JP2019200977A - 電解液 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温環境下でも好適に動作し得る、優れたイオン伝導度を示す電解液を提供する。【解決手段】LiPF6及び(FSO2)2NLiから選択されるリチウム塩、並びに、ジメチルカーボネート及びフッ素含有環状カーボネートを含有する電解液であって、前記リチウム塩の濃度が1.5〜3mol/Lであり、前記電解液に含まれる有機溶媒のうち、前記ジメチルカーボネートは最大体積又は最大モル数の有機溶媒であり、以下のいずれかの条件を満足することを特徴とする電解液。条件1:前記ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比が20/80以上である。条件2:LiPF6濃度をx、前記ジメチルカーボネート及び前記フッ素含有環状カーボネートの合計モル数に対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比をyとした場合に、y≧−0.2x+0.7の関係を満足する。条件3:前記ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比が25/75以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電装置に用いられる電解液に関する。
一般に、リチウムイオン二次電池等の蓄電装置は、主な構成要素として、正極、負極及び電解液を備える。そして、電解液には、適切な電解質が適切な濃度範囲で添加されている。例えば、リチウムイオン二次電池の電解液には、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、CFSOLi、(CFSONLi等のリチウム塩が電解質として添加されるのが一般的であり、ここで、電解液におけるリチウム塩の濃度は、イオン伝導度の関係から、概ね1mol/Lとされるのが一般的である。
電解液に用いられる有機溶媒には、電解質を好適に溶解させるために、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネートを約30体積%以上で混合して用いるのが一般的である。
実際に、特許文献1には、エチレンカーボネートを33体積%含む混合有機溶媒を用い、かつ、LiPFを1mol/Lの濃度で含む電解液を用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。また、特許文献2には、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートを66体積%含む混合有機溶媒を用い、かつ、(CFSONLiを1mol/Lの濃度で含む電解液を用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。
最近になって、特許文献3や特許文献4などにより、電解質としての金属塩を高濃度で含む電解液及び当該電解液を具備するリチウムイオン二次電池が報告された。
特に、特許文献4には、特定の金属塩に対する特定有機溶媒のモル比が3〜5の電解液が、物性に優れるものとして記載されており、さらに、金属塩が(FSONLiであり有機溶媒がジメチルカーボネートである電解液において、上記モル比が5付近であり、金属塩濃度が2mol/L付近の電解液がイオン伝導度に最も優れることが、具体的な試験結果と共に記載されている(評価例1、表3−1、表4−1、図1などを参照。)。加えて、特許文献4には、同文献に記載の電解液が低温条件下においても、凝固し難いことが記載されている(評価例4、評価例5、評価例6などを参照。)。
特開2013−149477号公報 特開2013−134922号公報 国際公開第2015/045389号 国際公開第2016/063468号
さて、産業界からは、種々の環境下で用いることのできる高性能のリチウムイオン二次電池が要求されている。そして、高性能のリチウムイオン二次電池を提供すべく、その構成要素の研究が、盛んに行われている。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、低温環境下でも好適に動作し得る電解液を提供することを目的の一つとする。また、優れたイオン伝導度を示す電解液を提供することを目的の一つとする。
本発明者が、数多くの試行錯誤を重ねながら鋭意検討を行ったところ、以下の知見を得た。
1)鎖状カーボネートであるジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートのうち、誘電率が高く、粘度が低いジメチルカーボネートを用いた電解液が、最もイオン伝導度に優れる。
2)有機溶媒としてジメチルカーボネートのみを用いた電解液よりも、有機溶媒としてジメチルカーボネート及び凝固点が低いエチルメチルカーボネートを併用した電解液や有機溶媒としてジメチルカーボネート及び凝固点が低いジエチルカーボネートを併用した電解液の方が、低温環境下における凝固を好適に抑制できる。
3)有機溶媒としてジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを併用した電解液や有機溶媒としてジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートを併用した電解液は、イオン伝導度の点において、有機溶媒としてジメチルカーボネートのみを用いた電解液に劣る。
4)有機溶媒として鎖状カーボネートのみを用いた電解液を具備するリチウムイオン二次電池よりも、有機溶媒として鎖状カーボネートとフッ素含有環状カーボネートを併用した電解液を具備するリチウムイオン二次電池の方が、長寿命である。
上記知見に基づき、本発明者が、さらなる鋭意検討を行ったところ、ジメチルカーボネートを主溶媒とし、ジメチルカーボネートに対して誘電率が高いが、凝固点も高いフッ素含有環状カーボネートを副溶媒とした電解液のうち、両溶媒の割合を特定の範囲とした電解液は、イオン伝導度に優れ、かつ、ジメチルカーボネートよりも凝固点の高い副溶媒を含むにもかかわらず、ジメチルカーボネートのみを用いた電解液に比べて低温環境下における凝固が好適に抑制されることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者は、本発明を完成するに至った。
