JP2019021393A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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佳浩 中垣
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Abstract

【課題】負極上に堆積するアルミニウム量を低減させたリチウムイオン二次電池の製造方法の提供。【解決手段】アルミニウム製の正極集電箔20の表面に形成した正極活物質層21とを具備する正極板2と、負極集電箔30の表面に形成した負極活物質層31とを具備する負極板3と、セパレータ4と、一般式(1)及び一般式(2)から選択するリチウム塩を含有する電解液とを備え、正極集電箔20の表面には、正極未塗工部22が存在し、正極板2及び負極板3はセパレータ4を挟んで対面し、正極未塗工部22と負極活物質層31の端部32とが対面しているリチウムイオン二次電池1の製造方法であって、正極活物質が酸化される充電の前に、負極活物質層31の端部32にリチウムをドープするドープ工程を有するリチウムイオン二次電池1の製造方法。(R1X1)(R2SO2)NLi一般式(1)R3SO3Li一般式(2)【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
一般に、リチウムイオン二次電池は、主な構成要素として、正極、負極及び電解液を備える。そして、電解液には、適切な電解質が適切な濃度範囲で添加されている。例えば、リチウムイオン二次電池の電解液には、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、CFSOLi、(CFSONLi等のリチウム塩が電解質として添加されるのが一般的であり、ここで、電解液におけるリチウム塩の濃度は、概ね1mol/Lとされるのが一般的である。
また、電解液に用いられる有機溶媒には、電解質を好適に溶解させるために、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の比誘電率及び双極子モーメントの高い有機溶媒を約30体積%以上で混合して用いるのが一般的である。
また、多数の文献で報告されているように、リチウムイオン二次電池の正極における集電体には、アルミニウム製の金属箔を用いるのが一般的である。
実際に、特許文献1には、エチレンカーボネートを33体積%含む混合有機溶媒を用い、かつ、LiPFを1mol/Lの濃度で含む電解液と、アルミニウム製の正極集電箔を用いた正極とを備えたリチウムイオン二次電池が開示されている。
最近になって、特許文献2により、電解質としての金属塩を高濃度で含む電解液及び当該電解液を具備するリチウムイオン二次電池が報告され、当該電解液は、低濃度の電解液と比較して、アルミニウムの腐食を好適に抑制し得ることも報告されている(実施例A、比較例A、評価例Aなどを参照。)。
また、リチウムイオン二次電池は、正極集電箔と前記正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する正極板と、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層とを具備する負極板と、セパレータとを備え、前記正極板及び前記負極板はセパレータを挟んで対面しているのが一般的であり、さらに、前記正極集電箔の表面に前記正極活物質層が形成されていない正極未塗工部と、負極活物質層の端部とが対面している状態とされるのも一般的である。
負極活物質層の端部にはリチウムイオンが集中する傾向があり、そして、リチウムイオンの集中により、金属リチウムが析出する懸念があるものの、放出可能なリチウムイオンを有さない正極未塗工部と、負極活物質層の端部とが対面している状態とすることで、負極活物質層の端部へのリチウムイオンの集中を抑制し、金属リチウムの析出を抑制することができるからである。
特開2013−149477号公報 国際公開第2016/063468号
本発明者が、アルミニウム製の正極集電箔を具備する正極と、(FSONLiを2.4mol/Lの濃度で含有する電解液とを備えるリチウムイオン二次電池を実際に製造し、充放電試験を行ったところ、アルミニウム腐食が生じないと想定されていた電位にて充放電を行ったにもかかわらず、当該リチウムイオン二次電池の正極集電箔からアルミニウムが溶出して負極上に堆積する現象が確認された。そのため、本発明者は、アルミニウム製の正極集電箔からのアルミニウム溶出の点について、改善の余地があることを認識した。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、アルミニウム製の正極集電箔からのアルミニウム溶出を低減させたリチウムイオン二次電池を提供すること、換言すれば、負極上に堆積するアルミニウム量を低減させたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者が上述した充放電試験後のリチウムイオン二次電池の正極集電箔を精緻に観察したところ、負極活物質層の端部と対面していた正極未塗工部のアルミニウムが腐食されている現象を知見した。かかる知見から、充放電条件下において、負極活物質層の端部と対面していた正極未塗工部のアルミニウムがアルミニウムイオンとして電解液に溶解し、そして、アルミニウムイオンが負極上で還元されてアルミニウムやアルミニウム化合物として堆積すると考えられる。
この現象は、以下のメカニズムで生じたと考えられる。
正極未塗工部のアルミニウムと電解液との界面では、以下に示す式(1)及び式(2)が同時に生じる平衡反応が生じていると推定される。そして、通常時においては、式(2)の反応速度が式(1)の反応速度よりも著しく大きいため、電解液におけるアルミニウムイオン濃度は著しく低い状態である。
(1)Al → Al3++3e
(2)Al3++3e → Al
ここで、リチウムイオン二次電池の充電条件下においては、外部回路から負極集電箔を介して負極活物質層に電子が供給される。この際、正極活物質層が形成された正極塗工部に対向する負極活物質層には供給された電子数に応じたLiイオンが電解液を介して正極活物質から供給され、負極活物質層は電気的な中性を保ち、また、負極活物質はリチウムイオンを吸蔵することで電位が低下する。一方、負極活物質層の端部、つまり正極活物質が塗工されていないアルミニウムに対向している部分の負極活物質層にも同様に電子が供給されるのだが、対向部に正極活物質層が存在せずLiイオンが十分に供給されないため、負極活物質層の端部の負極活物質はLiイオンを吸蔵できずに電位は下がらず、電子が蓄積して帯電することになる。
この場合、負極活物質層の中で正極活物質層と対向した部分と、正極活物質層には対向せずアルミニウム製の正極集電箔と対向した部分との間で電位差が生じ、負極に供給される次の電子は、電位の高い負極活物質層の端部に供給されやすく、局所的な帯電が進むと考えられる。
帯電した負極活物質層の端部は求カチオン状態であり、また、負極活物質層の端部に対向したアルミニウムと電解液の界面では式(1)及び式(2)の平衡反応が起こっている。そのため、カチオンであるアルミニウムイオンが、帯電した負極活物質層の端部側に、電解液を介して静電的に引き寄せられると考えられる。ここで、アルミニウムイオンが負極活物質層の電子と結合して、0価のアルミニウムとなると、電解液におけるアルミニウムイオンの濃度が減少するので、正極未塗工部のアルミニウムと電解液との界面における上記の平衡反応は、通常時と比較して、式(1)の反応速度が大きくなる。その結果、正極未塗工部のアルミニウム腐食が進行すると考えられる。
そこで、本発明者は、負極活物質層の端部の求カチオン状態の程度を減じて、アルミニウムイオンが負極活物質層の端部側に静電的に引き寄せられる現象を抑制することを想起した。具体的な手段としては、充電が進行した負極活物質層と、正極未塗工部に対面する未充電の負極活物質層の端部との間の電位差を低減するために、あらかじめ負極活物質層の端部にリチウムをドープしておくことで、リチウムイオン二次電池の充電条件下において、負極活物質層の端部が強力な求カチオン状態となることを抑制することを想起した。
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、
アルミニウム製の正極集電箔と前記正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する正極板と、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層とを具備する負極板と、セパレータと、下記一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩を含有する電解液とを備え、
前記正極集電箔の表面には、前記正極活物質層が形成されていない正極未塗工部が存在しており、
前記正極板及び前記負極板は前記セパレータを挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部と前記負極活物質層の端部とが対面しているリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記正極活物質層に存在する正極活物質が酸化される充電の前に、前記負極活物質層の端部にリチウムをドープするドープ工程を有することを特徴とする。
