JP2019193602A - アルコール飲料、アルコール飲料の刺激味緩和剤、アルコール飲料の刺激味緩和方法 - Google Patents
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本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、甘みを付与することなくボディ感と香味を増強し、アルコール感の刺激味を低減したアルコール飲料を提供することを目的とする。
本発明のアルコール飲料は、アルコールと、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分(以下、単に「糖カルボン酸」や、「上記成分」と称する場合がある)とを含むものである。
さらに所定の上記成分添加量においては、アルコール由来の刺激味の低減に加えて、アルコール飲料として、好ましい香味をも醸し出される。
本発明のアルコール飲料で用いられるアルコールとしては、エチルアルコールと水とを含む。アルコールは、特に種類、製法、原料等に限定されず、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、日本酒等の醸造酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ、ラム等の蒸留酒等を1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、蒸留酒に糖類等の副原料を混合するリキュール等の混成酒、さらにこれら酒類に果汁やフレーバー、炭酸ガス等を加えたカクテル、フィズ、チューハイ等が挙げられる。
本発明のアルコール飲料は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有する。糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらのうち、香味をマスキングすることなくアルコールの刺激味低減する能力が高い点で、マルトビオン酸、マルトトリオン酸が好ましく、マルトビオン酸がより好ましい。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、ラクトンであってもよい。
また、糖カルボン酸は、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で、アルコール飲料に含まれてもよいものである。
ウオッカであり、アルコール濃度が6v/v%程度の場合は0.5〜9wt/v%であり、好ましくは1〜7wt/v%であり、より好ましくは3〜5wt/v%である。
また、ウオッカであり、アルコール濃度が9v/v%程度の場合では、1〜10wt/v%であり、好ましくは3〜9wt/v%であり、より好ましくは5〜7wt/v%である。
xy平面を仮定したときに、直線y=0.01xと、直線y=2.33xは、互いに原点(x=y=0)で交わるが、両直線(両関数)に挟まれ、かつxとyがともに正である領域(象限)に、上述した蒸留酒及び醸造酒(ウオッカ、ウイスキー、焼酎、及び赤ワイン)のアルコール刺激味低減効果の得られる範囲は、すべて含まれている。
これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。通常、塩類の味質は、マグネシウム塩やカルシウム塩では苦味を、ナトリウム塩は、塩辛さを感じるが、糖カルボン酸はこれら塩の持つ苦味等をマスキングすることができる。アルコール飲料へ、糖カルボン酸塩を配合することで、糖カルボン酸塩の僅かな雑味が、アルコール飲料中ではコクとして感じられ、さらにアルコールの刺激味を低減する。
本発明のアルコール飲料で用いられる炭水化物としては、特に限定されないが、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、はちみつ、水飴、粉飴、マルトデキストリン、ソルビトール、マルチトール、還元水飴、マルトース、トレハロース、黒糖、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明のアルコール飲料は、上記以外の従来公知のいずれの成分を加えてもよく、加えなくてもよい。このような成分としては、例えば、植物エキス、香料、有機酸、乳清飲料、高甘味度甘味料、機能性成分、保存料、安定剤、酸化防止剤、ビタミン類等が挙げられる。これらの成分の添加量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
例えば、果汁としては、リンゴ、バナナ、トマト、セロリ、赤ピーマン、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、パイナップル、レモン、ライム、ウメ、アンズ、モモ、キウイフルーツ、イチジク、ザクロ、アセロラ、サクランボ、シークワーサー、ユズ、スダチ、カボス、キンカン、イヨカン等が挙げられる。果汁含有量としては、アルコール飲料全体に対して0.1〜60wt/v%が好ましく、0.5〜40wt/v%がより好ましく、1〜20wt/v%がより好ましい。
また、茶汁としては、紅茶、緑茶、白茶、黄茶、青茶、黒茶等が挙げられる。
本発明のアルコール飲料は、飲料として適切な濃度になるよう、希釈してよい。希釈には、飲料用として用いられているものであれば特に制限されず用いることができ、特に蒸留水、炭酸水、水素水、お湯を好適に用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、例えば炭酸水と蒸留水によって希釈してよい。
本発明のアルコール飲料におけるアルコール濃度は、特に限定されるものではなく、適宜変更できるが、上述したとおり、アルコール濃度を1〜10v/v%以下とすることで、本発明の効果がより発揮できる。
ここで、アルコール濃度とは、アルコール飲料全体に対する、エチルアルコールの体積濃度(v/v%)である。例えば、スピリッツの一例として、ウオッカを用いる時、40°ウオッカ15mlを用い、水により希釈して合計100mlのアルコール溶液(アルコール飲料)を得る場合には、アルコール濃度は6v/v%と計算される。
本発明のアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を収容することにより、長期間の保管による品質の劣化を防止することができる。なお、容器は密閉できるものであれば特に制限はなく、金属製の缶容器やいわゆる樽型容器を適用することができる。使用する金属は、アルミニウム製、スチール製のいずれも使用することができる。また、収容容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているあらゆるものも適用することができる。なお、金属製の容器は、気体、水、及び光線を遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点で、好ましい。
本発明のアルコール飲料の製造方法を説明する。本発明のアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
混合工程では、混合タンクに、アルコール、水、糖カルボン酸等を投入し、撹拌することで混合溶液を製造する。混合する量については、各構成材料が、上述した含有量となるように選択することができる。
