に接続されている。また、2次コイルL2は、コイル導体層32a(第2のコイル導体層・2次コイル導体層の一例)を含んでいる。
コイル導体層32aは、絶縁体層26dの上面上に設けられており、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側に向かう渦巻状をなしている。本実施形態では、コイル導体層32aは、約4.5周分の長さを有している。コイル導体層32aの中心は、上側から見たときに、電子部品10の中心(対角線交点)と略一致している。コイル導体層32aの外周側の端部は、2次コイルL2の端部t3である。コイル導体層32aの内周側の端部は、2次コイルL2の端部t4である。また、コイル導体層32aに囲まれた領域を領域A2と呼ぶ。領域A2は、上側から見たときに、前後方向に延びる長辺及び左右方向に延びる短辺を有する長方形状をなしている。
また、コイル導体層32aは、図2及び図3に示すように、上側から見たときに、大部分においてコイル導体層30aと重なっている。そのため、コイル導体層30aに囲まれた領域A1(1次コイルL1の内磁路)とコイル導体層32aに囲まれた領域A2(2次コイルL2の内磁路)とが、上側から見たときに重なっている。これにより、コイル導体層30a(1次コイルL1)とコイル導体層32a(2次コイルL2)とは、磁気的に結合している。ただし、引き出し部50,53と後述する引き出し部51,54とが干渉しないように、コイル導体層30aの両端の位置とコイル導体層32aの両端の位置とは異なっている。具体的には、コイル導体層32aの外周側の端部は、コイル導体層30aの外周側の端部よりも時計回り方向の上流側に位置している。コイル導体層32aの内周側の端部は、コイル導体層30aの内周側の端部よりも時計回り方向の下流側に位置している。そのため、コイル導体層30bの長さは、コイル導体層32aの長さよりも僅かに長くなっている。なお、コイル導体層30aとコイル導体層32aとは、磁気的に結合していればよいので、必ずしも、互いに大部分において重なっていなくてもよく、前後方向又は左右方向に僅かにずれていてもよい。すなわち、コイル導体層32aがコイル導体層30aに対して上側に設けられていればよい。
引き出し部51は、2次コイルL2の端部t3(コイル導体層32aの外周側の端部)と外部電極14b(第5の外部電極の一例)とを電気的に接続する。引き出し部51は、引き出し導体層42a及び接続導体70bを含んでいる。接続導体70bは、絶縁体層26b〜26eの左側に位置する長辺の中央に設けられた四角柱状の導体である。接続導体70bは、絶縁体層26bの上面から絶縁体層26eの下面まで上下方向に伸びており、その下端において接続部16bに接続されている。
引き出し導体層42aは、絶縁体層26dの上面上に設けられており、コイル導体層32aの外周側の端部に接続されていると共に接続導体70bに接続されている。引き出し導体層42aは、上側から見たときに、渦巻状をなしておらず、コイル導体層32aの外周側の端部から左側に向かって伸びている。これにより、2次コイルL2の端部t3(コイル導体層32aの外周側の端部)と外部電極14bとが引き出し部51(引き出し導体層42a及び接続導体70b)及び接続部16bを介して接続されている。
引き出し部54(第2の引き出し部の一例)は、2次コイルL2の端部t4(コイル導体層32aの内周側の端部)と外部電極14e(第2の外部電極の一例)とを接続する。引き出し部54は、層間接続導体v2、引き出し導体層43a,62及び接続導体70eを含んでいる。接続導体70eは、絶縁体層26b〜26eの右側に位置する長辺の中央に設けられた四角柱状の導体である。接続導体70eは、絶縁体層26bの上面から絶縁体層26eの下面まで上下方向に伸びており、その下端において接続部16eに接続されている。
層間接続導体v2(第2の層間接続導体)は、上側から見たときに、領域A2において絶縁体層26b〜26dを上下方向に貫通している導体であり、前後方向に伸びる線状をなしている。また、層間接続導体v2は、絶縁体層26eの上面上にも設けられている。層間接続導体v2は、上側から見たときに、領域A2の右側の長辺の中央近傍に位置している。
引き出し導体層43aは、絶縁体層26dの上面上に設けられており、コイル導体層32aの内周側の端部に接続されていると共に層間接続導体v2に接続されている。これにより、層間接続導体v2は、コイル導体層32aの内周側の端部に電気的に接続されている。引き出し導体層43aは、上側から見たときに、渦巻状をなしておらず、コイル導体層32aの内周側の端部から左側に向かって伸びている。コイル導体層32aと引き出し導体層43aとの境界は、コイル導体層32aが形成している渦巻状の軌跡から引き出し導体層43aが離脱する位置である。
引き出し導体層62(第2の引き出し導体層の一例)は、絶縁体層26bの上面上に設けられており、層間接続導体v2に接続されていると共に接続導体70eに接続されている。より詳細には、引き出し導体層62は、端部t9及び端部t10を有している。引き出し導体層62の端部t9は、層間接続導体v2に接続されている。引き出し導体層62の端部t10は、上側から見たときに、コイル導体層32aよりも本体12の右面の近くに位置しており、外部電極14eと重なっている。更に、引き出し導体層62の端部t10は、接続導体70eに接続されている。これにより、2次コイルL2の端部t4(コイル導体層32aの内周側の端部)と外部電極14eとが引き出し部54(層間接続導体v2、引き出し導体層43a,62及び接続導体70e)及び接続部16eを介して接続されている。
3次コイルL3は、積層体22内に設けられており、端部t5(他方側の端部の一例)及び端部t6(一方側の端部の一例)を有している。端部t5は、3次コイルL3において外部電極14cに近い方の端部である。端部t6は、3次コイルL3において外部電極14fに近い方の端部である。3次コイルL3は、外部電極14cと外部電極14fとの間に電気的に接続されている。また、3次コイルL3は、コイル導体層34a(第3のコイル導体層・3次コイル導体層の一例)を含んでいる。
コイル導体層34aは、絶縁体層26cの上面上に設けられており、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側に向かう渦巻状をなしている。本実施形態では、コイル導体層34aは、約3.75周分の長さを有している。コイル導体層34aの中心は、上側から見たときに、電子部品10の中心(対角線交点)と略一致している。コイル導体層34aの外周側の端部は、3次コイルL3の端部t5である。コイル導体層34aの内周側の端部は、3次コイルL3の端部t6である。また、コイル導体層34aに囲まれた領域を領域A3と呼ぶ。領域A3は、上側から見たときに、前後方向に延びる長辺及び左右方向に延びる短辺を有する長方形状をなしている。
また、コイル導体層30a,32a,34aは、積層体22において上下方向の互いに異なる位置に設けられている。また、コイル導体層34aは、図2及び図3に示すように、上側から見たときに、大部分においてコイル導体層30a,32aと重なっている。そのため、コイル導体層30aに囲まれた領域A1(1次コイルL1の内磁路)とコイル導体層32aに囲まれた領域A2(2次コイルL2の内磁路)とコイル導体層34aに囲まれた領域A3(3次コイルL3の内磁路)とが、上側から見たときに重なっている。これにより、コイル導体層30a(1次コイルL1)とコイル導体層32a(2次コイルL2)とコイル導体層34a(3次コイルL3)とは、磁気的に結合している。ただし、引き出し部50,53と引き出し部51,54と引き出し部52,55とが干渉しないように、コイル導体層30aの両端の位置とコイル導体層32aの両端の位置とコイル導体層34aの両端の位置とは異なっている。具体的には、コイル導体層34aの外周側の端部は、コイル導体層30a,32aの外周側の端部よりも時計回り方向の上流側に位置している。コイル導体層34aの内周側の端部は、コイル導体層30a,32aの内周側の端部よりも時計回り方向の下流側に位置している。ただし、コイル導体層34aの周回数は、コイル導体層30a,32aの周回数よりも1周少ない。これにより、コイル導体層30cの長さは、コイル導体層32aの長さ及びコイル導体層34aの長さよりも僅かに短くなっている。なお、コイル導体層30aとコイル導体層32aとコイル導体層34aとは、磁気的に結合していればよいので、必ずしも、互いに大部分において重なっていなくてもよく、前後方向又は左右方向に僅かにずれていてもよい。すなわち、コイル導体層34aがコイル導体層30a,32aに対して上側に設けられていればよい。