(R)(RSO)NLi 一般式(1)
(Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
また、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、Rは、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
SOLi 一般式(2)
(Rは、アルキル基又はハロゲン置換アルキル基から選択される。)
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法においては、あらかじめ負極活物質層の端部にリチウムをドープしておくことで、リチウムイオン二次電池の充電条件下において、負極活物質層の端部が強力な求カチオン状態となることを抑制する。そのため、アルミニウムイオンが負極活物質層の端部側に静電的に引き寄せられる現象が抑制されるので、負極上に堆積するアルミニウム量を低減できる。
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法によると、電解液におけるアルミニウムイオンの濃度減少は抑制されるので、正極未塗工部のアルミニウムと電解液との界面における上記の平衡反応は、通常時のとおり、式(2)が有利のままである。よって、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法におけるドープ工程には、アルミニウム溶出低減効果があるといえる。
実施例1のリチウムイオン二次電池の模式図である。 実施例2のリチウムイオン二次電池の模式図である。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、
アルミニウム製の正極集電箔と前記正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する正極板と、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層とを具備する負極板と、セパレータと、上記一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩を含有する電解液とを備え、
前記正極集電箔の表面には、前記正極活物質層が形成されていない正極未塗工部が存在しており、
前記正極板及び前記負極板は前記セパレータを挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部と前記負極活物質層の端部とが対面しているリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記正極活物質層に存在する正極活物質が酸化される充電の前に、前記負極活物質層の端部(以下、単に「端部」ということがある。)にリチウムをドープするドープ工程を有することを特徴とする。
以下、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法で製造されるリチウムイオン二次電池を、本発明のリチウムイオン二次電池ということがある。
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる正極板は、アルミニウム製の正極集電箔と、正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する。
アルミニウム製の正極集電箔は、アルミニウム又はアルミニウム合金を材料とする。ここでアルミニウムは、純アルミニウムを指し、純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
正極集電箔の厚みは、1μm〜100μmの範囲内が好ましく、5μm〜50μmの範囲内がより好ましく、10μm〜30μmの範囲内がさらに好ましい。正極集電箔としては、その表面を公知の方法で処理して採用してもよい。
正極活物質層は正極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。正極活物質層の厚みは、1μm〜500μmの範囲内が好ましく、5μm〜200μmの範囲内がより好ましく、10μm〜100μmの範囲内がさらに好ましい。
正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、電荷担体(例えば充放電に寄与するリチウムイオン)を含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100の範囲であることが好ましく、20/100<b<80/100、12/100<c<70/100、10/100<d<60/100の範囲であることがより好ましく、30/100<b<70/100、15/100<c<50/100、12/100<d<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
具体的な正極活物質として、スピネル構造のLiMn2―y(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素、0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。より具体的には、LiMn、LiNi0.5Mn1.5を例示できる。
具体的な正極活物質として、LiFePO、LiFeSiO、LiCoPO、LiCoPO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOFを例示できる。他の具体的な正極活物質として、LiMnO−LiCoOを例示できる。
正極活物質は1種類を用いても良いし、複数種類を併用しても良い。正極活物質の併用例として、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物と、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)で表されるポリアニオン系化合物との併用を挙げることができる。リチウム複合金属酸化物とポリアニオン系化合物との併用において、これらの質量比は、リチウム複合金属酸化物:ポリアニオン系化合物=90:10〜50:50の範囲内が好ましく、80:20〜60:40の範囲内がより好ましい。また、正極活物質は炭素で被覆されていてもよい。
正極活物質層における正極活物質の質量%は、60〜100質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましく、85〜96質量%がさらに好ましい。
結着剤及び導電助剤は、負極活物質層で説明するものを必要に応じて採用すればよい。正極活物質層における結着剤の質量%は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜7質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。結着剤が少なすぎると成形性が低下し、他方、結着剤が多すぎるとエネルギー密度が低くなるためである。正極活物質層における導電助剤の質量%は、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できない場合があり、他方、導電助剤が多すぎると成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
正極集電箔の表面に正極活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、正極集電箔の表面に正極活物質を塗布すればよい。具体的には、正極活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを正極集電箔の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる負極板は、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層とを具備する。
負極集電箔としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。負極集電箔は公知の保護層で被覆されていても良い。負極集電箔の表面を公知の方法で処理したものを負極集電箔として用いても良い。
負極集電箔の厚みは、1μm〜100μmの範囲内が好ましく、5μm〜50μmの範囲内がより好ましく、8μm〜30μmの範囲内がさらに好ましい。
負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。負極活物質層の厚みは、5μm〜500μmの範囲内が好ましく、10μm〜200μmの範囲内がより好ましく、20μm〜100μmの範囲内がさらに好ましい。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。したがって、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。ケイ素などを負極活物質に採用すると、ケイ素1原子が複数のリチウムと反応するため、高容量の活物質となるが、リチウムの吸蔵及び放出に伴う体積の膨張及び収縮が顕著となるとの問題が生じる恐れがあるため、当該恐れの軽減のために、ケイ素などの単体に遷移金属などの他の元素を組み合わせた合金又は化合物を負極活物質として採用するのも好適である。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
