JP2019204896A - Bnt−bt系膜及びその形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉛を含まず、結晶性と膜密度が高く、(110)面又は(100)面の高い配向度を有し、これにより高い圧電特性又は高いキャパシタ特性を有するBNT−BT系膜及びその形成方法を提供する。【解決手段】基板の電極上にCSD法により形成された(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜であって、Cu−Kα線を用いたX線回折法により得られる回折角度2θ=32°〜33°の前記膜の(110)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下であり、かつ下記式(1)で表される前記膜の(110)面の配向度が90%以上であるBNT−BT系膜である。(110)面の配向度=ΣIb(110)/{ΣIa(100)+ΣIb(110)}×100 (1)ここで、ΣIa(100)及びΣIb(110)は、(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度をそれぞれ示す。【選択図】図1

Description

本発明は、鉛を含まず、結晶性と膜密度が高く、(110)面又は(100)面の高い配向度を有し、これにより高い圧電特性又は高いキャパシタ特性を有するBNT−BT系膜及びその形成方法に関する。本明細書において、BNT−BTは、(Bi,Na)TiO3−BaTiO3の略称である。即ち、BNTは、(Bi,Na)TiO3の略称であり、BTは、BaTiO3の略称である。またLNO膜は、LaNiO3膜の略称である。
従来、この種のBNT−BT系膜として、(110)配向のみを有する第1電極13、(110)配向のみを有する(NaxBi0.5)TiO0.5x+2.75−BaTiO3層14、(110)配向のみを有する(Bi,Na)TiO3−BaTiO3層15、及び第2電極17が、この順に積層され、xの値は0.29以上0.40以下である圧電体膜が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。BNT−BT層14は、第1電極13とBNT−BT層15の界面層である。
特許文献1に示される圧電体膜は、例えば、Pt層(第1電極13)上に、スパッタリング法により、(110)配向のみを有する0.93(NaxBi0.5)TiO0.5x+2.75−0.07BaTiO3層14(x=0.350)を界面層として100nmの厚さに形成した後、この界面層14上に、スパッタリング法により、(110)配向のみを有する0.93(Bi0.5Na0.5)TiO3−0.07BaTiO3層15を2.7μmの厚さに形成して作られる。また特許文献1の比較例2には、(Na0.5Bi0.5)TiO3からなる界面層を用いた圧電体膜が示される。
特許文献1に示されるように、圧電体膜をスパッタリング法で形成する場合、スパッタリング法は、真空中で酸化物ターゲットに対し、例えばイオン化されたアルゴンなどを衝突させ、それによってはじき出された元素を基板に蒸着させているため、ターゲットとして使用した酸化物から組成がずれるという問題があり、多元素を利用する圧電体膜を形成する方法としては不向きである。それに加え、高真空が必要であることから、装置の大型化、高コスト化は避けられない。
このスパッタリング法の課題を解決するために、スパッタリング法に代わって、化学溶液堆積(CSD:chemical solution deposition)法が知られている。このCSD法は、目的組成の金属元素を含む前駆体溶液を用いて、例えばスピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法などにより基板上に成膜し、焼成することで圧電体膜又はキャパシタ膜を形成する方法であるため、スパッタリング法と比較して低温で圧電体膜又はキャパシタ膜を形成することができ、また、高真空を必要としないため小型かつ安価な装置で形成可能であるため好ましい。
従来、CSD法によるBNT−BT圧電体膜の形成方法の一つとして、0.94(Bi0.5Na0.5)TiO3−0.06BaTiO3の構造式を有する圧電体膜を有機金属溶液堆積(MOSD:metal-organic solution deposition)法で形成する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。この非特許文献1の方法では、先ずBNT溶液とBT溶液とを理論量論比でそれぞれ別々に調製し、その後両溶液を混合し、この混合液をPt/Ti/SiO2/Si基板上にスピンコーティングする。スピンコーティングした液をホットプレート上で170℃、10分間乾燥し、450℃、10分間仮焼し、最後にRTA(Rapid Thermal Annealing)で600℃以上700℃以下の温度で急速加熱して焼成する。膜厚を増大させるため、このスピンコーティングと乾燥と仮焼と焼成を数回繰り返してBNT−BT圧電体膜が形成される。
非特許文献1には、非特許文献1の方法で得られたBNT−BT圧電体膜が、原子力間顕微鏡の観察で平均粒径が200nmオーダーであって平滑かつクラックがないこと、356nmの厚さで小信号誘電率と誘電正接が1kHzで613と0.044をそれぞれ示すこと、強誘電体ヒステリシス測定で164.5kV/cmの保持場で21.5μC/cm2の残留分極値が示されること、及び200kV/cmの電界でリーク電流密度が4.08×10-4A/cm2であり、その有効圧電定数(d33)が約51.6pm/Vであることが示される。
WO2012/140811(請求項1、段落[0067]〜[0073]、段落[0085]、段落[0095]、図1)
