JP2019203232A - 炭素材料前駆体の耐炎化処理装置及びそれを用いた炭素材料前駆体の耐炎化処理方法 - Google Patents

炭素材料前駆体の耐炎化処理装置及びそれを用いた炭素材料前駆体の耐炎化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】炭素材料前駆体の耐炎化処理温度を制御し、耐熱性に優れた耐炎化物(耐炎化処理を施した炭素材料前駆体)が得られ、高い収率で炭素材料を製造することが可能な炭素材料前駆体の耐炎化処理装置を提供する。【解決手段】炭素材料前駆体に耐炎化処理を施すための加熱装置と、耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定する赤外吸収強度測定手段と、前記炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする炭素材料前駆体の耐炎化処理装置。【選択図】図1

Description

本発明は、炭素材料前駆体の耐炎化処理装置及びそれを用いた炭素材料前駆体の耐炎化処理方法に関する。
炭素材料の1種である炭素繊維の製造方法としては、従来から、ポリアクリロニトリルを紡糸して得られる炭素繊維前駆体に耐炎化処理を施した後、炭化処理を施す方法が主として採用されている。このような炭素繊維の製造方法における耐炎化処理条件の制御方法としては、繊維束の密度に基づいて制御する方法(特開2009−138313号公報(特許文献1))や耐炎化炉内のアンモニア濃度に基づいて制御する方法(特開2003−113538号公報(特許文献2))等が採用されている。
しかしながら、耐炎化処理時の繊維束の密度の変化挙動は、炭素繊維前駆体の種類によって様々であり、アクリロニトリル系前駆体繊維束の耐炎化処理方法における制御条件をそのまま他の前駆体繊維束の耐炎化処理方法に適用することは困難であった。
また、耐炎化処理時のアンモニアの生成挙動も、炭素繊維前駆体の種類によって様々であり、例えば、アクリロニトリル系ポリマーからなる炭素材料前駆体の耐炎化処理においては、耐炎化反応が暴走した場合にアクリロニトリル系ポリマーが熱分解してアンモニアが発生するため、このアンモニアの濃度を指標とすることによって、耐炎化処理の温度を制御することが可能であるが、アクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体の耐炎化処理においては、副反応として脱アンモニア反応が進行するため、アンモニアの発生は避けられず、アンモニアの濃度を指標として耐炎化処理の温度を制御することは困難であった。
特開2009−138313号公報 特開2003−113538号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、新たな指標を導入することによって炭素材料前駆体の耐炎化処理温度を制御することが可能となり、これによって、耐熱性に優れた耐炎化物(耐炎化処理を施した炭素材料前駆体)が得られ、高い収率で炭素材料を製造することが可能な炭素材料前駆体の耐炎化処理装置及びそれを用いた炭素材料前駆体の耐炎化処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として炭素材料前駆体の耐炎化処理温度を制御することによって、耐熱性に優れた耐炎化物(耐炎化処理を施した炭素材料前駆体)が得られ、高い収率で炭素材料を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の炭素材料前駆体の耐炎化処理装置は、
炭素材料前駆体に耐炎化処理を施すための加熱装置と、
耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定する赤外吸収強度測定手段と、
前記炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する温度制御手段と、
を備えることを特徴とするものである。
前記温度制御手段としては、前記赤外吸収強度の比が1.70以上となるように、前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する手段が好ましい。
本発明の炭素材料前駆体の耐炎化処理方法は、前記本発明の耐炎化処理装置を用いる炭素材料前駆体の耐炎化処理方法であって、
耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定する赤外吸収強度測定工程と、
前記炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する温度制御工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
前記温度制御工程においては、前記赤外吸収強度の比が1.70以上となるように、前記加熱装置内の温度をフィードバック制御することが好ましい。
なお、本発明によって、耐熱性に優れた耐炎化物(耐炎化処理を施した炭素材料前駆体)が得られ、高い収率で炭素材料を製造できる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、例えば、アクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体に耐炎化処理を施した場合、下記式(1)で表される分子内脱水反応と下記式(2)で表される分子内脱アンモニア反応によって、耐熱性に優れた六員環構造体が形成される。