後処理工程では、ろ過、殺菌、容器への充填等の処理を、必要に応じて選択的に行う。なお、ろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、殺菌処理は、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、これに限定されることなく適用可能である。また、充填処理は、埃が混入しないよう、飲料製造用クリーンルームにて充填するのがよい。
なお、製造方法においては、品質管理上必要なサンプリングとサンプリング品の品質検査を行うことができる。
本発明の果汁又は野菜汁含有食品組成物の呈味向上剤は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の成分からなる、アルコール飲料におけるアルコールの刺激味緩和剤である。
本発明のアルコール飲料のアルコールの刺激味緩和剤によれば、上記成分を用いることにより、アルコール飲料のアルコールの刺激味緩和でき、甘みを付与することなくボディ感と香味を増強することで、アルコール由来の刺激味の改善が可能となる。
本発明のアルコール飲料のアルコールの刺激味を緩和する方法は、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、アルコール飲料のアルコールの刺激味を緩和する方法である。
以下の評価試験(試験例1〜4)では、マルトビオン酸シロップ(70wt%)、マルトビオン酸カルシウム(粉末)、及びマルトオリゴ糖酸化物シロップ(70wt%)を用いた。なお、マルトオリゴ糖酸化物シロップ中(HPLC法;固形分換算)には、マルトビオン酸70wt%に加えて、グルコン酸1wt%、マルトトリオン酸15wt%及びマルトテトラオン酸(重合度4)以上のマルトオリゴ糖酸化物14wt%を含む。
マルトオリゴ糖酸化物シロップ(70wt%)が100gの場合は、含まれるグルコン酸を除いて、マルトビオン酸糖カルボン酸及びそのラクトンの成分の総含有量(g)は69gと算出される。
マルトビオン酸カルシウムが100gの場合は、糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンの成分の総含有量(g)は100gと算出される。
試験例1〜4におけるアルコール飲料について、味覚の評価(以下、官能評価ともいう)を行っている。官能評価は、味覚について熟練したパネラ5名により行ない、各パネラが感じた味覚に基づいて、以下の5段階で評価した。このうちA、B、C、Eは、5名のパネラが共通して感じた味覚であり、Dは、5名のパネラに個人差が認められたものである。
A: アルコール感が顕著に低減され、かつ、好ましい香味感と、ボディ感を備え、バランスを有する
B: アルコール感が顕著に低減されており、香味感がある
C: アルコール感が低減されており、ほのかな香味感がある
D: アルコール感低減を感じる、感じないの個人差が認められる
E: アルコール感の低減が感じられない
上記パネラ評価に基づき、A、B、Cは、アルコール感の低減効果が認められると判定し、D、Eは、アルコール感の低減効果が認められない、と判定した。
飲料サンプルは、表1に示したような組成にて、マルトビオン酸 (サンエイ糖化株式会社製)又はデキストリン(商品名NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度3v/v%の乳清アルコール飲料を調製した。具体的には、アルコールとして40°ウオッカ、糖カルボン酸としてマルトビオン酸又はデキストリン、他の成分として、乳性飲料であるカルピス(登録商標)、及び炭酸水を、それぞれ表1の量で計量し、最終的に蒸留水にて100mlに調製した。よく撹拌した後、上述したパネラによる官能評価を行った。
飲料サンプルは、表2に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製)又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度3v/v%のグレープ風味のアルコール飲料を調製し、官能評価を行った。
飲料サンプルは、表3に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製)又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度9v/v%のグレープ風味のアルコール飲料を調製し、官能評価を行った。
飲料サンプルは、表4に示したような組成にて、マルトビオン酸カルシウム(サンエイ糖化株式会社製)をマルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製)と併用配合した、アルコール濃度6v/v%のグレープ風味のアルコール飲料を調製し、官能評価を行った。
飲料サンプルは、表5に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製) 又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度8v/v%のハイボール(アルコール飲料)を調製し、官能評価を行った。
飲料サンプルは、表6に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製) 又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度5v/v%のレモン果汁(1%)含有アルコール飲料を調製し、官能評価を行った。
飲料サンプルは、表7に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製) 又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度10v/v%のサングリア(アルコール飲料)を調製し、官能評価を行った。
研究によれば、アルコールは、4基本味質とは違い、口腔後方で感じるものである。本発明の糖カルボン酸は、食品で主に感じる基本味質とは異なる感受部位に何らかの作用を及ぼしている可能性がある。
Claims (7)
- 重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含む、アルコール飲料。
- アルコール濃度が1〜10v/v%であり、かつ、前記成分を0.1〜10wt/v%含む、請求項1に記載のアルコール飲料。
- 前記糖カルボン酸が、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、及びパノース酸化物からなる群より選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1又は2に記載のアルコール飲料。
- 前記糖カルボン酸が、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれる、請求項1から3のいずれかに記載のアルコール飲料。
- 前記塩類が、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、鉄塩、及び銅塩からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1から4のいずれかに記載の飲料。
- 重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなるアルコール刺激味緩和剤。
- アルコール飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、アルコールの刺激味を緩和する方法。
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