スパッタリング法でBNT−BT圧電体膜を形成する特許文献1の方法では、上述した課題がある。またCSD法でBNT−BT圧電体膜を形成する非特許文献1の方法では、BNT溶液とBT溶液を混合した混合液を基板に塗布し、乾燥し、仮焼した後で、焼成するときに、結晶化温度の高いBT成分を含むため、高いエネルギーを要する。そのため、非特許文献1の方法に代表されるCSD法では、良好な結晶性のある膜を得ることが困難であった。結晶性が良好でない膜は電気特性に劣るため、結晶性を向上させることが求められていた。
本発明の目的は、鉛を含まず、結晶性と膜密度が高く、(110)面又は(100)面の高い配向度を有し、これにより高い圧電特性又は高いキャパシタ特性を有するBNT−BT系膜及びその形成方法を提供することにある。
本発明者らは、CSD法において、BNT膜が500℃程度の温度から結晶化することを見出し、基板の電極とBNT−BT膜の間にBNT膜を介在させることにより、焼成時に電極界面での結晶核の発生密度を高め、結晶性と密度の高いBNT−BT膜を形成し得ることを知見し、本発明に到達した。
本発明の第1の観点は、基板の電極上に形成される(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜からなるBNT−BT系膜であって、前記BNT−BT系膜は化学溶液堆積法(以下、CSD法という。)により形成され、Cu−Kα線を用いたX線回折法により得られる回折角度2θ=32°〜33°の前記膜の(110)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下であり、かつ下記式(1)で表される前記膜の(110)面の配向度が90%以上であるBNT−BT系膜である。
(110)面の配向度=ΣIb(110)/{ΣIa(100)+ΣIb(110)}×100 (1)
ここで、ΣIa(100)及びΣIb(110)は、(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度をそれぞれ示す。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、基板の電極上にLaNiO3膜を介して形成される(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜からなるBNT−BT系膜であって、前記BNT−BT系膜はCSD法により形成され、Cu−Kα線を用いたX線回折法により得られる回折角度2θ=22.5°〜23.5°の前記膜の(100)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下であり、かつ下記式(2)で表される前記膜の(100)面の配向度が90%以上である。
(100)面の配向度=ΣIc(100)/{ΣIc(100)+ΣId(110)}×100 (2)
ここで、ΣIc(100)及びΣId(110)は、(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度をそれぞれ示す。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点のいずれかの観点に基づく発明であって、前記(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜が(Bi,Na)TiO3−BaTiO3にMn及び/又はNbを含む。
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点のいずれかの観点に基づく発明であって、前記基板がシリコン基板又はサファイア基板であるBNT−BT系膜である。
本発明の第5の観点は、第1ないし第4の観点のいずれかの観点に基づく発明であって、前記基板の電極が(111)面に配向するPt膜であるBNT−BT系膜である。
本発明の第6の観点は、基板の電極上に直接又はLaNiO3膜を介してCSD法により(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜からなるBNT−BT系膜を形成する方法であって、前記基板の電極上に直接又はLaNiO3膜を介して(Bi,Na)TiO3膜形成用液組成物を塗布乾燥し350℃以上400℃以下の温度で仮焼して厚さが4nm以上20nm以下であるシード層となる第1仮焼膜を形成し、前記第1仮焼膜上に(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜形成用液組成物を塗布乾燥し350℃以上400℃以下の温度で仮焼して第2仮焼膜を形成した後、前記第1仮焼膜と前記第2仮焼膜を25℃/秒以上の速度で昇温し700℃以上800℃以下の温度で一括焼成して結晶化した(Bi,Na)TiO3−BaTiO3膜系を形成する。
本発明の第1の観点のBNT−BT系膜は、基板の電極上の膜の(110)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下であるため、結晶性が高く、かつ(110)面の高い配向度を有する。この結果、BNT−BT系膜は高い圧電特性を有する。また本発明のBNT−BT系膜は、特許文献1に示される(NaxBi0.5)TiO0.5x+2.75−BaTiO3層(x=0.350)のような特別な組成のシード層を界面層として具備しないため、大型で高価なスパッタリング装置を用いないCSD法により、小型で安価な装置で形成し得る。またこのBNT−BT系膜は、(110)面の配向度が90%以上であって、(110)面の配向度の高いため、(100)面の配向度の高い膜よりも誘電率が低く、ジャイロセンサ等のセンサに好適である。