本発明においては、炭素材料前駆体の耐炎化反応において六員環構造体の生成が促進されるように、炭素材料前駆体の耐炎化処理温度を制御することから、耐熱性に優れた六員環構造体が十分に形成されると推察される。そして、六員環構造体の生成が促進される温度域においては、部分酸化反応が抑制されるため、生成した六員環構造体が安定して存在することによって耐炎化物の耐熱性が向上し、高い収率で炭素材料が得られると推察される。
一方、六員環構造体の生成が促進される温度域よりも低温側では、前記式(1)で表される分子内脱水反応及び前記式(2)で表される分子内脱アンモニア反応が進行しにくいため、耐熱性に優れた六員環構造体が十分に形成されず、耐炎化物の耐熱性が低下し、炭素材料の収率も低下すると推察される。
また、六員環構造体の生成が促進される温度域よりも高温側では、前記式(1)で表される分子内脱水反応及び前記式(2)で表される分子内脱アンモニア反応は促進され、耐熱性に優れた六員環構造体が形成されるものの、生成した生成した六員環構造体が部分酸化反応によって熱分解されるため、耐炎化物の耐熱性が低下し、炭素材料の収率も低下すると推察される。
本発明によれば、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として炭素材料前駆体の耐炎化処理温度を制御することが可能となる。また、前記赤外吸収強度の比を指標として、炭素材料前駆体の耐炎化反応において六員環構造体の生成が促進されるように、炭素材料前駆体の耐炎化処理温度を制御することによって、耐熱性に優れた耐炎化物(耐炎化処理を施した炭素材料前駆体)が得られ、高い収率で炭素材料を製造することが可能となる。
本発明にかかる温度制御手段及び温度制御工程における温度制御の流れを示すフローチャートである。 本発明の炭素材料前駆体の耐炎化処理装置の好適な一実施態様を示す模式図である。 式(a)で表される分子の振動解析結果を示すグラフである。 式(b)で表される分子の振動解析結果を示すグラフである。 式(c)で表される分子の振動解析結果を示すグラフである。 合成例1で得られたアクリルアミド系ポリマーの各温度での加熱処理後のFT−IRスペクトルを示すグラフである。 合成例1で得られたアクリルアミド系ポリマーの加熱処理前の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、加熱処理後の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比と、加熱温度との関係を示すグラフである。 合成例1で得られたアクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体に耐炎化処理、次いで炭化処理を施すことによって得られた炭素材料のラマンスペクトルを示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の炭素材料前駆体の耐炎化処理装置は、
炭素材料前駆体に耐炎化処理を施すための加熱装置と、
耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定する赤外吸収強度測定手段と、
前記炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する温度制御手段と、
を備えるものである。
また、本発明の炭素材料前駆体の耐炎化処理方法は、前記本発明の耐炎化処理装置を用いる炭素材料前駆体の耐炎化処理方法であって、
耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定する赤外吸収強度測定工程と、
前記炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する温度制御工程と、
を含む方法である。
〔炭素材料前駆体〕
本発明に用いられる炭素材料前駆体としては、炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるものであれば、特に制限はないが、アクリルアミド系ポリマーからなるものが好ましい。
このようなアクリルアミド系ポリマーとしては、アクリルアミド系モノマーの単独重合体であっても、アクリルアミド系モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体であってもよいが、炭素材料の収率が向上するという観点から、アクリルアミド系モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体が好ましい。
前記アクリルアミド系モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体におけるアクリルアミド系モノマー単位の含有量の下限としては、前記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性の観点から、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。また、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の上限としては、炭素材料の収率が向上するという観点から、99.9モル%以下が好ましく、99モル%以下がより好ましく、95モル%以下が更に好ましく、90モル%以下が特に好ましく、85モル%以下が最も好ましい。
前記アクリルアミド系モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体における他の重合性モノマー単位の含有量の下限としては、炭素材料の収率が向上するという観点から、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましく、10モル%以上が特に好ましく、15モル%以上が最も好ましい。また、他の重合性モノマー単位の含有量の上限としては、前記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性の観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が特に好ましい。
