JP2019184875A - 形状記憶合金薄膜アクチュエータ、およびこれを用いたカメラモジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】カメラモジュールのオートフォーカス機構や手振れ補正機構などの小型の駆動機構に使える大きい駆動力と高い応答性を有し、簡単に取り付けることができる形状記憶合金薄膜アクチュエータを提供する。【解決手段】ノッチの入った外枠1がついているために形状記憶合金薄膜アクチュエータの位置決めと設置が容易であり、外枠1の両端を機械の固定部品と可動部品にそれぞれ接着した後にノッチ部3a及び3bで切断することによって、両端に橋渡しされた形状記憶合金薄膜2の強力なアクチュエータを使うことができる。さらに、形状記憶合金薄膜2は高温時に取り付け位置において引っ張り応力が働くように設計されており、ノッチ部3a及び3bの切断後に可動部品をしっかりと固定できる。【選択図】図2

Description

本発明は、カメラモジュールのオートフォーカスや手振れ補正機構などに使える小型部品の駆動用アクチュエータに関する 。
近年、小型カメラのオートフォーカスや手振れ補正用に形状記憶合金ワイヤを使った駆動機構が開発されている。特許文献1にはオートフォーカス機構、特許文献2には手振れ補正機構の例が示されている。特許文献3には、これらの形状記憶合金ワイヤの使用には、(1)駆動力、(2)取り付け性、(3)応答性による制約を受けることが示されており、φ80μm以上では10Hz程度の応答性しか得られず、一方、線径を細くすると応答性は上がるもののφ40μm以下では駆動力が低下して60gf程度の発生力しか得られず、さらにφ10μm以下になると取り付けが困難になることが示されている。
非特許文献1には10原子%を超えるCuと45原子%以上で55原子%以下のTiを含むTi−Ni−Cu合金薄膜は広い組成域に渡って室温以上の安定した変態温度を示し、従来のTi−Ni−Cu合金ワイヤに比べて格段に大きい発生力を有することが報告されている。また、非特許文献2には10原子%Cuを越えるTi−Ni−Cu合金薄膜はTi−Ni合金薄膜に比べて室温で高荷重まで変形しても完全に形状が回復することが報告されている。
非特許文献3ではポリイミド基板の上に成膜した形状記憶合金薄膜上にCuなどの電気抵抗の小さい金属の薄膜を積層することによって電流のバイパス回路や通電端子を形成できることが報告されている。
特開2012−137544号公報 特許第6138969号公報 特開2006−336617号公報
A. Ishida et al.、 J. Alloys and Compounds、 577S(2013)S184 A. Ishida、 Materials Today: Proceedings、 2S(2015)S529 A. Ishida et al.、 Materials Science Forum、 654−656(2010)2075.
従来の形状記憶合金ワイヤでは、駆動力と、応答性及び取り付け性は相反する特性であり、これらの制約の中で折り合いをつけて使用するしかなかった。
そこで、本発明は、従来のオートフォーカスや手振れ補正機構に使われている形状記憶合金ワイヤに比べて発生力が大きくて応答性もよく、また取り付けも簡単な形状記憶合金薄膜アクチュエータの提供を目的としている。
[1]大略矩形形状をした外枠であって、当該外枠の長い辺の少なくとも1か所にV字型の切り込み部分を有しており、当該切り込み部分は設置後に切り離すように構成されていることを特徴として、上記外枠の2つの短辺の間に引張応力が負荷された状態で形状記憶合金薄膜が橋渡しされた形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
[2] [1]において、外枠の両端に形状記憶合金薄膜通電用の端子または配線、あるいは電流バイパス用の積層膜を備えた形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
[3] [1]〜[2]において外枠にSiを用いた形状記憶合金薄膜アクチェータ。
[4] [3]においてSi基板と形状記憶合金薄膜の間にSiO薄膜を挟んだ形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
[5] [1]〜[4]において形状記憶合金薄膜に50原子%以上で55原子%以下のTiと10原子%を超えて20原子%以下のCu、残部をNiおよび不可避的不純物とする、Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いた形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
