本発明は、複数の高分子誘電体層と複数の金属電極層とが交互に積層され、相互に結着一体化されている薄膜高分子積層コンデンサ素子を、水蒸気不透過性の外装に気密封止してなることを特徴とする有機高分子コンデンサにある。
本発明の有機高分子コンデンサは、誘電体が有機高分子(有機高分子であるが、簡単のために高分子ともいう。)からなることを特徴とするコンデンサである。用いられる高分子としては、代表的には、熱硬化性樹脂であるビニル系樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができるが、これらに限定されない。誘電体が熱硬化性樹脂であると、耐熱性が高いので、また薄膜高分子積層コンデンサ素子の生産性、連続生産性の観点から好ましい。熱硬化性のビニル系樹脂、アクリル樹脂は融点がなく、熱分解温度は約400℃以上であり、ガラス転移温度は約180℃以上、さらには約200℃以上であることが可能であり、連続使用可能温度は約125℃以上、さらには150℃以上であることができる。
本発明の有機高分子コンデンサは、電極が金属からなることを特徴とするコンデンサである。用いられる金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、スズなど、またはそれらの合金を挙げることができるが、これらに限定されない。アルミニウムは好ましい金属電極材料である。
本発明の有機高分子コンデンサは、複数の高分子誘電体層と複数の複数の金属電極層(内部電極)とが交互に積層され、相互に結着一体化されている薄膜高分子積層コンデンサ素子を含むことを特徴とする。所謂フィルムコンデンサでは、電極金属が誘電体フィルムに対してメタライズされて電極金属と誘電体フィルムとが結着一体化されていてもよいが、誘電体フィルム単体またはメタライズド誘電体フィルムそれ自体は単体のフィルム(シート状)であり、コンデンサ素子の多層構造を形成するに当たって、そのフィルム(シート状)が巻回されるにしろ、積層されるにしろ、フィルム同士はお互いに別体であり、分離可能であり、誘電体フィルムとその両側の金属電極層の金属とが結着一体化していることはない。一方、本発明の薄膜高分子積層コンデンサ素子は、複数の誘電体層と複数の金属電極層(内部電極)とが交互に結着しながら積層されていることを特徴とする。複数の誘電体層と複数の金属電極層とが交互に結着一体化して積層されることにより、誘電体層と金属電極層との両方を薄膜として形成できるのでコンデンサを薄く(小型化)でき、また誘電体層と金属電極層とからなる容量層を保持するために外装を必要としないのでコンデンサを小型化できるとともに、誘電体層と金属電極層との均一性、したがって、コンデンサの品質の安定性においても優れており、さらに上記のような連続積層法を適用可能であるので生産性においても優れる特徴を有する。
このような薄膜高分子積層コンデンサ素子では、有機高分子は水蒸気を吸収透過する性質があるので、水蒸気が高分子誘電体層を浸透して電極金属(例えば、アルミニウム)との界面に達すると、その界面では電極金属は有機高分子と酸化被膜なしで直接に接しているので、水蒸気が電極金属と反応して金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム)を生成し、この酸化反応が金属電極層の厚み方向に進行して金属酸化物が金属電極層を貫通するに至ると、金属電極層がその部分で破壊されて、コンデンサが劣化(容量低下)、破壊される。このような薄膜高分子積層コンデンサ素子は、水蒸気透過性ではあるが、通常の大気中の温湿度条件下ではあまり問題なく使用でき、十分な寿命を有するが、車載用のように高温多湿になり得る温湿度条件下では、高温多湿条件下で誘電体である有機高分子の水蒸気透過が増加するために、コンデンサ素子の寿命が顕著に短くなり、車載用のように高温多湿条件では到底実用できないと考えられていた。
しかしながら、本発明者は、薄膜高分子積層コンデンサ素子の耐温湿性が、従来の知見からは全く予想外に、水蒸気不透過性の外装に気密封止することによって、従来可能とは考えられていなかった車載用途に耐えるものとなるばかりか、その耐久性の高さ、寿命の長さがこれまた全く予想を超えて優れることを発見した。
本発明者は、薄膜高分子積層コンデンサ素子に従来フィルムコンデンサの外装に用いられているエポキシ樹脂を適用して外装したが、85℃85%RHの条件では容量が約300時間で急激に低下し、500~1000時間で容量はほぼゼロになり、車載用に期待される1000時間の寿命(用途によるが容量変化率が5〜10%以下程度)には到底及ばないこと、にもかかわらず、セラミックパッケージやハーメチック封止を用いたケースによって水蒸気不透過性の外装で気密封止を施すと、上記のごとく、85℃85%RHなどの最近車載用に求められている厳しい条件においても、1000時間は言うに及ばず、3000時間、さらには7000時間あるいはそれ以上でも耐久できる(容量変化率が例えば±5%以内、さらには±3%以内、±2%以内、±1%以内)という驚くべき結果を実現できることを見出し、本発明の有機高分子コンデンサを完成した。
さらに、本発明により薄膜高分子積層コンデンサ素子を水蒸気不透過性の外装で気密に封止した高分子コンデンサでは、薄膜高分子積層コンデンサ素子自体の保護層を省略したり薄くして、外装に保護機能を持たせることで、サイズやコストの無駄なアップを防止できる;誘電体層を熱硬化性樹脂にすることで、従来のフィルムコンデンサと比べて耐熱性に優れ、より高温で使用可能である;コンデンサへの印加電圧が高いとコンデンサの劣化が速くなるという問題があり、従来、印加電圧を直流破壊電圧の1/3以下程度に制限せざるを得なかったが、本発明によれば、印加電圧を直流破壊電圧の1/3を超えても、また1/2を超えても、高温高湿度下で従来と同様以上の寿命を確保できる、などの効果もある。さらに、印加電圧を直流破壊電圧の3/5を超え、2/3を超え、3/4を超えるようにしてもよい。ただし、印加電圧が低いこと自体は問題ではないので、印加電圧を直流破壊電圧の1/3以下、1/2以下、3/5以下、2/3以下、3/4以下にしてもよい。
本発明の有機高分子コンデンサは、85℃85%RHの耐久試験で容量変化率が±10%以内、±5%以内、あるいは±3%以内の耐久寿命が1000時間以上、3000時間以上、5000時間以上、7000時間以上、さらには10000時間以上であることができる。また、150℃の耐久試験で容量変化率が±10%以内、±5%以内、あるいは±3%以内の耐久寿命が1000時間以上、2000時間以上、3000時間以上、5000時間以上、7000時間以上であることができる。さらに、薄膜高分子積層コンデンサ素子の直流破壊電圧の1/3を超え、また1/2を超え、3/5を超え、2/3を超える印加電圧において、85℃85%RH耐久試験において1000時間以上、3000時間以上、5000時間以上、7000時間以上の耐久寿命を有することができる。ただし、薄膜高分子積層コンデンサ素子の印加電圧は、直流破壊電圧の1/3以下、1/2以下、3/5以下でもよい。
(薄膜高分子積層コンデンサ素子)
本発明の有機高分子コンデンサは、高分子誘電体層と金属電極層とが交互に積層され、相互に結着一体化されている薄膜高分子積層コンデンサ素子を含むことを特徴とする。薄膜高分子積層コンデンサは小型チップフィルムコンデンサと呼ばれることもある。以下に、薄膜高分子積層コンデンサを、限定することなく、説明する。