前記アクリルアミド系モノマーとしては、例えば、アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミド;N−シクロヘキシルアクリルアミド等のN−シクロアルキルアクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド等のジアルキルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルアクリルアミド;N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のヒドロキシアルキルアクリルアミド;N−フェニルアクリルアミド等のN−アリールアクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド;N,N’−メチレンビスアクリルアミド等のN,N’−アルキレンビスアクリルアミド;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド等のN−アルキルメタクリルアミド;N−シクロヘキシルメタクリルアミド等のN−シクロアルキルメタクリルアミド;N,N−ジメチルメタクリルアミド等のジアルキルメタクリルアミド;ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド;N−(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等のヒドロキシアルキルメタクリルアミド;N−フェニルメタクリルアミド等のN−アリールメタクリルアミド;ジアセトンメタクリルアミド;N,N’−メチレンビスメタクリルアミド等のN,N’−アルキレンビスメタクリルアミドが挙げられる。これらのアクリルアミド系モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのアクリルアミド系モノマーの中でも、水性溶媒又は水系混合溶媒への溶解性が高いという観点から、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、ジアルキルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、ジアルキルメタクリルアミドが好ましく、アクリルアミドが特に好ましい。
前記他の重合性モノマーとしては、例えば、シアン化ビニル系モノマー、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸エステル、ビニル系モノマー、オレフィン系モノマーが挙げられる。前記シアン化ビニル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルアクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、クロロメタクリロニトリル、メトキシアクリロニトリル、メトキシメタクリロニトリル等が挙げられる。前記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が挙げられ、前記不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、イタコン酸無水物等が挙げられ、前記不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられ、前記ビニル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、ビニルアルコール等が挙げられ、前記オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。これらの他の重合性モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの他の重合性モノマーの中でも、炭素材料前駆体の成形加工性(紡糸性)が向上し、炭素材料の収率が向上するという観点からは、シアン化ビニル系モノマーが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましく、前記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性の観点からは、不飽和カルボン酸及びその塩が好ましい。
〔加熱装置〕
本発明に用いられる加熱装置としては、炭素材料前駆体に耐炎化処理を施すことが可能なものであれば特に制限はなく、例えば、電気炉、ガス炉、マイクロ波炉、赤外線炉等が挙げられる。また、このような加熱装置としては連続式のものが好ましい。これにより、炭素材料前駆体を連続的に供給して連続的に耐炎化処理を施すことが可能となり、連続的に炭素材料を製造することができ、生産性が向上する。さらに、炭素材料前駆体の耐炎化処理は、酸化性ガス雰囲気下で行う必要があるため、前記加熱装置には、酸化性ガス(例えば、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガス)を供給するための酸化性ガス供給手段が接続されている。
〔赤外吸収強度測定手段及び赤外吸収強度測定工程〕