本発明の電解液は、LiPF及び(FSONLiから選択されるリチウム塩、並びに、ジメチルカーボネート及びフッ素含有環状カーボネートを含有する電解液であって、
前記リチウム塩の濃度が1.5〜3mol/Lであり、
前記電解液に含まれる有機溶媒のうち、前記ジメチルカーボネートは最大体積又は最大モル数の有機溶媒であり、
以下のいずれかの条件を満足することを特徴とする。
条件1:前記ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比が20/80以上である。
条件2:LiPF濃度をx、前記ジメチルカーボネート及び前記フッ素含有環状カーボネートの合計モル数に対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比をyとした場合に、y≧−0.2x+0.7の関係を満足する。
条件3:前記ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比が25/75以下である。
本発明の電解液は、低温であっても凝固し難い。また、本発明の電解液は好適なイオン伝導度を示す。
低温での凝固抑制効果を示した電解液のうち、フルオロエチレンカーボネートのモル比が低い電解液についての、LiPF濃度をx、フルオロエチレンカーボネートのモル比をyとした場合のx−y座標プロットである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の電解液は、LiPF及び(FSONLiから選択されるリチウム塩、並びに、ジメチルカーボネート及びフッ素含有環状カーボネートを含有する電解液であって、
前記リチウム塩の濃度が1.5〜3mol/Lであり、
前記電解液に含まれる有機溶媒のうち、前記ジメチルカーボネートは最大体積又は最大モル数の有機溶媒であり、
以下のいずれかの条件を満足することを特徴とする。
条件1:前記ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比が20/80以上である。
条件2:LiPF濃度をx、前記ジメチルカーボネート及び前記フッ素含有環状カーボネートの合計モル数に対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比をyとした場合に、y≧−0.2x+0.7の関係を満足する。
条件3:前記ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比が25/75以下である。
低温凝固抑制の観点からは、リチウム塩としては、LiPFよりも(FSONLiが好ましい。その理由は、以下のとおりである。
LiPFのアニオンは、Pを中心としてFを頂点とする正八面体構造である。このアニオンの構造は、中心元素に対して6つの結合で安定化されており、かつ高い対称性を示す。そのため、LiPFは規則的な結晶構造を形成しやすい。すなわち、リチウム塩がLiPFである電解液は、高濃度の条件下や、低温の条件下においては、結晶化しやすいといえる。
他方、(FSONLiのアニオンは、Nを中心とした2つの結合を有するものであり、LiPFのアニオンと比較して、変形しやすく、対称性が低い。しかも、(FSONLiのアニオンは、分子サイズが大きく、表面の電荷密度が比較的小さいため、カチオンのサイズが小さく電荷密度の高いリチウムカチオンとは、塩及び結晶を形成する上で、不利な組み合わせと考えられる。そのため、(FSONLiは結晶化に際し、比較的多くの結晶化エネルギーを要するため、リチウム塩が(FSONLiである電解液は、高濃度の条件下や、低温の条件下であっても、結晶化し難いといえる。
また、高温での作動の観点からもLiPFよりも(FSONLiが好ましい。
その理由は以下の通りである。
LiPFは微量の水分存在下において加水分解し、HFを生成することが知られており、分解反応は高温ほど顕著となる。分解によって生成したHFは電池の劣化を引き起こす。一方、(FSONLiはLiPFに比べ加水分解によるHF生成が起こりにくいため、高温での作動の観点では(FSONLiが好ましい。
一方、高電圧条件下での使用を考慮すると、リチウム塩としては、(FSONLiよりもLiPFが好ましい。一般に、高電圧条件下でリチウムイオン二次電池を充放電すると、正極集電体の金属が腐食される場合がある。しかし、リチウム塩がLiPFである電解液を具備するリチウムイオン二次電池であれば、正極集電体の金属の腐食を好適に抑制できる。
低温凝固抑制効果および高温での分解耐性に優れる(FSONLiの特性と、高電圧条件下での使用に優れるLiPFの特性を両立させるために、両リチウム塩を併用するのが好ましい。LiPFと(FSONLiのモル比は、1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましく、3:7〜7:3がさらに好ましく、4:6〜6:4が特に好ましい。
LiPF及び(FSONLiから選択されるリチウム塩の濃度は、1.6〜2.7mol/Lが好ましく、1.7〜2.5mol/Lがより好ましく、1.8〜2.4mol/Lがさらに好ましい。
本発明の電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、LiPF及び(FSONLiから選択されるリチウム塩以外の他の電解質が存在していてもよい。本発明の電解液には、電解質全体に対して、LiPF及び(FSONLiから選択されるリチウム塩が50質量%以上又は50モル%以上で含まれているのが好ましく、70質量%以上又は70モル%以上で含まれているのがより好ましく、90質量%以上又は90モル%以上で含まれているのがさらに好ましく、95質量%以上又は95モル%以上で含まれているのが特に好ましく、電解質すべてがLiPF及び(FSONLiから選択されるリチウム塩であるのが最も好ましい。
本発明の電解液の有機溶媒は、最大体積又は最大モル数を占める有機溶媒(以下、主溶媒ということがある。)としてジメチルカーボネートを含有する。ジメチルカーボネートが主溶媒であることで、本発明の電解液は好適なイオン伝導度を確保できる。
