JP2019198862A - 被膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた発泡性を有し、基材の耐熱保護性能を維持することが可能な被覆形成方法を提供する。【解決手段】本発明の被膜形成方法は、基材に対し、被覆材を塗付してなる被覆材層に、仕上材層を積層する被膜形成方法であって、前記被覆材層は、温度上昇によって炭化断熱層を形成するものであり、前記被覆材は、被膜形成成分(A)としてポリオール成分(A1)及びポリイソシアネート成分(A2)を含み、前記ポリオール成分(A1)として、ポリエーテルポリオール(a1)及びフッ素含有ポリオール(a2)を含むことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、新規な被膜形成方法に関する。
鋼材や、コンクリート、木材、合成樹脂等の基材を火災から保護する目的として、火災時等の温度上昇によって発泡し、炭化断熱層を形成する被覆材が種々提案されている。このような被覆材としては、合成樹脂に、発泡剤、炭化剤、難燃剤等を配合したものが知られている。このような被覆材は、その被膜厚によって、耐熱保護性能が決定されることが多く、目的の耐熱保護性能を得るためには、所定の被膜厚で均一になるように塗付することが重要であり、中でも、合成樹脂の選択が重要となる。
例えば、厚塗り用の被覆材として、ポリオール成分とポリイソシアネート成分からなる組成物に、難燃剤、発泡剤、炭化剤を配合した被覆材が開発されている(例えば、特許文献1)。
特開平5−70540号公報
しかしながら、上記特許文献1の場合、合成樹脂としてアクリル樹脂やエポキシ樹脂を使用した被覆材と比較すると温度上昇時における被膜の発泡倍率が低く、さらには炭化断熱層(発泡層)の灰化や収縮等の問題が生じ、所望の耐熱保護性能を得るには、まだ改善の余地があった。さらに、形成被膜の耐久性、美観性等を高めることを目的として積層される仕上材層との適性が確保できない場合があった。本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、温度上昇時に、安定した炭化断熱層を形成することができ、優れた耐熱保護性能を確保することができるとともに、仕上材層との適性に優れた被膜形成方法を提供することを目的とする。
このような課題を解決するために本発明者らは、基材に対し、被覆材を塗付してなる被覆材層に、仕上材層を積層する被膜形成方法について、被覆材層が温度上昇によって炭化断熱層を形成するものであり、被覆材が、被膜形成成分として特定のポリオール成分、及びポリイソシアネート成分を含むことにより、上記問題を解決し、基材の耐熱保護性能を高め、仕上材層との適性を高めることができることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1. 基材に対し、被覆材を塗付してなる被覆材層に、仕上材層を積層する被膜形成方法であって、
前記被覆材層は、温度上昇によって炭化断熱層を形成するものであり、
前記被覆材は、被膜形成成分(A)としてポリオール成分(A1)及びポリイソシアネート成分(A2)を含み、
前記ポリオール成分(A1)として、ポリエーテルポリオール(a1)及びフッ素含有ポリオール(a2)を含むことを特徴とする被膜形成方法。
2.前記ポリオール成分(A1)の全量に対して、前記フッ素含有ポリオール(a2)を固形分換算で0.1〜30重量%含むことを特徴とする1.に記載の被膜形成方法。
本発明は、基材に対し、特定の被覆材を塗付してなる被覆材層に、仕上材層を積層する被膜形成方法であって、上記被覆材層は、温度上昇によって炭化断熱層を形成することを特徴とする。上記被覆材は、被膜形成成分(A)としてポリオール成分(A1)及びポリイソシアネート成分(A2)を含み、前記ポリオール成分として、ポリエーテルポリオール(a1)及びフッ素含有ポリオール(a2)を併用して含むことにより、火災時等による温度上昇に際し、優れた発泡性を有するとともに、炭化断熱層の灰化・収縮等を抑制して安定した炭化断熱層を形成し、基材の耐熱保護性を高めることがきるとともに、仕上材層との適性にも優れ、美観性を高めることができる。
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
本発明の被膜形成方法は、基材に対し、特定被覆材を塗付し被覆材層を形成後、仕上材層を積層することを特徴とするものである。
本発明の対象となる基材としては、建築物・土木構築物等の構造物、具体的に、壁、柱、床、梁、屋根、階段、天井、戸等の各種基材が挙げられる。このような基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、煉瓦、プラスチック、木材、金属、鉄骨(鋼材)、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜が形成されたもの、何らかの下地処理(防錆処理、難燃処理等)が施されたもの、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。本発明は上記基材の耐熱保護性、美観性等を高めるものであり、特に、鉄骨(鋼材)の耐熱保護性、美観性等を高めるのに最適な被膜形成方法である。
本発明では、上記基材面に対して、特定の被覆材を塗付し被覆材層を形成するものであり、当該被覆材層は、その被膜が火災等の温度上昇(加熱)により炭化断熱層を形成することを特徴とする。本発明の被覆材は、被膜形成成分(A)として、ポリオール成分(A1)及びポリイソシアネート成分(A2)を必須成分として含む。前記ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)は、反応して被膜を形成する成分である。
本発明では、ポリオール成分(A1)として、ポリエーテルポリオール(a1)及びフッ素含有ポリオール(a2)を併用して含むことを特徴とする。これにより、被膜の温度上昇(好ましくは被膜表面温度が200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)によって、優れた発泡性を有するとともに、炭化断熱層の灰化・収縮等を抑制して安定した炭化断熱層を形成し、基材の耐熱保護性を高めることができる。
本発明のポリエーテルポリオール(a1)は、その分子量が、好ましくは1000以上(より好ましくは3000以上20000以下、さらに好ましくは5000以上18000以下、特に好ましくは6000以上15000以下、最も好ましくは6500以上12000以下)である。ポリオール成分(A1)として、このようなポリエーテルポリオール(a1)を含むことにより、被膜の温度上昇(好ましくは被膜表面温度が200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)によって、優れた発泡性を示し、基材の耐熱保護性能を高めることができる。なお、本発明においてポリオール成分(A1)の分子量は、数平均分子量(Mn)であり、ポリスチレン重合体をリファレンスとして用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求めた、いわゆるポリスチレン換算分子量である。