本発明に用いられる赤外吸収強度測定手段としては、耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定することが可能なものであれば特に制限はなく、例えば、赤外分光光度計が挙げられる。また、本発明にかかる赤外吸収強度測定工程としては、このような本発明の赤外吸収強度測定手段を用いて耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定する工程であれば特に制限はない。
〔温度制御手段及び温度制御工程〕
本発明にかかる温度制御手段及び温度制御工程は、以下に示す、前記加熱装置内の温度制御方法を利用する制御手段及び制御工程である。
本発明に用いられる前記加熱装置内の温度制御方法は、前記赤外吸収強度測定手段により、及び、前記赤外吸収強度測定工程において測定された、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として、前記炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する方法である。このように、耐炎化処理前後の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として、前記耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、前記加熱装置内の温度をフィードバック制御することによって、耐熱性に優れた六員環構造体が生成しやすく、かつ、安定に存在するため、耐炎化物の耐熱性が向上し、高い収率で炭素材料を得ることが可能となる。
また、このような加熱装置内の温度制御方法においては、前記赤外吸収強度の比が1.70以上となるように、前記加熱装置内の温度をフィードバック制御することが好ましい。前記赤外吸収強度の比が前記下限未満になると、耐炎化反応によって六員環構造体が十分に形成しなかったり、耐炎化反応によって生成した六員環構造体が部分酸化反応によって熱分解されて、安定に存在しなかったりするため、耐炎化物の耐熱性が低下し、炭素材料の収率も低下する傾向にある。
次に、このような前記加熱装置内の温度制御方法を、図1に示す温度制御フローに沿って説明する。先ず、赤外吸収強度測定手段を用いて耐炎化処理前及び耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度を測定し、耐炎化処理前の赤外吸収強度に対する耐炎化処理後の赤外吸収強度の比(赤外吸収強度比)を求め(ステップS1)、この赤外吸収強度比の測定値に基づいて前記加熱装置内の温度を制御する(ステップS2)。すなわち、赤外吸収強度比の測定値が閾値以上の場合には、前記加熱装置内の温度を維持して耐炎化処理を継続し(ステップS3)、閾値未満場合には、前記加熱装置内を昇温する(ステップS4)。
次に、昇温後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度を測定して耐炎化処理前の赤外吸収強度に対する比(昇温後の赤外吸収強度比)を求め(ステップS5)、この昇温後の赤外吸収強度比の測定値に基づいて前記加熱装置内の温度を制御する(ステップS6及びS2)。すなわち、前記昇温後の赤外吸収強度比の測定値が前回測定した赤外吸収強度比を超過かつ赤外吸収強度比の閾値以上の場合には、前記加熱装置内の温度を維持して耐炎化処理を継続し(ステップS3)、前回測定した赤外吸収強度比を超過かつ赤外吸収強度比の閾値未満場合には、前記加熱装置内を更に昇温する(ステップS4)。この昇温は、前記昇温後の赤外吸収強度比の測定値が赤外吸収強度比の閾値以上又は前回測定した赤外吸収強度比以下になるまで繰り返す。一方、前記昇温後の赤外吸収強度比の測定値が前回測定した赤外吸収強度比以下の場合には、前記加熱装置内を降温する(ステップS7)。
次に、降温後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度を測定して耐炎化処理前の赤外吸収強度に対する比(降温後の赤外吸収強度比)を求め(ステップS8)、この降温後の赤外吸収強度比の測定値に基づいて前記加熱装置内の温度を制御する(ステップS9及びS10)。すなわち、前記降温後の赤外吸収強度比の測定値が前回測定した赤外吸収強度比を超過かつ赤外吸収強度比の閾値以上の場合には、前記加熱装置内の温度を維持して耐炎化処理を継続し(ステップS3)、前回測定した水蒸気濃度を超過かつ水蒸気濃度の閾値未満場合には、前記加熱装置内を更に降温する(ステップS7)。この降温は、前記降温後の赤外吸収強度比の測定値が赤外吸収強度比の閾値以上又は前回測定した赤外吸収強度比以下になるまで繰り返す。一方、前記降温後の赤外吸収強度比の測定値が前回測定した赤外吸収強度比以下の場合には、前記加熱装置内を昇温し(ステップS4)、その後、上記と同様に、昇温後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度を測定して耐炎化処理前の赤外吸収強度に対する比(昇温後の赤外吸収強度比)を求め(ステップS5)、この昇温後の赤外吸収強度比の測定値に基づいて前記加熱装置内の温度を制御する(ステップS6及びS2)。
このような加熱装置と赤外吸収強度測定手段と温度制御手段とを備える本発明の炭素材料前駆体の耐炎化処理装置としては、例えば、図2に示す連続式の耐炎化処理装置が挙げられる。図2中、1は連続式加熱装置、2は温度測定手段、3は赤外吸収強度測定手段、4は温度制御手段、5は炭素材料前駆体、6は耐炎化処理を施した炭素材料前駆体(耐炎化物)、7は炭素材料前駆体片(耐炎化処理前)を示す。
このような本発明の耐炎化処理方法によって得られる耐炎化物は耐熱性に優れている。このような耐炎化物においては、酸素と炭素のモル比(酸素/炭素)が0.15以下であることが好ましい。