引き出し部52は、3次コイルL3の端部t5(コイル導体層34aの外周側の端部)と外部電極14c(第6の外部電極の一例)とを電気的に接続する。引き出し部52は、引き出し導体層44a及び接続導体70cを含んでいる。接続導体70cは、絶縁体層26b〜26eの左前側に位置する角に設けられた三角柱状の導体である。接続導体70cは、絶縁体層26bの上面から絶縁体層26eの下面まで上下方向に伸びており、その下端において接続部16cに接続されている。
引き出し導体層44aは、絶縁体層26cの上面上に設けられており、コイル導体層34aの外周側の端部に接続されていると共に接続導体70cに接続されている。引き出し導体層44aは、上側から見たときに、渦巻状をなしておらず、コイル導体層34aの外周側の端部から前側に向かって伸びている。これにより、3次コイルL3の一端(コイル導体層34aの外周側の端部)と外部電極14cとが引き出し部52(引き出し導体層44a及び接続導体70c)及び接続部16cを介して接続されている。
引き出し部55(第3の引き出し部の一例)は、3次コイルL3の端部t6(コイル導体層34aの内周側の端部)と外部電極14f(第3の外部電極の一例)とを接続する。引き出し部55は、層間接続導体v3、引き出し導体層45a,64及び接続導体70fを含んでいる。接続導体70fは、絶縁体層26b〜26eの右前側に位置する角に設けられた三角柱状の導体である。接続導体70fは、絶縁体層26bの上面から絶縁体層26eの下面まで上下方向に伸びており、その下端において接続部16fに接続されている。
層間接続導体v3(第3の層間接続導体)は、上側から見たときに、領域A3において絶縁体層26b〜26dを上下方向に貫通している導体であり、前後方向に伸びる線状をなしている。また、層間接続導体v3は、絶縁体層26eの上面上にも設けられている。層間接続導体v3は、上側から見たときに、領域A3の右側の長辺の前端近傍に位置している。
引き出し導体層45aは、絶縁体層26cの上面上に設けられており、コイル導体層34aの内周側の端部に接続されていると共に層間接続導体v3に接続されている。これにより、層間接続導体v3は、コイル導体層34aの内周側の端部に電気的に接続されている。引き出し導体層45aは、上側から見たときに、渦巻状をなしておらず、コイル導体層34aの内周側の端部から左側に向かって伸びている。コイル導体層34aと引き出し導体層45aとの境界は、コイル導体層34aが形成している渦巻状の軌跡から引き出し導体層45aが離脱する位置である。
引き出し導体層64(第3の引き出し導体層の一例)は、絶縁体層26bの上面上に設けられており、層間接続導体v3に接続されていると共に接続導体70fに接続されている。より詳細には、引き出し導体層64は、端部t11及び端部t12を有している。引き出し導体層64の端部t11は、層間接続導体v3に接続されている。引き出し導体層64の端部t12は、上側から見たときに、コイル導体層34aよりも本体12の右面の近くに位置しており、外部電極14eと重なっている。更に、引き出し導体層64の端部t12は、接続導体70fに接続されている。これにより、3次コイルL3の端部t6(コイル導体層34aの内周側の端部)と外部電極14fとが引き出し部55(層間接続導体v3、引き出し導体層45a,64及び接続導体70f)及び接続部16fを介して接続されている。
コイル導体層30a,32a,34a、引き出し導体層40a,41a,42a,43a,44a,45a,46,60,62,64及び接続導体70a〜70fは、外部電極14a〜14fと同様の材料及び製法で作成されている。
また、図3に示すように、コイル導体層30aの断面積とコイル導体層32aの断面積とコイル導体層34aの断面積とは実質的に等しい。よって、コイル導体層30aの線幅とコイル導体層32aの線幅とコイル導体層34aの線幅とは互いに実質的に等しい。更に、コイル導体層30aの厚みとコイル導体層32aの厚みとコイル導体層34aの厚みとは実質的に等しい。なお、上記説明におけるコイル導体層の断面積とは、コイル導体層が伸びる方向に直交する断面における断面積を意味している。また、コイル導体層の厚みとは、コイル導体層の上下方向における厚みである。また、コイル導体層の線幅とは、コイル導体層が伸びる方向に直交する断面において、コイル導体層の上下方向に直交する方向における幅である。
また、コイル導体層30aとコイル導体層32aとの間隔と、コイル導体層32aとコイル導体層34aとの間隔とは、互いに実質的に等しい。すなわち、コイル導体層30a,32a,34aの隣り合うもの同士の上下方向の間隔は、実質的に等しい。なお、コイル導体層の間隔とは、2つのコイル導体層の互いに対向する面の間の距離である。
磁芯100は、上側から見たときに、領域A(図3参照)の中心においてコイル導体層30a,32a,34aを上下方向に通過するように、絶縁体層26a〜26e(複数の第1の絶縁体層の一例)を上下方向に貫通している。領域A(所定領域の一例)とは、上側から見たときに、領域A1と領域A2と領域A3の3つの領域が互いに重なり合って形成される領域である。すなわち、領域Aは、上側から見たときに、領域A1〜A3が重複することにより形成される領域であり、コイル導体層30a,32a,34aにより囲まれた長方形状の領域である。領域Aの左右方向の長さは、領域Aの前後方向の長さよりも短い。領域Aの中心とは、例えば、上側から見たときにおける領域Aの重心(対角線の交点)である。磁芯100は、上側から見たときに、前後方向に伸びる長辺及び左右方向に伸びる短辺を有する長方形状をなしている。磁芯100は、絶縁体層26a〜26eよりも高い透磁率を有している。磁芯100の材料は、磁性体基板20a,20bと同じ材料である。
ここで、磁芯100と層間接続導体v1〜v3と引き出し導体層60,62,64の端部t7,t9,t11とコイル導体層30a,32a,34aの端部t1〜t6との位置関係について説明する。層間接続導体v1〜v3は、図2に示すように、上側から見たときに、磁芯100よりも左側(第2の直交方向の一方側の一例)に位置していない。本実施形態に係る電子部品10では、層間接続導体v1〜v3は、上側から見たときに、磁芯100において最も右側(第2の直交方向の他方側の一例)の部分よりも右側に位置している。上側から見たときに、磁芯100において最も右側に位置する部分とは、磁芯100の右側の長辺である。層間接続導体v1〜v3は、上側から見たときに、磁芯100の右側の長辺に沿って、後ろ側から前側へとこの順に一列に並んでいる。また、磁芯100は、上側から見たときに、領域Aの中心と重なっている。そのため、層間接続導体v1〜v3は、上側から見たときに、領域Aの中心に位置していない。
また、引き出し導体層60,62,64の端部t7,t9,t11はそれぞれ、層間接続導体v1,v2,v3に接続されている。層間接続導体v1〜v3は、上側から見たときに、磁芯100の右側の長辺に沿って、後ろ側から前側へとこの順に一列に並んでいる。そのため、端部t7,t9,t11は、上側から見たときに、磁芯100の右側の長辺に沿って、後ろ側から前側へとこの順に一列に並んでいる。