上記ポリエーテルポリオール(a1)は、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール誘導体、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加重合により得られるものである。本発明では、上記多価アルコール類と、エチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドとの付加重合により得られる重合体が好適であり、末端にエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドが付加されたものがより好適である。さらに、上記のポリエーテルポリオールとして、活性水素原子を有する官能基が3つ以上(官能基数3以上)のポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。この場合、硬化性に優れ、安定して被膜を形成することができるため本発明の効果が得られやすい。活性水素原子を有する官能基としては水酸基が好適である。
このようなポリエーテルポリオール(a1)としては、水酸基価が好ましくは3〜150mgKOH/g(より好ましくは5〜100mgKOH/g、さらに好ましくは7〜40mgKOH/g、最も好ましくは10〜30mgKOH/g)である。このようなポリオール成分(a1)を使用することにより、いっそう優れた発泡性を発揮し、基材の耐熱保護性能を高めることができる。なお、本発明において水酸基価とは、固形分1gに含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値(mgKOH/g)であり、「α〜β」は「α以上β以下」と同義である。
また、上記ポリエーテルポリオール(a1)の含有量は、ポリオール成分(A1)の全量に対して、70〜99.9重量%(より好ましくは90〜99重量%)であることが好ましい。
本発明では、ポリオール成分(A1)として、フッ素含有ポリオール(a2)を含むことにより、被膜形成成分(A)の難燃性を高めるとともに、火災等による温度上昇の際には、被膜が優れた発泡性を発揮し炭化断熱層を形成し、高温雰囲気下でも灰化・収縮を抑制することができ、基材の耐熱保護性能を高めることができる。
このようなフッ素含有ポリオール(a2)としては、特に限定されないが、例えば、フルオロオレフィンモノマー、フルオロアルキル基含有アクリル系モノマー等の含フッ素モノマーと、水酸基含有ビニル系モノマーと、必要に応じて他の重合性モノマーとを共重合することにより得られるものである。フルオロオレフィンモノマーしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロオレフィン類、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等が挙げられる。フルオロアルキル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、パーフルオロメチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルメチルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明では、好ましくはテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンから選ばれる1種以上、より好ましくはクロロトリフルオロエチレンを使用することが好ましい。
水酸基含有ビニル系単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
その他の重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー等が挙げられ、必要に応じこれらの1種または2種以上が使用できる。
このようなフッ素含有ポリオール(a2)としては、フッ素含有ポリオール(a2)固形分中のフッ素含有率が、10〜50重量%(より好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは20〜35重量%)であることが好ましい。また、水酸基価が、5〜100mgKOH/g(より好ましくは10〜80mgKOH/g)であることが好ましい。さらに、分子量[数平均分子量(Mn)]が、5000〜100000(より好ましくは8000〜60000)であることが好ましい。このようなフッ素含有ポリオール(a2)を含むことにより、火災等による温度上昇の際には、被膜が優れた発泡性を発揮し炭化断熱層を形成し、高温雰囲気下でも灰化・収縮を抑制することができ、基材の耐熱保護性能を高めることができる。
フッ素含有ポリオール(a2)の含有量は、ポリオール成分(A1)の全量に対して、固形分換算で好ましくは0.1〜30重量%(より好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%)である。この範囲を満たすことにより、基材の耐熱保護性能を高めるとともに、仕上材層との密着性を十分に確保することができる。
さらに、本発明では、ポリオール成分(A1)としてイソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)を含むことが好ましい。イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)としては、イソシアヌレート環(式1)と2以上の水酸基を有する化合物が挙げられ、
Figure 2019198862
(式1)
例えば、イソシアヌル酸トリス(ヒドロキシアルキル)エステル等が使用できる。イソシアヌル酸トリス(ヒドロキシアルキル)エステルとしては、例えば、イソシアヌル酸トリス(2ヒドロキシエチル)、イソシアヌル酸トリス(2ヒドロキシプロピル)、イソシアヌル酸トリス(2ヒドロキシブチル)、イソシアヌル酸トリス(2,3ジヒドロキシプロピル)等のイソシアヌレート環と水酸基を有するアルキルエステルが挙げられる。