図1は、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の基本構成の例を模式的に示す斜視図であるが、一部破断している。薄膜高分子積層コンデンサ素子1では、例えば、アクリル系ポリマーなどの有機高分子からなる誘電体層2と、例えば、アルミニウムなどの金属からなる金属電極層(内部電極)3とが交互に積層されている。誘電体層2と内部電極3とは、代表的には、真空槽内に配置した回転ドラム上で、気相法により連続的に交互に堆積されて、積層構造が形成される。有機高分子からなる誘電体層2は、熱可塑性樹脂であれば、回転ドラム上(既に形成した内部電極3上)に有機モノマーを堆積後に、電子線などの放射線または紫外線を照射してあるいは加熱して有機モノマーを重合することで、有機高分子からなる誘電体層2として形成してよい。有機高分子からなる誘電体層2は典型的には熱硬化性樹脂であるが、熱可塑性樹脂を堆積してもよい。内部電極3は、誘電体層2上に金属を蒸着して形成されてよい。真空蒸着法が好ましく用いられるが、スパッタ、CVDなどの他の気相法で各層を堆積してもよい。誘電体層2と内部電極3の形成法は気相法が好ましいが、液相法であっても排除されない。内部電極3上には再び誘電体層2が形成される。このような工程が多数回繰り返されて、誘電体層2と内部電極3との交互積層構造が形成される。
本発明に使用する放射線、紫外線、または熱で硬化する樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を分子内に1個以上有する化合物の単体または混合物、カチオン重合性基を分子内に1個以上有する化合物の単体または混合物などが例示される。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルポリアクリレート樹脂、ポリエステルポリメタクリレート樹脂、エポキシポリアクリレート樹脂、エポキシポリメタクリレート樹脂、ウレタンポリアクリレート樹脂、ウレタンポリメタクリレート樹脂、アクリルポリアクリレート樹脂、アクリルポリメタクリレート樹脂、ビニル系樹脂などが例示される。具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。必要に応じて、硬化促進剤などを併用することができる。
これらの樹脂層を気相堆積法によって形成するに当っては、原料をモノマーあるいはオリゴマ−の形態で供給し、それを回転ドラム上に付着させ、電子線などの放射線または紫外線を照射することによって、あるいは加熱することによって硬化させる。あるいはこれらの手段を組合わせて硬化させても良い。
上記樹脂のモノマーあるいはオリゴマーには必要に応じて、添加剤を加えても良い。このような添加剤としては、光重合開始剤(紫外線による硬化時)、熱重合開始剤(熱硬化時)、酸化防止剤、密着性向上剤などが挙げられる。
本発明の薄膜高分子積層コンデンサ素子は、前述した如く、高分子誘電体層と金属電極層(内部電極)とが交互に積層され、相互に結着一体化されていることを特徴とする。
上記のように、本発明の薄膜高分子積層コンデンサ素子では誘電体層2を、薄く形成できる特長があり、代表的には、0.2μm厚程度にすることが容易である。誘電体層2の厚みは、限定されないが、下限値は0.01μmあるいはそれ以下であることもでき、さらに0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm以上であってよい。上限値は、限定されず、製品仕様に応じて選択できるが、例えば、0.5μm、さらに1μm、5μm、10μmあるいはそれ以上であってもよい。誘電体層2を薄く形成できるので、薄膜高分子積層コンデンサ素子1は小型で、必要な容量を実現することが可能であるという特長を有する。
同様に、内部電極3も薄く形成できるので、誘電体層2の厚みに応じて適当な厚みに形成してよい。内部電極3の厚みは、限定されず、製品仕様や誘電体層2の厚みに応じて選択できるが、下限値は0.001μmであることもでき、さらに0.01μm、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm以上であってよい。上限値は、限定されず、製品仕様に応じて選択できるが、例えば、0.3μm、さらに0.5μm、1μm、2μm、5μmあるいはそれ以上であってもよい。内部電極3も薄く形成できるので、薄膜高分子積層コンデンサ素子1は小型で、必要な容量を実現することが可能であるという特長を有する。
薄膜高分子積層コンデンサ素子1の寸法は、求められる製品特性によるので、本質的な限定ではないが、小型、高容量の特長を生かす観点からは、積層方向から見て、一辺の寸法が、例えば、0.4mm〜20mm、さらには0.5〜10mmであってよい。一般的に、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の形状は、積層方向から見て、外部電極4を形成された方向の寸法がそれと垂直な方向より長い矩形をなすが、限定されない。薄膜高分子積層コンデンサ素子1の厚さは、誘電体層2と内部電極3との積層数と関係し、求められる製品特性によるので、限定されないが、例えば、0.3〜10mm、さらには0.5〜5mmであってよい。また、誘電体層2と内部電極3との積層数も、求められる製品特性によるので、限定されないが、例えば、100〜30000層、さらには300〜15000層、1000〜10000層であってよい。
また、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の誘電体層2と内部電極3との積層構造において、誘電体層2と内部電極3とはいずれも、純度及び膜厚のいずれにおいても他のコンデンサに比べて顕著に均一性に優れているとともに、相互に結着一体化されている。そのため、耐ショックノイズ性が優れるなどの特長を有する。また、セラミック多層コンデンサの破壊モードがショートであるのに対して、薄膜高分子積層コンデンサ素子の破壊モードはオープンであるという特長があり、有利である。また、薄膜高分子積層コンデンサ素子は、セラミック多層コンデンサとの比較では、圧電効果に伴う特性変動がなく、周囲温度に対して安定した電気特性を示し、直流バイアスによるインピーダンス変動がなく、電源ノイズ減衰特性に優れ、誘電吸収が小さく、漏れ電流が小さく、高周波歪み率が小さいという特長がある。さらに、薄膜高分子積層コンデンサ素子は、過電圧パルスが印加されて短絡故障が発生しても、短絡部分に電流が集中して発熱し、誘電体及び内部電極が飛散して絶縁が回復する自己回復特性を有し、高い安全性を有している。