本発明の第2の観点のBNT−BT系膜は、基板の電極上に(100)面に優先配向するLaNiO3膜を介して形成され、LaNiO3膜がBNT−BT層の結晶配向を制御するため、(100)面の配向度を有する。そしてこの膜の(100)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下であるため、結晶性が高く、かつ(100)面の高い配向度になる。この結果、BNT−BT系膜は高いキャパシタ特性を有する。また本発明のBNT−BT系膜は、特許文献1に示される(NaxBi0.5)TiO0.5x+2.75−BaTiO3層(x=0.350)のような特別な組成のシード層を界面層として具備しないため、大型で高価なスパッタリング装置を用いないCSD法で小型で安価な装置で形成し得る。またこのBNT−BT系膜は、(100)面に優先的に配向した膜の方が(110)面に優先的に配向した膜よりも誘電率が高く、薄膜キャパシタに好適である。
本発明の第3の観点のBNT−BT系膜は、(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜が(Bi,Na)TiO3−BaTiO3にMn及び/又はNbを含むことにより、リーク電流密度が低い、圧電体膜又はキャパシタ膜が得られる。
本発明の第4の観点のBNT−BT系膜は、通常の圧電体装置又はキャパシタに用いられるシリコン基板又はサファイア基板の基板上に形成されるため、汎用性が高い。
本発明の第5の観点のBNT−BT系膜は、通常の圧電体装置又はキャパシタの下部電極として用いられる(111)面に配向するPt層上に形成されるため、汎用性が高い。
本発明の第6の観点のBNT−BT系膜の形成方法では、BNT膜形成用液組成物を塗布乾燥し350℃以上400℃以下の温度で仮焼して厚さが4nm以上20nm以下であるシード層となる第1仮焼膜を形成し、この第1仮焼膜上にBNT−BT系膜形成用液組成物を塗布乾燥し350℃以上400℃以下の温度で仮焼して第2仮焼膜を形成した後、第1仮焼膜と第2仮焼膜を25℃/秒以上の速度で昇温し700℃以上800℃以下の温度で一括焼成する。この方法では、所定の温度で仮焼し、所定の昇温速度で焼成したときに、BNTからなる第1仮焼膜により、電極と第2仮焼膜の界面における結晶核発生密度が高められる。即ち、非特許文献1に示されるような、界面にBT成分(特にBa成分)が存在しないため、膜の形成時に所望の組成と異なる組成の発生が抑制され、高い結晶性と、(110)面又は(100)面の高い配向度を有するBNT−BT系膜を形成することができる。
第1の実施形態の電極上にBNTをシード層としてBNT−BT系膜を形成する工程を示す断面模式図である。 第2の実施形態のLNO膜上にBNTをシード層としてBNT−BT系膜を形成する工程を示す断面模式図である。 実施例1(太線)と比較例1(細線)の膜のX線回折プロファイルを示す図である。 実施例9(太線)と比較例6(細線)の膜のX線回折プロファイルを示す図である。
<第1の実施形態>
先ず、本発明の第1の実施形態のBNT−BT系膜を形成する方法を図1に基づいて説明する。
〔電極付き基板の準備〕
図1(d)に示すように、第1の実施形態のBNT−BT系膜11は基板12上に形成される。この基板12は、図1(a)に示すように、シリコン製又はサファイア製の耐熱性のある基板本体13を有する。シリコン製の基板本体の場合、この基板本体13上にSiO2膜14が設けられ、このSiO2膜14上に下部電極15が設けられる。下部電極15は、Pt、TiOX、Ir、Ru等の導電性を有し、かつBNT−BT系膜11と反応しない材料により形成される。例えば、下部電極15を、基板本体12側から順にTiOX膜15a及びPt膜15bの2層構造にすることができる。上記TiOX膜15aの具体例としては、TiO2膜が挙げられる。更に上記SiO2膜14は密着性を向上するために形成される。Pt膜15bは、例えばスパッタリング法により(111)面に配向して形成される。
〔シード層としてのBNT膜(第1仮焼膜)の形成〕
図1(b)に示すように、基板12上にシード層としてのBNT膜16をCSD法(以下、ゾルゲル法ともいう。)により形成する。このBNT膜16は、(Bi,Na)TiO3膜形成用液組成物を基板12上に塗布し、乾燥し、仮焼して第1仮焼膜として作製される。この液組成物は、Bi、Na及びTiを少なくとも含む。例えば、酢酸ビスマス、ナトリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドを含む。この液組成物の塗布は、スピンコーティング、ディップコーティング、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法又は静電スプレー法などにより、仮焼した後で4nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上10nm以下の厚さを有する塗膜(ゲル膜)になるように行われる。
上記液組成物を塗布した後の乾燥は、自然乾燥、或いは低沸点溶媒や吸着した水分子を除去するため、例えば、ホットプレートを用いて70℃以上90℃以下の温度で、0.5分以上5分間の低温加熱で行われる。この乾燥した後の仮焼は、例えば、ホットプレート又はRTAにより、350℃以上400℃以下、好ましくは360℃以上380℃以下の温度で行われる。仮焼する温度が350℃未満では、BNT相と異なる相が生成する。400℃を超えると、BNT膜(第1仮焼膜)が結晶化しにくくなる。また仮焼した後の第1仮焼膜の厚さが4nm未満では、結晶核の発生密度が小さく、結晶性と密度の高いBNT−BT系膜を形成できない。厚さが20nmを超えると、シード層としてのBNT膜(第1仮焼膜)が厚くなりすぎ、BNT膜上に形成されるBNT−BT系膜の誘電特性(圧電特性、キャパシタ特性等)が劣化する。
〔BNT−BT系膜(第2仮焼膜)の形成〕
