特許文献1に記載された杭打機は、作業装置の昇降方式としてチェーン方式を採用しているため、リーダに対する作業装置の着脱は、作業装置の上下にそれぞれ連結されているチェーンの着脱と、リーダに設けられているガイドパイプと作業装置に設けられているガイドギブとの着脱によって行うことができる。したがって、リーダに作業装置を装着する際には、ガイドパイプにガイドギブを組み付けた後、作業装置にチェーンを連結すればよい。
一方、作業装置の昇降方式としてラックピニオン方式を採用した杭打機の場合は、ガイドパイプへのガイドギブの組み付けと同時に、作業装置に設けられているピニオンを、リーダに設けられているラックに噛み合わせなければならない。さらに、ピニオンとラックとがリーダと作業装置との間に挟まれて隠れた状態になるため、目視での噛み合い状態を確認することが困難であることから、ラックピニオン方式におけるリーダへの作業装置の装着には、作業者の熟練度が必要となっていた。
また、特許文献2に記載された杭打機は、専用の着脱治具を使用して最下部のリーダ部材を着脱するものであり、作業装置は、上部側のリーダに装着されたままとなっており、作業装置の着脱については、特に考慮されていない。
そこで本発明は、作業装置の昇降方式としてラックピニオン方式を採用した杭打機における作業装置の着脱を容易に行うことができる杭打機の作業装置着脱方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の杭打機の作業装置着脱方法は、作業装置に設けたモータによって回転駆動されるピニオンを、ベースマシンの前部に立設されるリーダの前面に設けたラックに噛合させて前記作業装置を前記リーダに沿って昇降させるラックピニオン方式を採用し、前記リーダを上部リーダと下部リーダとに分割形成し、前記上部リーダの下端部後部を前記ベースマシンの前部に設けたリーダブラケットに前後方向に起伏可能に設けるとともに、該上部リーダの下端と前記下部リーダの上端とをフランジ結合によって着脱可能に形成した杭打機における作業装置の着脱方法において、前記ベースマシンから作業装置を取り外す際には、リーダの軸線を鉛直方向に向けた状態で前記作業装置を前記下部リーダの位置まで下降させて作業装置を地上に設置する工程と、前記上部リーダと前記下部リーダとのフランジ結合を解除する工程と、前記作業装置のモータを上昇方向に駆動して下部リーダを下降させる工程とを行うことにより、下部リーダと作業装置とを一体化した状態でベースマシンから分離し、前記ベースマシンに作業装置を取り付ける際には、下部リーダと作業装置とを一体化した状態の下部リーダの軸線を鉛直方向に向けて地上に設置する工程と、上部リーダの軸線を鉛直方向に向けた状態のベースマシンを移動させて上部リーダの軸線と下部リーダの軸線とを一致させる工程と、作業装置のモータを下降方向に駆動して下部リーダを上昇させ、上部リーダのフランジ下面に下部リーダのフランジ上面を当接させて両フランジを結合する工程とを行うことを特徴としている。
本発明の杭打機の作業装置着脱方法によれば、作業装置のモータを作動させる昇降操作によって下部リーダを上下させることで下部リーダと上部リーダとの結合や解除を行うことができ、作業装置を下部リーダと一体化した状態でベースマシンに対する着脱を行うことができる。
図1乃至図3は、本発明の作業装置着脱方法を適用可能な杭打機の一形態例を示している。本形態例に示す杭打機は、作業装置の昇降方式としてラックピニオン方式を採用した杭打機であって、下部走行体11の上部に上部旋回体12を旋回可能に設けたベースマシン13と、前記上部旋回体12の前部に設けられたフロントブラケット14と、該フロントブラケット14を左右方向に傾動させる傾動シリンダ15と、前記フロントブラケット14に起伏可能に設けられたリーダ16と、該リーダ16を上部旋回体12の後部から支持する起伏シリンダ17と、フロントブラケット14の両側にそれぞれ設けられたフロントジャッキ18と、上部旋回体12の後部両側にそれぞれ設けられたリアジャッキ19と、上部旋回体12の中央部に設けられたウインチ20と、前記リーダ16に沿って昇降する作業装置21とを備えている。
前記リーダ16は、前記フロントブラケット14に支軸22によって前後方向に回動可能に設けられる上部リーダ23と、該上部リーダ23の下部にフランジ結合によって着脱可能に連結される下部リーダ24とで形成されており、上部リーダ23は、複数のリーダ部材をフランジ結合によって連結することにより、作業内容に応じた高さを得るようにしている。