フッ素含有環状カーボネートとは、フッ素を分子内に有する環状カーボネートを意味する。フッ素含有環状カーボネートの具体例としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(1)において、R、Rはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基又はハロゲンである。ただし、各R及び各Rのうち、少なくとも一つはFを含む。
一般式(1)で表されるフッ素含有環状カーボネートを具体的な化合物名で示すと、フルオロエチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−(フルオロメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを挙げることができ、中でもフルオロエチレンカーボネートが好ましい。
フッ素含有環状カーボネートを含有することで、本発明の電解液は、好適なイオン伝導度を確保しつつ、低温での凝固が適切に抑制される。また、フッ素含有環状カーボネートは、耐酸化能に優れるが、還元条件下でたやすく分解する。従って、フッ素含有環状カーボネートは、本発明のリチウムイオン二次電池の充放電条件下において、負極と電解液との界面で優先的に分解する。その結果、負極活物質の表面に、フッ素含有環状カーボネートの分解物に由来する被膜が形成される。フッ素含有環状カーボネートの分解物に由来する被膜の存在に因り、負極活物質の劣化を抑制できる。
本発明の電解液は、条件1、条件2及び条件3のうち、1条件を満足すればよいが、2条件を満足しても良く、3条件すべてを満足してもよい。
ジメチルカーボネートが主溶媒であることを条件として、フッ素含有環状カーボネートの含有量が高くなるほど、電解液の低温での凝固抑制効果が強くなる。他方、フッ素含有環状カーボネートの含有量が高くなると、電解液のイオン伝導度が低下する傾向にある。
条件1〜条件3のいずれかを満足することを前提として、ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比の範囲としては、10/90〜45/55、15/85〜40/60、20/80〜35/65、20/80〜30/70、20/80〜25/75を例示できる。
本発明の電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ジメチルカーボネート及びフッ素含有環状カーボネート以外の他の有機溶媒が存在していてもよい。本発明の電解液の有機溶媒全体に対するジメチルカーボネート及びフッ素含有環状カーボネートの合計量の割合としては、60体積%以上又は60モル%以上が好ましく、70〜99体積%又は70〜99モル%がより好ましく、80〜98体積%又は80〜98モル%がさらに好ましく、90〜95体積%又は90〜95モル%が特に好ましい。
他の有機溶媒を具体的に例示すると、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、マロノニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル等のエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、イソプロピルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、クロロメチルイソシアネート等のイソシアネート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のエステル類、グリシジルメチルエーテル、エポキシブタン、2−エチルオキシラン等のエポキシ類、オキサゾール、2−エチルオキサゾール、オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン等のオキサゾール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物、ジメチルスルホン、スルホラン等のスルホン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン等のニトロ類、フラン、フルフラール等のフラン類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状エステル類、チオフェン、ピリジン等の芳香族複素環類、テトラヒドロ−4−ピロン、1−メチルピロリジン、N−メチルモルフォリン等の複素環類、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類を挙げることができる。
また、本発明の電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の添加剤を加えてもよい。公知の添加剤の一例として、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)に代表される不飽和結合を有する環状カーボネート;フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネートに代表されるカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物に代表されるカルボン酸無水物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン;1,4−ジオキサンに代表される環状エーテル;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィドに代表される含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミドに代表される含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩に代表されるリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタンに代表される飽和炭化水素化合物;ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフランに代表される不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。