また、コイル導体層30a,32a,34aの端部t1,t3,t5は、上側から見たときに、磁芯100において最も左側に位置する部分よりも左側に位置している。すなわち、端部t1,t3,t5は、上側から見たときに、磁芯100の左側の長辺よりも左側に位置している。また、端部t1,t3,t5は、上側から見たときに、後ろ側から前側へとこの順に並んでいる。更に、コイル導体層30a,32a,34aの端部t2,t4,t6は、上側から見たときに、磁芯100において最も右側に位置する部分よりも右側に位置している。すなわち、端部t2,t4,t6は、上側から見たときに、磁芯100の右側の長辺よりも右側に位置している。また、端部t2,t4,t6は、上側から見たときに、後ろ側から前側へとこの順に並んでいる。
ここで、外部電極14a,14d、コイル導体層30aの端部t1,t2、引き出し導体層60の端部t7及び層間接続導体v1は、互いに電気的に接続されているので第1のグループと呼ぶ。外部電極14b,14e、コイル導体層32aの端部t3,t4、引き出し導体層62の端部t9及び層間接続導体v2は、互いに電気的に接続されているので第2のグループと呼ぶ。外部電極14c,14f、コイル導体層34aの端部t5,t6、引き出し導体層64の端部t11及び層間接続導体v3は、互いに電気的に接続されているので第3のグループと呼ぶ。層間接続導体v1〜v3と引き出し導体層60,62,64の端部t7,t9,t11とコイル導体層30a,32a,34aの端部t1〜t6とが上述した位置関係をとることにより、第1のグループ、第2のグループ及び第3のグループは、上側から見たときに、後ろ側から前側へとこの順に並んでいる。
以上のように構成された電子部品10の動作について以下に説明する。外部電極14a〜14cは、例えば、入力端子として用いられる。外部電極14d〜14fは、例えば、出力端子として用いられる。また、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3は磁気的に結合している。
外部電極14a,14b,14cにはそれぞれ、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3が入力される。仮に、次のような第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3を考える。第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3は、それぞれハイ(H)、ミドル(M)、ロー(L)の互いに異なる任意の3値の電圧値を取り、かつ同一のクロックの下でH、M、Lの3値間を遷移する。更に、ある信号がHの値を取るタイミングでは、残り2つの信号のうち、一方はMの値、他方はLの値を取る。すなわち、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3は排他的にH、M、Lの3値を遷移する。このとき、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3の電圧値の総和はほぼ常に一定(H+M+L)であり、遷移による電圧の「総」変化量はほぼ0となる。よって、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3に発生する電流の「総」変化量もほぼ0となり、電子部品10に発生する磁束の変化量はほぼ「0」となる(1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3単独では発生磁束は変化するが、これらの変化が打ち消しあう)。このように、磁束の変化が略ない場合は、実質的に電子部品10にインピーダンスは発生しないため、電子部品10は、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3に対して影響を与えない。
一方、コモンモードノイズ、すなわち第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3に含まれる同相のノイズに対しては、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3のそれぞれが発生する磁束変化は同方向であり、これらの磁束変化が互いに打ち消し合わず、強め合う。そのため、電子部品10はコモンモードノイズに対して大きなインピーダンスを有する。よって、電子部品10はコモンモードノイズを低減することができる。以上のように、電子部品10は第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3には影響を与えず、コモンモードノイズを低減することができ、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3に対して、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3はコモンモードフィルタを構成する。なお、「コモンモードフィルタ」とは、上記のように第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3に与える影響と比較してコモンモードノイズを大きく低減できる機能又は該機能を有する素子のことを指す。
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。以下では、一つの電子部品10が製造される場合を例に挙げて説明するが、実際には、大判のマザー磁性体基板及びマザー絶縁体層が積み重ねられてマザー本体が作製され、マザー本体がカットされることにより、複数の電子部品10が同時に形成される。
まず、磁性体基板20bの上面上の全面に感光性樹脂であるポリイミド樹脂を塗布する。次に、絶縁体層26eの4つの角及び2つの長辺の中央に対応する位置を遮光し、露光を行う。これにより、遮光されていない部分のポリイミド樹脂が硬化する。この後、フォトレジストを有機溶剤により除去すると共に、現像を行って、未硬化のポリイミド樹脂を除去し、熱硬化する。これにより、絶縁体層26eが形成される。
次に、絶縁体層26e及び絶縁体層26eから露出する磁性体基板20b上にスパッタ法によりAg膜を成膜する。次に、コイル導体層30a、引き出し導体層40a,41a、接続導体70a〜70f及び層間接続導体v1〜v3が形成される部分の上にフォトレジストを形成する。そして、エッチング工法により、コイル導体層30a、引き出し導体層40a,41a、接続導体70a〜70f及び層間接続導体v1〜v3が形成される部分(すなわち、フォトレジストで覆われている部分)以外のAg膜を除去する。この後、フォトレジストを有機溶剤により除去することによって、コイル導体層30a、引き出し導体層40a,41a、接続導体70a〜70fの一部(1層分)及び層間接続導体v1〜v3が形成される。
以上の工程と同じ工程を繰り返すことにより、絶縁体層26a〜26d及びコイル導体層32a,34a、引き出し導体層42a,43a,44a,45a,60,62,64、接続導体70a〜70fの残余の部分及び層間接続導体v1,v2,v3の残余の部分を形成する。
次に、積層体22に対して上側からレーザービームを照射して、貫通孔を形成する。そして、貫通孔内に磁性ペーストを充填する。これにより、磁芯100が形成される。
次に、積層体22上に磁性体層24となる磁性体ペーストを塗布し、磁性体層24上に磁性体基板20aを圧着する。
次に、サンドブラスト工法によって、6つの切り欠きを磁性体基板20bに形成する。なお、切り欠きは、サンドブラスト工法以外に、レーザ加工法によって形成されてもよいし、サンドブラスト工法及びレーザ加工法の組み合わせによって形成されてもよい。
最後に、電界めっき法及びフォトリソグラフィ工法の組み合わせにより、磁性体基板20bの切り欠きの内周面に導体層を形成して、接続部16a〜16f及び外部電極14a〜14fを形成する。
(効果)