より具体的な負極活物質として、黒鉛や、ケイ素を含む材料を例示できる。ケイ素を含む材料としては、Siを含有し、負極活物質として機能するものであればよい。具体的なSi含有負極活物質としては、ケイ素単体、SiOx(0.3≦x≦1.6)、Siと他の金属との合金、国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料を例示できる。Si含有負極活物質は炭素で被覆されていてもよい。炭素で被覆されたSi含有負極活物質は導電性に優れる。
国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」ということがある。)について詳細に説明する。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオン等の電荷担体が効率的に吸蔵及び放出を行うためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
黒鉛やSi含有負極活物質を具備する負極板を備えるリチウムイオン二次電池においては、充電時に正極集電箔を高電圧に曝すことが想定される。そのため、黒鉛やSi含有負極活物質を具備する負極板を備える本発明のリチウムイオン二次電池においては、ドープ工程によるアルミニウム溶出低減効果が好適に発揮されるといえる。
負極活物質層における負極活物質の質量%は、60〜100質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましく、85〜98質量%がさらに好ましい。
結着剤は活物質や導電助剤などを集電箔の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
また、結着剤として、親水基を有するポリマーを採用してもよい。親水基を有するポリマーを結着剤として具備する本発明のリチウムイオン二次電池は、より好適に容量を維持できる。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基などリン酸系の基などが例示される。中でも、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸などの分子中にカルボキシル基を含むポリマー、又は、ポリ(p−スチレンスルホン酸)などのスルホ基を含むポリマーが好ましい。
ポリアクリル酸、あるいはアクリル酸とビニルスルホン酸との共重合体など、カルボキシル基及び/又はスルホ基を多く含むポリマーは水溶性となる。親水基を有するポリマーは、水溶性ポリマーであることが好ましく、化学構造でいうと、一分子中に複数のカルボキシル基及び/又はスルホ基を含むポリマーが好ましい。
分子中にカルボキシル基を含むポリマーは、例えば、酸モノマーを重合する方法や、ポリマーにカルボキシル基を付与する方法などで製造することができる。酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ペンテン酸、アンジェリカ酸、チグリン酸など分子中に一つのカルボキシル基をもつ酸モノマー、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−ペンテン二酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸など分子内に二つ以上のカルボキシル基をもつ酸モノマーなどが例示される。
上記の酸モノマーから選ばれる二種以上の酸モノマーを重合してなる共重合ポリマーを結着剤として用いてもよい。
また、例えば特開2013―065493号公報に記載されたような、アクリル酸とイタコン酸との共重合体のカルボキシル基どうしが縮合して形成された酸無水物基を分子中に含んでいるポリマーを結着剤として用いることも好ましい。一分子中にカルボキシル基を二つ以上有する酸性度の高いモノマー由来の構造が結着剤にあることにより、充電時に電解液分解反応が起こる前にリチウムイオンなどを結着剤がトラップし易くなると考えられている。さらに、当該ポリマーは、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸に比べてモノマーあたりのカルボキシル基が多いため、酸性度が高まるものの、所定量のカルボキシル基が酸無水物基に変化しているため、酸性度が高まりすぎることもない。そのため、当該ポリマーを結着剤として用いた負極をもつ二次電池は、初期効率が向上し、入出力特性が向上する。
また、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーを、ジアミンで架橋した架橋ポリマーを結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
また、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーと、ポリアミドイミドとの混合物又は反応物を結着剤として用いてもよい。
ポリアミドイミドとは、分子内にアミド結合とイミド結合をそれぞれ2つ以上有する化合物を意味する。ポリアミドイミドは、アミド結合及びイミド結合におけるカルボニル部分となる酸成分と、アミド結合及びイミド結合における窒素部分となるジアミン成分又はジイソシアネート成分を反応させることで製造される。ポリアミドイミドを得るには、当該方法で製造しても良いし、また、市販のポリアミドイミドを購入しても良い。
ポリアミドイミドの製造に用いられる酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ビス(カルボキシフェニル)スルホン、ビス(カルボキシフェニル)エーテル、ナフタレンジカルボン酸、及び、これらの無水物、酸ハロゲン化物、誘導体を挙げることができる。酸成分としては、上記の化合物を単独で又は複数で採用すればよいが、ただし、イミド結合を形成させる点から、カルボキシル基が結合している炭素の隣接炭素にカルボキシル基が存在する酸成分又はその同等物が、必須となる。酸成分としては、反応性、耐熱性などの点から、トリメリット酸無水物が好ましい。また、ポリアミドイミドの引っ張り強度、引っ張り弾性率、電解液耐性の点から、トリメリット酸無水物に加えて、酸成分の一部として、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物を採用するのが好ましい。
ポリアミドイミドの製造に用いられるジアミン成分としては、上述した架橋ポリマーに用いられるジアミンを採用すればよい。耐熱性、溶解性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−トリレンジアミン、o−トリジン、ナフタレンジアミン、イソホロンジアミンが好ましい。ポリアミドイミドの引っ張り強度、引っ張り弾性率の点からはo−トリジン、ナフタレンジアミンが好ましい。
ポリアミドイミドの製造に用いられるジイソシアネート成分としては、上記ジアミン成分のアミンをイソシアネートで置き換えたものを挙げることができる。
負極活物質層における結着剤の質量%は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。結着剤が少なすぎると成形性が低下し、他方、結着剤が多すぎるとエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
負極活物質層における導電助剤の質量%は、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できない場合があり、他方、導電助剤が多すぎると成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
負極集電箔の表面に負極活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、負極集電箔の表面に負極活物質を塗布すればよい。具体的には、負極活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを負極集電箔の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
本発明のリチウムイオン二次電池にはセパレータが用いられる。セパレータは、正極板と負極板とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