また、このような本発明の耐炎化処理方法によって得られる耐炎化物に不活性ガス雰囲気下で炭化処理を施すことによって、高い収率で炭素材料を得ることができる。特に、前記炭化処理を1100℃以上の温度下で行うことによって、炭素含有率が90質量%以上の炭素材料を得ることができ、また、ラマンスペクトルにおいてグラファイト構造に由来するGバンド(波数:1590cm−1付近)と欠陥構造に由来するDバンド(波数:1350cm−1付近)のピーク強度比〔I(G)/I(D)〕が1.0以上の炭素材料を得ることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用したアクリルアミド系ポーマーの合成方法を以下に示す。
(合成例1)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら40℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム4.11g(0.018mol)を添加した後、60℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、固体状のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。
このAAm/AN共重合体を重水に溶解し、得られた水溶液について、室温、周波数100MHzの条件で13C−NMR測定を行なった。得られた13C−NMRスペクトルにおいて、約121ppm〜約122ppmに現れる、アクリロニトリルのシアノ基の炭素に由来するピークと約177ppm〜約182ppmに現れる、アクリルアミドのカルボニル基の炭素に由来するピークとの強度比に基づいて、AAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
また、得られたAAm/AN共重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnをゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)を用いて下記の条件で測定した。その結果、Mwは62000であり、Mnは24000であり、多分散度(Mw/Mn)は2.6であった。
〔測定条件〕
カラム:TSKgel GMPWXL×2本+TSKgel G2500PWXL×1本。
溶離液:100mM硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=80/20。
溶離液流量:1.0ml/min。
カラム温度:40℃。
分子量標準物質:標準ポリエチレンオキシド/標準ポリエチレングリコール。
検出器:示差屈折率検出器。
このようにして得られた固体状のAAm/AN共重合体を直径が約1mm以下となるように粉砕・整粒した後、大気中、120℃で12時間乾燥した。
<振動解析>
下記式(a)及び(b)で表される分子を六員環構造体のモデル分子とし、下記式(c)で表される分子を環化前のモデル分子として、六員環構造体の振動解析を行なった。
構造最適化及び振動解析は、多重度をsinglet状態、荷電を0として、密度汎関数法(B3LYP/6−31G(d)レベル)により計算した。計算にはGaussian社製の分子軌道計算ソフトウェア「Gaussian98W」を使用し、プリポスト処理には日本電気株式会社製のグラフィカルユーザーインターフェース「MolStudioR3.0」を使用した。振動数の計算値を、赤外分光分析による振動数の実測値と照合できるように、アメリカ国立標準技術研究所データベースに公開されているB3LYP/6−31G(d)向けのスケールファクター(0.960)を用いて補正した。
図3A〜図3Cには、上記の振動解析により得られた振動数と赤外吸収強度との関係を示す。下記式(a)で表される分子の六員環構造体の面内振動に起因する振動数は1236cm−1(強度:118km・mol−1)、下記式(b)で表される分子の六員環構造体の面内振動に起因する振動数は1186cm−1(強度:242km・mol−1)であり、いずれも比較的大きな赤外吸収強度を示すことがわかった。一方、下記式(c)で表される分子は六員環構造体を有していないため、1180〜1240cm−1の振動数における赤外吸収強度は小さくなることがわかった。
<赤外分光分析>
合成例1で得られた乾燥後のAAm/AN共重合体粉末(約4mg)と希釈剤としてフッ化カルシウム(約76mg)とを乳鉢で物理混合して測定用試料を調製した。フーリエ変換赤外分光光度計−液体窒素冷却検出器(Agilent technology社製「Cray670−IR」)及び加熱拡散反射セル(株式会社エス・ティ・ジャパン製)を用いて、酸素(20vol%)とヘリウム(80vol%)との混合ガス流通下(ガス流量:100ml/分)で、前記測定用試料を室温から所定温度(120℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃)まで昇温速度10℃/分で加熱し、前記所定温度で30分間保持して加熱処理を行なった。その後、加熱処理後の測定用試料のFT−IR吸収スペクトルを測定した。また、参照用試料として上記を同様の加熱処理を施した後のフッ化カルシウムのFT−IR吸収スペクトルを測定し、前記加熱処理後の測定用試料のFT−IR吸収スペクトルをクベルカムンク変換して、各温度での加熱処理後の炭素材料前駆体(耐炎化物)のFT−IR吸収スペクトルを求めた。その結果を図4に示す。
図4に示したように、加熱温度が120〜350℃の範囲においては、加熱温度が高くなるほど、六員環構造体の面内振動に起因する波数1180〜1240cm−1付近の赤外吸収強度が高くなり、耐炎化反応が促進されることがわかった。一方、加熱温度が350〜450℃の範囲においては、加熱温度が高くなるほど、六員環構造体の面内振動に起因する波数1180〜1240cm−1付近の赤外吸収強度が低くなった。これは、加熱温度が350〜450℃の範囲においては、加熱温度が高くなるほど、耐炎化反応に加えて部分酸化反応が促進され、耐炎化反応によって生成した六員環構造体が安定に存在しにくくなったためと考えられる。