本実施形態に係る電子部品10によれば、コイル導体層30a,32a,34aに囲まれた領域Aのうち磁芯100を配置することができる領域を大きく確保できる。より詳細には、特許文献1に記載のコモンモードチョークコイル510では、スルーホール導体530,532,534はそれぞれ、コイル導体514,516,518に囲まれた領域の中央近傍に位置している。そのため、コモンモードチョークコイル510では、コイル導体514,516,518に囲まれた領域が、スルーホール導体530,532,534により中央近傍で分断されており、磁芯を配置できる領域を大きく確保することが困難である。
そこで、電子部品10では、層間接続導体v1〜v3は、図2に示すように、上側から見たときに、磁芯100において最も左側に位置する部分(磁芯100の左側の長辺)よりも、左側に位置していない。これにより、磁芯100を配置することができる領域を領域Aの中心から左側に大きく確保することができる。その結果、コイル導体層30a,32a,34aに囲まれた領域Aのうち磁芯100を配置することができる領域を大きく確保することができる。
電子部品10では、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。より詳細には、電子部品10では、前記の通り、磁芯100を配置することができる領域を領域Aの中心から左側に大きく確保できる。すなわち、上側から見たときに、磁芯100の左側の辺を領域Aの左側の辺に近づけることができる。そして、電子部品10では、領域Aの前後方向の長さは、領域Aの左右方向の長さよりも長い。領域Aの左側の辺は長辺であり、領域Aの左側の長辺に対向する磁芯100の左側の辺も長辺である。ここで、長辺が移動して増加する面積は、短辺が移動して増加する面積よりも大きい。したがって、電子部品10では、磁芯100の左側の長辺を領域Aの左側の長辺に近づけることによって増加する磁芯100の面積が大きくなる。その結果、電子部品10では、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。
また、電子部品10では、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。より詳細には、引き出し導体層60,62,64はそれぞれ、層間接続導体v1〜v3と接続導体70d〜70fとを接続している。接続導体70d〜70fはそれぞれ、真下に設けられている外部電極14d〜14fに接続されている。また、層間接続導体v1〜v3は後ろ側から前側へとこの順に並んでおり、外部電極14d〜14fも後ろ側から前側へとこの順に並んでいる。よって、層間接続導体v1〜v3はそれぞれ、接続導体70d〜70fと対向するようになる。これにより、引き出し導体層60,62,64は、短い長さにより、層間接続導体v1〜v3と接続導体70d〜70fとを直線的に接続できる。そのため、層間接続導体v1〜v3と本体12の右側の面との間に引き出し導体層60,62,64を設けるためのスペースが少なくて済むようになる。その結果、層間接続導体v1〜v3を本体12の右側の面に近づけることが可能となる。すなわち、上側から見たときに、磁芯100の右側の長辺を本体12の右側の面に近づけることができる。その結果、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。
また、電子部品10では、以下の理由によっても、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。より詳細には、電子部品10では、層間接続導体v1〜v3は、図2に示すように、上側から見たときに、磁芯100において最も右側に位置する部分(磁芯100の右側の長辺)よりも、右側に位置している。これにより、磁芯100の前側及び後ろ側に層間接続導体v1〜v3が配置されなくなる。よって、磁芯100を前側及び後ろ側に広げることが可能となる。
また、電子部品10では、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。より詳細には、引き出し導体層40a,42a,44aはそれぞれ、コイル導体層30a,32a,34aの端部t1,t3,t5と接続導体70a〜70cとを接続している。接続導体70a〜70cはそれぞれ、真下に設けられている外部電極14a〜14cに接続されている。また、端部t1,t3,t5は後ろ側から前側へとこの順に並んでおり、外部電極14a〜14cも後ろ側から前側へとこの順に並んでいる。よって、端部t1,t3,t5はそれぞれ、接続導体70a〜70cと対向するようになる。これにより、引き出し導体層40a,42a,44aは、短い長さにより、端部t1,t3,t5と接続導体70a〜70cとを直線的に接続できる。そのため、端部t1,t3,t5と本体12の左側の面との間に引き出し導体層40a,42a,44aを設けるためのスペースが少なくて済むようになる。その結果、端部t1,t3,t5を本体12の左側の面に近づけることが可能となる。すなわち、上側から見たときに、磁芯100の左側の長辺を本体12の左側の面に近づけることができるようになる。その結果、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。
ところで、1次コイル、2次コイル及び3次コイルがコモンモードフィルタを構成している場合には、コモンモードフィルタの良好な特性を得るために、1次コイル、2次コイル及び3次コイルの電流経路の長さとは一致していることが好ましい。
以下に、1次コイル、2次コイル及び3次コイルの電流経路の長さとは一致していることが好ましい理由について説明する。まず、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3に対してインピーダンスを発生させないことを正確に確認するため、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3の電圧が以下のように遷移した場合を考える。
S1:V1からV1’へと変化
S2:V2からV2’へと変化
S3:V3からV3’へと変化
このとき、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の総電流の変化量をΔIとすると、ΔIは以下のようになる。
ΔI=(V1’−V1)/L1+(V2’−V2)/L2+(V3’−V3)/L3={L2・L3(V1’−V1)+L3・L1(V2’−V2)+L1・L2(V3’−V3)}/(L1・L2・L3)
ここで、L1≒L2≒L3≒Lとすると、ΔIは以下のようになる。
ΔI={(V1’+V2’+V3’)−(V1+V2+V3)}/L
ここで、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3の定義より、V1’+V2’+V3’=V1+V2+V3である。よって、ΔI=0となる。すなわち、V1〜V3がH,M,Lの間で排他的に遷移する場合は総電流の変化量ΔIは略0であり、磁束の変化も略0となる。そのため、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3に対するインピーダンスは0となり、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3の波形が維持される。一方、電流経路の長さが変わるとL1≠L2≠L3となる。そのため、L1≒L2≒L3≒Lの前提が崩れる。その結果、総電流の変化量ΔIが0とならず、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3の波形に影響が出る可能性がある。以上より、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さは一致していることが好ましい。