[6] [1]〜[4]において形状記憶合金薄膜に45原子%以上で50原子%未満のTi、原子%で10+1.6×(50−Tiの原子%)を越えて20+1.6×(50−Tiの原子%)以下のCu、残部をNiおよび不可避的不純物とする、Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いた形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
[7] [1]〜[4]において形状記憶合金薄膜に50原子%以上で55原子%以下のTi、5原子%以上で10原子%以下のCu、残部をNiおよび不可避的不純物とする、Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いた形状記憶合金薄膜アクチュエータ
[8]は、一端をカメラ筐体に固定して他端をレンズユニットに固定した[1]〜[7]の形状記憶合金薄膜アクチュエータを対にしてお互いに拮抗するような形態で配置し、手振れ補正制御回路あるいはオートフォーカス制御回路からの制御信号を前記形状記憶合金薄膜アクチュエータに供給して、レンズユニットをカメラ筐体に対して往復移動させる機能を具備するように構成したカメラモジュール。
[9]は、[8]のカメラモジュールを搭載したことを特徴とするカメラ付き携帯電話。
[10]は、[1]〜[7]の形状記憶合金薄膜アクチュエータを搭載したことを特徴とする電子機器。
[1]によれば、ノッチ(V字型の切り込み)付の外枠が形状記憶合金薄膜の両端を固定するまでの支持枠となり、微小部品への形状記憶合金薄膜アクチュエータの位置決めと設置が容易になる。外枠の両端を静止対象物と可動対象物に固定した後は、ノッチ部分で切断して形状記憶合金薄膜をフリーにすれば、最大4%までの変態に伴う形状記憶合金薄膜の伸縮を使って可動対象物を動かすことができる。また、薄膜に残留した引張応力によって、ノッチを切断して形状記憶合金薄膜を開放した後も、加熱時に取り付けた位置で可動部品をしっかりと固定することができる。
[2]によれば、形状記憶合金薄膜への通電を容易にしたり、固定した対象物側に通電のための端子を集めることができる。また、電流バイパス用の薄膜を形状記憶合金薄膜の上に積層化することにより、アクチュエータ部以外の形状記憶合金薄膜の余分な加熱を防いで消費電力の低下や応答速度の向上が得られる。
[3]によれば、半導体プロセスを利用して、[1]の支持枠と形状記憶合金薄膜アクチュエータを一体化して作ることができるため、大量に安く生産することができる。また、熱ひずみを利用して、形状記憶合金薄膜に付与する引張応力を制御することができる。
[4]によれば、Siの枠と形状記憶合金薄膜の間にSiO薄膜を挿入することにより、界面での脆いNi珪化物の形成を防いで形状記憶合金薄膜と外枠の密着性を向上させることができる。また、Si基板と形状記憶合金薄膜の間の絶縁をとって、電流を形状記憶合金薄膜のみに流すことができる。
[5]〜[7]によれば、Ti−Ni合金ワイヤより変態温度が高くて温度ヒステリシスが小さく、発生力が大きくてかつ応答性に優れた形状記憶合金薄膜アクチュエータを作製することができる。
[5]と[6]の発明によれば、Ti−Ni−Cu合金ワイヤよりも発生力が格段に大きく、また特性の組成依存性が小さいために組成制御が難しいスパッタリングにおいても安定した特性(大きい発生力、高い応答性、高い変態温度)を示す形状記憶合金薄膜アクチュエータを安価で大量に製造することができる。
[7]によれば、[6]に記載の薄膜よりも変態温度が高くて信頼性に優れた形状記憶合金薄膜アクチュエータを得ることができる。
[8]によれば、一端をカメラ筐体に固定して他端をレンズユニットに固定した[1]〜[7]の形状記憶合金薄膜アクチュエータを対にしてお互いに拮抗するような形態で配置することにより、手振れ補正制御回路あるいはオートフォーカス制御回路からの制御信号を前記形状記憶合金薄膜アクチュエータに供給してレンズユニットをカメラ筐体に対して往復移動させる機能を具備するように構成したカメラモジュールを提供できる。
[9]によれば、[8]のカメラモジュールを搭載したことを特徴として、大きい駆動力を有するカメラを備えた携帯電話を提供できる。
[10]によれば、[1]〜[7]の駆動力が大きくて応答性の高いアクチュエータを具備した電子機器を提供できる。