図1(c)に示すように、BNT膜(第1仮焼膜)16上にBNT−BT系膜(第2仮焼膜)17をゾルゲル法により形成する。このBNT−BT系膜17は、(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜形成用液組成物をBNT膜16上に塗布し、乾燥し、仮焼して第2仮焼膜として作製される。この液組成物は、Bi、Na及びTiに加えてBaを少なくとも含み、例えば、酢酸ビスマス、酢酸バリウム、Naアルコキシド及びTiアルコキシドを含む。この液組成物はMn及び/又はNbを含んでもよい。この液組成物の1回の塗布は、BNT膜形成用液組成物の塗布方法と同じであり、焼成した後で、好ましくは50nm以上100nm以下の厚さを有する膜になるように行われる。焼成した後の膜厚が50nm未満では生産性が劣り、100nmを超えると、焼成後のBNT−BT系膜中にクラックが発生し易くなる。
上記液組成物を塗布乾燥した後の仮焼は、例えば、ホットプレート又はRTAにより、BNT膜形成用液組成物の仮焼と同じ、350℃以上400℃以下、好ましくは360℃以上380℃以下の温度で行われる。仮焼する温度が350℃未満では、BNT−BT相と異なる相が生成する。400℃を超えると、BNT−BT系膜(第2仮焼膜)が結晶化しにくくなる。
〔第1仮焼膜及び第2仮焼膜の一括焼成〕
BNT−BT系膜(第2仮焼膜)17を作製した後、このBNT−BT系膜(第2仮焼膜)17とBNT膜(第1仮焼膜)16とを一括焼成する。この一括焼成により、第1仮焼膜は、電極と第2仮焼膜の間の界面における易結晶化膜となって結晶核発生密度を高めるとともに、焼成中に第2仮焼膜と一体となって、図1(d)に示すように、BNT−BT系膜11を形成する。BNT−BT系膜11の状態では、シード層であった第1仮焼膜は消失する。このBNT−BT系膜11はペロブスカイト型構造で形成され、(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜形成用液組成物がMn及び/又はNbを含む場合には、このペロブスカイト型構造のAサイト及び/又はBサイトにMn及び/又はNbを含む。この一括焼成は、酸素(O2)雰囲気中、N2、Ar、N2O又はH2のガス雰囲気中、或いはこれらの混合ガス雰囲気中、第1仮焼膜と第2仮焼膜とを、例えば、RTAで25℃/秒以上の速度で600℃以上700℃以下の温度まで昇温し、0.5分以上5分以下の時間保持することにより行われる。好ましい昇温速度は25℃/秒以上200℃/秒以下であり、好ましい焼成温度は50℃以上100℃以下である。昇温速度が25℃/秒未満、焼成温度が600℃未満又は焼成時間が0.5分間未満では、作製されるBNT−BT系膜11の結晶化度が十分でなく、その密度が低くなる。焼成温度が700℃を超えるか、又は焼成時間が5分間を超えると、生産性が悪くなる。
〔厚さ調整層としてのBNT−BT系膜の形成〕
図1(e)に示すように、所望の膜厚に応じて、BNT−BT系膜11上に更に厚さ調整層としてのBNT−BT系膜18を形成してもよい。このBNT−BT系膜18は、上記第2仮焼膜を形成する液組成物と同一の液組成物をBNT−BT系膜11上に塗布し、乾燥して、仮焼する。所望の膜厚に応じて、1層又は2層以上の仮焼膜を積層する。このときの塗布、乾燥及び仮焼の条件は、第2仮焼膜形成時の塗布、乾燥及び仮焼の条件と同じである。1層又は2層以上の仮焼膜を積層した後、これらの仮焼膜を一括焼成する。図1(e)には厚さ調整層形成用に4層の仮焼膜を積層した後、焼成した例が示される。単一のBNT−BT系膜の膜厚、即ち1回の焼成で形成されるBNT−BT系膜の膜厚は、250nm以上400nm以下であることが好ましく、270nm以上380nm以下であることが更に好ましい。ここで、1回の焼成で形成されるBNT−BT系膜の膜厚を250nm以上400nm以下の範囲内に限定したのは、250nm未満では生産性が低下し、400nmを越えると成膜時にBNT−BT系膜中にクラックが発生し易くなるからである。
〔第1の実施形態のBNT−BT系膜の特性〕
第1の実施形態のBNT−BT系膜11、18は、上述したゾルゲル法で形成され、Cu−Kα線を用いたX線回折法により得られる回折角度2θ=32°〜33°の前記膜の(110)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下である。このため、BNT−BT系膜11、18は、結晶性が高く、かつ(110)面の高い配向度を有する。この結果、BNT−BT系膜11、18は高い圧電特性を有する。上記半値幅が0.200°を超えると、膜の結晶性に劣る。
また第1の実施形態のBNT−BT系膜11、18は、下記式(1)で表される(110)面の配向度が90%以上である。
(110)面の配向度=ΣIb(110)/{ΣIa(100)+ΣIb(110)} (1)
ここで、ΣIa(100)及びΣIb(110)は、(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度をそれぞれ示す。
このため、(110)面の配向度の高く、かつ(100)面の配向度の高い膜よりも誘電率が低く、ジャイロセンサなどのセンサに好適である。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態のBNT−BT系膜を形成する方法を図2に基づいて説明する。第2の実施形態の特徴ある点は、図2(a)〜図2(d)に示すように、基板12の下部電極15の上にLaNiO3膜(LNO膜)20が形成され、このLNO膜上にBNT膜(第1仮焼膜)26とBNT−BT系膜(第2仮焼膜)27がこの順に積層され、第1仮焼膜26及び第2仮焼膜27が一括焼成されて、BNT−BT系膜21が形成されることにある。符号28は、焼成したBNT−BT系膜21の上に積層された厚さ調整層形成用のBNT−BT系膜である。LNO膜20が形成される以外、第1の実施形態と同じである。このため、次のLNO膜の形成について説明する以外は、繰り返しの説明を省略する。
〔LNO膜の形成〕