しかしながら、電子部品10では、以下に説明するように、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さを揃えることは困難である。より詳細には、電子部品10において、外部電極14a〜14cは、後ろ側から前側へとこの順に並んでおり、外部電極14d〜14fは、後ろ側から前側へとこの順に並んでいる。そして、コイル導体層30a,32a,34aは、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側へと近づく渦巻状をなしている。そのため、1次コイルL1の長さがn1+0.25周となり、2次コイルL2の長さがn2+0.5周となり、3次コイルL3の長さがn3+0.75周となる。ただし、n1,n2,n3は0以上の整数である。そのため、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さが揃わない。
以上の理由により、電子部品10では、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さを揃えることは困難である。
なお、外部電極14a〜14cが並ぶ順番、又は、外部電極14d〜14fが並ぶ順番を変更することによって、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さを揃えることは可能である。ただし、この場合、入力信号が入力する外部電極の前後方向の位置と出力信号が出力する外部電極の前後方向の位置とが一致しなくなる。このような電子部品は使い勝手が悪い。よって、かかる観点からも、電子部品10では、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さを揃えることは困難である。
しかしながら、電子部品10において、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さが異なっていても、以下に説明するように、コモンモードフィルタの性能に大きな影響が出ない。
より詳細には、電子部品10では、コモンモードフィルタの特性を示す3つのパラメータが存在する。3つのパラメータは、1次コイルL1,2次コイルL2及び3次コイルL3間の差動インピーダンス(以下、単に差動インピーダンスと呼ぶ)、コモンモードインピーダンス及びカットオフ周波数である。本願発明者は、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さの差異が差動インピーダンス及びコモンモードインピーダンスに大きな影響を与えないことを発見した。一方、本願発明者は、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さが変動すると、カットオフ周波数に影響を与えることを発見した。
ここで、電子部品10では、前記の通り、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3のそれぞれに第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3が伝送される。この際、電子部品10は、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3の波形を維持しつつ、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3に含まれるコモンモードノイズを低減する。
本願発明者は、この場合には、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さが不均一であることに起因してカットオフ周波数が劣化しても、カットオフ周波数の劣化の度合いが許容範囲であることを発見した。そのため、電子部品10では、磁芯100が設けられることによって1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路の長さが揃わなくても、コモンモードフィルタの良好な特性を得ることができる。
本願発明者は、電子部品10が奏する効果をより明確にするために、以下に説明するコンピュータシミュレーションを行った。より詳細には、本願発明者は、電子部品10の構造を有する第1のモデルを作成した。また、本願発明者は、電子部品10において磁芯100が設けられていない構造を有する第2のモデルを作成した。第1のモデルは実施例であり、第2のモデルは比較例である。そして、第1のモデル及び第2のモデルのコモンモードインピーダンスをコンピュータに演算させた。図4は、シミュレーション結果を示したグラフである。縦軸はコモンモードインピーダンスを示し、横軸は周波数を示す。なお、以下にシミュレーションの条件を列挙する。
第1のモデルでは、図2の構成において、磁芯100の部分も絶縁体層26a〜26eと同じ材料とした。第2のモデルでは、図2の構成において、磁芯100に磁性フィラー入り樹脂(透磁率5)を用いた。
図4によれば、100MHz〜1GHzにおいて、第1のモデルのコモンモードインピーダンスが第2のモデルのコモンモードインピーダンスよりも大きくなっていることが分かる。すなわち、第1のモデルが100MHz〜1GHzの高周波信号からコモンモードノイズを効果的に除去することができることが分かる。すなわち、本コンピュータシミュレーションによれば、磁芯100が配置されることによって、電子部品10が優れたコモンモードインピーダンスを有するようになったことが分かる。
(第1の変形例)
以下に、第1の変形例に係る電子部品10aについて図面を参照しながら説明する。図5は、電子部品10aの分解斜視図である。図6は、図1の電子部品10aの断面構造図である。図6の断面構造図は、図3の断面構造図と対応する。電子部品10aの外観斜視図は、電子部品10の外観斜視図と同じである。
電子部品10aは、絶縁体層26f、並列コイル導体層36及び引き出し部56,57を更に備えている点において、電子部品10と相違する。以下に係る相違点を中心に電子部品10aについて説明する。
絶縁体層26fは、絶縁体層26bと絶縁体層26cとの間に設けられている。1次コイルL1は、並列コイル導体層36(並列1次コイル導体層の一例)を更に含んでいる。並列コイル導体層36は、コイル導体層30aと同じ形状をなしていると共に、コイル導体層30aに対して電気的に並列に接続されている。また、並列コイル導体層36は、コイル導体層30a,32a,34aの内の最も上側に設けられているコイル導体層34aに対して上側に設けられている。並列コイル導体層36は、絶縁体層26fの上面上に設けられており、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側に向かう渦巻状をなしている。
引き出し部56は、並列コイル導体層36の外周側の端部と外部電極14aとを接続するとともに、図5に示すように、上側から見たときに、渦巻状をなしていない。引き出し部56は、引き出し導体層46及び接続導体70aを含んでいる。接続導体70aについてはすでに説明したので、これ以上の説明を省略する。引き出し導体層46は、絶縁体層26fの上面上に設けられており、並列コイル導体層36の外周側の端部に接続されていると共に接続導体70aに接続されている。引き出し導体層46は、上側から見たときに、渦巻状をなしておらず、並列コイル導体層36の外周側の端部から左側に向かって伸びている。これにより、並列コイル導体層36の外周側の端部と外部電極14aとが引き出し部56(引き出し導体層46及び接続導体70a)及び接続部16aを介して接続されている。
引き出し部57は、並列コイル導体層36の内周側の端部と外部電極14dとを接続すると共に、図2に示すように、上側から見たときに、渦巻状をなしていない。引き出し部57は、層間接続導体v1、引き出し導体層47,60及び接続導体70dを含んでいる。層間接続導体v1、引き出し導体層60及び接続導体70dについてはすでに説明したので、これ以上の説明を省略する。引き出し導体層47は、絶縁体層26fの上面上に設けられており、並列コイル導体層36の内周側の端部に接続されていると共に層間接続導体v1に接続されている。引き出し導体層47は、上側から見たときに、渦巻状をなしておらず、並列コイル導体層36の内周側の端部から右前側に向かって伸びている。並列コイル導体層36と引き出し導体層47との境界は、並列コイル導体層36が形成している渦巻状の軌跡から引き出し導体層47が離脱する位置である。これにより、並列コイル導体層36の内周側の端部と外部電極14dとが引き出し部57(層間接続導体v1、引き出し導体層47,60及び接続導体70d)及び接続部16dを介して接続されている。よって、並列コイル導体層36は、コイル導体層30aに対して電気的に並列に接続されている。