図1において、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の積層方向に垂直な方向の一対の両端面のそれぞれに設けた外部電極4のそれぞれ4−1,4−2に内部電極3を一層置きに電気接続するとともに、その内部電極3の外部電極4(例えば4−1)と非接続側の端部は、もう一方の端部の外部電極4(例えば4−2)から絶縁されている。この絶縁は、積層される内部電極3において、金属層の不連続領域であって誘電体からなるマージン領域5によって形成でき、上記の蒸着工程におけるパターニングによって形成してよい。外部電極4は、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の一対の両端面に、メタリコン、スパッタ、メッキ等の堆積方法で形成してよい。メタリコンは溶射された金属であり、コンデンサの業界において、特に積層型コンデンサの外部電極の形成方法として知られている技術である。外部電極4は、従来どおり、例えば、誘電体層2及び内部電極3側から、例えば、真鍮メタリコンなどによる第一層、銅メッキなどによる第二層、スズメッキなどによる第三層のように複数層を重ねて形成してもよい。しかし、本発明の薄膜高分子積層コンデンサ素子1では、後から外装されるので、好ましくは、外部電極4はメタリコンやスパッタなどの気相堆積による第一層だけでよく、液相法であるメッキ層はなくてよい。外部電極4の厚みは、用途にもよるので、限定されないが、例えば、50〜500μm、さらには100〜200μmであってよい。
図2に、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の積層方向に垂直な方向から見た、誘電体層2と内部電極3との積層部分の模式縦断面を示す。薄膜高分子積層コンデンサ素子1は内部に誘電体層2と内部電極3とが交互に積層された容量層6を有する。容量層6において、内部電極3は、上記したように、マージン領域5−1,5−2によってそれぞれ一方の外部電極(図示せず)から絶縁されており、マージン領域5−1,5−2の位置が一層おきにシフトすることで、マージン領域5−1で絶縁された内部電極3−1は図の右側の外部電極(図示せず)に接続され、マージン領域5−2で絶縁された内部電極3−2は図の左側の外部電極(図示せず)に接続される。しかし、内部電極を一層おきに左右の外部電極と接続するためのマージン領域の位置は上記に限定されず、誘電体層の両端面において一層おきに内部電極層を形成しないマージン領域とし、積層体の両端面の誘電体層を選択的に除去して電極引出しを行う際に、誘電体層除去の端面からの深さをマージン領域の端面からの長さより短くすることも可能である。
この容量層6の積層方向のそれぞれの外側(図の上下)には、好ましくは、さらに誘電体層2と、内部電極3(3−1、3−2)と同じ金属(異なる金属でもよいが)による金属層とを交互に数層積層して補強層7が形成されてよい。補強層7における金属層は、容量層6の両端面にある一対の外部電極の間の中央部に金属層がないマージン領域8を有することで、補強層7となる誘電体層と金属層との積層部分が、容量層6としてではなく、容量層6に対する機械的な強度を高める補強層7として機能することができる。本発明の水蒸気不透過性の外装を有する薄膜高分子積層コンデンサ素子では、補強層7は必ずしもなくてもよい。
この補強層7の積層方向のさらに外側には、さらに誘電体層2だけを所定の厚みで堆積して保護層9を形成してもよい。保護層9は、容量層6及び補強層7を外部の衝撃から保護する機能を有する層であり、本発明の水蒸気不透過性の外装を有する薄膜高分子積層コンデンサ素子では、必ずしもなくてもよい。補強層7や保護層9を形成する場合にも、従来の外装を有しない薄膜高分子積層コンデンサ素子と比べて、厚みを小さくできる。補強層7及び/又は保護層9の合計厚みは、例えば、150μm以下、さらには100μm以下、50μm以下であってもよい。しかし、本発明では、150μm以上の厚みで補強層7及び/又は保護層9を有することを排除するものではない。
本発明の薄膜高分子積層コンデンサ素子の構成、形状、寸法などの態様は、薄膜高分子積層コンデンサ素子の小型大容量、軽量という特長を生かすために従来特定の範囲が実用されているが、元々本質的に限定されるものではない。さらに、本発明によって水蒸気不透過性の外装に気密封止される結果として、その用途が拡大されるので、従来実用されている薄膜高分子積層コンデンサ素子の態様から、変形されてもよい。特に、本発明によって、従来より厳しい環境においても実用でき、また他のコンデンサでは実現できていない特性を実現できるので、従来の有機高分子積層型コンデンサと比べて、大型、大容量のコンデンサとしても有利に実用される可能性があること、従って、上記した寸法等よりも大型、大容量のコンデンサとして実用される可能性に留意されるべきである。
上記で説明したような薄膜高分子積層コンデンサ素子の製造方法は知られているので、外装される薄膜高分子積層コンデンサ素子の製造方法それ自体は、基本的に、公知の製造方法と同様の製造方法によることができる。以下では、代表的な製造工程の例を説明する。
図3に、有薄膜高分子積層コンデンサ素子の製造に用いられる装置10の例を模式的に示す。真空槽11の内部に回転ドラム12を有し、この回転ドラム12が一回転する間に、誘電体材料供給装置13から回転ドラム12上に誘電体材料であるモノマー(例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクレレートなどのアクリル系モノマー)を気化させて噴射した後、電子線源14によって回転ドラム12上に堆積された誘電体材料に電子線照射して、モノマーを架橋重合させることで、誘電体層(例えば、熱硬化性のアクリレート系ポリマー)を形成する。上記と同じ製法は熱硬化性樹脂の堆積に好適であるが、架橋基を有しないエチレン性モノマーを用いれば熱可塑性樹脂を堆積できる。また熱可塑性樹脂であれば一工程での堆積もできる。誘電体層の堆積後、さらに回転ドラム12の回転が進むと、パターニング装置15によってマージンを形成してから、金属蒸着装置16によって誘電体層上に金属(例えば、アルミニウム)を蒸着して内部電極層を形成する。内部電極層のパターニングは蒸着時に適当なマスクを用いて行ってもよい。その後再び誘電体材料供給装置13に送られることで、内部電極層上に誘電体層を積層する。このようにして誘電体層と内部電極層との積層構造を形成する。また、有機高分子積層型コンデンサにおける容量層と補強層との区別はマージンの形成によって行い、保護層では金属蒸着を止めて誘電体層を所定の厚さに形成する。マージンの形成方法は、上記のパターニング装置15に代えて、金属蒸着装置16によって金属を蒸着する際にマスクを用いて行うこともでき、このマスクを移動したり交換することで、異なる位置に異なるマージンを形成できる。
先にも述べたが、薄膜高分子積層コンデンサ素子において誘電体層及び金属電極層の形成方法は図3を参照して説明した方法に限定されず、他の気相法、さらには液相法であってもよく、また一部が連続法でなくてもよい。
上記のようにして、回転ドラム12上で積層体をシート状に形成した後、積層体を平坦化してから、切断工程によって、1個の薄膜高分子積層コンデンサ素子の長さを条(ストリップ)幅とする積層体の条(ストリップ)に切断し、電極引出ししてから、その積層体の条の側面に外部電極を形成する。