また、イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)としては、例えば、イソシアヌレート環を有するアクリルポリオール等も使用できる。このような化合物としては、例えば、アクリルポリオール製造時に、ビニル基、アクリロイル基、チオール基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、及びグリシジル基等から選ばれる反応性官能基を有するイソシアヌル酸誘導体を反応させることにより得ることができる。ここでの反応は、例えば、重合性不飽和二重結合とビニル基、アクリロイル基、またはチオール基、アルコキシシリル基どうし、グリシジル基とカルボキシル基、アミノ基とグリシジル基等の組み合わせを用いればよい。
イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)は、ポリオール成分(A1)中に、好ましくは0.01〜20重量%(より好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%)である。これにより被膜形成成分(A)の硬化被膜の耐熱性をよりいっそう高めることができるとともに、火災等による温度上昇に際し、安定した炭化断熱層を形成することが可能であり、特に高温時における基材との密着性に優れ、炭化断熱層の脱落等を抑制することができる。
本発明のポリオール成分(A1)としては、上記(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分の他に、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシ含有ポリオール、シリコーン含有ポリオール、ひまし油、ひまし油変性ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
本発明のポリイソシアネート成分(A2)としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(pure−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらをアロファネート化、ビウレット化、2量化(ウレトジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化した誘導体等;及び、これらをアルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類等でブロックした、ブロックイソシアネート等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。なお、前述の(a3)成分は、上記(A2)成分とは別異の成分である。
本発明では、ポリイソシアネート成分(A2)として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及び/またはその誘導体(以下「HMDI類」ともいう。)を含むことが好ましい。上記HMDI類の含有量は、ポリイソシアネート成分(A2)の全量に対して、90重量%以上(より好ましくは95重量%以上)であることが好ましい。また、ポリイソシアネート成分(A2)が、HMDI類のみからなる態様も好適である。また、誘導体としては、ビウレット体、及び/またはイソシアヌレート体が好適である。このような場合、形成被膜の硬化性に優れ、温度上昇時には、より優れた発泡性を発揮し、基材の耐熱保護性を高めることができる。
ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)の混合は、ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)のNCO/OH当量比で好ましくは0.6〜3.5(より好ましくは1〜2.5、さらに好ましくは1.1〜1.9)となるような比率で行う。このような場合、硬化性に優れ、所望の厚さで均一な被膜が形成可能であり、火災等による温度上昇等には、より優れた発泡性を有し、安定した炭化断熱層を形成して基材の耐熱保護性能を高めることができる。さらに、形成被膜は、耐久性(例えば、防水性、耐透水性、耐割れ性、下地追従性等)に優れ、初期の外観(美観性)を長期にわたり維持することができるとともに、火災等による温度上昇等には、本発明の効果を十分に発揮することができる。
本発明では、被膜形成成分(A)として、上記ポリオール成分(A1)と上記ポリイソシアネート成分(A2)に加えて、上記(a3)成分及び上記(A2)成分とは別異の成分として、イソシアヌレート環を有する化合物(A3)を含むこともできる。イソシアヌレート環を有する化合物(A3)は、上記ポリオール成分(A1)、及び/またはポリイソシアネート成分(A2)と反応して被膜を形成するもが好ましく、例えば、アルコキシシリル基、カルボキシル基、グリシジル基等の反応性官能基を少なくとも1種以上有するイソシアヌル酸誘導体が挙げられる。この場合、上記ポリオール成分(A1)、及び/または上記ポリイソシアネート成分(A2)として、アルコキシシリル基、グリシジル基、カルボキシル基、アミノ基等を有するものを用いればよい。
上記イソシアヌレート環を有する化合物(A3)の配合量は、上記ポリオール成分(A1)と上記ポリイソシアネート成分(A2)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部(より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部)である。このような場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。
本発明では、ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)の反応を促進する硬化触媒を併用することができる。硬化触媒とはイソシアネート基が反応して硬化するのを促進させる作用を有する物質である。硬化触媒としては、例えば、アミン系触媒、有機金属系触媒、及び無機系触媒等各種が挙げられる。例えば、アミン系触媒としては、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及び、ヘキサメチレンジアミンもしくはこれらの誘導体または溶剤との混合物等が挙げられる。有機金属系触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機金属化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸アルミニウム、オクチル酸錫等の有機金属塩等が挙げられる。無機系触媒としては、塩化スズ等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用でき、溶剤と混合して使用することもできる。本発明では、特に、有機金属系触媒を含むことが好適である。この場合、硬化を促進するとともに、被膜形成成分(A)の硬化性を高めることができ、本発明の効果を高めることができる。