以上説明した本発明の電解液は、リチウムイオン二次電池やキャパシタなど蓄電装置の電解液として好適に使用される。特に、本発明の電解液はリチウムイオン二次電池の電解液として使用されるのが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る負極活物質を有する負極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質を有する正極と、本発明の電解液を備える。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。したがって、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。ケイ素などを負極活物質に採用すると、ケイ素1原子が複数のリチウムと反応するため、高容量の活物質となるが、リチウムの吸蔵及び放出に伴う体積の膨張及び収縮が顕著となるとの問題が生じる恐れがあるため、当該恐れの軽減のために、ケイ素などの単体に遷移金属などの他の元素を組み合わせた合金又は化合物を負極活物質として採用するのも好適である。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
より具体的な負極活物質として、G/D比が3.5以上の黒鉛を例示できる。G/D比とは、ラマンスペクトルにおけるG−bandとD−bandのピークの比である。黒鉛のラマンスペクトルにおいては、G−bandが1590cm−1付近に、D−bandが1350cm−1付近にそれぞれピークとして観察される。G−bandはグラファイト構造に由来し、D−bandは欠陥に由来する。したがって、G−bandとD−bandの比であるG/D比が高いほど欠陥が少なく結晶性の高い黒鉛であることを意味する。以下、G/D比が3.5以上の黒鉛を高結晶性黒鉛、G/D比が3.5未満の黒鉛を低結晶性黒鉛と呼ぶことがある。
高結晶性黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれも採用できる。形状による分類法では、鱗片状黒鉛、球状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などを採用できる。また黒鉛の表面を炭素材料などで被覆したコート付き黒鉛も採用できる。
具体的な負極活物質として、結晶子サイズが20nm以下、好ましくは5nm以下の炭素材料を例示できる。結晶子サイズが大きいほど、原子がある規則に従い周期的かつ正確に配列している炭素材料であることを意味する。一方、結晶子サイズが20nm以下の炭素材料は、原子の周期性、及び配列の正確性に乏しい状態にあるといえる。例えば炭素材料が黒鉛であれば、黒鉛結晶の大きさが20nm以下であるか、歪み、欠陥、不純物等の影響によって黒鉛を構成する原子の配列の規則性が乏しい状態となることで、結晶子サイズは20nm以下になる。
結晶子サイズが20nm以下の炭素材料としては、いわゆるハードカーボンである難黒鉛化性炭素や、いわゆるソフトカーボンである易黒鉛化性炭素が代表的である。
炭素材料の結晶子サイズを測定するには、CuKα線をX線源とするX線回折法を用いればよい。当該X線回折法により、回折角2θ=20度〜30度に検出される回折ピークの半値幅と回折角を基に、次のシェラーの式を用いて、結晶子サイズを算出できる。
L=0.94 λ /(βcosθ)
ここで、
L:結晶子の大きさ
λ:入射X線波長(1.54Å)
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:回折角
具体的な負極活物質として、長軸/短軸の値が1〜5、好ましくは1〜3である黒鉛を例示できる。ここで、長軸とは、黒鉛の粒子の最も長い箇所の長さを意味する。短軸とは、前記長軸に対する直交方向のうち最も長い箇所の長さを意味する。当該黒鉛には、球状黒鉛やメソカーボンマイクロビーズが該当する。球状黒鉛は、人造黒鉛、天然黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素などの炭素材料であって、形状が球状又はほぼ球状であるものをいう。
球状黒鉛は、黒鉛を比較的破砕力の小さい衝撃式粉砕機で粉砕して薄片とし、当該薄片を圧縮球状化して得られる。衝撃式粉砕機としては、例えばハンマーミルやピンミルを例示できる。上記ミルのハンマー又はピンの外周線速度を50〜200m/秒程度として、上記作業を行うことが好ましい。上記ミルに対する黒鉛の供給や排出は、空気等の気流に同伴させて行うことが好ましい。
黒鉛は、BET比表面積が0.5〜15m/gの範囲のものが好ましく、4〜12m/gの範囲のものがより好ましい。BET比表面積が大きすぎると黒鉛と電解液との副反応が加速する場合があり、BET比表面積が小さすぎると黒鉛の反応抵抗が大きくなる場合がある。
また、黒鉛の平均粒子径は、2〜30μmの範囲内が好ましく、5〜20μmの範囲内がより好ましい。なお、平均粒子径とは、一般的なレーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定した場合のD50を意味する。
具体的な負極活物質として、スズを含む材料を例示できる。より具体的には、Sn単体、Cu−SnやCo−Snなどのスズ合金、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物を例示できる。アモルファススズ酸化物としてはSnB0.40.63.1を例示でき、スズケイ素酸化物としてはSnSiOを例示できる。
具体的な負極活物質として、Li4+xTi5+y12(−1≦x≦4、−1≦y≦1))などのスピネル構造のチタン酸リチウム、LiTiなどのラムスデライト構造のチタン酸リチウムが例示できる。
具体的な負極活物質として、ケイ素を含む材料であるSi含有負極活物質を例示できる。Si含有負極活物質としては、Siを含有し、負極活物質として機能するものであればよい。具体的なSi含有負極活物質としては、ケイ素単体、SiOx(0.3≦x≦1.6)、Siと他の金属との合金、国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料を例示できる。Si含有負極活物質は炭素で被覆されていてもよい。炭素で被覆されたSi含有負極活物質は導電性に優れる。