セパレータは、正極板と負極板の接触を妨げるべく、正極板と負極板の間に位置する。セパレータは、対面する正極活物質層及び負極活物質層の面よりも大きな面を有するのが好ましい。短絡防止及び金属リチウム析出防止の観点から、面の大きさとしては、セパレータ>負極活物質層>正極活物質層の順が好ましい。セパレータと正極活物質層と負極活物質層との対面状態としては、正極活物質層の全面を覆う態様で負極活物質層が正極活物質層に対面し、そして、正極活物質層及び負極活物質層の全面を覆う態様でセパレータが正極活物質層及び負極活物質層に対面する状態が好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、下記一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩を含有する電解液を備える。
(R)(RSO)NLi 一般式(1)
(Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
また、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、Rは、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
SOLi 一般式(2)
(Rは、アルキル基又はハロゲン置換アルキル基から選択される。)
上記一般式(1)で表される化学構造における、「置換基で置換されていても良い」との文言について説明する。例えば「置換基で置換されていても良いアルキル基」であれば、アルキル基の水素の一つ若しくは複数が置換基で置換されているアルキル基、又は、置換基を有さないアルキル基を意味する。
「置換基で置換されていても良い」との文言における置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、ハロゲン、OH、SH、CN、SCN、OCN、ニトロ基、アルコキシ基、不飽和アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基で置換されてもよい。また置換基が2つ以上ある場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。
リチウム塩は下記一般式(1−1)で表されるものが好ましい。
(R23)(R24SO)NLi 一般式(1−1)
(R23、R24は、それぞれ独立に、CClBr(CN)(SCN)(OCN)である。
n、a、b、c、d、e、f、g、hはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
また、R23とR24は、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、Rは、R23又はR24と結合して環を形成しても良い。)
上記一般式(1−1)で表される化学構造における、「置換基で置換されていても良い」との文言の意味は、上記一般式(1)で説明したのと同義である。
上記一般式(1−1)で表される化学構造において、nは0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましく、0〜2の整数が特に好ましい。なお、上記一般式(1−1)で表される化学構造の、R23とR24が結合して環を形成している場合には、nは1〜8の整数が好ましく、1〜7の整数がより好ましく、1〜3の整数が特に好ましい。
リチウム塩は、下記一般式(1−2)で表されるものがさらに好ましい。
(R25SO)(R26SO)NLi 一般式(1−2)
(R25、R26は、それぞれ独立に、CClBrである。
n、a、b、c、d、eはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+eを満たす。
また、R25とR26は、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+b+c+d+eを満たす。)
上記一般式(1−2)で表される化学構造において、nは0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましく、0〜2の整数が特に好ましい。なお、上記一般式(1−2)で表される化学構造の、R25とR26が結合して環を形成している場合には、nは1〜8の整数が好ましく、1〜7の整数がより好ましく、1〜3の整数が特に好ましい。
また、上記一般式(1−2)で表される化学構造において、a、c、d、eが0のものが好ましい。
一般式(2)において、Rの炭素数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。ハロゲン置換アルキル基のハロゲンとしては、フッ素が好ましい。
リチウム塩は(CFSONLi、(FSONLi、(CSONLi、FSO(CFSO)NLi、(SOCFCFSO)NLi、(SOCFCFCFSO)NLi、FSO(CHSO)NLi、FSO(CSO)NLi、又はFSO(CSO)NLiから選択されるものが特に好ましい。
電解液において、一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩の1種類を採用しても良いし、複数種を併用しても良い。また、電解液には、一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩以外の電解質を含んでいてもよい。電解液における電解質全体に対する一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩の割合としては、30〜100モル%が好ましく、50〜95モル%がより好ましく、70〜90モル%がさらに好ましい。電解液における、一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩を含む電解質の濃度としては、1.5〜3mol/L、1.6〜2.8mol/L、1.8〜2.6mol/L、2〜2.5mol/Lを例示できる。
一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩以外の電解質としては、LiPF、LiPF(OCOCOO)、LiBF、LiAsF及びLiSiFを具体的に例示できる。これらの電解質は、いずれもFとして脱離され得るFを有する。そして、Fはアルミニウムと反応して、安定なAl−F結合を生成し得る。したがって、正極未塗工部の表面がAl−F結合を含む不動態被膜で保護されることが期待できる。
電解液は、一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩を含む電解質を溶解するための有機溶媒を含有する。有機溶媒としては、非水系二次電池に使用可能な有機溶媒を採用すればよく、特に、アルミニウムを溶解し難い低極性の有機溶媒を採用するのが好ましい。
低極性の有機溶媒として、下記一般式(3)で表される鎖状カーボネートを挙げることができる。
10OCOOR11 一般式(3)
(R10、R11は、それぞれ独立に、鎖状アルキルであるCClBr、又は、環状アルキルを化学構造に含むCClBrのいずれかから選択される。nは1以上の整数、mは3以上の整数、a、b、c、d、e、f、g、h、i、jはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e、2m−1=f+g+h+i+jを満たす。)
上記一般式(3)で表される鎖状カーボネートにおいて、nは1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。mは3〜8の整数が好ましく、4〜7の整数がより好ましく、5〜6の整数が特に好ましい。
上記一般式(3)で表される鎖状カーボネートのうち、下記一般式(3−1)で表されるものが特に好ましい。
12OCOOR13 一般式(3−1)
(R12、R13は、それぞれ独立に、鎖状アルキルであるC、又は、環状アルキルを化学構造に含むCのいずれかから選択される。nは1以上の整数、mは3以上の整数、a、b、f、gはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b、2m−1=f+gを満たす。)
上記一般式(3−1)で表される鎖状カーボネートにおいて、nは1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。mは3〜8の整数が好ましく、4〜7の整数がより好ましく、5〜6の整数が特に好ましい。
上記一般式(3−1)で表される鎖状カーボネートのうち、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」ということがある。)、ジエチルカーボネート(以下、「DEC」ということがある。)、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」ということがある。)、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、フルオロメチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、ペンタフルオロエチルメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートが特に好ましい。