上記被膜形成成分(A)より形成される硬化被膜は、示差熱分析法(DTA法)において発熱ピークを有し、その発熱ピークが200〜400℃(より好ましくは250〜380℃)の温度範囲に極大値を有することが好ましい。このような場合、火災等による温度上昇に際し、発泡性がよりいっそう向上し、優れた炭化断熱層を形成することが可能であり、基材の耐熱保護性を高めることができる。
その作用機構は、限定されるものではないが、例えば、被膜形成成分(A)の硬化被膜は、温度上昇に伴い軟化し始め、その後、ウレタン結合等の分解反応が進行するものである。被膜形成成分(A)の硬化被膜の発熱ピークが上記温度範囲に極大値を有する場合、分解があまり進行せずに被膜が軟化した状態で、効率的に発泡、炭化反応を進行することができるため、発泡性が向上し、さらには炭化断熱層を安定して形成することができると考えられる。特に、本発明では被膜形成成分(A)が、ポリオール成分(a1)として、フッ素含有ポリオールを含むことにより、硬化被膜の発熱ピークを高温側にシフトさせることができる。これにより、硬化被膜の難燃性を高め、200℃未満での分解を抑制することができ、本発明の効果を十分に発揮できるものと考えられる。
なお、本発明において、被膜形成成分(A)の硬化被膜の示差熱分析法は、上記ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)を含む硬化被膜を試料として測定したものである。示差熱分析法は、示差熱分析装置(例えば、「示差熱天秤 Thermo plus EVO2 TG−DTAシリーズ」Rigaku社製、等)を用いて測定したものであり、白金のサンプルパンに試料を3±1mg取り、標準物質としてα−アルミナを使用し、昇温速度20℃/分で、100〜900℃まで変化させて測定したものである。
さらに本発明の被覆材には、上記被膜形成成分(A)とは別異の成分として、例えば、発泡剤(B)、炭化剤(C)、難燃剤(D)、及び充填剤(E)等を含むことができる。
発泡剤(B)としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾビステトラゾーム及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。発泡剤(B)の含有量は、上記被膜形成成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部(より好ましくは20〜150重量部)である。なお、本発明の発泡剤(B)は、火災時等の温度上昇によって被膜に発泡作用を付与するものであり、具体的には、被膜表面の温度が好ましくは200℃以上となった場合に発泡作用を付与するものである。
炭化剤(C)としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。炭化剤(C)の含有量は、上記被膜形成成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部(より好ましくは20〜120重量部)である。なお、本発明の炭化剤(C)は、火災時等の温度上昇によって、上記被膜形成成分(A)の炭化とともに脱水炭化することにより、炭化断熱層を形成する作用を付与するものである。
難燃剤(D)としては、例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、塩素化パラフィン、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、リン酸ホウ素、ポリリン酸ホウ素、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、難燃剤(D)として、例えば、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、またはポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩とピロ硫酸ジメラムとの複合化合物等から選ばれる少なくとも1種以上のリン化合物を含むことが好ましく、さらには、ポリリン酸アンモニウムとこれらを併用して含むことも好ましい。難燃剤(D)の含有量は、上記被膜形成成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは100〜1000重量部(より好ましくは200〜800重量部)である。
充填剤(E)としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、粘土、クレー、シラス、マイカ、珪砂、珪石粉、石英粉、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。充填剤(E)の含有量は、上記被膜形成成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは3〜200重量部(より好ましくは5〜150重量部)である。
さらに、本発明では、上記成分に加えて金属水和物(F)、繊維(G)等を含むこともできる。金属水和物(F)は、温度上昇時に、脱水反応等による吸熱性を示すものであり、上記充填剤(E)とは異なるものである。このような金属水和物(F)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、金属水和物(F)の平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μm(より好ましくは0.2〜15μm、さらに好ましくは0.3〜8μm、最も好ましくは0.4〜3μm)である。金属水和物(F)の含有量は、上記被膜形成成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは1〜200重量部(より好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは25〜80重量部)である。
本発明では、充填剤(E)と金属水和物(F)を併用することが好ましく、この場合、充填剤(E)と金属水和物(F)は重量比1:9〜9:1(より好ましくは2:8〜8:2)とすることが好ましい。この場合、発泡性、特に高温下における炭化断熱層の収縮等を抑制し、安定した炭化断熱層を形成することができるため、本発明の効果を高めることができる。なお、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって測定される。