また、図4に示した結果に基づいて、各加熱温度における波数1180〜1240cm−1の赤外吸収強度の平均値(平均赤外吸収強度)、並びに、加熱温度120℃における波数1180〜1240cm−1の赤外吸収強度の平均値(平均赤外吸収強度)に対する、各加熱温度における波数1180〜1240cm−1の赤外吸収強度の平均値(平均赤外吸収強度)の比(赤外吸収強度比)を算出した。その結果を表1に示す。なお、120℃で加熱処理を施した炭素材料前駆体のFT−IR吸収スペクトルが加熱処理前の炭素材料前駆体のFT−IR吸収スペクトルと同等であるとみなすと、前記赤外吸収強度比は、加熱処理前後の炭素材料前駆体の波数1180〜1240cm−1の赤外吸収強度比とみなすことができる。
表1に示したように、加熱温度が350℃付近で、波数1180〜1240cm−1の平均吸収強度が最も大きくなり、120℃での波数1180〜1240cm−1の平均吸収強度に対する比(赤外吸収強度比)も1.74となり、最も大きくなることがわかった。
(実施例1)
〔赤外吸収強度比の閾値の設定〕
先ず、表1に示した赤外吸収強度比を加熱温度に対してプロットした。その結果を図5に示す。図5中の近似曲線は、加熱温度が250℃、300℃、350℃、400℃の結果に基づいて、表計算ソフト(マイクロソフト社製「エクセル」)の近似曲線オプション機能(多項式近似、次数:4)を用いて描いたものである。なお、この近似曲線は下記式:
y=(1.161×10−9)×x−(1.287084×10−6)×x
+(4.33807975×10−4)×x
−(3.2315783559×10−2)×x−2.327102049715
で表された(決定係数(相関係数Rの二乗)はR=1.000000000065)。
前記式を用いて、赤外吸収強度比の最大値を求めたところ、1.77となり、その温度範囲は331〜334℃であった。また、赤外吸収強度比が1.70以上となる温度範囲を求めたところ、304〜364℃であった。そこで、赤外吸収強度比の閾値を1.70として、以下の耐炎化処理を実施した。
〔耐炎化処理〕
炭素材料前駆体として合成例1で得られた乾燥後のAAm/AN共重合体粉末(約0.3g)を石英ボート(容量2ml)に充填し、電気管状炉に装入された石英管(内径16mm)内に設置した。石英管内に空気を流通(ガス流量:1000ml/分)させながら、昇温速度10℃/分で、図1に示す温度制御フローに従って以下のように電気管状炉内の温度を制御し、AAm/AN共重合体からなる炭素材料前駆体に耐炎化処理を施した。
すなわち、先ず、赤外分光光度計を用いて耐炎化処理前及び耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度(波数:1180〜1240cm−1付近)を測定し、耐炎化処理前の赤外吸収強度に対する耐炎化処理後の赤外吸収強度の比(赤外吸収強度比)を求め(ステップS1)、この赤外吸収強度比の測定値に基づいて電気管状炉内の温度を制御した(ステップS2)。すなわち、赤外吸収強度比の測定値が閾値(1.70)以上の場合には、電気管状炉内の温度を維持して耐炎化処理を継続し(ステップS3)、閾値(1.70)未満場合には、電気管状炉内を昇温した(ステップS4)。
次に、昇温後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度(波数:1180〜1240cm−1付近)を測定して耐炎化処理前の赤外吸収強度に対する比(昇温後の赤外吸収強度比)を求め(ステップS5)、この昇温後の赤外吸収強度比の測定値に基づいて電気管状炉内の温度を制御した(ステップS6及びS2)。すなわち、前記昇温後の赤外吸収強度比の測定値が前回測定した赤外吸収強度比を超過かつ赤外吸収強度比の閾値(1.70)以上の場合には、電気管状炉内の温度を維持して耐炎化処理を継続し(ステップS3)、前回測定した赤外吸収強度比を超過かつ赤外吸収強度比の閾値(1.70)未満場合には、電気管状炉内を更に昇温した(ステップS4)。この昇温は、前記昇温後の赤外吸収強度比の測定値が赤外吸収強度比の閾値(1.70)以上又は前回測定した赤外吸収強度比以下になるまで繰り返した。一方、前記昇温後の赤外吸収強度比の測定値が前回測定した赤外吸収強度比以下の場合には、電気管状炉内を降温した(ステップS7)。
次に、降温後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度(波数:1180〜1240cm−1付近)を測定して耐炎化処理前の赤外吸収強度に対する比(降温後の赤外吸収強度比)を求め(ステップS8)、この降温後の赤外吸収強度比の測定値に基づいて電気管状炉内の温度を制御した(ステップS9及びS10)。すなわち、前記降温後の赤外吸収強度比の測定値が前回測定した赤外吸収強度比を超過かつ赤外吸収強度比の閾値(1.70)以上の場合には、電気管状炉内の温度を維持して耐炎化処理を継続し(ステップS3)、前回測定した水蒸気濃度を超過かつ水蒸気濃度の閾値(1.70)未満場合には、電気管状炉内を更に降温した(ステップS7)。この降温は、前記降温後の赤外吸収強度比の測定値が赤外吸収強度比の閾値(1.70)以上又は前回測定した赤外吸収強度比以下になるまで繰り返した。一方、前記降温後の赤外吸収強度比の測定値が前回測定した赤外吸収強度比以下の場合には、電気管状炉内を昇温し(ステップS4)、その後、上記と同様に、昇温後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度(波数:1180〜1240cm−1付近)を測定して耐炎化処理前の赤外吸収強度に対する比(昇温後の赤外吸収強度比)を求め(ステップS5)、この昇温後の赤外吸収強度比の測定値に基づいて電気管状炉内の温度を制御した(ステップS6及びS2)。