条(ストリップ)に切断した積層体に、外部電極を形成する。外部電極は、容量層中の多層の金属電極層(内部電極)の集電体であり、コンデンサ素子の容量層の外部にあって、外部との電気的接続に利用される部材である。外部電極の形成は、例えば、積層体の端面から電極を露出させてからメタリコンまたはスパッタなどの堆積によって行ってよい。ここで電極の露出は、積層体の条の側面にある金属電極層(内部電極)を露出させる処理であり、例えば、条(ストリップ)の側面(外部電極形成面)を酸素プラズマ処理することで有機高分子を選択的に除去して行うことができる。メタリコンの金属は、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、またはそれらの合金などが用いられる。メタリコンからなる外部電極は、積層体の側面(両端面)にあって、積層体中の金属電極層の一層おきと電気的に接続された集電体であるが、積層体の側面から積層体の積層方向の表面の一部まで延在されている。外部電極は、積層体の積層方向の表面の一部まで延在することによって、外部電極が構造的に強化されるとともに、積層方向の表面の外部電極は薄膜高分子積層コンデンサ素子の外部接続端子(パッド)4’の役割を担うことができる。外部電極はメタリコン以外の方法で形成してもよい。
外部電極は、メタリコンで形成した後、さらに機械的及び化学的な保護、接合性などの目的からメッキ処理してもよい。例えば、銅メッキ、スズメッキなどを施してよい。しかしながら、前述したように、保護目的のメッキ処理は好ましく省略できる。
積層体の条(ストリップ)の側面に外部電極を形成してから、最終的に個々の薄膜高分子積層コンデンサ素子(チップ)の寸法に切断(個片化)することで、チップ状の薄膜高分子積層コンデンサ素子を製造することができる。
本発明の有機高分子コンデンサは、薄膜高分子積層コンデンサ素子を水蒸気不透過性の外装に気密封止してなることを特徴とし、薄膜高分子積層コンデンサ素子をエポキシ樹脂などで外装することは全く必要ないが、水蒸気不透過性の外装に収容される薄膜高分子積層コンデンサ素子がエポキシ樹脂などで外装されていることを排除するものではない。
(外装)
本発明の有機高分子コンデンサは、薄膜高分子積層コンデンサ素子を水蒸気不透過性の外装に気密封止してなることを特徴とする。本発明者は、薄膜高分子積層コンデンサ素子の耐温湿性が、従来の知見からは全く予想外に、水蒸気不透過性の外装に気密封止することによって、従来可能とは考えられていなかった車載用途に耐えるものとなるばかりか、その耐久性の高さ、寿命の長さがこれまた全く予想を超えて優れることを発見した。
本発明において、水蒸気不透過性の外装とは、高温多湿条件、特に車載用に期待される、例えば、85℃85%RHの条件において、従来フィルムコンデンサの外装に用いられているエポキシ樹脂などの有機高分子と比べて有意に水蒸気透過率が低いことをいう。上記したごとく、従来フィルムコンデンサの外装に用いられているエポキシ樹脂による外装では、85℃85%RHの条件では1000時間の寿命に到底及ばないが、セラミックパッケージやハーメチック封止などの水蒸気不透過性の外装を施すと、85℃85%RHなどの最近車載用に求められている条件における寿命が、1000時間以上は言うに及ばず、3000時間以上、5000時間以上、さらには7000時間以上、8000時間以上、10000時間以上に延長できる。ここで寿命とは、容量変化が±10%以内、好ましくは±5%以内であることをいうが、さらには±3%以内、±1%以内であってよい。
すなわち、本発明において、水蒸気不透過性の外装は、85℃以上の昇温条件の多湿条件で試験して、より好ましくは90℃、100℃、150℃において、85%RH、さらには90%RH、95%RH、100%RHの多湿条件で試験して、水蒸気透過を実質的に防止できるものをいう。具体的には、セラミック、ガラス、金属、サーメット等の無機材料が挙げられる。これらは、元々、室温においてほぼ完全な水蒸気不透過性であるのみならず、車載用において考えられる150℃以下、200℃以下、さらには300℃以下、400℃以下の温度では耐熱性が損なわれることがなく、その水蒸気不透過性も失われない。
また、本発明における水蒸気不透過性は、エポキシ樹脂が室温(例えば40℃)90%RHにおいて示す水蒸気透過率と同じかそれより少ない水蒸気透過率を、上記のような高温多湿、例えば85℃85%RHにおいて実現するものであればよい。フィルムコンデンサの外装に用いられているエポキシ樹脂が40℃90%RHにおいて示す水蒸気透過率は1〜10g・mm/(m2・24h)の程度であるから、上記した高温多湿条件、例えば85℃85%RHにおける水蒸気透過率が、1g・mm/(m2・24h)以下、好ましくは5×10−1g・mm/(m2・24h)以下、10−1g・mm/(m2・24h)以下、10−2g・mm/(m2・24h)以下、より好ましくは10−4g・mm/(m2・24h)以下、さらには10−5g・mm/(m2・24h)以下であればよい。セラミック、ガラス、金属、サーメット等の無機材料は、一般的にこれらの条件を満たし、さらに85℃及び85%RHの条件より温湿度を厳しくして、温度を100℃、120℃、150℃とし、また湿度を90%RH、95%RH、100%RHとの組み合わせの条件においても、上記(1g・mm/(m2・24h)以下など)と同様の水蒸気透過率の条件を満たしていることができる。セラミック、ガラス、金属、サーメット等の無機材料のほか、フッ素樹脂などのように水蒸気透過率が小さい樹脂や樹脂複合材料のうち耐熱性に優れたものが、85℃85%RHにおける水蒸気透過率が上記の条件を満たせば、樹脂や樹脂複合材料であっても、本発明における水蒸気不透過性の外装として使用できる。なお、水蒸気透過率の測定方法はJIS K 7129:2008に準ずることができる。
水蒸気不透過性の外装の厚みは、本発明が目的とする水蒸気不透過性が達成される厚みであればよく、例えば、少なくとも約0.2mm以上、約0.3mm以上、約0.5mm以上、さらには約1mm以上であれば、本発明が目的とする水蒸気不透過性は達成されるが、これらより薄くてもよい。水蒸気不透過性の外装の厚みの上限は、本質的ではなく、寸法やコスト等の観点から、製品ごとに決められてよい。
本発明の有機高分子コンデンサ、より具体的には薄膜高分子積層コンデンサでは、前記したように、特に高温多湿条件下で有機高分子からなる誘電体層に浸透した水蒸気が電極金属と反応して金属酸化物を形成することで、その部分の金属電極層が電極として機能しなくなるために、コンデンサが劣化、破壊されるのであるが、本発明により水蒸気不透過性の外装で気密封止されると、高温多湿条件下においても水蒸気の誘電体層への侵入が実質的に防止される結果として、コンデンサの特性劣化が防止され、寿命が大幅に増加すると考えられる。
また、本発明において薄膜高分子積層コンデンサ素子を外装する水蒸気不透過性の外装材料であるセラミック、ガラス、金属、サーメット等の無機材料は、水蒸気以外の酸素、二酸化炭素、一酸化炭素などの気体も上記の程度の温湿度条件下では実質的に不透過性である。少なくとも本発明の目的である、高温湿度条件下での薄膜高分子積層コンデンサ素子の劣化を促進する気体の透過を防止するという目的では、不透過性であることができる。したがって、例えば、本発明の有機高分子コンデンサを構成する有機高分子からなる誘電体層が酸素によって酸化劣化し、誘電率などの誘電体特性が低下することも防止されるので好ましい。酸素の浸入を抑制することによりコンデンサの特性を維持する試みは従来もなされてきたが、本発明では、外装を実質的に酸素不透過性とすることにより、例えば従来よりも高い温度条件(150℃など)でも、例えば4000時間以上の長時間にわたって容量がほとんど変化しない(例えば容量変化率が±1.5%以内)薄膜高分子積層コンデンサを実現できることが初めて明らかになった。また誘電体層が劣化すると、誘電体層に対する水蒸気の浸透性、透過性も増加するので、この意味でも、外装が酸素不透過性であり、誘電体層の劣化を防止できることは好ましい。また、金属電極層の酸化劣化を防止できるという点でも効果があると考えられる。