繊維(G)は、厚塗り性を高め、被膜のひび割れを抑制することができる。また、繊維(G)は、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができるとともに、被膜内部の熱伝導性を高めることができる。その結果、優れた発泡性を示し、均一な炭化断熱層を形成して、基材の耐熱保護性能を高めることができる。このような繊維(G)としては、例えば、アクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、銅アンモニア繊維(キュプラ)、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、パルプ繊維、ビスコースレーヨン、ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリクラール繊維、ボリノジック繊維、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維等の有機質繊維、炭素繊維、ロックウール繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ−アルミナ繊維、スラグウール繊維、セラミックファイバー、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
本発明では、繊維(G)として、無機繊維を含むことが好適であり、中でも、ロックウール繊維、スラグウール繊維、ガラス繊維、セラミックファイバー等の人造鉱物繊維が好適である。これにより、被膜のひび割れをよりいっそう抑制することができる。さらに、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができるとともに、被膜内部の熱伝導性をいっそう高めることができる。その結果、被膜内部(芯部)まで優れた発泡性を示し、より均一で優れた強度を有する炭化断熱層を形成し、基材の耐熱保護性能をよりいっそう高めることができる。
また、繊維(G)の大きさ(繊維長及び繊維径)は、被覆材の性能、適用基材、塗付具等の仕様に応じて設定すればよく、平均繊維長は、好ましくは10〜1000μm(より好ましくは15〜800μm、さらに好ましくは20〜600μm)、平均繊維径は、好ましくは0.5〜10μm(より好ましくは1〜8μm)の範囲内であることが好適である。また、そのアスペクト比(繊維長/繊維径)は、好ましくは3〜300(より好ましくは5〜200)である。上記範囲を満たす場合、厚塗り性が高まり、形成被膜の割れが生じ難くなるとともに、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができ、安定した炭化断熱層を形成することができる。繊維(G)の含有量は、上記被膜形成成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.5〜30重量部(より好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは2〜20重量部)である。
本発明の被覆材は、さらに高沸点化合物(H)を含むことが好ましい。高沸点化合物(H)は、20℃において液体であり、沸点が100℃以上(より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上)の高沸点液状化合物である。このような高沸点化合物(H)を含むことにより、上記(B)成分〜上記(G)成分等の粉体成分の分散安定性等を高めることができる。また、密着性にすぐれた良好な被膜を形成、特に被膜の弾性が向上し被膜の割れ等を防止することができる。さらに、その被膜が火災等によって高温に曝された場合には、被膜の適度な軟化に寄与し発泡性をよりいっそう高め、形成した炭化断熱層の脱落(剥離)等を抑制し、基材の耐熱保護性能を高めることができる。
高沸点化合物(H)としては、上記を満たすものであれば特に限定されず、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル化合物;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ビス(ブチルジグリコール)、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル化合物;アジピン酸−1,3ブチレングリコール系ポリエステル、アジピン酸−1,2プロピレングリコール系ポリエステル等のアジピン酸系ポリエステル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジイソノニル、マレイン酸ジイソデシル等のマレイン酸エステル化合物;リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸−2エチルヘキシルジフェニル等のリン酸エステル化合物;
トリス−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメット酸エステル化合物;メチルアセチルリジノレート等のリシノール酸エステル化合物;エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリル、エポキシ化脂肪酸ブチル、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ系エステル化合物;安息香酸グリコールエステル等の安息香酸系エステル化合物;1−フェニル−1−キシリルエタン、1−フェニル−1−エチルフェニルエタン等の芳香族炭化水素化合物、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、石油樹脂(炭素原子数が8〜10である芳香族炭化水素留分重合物)とスチリルキシレン等の混合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
本発明では、高沸点化合物(H)として、フタル酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、さらには、アルキル基の炭素数が4〜11(より好ましくは5〜10、さらに好ましくは6〜9)のフタル酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。その具体例としては、例えば、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソノニル等が好適である。
高沸点化合物(H)の含有量は、上記被膜形成成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは5〜150重量部(より好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは15〜80重量部)である。上記範囲を満たす場合、上記粉体成分の分散性が高まり、厚塗り性に優れ、火災等による温度上昇の際には、優れた発泡性を有し、基材の耐熱保護性能を維持する効果を十分に発揮することができる。さらには、優れた仕上材層との適性を得ることができる。