図2(b)に示すように、LNO膜20は電極15上に形成される。このLNO膜20は(100)面に自己配向性を有するため、BNT−BT系膜21及び28の結晶配向性を(100)面に制御するための結晶配向性制御層として用いられる。このLNO膜20は、LNO膜形成用液組成物を電極15上に塗布し、乾燥し、仮焼した後、焼成することにより形成される。LNO膜形成用液組成物は、La及びNiを少なくとも含む。La源としては、酢酸ランタン、オクチル酸ランタン、2−エチルヘキサン酸ランタン等の金属カルボン酸塩、硝酸ランタン等の金属硝酸塩、ランタンイソプロポキシド等の金属アルコキシド、ランタンアセチルアセトナート等の金属β−ジケトネート錯体等が選ばれ、Ni源としては、酢酸ニッケル、オクチル酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル等の金属カルボン酸塩、硝酸ニッケル等の金属硝酸塩、ニッケルアセチルアセトネート等の金属β−ジケトネート錯体等が選ばれる。
LNO膜形成用液組成物の電極15上への塗布、乾燥、仮焼及び焼成は、上記BNT膜BNT−BT系膜を形成するときと同様の条件で行われる。
〔第2の実施形態のBNT−BT系膜の特性〕
第2の実施形態のBNT−BT系膜21、28は、上述したゾルゲル法で形成され、基板電極上にLNO層20を有するため、Cu−Kα線を用いたX線回折法により得られる回折角度2θ=22.5°〜23.5°付近の前記膜の(100)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下である。このため、BNT−BT系膜21、28は、結晶性が高く、かつ(100)面の高い配向度を有する。この結果、BNT−BT系膜21、28は高いキャパシタ特性を有する。上記半値幅が0.200°を超えると、膜の結晶性に劣る。
また第2の実施形態のBNT−BT系膜21、28は、下記式(2)で表される(100)面の配向度が90%以上である。
(100)面の配向度=ΣIc(100)/{ΣIc(100)+ΣId(110)}×100 (2)
ここで、ΣIc(100)及びΣId(110)は、(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度をそれぞれ示す。
このように(100)面の優先配向度を高めた膜の誘電率は(110)面の優先配向度を高めた膜より誘電率が高いため、薄膜キャパシタに好適である。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
〔0.94Bi0.55Na0.58TiO3−0.06BaTiO3液組成物の合成〕
フラスコに、テトラチタンイソプロポキシド(Ti源)と、このTi源に対してアセチルアセトンとをモル比(Ti:アセチルアセトン)で1:2となるように投入して撹拌し、この混合液を150℃のオイルバスで30分間還流した。次いでフラスコ内の得られた溶液に、酢酸ビスマス(Bi源)と酢酸バリウム(Ba源)とをモル比(Ti:Bi:Ba)で1:0.517:0.06となるように投入し、更にTi1モルに対して20モルの割合で酢酸を投入して撹拌し、150℃のオイルバスで30分間還流することにより均質な液を得た。次にフラスコ内のこの液にナトリウムエトキシド(Na源)をモル比(Ti:Na)で1:0.545となるように投入し、更にTi1モルに対して20モルのエタノールを投入し撹拌し、30分間還流することにより均質な液を得た。フラスコ内を減圧することにより、液中の副生成物や過剰な溶液を除去した。除去した後の溶液の酸化物濃度は20質量%であった。更に安定化剤である2−ジメチルアミノエタノールをモル比(Ti:安定化剤)で1:1となるように添加し、続けて酢酸により酸化物換算で8質量%まで希釈した。得られた液をフィルターでろ過することによりゴミを取り除き、ゾルゲル液である0.94Bi0.55Na0.58TiO3−0.06BaTiO3液組成物(以下、BNT−BT液組成物という。)を得た。
〔Bi0.60Na0.60TiO3液組成物の合成〕
酢酸バリウム(Ba源)を投入しない以外は、上記液組成物の合成と同様の方法でゾルゲル液である酸化物換算で1質量%のBi0.60Na0.60TiO3液組成物(以下、BNT液組成物という。)を得た。
〔BNT−BT系膜の形成〕
先ず直径100mmのシリコン基板を熱酸化して、その表面に500nmのSiO2膜を形成した。SiO2膜上にTiをスパッタリング法により20nmの厚さで形成し、続いてRTAにて酸素雰囲気下、700℃で1分間焼成することにより酸化チタン膜を形成した。酸化チタン膜上にスパッタリング法により100nmの厚さの(111)配向のPt膜からなる下部電極を形成した。このPt膜上に直接酸化物換算で1質量%のBNT液組成物を滴下し、3000rpmで15秒間スピンコーティングした。更に350℃のホットプレートで5分間仮焼を行い、Pt膜上に厚さ10nmのシード層となる第1仮焼膜を形成した。この第1仮焼膜上に酸化物換算で8質量%のBNT−BT液組成物を塗布し、3000rpmで15秒間スピンコーティングした。更に350℃のホットプレートで5分間仮焼を行い、第1仮焼膜上に厚さ10nmのBNT−BT誘電体層となる第2仮焼膜を形成した。酸素雰囲気中、第1仮焼膜(シード層)と第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)とをRTAで50℃/秒の速度で700℃まで昇温し、3分間保持して一括焼成し第1仮焼膜と第2仮焼膜が一体となって結晶化した。第1仮焼膜(シード層)と第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)の各厚さは分光エリプソメーター(J. A. Woollam 型番M2000-DI))により測定した。
続いてこの一括焼成した膜の上に上記8質量%のBNT−BT液組成物を再び塗布し、3000rpmで15秒間スピンコーティングし、350℃のホットプレートで5分間仮焼を行い、第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)を積層した。この第2仮焼膜の形成を4回繰り返した。4層の第2仮焼膜をRTAで50℃/秒の速度で700℃まで昇温し、3分間保持して一括焼成した。4層の第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)の焼成により、Pt膜上に厚さ320nmのBNT−BT膜を形成した。
