JP2019182900A - 固定砥粒ワイヤーソー用水溶性加工油剤、固定砥粒ワイヤーソー用加工液、切断加工方法および使用済み加工液処理方法 - Google Patents
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RO−[(EO)m(PO)n]−H (1)
(式(1)において、Rは炭素数8以上12以下のアルキル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、mはEOの平均付加モル数を示し、nはPOの平均付加モル数を示し、mは2以上5以下の数であり、nは3以上5以下の数であり、EOおよびPOはランダム付加でもブロック付加でもよい。)。
本発明の固定砥粒ワイヤーソー用水溶性加工油剤は、式(1)で表される化合物(A)を含む。
RO−[(EO)m(PO)n]−H (1)
加工油剤は、化合物(A)の濃度が質量基準で700ppm以上3000ppm以下となるように水で希釈され、本発明の固定砥粒ワイヤーソー用加工液として使用される。
化合物(A)は、式(1)に表されるように、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤である。
加工油剤は、化合物(A)のほか、例えば、水溶性高分子、消泡剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、殺菌剤、および防錆剤のなかの少なくとも一つを含んでいてもよい。ここで、水溶性高分子とは、ポリビニルピロリドンおよびビニルピロリドン由来の構造単位を含む共重合体の少なくとも一方を含むものである。加工油剤がこのような水溶性高分子を含む場合には、加工液の洗浄性が向上する。消泡剤としては、例えば、シリコーン油、フルオロシリコーン油などを用いることができる。粘度調整剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリンなどを用いることができる。pH調整剤としては、種々の無機酸、有機酸、無機塩基および有機塩基を用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などを用いることができる。殺菌剤としては、例えば、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−1,3,5−トリアジンなどを用いることができる。防錆剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステルなどを用いることができる。なお、加工油剤は、水を含んでいてもよい。水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水或いは水道水を用いることができる。
本発明の固定砥粒ワイヤーソー用加工液は、化合物(A)と、水とを含有し、化合物(A)の濃度は、質量基準で700ppm以上3000ppm以下である。化合物(A)の濃度が700ppmより低い場合、加工液の反応抑制能が低下すると共に、潤滑性および濡れ性が低下する。化合物(A)の濃度が3000ppmより高い場合、消泡性が低下する。加工液は、例えば、加工油剤を水で希釈することにより得られる。希釈に用いられる水としては、加工油剤に予め含まれる水と同様に、例えば、蒸留水、イオン交換水或いは水道水を用いることができる。
本発明の切断加工方法は、上記の加工液を用いて、固定砥粒ワイヤーソーにより脆性材料の切断加工を行うものである。固定砥粒ワイヤーソーに用いられるワイヤーは、切りくずを低減して歩留まりを向上させるために、極力細い方が好ましく、例えば、直径0.1mm以下であることが好ましい。本発明の加工液は、化合物(A)の濃度が700ppm以上3000ppm以下となるように水で高希釈されたものであることから、細線化されたワイヤーに対しても、十分な冷却能を発揮することができる。脆性材料としては、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、ガラス、セラミック、窒化ガリウム或いはサファイアを用いることができ、そのなかでも、シリコンを好適に用いることができる。
本発明の加工液処理方法は、切断加工方法を行った後に生じた使用済みの加工液に対し、濾過処理を行うものである。これにより、使用済みの加工液を浄化することができる。すなわち、濾過処理を行うことにより、使用済み加工液のBOD(生物化学的酸素消費量)、COD(化学的酸素消費量)、懸濁物質量(浮遊物質量)、ヘキサン抽出物質量(動植物油)およびヘキサン抽出物質量(鉱物油)を低下させることができる。濾過処理を行うことにより、使用済みの加工液を浄化することができる理由としては、上述したように、加工油剤に含まれる化合物(A)が、適度な疎水性と親水性とのバランスを有することから、切断加工時に発生する加工対象物の切りくずに吸着されやすい性質を有するためであると考えられる。このような濾過処理により、法令に規定される下水排除基準を満たす程度にまで、使用済みの加工液を浄化することで、使用済みの加工液を下水道に排水することができ、廃棄コストを削減することができる。
実施例および比較例に使用した界面活性剤を表1に示す。各界面活性剤のEOおよびPOの平均付加モル数については、1H−NMR分析により測定した。また、各界面活性剤の平均分子量については、標準ポリマーとしてポリエチレングリコール(PEG)を用いたGPC法(Gel Permeation Chromatography)により測定した。
各加工油剤を、界面活性剤の濃度が表3に示す値となるように水で希釈し、実施例1〜15の加工液および比較例1〜10の加工液を作製した。なお、比較例10では、加工液として水を用いた。