本発明による形状記憶合金薄膜アクチュエータの様々な形態を示す図である。図1A(a)は形状記憶合金薄膜の長手方向に2箇所のノッチを有する最も簡単な外枠付きの形状記憶合金薄膜アクチュエータ、図1A(b)は4箇所のノッチを有する外枠付き形状記憶合金薄膜アクチュエータ、図1(c)は両端に端子台を設けた外枠付き形状記憶合金薄膜アクチュエータ、図1A(d)は複数のアクチュエータを有する外枠付き形状記憶合金薄膜アクチュエータ、図1A(e)は片側に端子台を集めた外枠付き形状記憶合金薄膜アクチュエータ、図1A(f)はアクチュエータ部以外の形状記憶合金薄膜に電流バイパス層を積層させた外枠付き形状記憶合金薄膜アクチュエータを示している。 図1B(g)は外枠の長辺を1本にした形状記憶合金薄膜アクチュエータを示している。 形状記憶合金薄膜の形状を変えて作製した例を示す図である。図2(a)は肩付きの形状記憶合金薄膜アクチュエータ、図2(b)は蛇行した形状記憶合金薄膜アクチュエータを示している。 外枠付き形状記憶合金薄膜アクチュエータの作製例を示す図である。図3(a)は熱酸化させたSi基板上に形状記憶合金薄膜を作製して結晶化熱処理、(b)は希釈したHF/HNOによる形状記憶合金薄膜のパターニング、図3(c)はバッファード硝酸によるSiOの窓開け加工、図3(d)はKOHによるSiの異方性エッチング、図3(e)はバッファード硝酸によるSiOの除去、図3(f)はCuの成膜、図3(g)は希硝酸によるCu膜のパターニングを示している。 手振れ補正機構への本発明のアクチュエータの設置例である。図4(a)はレンズユニットを片方に寄せて外枠付きアクチュエータを設置し、両端を固定部品と可動部品にそれぞれ、接着剤等で固定する。固定後に4か所あるノッチ部分で切断を行って、形状記憶合金薄膜をフリーにする。図4(b)は他の端までレンズユニットを移動させた後、可動部品と固定部品に2個目の外枠付きのアクチュエータの両端を固定した後、4か所のノッチ部分を切断して形状記憶合金薄膜をフリーにする。図4(c)は最初に設置した形状記憶合金薄膜に通電するとレンズユニットは左に移動する。なお、図4では、図面をわかりやすくするために形状記憶合金薄膜の伸縮は誇張されている。実際の伸縮は形状記憶合金薄膜の最大回復ひずみに相当する4%程度である。 Ti51.5Ni33.1Cu15.4合金薄膜と市販のTi50Ni42.8Cu7.2線材の形状記憶特性を比較した図である。(非特許文献1からの抜粋) Ti50.2Ni30Cu19.8合金薄膜とTi51.1Ni48.9合金薄膜の室温における応力−ひずみ曲線を比較した図である。矢印は、変形、除荷後に加熱によって回復したひずみを示す。(非特許文献2からの抜粋)
以下に、図1〜6を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1(a)には外枠1の両端に橋渡しするように形成された記憶合金薄膜2を示す。外枠1には長手方向に沿って2箇所にノッチ3a、3bが入っており、設置後にノッチの箇所で切断して形状記憶合金薄膜2をフリーにすることで形状記憶合金薄膜の伸縮を利用できる。通常の手振れ補正で使う形状記憶合金ワイヤは25μmΦで断面積は490μmなので、5μmの厚さの形状記憶合金薄膜では幅100μmで同等の力を発揮できる。さらに幅を増やせば、応答性を犠牲にすることなく、より大きなパワーを得ることができる。ノッチ3aと3bは図面では水平方向に入っているが、紙面に垂直な方向に入っていてもよい。また、内側にあってもよい。
形状記憶合金薄膜としては、Ti−Ni、Ti−Ni−Cu、Ti−Ni−Pd、Ti−Ni−Hf、Ti−Ni−Zr、Cu−Al−Ni合金などの形状記憶効果を示す合金の薄膜ならなんでもよいが、とりわけ50原子%以上で55原子%以下のTi、5原子%以上で20原子%以下のCu、残部をNiおよび不可避的不純物とする、Ti−Ni−Cu合金薄膜あるいは45原子%以上で50原子%未満のTiと原子%で10+1.6×(50−Tiの原子%)を越えて20+1.6×(50−Tiの原子%)以下のCu、残部をNiおよび不可避的不純物とする、Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いることにより、Ti−Ni合金よりも変態温度が高くて温度ヒステリシスが小さく、発生力が大きくてかつ応答性に優れた形状記憶合金薄膜アクチュエータを作製することができる。