また、前記耐炎化処理中の電気管状炉内の温度を測定したところ、350℃付近の温度に制御されていた。したがって、上記のように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標とすることによって、前記耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、前記加熱装置内の温度をフィードバック制御できることが確認された。
<耐炎化収率、炭化収率、耐炎化と炭化の総収率>
炭素材料前駆体として合成例1で得られた乾燥後のAAm/AN共重合体粉末(約2g)をアルミナパンに充填し、赤外線加熱式示差熱天秤(株式会社リガク製「Thermo plus TG8120」)の試料台に設置した。空気流通下(ガス流量:500ml/分)で、前記炭素材料前駆体を室温から所定温度(300℃、350℃、400℃、450℃)まで昇温速度10℃/分で加熱し、前記所定温度で30分間保持して耐炎化処理を行なった。なお、参照用試料台には空のアルミナパンを設置した。各耐炎化処理温度における耐炎化処理後の炭素材料前駆体の質量と100℃における炭素材料前駆体の質量とから、下記式:
耐炎化収率(%)=M/M100×100
〔M:耐炎化処理温度T(℃)における炭素材料前駆体の質量、M100:100℃における炭素材料前駆体の質量〕
により炭素材料前駆体の耐炎化収率を求めた。その結果を表2に示す。
次に、前記耐炎化処理後の炭素材料前駆体(耐炎化物)を室温まで降温した後、窒素ガス流通下(ガス流量:500ml/分)で、前記耐炎化物を室温から1300℃まで昇温速度20℃/分で加熱し、炭化処理を行なった。昇温時の1100℃における前記耐炎化物の質量と100℃における前記耐炎化物の質量とから、下記式:
炭化収率(%)=M1100/M100×100
〔M1100:1100℃における前記耐炎化物の質量、M100:100℃における前記耐炎化物の質量〕
により耐炎化物の炭化収率を求めた。その結果を表2に示す。
また、下記式:
総収率=(耐炎化収率/100)×(炭化収率/100)×100
により耐炎化と炭化の総収率(炭素材料の収率)を求めた。その結果を表2に示す。なお、表2には、耐炎化処理を施さずに、炭素材料前駆体に直接炭化処理を施した場合の炭化収率及び耐炎化と炭化の総収率も示した。
表2に示したように、耐炎化処理温度が350℃付近で、炭素材料の収率が最も高くなることがわかった。したがって、炭素材料前駆体の耐炎化処理において、六員環構造体の生成が促進されるように、六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度を指標として電気管状炉内の温度をフィードバック制御することによって、高収率で炭素材料が得られることがわかった。
<耐炎化物の元素分析>
炭素材料前駆体として合成例1で得られた乾燥後のAAm/AN共重合体粉末(約0.3g)を石英ボート(容量2ml)に充填し、電気管状炉に装入された石英管(内径16mm)内に設置した。石英管内に空気を流通(ガス流量:500ml/分)させながら、前記炭素材料前駆体を室温から所定温度(300℃、350℃、400℃、450℃)まで昇温速度10℃/分で加熱し、前記所定温度で30分間保持して耐炎化処理を行なった。
得られた耐炎化物の元素分析を以下のようにして行い、各元素の含有率及び酸素/炭素のモル比を求めた。その結果を表3に示す。なお、表3には、耐炎化処理を施さなかった場合の炭素材料前駆体の元素含有率及び酸素/炭素のモル比も示した。
(炭素分析)
元素分析装置(株式会社住化分析センター製「NCH−22F」)を用いて、酸素気流中で前記耐炎化物を加熱して炭素をCOに変換し、生成したCOを熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフにより定量して、耐炎化物中の炭素含有率を算出した。
(水素分析)
元素分析装置(株式会社住化分析センター製「NCH−22F」)を用いて、酸素気流中で前記耐炎化物を加熱して水素をHOに変換し、生成したHOを熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフにより定量して、耐炎化物中の水素含有率を算出した。
(窒素分析)
元素分析装置(株式会社住化分析センター製「NCH−22F」)を用いて、酸素気流中で前記耐炎化物を加熱して窒素をNに変換し、生成したNを熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフにより定量して、耐炎化物中の窒素含有率を算出した。
(酸素分析)
元素分析装置(株式会社堀場製作所製「EMGA−920」)を用いて、ヘリウム気流中、黒鉛るつぼ内で前記耐炎化物を加熱して酸素をCOに変換し、生成したCOを非分散赤外検出器により定量して、耐炎化物中の窒素含有率を算出した。
表3に示したように、耐炎化処理温度が350℃付近で、耐炎化物中の酸素含有率及び酸素/炭素のモル比が最も低くなることがわかった。したがって、炭素材料前駆体の耐炎化処理において、六員環構造体の生成が促進されるように、六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度を指標として電気管状炉内の温度をフィードバック制御することによって、酸素含有率及び酸素/炭素のモル比が小さい耐炎化物が得られることがわかった。