鎖状カーボネートは、1種類を電解液に用いても良いし、複数種類を併用しても良い。鎖状カーボネートの複数を併用することで、電解液の低温流動性や低温でのリチウムイオン輸送性などを好適に確保することができる。鎖状カーボネートの併用例として、DMC、DEC及びEMCから選択される2種又は3種の併用を挙げることができる。DMCと、DEC又はEMCとの併用において、これらのモル比は、DMC:DEC又はEMC=60:40〜95:5の範囲内が好ましく、70:30〜95:5の範囲内がより好ましく、80:20〜95:5の範囲内がさらに好ましい。
電解液においては、上記鎖状カーボネート以外に、リチウムイオン二次電池などの電解液に使用可能である他の有機溶媒(以下、単に「他の有機溶媒」ということがある。)が含まれていてもよい。
電解液には、電解液に含まれる全有機溶媒に対し、上記鎖状カーボネートが、70体積%、70質量%以上若しくは70モル%以上で含まれるのが好ましく、80体積%、80質量%以上若しくは80モル%以上で含まれるのがより好ましく、90体積%、90質量%以上若しくは90モル%以上で含まれるのがさらに好ましく、95体積%、95質量%以上若しくは95モル%以上で含まれるのが特に好ましい。電解液に含まれる有機溶媒すべてが上記鎖状カーボネートであってもよい。
他の有機溶媒を具体的に例示すると、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、マロノニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル等のエーテル類、フルオロエチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン等のフッ素含有環状カーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のフッ素非含有環状カーボネート類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、イソプロピルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、クロロメチルイソシアネート等のイソシアネート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のエステル類、グリシジルメチルエーテル、エポキシブタン、2−エチルオキシラン等のエポキシ類、オキサゾール、2−エチルオキサゾール、オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン等のオキサゾール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物、ジメチルスルホン、スルホラン等のスルホン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン等のニトロ類、フラン、フルフラール等のフラン類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状エステル類、チオフェン、ピリジン等の芳香族複素環類、テトラヒドロ−4−ピロン、1−メチルピロリジン、N−メチルモルフォリン等の複素環類、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類を挙げることができる。
電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の添加剤を加えてもよい。公知の添加剤の一例として、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)に代表される不飽和結合を有する環状カーボネート;フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネートに代表されるカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物に代表されるカルボン酸無水物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン;1,4−ジオキサンに代表される環状エーテル;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィドに代表される含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミドに代表される含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩に代表されるリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタンに代表される飽和炭化水素化合物;ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフランに代表される不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極活物質層に存在する正極活物質が酸化される充電の前に、負極活物質層の端部にリチウムをドープするドープ工程を有することを特徴とする。
通常、リチウムイオン二次電池の充電条件下においては、外部回路から負極集電箔を介して負極活物質層に電子が供給される。この際、正極活物質層が形成された正極塗工部に対向する負極活物質層には供給された電子数に応じたLiイオンが電解液を介して正極活物質から供給され、負極活物質層は電気的な中性を保ち、また、負極活物質はリチウムイオンを吸蔵することで電位が低下する。一方、負極活物質層の端部、つまり正極活物質が塗工されていないアルミニウムに対向している部分の負極活物質層にも同様に電子が供給されるのだが、対向部に正極活物質層が存在せずLiイオンが十分に供給されないため、負極活物質層の端部の負極活物質はLiイオンを吸蔵できずに電位は下がらず、電子が蓄積して帯電することになる。
この場合、負極活物質層の中で正極活物質層と対向した部分と、正極活物質層には対向せずアルミニウム製の正極集電箔と対向した部分との間で電位差が生じ、負極に供給される次の電子は、電位の高い負極活物質層の端部に供給されやすく、局所的な帯電が起こり、負極活物質層の端部は求カチオン状態となる。
一方、正極活物質が酸化される通常の充電の前に、負極活物質層の端部にリチウムイオンをドープさせた場合、負極活物質層の端部の電位は低くなるために、その後の通常の充電を行った際には、負極に供給される電子が負極活物質の端部に優先的に供給され、帯電し、求カチオン状態となることが一定程度抑制されると推定される。
また、その後の充放電において、負極活物質層の端部は、対面に正極活物質層が存在しないため、負極活物質層の端部ではリチウムイオンの授受は活発には行われず、ドープされたリチウムは負極活物質層の端部に留まることが期待される。そうすると、リチウムがドープされた負極活物質層の端部は、通常使用時などの充電時においても、求カチオン状態となることが一定程度抑制されると推定される。そのため、充放電を繰り返し行った場合であっても、本発明のリチウムイオン二次電池は、負極活物質層の端部に対面する正極未塗工部付近に存在するアルミニウムイオンが、負極活物質層の端部側に電解液を介して静電的に移動するのを、ある程度の期間にわたり、抑制できると考えられる。
ドープ工程においては、正極未塗工部に対面する負極活物質層の端部のみにリチウムをドープしてもよいし、負極活物質層の端部と共に正極未塗工部に対面しない負極活物質層の一部にリチウムをドープしてもよく、また、負極活物質層の全体にリチウムをドープしてもよい。効率性の観点からは、ドープ工程においては、正極未塗工部に対面する負極活物質層の端部のみにリチウムをドープするのが好ましい。他方、ドープ工程の簡便化の観点からは、負極活物質層の全体にリチウムをドープするのが好ましい。
ドープ工程を有さないリチウムイオン二次電池の製造方法と比較すれば、ドープ工程を有する本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、リチウムドープの程度に因らず、アルミニウム溶出低減効果があるといえる。ただし、ドープ工程におけるリチウムドープの程度を規定することで、さらに好適な本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供可能である。
ドープ工程におけるリチウムドープの程度の一態様として、ドープ工程後におけるリチウムを基準とする負極電位Vdopedは、ドープ工程前におけるリチウムを基準とする負極電位Vundopedの50%以下であるのが好ましく、1〜40%であるのがより好ましく、3〜30%であるのがさらに好ましく、5〜20%であるのが特に好ましい。
後述する実施例1のリチウムイオン二次電池の製造方法においては、ドープ工程におけるリチウムを基準とする負極電位0.1V及び0.2Vは、ドープ工程前におけるリチウムを基準とする負極電位の、概ね3%及び7%に該当する。
負極活物質層の全体にリチウムをドープするドープ工程におけるリチウムドープの程度の一態様として、ドープ工程の後に、正極活物質層に存在する正極活物質が酸化される充電を、リチウムを基準とする負極電位Vchargeまで実施する場合、ドープ工程後におけるリチウムを基準とする負極電位Vdopedと、ドープ工程前におけるリチウムを基準とする負極電位Vundopedと、負極電位Vchargeとの関係が、Vdoped≦(Vundoped+Vcharge)/2を満足するのが好ましく、1.1×Vcharge≦Vdoped≦(Vundoped+Vcharge)/2を満足するのがより好ましく、1.2×Vcharge≦Vdoped≦(Vundoped+Vcharge)/2を満足するのがさらに好ましい。