国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」ということがある。)について詳細に説明する。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオン等の電荷担体が効率的に吸蔵及び放出を行うためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
Si含有負極活物質は、充放電を繰り返すと劣化する傾向にあることが知られている。しかし、フッ素含有環状カーボネートが存在する本発明の電解液を具備する本発明のリチウムイオン二次電池においては、負極活物質の表面に、フッ素含有環状カーボネートの分解物に由来する被膜が形成される。本発明のリチウムイオン二次電池においては、上記被膜の存在に因り、Si含有負極活物質の劣化が好適に抑制される。したがって、本発明の電解液とSi含有負極活物質との組み合わせは、特に好ましいといえる。
また、リチウム塩として(FSONLiを含有する本発明の電解液を具備する本発明のリチウムイオン二次電池においては、充放電により(FSONLiの化学構造が分解して、負極の表面にS及びO含有被膜を形成すると推定される。S及びO含有被膜はS=O構造を有すると推定される。フッ素含有環状カーボネートの分解物に由来する被膜とS及びO含有被膜との両被膜により負極が被覆されるため、負極活物質及び電解液の劣化が抑制されると考えられる。
結着剤は活物質や導電助剤などを集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
また、結着剤として、親水基を有するポリマーを採用してもよい。親水基を有するポリマーを結着剤として具備する本発明のリチウムイオン二次電池は、より好適に容量を維持できる。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基などリン酸系の基などが例示される。中でも、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸などの分子中にカルボキシル基を含むポリマー、又は、ポリ(p−スチレンスルホン酸)などのスルホ基を含むポリマーが好ましい。
ポリアクリル酸、あるいはアクリル酸とビニルスルホン酸との共重合体など、カルボキシル基及び/又はスルホ基を多く含むポリマーは水溶性となる。親水基を有するポリマーは、水溶性ポリマーであることが好ましく、化学構造でいうと、一分子中に複数のカルボキシル基及び/又はスルホ基を含むポリマーが好ましい。
分子中にカルボキシル基を含むポリマーは、例えば、酸モノマーを重合する方法や、ポリマーにカルボキシル基を付与する方法などで製造することができる。酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ペンテン酸、アンジェリカ酸、チグリン酸など分子中に一つのカルボキシル基をもつ酸モノマー、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−ペンテン二酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸など分子内に二つ以上のカルボキシル基をもつ酸モノマーなどが例示される。
上記の酸モノマーから選ばれる二種以上の酸モノマーを重合してなる共重合ポリマーを結着剤として用いてもよい。
また、例えば特開2013―065493号公報に記載されたような、アクリル酸とイタコン酸との共重合体のカルボキシル基どうしが縮合して形成された酸無水物基を分子中に含んでいるポリマーを結着剤として用いることも好ましい。一分子中にカルボキシル基を二つ以上有する酸性度の高いモノマー由来の構造が結着剤にあることにより、充電時に電解液分解反応が起こる前にリチウムイオンなどを結着剤がトラップし易くなると考えられている。さらに、当該ポリマーは、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸に比べてモノマーあたりのカルボキシル基が多いため、酸性度が高まるものの、所定量のカルボキシル基が酸無水物基に変化しているため、酸性度が高まりすぎることもない。そのため、当該ポリマーを結着剤として用いた負極をもつ二次電池は、初期効率が向上し、入出力特性が向上する。
また、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーを、ジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
また、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーと、ポリアミドイミドとの混合物又は反応物を結着剤として用いてもよい。
ポリアミドイミドとは、分子内にアミド結合とイミド結合をそれぞれ2つ以上有する化合物を意味する。ポリアミドイミドは、アミド結合及びイミド結合におけるカルボニル部分となる酸成分と、アミド結合及びイミド結合における窒素部分となるジアミン成分又はジイソシアネート成分を反応させることで製造される。ポリアミドイミドを得るには、当該方法で製造しても良いし、また、市販のポリアミドイミドを購入しても良い。
ポリアミドイミドの製造に用いられる酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ビス(カルボキシフェニル)スルホン、ビス(カルボキシフェニル)エーテル、ナフタレンジカルボン酸、及び、これらの無水物、酸ハロゲン化物、誘導体を挙げることができる。酸成分としては、上記の化合物を単独で又は複数で採用すればよいが、ただし、イミド結合を形成させる点から、カルボキシル基が結合している炭素の隣接炭素にカルボキシル基が存在する酸成分又はその同等物が、必須となる。酸成分としては、反応性、耐熱性などの点から、トリメリット酸無水物が好ましい。また、ポリアミドイミドの引っ張り強度、引っ張り弾性率、電解液耐性の点から、トリメリット酸無水物に加えて、酸成分の一部として、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物を採用するのが好ましい。
ポリアミドイミドの製造に用いられるジアミン成分としては、上述した架橋ポリマーに用いられるジアミンを採用すればよい。耐熱性、溶解性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−トリレンジアミン、o−トリジン、ナフタレンジアミン、イソホロンジアミンが好ましい。ポリアミドイミドの引っ張り強度、引っ張り弾性率の点からはo−トリジン、ナフタレンジアミンが好ましい。