また、コイル導体層30aの断面積と並列コイル導体層36の断面積との合計が、コイル導体層32aの断面積やコイル導体層34aの断面積と実質的に等しくなるように、コイル導体層30a,32a,34a及び並列コイル導体層36が構成されている。より詳細には、図6に示すように、コイル導体層30aの線幅、コイル導体層32aの線幅、コイル導体層34aの線幅及び並列コイル導体層36の線幅は、線幅w1であり互いに実質的に等しい。ただし、コイル導体層32a,34aの厚みは厚みd1であり、コイル導体層30a及び並列コイル導体層36の厚みは厚みd2である。厚みd2は、厚みd1の半分である。従って、コイル導体層30a及び並列コイル導体層36の断面積は、互いに実質的に等しく、コイル導体層32a,34aの断面積の半分である。すなわち、コイル導体層30aの断面積と並列コイル導体層36の断面積との合計が、コイル導体層32aの断面積やコイル導体層34aの断面積と実質的に等しくなっている。このとき、コイル導体層30a及び並列コイル導体層36の抵抗値は、コイル導体層32a,34aの抵抗値の約2倍である。そこで、コイル導体層30aと並列コイル導体層36とは電気的に並列に接続されている。これにより、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路において、1次コイルL1の断面積と、2次コイルL2の断面積と、3次コイルL3の断面積とは、実質的に等しくなる。よって、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の抵抗値が近づく。
また、コイル導体層30aとコイル導体層32aとの間隔、コイル導体層32aとコイル導体層34aとの間隔、コイル導体層34aと並列コイル導体層36との間隔は、互いに実質的に等しい。すなわち、コイル導体層30a,32a,34a及び並列コイル導体層36の隣り合うもの同士の上下方向の間隔は、実質的に等しい。なお、コイル導体層の間隔とは、2つのコイル導体層の互いに対向する面の間の距離である。
以上のように構成された電子部品10aにおいても、電子部品10と同様に、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。
また、電子部品10aによれば、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3間の差動インピーダンスの差異を低減することができる。より詳細には、差動インピーダンスは、測定電流(又は差動信号)が流れた際に、コイルを含めた電子部品10a全体のインダクタンス値をL、容量値をCとした場合に、L/Cの平方根で表される。Cは、コイル導体層間の容量(寄生容量)を含んでいる。
そこで、電子部品10aでは、並列コイル導体層36は、コイル導体層30a,32a,34aの内の最も上側に設けられているコイル導体層34aに対して上側に設けられている。これにより、コイル導体層34aと並列コイル導体層36との間に容量を発生させている。そのため、1次コイルL1と2次コイルL2との間の容量は、主にコイル導体層30aとコイル導体層32aとの間の容量により形成される。2次コイルL2と3次コイルL3との間の容量は、主にコイル導体層32aとコイル導体層34aとの間の容量により形成される。3次コイルL3と1次コイルL1との間の容量は、主に並列コイル導体層36とコイル導体層34aとの間の容量により形成される。なお、1次コイルL1,2次コイルL2及び3次コイルL3のそれぞれの間の容量は、コイル導体層30a,32a,34aのそれぞれの間における対向面積、間隔、誘電率などによって決まる。ただし、1次コイルL1,2次コイルL2及び3次コイルL3のそれぞれの間の容量はほぼ等しい。すなわち、各差動インピーダンス間においてCを近づけることができる。その結果、1次コイルL1と2次コイルL2との間、2次コイルL2と3次コイルL3との間、及び、3次コイルL3と1次コイルL1との間のそれぞれの差動インピーダンスが近づくようになる。
また、電子部品10aによれば、前記の通り、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の電流経路それぞれにおいて、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の断面積が実質的に等しい。その結果、1次コイルL1の電気抵抗値と2次コイルL2の電気抵抗値と3次コイルL3の電気抵抗値とが近づく。よって、1次コイルL1〜3次コイルL3に流れる電流量を近づけることが可能となり、1次コイルL1〜3次コイルL3の発熱量を近づけることが可能となる。すなわち、第1の信号S1、第2の信号S2及び第3の信号S3の損失の差異を低減できる。
また、1次コイルL1の抵抗値と2次コイルL2の抵抗値と3次コイルL3の抵抗値とが近づくと、電子部品10aの方向性をなくすことができる。外部電極14a〜14cが入力端子として用いられ、外部電極14d〜14fが出力端子として用いられてもよいし、外部電極14a〜14cが出力端子として用いられ、外部電極14d〜14fが入力端子として用いられてもよい。その結果、電子部品10aにおいて、実装時に電子部品10aの方向を識別する必要がなくなり、方向識別マークが不要となる。また、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3の特性が近くなるので、3つの信号を1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3のいずれに入力させてもよい。その結果、電子部品10aが実装される回路基板の配線レイアウトが電子部品10aによって制限されない。
また、電子部品10aによれば、コイル導体層30aの発熱量と並列コイル導体層36の発熱量とを近づけることができる。より詳細には、コイル導体層30aの断面積と並列コイル導体層36の断面積とが実質的に等しい。また、コイル導体層30aの長さと並列コイル導体層36の長さとは実質的に等しい。よって、コイル導体層30aの抵抗値と並列コイル導体層36の抵抗値とが実質的に等しくなる。また、コイル導体層30aと並列コイル導体層36とは電気的に並列に接続されているので、コイル導体層30aと並列コイル導体層36とにかかる電圧は実質的に等しく、コイル導体層30aと並列コイル導体層36とに流れる電流も実質的に等しい。よって、コイル導体層30aの発熱量と並列コイル導体層36の発熱量とを近づけることができる。このとき、コイル導体層30a又は並列コイル導体層36における局所的な発熱を低減することができるので、電子部品10の特性ばらつきや信頼性を向上させることができる。
(第2の変形例)
以下に、第2の変形例に係る電子部品10bの構成について図面を参照しながら説明する。図7は、電子部品10aのコイル導体層30a,32a,34a及び並列コイル導体層36の位置関係を示した模式図である。図8は、電子部品10bのコイル導体層30a,32a,34a,30b,32b,34b,30c,32c,34c及び並列コイル導体層36の位置関係を示した模式図である。
電子部品10aでは、1次コイルL1が1個のコイル導体層30a及び1個の並列コイル導体層36を含み、2次コイルL2が1個のコイル導体層32aを含み、3次コイルL3が1個のコイル導体層34aを含んでいる。一方、電子部品10bでは、1次コイルL1が3個のコイル導体層30a,30b,30c(1次コイル導体層の一例)及び1個の並列コイル導体層36を含み、2次コイルL2が3個のコイル導体層32a,32b,32c(2次コイル導体層の一例)を含み、3次コイルL3が3個のコイル導体層34a,34b,34c(3次コイル導体層の一例)を含んでいる。従って、以下に説明するように、コイル導体層30a,32a,34a,30b,32b,34b,30c,32c,34c及び並列コイル導体層36の配置において、電子部品10aと電子部品10bとの間には相違点が存在する。