また、薄膜高分子積層コンデンサ素子を内装した有機高分子コンデンサの外装が水蒸気不透過性であるか否かは、有機高分子コンデンサについて上記した85℃85%RHなどの高温多湿条件下での耐久試験を行い、容量変化率を調べることによっても確認することができる。内装されている薄膜高分子積層コンデンサ素子それ自体は外装がなければその高温多湿条件で劣化することは明らかであり、確認も容易であるので、有機高分子コンデンサがその高温多湿条件で1000時間以上あるいはそれ以上の長寿命を示すとすれば、外装が水蒸気不透過性であることを意味するからである。
本発明の有機高分子コンデンサの外装は酸素不透過性であることが好ましい。本発明における酸素不透過性についても、水蒸気不透過性についてと同様に、エポキシ樹脂が室温において示す酸素透過率より少ない酸素透過率を、上記のような高温多湿、例えば85℃85%RHにおいて実現するものであればよく、少なくともセラミック、ガラス、金属、サーメット等の無機材料であれば満たされる。フィルムコンデンサの外装に用いられているエポキシ樹脂が室温において示す酸素透過率は10-12〜10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)の程度であるので、本発明の外装の酸素透過率は、例えば、85℃において、10-12cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下、好ましくは5×10-13cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下、10-13cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下、より好ましくは10-14cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下、10-15cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下、さらには10-16cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下であればよい。本発明の外装の酸素透過率は、さらに、例えば、温度が90℃、100℃、120℃、130℃、150℃において、上記(10-12cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下など)と同様の酸素透過率を示すことができてよい。また、酸素透過率は、湿度と直接には関係ない。上記(10-12cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下など)と同様の酸素透過率が85%RH、90%RH、95%RH、100%RHにおいても示されることは好ましいことである。酸素透過率の測定方法はJIS K 7126-1:2006に準ずることができる。
水蒸気不透過性の外装を用いて気密封止するには、水蒸気不透過性材料であるセラミック、ガラス、金属、サーメット等の無機材料で作製した容器内にコンデンサ素子を収容し、その水蒸気不透過性容器を気密封止すればよく、気密封止の仕方としては、気密に封止できる方法であればよいが、例えば、金属やガラスなどの結合剤を用いて、ハンダ、ろう付けしたり、適当な接着剤による接着を採用できる。結合剤も金属やガラスなど水蒸気不透過性材料であることが好ましいが、接着部だけであれば有機高分子の接着剤を用いて本発明に求められる水蒸気不透過性を維持することも可能である。水蒸気不透過性材料の容器としては、半導体装置で実用されているセラミックパッケージと呼ばれる容器(外装)を好ましく用いることができる。また、金属製容器も好ましく用いることができるが、金属製容器を用いる場合には、収容されるコンデンサ素子を金属製容器から気密封止しかつ絶縁する必要があるが、特にガラスを用いたハーメチック封止が好ましく用いられる。金属製容器自体の封止には、圧力締め、溶接、接着なども利用される。
本発明の有機高分子コンデンサでは、薄膜高分子積層コンデンサ素子を収容した水蒸気不透過性の外装の内部空間は、特に不活性ガス雰囲気や真空にする必要はないが、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを封入したり、真空にすることを排除するものではない。
(セラミックパッケージ)
図4に、図1及び図2で説明したような薄膜高分子積層コンデンサ素子1を水蒸気不透過性の外装する例として、セラミックパッケージ101を用いる有機高分子コンデンサ100の一態様を模式横断面で示す。セラミックパッケージは、パッケージの少なくとも主要部またはコンデンサ素子搭載基材がセラミックからなり、パッケージされる電子部品(本発明ではコンデンサ)をセラミックの基材に搭載して、電子部品を収容するパッケージであり、代表的には有底のセラミック容器内に電子部品を収容し、セラミックや金属等の蓋で気密に封止するパッケージである。
図4において、セラミックパッケージ101は、凹部を有するセラミック容器102を有し、セラミック容器102の凹部に薄膜高分子積層コンデンサ素子1を固定して収容する。セラミックパッケージ101は、金属製の蓋103を有し、蓋103はセラミック容器102に対して適当な接合剤(図示せず)で気密封止されている。
セラミックパッケージ101は、例えば、アルミナ、窒化アルミニウムなどのセラミック製であり、耐熱性の絶縁体である。また、セラミックパッケージ101のセラミックは、昇温下でも水蒸気や空気(酸素、窒素、一酸化炭素など)などの気体に対して実質的に不透過性であり、水蒸気透過率は実質的にゼロである。セラミックパッケージ101は、通常焼結により緻密(中実)な材料に作製されると水蒸気や空気に対して不透過性である。セラミックパッケージ101の厚みは、最も薄い部分で、例えば、0.3〜0.5mmが用いられてよいが、これに限定されない。
図4では、セラミック容器102は薄膜高分子積層コンデンサ素子1を搭載する凹部の底を形成する基板部102aと、基板部102a上に積層一体化され、薄膜高分子積層コンデンサ素子1を取り囲んで容器の側面を成す側面部102bとを含む。基板部102aには薄膜高分子積層コンデンサ素子1を取り付ける電極パッド104と、電極パッド104からセラミック容器102の外部まで延在する電気的導通路(配線)105とを有し、電気的導通路105はセラミック容器102の外部においてセラミック容器102の裏側まで延在して、電極パッドなど(図示せず)を有し、セラミックパッケージ101を回路基板等(図示せず)に搭載(接続)できるようにされている。電気的導通路(配線)105は、セラミック製の基板部102aと側面部102bとの間にあり、これらのセラミック部材と同時焼成されて、セラミックと金属が一体化されているので、電気的導通路(配線)105の存在によってセラミック容器102の内外の間の気密性が阻害されることはない。セラミック容器102の裏側など外部まで延在する電気的導通路105は、セラミック容器102の裏側などの外部において、電極パッドや接続端子などの外部接続手段を有することができる(図示せず)。