また、リーダ16の前面中央には、前記作業装置21に設けられた複数の油圧モータ25によってそれぞれ回転駆動されるピニオン26が両側に噛合するラック27が全長にわたって設けられており、リーダ16の両側前端部には、作業装置21に設けられたガイドギブ28が摺動可能に係合する左右一対のガイドレール29が設けられている。
通常の作業状態では、図2に実線で示すように、上部リーダ23と下部リーダ24とをフランジ結合したリーダ16のガイドレール29にガイドギブ28を係合させて作業装置21をリーダ16の全長にわたって昇降可能に装着した状態とし、作業装置21の油圧モータ25に供給する作動油の経路を切り替えてピニオン26を作業装置上昇方向又は下降方向に回転させることにより、作業装置21を昇降させて杭打ち作業を行う。
作業終了後の杭打機を輸送する際に作業装置21を取り外す必要があるときには、以下の手順によって作業装置21を下部リーダ24と一体化した状態でベースマシン13から分離する。まず、作業装置21を、図2に実線で示す上部リーダ23の前面に上昇している作業状態の位置から、図2に想像線で示す下部リーダ24の最下端まで下降させるとともに、地上に支持部材30を設置して作業装置21の下部を載置し、作業装置21を支持部材30によって作業状態の姿勢で支持する。
前記支持部材30には、下部リーダ24の最下端まで下降させた作業装置21の下面と地面との間隔に対応した高さ寸法を有する矩形状の木材(角材)を使用することができ、必要に応じて角材と板材とを併用することができる。さらに、支持部材30の形状や位置、使用数は任意であり、作業装置21の下面形状に応じて適宜設定することができる。また、リーダ16の軸線を鉛直状態にすることが基本であるが、地面などの状況に応じて傾動シリンダ15や起伏シリンダ17を作動させ、リーダ16を僅かに傾斜させた状態にしてもよい。
次に、作業装置21を支持部材30で支持した状態で、上部リーダ23の最下端のフランジ23aと下部リーダ24の上端のフランジ24aとを結合しているボルト31を全て取り外し、上部リーダ23と下部リーダ24とを分離可能な状態としてから、作業装置21のピニオン26を上昇方向に作動させる。これにより、作業装置21に対して下部リーダ24が下降することになり、図3に示すように、作業装置21を装着した下部リーダ24が上部リーダ23から分離した状態になる。
そして、上部リーダ23を取り付けた状態のベースマシン13を後退させることにより、図1に示すように、作業装置21を下部リーダ24と一体化した状態でベースマシン13から取り外すことができる。その後、上部リーダ23を後方に倒伏させることによってベースマシン13をベースマシン用輸送車による輸送状態にすることができ、下部リーダ24と一体化した作業装置21は、クレーンにて吊り上げ、支持部材30を設置した作業装置用輸送車の荷台に搭載して輸送することができる。
一方、作業現場に輸送されてきた杭打機を組み立てる際には、図1に示すように、支持部材30によって軸線を鉛直方向に向けた下部リーダ24の上方に、軸線を鉛直方向に向けた上部リーダ23が位置するようにベースマシン13を走行させるとともに、上部リーダ23の傾斜状態を調節して上部リーダ23のフランジ23aと下部リーダ24のフランジ24aとを平行にして図3に示す状態にする。
そして、ピニオン26を下降方向に作動させることによって下部リーダ24を上昇させ、両フランジ23a,24aを当接させ、ボルトを30を取り付けて上部リーダ23と下部リーダ24とをフランジ結合することにより、リーダ16を所定の作業状態にすることができる。このとき、作業装置21が下部リーダ24と一体化しており、ピニオン26が下部リーダ24のラック27に噛合した状態になっているので、従来のように、複数のピニオン26をラック27の両側に噛合させる面倒な作業が不要となり、上部リーダ23と下部リーダ24とをフランジ結合するだけで作業装置21を作業状態にすることができる。これにより、輸送後の杭打機を短時間で組み立てることができ、杭打機の使用効率を向上させることができる。
また、上部リーダ23と下部リーダ24とに屈曲連結ピン32が設けられている場合は、フランジ結合用のボルト31の着脱と同時にピン孔33への屈曲連結ピン32の着脱を行えばよい。
なお、ベースマシンから取り外した下部リーダに一体化した作業装置の支持は、専用の支持治具を作成して使用することもでき、木材以外の各種支持部材を使用することもできるが、本形態例で使用したような角材は、人手で簡単に取り扱うことができるので、作業現場で最も好適に利用することができる。