電子部品10aでは、図7に示すように、コイル導体層30a、コイル導体層32a及びコイル導体層34aが下側から上側へとこの順に並ぶことにより1つのコイル導体層群Gaが構成されている。そして、並列コイル導体層36は、コイル導体層30aと同じ形状をなしていると共に、コイル導体層30aに対して電気的に並列に接続されている。更に並列コイル導体層36は、最も上側に設けられているコイル導体層34aに対して上側に設けられている。
一方、電子部品10bは、図8に示すように、コイル導体層30a、コイル導体層32a及びコイル導体層34aが下側から上側へとこの順に並ぶことにより1つのコイル導体層群Gaが構成され、コイル導体層30b、コイル導体層32b及びコイル導体層34bが下側から上側へとこの順に並ぶことにより1つのコイル導体層群Gbが構成され、コイル導体層30c、コイル導体層32c及びコイル導体層34cが下側から上側へとこの順に並ぶことにより1つのコイル導体層群Gcが構成されている。コイル導体層群Ga,Gb,Gcは、下側から上側へと並んでいる。そして、並列コイル導体層36は、コイル導体層30cと同じ形状をなしていると共に、コイル導体層30bに対して電気的に並列に接続されており、かつ、最も上側に設けられているコイル導体層34cに対して上側に設けられている。
ここで、コイル導体層30aとコイル導体層30cとは略同じ形状をなしており、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側に向かう渦巻状をなしている。また、コイル導体層30bは、上側から見たときに、時計回りに周回しながら内周側から外周側に向かう渦巻状をなしている。そして、コイル導体層30aとコイル導体層30bとコイル導体層30c(第1のコイル導体層の一例)とは、電気的に直列に接続されている。また、コイル導体層30aの外周側の端部は、1次コイルL1の端部t1である。コイル導体層30cの内周側の端部は、1次コイルL1の端部t2である。コイル導体層30cの内周側の端部と引き出し導体層60とは、層間接続導体v1を介して電気的に接続されている。
また、コイル導体層32aとコイル導体層32cとは同じ形状をなしており、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側に向かう渦巻状をなしている。また、コイル導体層32bは、上側から見たときに、時計回りに周回しながら内周側から外周側に向かう渦巻状をなしている。そして、コイル導体層32aとコイル導体層32bとコイル導体層32c(第2のコイル導体層の一例)とは、電気的に直列に接続されている。また、コイル導体層32aの外周側の端部は、2次コイルL2の端部t3である。コイル導体層32cの内周側の端部は、2次コイルL2の端部t4である。コイル導体層32cの内周側の端部と引き出し導体層62とは、層間接続導体v2を介して電気的に接続されている。
また、コイル導体層34aとコイル導体層34cとは同じ形状をなしており、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側に向かう渦巻状をなしている。また、コイル導体層34bは、上側から見たときに、時計回りに周回しながら内周側から外周側に向かう渦巻状をなしている。そして、コイル導体層34aとコイル導体層34bとコイル導体層34c(第3のコイル導体層の一例)とは、電気的に直列に接続されている。また、コイル導体層34aの外周側の端部は、3次コイルL3の端部t5である。コイル導体層34cの内周側の端部は、3次コイルL3の端部t6である。コイル導体層34cの内周側の端部と引き出し導体層64とは、層間接続導体v3を介して電気的に接続されている。
また、電子部品10bの層間接続導体v1〜v3は、電子部品10と同様に、上側から見たときに、磁芯100において最も左側に位置する部分よりも、右側に位置している。
また、電子部品10bでは、コイル導体層30aの内周側の端部とコイル導体層30bの内周側の端部とは、層間接続導体v4により接続されている。コイル導体層32aの内周側の端部とコイル導体層32bの内周側の端部とは、層間接続導体v5により接続されている。コイル導体層34aの内周側の端部とコイル導体層34bの内周側の端部とは、層間接続導体v6により接続されている。層間接続導体v4〜v6は、上側から見たときに、領域Aに位置している。よって、層間接続導体v4〜v6も、層間接続導体v1〜v3と同様に、上側から見たときに、磁芯100において最も左側に位置する部分よりも、右側に位置していることが望ましい。
以上のように構成された電子部品10bにおいても、電子部品10,10aと同様に、コイル導体層30a,32a,34a,30b,32b,34b,30c,32c,34cに囲まれた領域Aに磁芯100を配置することができる。更に、電子部品10bにおいても、電子部品10,10aと同様に、上側から見たときにおける磁芯100の面積を大きくすることができる。
また、電子部品10bによれば、電子部品10aと同様に、1次コイルL1、2次コイルL2及び3次コイルL3間の差動インピーダンスの差異を低減することができる。また、電子部品10bによれば、電子部品10aと同様に、1次コイルL1、2次コイル及び3次コイルL3の発熱量を近づけることが可能となる。また、電子部品10bによれば、電子部品10aと同様に、電子部品10bの方向性がなくなる。また、電子部品10bよれば、電子部品10aと同様に、コイル導体層30cの発熱量と並列コイル導体層36の発熱量とを近づけることができる。
なお、電子部品10bは、3つのコイル導体層群Ga,Gb,Gcを有しているが、2つ又は4つ以上のコイル導体群を有していてもよい。以下に、電子部品10bがn個(nは自然数)のコイル導体層群Ga,Gb…を有している場合について説明する。
電子部品10bがn個のコイル導体層群Ga,Gb…を有している場合には、1次コイルL1は、n個のコイル導体層30a,30b…(n個の1次コイル導体層の一例)及び並列コイル導体層36を含んでいる。2次コイルL2は、n個のコイル導体層32a,32b…(n個の2次コイル導体層の一例)を含んでいる。3次コイルL3(n個の3次コイル導体層の一例)は、n個のコイル導体層34a,34b…を含んでいる。そして、コイル導体層30a,32a,34aが1つずつ下側から上側へとこの順に並ぶことにより1つのコイル導体層群Gaが構成されている。コイル導体層30b,32b,34bが1つずつ下側から上側へとこの順に並ぶことにより1つのコイル導体層群Gbが構成されている。コイル導体層群Ga,Gbと同じように、コイル導体層群Gc以降のコイル導体層群が構成されている。そして、n個のコイル導体層群Ga,Gb…は、下側から上側へとこの順に並んでいる。
並列コイル導体層36は、n個のコイル導体層30a,30b…の内の所定のコイル導体層(所定の1次コイル導体層の一例)と同じ形状をなしていると共に、該所定のコイル導体層に対して電気的に並列に接続されている。更に、並列コイル導体層36は、n個のコイル導体層34a,34b…の内の最も上側に設けられているコイル導体層に対して上側に設けられている。
コイル導体層30a,30b…は、電気的に直列に接続されている。また、コイル導体層30aの外周側の端部は、1次コイルL1の端部t1である。コイル導体層30a,30b…の内の最も上側に位置するコイル導体層(第1のコイル導体層の一例)の内周側の端部は、1次コイルL1の端部t2である。
コイル導体層32a,32b…は、電気的に直列に接続されている。また、コイル導体層32aの外周側の端部は、2次コイルL2の端部t3である。コイル導体層32a,32b…の内の最も上側に位置するコイル導体層(第2のコイル導体層の一例)の内周側の端部は、2次コイルL2の端部t4である。