その他、添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、希釈溶媒等が挙げられる。
このうち酸化防止剤としては、例えば、リン系、硫黄系又はヒンダード型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような酸化防止剤を含むことにより、平常時だけでなく、火災等による温度上昇に際しても被膜の劣化を抑制することができ、温度上昇によって形成される炭化断熱層の性状を高めることができる。
本発明の被覆材は、上記ポリオール成分(a1)を含む主剤、及び上記ポリイソシアネート成分(a2)を含む硬化剤を有する2液型の被覆材であることが好ましい。すなわち、流通時には主剤と、硬化剤とを、それぞれ別のパッケージに保存した状態とし、使用時(塗付時)にこれらを混合すればよい。この場合、上記発泡剤(B)、上記炭化剤(C)、上記難燃剤(D)、及び上記充填剤(E)(さらには、上記金属水和物(F)、繊維(G)、高沸点化合物(H)、硬化触媒)はそれぞれ、主剤と硬化剤の少なくとも一方に混合すればよいが、本発明では主剤に混合することが好ましい。また、主剤と硬化剤の混合時に、各成分を添加することもできる。
本発明の被覆材を基材に塗付する際には、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、ローラー、刷毛、こて等の塗付具を使用して、1工程ないし数工程塗り重ねて塗付すれば良いが、1工程あたりの乾燥膜厚が好ましくは400μm以上(より好ましくは500〜5000μm)となるように塗付することが好ましい。特に、本発明では被覆材に高圧(例えば10〜30MPa)をかけ、エアレススプレー塗装することが好適である。これにより、被覆材の塗着効率に優れ、飛散によるロス等も生じ難く、少ない塗工工程で厚膜を形成することができる。最終的に形成される被膜厚は、所望の機能性、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.4〜5mm程度である。また、本発明の被覆材は、上記(A1)成分と上記(A2)成分の反応により被膜を形成するため硬化性に優れており、その乾燥は、好ましくは常温、次工程への間隔は、好ましくは5時間以上(より好ましくは10時間以上30日以内)で行えばよい。
また、本発明では、必要に応じて、上記被覆材を塗付する前に、基材に対して、表面処理を行うことや下塗材を塗付することができる。これにより、基材との付着性向上、防食性(防錆性)等を高めることができる。基材の表面処理としては、例えば、溶剤や酸等による表面処理、ディスクサンダー、ワイヤーホイル、スクレーパー、ワイヤーブラシ、サンドペーパー等によるケレン等を行うことができる。
下塗材としては、例えば、シーラー、プライマー、下地調整材、サーフェーサー、パテ等のほか、フラットタイプの塗料も適用できる。これらは、クリヤータイプ又は着色タイプのいずれであっても良い。また、水系・溶剤系のいずれであっても良く、塗装箇所等に応じて適宜選択でき、1種または2種以上を使用することができる。下塗材としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分を含むことが好適であり、上記樹脂成分以外にも、各種添加剤を本発明の効果に影響しない程度に配合することが可能である。このような添加剤としては、例えば、防錆顔料、体質顔料、着色顔料、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
下塗材は、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を用いて塗付することができる。塗付け量は、好ましくは30〜500g/m(より好ましくは50〜300g/m)である。下塗材の塗回数は、基材の表面状態等によって適宜設定すればよいが、好ましくは1〜2回である。
本発明は、上記被覆材により形成される被覆材層(被膜)の上に、仕上材層を積層することを特徴とする。このような仕上材層としては、上記被覆材層が、火災等による温度上昇の際に発泡し、炭化断熱層を形成するのを阻害しないものであれば、特に限定されず、公知の仕上材を積層することができる。このような仕上材層は、上塗材を塗付したり、あるいは各種シート材料を貼着して積層することができる。
上記上塗材としては、クリヤータイプ又は着色タイプ、艶有りタイプ又は艶消しタイプ、硬質タイプ又は弾性タイプ、薄膜タイプ又は厚膜タイプ等のいずれのものも使用することができる。また、水系・溶剤系のいずれであっても良く、所望の目的に応じて適宜選択できる。また、本発明の上塗材としては、樹脂成分を含むことが好ましい。このような樹脂の形態としては、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、水分散型樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。本発明では特に、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
さらに、上記樹脂成分は架橋反応性を有するものであってもよい。樹脂成分が架橋反応型樹脂である場合は、形成被膜の耐水性、耐久性、密着性が高まり、降雨、結露等による被膜の膨れ・剥れの発生や耐熱性能の低下を抑制することができる。このような架橋反応型樹脂は、それ自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。このような架橋反応性は、例えば、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシル基どうし、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。この中でも水酸基−イソシアート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基から選ばれる1種以上の架橋反応型樹脂を含むことが好適である。
上記上塗材の樹脂成分以外の成分として、例えば、着色顔料、体質顔料、骨材等を混合することができる。このような成分を適宜配合することにより、所望の色彩やテクスチャーを表出することができる。着色顔料、体質顔料、骨材等の混合量は、上記被覆材の効果(発泡性、耐熱保護性等)を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは樹脂成分の固形分100重量部に対して、好ましくは1〜2000重量部(より好ましくは5〜1000重量部)である。