好ましくは、50原子%以上で55原子%以下のTiと10原子%を超えて20原子%以下のCu、残部をNiおよび不可避的不純物とする、Ti−Ni−Cu合金薄膜あるいは45原子%以上で50原子%未満のTiと原子%で10+1.6×(50−Tiの原子%)を超えて20+1.6×(50−Tiの原子%)以下のCu、残部をNiおよび不可避的不純物とする、Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いることにより、特性の組成依存性を小さくすることができて組成制御が難しいスパッタリングにおいても安定した特性(大きい力、高い応答性、高い変態温度)を示す形状記憶合金薄膜アクチュエータを安価で大量に製造することができる(非特許文献1)。また、同じ断面積でも従来のTi−Ni−Cu形状記憶合金ワイヤに比べて大きい発生力を得ることができる。
より好ましくは、50原子%以上で55原子%以下のTiと10原子%を超えて20原子%以下のCu、残部をNiおよび不可避的不純物とする、Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いることにより変態温度がより高くて信頼性に優れた形状記憶合金薄膜アクチュエータを製造できる。
図1(b)は外枠1の長手方向に4箇所のノッチ3a、3b、3c及び3dを入れて、外枠の不要な部分を除去できるようにしたものである。外枠の材料としては、Siまたは金属箔あるいは樹脂が使える。図1(c)は両端にCu、Al、Au、Ag等で端子4aと4bを付設したものである。非特許文献3に開示されているように通常の形状記憶合金はハンダ付けができないが、このような端子を作ることによって形状記憶合金薄膜へのハンダ付けが可能になる。図1(d)は複数の形状記憶合金薄膜に分けた形態である。このように個々のアクチュエータの熱容量を小さくすることにより、冷却速度を早くでき、また薄膜の幅を小さくすることで形状記憶合金薄膜の両端固定部近くでの破断を防ぐことができる。
図1(e)は、端子を固定対象物に取り付ける片側に集めたものである。これにより形状記憶合金薄膜と導線の接合の信頼性を向上させることができ、また可動部品にじゃまな配線をしなくて良いことから、アクチュエータを設置する対象の小型機械の設計の自由度を上げることができる。図1(f)では、さらにアクチュエータとして使わない部分にCu等の電気抵抗の小さい薄膜を成膜することにより、非特許文献3に開示されているように、電流のバイパス回路5a、5b、5cを作って消費電力を下げ、また余分な部分の加熱を防ぐことができて冷却速度を速くすることができる。なお、外枠の長辺は図1(g)に示すように1本の場合もある。
図2には、形状記憶合金薄膜の形状を変えた形状記憶合金薄膜アクチュエータを示す。図2(a)は肩付きの形状記憶合金薄膜アクチュエータであり、破断しやすい形状記憶合金薄膜の根元に肩を付けることで破断を防ぐことができる。図2(b)は蛇行した形状をもつ形状記憶合金薄膜アクチュエータであり、この形状にすることで、形状記憶合金薄膜アクチュエータのストロークを増やすことができる。
図1に示すような外枠付き形状記憶合金薄膜アクチュエータは、例えば図3のような半導体プロセスを利用することによって外枠、形状記憶合金薄膜、ノッチ、端子及びバイパス回路を一体化して作製することができる。図3は作製の1例を示すが、この方法に限定するものではない。図3(a)では、熱酸化によってSi基板7上に作製したSiO膜6aの上にスパッタリングによって形状記憶合金薄膜2を成膜する。成膜後の薄膜はアモルファスであるので400℃以上で結晶化の熱処理を行う。
図3(b)では、形状記憶合金薄膜2の上にネガレジストをスピンコートしてフォトエッチングによるパターニングを行い、レジストをマスクにして形状記憶合金薄膜2の必要としない部分を希釈したHF/HNOでエッチング除去するか硫酸/メタノール混合液などによって電解エッチングする。
図3(c)では同様なフォトリソグラフィー技術を使ってバッファード硝酸によるSiO膜6bの窓開け加工を行い、図3(d)でSiO膜6bをマスクとして、KOHあるいはEDP(エチレンジアミンピロカテコール)によるSi基板7の異方性エッチングによって外枠以外のSi基板を取り除いた後、図3(e)で露出したSiO膜6aをバッファード硝酸で除去することにより形状記憶合金薄膜2の両端が外枠に固定された図1(a)のような構造ができる。この際、形状記憶合金薄膜2は、結晶化熱処理後に残る熱ひずみによってSiの外枠に引っ張られるので、撓むことなく形状記憶合金薄膜を外枠に張ることができる。また、薄膜に残留した引張応力により、ノッチを切断して形状記憶合金薄膜2をフリーにした後も、外枠付きの形状記憶合金薄膜アクチュエータを貼り付けた位置で加熱時に可動部品をしっかりと固定することができる。この付加的な引張応力の大きさは熱処理によって設定でき、最大500MPaの大きい力を付与することもできる。なお、Si基板上のSiO膜は、図3(e)の左半分と右半分で示すように、除去してもよいし、また、残してもよい。SiO膜を残した右半分ではSi/SiO界面での剥離を防ぐことができる。外枠のノッチは、図3(d)に示されたようなSiの異方性エッチングあるいはSFガスを使った等方性エッチングよって作製される。