ポリアミドイミドの製造に用いられるジイソシアネート成分としては、上記ジアミン成分のアミンをイソシアネートで置き換えたものを挙げることができる。
負極活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:結着剤=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
負極活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると負極活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
リチウムイオン二次電池に用いられる正極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質を有する。正極は、集電体と、集電体の表面に結着させた正極活物質層を有する。正極活物質層は正極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。
正極の集電体は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はなく、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。
正極の電位をリチウム基準で4V以上とする場合には、集電体としてアルミニウムを採用するのが好ましい。
具体的には、正極用集電体として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いるのが好ましい。ここでアルミニウムは、純アルミニウムを指し、純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
正極の結着剤及び導電助剤は負極で説明したものを同様の配合割合で採用すればよい。
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。例えば、正極活物質として、層状化合物のLiNiCoMn(0.2≦a≦1.2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、及びスピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、電荷担体(例えば充放電に寄与するリチウムイオン)を含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体(S)、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウム等の電荷担体を含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておく必要がある。電荷担体は、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、電荷担体がリチウムである場合には、リチウム箔を正極及び/又は負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。
具体的な正極活物質として、層状岩塩構造をもつLiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.75Co0.1Mn0.15、LiMnO、LiNiO、及びLiCoOを例示できる。他の具体的な正極活物質として、LiMnO−LiCoOを例示できる。
具体的な正極活物質として、スピネル構造のLixyMn2-y4(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素、0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。より具体的には、LiMn、LiNi0.5Mn1.5を例示できる。
具体的な正極活物質として、LiFePO、LiFeSiO、LiCoPO、LiCoPO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOFを例示できる。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質としては、リチウムと、ニッケル、コバルト及び/又はマンガンを含む遷移金属とを含むリチウム複合金属酸化物が好ましい。具体的には、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Zr、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100の範囲であることが好ましく、20/100<b<80/100、12/100<c<70/100、10/100<d<60/100の範囲であることがより好ましく、30/100<b<70/100、15/100<c<50/100、12/100<d<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含むスラリー状の組成物を調製し、これを集電体の表面に塗布後、乾燥して電極とする。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。また、上記スラリー状の組成物には、分散剤を添加してもよい。活物質層は集電体の片面に形成させてもよいが、集電体の両面に形成させるのが好ましい。電極密度を高めるべく、乾燥後の電極を圧縮するのが好ましい。
リチウムイオン二次電池には必要に応じてセパレータが用いられる。セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の具体的な製造方法について述べる。
正極及び負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体及び負極の集電体から外部に通ずる正極端子及び負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に本発明の電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