電極パッド104と電気的導通路105は、半導体装置のセラミックパッケージにおいて知られているものと同様のものを用い、同様に形成することができる。例えば、アルミニウム、銅、さらには金や銀その他の貴金属類を用いることができる。電極パッド104も電気的導通路105は、これらの金属の粉末をバインダーや溶剤と混ぜたペースト状原料を用いてパターンを形成し、焼き付けることで形成することができ、焼き付けはセラミックパッケージの焼き付けと同時でも別途でもよい。あるいは、上記の金属を、気相法でパターン状に堆積したり、メッキにより形成してもよい。
図5は、図4のセラミック容器102の平面図であり、側面部102bの一部は破断されて描かれている。図4において、基板部102a上には電極パッド104と、電極パッド104から側面部102bの縁まで延在する電気的導通路105とを有する。図5では電極パッド104が4つあるが、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の裏側まで延在する外部電極(図1の4、4‘)が直接または間接的にハンダ等で電極パッド104に接合され、機械的に固定されるとともに、電気的に接続される。電極パッド104と電気的導通路105のパターンは図5の例に限定されない。
図4では電気的導通路(配線)105はセラミック容器102の凹部、すなわち、基板部102aの表面に形成されて、基板部102aの端部においてセラミック容器102の外部に導出されているが、セラミック容器102の基板部102aに形成したビアホールに導電材を充填して基板部102aの裏側においてセラミック容器102の外部に導出されるなど、変形可能である。
電極パッド104は、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の2つの外部電極のそれぞれと接続できる2つでもよいが、セラミック容器102と薄膜高分子積層コンデンサ素子1との熱膨張率の差に基づく、熱歪に基づく損傷を低減するために、薄膜高分子積層コンデンサ素子1の4つのコーナー部に分離して形成することが好ましい。
図6にセラミック容器102の平面図を示すが、図6(a)はセラミック容器102の凹部(基板部102a上)に形成した4つの電極パッド104の配置を示し、図6(b)及び図6(c)は電極パッド104上に薄膜高分子積層コンデンサ素子1の外部電極4が図の左右または上下に配置されるように接続する態様を示す。このような電極パッド104によって、冷熱衝撃に強いコンデンサが得られる。ただし、図6(c)の態様では、外部電極4は図の上下にあるので、電気的導通路105もこれに対応して、図6(b)とは異なって形成される。電極パッド104の数、大きさ、配置等、並び内蔵コンデンサ素子の形状や配向等は、外装と内蔵コンデンサ素子の熱膨張率、電気接続、機械的強度を考慮した上で、冷熱衝撃を小さくできるように、適宜変更できる。
図4〜6に示したようなセラミック容器102の製造方法は、半導体装置などのセラミックパッケージにおいて知られている。セラミック粉末と有機バインダーと必要に応じて溶剤とを含む原料から成形したグリーンシートを所定のパターンに切断及び積層して、グリーンのセラミック容器を作成し、その積層の途中あるいは最後に導電性ペーストのパターンを付与してから、グリーンのセラミック容器を焼成してセラミックに変換することで作製できる。
図4に戻ると、セラミック容器102は薄膜高分子積層コンデンサ素子1を搭載し収容した後、蓋103を用いて気密に封止する。蓋103は、リッドとも呼ばれることがあるが、セラミックのほか、ガラスや、ステンレス鋼などの金属製でもよい。セラミック製蓋はセラミック容器と同じまたは同等の物性を有するので好ましいが、金属製蓋は製造コストが低く、またセラミック容器102との封止に金属製のハンダやろう剤などの接合剤を用いる場合には、接合剤との接合性も優れているので好ましい。セラミック容器102と蓋103との接合は金属やガラス等の水蒸気不透過性の材料を用いることが好ましく、ハンダやろう剤によることができる。樹脂は耐熱性が劣るので好ましくないが、セラミック容器102と蓋103と接合部だけであれば、接着剤として用いてよいこともあり得る。金属製ろう付けやハンダはセラミックパッケージにおいて常用されており、信頼性も高いので、好ましい。例えば、セラミック容器102の側面部102bの頂面にタングステン等でメタライズ層を形成し、さらにニッケルや金などのメッキ層を形成するとともに、金属製蓋の下面に銀などの金属層を形成し、セラミック容器102のメッキ層と金属製蓋の金属層とを重ね合わせ、金属製蓋の上部からメッキ層と対応する部分に周状に電子ビームを照射することで、セラミック容器102のメタライズ層/メッキ層と金属製蓋の金属層とが溶融し接合することができる。セラミック製蓋の場合も同様であることができる。また例えば、セラミック容器の側面部の頂面にはシール用リングを形成し、ニッケルなどのメッキが施されたコバール製の蓋などの金属製蓋を重ね合わせてローラ電極により溶接することで、セラミック容器と金属製蓋とを気密封止することもできる。
セラミックパッケージ101、特にセラミック容器102の寸法は、薄膜高分子積層コンデンサ素子1を収容し、機械的強度を保持するとともに、水蒸気不透過性を保持できるものであれば、できるだけコンパクト、小型であることが好ましい。
セラミックパッケージは、上記のほか、任意に変更してもよく、例えば、有底のセラミック容器に代えて平板状のセラミック基体を用い、平板状の蓋に代えて内部に薄膜高分子積層コンデンサ素子を収容できる空間を有する水蒸気不透過性の覆い部材を用いることも可能である。また、セラミック容器102内に複数の薄膜高分子積層コンデンサ素子1を搭載して、直列あるいは並列に電気的に接続してよい。
(ハーメチック封止)
図7に、ハーメチック封止の例として、薄膜高分子積層コンデンサ素子21を金属容器にガラスを用いてハーメチック封止した有機高分子コンデンサ200の例を模式的に示す。以下では、簡便のために、特定の形状や寸法などを参照して、一つあるいはいくつかの例を示すが、本発明の有機高分子コンデンサはこれらの例に限定されないことは明らかである。
図7に示す薄膜高分子積層コンデンサ素子21は、薄膜高分子積層コンデンサ素子211の外部電極の部分にそれぞれ外部端子22が接合されている。薄膜高分子積層コンデンサ素子21は、その外部電極に外部端子22が接合されている点を除いて、図1〜3を参照して説明した薄膜高分子積層コンデンサ素子1と同様であることができるが、外部端子22を接続するために、外部電極はハンダ付けや抵抗溶接が可能な金属層としてよい。
外部端子22は、コバール(鉄ニッケルコバルト合金)、ステンレス鋼、ニッケルと銅とのクラッド材などが好適であるが、例えば、直径約0.4mm、長さ約12mmの丸棒状である。外部端子22は、棒状であることが好適であるが、断面形状は円形でなく、四角形などでもよい。外部端子22の薄膜高分子積層コンデンサ素子21の外部電極への接合は、外部端子22を外部電極に対して溶接することで作製してよい。
ベース23は、冷間圧延鋼、コバール(鉄ニッケルコバルト合金)、ステンレス鋼などの金属が好適である。ベース23は、限定するものではないが、例えば、5.0mm×2.5mmの四隅が丸くされた長方形あるいはトラック状の形状であってよく、厚みは例えば、1.5mmであってよい。ベース23は、外部端子22をハーメチック封止するための小穴を2つ有し、小穴は例えば直径約0.5mmであってよい。なお、ベース23は、板状であることが製造、強度等の観点から好ましいが、凹部を有する形状等であってもよい。