さらに端子やバイパス回路を付設する場合は、図3(f)のように形状記憶合金薄膜2の上にCu等の電気抵抗の低い薄膜を成膜した後、図3(g)でフォトリソグラフィー技術を使って端子やバイパス回路として残す部分にマスクを施し、不要な部分を希硝酸によって除去する。
図4は、本発明のアクチュエータの手振れ補正機構への設置例である。図4(a)では、レンズユニット9を片側に寄せた状態で、本発明の外枠付きアクチュエータ10aの両端を、それぞれベース11の固定部分と可動レンズユニット9に固定する。固定した後に外枠1をノッチ部分3a、3b、3c及び3dで切断することによって形状記憶合金薄膜2aと2bをフリーにする。図4(b)では、レンズユニット9を片側に移動させて、もう一つの外枠付きのアクチュエータ10bの両端をレンズユニット9とベース11に固定する。この際、最初に設置した形状記憶合金薄膜2aと2bは室温で柔らかいマルテンサイト相になっているので容易に変形する。2つめの外枠付きアクチュエータ10bを固定したら、ノッチ部分3e、3f、3g及び3hで切断して、形状記憶合金薄膜2cと2dをフリーにする。
図4(c)で端子4a、4b、4c及び4dに導線12a、12b、12c及び12dをつなぎ、最初に設置した形状記憶合金薄膜2aと2bに通電加熱を行うと高温相になって元の形状に戻るので、レンズユニット9は左側に戻る。次に最初の形状記憶合金薄膜2aと2bの通電を切って、2番目に設置した形状記憶合金薄膜2cと2dに通電すると、1番目の形状記憶合金薄膜2aと2bはマルテンサイト相になって柔らかくなるが、2番目の形状記憶合金薄膜2cと2dは高相相になって元の形状に戻るので、レンズユニット9は右側に動く。このようにしてレンズユニットは往復運動が可能になる。このような1対の形状記憶合金薄膜アクチュエータ13aと13bによる駆動機構は、カメラユニットの周囲4辺につけられるので手振れ補正に必要なX―Y軸のレンズ移動を可能にすることができる。
図5はスパッタリングで作製したTi51.5Ni33.1Cu15.4合金薄膜(厚さ8μm、幅400μm、長さ5mm)の形状記憶特性を市販のTi50Ni42.8Cu7.2線材(直径50μm)の形状記憶特性と比較(非特許文献1)したものである。線材では100MPaの荷重で塑性ひずみが見られるのに対してTiNiCu合金薄膜では400MPaの大きい応力を負荷しても形状は完全に元に戻る。このことは厚さ8μm、幅400μmのTiNiCu合金薄膜で130gfの力を出せることを意味している。さらに温度ヒステリシスが小さく、変態温度も高いことがわかる。
図6は、Ti51.1Ni48.9合金薄膜とTi50.2Ni30Cu19.8合金薄膜の応力−ひずみ曲線(非特許文献2)を示す。TiNi合金のように形状変化がB19’変態によるものは、大きい力が加わると伸びきってしまい塑性ひずみが導入される。しかし、10原子%を超えるCuを含むTiNiCu合金の変態ひずみはB19変態によるものであり、伸びきって応力が急激に増加する領域においても2段目のB19→B19’変態が起きて、塑性ひずみが発生せず、高温に加熱すると形状は完全に元に戻る。このことは、本発明のように室温で形状記憶合金薄膜をハンドリングする際に、不用意に大きな力を加えても加熱すれば形状が元に戻ることを意味しており、形状記憶合金薄膜アクチュエータの信頼性を高めることができる。
10原子%を超えるCuと45〜55原子%のTiを含むTi−Ni−Cu合金薄膜の変態温度は組成にほとんど依存性しないために、スパッタリングのような組成制御が難しいプロセスにおいても安定して変態温度の高い薄膜が作製できることが知られている(非特許文献1)。そのため、本発明により、バルク材では鋳造性や加工性が悪くて作製できない10原子%を越えるTi−Ni−Cu合金薄膜を用いることによって、10原子%以下のCuを含む従来の形状記憶合金ワイヤよりも大きい力を発生できるアクチュエータをカメラモジュールの駆動機構に利用することができる。
なお、上記の実施例においては、形状記憶合金薄膜アクチュエータとして種々の実施例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業者として、形状記憶合金薄膜アクチュエータとして自明な構造を用いても良い。