本発明では特に、上記着色顔料、体質顔料として、赤外線反射性及び/又は赤外線透過性を有する顔料を使用することが好適である。これにより、耐熱保護性等の効果をよりいっそう高めることができる。
赤外線反射性を有する顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄−マンガン複合酸化物、鉄−銅−マンガン複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マンガン−クロム複合酸化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
赤外線透過性を有する顔料としては、例えばペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
さらに、上塗材には、その他、通常塗料に使用可能な各種添加剤を配合することもできる。このような添加剤としては、例えば増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、繊維類、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、カップリング剤、触媒等が挙げられる。
本発明の被膜形成方法において、上塗材は塗り重ねて塗付、あるいは2種以上の上塗材を積層して塗付することもできる。2種以上の上塗材を積層する場合には、第1上塗材(中塗材)として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂から選ばれる1種以上(特に好ましくは、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等)の樹脂成分を含むことが好ましい。これにより、上記被覆材と上塗材の層間の密着性をよりいっそう高めることができる。さらには、被膜物性に優れた上塗材被膜を形成することができる。
上塗材の塗付は、公知の塗付方法によれば良く、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を用いて塗付することができる。塗付け量は、好ましくは30〜5000g/m(より好ましくは50〜3000g/m)である。上塗材の塗回数は、基材の表面状態等によって適宜設定すればよいが、好ましくは1〜2回である。また、乾燥は好ましくは、常温で行えばよい。
上記シート材料としては、例えば、化粧フィルム、化粧シート、シート建材、壁紙等が挙げられる。また、その厚みは、好ましくは0.01〜30mm(より好ましくは0.05〜20mm)である。これらは、公知の接着剤(粘着剤)等を介して貼着すればよい。
以下に実施例を示して、本発明の特徴をより明確にする。但し、本発明はこの範囲には限定されない。
各原料としては以下のものを使用した。
・被膜形成成分(A)
・ポリオール成分(A1)
表1に示す重量比率で、ポリオエーテルポリオール(a1)、フッ素含有ポリオール(a2)、イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)を混合し、ポリオール成分(A1−1)〜(A1−13)とした。
・ポリエーテルポリオール(a1)
(a1−1):ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの重合体、数平均分子量10000、官能基数3、水酸基価17mgKOH/g、末端エチレンオキサイド付加)
(a1−2):ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドとの重合体、数平均分子量7000、官能基数3、水酸基価24mgKOH/g、末端エチレンオキサイド付加)
(a1−3)ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの重合体、数平均分子量6000、官能基数3、水酸基価28mgKOH/g、末端エチレンオキサイド付加)
(a1−4):ポリエーテルポリオール(プロピレングリコールを開始剤としたエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの重合体、数平均分子量5100、官能基数3、水酸基価33mgKOH/g、末端エチレンオキサイド付加)
(a1−5):ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたプロピレンオキサイドとの重合体、数平均分子量4000、官能基数3、水酸基価43mgKOH/g、末端プロピレンオキサイド付加)
(a1−6):ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたプロピレンオキサイドとの重合体、数平均分子量700、官能基数3、水酸基価225mgKOH/g、末端プロピレンオキサイド付加)
・フッ素含有ポリオール(a2)
(a2−1):3フッ化エチレン共重合体(クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル−ヒドロキシアルキルビニルテーテル共重合体、フッ素含有率27重量%、水酸基価52mgKOH/g、固形分60重量%、芳香族炭化水素溶媒含有)
(a2−2):4フッ化エチレン共重合体(テトラフルオロエチレン−ビニルエーテル−ヒドロキシアルキルビニルテーテル共重合体、フッ素含有率36重量%、水酸基価60mgKOH/g、固形分60重量%、酢酸ブチル溶媒含有)
・イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)
(a3−1)イソシアヌル酸トリス(2ヒドロキシエチル)(水酸基価645mgKOH/g)
Figure 2019198862
・ポリイソシアネート成分(A2)
(A2−1)ビウレット型ヘキサメチレンジイソシアネート(NCO含有量23.5%)
(A2−2)イソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート(NCO含有量23.1%)
・発泡剤(B):メラミン
・炭化剤(C):ペンタエリスリトール
・難燃剤(D1):ポリリン酸アンモニウム
・難燃剤(D2):ポリリン酸メラミン・メラム・メレムの複塩
・充填剤(E):酸化チタン
・金属水和物(F):水酸化アルミニウム(平均粒子径:1μm)
・繊維(G):ロックウール繊維(平均繊維長125μm、平均繊維径4.5μm)
・高沸点化合物(H):フタル酸ジイソノニル(沸点420℃)
・硬化触媒(I):有機金属系触媒
・添加剤1:分散剤、消泡剤等
・添加剤2:可塑剤、希釈溶剤等
(被覆材1〜24)
表2に示す配合に従って、(A1)成分、(B)成分〜(I)成分、添加剤1、2を常法により混合し主剤を調製した。次いで、(A2)成分を混合し被覆材1〜24を得た。表2において、(B)成分〜(I)成分、添加剤1、2の混合量は、(A)成分の固形分100重量部に対する重量部で示している。