<実施例2>
第1仮焼膜(シード層)及び第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)のそれぞれの仮焼温度を375℃に変更した以外、実施例1と同様にして、厚さ320nmのBNT−BT膜を形成した。
<実施例3>
第1仮焼膜(シード層)及び第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)のそれぞれの仮焼温度を400℃に変更した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<実施例4>
第1仮焼膜(シード層)及び第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)を一括焼成するときの昇温速度を25℃/秒に変更した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<実施例5>
BNT−BT液組成物を0.90Bi0.55Na0.58TiO3−0.10BaTiO3液組成物に変更した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<実施例6〜8>
第1仮焼膜(シード層)の厚さを4nm(実施例6)、15nm(実施例7)及び20nm(実施例8)に変更した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<比較例1>
第1仮焼膜(シード層)及び第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)のそれぞれの仮焼温度を325℃に変更した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<比較例2>
第1仮焼膜(シード層)及び第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)のそれぞれの仮焼温度を425℃に変更した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<比較例3>
第1仮焼膜(シード層)及び第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)を一括焼成するときの昇温速度を10℃/秒に変更した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<比較例4〜5>
第1仮焼膜(シード層)の厚さを3nm(比較例4)及び25nm(比較例5)に変更した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
実施例1〜8及び比較例1〜5によりBNT−BT膜を形成するときの製造条件を次の表1及び表2に示す。
Figure 2019204896
Figure 2019204896
<比較評価試験その1>
実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた13種類のBNT−BT膜について、配向面、(110)面のピーク波形における半値幅、(110)面の配向度、密度及び比誘電率を測定又は算出した。これらの結果を上記表2に示す。
(1) 配向面
13種類のBNT−BT膜の優先配向面をX線回折プロファイルによりそれぞれ測定した。具体的には、X線回折(XRD)装置(パナリティカル社製、型式名:Empyrean)を用いた集中法により、実施例1及び比較例1のBNT−BT膜のCu−Kα線を用いたXRD分析を行った。その結果(実施例1及び比較例1のみ)を図3に示す。図3から明らかなように、実施例1及び比較例1のBNT−BT膜の優先配向面はそれぞれ(110)面であった。なお、図3において、回折角度2θが32°〜33°の範囲内であって、基板に由来する回折ピークを除いた最も強度の高い配向面を優先配向面とした。また、実施例2〜8及び比較例2〜5のBNT−BT膜についても、上記と同様にXRD分析を行ったところ、優先配向面はいずれも(110)面であった。
(2) (110)面のピーク波形における半値幅
上記XRD装置により得られる回折角度2θ=32°〜33°の13種類のBNT−BT膜の(110)面のピーク波形における半値幅(°)をそれぞれ求めた。
(3) ピーク強度
13種類のBNT−BT膜のX線回折プロファイルにおいて、回折角度2θ=32°〜33°の(110)面のピーク強度を測定した。
(4) (110)面の配向度
13種類のBNT−BT膜のX線回折プロファイルにおいて、回折角度2θが22.5°〜23.5°の範囲内の(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度(ΣIa(100)及びΣIb(110))を求め、次の式(1)により(110)面の配向度を求めた。
(110)面の配向度=ΣIb(110)/{ΣIa(100)+ΣIb(110)}×100 (1)
(5) 密度
13種類のBNT−BT膜の膜密度(%)をSEMで測定した。膜の断面をSEMにて観察し、その断面像を画像解析することにより膜の面積及び膜中のボイド部分の面積を算出し、[(膜の面積−ボイド部分の面積)/膜の面積]×100という計算を行うことにより膜密度(%)を算出した。
(6) 比誘電率
先ず、BNT−BT膜の上面に、スパッタリングにより200μmφの一対の電極をそれぞれ形成した後、RTAを用いて、酸素雰囲気中で700℃に1分間保持して、ダメージを回復するためのアニーリングを行い、キャパシタ構造を作製して、比誘電率測定用のサンプルとした。このサンプルの誘電率を強誘電体評価装置(aix ACCT社製:TF−analyzer2000)により測定した後、無次元化するために、上記測定された誘電率を真空の誘電率で除して比誘電率を算出した。