コイル導体層34a,34b…は、電気的に直列に接続されている。また、コイル導体層34aの外周側の端部は、3次コイルL3の端部t5である。コイル導体層34a,34b…の内の最も上側に位置するコイル導体層(第3のコイル導体層の一例)の内周側の端部は、3次コイルL3の端部t6である。
nの最大値が奇数である場合について説明する。コイル導体層30a,30b…は、電気的に直列に接続されている。コイル導体層30a,30b…では、外周側から内周側に向かって時計回りに周回するコイル導体層(第1のタイプのコイル導体層)と内周側から外周側に向かって時計回りに周回するコイル導体層(第2のタイプのコイル導体層)とが交互に接続されている。そして、1次コイルL1において外部電極14aの最も近くに設けられているコイル導体層は、第1のタイプのコイル導体層であるコイル導体層30aである。一方、1次コイルL1において外部電極14dの最も近くに設けられているコイル導体層は、コイル導体層30a,30b…の内の最も上側に位置するコイル導体層(第1のコイル導体層の一例)である。コイル導体層30a,30b…の内の最も上側に位置するコイル導体層は、第1のタイプのコイル導体層である。このように、1次コイルL1の両端に第1のタイプのコイル導体層が位置するためには、奇数個のコイル導体層30a,30b…は、電気的に直列に接続されていればよい。なお、コイル導体層32a,32b…及びコイル導体層34a,34b…についても、コイル導体層30a,30b…と同じである。
ただし、nは、必ずしも奇数でなくてもよく、偶数であってもよい。nが偶数である場合であっても、1次コイルL1,2次コイルL2及び3次コイルL3のそれぞれにおいて外部電極14d〜14fに電気回路的に最も近いコイル導体層は、第1のタイプのコイル導体層であることが好ましい。
(第3の変形例)
以下に、第3の変形例に係る電子部品10cについて図面を参照しながら説明する。図9は、電子部品10cの絶縁体層26b、接続導体70a〜70f、磁芯100及び層間接続導体v1〜v3を上側から平面視した図である。
電子部品10cは、層間接続導体v1〜v3の位置において電子部品10と相違する。以下に係る相違点を中心に電子部品10cについて説明する。
層間接続導体v1〜v3は、上側から見たときに、磁芯100において最も左側に位置する部分よりも、右側に位置していればよい。そこで、電子部品10cでは、層間接続導体v1〜v3は、上側から見たときに、磁芯100よりも前側(第2の直交方向の一方側の一例)に位置している。より詳細には、層間接続導体v1〜v3は、磁芯100の前側の短辺に沿って、右側から左側へとこの順に一列に並んでいる。
以上のような構成を有する電子部品10cでは、上側から見たときの磁芯100の面積を大きくすることができる。より詳細には、上側から見たときに、層間接続導体v1〜v3が磁芯100の短辺に沿って並んでいる場合には、層間接続導体v1〜v3を設けるスペースを確保するために、磁芯100の長辺を短くする必要がある。この場合、磁芯100の面積の減少量は、おおよそ、磁芯100の短辺の長さと層間接続導体v1〜v3の前後方向の幅との積である。そのため、層間接続導体v1〜v3が磁芯100の長辺に沿って並んでいる場合と比較して、層間接続導体v1〜v3が設けられることによる磁芯100の面積の減少量が少なくて済む。
なお、層間接続導体v1〜v3は、上側から見たときに、磁芯100よりも後ろ側に位置していてもよい。
(第4の変形例)
以下に、第4の変形例に係る電子部品10dについて図面を参照しながら説明する。図10は、電子部品10dの絶縁体層26b、接続導体70a〜70f、磁芯100及び層間接続導体v1〜v3を上側から平面視した図である。
電子部品10dは、層間接続導体v1〜v3の位置において電子部品10と相違する。以下に係る相違点を中心に電子部品10dについて説明する。
電子部品10dでは、層間接続導体v1,v2(第1の層間接続導体、第2の層間接続導体及び第3の層間接続導体の少なくとも1つの一例)は、上側から見たときに、磁芯100よりも右側(第1の直交方向の一方側の一例)に位置している。より詳細には、層間接続導体v1,v2は、磁芯100の右側の長辺に沿って、後ろ側から前側へとこの順に一列に並んでいる。また、層間接続導体v3(残余の前記第1の層間接続導体、前記第2の層間接続導体及び前記第3の層間接続導体の一例)は、上側から見たときに、磁芯100よりも前側(第2の直交方向の一方側の一例)に位置している。
なお、層間接続導体v1が上側から見たときに磁芯100よりも右側に位置し、層間接続導体v2,v3が上側から見たときに磁芯100よりも前側に位置していてもよい。また、層間接続導体v1が上側から見たときに磁芯100よりも後ろ側に位置し、層間接続導体v2,v3が上側から見たときに磁芯100よりも右側に位置していてもよい。また、層間接続導体v1,v2が上側から見たときに磁芯100よりも後ろ側に位置し、層間接続導体v3が上側から見たときに磁芯100よりも右側に位置していてもよい。
(第5の変形例)
以下に、第5の変形例に係る電子部品10eについて図面を参照しながら説明する。図11は、電子部品10eの絶縁体層26b、接続導体70a〜70f、磁芯100及び層間接続導体v1〜v3を上側から平面視した図である。
電子部品10eは、層間接続導体v1〜v3の位置において電子部品10と相違する。以下に係る相違点を中心に電子部品10dについて説明する。
電子部品10dでは、層間接続導体v1は、上側から見たときに、磁芯100よりも後ろ側に位置している。層間接続導体v2は、上側から見たときに、磁芯100よりも右側に位置している。層間接続導体v3は、上側から見たときに、磁芯100よりも前側に位置している。
(その他の実施形態)
本発明に係る電子部品は、電子部品10,10a〜10eに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
なお、電子部品10,10a〜10eの構成を任意に組み合わせてもよい。
なお、電子部品10,10a〜10eは、フォトリソグラフィ工法により作製されているが、例えば、コイル導体層が印刷されたセラミックグリーンシート等の絶縁体層を積層する積層工法により作成されてもよい。また、電子部品10,10a〜10eの製造方法において、各導体層はサブトラクティブ法、(セミ/フル)アディティブ法、塗布法、蒸着法などで作成されてもよい。
なお、電子部品10,10a〜10eにおいて、磁性体基板20a,20bが設けられていなくてもよい。すなわち、本体12が積層体22のみにより構成されていてもよい。
なお、電子部品10bがn個(nは自然数)のコイル導体層群Ga,Gb…を有している場合において、コイル導体層群Ga,Gb…は、上側から下側へとこの順に並んでいてもよい。また、コイル導体層群Gaにおいて、コイル導体層30a,32a,34aが下側から上側へとこの順に並んでいてもよい。コイル導体層群Gb以降についてもコイル導体層群Gaと同様である。
なお、電子部品10,10a〜10eにおいて、外部電極14a〜14cが本体12の左面に設けられ、外部電極14d〜14fが本体12の右面に設けられていてもよい。この場合、引き出し導体層60,62,64はそれぞれ、外部電極14d〜14fに直接に接続されていてもよい。
なお、本体12の形状は、直方体状に限らない。本体12は、少なくとも右面を有していればよい。
なお、電子部品10において、例えば、1次コイルL1,2次コイルL2及び3次コイルL3はそれぞれ、2つのコイル導体層を備えていてもよい。この場合、1次コイルL1は、上側から見たときに、時計回りに周回しながら外周側から内周側に近づくコイル導体層と時計回りに周回しながら内周側から外周側に近づくコイル導体層とを備えていればよい。そして、これらのコイル導体層の内周側の端部は、層間接続導体v1により接続される。2次コイルL2及び3次コイルL3についても、1次コイルL1と同様の構造を有する。