本発明の形状記憶合金薄膜アクチュエータは、大きい駆動力と高い応答性を有し、簡単に取り付けることができるので、カメラモジュールのオートフォーカス機構や手振れ補正機構などの小型の駆動機構に使える。
1 外枠
2 形状記憶合金薄膜
2a、2b、2c、2d 形状記憶合金薄膜
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h ノッチ(切り欠き)
4a、4b、4c、4d 端子
5a、5b、5c、5d、5e 電流バイパス回路
6a、6b SiO
7 Si基板
8、8a、8b Cu膜
9 レンズユニット
10a、10b 外枠付き形状記憶合金薄膜アクチュエータ
11 ベース
12a、12b、12c、12d 導線
13a、13b 形状記憶合金薄膜アクチュエータ

Claims (10)

  1. 大略矩形形状をした外枠であって、当該外枠の長い辺の少なくとも1か所にV字型の切り込み部分を有しており、当該切り込み部分は設置後に切り離すように構成されていることを特徴として、上記外枠の2つの短辺の間に引張応力が負荷された状態で形状記憶合金薄膜が橋渡しされた形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
  2. 前記外枠の両端に形状記憶合金薄膜通電用の端子または配線、あるいは電流バイパス用の積層膜を備えた請求項1に記載の形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
  3. 前記外枠にSiを用いた請求項1又は2に記載の形状記憶合金薄膜アクチェータ。
  4. 前記Si基板と形状記憶合金薄膜の間にSiO薄膜を挟んだ請求項3に記載の形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
  5. 前記形状記憶合金薄膜は、組成元素を、
    50原子%以上で55原子%以下のTi、
    10原子%を超えて20原子%以下のCu、
    残部をNiおよび不可避的不純物とする、
    Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いた請求項1乃至4に記載の形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
  6. 前記形状記憶合金薄膜は、組成元素を、
    45原子%以上で50原子%未満のTi、
    原子%で10+1.6×(50−Tiの原子%)を越えて20+1.6×(50−Tiの原子%)以下のCu、
    残部をNiおよび不可避的不純物とする、
    Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いた請求項1乃至4に記載の形状記憶合金薄膜アクチュエータ。
  7. 前記形状記憶合金薄膜は、組成元素を、
    50原子%以上で55原子%以下のTi、
    5原子%以上で10原子%以下のCu、
    残部をNiおよび不可避的不純物とする、
    Ti−Ni−Cu合金薄膜を用いた請求項1乃至4に記載の形状記憶合金薄膜アクチュエータ、
  8. 請求項1乃至7に記載の構造を有する第1および第2の形状記憶合金薄膜アクチュエータであって、
    前記第1の形状記憶合金薄膜アクチュエータは、一端がカメラ筐体に固定され、他端がレンズユニットに固定されると共に、
    前記第2の形状記憶合金薄膜アクチュエータは、一端が前記第1の形状記憶合金薄膜アクチュエータの固定されたカメラ筐体とは反対側の前記カメラ筐体に固定し、他端が前記第1の形状記憶合金薄膜アクチュエータの固定されたレンズユニットとは反対側の前記レンズユニットに固定され、
    手振れ補正制御回路あるいはオートフォーカス制御回路からの制御信号を前記第1および第2の形状記憶合金薄膜アクチュエータに供給して、前記第1および第2の形状記憶合金薄膜アクチュエータのうち一方をマルテンサイト相が主相であるようにし、他方をオーステナイト相が主相であるように調整して、レンズユニットをカメラ筐体に対して往復移動させる機能を具備するように構成したカメラモジュール。
  9. 請求項8のカメラモジュールを搭載したことを特徴とするカメラ付き携帯電話。
  10. 請求項1〜7の形状記憶合金薄膜アクチュエータを搭載したことを特徴とする電子機器。
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