<評価結果その1>
表2から明らかなように、実施例1、2、3と比較例1、2を比較すると、仮焼温度が350℃から400℃では(110)面の優先配向度が上昇し、ピークの半値幅が小さくなっていることが確認できた。半値幅の小さな膜は結晶性に優れ、高い圧電特性が期待できる。
実施例1、4と比較例3を比較すると、昇温速度が25℃/秒以上であれば膜が十分に緻密化するものの、それ以下であると緻密化が十分に進行せず電気特性が劣化することが確認できた。
実施例6、7、8と比較例4、5を比較すると、BNT層の厚さが4nmより薄いと配向度が十分に上がらず電気特性が劣り、20nmよりも厚いと同様に配向度が十分に上がらず電気特性が劣る。これらの結果より、電気特性が良好なBNT−BT膜を得るには仮焼温度が350℃以上400℃以下かつ焼成時の昇温速度が25℃/秒以上かつBNT層の厚さが4nm以上20nm以下であることが必要であることが明らかとなった。
<実施例9>
〔LaNiO3膜の形成〕
LaNiO3前駆体として、酢酸ニッケル・4水和物(Ni源)と硝酸ランタン・6水和物(La源)を用意し、これらをLaとNiの金属原子比が1:1となるように秤量した。また、安定化剤として、上記前駆体の合計量1モルに対して5モルとなる量のN−メチルホルムアミドを用意した。次いで、フラスコに、上記酢酸ニッケル・4水和物(Ni源)と、上記硝酸ランタン・6水和物(La源)と入れた後に、エチレングリコールモノプロピルエーテルを添加して混合溶液を調製した。
上記混合溶液を蒸留により脱水を行った後、安定化剤としてN−メチルホルムアミドを添加した。更に、この混合溶液をアルゴンガス雰囲気中、150℃の温度で20分間加熱し反応させた後に、エチレングリコールモノプロピルエーテルで質量調整を行った。これによりLaとNiの金属原子比が1:1でありLaNiO3前駆体の濃度が酸化物換算で4質量%であるLaNiO3膜形成用液組成物(以下、LNO液組成物という。)を得た。
得られたLNO液組成物を実施例1と同一構成のSi/SiO2/TiOX/Pt基板上に滴下して、3000rpmで15秒間スピンコーティングして、基板のPt膜上に塗膜を形成した。次に、上記基板上の塗膜を450℃のホットプレートで5分間仮焼した後、RTAで酸素雰囲気中に10℃/秒の速度で800℃まで昇温し、この温度に5分間保持する焼成を行って、基板上にLaNiO3膜(LNO膜)を形成した。
〔BNT−BT膜の形成〕
実施例1と同一組成のBNT液組成物と実施例1と同一組成のBNT−BT液組成物を用いて、このLNO膜上に実施例1と同様に、第1仮焼膜(シード層)を形成した後、第2仮焼膜(BNT−BT誘電体層)を形成し、これらを一括焼成して、厚さ300nmのBNT−BT膜を形成した。即ち、実施例9では、LNO膜を下地に使用した以外、実施例1と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<実施例10>
実施例10では、仮焼温度を375℃にした以外、実施例9と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<実施例11>
実施例11では、仮焼温度を400℃にした以外、実施例9と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<実施例12>
実施例12では、焼成時の昇温速度を25℃/秒にした以外、実施例10と同様にして、BNT−BT膜を形成した)。
<実施例13>
実施例13では、焼成時の昇温速度を100℃/秒にした以外、実施例10と同様にして、BNT−BT膜を形成した)。
<実施例14>
実施例14では、焼成時の温度を750℃にした以外、実施例10と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<実施例15>
実施例15では、焼成時の温度を800℃にした以外、実施例10と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<比較例6>
比較例6では、BNT層を使用しなかったこと以外、実施例10と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<比較例7>
比較例7では、仮焼温度を325℃にしたこと以外、実施例10と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<比較例8>
比較例8では、仮焼温度を425℃にしたこと以外、実施例10と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
<比較例9>
比較例9では、昇温速度を10℃/秒にしたこと以外、実施例10と同様にして、BNT−BT膜を形成した。
実施例9〜15及び比較例6〜9によりBNT−BT膜を形成するときの製造条件を次の表3及び表4に示す。
Figure 2019204896
Figure 2019204896
<比較評価試験その2>
実施例9〜15及び比較例6〜9で得られた11種類のBNT−BT膜について、比較評価試験その1と同様の方法で、配向面、(100)面のピーク波形における半値幅、ピーク強度、(100)面の配向度、密度及び比誘電率を測定又は算出した。これらの結果を上記表4に示す。
(1) 配向面
11種類のBNT−BT膜の優先配向面をX線回折プロファイルによりそれぞれ測定した。具体的には、比較評価試験その1と同一のX線回折(XRD)装置を用いて、同一の方法で、実施例9及び比較例6のBNT−BT膜のXRD分析を行った。その結果(実施例9及び比較例6のみ)を図4に示す。図4から明らかなように、実施例9及び比較例6のBNT−BT膜の優先配向面はそれぞれ(100)面であった。なお、図4において、回折角度2θが22.5°〜23.5°の範囲内であって、基板に由来する回折ピークを除いた最も強度の高い配向面を優先配向面とした。また、実施例10〜15及び比較例7〜9のBNT−BT膜についても、上記と同様にXRD分析を行ったところ、優先配向面はいずれも(100)面であった。