後述する実施例1のリチウムイオン二次電池の製造方法及び評価例1においては、負極電位Vchargeが概ね0.01Vであり、Vundopedが概ね3Vであるため、(Vundoped+Vcharge)/2≒1.5Vとなる。
また、正極未塗工部に対面する負極活物質層の端部のみにリチウムをドープするドープ工程、又は、負極活物質層の端部と共に正極未塗工部に対面しない負極活物質層の一部にリチウムをドープするドープ工程における、リチウムドープの程度の一態様としては、ドープ工程後における、負極活物質層の端部の電位(リチウムを基準とする。)がVchargeと一致するのが好ましい。
なお、一般に、リチウムを基準とする負極の電位が1.5V〜0.2Vの範囲内で、負極の表面に電解液の分解物に由来する被膜が形成されることが知られている。よって、電解液存在下におけるドープ工程において、負極に被膜形成電位を経験させることで、リチウムドープ用セルの解体時、リチウムドープ負極板の取り出し時、及び、リチウムドープ負極板を用いたリチウムイオン二次電池の製造時において、負極が被覆状態で作業されることになる。したがって、電解液存在下におけるドープ工程において、負極に被膜形成電位を経験させることは、負極の安定面から有利であるし、リチウムイオン二次電池の充電時に新たな電解液の分解が生じ難いとの観点からも有利である。
また、ドープ工程においては、本発明のリチウムイオン二次電池を満充電状態とした場合であっても、負極へのリチウム導入量が負極の理論容量を超えない程度に、リチウムをドープするのが好ましい。なお、満充電状態とは、正極活物質から、安定的な充放電が可能な容量の100%又は想定される通常使用状態の容量の100%に該当するリチウムを離脱させて、負極に充電した状態のことを意味する。
ドープ工程としては、D−1)負極活物質層の端部の表面に、リチウム箔を貼付して又はリチウム粉末を含有する組成物層を形成して、リチウムをドープする工程、D−2)負極板に対して、リチウムイオン二次電池とは別のセルを用いて、負極活物質層の端部にリチウムをドープする工程、又は、D−3)正極活物質層にリチウムドープ剤を配合しておいて、当該リチウムドープ剤を利用して負極活物質層の端部にリチウムをドープする工程、を具体的に例示できる。
D−1)負極活物質層の端部の表面に、リチウム箔を貼付して又はリチウム粉末を含有する組成物層(以下、リチウム粉末含有層という。)を形成して、リチウムをドープする工程、について説明する。
負極活物質層の端部の表面にリチウム箔を貼付又はリチウム粉末含有層を形成すると、時間の経過とともに、リチウム箔又はリチウム粉末含有層のリチウムが負極活物質層の端部に導入される。リチウムの導入速度を増加させたい場合には、リチウム箔を貼付又はリチウム粉末含有層を形成した負極板を加圧して、リチウム箔又はリチウム粉末含有層と負極活物質層との密着性を向上させてもよいし、また、リチウム箔を貼付又はリチウム粉末含有層を形成した負極板を電解液に浸漬してもよい。リチウム箔又はリチウム粉末含有層の厚みは、所望のドープ量に応じて、適宜決定すればよい。負極活物質層の端部のみにリチウムをドープするためには、負極活物質層の端部のみにリチウム箔を貼付又はリチウム粉末含有層を形成すればよい。リチウム粉末含有層は、リチウム粉末と溶剤と結着剤等を含有するスラリーを負極活物質層上に塗布し、当該スラリーを乾燥させることで形成可能であるし、また、あらかじめ準備したリチウム粉末含有層を負極活物質層に貼付することで形成してもよい。
ここで、負極活物質層の端部の表面に貼付又は形成されたリチウム箔及びリチウム粉末含有層を、「リチウム層」と称すると、以下の発明を把握できる。
アルミニウム製の正極集電箔と前記正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する正極板と、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層と前記負極活物質層の表面に形成されたリチウム層とを具備する負極板と、セパレータと、前記一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩を含有する電解液とを備え、
前記正極集電箔の表面には、前記正極活物質層が形成されていない正極未塗工部が存在しており、
前記正極板及び前記負極板はセパレータを挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部と前記負極活物質層の端部とが対面し、
前記リチウム層は、前記負極活物質層の端部の表面に形成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
また、前段落に記載のリチウムイオン二次電池の前駆体として、以下の発明を把握できる。
アルミニウム製の正極集電箔と前記正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する正極板と、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層と前記負極活物質層の表面に形成されたリチウム層とを具備する負極板と、セパレータとを備え、
前記正極集電箔の表面には、前記正極活物質層が形成されていない正極未塗工部が存在しており、
前記正極板及び前記負極板はセパレータを挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部と前記負極活物質層の端部とが対面し、
電解液を備えていないリチウムイオン二次電池前駆体であって、
前記リチウム層は、前記負極活物質層の端部の表面に形成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池前駆体。
D−2)負極板に対して、リチウムイオン二次電池とは別のセル(以下、リチウムドープ用セルということがある。)を用いて、負極活物質層の端部にリチウムをドープする工程、について説明する。
上記の工程は、具体的には、D−2−1)上記負極板を用いて、負極板を備えるリチウムドープ用セルを製造する工程、D−2−2)リチウムドープ用セルを作動させて負極板における負極活物質層の端部にリチウムをドープする工程、D−2−3)リチウムドープ用セルから負極板を取り出す工程を含む。
リチウムドープ用セルとしては、負極板と金属リチウムとを電極として備え、かつ電解液を備えるものがよい。リチウムドープ用セルに対して、金属リチウム電極のリチウムを負極板にドープさせる方向に電圧を印加することで、負極活物質層の端部にリチウムをドープすることができる。主に負極活物質層の端部にリチウムをドープするためには、負極活物質層のうち端部のみを電解液に浸した状態で、リチウムドープ用セルに対して電圧を印加するか、又は、リチウムドープ用セルを負極板の負極活物質層の端部のみと金属リチウム電極とを対面させた状態とした上で、当該リチウムドープ用セルに対して電圧を印加すればよい。
D−3)正極活物質層にリチウムドープ剤を配合しておいて、当該リチウムドープ剤を利用して負極活物質層の端部にリチウムをドープする工程、について説明する。
リチウムドープ剤は、正極活物質層に存在する正極活物質よりも、反応電位が低い(リチウムイオン放出電位が低い)リチウム化合物である。なお、本発明の趣旨から、リチウムドープ剤は、アルミニウム腐食電位よりも低い電位(例えば、リチウム基準で3.8V以下。)でリチウムイオンを放出することが求められる。
前段落に記載の条件に合致することを前提に、リチウムドープ剤として、正極活物質として列挙した化合物を採用することもできる。好ましいリチウムドープ剤としては、LiO、LiFePO、LiFeO、LiMnO、LiCoO、LiZnO、LiAlO、及び、LiGaOを例示できる。リチウムドープ剤としては、炭素で被覆して、導電性を向上させたものを使用するのが好ましい。
正極活物質層に存在する正極活物質が酸化される充電の前に、リチウムドープ剤を含む正極活物質層を具備するリチウムイオン二次電池に対して、リチウムドープ剤がリチウムイオンを放出する電圧を印加することで、負極活物質層の端部にリチウムをドープできる。