また、耐炎化処理温度が300〜350℃の範囲においては、耐炎化処理温度が高くなるほど、耐炎化反応が促進されて隣接するアミド基間の脱水縮合により六員環構造体が形成されやすくなり、炭素材料前駆体中の酸素が水蒸気として放出されやすくなるため、耐炎化物中の酸素含有率及び酸素/炭素のモル比が低くなったと考えられる。一方、耐炎化処理温度が350〜450℃の範囲においては、耐炎化処理温度が高くなるほど、部分酸化反応が促進されて耐炎化物中に酸素が取り込まれやすくなるため、耐炎化物中の酸素含有率及び酸素/炭素のモル比が高くなったと考えられる。
<炭素材料の元素分析>
炭素材料前駆体として合成例1で得られた乾燥後のAAm/AN共重合体粉末(約0.3g)を石英ボート(容量2ml)に充填し、電気管状炉に装入された石英管(内径16mm)内に設置した。石英管内に空気を流通(ガス流量:500ml/分)させながら、前記炭素材料前駆体を室温から350℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、350℃で30分間保持して耐炎化処理を行なった。
次に、前記耐炎化処理後の炭素材料前駆体(耐炎化物)を室温まで降温した後、石英管内に窒素ガスを流通(ガス流量:1000ml/分)させながら、前記耐炎化物を室温から所定温度(800℃、900℃、1000℃、1100℃)まで昇温速度20℃/分で加熱し、前記所定温度で10分間保持して炭化処理を行なった。
得られた炭素材料の元素分析を上記<耐炎化物の元素分析>に記載の方法に従って、各元素の含有率を求めた。その結果を表4に示す。
表4に示したように、炭化処理温度が800〜1100℃の範囲においては、炭化処理温度が高くなるほど、炭素材料中の炭素含有率が高くなることがわかった。これは、炭化処理温度が高くなるほど、黒鉛と同様の構造が形成されやすくなるためと考えられる。
<ラマン分光分析>
炭素材料前駆体として合成例1で得られた乾燥後のAAm/AN共重合体粉末(約0.3g)を石英ボート(容量2ml)に充填し、電気管状炉に装入された石英管(内径16mm)内に設置した。石英管内に空気を流通(ガス流量:1000ml/分)させながら、前記炭素材料前駆体を室温から350℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、350℃で30分間保持して耐炎化処理を行なった。
次に、前記耐炎化処理後の炭素材料前駆体(耐炎化物)を室温まで降温した後、石英管内に窒素ガスを流通(ガス流量:1000ml/分)させながら、前記耐炎化物を室温から1100℃まで昇温速度20℃/分で加熱し、前記所定温度で10分間保持して炭化処理を行なった。
得られた炭素材料のラマンスペクトルを、レーザーラマン分光分析装置(日本分光株式会社製「NSR−3300」)を用いて室温で測定した。その結果を図6に示す。図6に示したラマンスペクトルにおいて、1590cm−1付近のピークはグラファイト構造に由来するGバンドを示し、1350cm−1付近のピークは欠陥構造に由来するDバンドを示す。GバンドとDバンドの強度比を求めたところ、1.01であった。
以上説明したように、本発明によれば、炭素材料前駆体中の六員環構造体の生成が促進されるように、炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度を指標として炭素材料前駆体の耐炎化処理温度を制御することによって、耐熱性に優れた耐炎化物が得られる。したがって、本発明の炭素材料前駆体の耐炎化処理装置及び耐炎化処理方法は、高い収率で炭素材料を製造することが可能な耐炎化物を得る方法として有用である。
1:連続式加熱装置、2:温度測定手段、3:赤外吸収強度測定手段、4:温度制御手段、5:炭素材料前駆体、6:耐炎化処理を施した炭素材料前駆体(耐炎化物)、7:炭素材料前駆体片(耐炎化処理前)

Claims (4)

  1. 炭素材料前駆体に耐炎化処理を施すための加熱装置と、
    耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定する赤外吸収強度測定手段と、
    前記炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する温度制御手段と、
    を備えることを特徴とする炭素材料前駆体の耐炎化処理装置。
  2. 前記温度制御手段が、前記赤外吸収強度の比が1.70以上となるように、前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する手段であることを特徴とする請求項1に記載の炭素材料前駆体の耐炎化処理装置。
  3. 請求項1又は2に記載の耐炎化処理装置を用いる炭素材料前駆体の耐炎化処理方法であって、
    耐炎化処理前及び耐炎化処理後の前記炭素材料前駆体の赤外吸収強度を測定する赤外吸収強度測定工程と、
    前記炭素材料前駆体の耐炎化処理において六員環構造体の生成が促進されるように、耐炎化処理前の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度に対する、耐炎化処理後の炭素材料前駆体中の六員環構造体の面内振動に起因する赤外吸収強度の比を指標として前記加熱装置内の温度をフィードバック制御する温度制御工程と、
    を含むことを特徴とする炭素材料前駆体の耐炎化処理方法。
  4. 前記温度制御工程において、前記赤外吸収強度の比が1.70以上となるように、前記加熱装置内の温度をフィードバック制御することを特徴とする請求項3に記載の炭素材料前駆体の耐炎化処理方法。
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