Figure 2019198862
(上塗材1)
水性エポキシ樹脂エマルション[ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形型)水分散体、固形分55重量%]100重量部、酸化チタン6重量部、添加剤(消泡剤、増粘剤、造膜助剤、溶剤等)8重量部、水75重量部を常法により混合し主剤を調製した。次いで、アミノ基含有樹脂エマルション[変性脂肪族ポリアミン水分散体、固形分60重量%]57重量部を混合し上塗材Aを製造した。
(上塗材2)
アクリル樹脂エマルション[スチレン−メチルメタクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート−メタクリル酸共重合体の水分散体、固形分:50重量%)100重量部、二酸化チタン30重量部、添加剤(造膜助剤、増粘剤、消泡剤)10重量部を常法にて均一に混合、攪拌し、上塗材Bを製造した。
(実施例1〜23、比較例1〜2)
表3、4に示す被覆材、第1上塗材、第2上塗材の組み合わせに従って、予めさび止め塗装した鋼板(縦150mm×横70mm×厚さ1.6mm)の全面に被覆材をスプレーで塗付(乾燥膜厚1.5mm)し、常温(25℃)で7日間養生させた。次いで、形成された被膜全面に第1上塗材をスプレーで塗付(塗付け量250g/m)し常温(25℃)で1日間養生させ、さらに必要に応じ第2上塗材をスプレーで塗付(塗付け量250g/m)し常温(25℃)で7日間養生させたものを試験体とし、以下の評価を実施した。
<密着性評価>
作製した試験体[I]を、JIS K 5600−5−6に準じた碁盤目テープ法にて密着性を評価した。評価基準は、以下の通りである。また、結果は表3、4に示す。
A:塗膜のはがれが見当たらなかった。
B:塗膜のはがれがほとんど見当たらなかった。
C:塗膜のはがれが一部見られた。
D:塗膜がはがれてしまった。
<耐熱性評価1>
ISO 5660−1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体表面に50kW/mの輻射熱を15分間放射したときの発泡倍率、及び鋼板裏面温度を測定した。各評価基準は以下の通りである。また、結果は表3、4に示す。
(発泡倍率)
AA:発泡倍率35倍超
A:発泡倍率25倍超35倍以下
B:発泡倍率20倍超25倍以下
C:発泡倍率15倍超20倍以下
D:発泡倍率15倍以下
(裏面温度)
AA:430℃未満
A:430℃以上470℃未満
B:470℃以上500℃未満
C:500℃以上550℃未満
D:550℃超
<耐熱性評価2>
ISO 5660−1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体表面に50kW/mの輻射熱を30分間放射したときの発泡倍率、及び鋼板裏面温度を測定し、さらに緻密性、灰化性を評価した。発泡倍率、及び鋼板裏面温度の評価基準は上記耐熱性評価1と同様である。緻密性評価、灰化性評価基準は以下の通りである。また、結果は表3、4に示す。
(緻密性評価)
発泡倍率を測定した試験体を切断し、その断面における炭化断熱層の緻密性を目視にて確認した。評価基準は、緻密性が高いものを「A」、緻密性が低いものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。
(灰化性評価)
上記耐熱性評価2において、輻射熱を30分間放射後に形成された炭化断熱層の断面を確認し、灰化(白色)部分の割合を算出した。評価基準は、灰化の少ないものを「A」、灰化が進行したものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。
実施例1〜10、14〜23は、耐熱性評価1、耐熱性評価2(加熱試験を延長した高温下)のいずれにおいても、発泡性に優れ、安定して炭化断熱層を形成し、さらには炭化断熱層の収縮を抑制することが可能であり、十分な耐熱保護性能を発揮できるものであった。特に、実施例14〜23では、加熱試験を延長した場合において、炭化断熱層の収縮が十分に抑制(発泡倍率の変化が少ない)され、よりいっそう優れた耐熱保護性能を発揮できるものであった。比較例1、2では、発泡性が不十分であり、さらには、加熱試験を延長した場合において、炭化断熱層の収縮が顕著であった。
次いで、耐熱性評価1及び2において、優れた発泡性を示した実施例1〜4、7、8、14〜23において、以下の評価を実施した。
<耐熱性評価3>
(脱落防止性評価)
試験体の被覆材が下側となるように水平に設置し、該試験体の上側25mmの位置にヒーター(ヒーター温度680℃)を設置し、ヒーターにより試験体を加熱し、鋼板から被覆材が脱落したときの鋼板温度を測定した。評価は次の4段階で行った。結果は表3、4に示す。
A:脱落温度250℃以上
B:脱落温度220℃以上250℃未満
C:脱落温度200℃以上220℃未満
D:脱落温度200℃未満
さらに、被覆材14〜23において、以下の評価を実施した。
<厚膜化評価1>
予めさび止め塗装した鋼板(縦150mm×横70mm×厚さ1.6mm)の全面に被覆材をフィルムアプリケーターにてwet膜厚3mmで塗付し、常温(25℃)で24時間、その後50℃で24時間養生させて、乾燥膜厚を測定し、膜厚の変化を確認した。評価基準は以下の通りである。
A:膜厚減少率が15%未満
B:膜厚減少率が15%以上30%未満
C:膜厚減少率が30%以上45%未満
D:膜厚減少率が45%以上
<厚膜化評価2>
厚膜化評価1において、形成した被膜の状態を目視にて確認した。評価基準は、均一な被膜を形成したものを「A」、被膜にひび割れが生じたものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。結果は表4に示す。
Figure 2019198862
Figure 2019198862

Claims (2)

  1. 基材に対し、被覆材を塗付してなる被覆材層に、仕上材層を積層する被膜形成方法であって、
    前記被覆材層は、温度上昇によって炭化断熱層を形成するものであり、
    前記被覆材は、被膜形成成分(A)としてポリオール成分(A1)及びポリイソシアネート成分(A2)を含み、
    前記ポリオール成分(A1)として、ポリエーテルポリオール(a1)及びフッ素含有ポリオール(a2)を含むことを特徴とする被膜形成方法。
  2. 前記ポリオール成分(A1)の全量に対して、前記フッ素含有ポリオール(a2)を固形分換算で0.1〜30重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の被膜形成方法。




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