本発明のリチウムイオン二次電池において、正極板、セパレータ及び負極板を積層した積層体は、積層体を捲いた捲回型であっても良いし、正極板とセパレータと負極板とが平面状態で積層されたままの積層型であっても良い。正極未塗工部と負極活物質層の端部との対面関係を制御する観点からは、積層型が好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の電池容器の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、樹脂、アルミニウムなどの金属と樹脂を積層した積層体を例示できる。本発明のリチウムイオン二次電池の電池容器の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、ドープ工程を有する製造方法により、正極集電箔からのアルミニウム溶出を低減できるので、高電圧条件下での使用が可能である。高電圧条件として具体的には、正極が曝されるリチウム基準での電位が3.9V以上、4V以上、4〜5.5V、4.1〜5V、4.3〜4.8Vの条件を例示できる。本発明のリチウムイオン二次電池は高電圧用のリチウムイオン二次電池であると認識することもできる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。本明細書においては、本発明の実施形態として、電荷担体がリチウムであるリチウムイオン二次電池を具体的に説明しているが、本明細書で開示する技術事項は、電荷担体がナトリウムであるナトリウムイオン二次電池、電荷担体がカリウムであるカリウムイオン二次電池、電荷担体がマグネシウムであるマグネシウムイオン二次電池などにも、適用可能である。本明細書で開示する技術事項を、ナトリウムイオン二次電池又はカリウムイオン二次電池に適用する場合には、本明細書における「リチウム」及び「Li」との記載を、それぞれ「ナトリウム」及び「Na」、又は、「カリウム」及び「K」に読み替えれば良い。本明細書で開示する技術事項を、マグネシウムイオン二次電池に適用する場合には、本明細書における「リチウム」及び「Li」との記載を、必要に応じて価数を適切に整合させた上で、「マグネシウム」及び「Mg」に読み替えれば良い。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1のリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
正極活物質であるLiNi50/100Co35/100Mn15/100を90質量部、導電助剤であるアセチレンブラック5質量部、導電助剤である黒鉛3質量部、及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン2質量部を混合した。この混合物を若干量の分散剤とともに適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを製造した。正極用集電箔として厚み15μmのJIS A1000番系に該当するアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、このアルミニウム箔をプレスし接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔を得た。これを正極板とした。正極板のアルミニウム箔の一面には、正極活物質層が形成された正極塗工部と、正極活物質層が形成されていない正極未塗工部とが存在する。
負極活物質として黒鉛98質量部、並びに結着剤であるスチレンブタジエンゴム1質量部及びカルボキシメチルセルロース1質量部を混合した。この混合物を適量のイオン交換水に分散させて、スラリーを作製した。負極用集電箔として厚み10μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥して水を除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で100℃、6時間加熱乾燥して、負極活物質層が形成された銅箔を得た。これを負極板とした。
ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートをモル比9:1で混合して、混合溶媒を調製した。当該混合溶媒に(FSONLiを濃度2.4mol/Lで溶解させて、電解液とした。
・ドープ工程
負極板とリチウム箔と電解液とで、リチウムドープ用セルを製造した。リチウムドープ用セルにおいては、負極板における負極活物質層すべてを電解液に含浸させた状態とした。リチウムドープ用セルに対して、0.05Cレートで電圧0.1Vまで、充電を行い、0.05Cレートで電圧0.2Vまで、放電を行った。その後、リチウムドープ用セルを解体して、リチウムドープ負極板を取り出した。
ドープ工程において、電圧0.1Vまで充電を行った後に電圧0.2Vまで放電を行ったのは、以下の理由による。
・電圧0.2Vであっても、一般的なリチウムイオン二次電池の負極のOCV(open circuit voltage)である3V(リチウム基準)よりは、十分に低いため、十分にリチウムドープされている点
・電圧0.2Vであれば、実施例1のリチウムイオン二次電池を満充電状態とした場合であっても、負極へのリチウム導入量が負極の理論容量を超えない点
セパレータとして、厚さ16μm、空隙率47%のポリエチレン製多孔質膜を準備した。
正極板とリチウムドープ負極板とでセパレータを挟持し、極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群及び電解液が密閉されたリチウムイオン二次電池を得た。これを実施例1のリチウムイオン二次電池とした。
実施例1のリチウムイオン二次電池を、正極板、セパレータ及び負極板の厚み側から観察した場合の模式図を、図1に示す。以下の説明において、縦とは、図1において上下方向を意味し、横とは図1において紙面手前側−奥側方向を意味する。
実施例1のリチウムイオン二次電池1は、
アルミニウム製の正極集電箔20と前記正極集電箔20の表面に形成された正極活物質層21とを具備する正極板2と、負極集電箔30と前記負極集電箔30の表面に形成された負極活物質層31とを具備する負極板3と、セパレータ4と、リチウム塩として(FSONLiを含有する電解液5とを備え、
前記正極集電箔20の表面には、前記正極活物質層21が形成されていない正極未塗工部22が存在しており、
前記正極板2及び前記負極板3は前記セパレータ4を挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部22と前記負極活物質層31の端部32とが対面しているリチウムイオン二次電池1であって、
負極活物質層31は、リチウムドープされている。
正極集電箔20は、JIS A1000系の純アルミニウムであり、厚み15μm、縦40mm、横幅30mmの箔である。正極集電箔20の一面には、正極集電箔20の縦方向の下端を起点として上端方向へ25mmにわたり、正極活物質層21が横幅30mm、厚み22μmで形成されている。正極活物質層21には、正極活物質であるLiNi50/100Co35/100Mn15/100が90質量部、導電助剤であるアセチレンブラックが5質量部、導電助剤である黒鉛が3質量部、結着剤であるポリフッ化ビニリデンが2質量部で含有されている。
さらに、正極集電箔20の表面には、正極活物質層21が形成されていない正極未塗工部22が、正極活物質層21が形成されている箇所、すなわち正極塗工部の端から、正極集電箔20の上端にわたり、存在する。そして、正極未塗工部22は、セパレータ4を介して負極活物質層31の端部32と対面関係にある。
正極集電箔20の上端は、正極導線24を介して外部電源15に接続されている。
負極集電箔30は、厚み10μm、縦40mm、横幅32mmの銅箔である。負極集電箔30の一面には、負極集電箔30の縦方向の上端を起点として下端方向へ30mmにわたり、負極活物質層31が横幅32mmで形成されている。負極活物質層31には、負極活物質である黒鉛が98質量部、結着剤であるカルボキシメチルセルロースが1質量部、結着剤であるスチレンブタジエンゴムが1質量部で含有されており、黒鉛には、リチウムがドープされている。
負極集電箔30の下端は、負極導線34を介して外部電源15に接続されている。
セパレータ4は、厚さ16μmのポリエチレン製多孔質膜である。セパレータ4は、セパレータ4と対面する正極活物質層21及び負極活物質層31の面よりも大きな面を有する。そして、セパレータ4は、正極板2と負極板3の接触を妨げるべく、正極板2と負極板3の間に位置する。
正極板2、負極板3及びセパレータ4は、平面を維持した積層状態で、電池容器10の内部に密閉されている。電池容器10はアルミラミネートフィルムからなる。電池容器10の内部には、電解液5が注入されている。電解液5は、リチウム塩として(FSONLiを含有し、かつ、有機溶媒として、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートをモル比9:1で混合した混合溶媒を含有する。電解液5における(FSONLiの濃度は、2.4mol/Lである。
(比較例1)
ドープ工程を行わなかったこと以外は、実施例1のリチウムイオン二次電池と同様の方法で、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。比較例1のリチウムイオン二次電池は、負極板の負極活物質層がリチウムドープされていない点を除いて、実施例1のリチウムイオン二次電池と同様の構成である。
(評価例1)
実施例1のリチウムイオン二次電池につき、25℃の条件下、5Cレートの定電流にて4.1Vまで充電し、その後、同電圧を維持するための充電を2時間行った。次いで、60℃の条件下、2Cレートの定電流で3.3Vまで放電して4.1Vまで充電するとの充放電サイクルを30回繰り返した。さらに、25℃の条件下、1Cレートの定電流にて3.0Vまで放電し、その後、同電圧を2時間維持させた。