薄膜高分子積層コンデンサ素子21の外部端子22は、ベース23にハーメチック封止で固定されている。外部端子22のベース23に対するハーメチック封止24はガラスによって行ってよい。ハーメチック封止24のガラスは例えば酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化ケイ素などを配合したホウケイ酸塩ガラスでよく、その組成を調整してベース23の金属の熱膨張率と一致させることができる。カーボンなどの組み立て工具を用い、外部端子22に封止用のガラスのリングを通し、これらをベース23の小穴に通して、焼成することで外部端子22とガラスの間、ガラスとベース23との間で、気密かつ強固な金属―ガラス間接合(ハーメチック封止)が形成される。ハーメチック封止24は金属の成分元素である鉄等の酸化物とガラスの界面での金属―ガラス間接合であると考えられるが、理論に限定されない。また、封止ガラスとベース金属あるいは外部端子との熱膨張率は必ずしも一致しなくてもよい。
ケース25は、有底の筒状体であり、薄板の深絞りによって形成されたものでよい。ケース25は、限定するものではないが、例えば、5.5mm×3.0mmの四隅が丸い長方形あるいはトラック状の断面形状、筒の深さ5.0mmであってよい。ケース25は、機械的強度、深絞り性などから、洋白(銅亜鉛ニッケル合金)、白銅(銅ニッケル合金)、冷間圧延鋼、ステンレス鋼などが好適である。ケース25の薄板の厚みは仕上げ後に例えば約0.2mmであり、ニッケルメッキなどを施したものでよい。ケース25の薄板の厚みは、一般的には、少なくとも約50μm以上あればよい、さらには約0.2mm以上であることが好ましいが、限定されない。
ベース23とケース25とは、例えば、圧入接合されてよく、ケース25を熱して膨張させてからベース23をはめ込み、冷却してベース23をケース25に圧入することができる。ベース23をケース25にはめ込むため、ケース25の内側のベース23をはめ込む部分、ケース25の開口端の近くに周状に溝を形成しておくとよい。圧入接合によれば、本発明が目的とする車載用途を含む上記したような高温多湿条件における水蒸気や酸素などの気体の透過を十分に阻止することができる。圧入接合部は鏡面仕上げすることが好ましい。圧入接合は、例えば、1〜2kNあるいはそれ以上の圧入値がよいが、それ以下の圧入値でも大丈夫な場合があってよい。そのほか、ベース23とケース25とをレーザー溶接、抵抗溶接などの方法で接合によっても、水蒸気や酸素などの気体の透過を阻止することができる。レーザー溶接、抵抗溶接で接合するために、ケースの開口部にフランジを形成し、フランジ部分とベースとを溶接したり、フランジ部分とベースの接合部分の厚みを小さくしてもよい。このようにしてケース25とベース23とを気密に接合すると、ベース23とケース25とからなる外装容器内に薄膜高分子積層コンデンサ素子21はフローティングの状態で保持され、薄膜高分子積層コンデンサ素子21はケース25とベース23とから電気的に絶縁され、かつ水蒸気不透過性の外装容器内に気密に封止されている。
ハーメチック封止の態様は、上記に限定されず、例えば、ベースが平板状ではなく、有底ケースの形状で、底にガラス封止のための小穴を有するものでもよい。また、金属ケースやガラス以外でもよい。上記の態様における形状や寸法などが例示にすぎないことは明らかである。
また、本発明の有機高分子コンデンサは、上記した薄膜高分子積層コンデンサ素子、セラミックスパッケージおよびハーメチック封止を用いた外装の態様に限定されない。薄膜高分子積層コンデンサ素子を水蒸気不透過性の外装で気密封止できれば、本発明の有機高分子コンデンサの意外な効果は実現される。
以下に実施例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されないことは明らかである。
(比較例1)
図1及び図2に示すような薄膜高分子積層コンデンサ素子を作製した。
まず図3に示す装置と基本的に同様であるが、金属層のパターニングを蒸着時のマスクで行う装置を用いて、図1及び図2に示すような誘電体層と内部電極層が積層されたシートを形成し、次にこのシートを切断してストリップ(条)A1を得た。このストリップA1の切断面に端面電極を形成した後、チップ状に切断してチップコンデンサBを得た。真空槽内は約10-5Torr(1.33×10-3Pa)程度に保たれ、回転ドラムはその外周面を0℃に冷却維持してある。
誘電体材料としては、放射線重合可能なモノマー、ここでは1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを用い、これを誘電体材料供給装置で気化し100m/min.の速度で連続回転している回転ドラムの外周面上に樹脂モノマー噴霧ノズルで均一に堆積させた。次いで回転ドラム上に堆積されたモノマーに電子線を照射して硬化させ、誘電体層を形成した。
次に、誘電体層上に金属からなる内部電極層を形成した。内部電極層材料としてはアルミニウムを用いた。その方法として、回転するドラムの下方向に設置された金属蒸着装置でアルミニウムを加熱蒸発させ、これを電極パターニングのための金属マスク(図3に図示せず)を通して誘電体層上に蒸着させた。なお、内部電極層パターニングのための金属マスクは、ドラムが1回転するごとにドラム外周面の移動方向に対して垂直方向に移動するようにした。これによって一層ごとに内部電極層のパターンを形成することができた。
以上の操作を、回転ドラムを連続回転させることにより約2000回繰り返し、誘電体層と内部電極層が交互に積層された積層体を形成した。また、最初の50層と最後の50層は樹脂層のみを積層した。一層あたりの厚みは、誘電体層が約1.0μm、アルミニウムからなる内部電極金属含有層が約0.02μmであった。
次に上記のようにしてドラム表面に形成された積層体を切断して取り外したのち、これを加熱しながらプレスすることで、平坦な誘電体層と内部電極層が交互に積層されたシートを得た。これを切断面に沿って切断しストリップA1を得た。
次に酸素プラズマ処理装置を用いて、前記得られたストリップA1の側面を酸素とCF4の混合ガスから発生させたプラズマに接触させて誘電体層を化学的に選択除去し、内部電極層を側面から露出させて、プラズマ処理ストリップA2を得た。酸素プラズマ処理は、誘電体の除去速度0.125μm/minで240分間行い、誘電体層を端面から約30μm後退するようにした。
前記酸素プラズマ処理の後、側面にメタリコンによって外部電極の一部分となる金属層を形成した。メタリコンは電気溶射で行い、金属層は黄銅からなり、厚さ200μmに形成した。
次にメタリコンによって形成された金属層の表面に最外端面電極層として電解めっき法によってSnめっき層を形成した。その後、ストリップA1を切断し、チップコンデンサBを得た。
得られたチップコンデンサBは、積層方向厚み約0.8mm、奥行き約2.0mm、幅(両端面電極間方向)約3.8mmであった。
このようにして作製した比較例1の薄膜高分子積層コンデンサ素子は、静電容量0.68μFである。比較例1の薄膜高分子積層コンデンサの定格電圧を16Vとした。また、薄膜高分子積層コンデンサ素子の絶縁破壊電圧は65Vであった。