本発明の電解液は低温での凝固抑制効果を有するので、本発明のリチウムイオン二次電池は低温条件下での使用に適するといえる。低温条件下としては、氷点下を例示できる。低温の範囲としては、−50℃〜0℃、−40℃〜−10℃、−30℃〜−15℃を例示できる。
LiPFを含有する本発明の電解液は、高電圧条件下における正極集電体の金属の腐食を好適に抑制できる。よって、LiPFを含有する本発明の電解液を具備する本発明のリチウムイオン二次電池は、高電圧条件下での使用にも適するといえる。高電圧条件下としては、電圧4.1V以上、4.3V以上、4.5V以上を例示できる。高電圧の上限としては、5Vや5.5Vを例示できる。
上記の本発明のリチウムイオン二次電池の説明における、負極活物質若しくは正極活物質の一部若しくは全部、又は、負極活物質及び正極活物質の一部若しくは全部を、分極性電極材料として用いられる活性炭などに置き換えて、本発明の電解液を具備する本発明のキャパシタとしてもよい。本発明のキャパシタとしては、電気二重層キャパシタや、リチウムイオンキャパシタなどのハイブリッドキャパシタを例示できる。本発明のキャパシタの説明については、上記の本発明のリチウムイオン二次電池の説明における「リチウムイオン二次電池」を「キャパシタ」に適宜適切に読み替えれば良い。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、具体例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの具体例によって限定されるものではない。
<LiPFを含有する電解液>
(製造例1−1〜製造例1−13)
ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを表1−1に記載のモル比で混合した混合有機溶媒に、LiPFを溶解して、LiPFの濃度が2.4mol/Lである製造例1−1〜製造例1−13の電解液を製造した。
以下の表において、DMCはジメチルカーボネートの略称であり、FECはフルオロエチレンカーボネートの略称である。
(評価例1)
製造例1−1〜製造例1−13の電解液をアルミニウム製のパンに入れ、該パンを密閉した。空の密閉パンを対照として、窒素雰囲気下、室温から5℃/min.で−70℃まで降温し、30分間保持した後に、5℃/min.で30℃まで昇温するとの示差走査熱量分析を行った。示差走査熱量測定装置としてはDSC Q2000(TAインスツルメント製)を使用した。
凝固ピークが観察されなかった電解液を○、凝固ピークが観察された電解液を×として、表1−2に示す。
以上の結果から、ジメチルカーボネートに対するフルオロエチレンカーボネートのモル比が20/80以上であれば、低温での凝固抑制効果があるといえる。なお、ジメチルカーボネートの融点は2〜5℃程度であり、フルオロエチレンカーボネートの融点は17℃付近である。
(製造例2−1〜製造例2−6)
ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを表2−1に記載のモル比で混合した混合有機溶媒にLiPFを溶解して、LiPFの濃度が1mol/Lである製造例2−1〜製造例2−6の電解液を製造した。
(製造例3−1〜製造例3−6)
ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを表2−2に記載のモル比で混合した混合有機溶媒にLiPFを溶解して、LiPFの濃度が2mol/Lである製造例3−1〜製造例3−6の電解液を製造した。
(製造例4−1〜製造例4−3)
ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを表2−3に記載のモル比で混合した混合有機溶媒にLiPFを溶解して、LiPFの濃度が3mol/Lである製造例4−1〜製造例4−3の電解液を製造した。
(評価例2)
製造例2−1〜製造例2−6、製造例3−1〜製造例3−6、製造例4−1〜製造例4−3の電解液について、評価例1と同様の方法で示差走査熱量分析を行った。
凝固ピークが観察されなかった電解液を○、凝固ピークが観察された電解液を×として、表2−4に示す。
表2−4の結果から、フルオロエチレンカーボネートの割合が増加するほど、低温での凝固抑制効果が優れるといえる。また、低温での凝固抑制効果を示すフルオロエチレンカーボネートの割合は、リチウム塩の濃度が増加するほど少量で十分であることがわかる。
ここで、LiPF濃度1mol/Lにおいて低温での凝固抑制効果を示した製造例2−6の電解液、LiPF濃度2mol/Lにおいて低温での凝固抑制効果を示した製造例3−4の電解液、LiPF濃度3mol/Lにおいて低温での凝固抑制効果を示した製造例4−2の電解液について、考察を行う。
これらの3つの電解液は、LiPFの各濃度水準における低温での凝固抑制効果を示した電解液のうち、フルオロエチレンカーボネートの割合がそれぞれ最も低い電解液である。
各電解液のLiPFの濃度をx、各電解液のジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートの合計モル数に対するフルオロエチレンカーボネートのモル比をyとして、x−y座標にプロットすると、各電解液のxとyには、y=−0.2x+0.7の関係にあることがわかる(図1を参照。)。
フルオロエチレンカーボネートの割合yが増加するほど、低温での凝固抑制効果が優れるのであるから、少なくともy≧−0.2x+0.7の関係を満足する電解液であれば、低温での凝固抑制効果を示すといえる。
(製造例5−1〜製造例5−5)
ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを表3−1に記載の体積比で混合した混合有機溶媒に、LiPFを溶解して、LiPFの濃度が2mol/Lである製造例5−1〜製造例5−5の電解液を製造した。
(比較製造例1)
ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート(以下、EMCと略すことがある。)を体積比74:26で混合した混合有機溶媒に、LiPFを溶解して、LiPFの濃度が2mol/Lである比較製造例1の電解液を製造した。