以上の充放電を行った実施例1のリチウムイオン二次電池を解体し、負極板をジメチルカーボネートの液中に10分静置することを、液を取り替えながら3回繰り返すことで、残存する電解液成分を洗浄し、その後、負極板を分析に供した。ICP発光分析にて、負極板に付着したアルミニウムの量を測定した。比較例1のリチウムイオン二次電池についても、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2019021393
表1の結果から、ドープ工程により、負極板へのアルミニウム析出が著しく抑制されているのがわかる。
(実施例2)
図2に示す実施例2のリチウムイオン二次電池は、負極活物質層の端部の表面にリチウム箔を貼付するドープ工程で製造されるものである。また、実施例2のリチウムイオン二次電池は、電解液を備えていないリチウムイオン二次電池前駆体に対して、電解液が注入されて、製造されるものである。
実施例2のリチウムイオン二次電池は、
アルミニウム製の正極集電箔20と前記正極集電箔20の表面に形成された正極活物質層21とを具備する正極板2と、負極集電箔30と前記負極集電箔30の表面に形成された負極活物質層31と前記負極活物質層31の表面に形成されたリチウム層6とを具備する負極板3と、セパレータ4と、一般式(1)で表わされるリチウム塩を含有する電解液5とを備え、
前記正極集電箔20の表面には、前記正極活物質層21が形成されていない正極未塗工部22が存在しており、
前記正極板2及び前記負極板3はセパレータ4を挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部22と前記負極活物質層31の端部32とが対面し、
前記リチウム層6は、前記負極活物質層31の端部32の表面に形成されている。
以下、主に、実施例1のリチウムイオン二次電池とは異なる点について、実施例2のリチウムイオン二次電池の説明を行う。
負極集電箔30は、厚み10μm、縦40mm、横幅32mmの銅箔である。負極集電箔30の一面には、負極集電箔30の縦方向の上端を起点として下端方向へ30mmにわたり、負極活物質層31が横幅32mm、厚み40μmで形成されている。負極活物質層31には、負極活物質である黒鉛が98質量部、結着剤であるカルボキシメチルセルロースが1質量部、結着剤であるスチレンブタジエンゴムが1質量部で含有されている。
負極活物質層31のセパレータ側の面には、全面にわたり、リチウム箔からなるリチウム層6が厚さ20μmで形成されている。リチウム層6は、負極活物質層31にリチウム箔を圧着させて形成されたものである。リチウム層6は、時間の経過及び電池容器10への電解液5の注入に伴い、負極活物質層31へのドープが進行する。
1 リチウムイオン二次電池
2 正極板
3 負極板
4 セパレータ
5 電解液
6 リチウム層
10 電池容器
15 外部電源
20 正極集電箔
21 正極活物質層
22 正極未塗工部
24 正極導線
30 負極集電箔
31 負極活物質層
32 端部
34 負極導線

Claims (10)

  1. アルミニウム製の正極集電箔と前記正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する正極板と、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層とを具備する負極板と、セパレータと、下記一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩を含有する電解液とを備え、
    前記正極集電箔の表面には、前記正極活物質層が形成されていない正極未塗工部が存在しており、
    前記正極板及び前記負極板は前記セパレータを挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部と前記負極活物質層の端部とが対面しているリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記正極活物質層に存在する正極活物質が酸化される充電の前に、前記負極活物質層の端部にリチウムをドープするドープ工程を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
    (R)(RSO)NLi 一般式(1)
    (Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
    は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。
    は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
    、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
    また、R、Rは、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
    SOLi 一般式(2)
    (Rは、アルキル基又はハロゲン置換アルキル基から選択される。)
  2. 前記電解液において、前記リチウム塩を含む電解質の濃度が1.5〜3mol/Lである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  3. 前記ドープ工程が、前記負極活物質層の端部の表面に、リチウム箔を貼付して又はリチウム粉末を含有する組成物層を形成して、リチウムをドープする工程である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  4. 前記ドープ工程が、前記負極板に対して、前記リチウムイオン二次電池とは別のセルを用いて、前記負極活物質層の端部にリチウムをドープする工程を含む請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  5. 前記正極活物質層はリチウムドープ剤を含み、
    前記ドープ工程が、前記リチウムドープ剤を利用して実施される請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  6. 前記ドープ工程後におけるリチウムを基準とする負極電位Vdopedは、前記ドープ工程前におけるリチウムを基準とする負極電位Vundopedの50%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  7. 前記ドープ工程の後に、前記正極活物質層に存在する正極活物質が酸化される充電を、リチウムを基準とする正極電位3.9V以上で実施する請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  8. 前記ドープ工程の後に、前記正極活物質層に存在する正極活物質が酸化される充電を、リチウムを基準とする負極電位Vchargeまで実施する場合、前記ドープ工程後におけるリチウムを基準とする負極電位Vdopedと、前記ドープ工程前におけるリチウムを基準とする負極電位Vundopedと、前記負極電位Vchargeとの関係が、Vdoped≦(Vundoped+Vcharge)/2を満足する請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  9. アルミニウム製の正極集電箔と前記正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する正極板と、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層と前記負極活物質層の表面に形成されたリチウム層とを具備する負極板と、セパレータと、請求項1の前記一般式(1)及び一般式(2)から選択されるリチウム塩を含有する電解液とを備え、
    前記正極集電箔の表面には、前記正極活物質層が形成されていない正極未塗工部が存在しており、
    前記正極板及び前記負極板はセパレータを挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部と前記負極活物質層の端部とが対面し、
    前記リチウム層は、前記負極活物質層の端部の表面に形成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  10. アルミニウム製の正極集電箔と前記正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを具備する正極板と、負極集電箔と前記負極集電箔の表面に形成された負極活物質層と前記負極活物質層の表面に形成されたリチウム層とを具備する負極板と、セパレータとを備え、
    前記正極集電箔の表面には、前記正極活物質層が形成されていない正極未塗工部が存在しており、
    前記正極板及び前記負極板はセパレータを挟んで対面し、かつ、前記正極未塗工部と前記負極活物質層の端部とが対面し、
    電解液を備えていないリチウムイオン二次電池前駆体であって、
    前記リチウム層は、前記負極活物質層の端部の表面に形成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池前駆体。
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