(2) (100)面のピーク波形における半値幅
上記XRD装置により得られる回折角度2θ=22.5°〜23.5°の11種類のBNT−BT膜の(100)面のピーク波形における半値幅(°)をそれぞれ求めた。
(3) ピーク強度
11種類のBNT−BT膜のX線回折プロファイルにおいて、回折角度2θ=22.5〜23.5°の(100)面のピーク強度を求めた。
(4) (100)面の配向度
11種類のBNT−BT膜のX線回折プロファイルにおいて、回折角度2θが22.5°〜23.5°の範囲内の(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度(ΣIc(100)及びΣId(110))を求め、次の式(2)により(100)面の配向度を求めた。
(100)面の配向度=ΣIc(100)/{ΣIc(100)+ΣId(110)}×100 (2)
(5) 密度
11種類のBNT−BT膜の膜密度(%)を比較評価試験その1と同一の方法で算出した。
(6) 比誘電率
11種類のBNT−BT膜の比誘電率を比較評価試験その1と同一の方法で算出した。
<評価結果その2>
表4から明らかなように、実施例9、10、11と比較例7、8を比較すると、仮焼温度が350℃以上400℃以下でXRD評価によるピーク波形の半値幅が小さくなり、ピーク強度も向上していることが確認できた。一般的にピーク強度が高い膜の方が高い特性を有するため仮焼温度は上記温度が良好であった。実施例10、12、13と比較例9を比較すると、焼成時の昇温速度が25℃/秒より小さいと膜の緻密化が十分でなく、高い特性が得られないことが判った。
本発明のBNT−BT系膜は、振動発電素子、焦電センサ、アクチュエータ、インクジェットヘッド、オートフォーカス等のMEMSアプリケーションの圧電体膜、又は薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、強誘電体メモリ用コンデンサ等のキャパシタ膜に用いることができる。
11 、21 BNT−BT系膜
12 基板
15 電極
16、26 第1仮焼膜(シード層)
17、27 第2仮焼膜
18、28 BNT−BT系膜
20 LNO膜

Claims (6)

  1. 基板の電極上に形成される(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜からなるBNT−BT系膜であって、
    前記BNT−BT系膜は化学溶液堆積法(CSD法)により形成され、
    Cu−Kα線を用いたX線回折法により得られる回折角度2θ=32°〜33°の前記膜の(110)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下であり、かつ下記式(1)で表される前記膜の(110)面の配向度が90%以上であるBNT−BT系膜。
    (110)面の配向度=ΣIb(110)/{ΣIa(100)+ΣIb(110)}×100 (1)
    ここで、ΣIa(100)及びΣIb(110)は、(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度をそれぞれ示す。
  2. 基板の電極上にLaNiO3膜を介して形成される(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜からなるBNT−BT系膜であって、
    前記BNT−BT系膜は化学溶液堆積法(CSD法)により形成され、
    Cu−Kα線を用いたX線回折法により得られる回折角度2θ=22.5°〜23.5°の前記膜の(100)面のピーク波形における半値幅が0.200°以下であり、かつ下記式(2)で表される前記膜の(100)面の配向度が90%以上である請求項1記載のBNT−BT系膜。
    (100)面の配向度=ΣIc(100)/{ΣIc(100)+ΣId(110)}×100 (2)
    ここで、ΣIc(100)及びΣId(110)は、(100)面及び(110)面の各ピーク強度の積分強度をそれぞれ示す。
  3. 前記(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜が(Bi,Na)TiO3−BaTiO3にMn及び/又はNbを含む請求項1又は2記載のBNT−BT系膜。
  4. 前記基板がシリコン基板又はサファイア基板である請求項1ないし3いずれか1項に記載のBNT−BT系膜。
  5. 前記基板の電極が(111)面に配向するPt膜である請求項1ないし4いずれか1項に記載のBNT−BT系膜。
  6. 基板の電極上に直接又はLaNiO3膜を介して化学溶液堆積法(CSD法)により(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜からなるBNT−BT系膜を形成する方法であって、
    前記基板の電極上に直接又はLaNiO3膜を介して(Bi,Na)TiO3膜形成用液組成物を塗布乾燥し350℃以上400℃以下の温度で仮焼して厚さが4nm以上20nm以下であるシード層となる第1仮焼膜を形成し、前記第1仮焼膜上に(Bi,Na)TiO3−BaTiO3系膜形成用液組成物を塗布乾燥し350℃以上400℃以下の温度で仮焼して第2仮焼膜を形成した後、前記第1仮焼膜と前記第2仮焼膜を25℃/秒以上の速度で昇温し700℃以上800℃以下の温度で一括焼成して結晶化した(Bi,Na)TiO3−BaTiO3膜系を形成するBNT−BT系膜の形成方法。
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