なお、製造例5−5及び比較製造例1の電解液に対して、評価例1と同様の方法で示差走査熱量分析を行ったところ、凝固ピークが観察されなかった。なお、エチルメチルカーボネートの融点は−55℃〜−53℃程度である。
(評価例3)
製造例5−1〜製造例5−5及び比較製造例1の電解液につき、イオン伝導度を以下の条件で測定した。結果を表3−2に示す。
イオン伝導度測定条件
Ar雰囲気下、白金極を備えたセル定数既知のガラス製セルに、電解液を封入し、25℃、10kHzでのインピーダンスを測定した。インピーダンスの測定結果から、イオン伝導度を算出した。測定機器はSolartron 147055BEC(ソーラトロン社)を使用した。
前述したように、比較製造例1の電解液は、エチルメチルカーボネートの添加に因り、低温での凝固抑制効果が確認された電解液である。製造例5−1〜製造例5−5の電解液は、エチルメチルカーボネートに因り低温での凝固が抑制された比較製造例1の電解液よりも、イオン伝導度に著しく優れていることがわかる。さらに、表3−2における製造例5−1〜製造例5−5の電解液のイオン伝導度の傾向からみて、フルオロエチレンカーボネートの割合が製造例5−1〜製造例5−5の電解液よりも増加した電解液であっても、比較製造例1の電解液よりもイオン伝導度に優れることが理解できる。
以上の結果から、本発明の電解液は、イオン伝導度と低温での凝固抑制効果の両者に優れていることが裏付けられたといえる。
(参考例1−1〜参考例3)
ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネートに、LiPFを溶解して、表4に示す参考例1−1〜参考例3の電解液を製造した。
参考例1−1〜参考例3の電解液につき、評価例3と同様の方法で、イオン伝導度を測定した。結果を表4に示す。
表4の結果から、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのうち、イオン伝導度の観点からは、有機溶媒としてジメチルカーボネートを選択するのが好ましいといえる。
また、表4の結果から、電解質がLiPFであり、ジメチルカーボネート溶媒の電解液においては、1〜3mol/Lの範囲内にイオン伝導度の極大値が存在するといえる。
<(FSONLiを含有する電解液>
(製造例6−1〜製造例6−8)
ジメチルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートを表5−1に記載の体積比で混合した混合有機溶媒に、(FSONLiを溶解して、(FSONLiの濃度が2mol/Lである製造例6−1〜製造例6−8の電解液を製造した。
(比較製造例2)
ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートをモル比70:30で混合した混合有機溶媒に、(FSONLiを溶解して、(FSONLiの濃度が2mol/Lである比較製造例2の電解液を製造した。
なお、比較製造例2の電解液に対して、評価例1と同様の方法で示差走査熱量分析を行ったところ、凝固ピークが観察されなかった。
(評価例4)
製造例6−1〜製造例6−8及び比較製造例2の電解液につき、評価例3と同様の方法で、イオン伝導度を測定した。結果を表5−2に示す。
製造例6−1〜製造例6−8の電解液の結果から、フルオロエチレンカーボネートの割合が増加するに従い、電解液のイオン伝導が低下するといえる。
前述したように、比較製造例2の電解液は、エチルメチルカーボネートの添加に因り、低温での凝固抑制効果が確認された電解液である。
ジメチルカーボネートに対するフルオロエチレンカーボネートのモル比が概ね25/75以下の電解液は、比較製造例2の電解液よりもイオン伝導度に優れているといえる。
(参考例4−1〜参考例6−6)
ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネートに、(FSONLiを溶解して、表6−1〜表6−3に示す参考例4−1〜参考例6−6の電解液を製造した。
参考例4−1〜参考例6−6の電解液につき、評価例3と同様の方法で、イオン伝導度を測定した。結果を表6−1〜表6−3に示す。
表6−1〜表6−3の結果から、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのうち、イオン伝導度の観点からは、有機溶媒としてジメチルカーボネートを選択するのが好ましいといえる。
また、表6−1の結果から、電解質が(FSONLiであり、ジメチルカーボネート溶媒の電解液においては、1.65〜2.04mol/Lの範囲内にイオン伝導度の極大値が存在するといえる。

Claims (5)

  1. LiPF及び(FSONLiから選択されるリチウム塩、並びに、ジメチルカーボネート及びフッ素含有環状カーボネートを含有する電解液であって、
    前記リチウム塩の濃度が1.5〜3mol/Lであり、
    前記電解液に含まれる有機溶媒のうち、前記ジメチルカーボネートは最大体積又は最大モル数の有機溶媒であり、
    以下のいずれかの条件を満足することを特徴とする電解液。
    条件1:前記ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比が20/80以上である。
    条件2:LiPF濃度をx、前記ジメチルカーボネート及び前記フッ素含有環状カーボネートの合計モル数に対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比をyとした場合に、y≧−0.2x+0.7の関係を満足する。
    条件3:前記ジメチルカーボネートに対する前記フッ素含有環状カーボネートのモル比が25/75以下である。
  2. 前記フッ素含有環状カーボネートがフルオロエチレンカーボネートである請求項1に記載の電解液。
  3. 請求項1又は2に記載の電解液と、正極と、負極とを具備するリチウムイオン二次電池。
  4. 前記負極がSi含有負極活物質を具備する請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 請求項3又は4に記載のリチウムイオン二次電池の使用方法であって、
    前記リチウムイオン二次電池を氷点下及び/又は電圧4.3V以上で使用する方法。
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