比較例1の薄膜高分子積層コンデンサ素子に対し、85℃85%RHの恒温恒湿槽内で定格電圧(16V)を印加する負荷試験を行い、所定の時間ごとに取り出してLCRメータで容量を測定した結果を、図8に示す。図8に見られるように、恒温室内に置くと約100時間経過後に容量が急激に低下し約300時間で容量はゼロになった。
(参考例1)
比較例1で作製した薄膜高分子積層コンデンサ素子と同様であるが、外部電極に外部端子を接合した薄膜高分子積層コンデンサ素子を作製した。外部端子は鉄芯に銅とスズの2層メッキが施されたリード線であり、溶融接合して外部電極に接合した。
この薄膜高分子積層コンデンサ素子に、フィルムコンデンサで実用されているのと同じように、エポキシ樹脂で外装し、参考例1の膜高分子積層コンデンサ素子を作製した。エポキシ樹脂の厚みは約200μmであった。参考例1の薄膜高分子積層コンデンサの定格電圧を16Vとした。
この薄膜高分子積層コンデンサ30を図9に示すが、薄膜高分子積層コンデンサ素子31の外部電極32に外部端子33が接合され、エポキシ樹脂34によって外装されている。
参考例1の薄膜高分子積層コンデンサに対し、85℃85%RHの恒温恒湿槽内で定格電圧(16V)を印加する負荷試験を行い、所定の時間ごとに取り出してLCRメータで容量を測定した結果を、図8に示す。図8に見られるように、恒温室内に置くと約500時間から容量が急激に低下し、1000時間程度で容量はゼロになった。
(実施例1)
比較例1で作製した薄膜高分子積層コンデンサ素子を、図4に示すようなセラミックパッケージに内装した。
セラミックパッケージのセラミック容器は、アルミナ製で、最終の外形平面寸法5.0mm×3.2mm、凹部の基板部の厚さ0.55mm、側面部は凹部を取り囲む壁を形成しており、その壁の厚さが基板部側から第一層が0.5mm、第二層が0.5mm、第一層と第二層の合計の側面部が基板部から立ち上がる高さが1.0mmであり、側面部の内側に形成される凹部(内部空間)は、側面部第一層によって画定される部分が4.1mm×2.3mmの四角形、側面部第二層によって画定される最上部が4.2mm×2.4mmの四角形であった。
セラミック容器の凹部には、図4〜6に示すような、タングステンで形成した0.6mm×0.6mmの4つの電極パッドと、タングステンで形成した幅0.2mmの電気的導通路(配線)を有していた。電極パッドは薄膜高分子積層コンデンサ素子の4つのコーナー部において外部電極と接続するためのパッドである。電気的導通路(配線)は、コンデンサ素子をセラミックパッケージの外部と電気的に接続する部材であり、銀を含む導電性ペーストを用いて形成した。
セラミック容器は、アルミナ粉末とバインダー(アクリル系樹脂)と溶剤(キシレン)とからなるペーストを用いてグリーンシートを形成し、グリーンシート上に導電性ペーストで所定の導電層パターンを形成してから、所定の形状に切断し、積層してから、焼成することによって作製した。
このセラミックパッケージのセラミック容器内の底部の4つの電極パッドに、薄膜高分子積層コンデンサ素子のコーナー部をそれぞれシリコーン系導電性接着剤で接続し、固定した。
セラミック容器の側面部の頂面にはシール用リングを形成し、ニッケルメッキされたコバール製の蓋を重ね合わせてローラ電極による溶接を施し、セラミック容器のシール用リングとコバール製の蓋とを溶接することで、セラミック容器とステンレス鋼製とを気密封止して、薄膜高分子積層コンデンサ素子をセラミックパッケージに気密に内装した。以上のようにして実施例1の有機高分子コンデンサを作製した。実施例1の有機高分子コンデンサの定格電圧を16Vとした。
実施例1の有機高分子コンデンサに対し、85℃85%RHの恒温恒湿槽内で定格電圧(16V)を印加する負荷試験を行い、所定の時間ごとに取り出してLCRメータで容量を測定した結果を、図8に示す。図8に見られるように、恒温室内に置いても、容量は長時間変化がなく、7000時間以上安定であった。この結果は、当業者が予想しているものと大きく異なり、驚くべきものである。
(実施例2)
実施例1と同様にして、実施例2の有機高分子コンデンサを作製した。ただし、実施例2では、有機高分子コンデンサの定格電圧を、従来の2倍以上に相当する35Vとした。実施例2の有機高分子コンデンサに対し、85℃85%RHの恒温恒湿槽内で定格電圧(35V)の電圧を印加する負荷試験を行い、所定の時間ごとに取り出してLCRメータで容量を測定した。その結果を、図8に示す。図8に見られるように、85℃85%RHの負荷試験において、印加電圧を35V(薄膜高分子積層コンデンサ素子の破壊電圧の50%超の電圧)にしても、容量は長時間変化がなく、7000時間以上安定であった。従来の薄膜高分子積層コンデンサ素子(外装のない裸)では、薄膜高分子積層コンデンサ素子の破壊電圧の50%の電圧を印加すると、容量は急激に低下して、好適な寿命が得られないことに鑑みると、この結果は驚くべきものである。
(実施例3)
実施例3は、金属ケースを用い、ガラスによるハーメチック封止をした有機高分子コンデンサの例である。薄膜高分子積層コンデンサ素子は比較例1で作製したものと同様である。
金属製のベースに2つの小穴(直径約0.5mm)が形成され、それぞれの小穴にコバール製の外部端子(直径約0.4mm、長さ約12mmの丸棒状)が通され、さらにベースと外部端子の間がガラスで密封された形状の気密端子を用意し、外部端子の一端を薄膜高分子積層コンデンサの一対の外部電極にそれぞれ溶融接合した。ここで、外部端子とガラスの間、及びガラスとベースとの間は、気密かつ強固な金属−ガラス間接合が形成されている。
ケースは、ステンレス鋼の薄板を深絞りして、5.5mm×3.0mmの四隅が丸い長方形の断面形状、筒の深さ5.0mmの有底の筒状体とした。ケースの薄板の厚みは仕上げ後に約0.2mmであった。ケースを熱して膨張させてからベースをケースの内側の溝にはめ込み、冷却してベースをケースに圧入した。ベースの端面及びケースの溝は鏡面仕上げした。このようにしてケースとベースとを圧入接合によって気密(水蒸気及び酸素不透過性)に接合し、ベースとケースとからなる外装容器内に薄膜高分子積層コンデンサ素子を気密に封止した。薄膜高分子積層コンデンサ素子は金属ケース内にフローティングの状態で保持され、電気的に絶縁されている。以上のようにして実施例3の有機高分子コンデンサを作製した。実施例3の有機高分子コンデンサの定格電圧を16Vとした。
実施例3の有機高分子コンデンサに対し、85℃85%RHの恒温恒湿槽内で定格電圧(16V)を印加する負荷試験を行い、所定の時間ごとに取り出してLCRメータで容量を測定した結果を、図8に示す。図8に見られるように、恒温室内に置いても、容量は長時間変化がなく、7000時間以上安定であった。この結果は、当業者が予想しているものと大きく異なり、驚くべきものである。
比較例1、参考例1、実施例1〜実施例3のコンデンサに対し、150℃の恒温槽内でそれぞれの定格電圧を印加する負荷試験を行い、所定の時間ごとに取り出してLCRメータで容量を測定した結果を、図10に示す。図10から、薄膜高分子積層コンデンサ素子は概して耐熱性に優れていること、及び、実施例1〜3の高分子コンデンサの耐熱性が、比較例1、参考例1の高分子コンデンサの耐熱性と比べて、改良されていることが分かる。