各加工液が塗布された試験材(シリコンウエハ)に対し、質量100gの試験球(窒化ケイ素)により一定の負荷荷重Wを作用させた状態で、室温下、試験材を摺動速度4.0mm/s、摺動距離25mmで20回往復運動させ、試験球に働く動摩擦力Pをストレインゲージにより検出し、動摩擦係数μをμ=P/Wの式により算出した。動摩擦係数の測定結果を表3に示す。
各加工液50mlを100mlシリンダーに加え、液温を23℃に調整した。その後、20回振とうして静置し、最大泡高さ、および消泡時間すなわち泡が消えるまでの時間を目視にて計測した。最大泡高さおよび消泡時間の測定結果を表3に示す。
各加工液にシリコンの切りくず40質量%を添加し、直径2mmのステンレス鋼球により1000rpmの条件で4時間せん断を加えた。せん断後の液15mlを30ml容量の試験管に採取し、50℃の湯浴中で水素の発生量を測定した。水素発生量の測定結果を表3に示す。
鏡面加工済みのシリコンウエハに滴下された各加工液の液滴が、シリコンウエハの表面に対して為す角度を、シリコンに対する接触角として測定した。また、ニッケル板に滴下された各加工液の液滴が、ニッケル板の表面に対して為す角度を、ニッケルに対する接触角として測定した。シリコンに対する接触角およびニッケルに対する接触角の測定結果を表3に示す。なお、接触角は、協和界面科学株式会社製のCA−V型接触角計を用いて測定した。
各加工液に、山石金属株式会社製のシリコン粉(粒子径:2μm以上3μm以下)を3質量%添加して試験液を作製した。2枚のシリコンウエハ(多結晶、156mm角)の一方に各試験液を均一に塗布した後、2枚のシリコンウエハを0.2mm厚のスペーサーを介して重ね合わせ、これを、15℃の水道水が4l入っている洗浄槽に垂直に浸漬し、5分間静置した。2枚のシリコンウエハを洗浄槽から引き上げ、2枚のシリコンウエハを引き離した後、各試験液が塗布されたシリコンウエハの表面に付着しているシリコン粉の残渣を目視にて確認し、シリコンウエハの表面全体の面積に対してシリコン粉の残渣が占める面積の割合を求めた。その結果を表3に示す。
加工油剤A3および加工油剤B3を、界面活性剤の濃度が表4〜6に示す値となるように水で希釈し、実施例16〜17の加工液を作製した。実施例2〜5,9,16,17および比較例5の加工液を用いて、固定砥粒ワイヤーソーによりシリコンインゴットの切断加工を行った後に生じた使用済みの加工液に対し、フィルタープレス処理を行った。フィルタープレス処理は、株式会社栗田機械製作所製のRF−10B型フィルタープレス機を用いて行った。濾材には、シキボウ株式会社製の「CC34−1」(綿製)を用いた。なお、以下では、使用済みの加工液に対してフィルタープレス処理を行うことにより得られた濾液を、第1廃液という。
使用済み加工液、第1廃液および第2廃液について、pH、BOD、COD、懸濁物質量、ヘキサン抽出物質量(動植物油)およびヘキサン抽出物質量(鉱物油)を測定した。pHは、JIS K0102 12(ガラス電極法)に基づき、BODは、JIS K0102 21(隔膜電極法)に基づき、CODは、JIS K0102 17(滴定法)に基づき、測定した。また、懸濁物質量、ヘキサン抽出物質量(動植物油)およびヘキサン抽出物質量(鉱物油)は、昭和49年環境庁告示第64号に規定された方法に基づき、測定した。使用済み加工液の測定結果を表4に、第1廃液の測定結果を表5に、第2廃液の測定結果を表6に示す。
pH:5.0を超え9.0未満
BOD:300mg/l以下
懸濁物質量:300mg/l以下
ヘキサン抽出物質量(動植物油):30mg/l以下
ヘキサン抽出物質量(鉱物油):5mg/l以下
なお、CODについては、50mg/l以下を評価基準とした。
Claims (9)
- 式(1)で表される化合物(A)を含み、
前記化合物(A)の濃度が質量基準で700ppm以上3000ppm以下となるように水で希釈され、固定砥粒ワイヤーソーによる脆性材料の切断加工に使用されることを特徴とする固定砥粒ワイヤーソー用水溶性加工油剤。
RO−[(EO)m(PO)n]−H (1)
(式(1)において、Rは炭素数8以上12以下のアルキル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、mはEOの平均付加モル数を示し、nはPOの平均付加モル数を示し、mは2以上5以下の数であり、nは3以上5以下の数であり、EOおよびPOはランダム付加でもブロック付加でもよい。) - 前記式(1)において、Rは、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基であることを特徴とする請求項1に記載の固定砥粒ワイヤーソー用水溶性加工油剤。
- ポリビニルピロリドンおよびビニルピロリドン由来の構造単位を含む共重合体の少なくとも一方を含む水溶性高分子と、消泡剤と、粘度調整剤と、pH調整剤と、酸化防止剤と、殺菌剤と、防錆剤と、のなかの少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の固定砥粒ワイヤーソー用水溶性加工油剤。
- 式(1)で表される化合物(A)と、水と、を含み、
前記化合物(A)の濃度が質量基準で700ppm以上3000ppm以下であり、固定砥粒ワイヤーソーによる脆性材料の切断加工に使用されることを特徴とする固定砥粒ワイヤーソー用加工液。
RO−[(EO)m(PO)n]−H (1)
(式(1)において、Rは炭素数8以上12以下のアルキル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、mはEOの平均付加モル数を示し、nはPOの平均付加モル数を示し、mは2以上5以下の数であり、nは3以上5以下の数であり、EOおよびPOはランダム付加でもブロック付加でもよい。) - シリコンに対する接触角が、10°以上40°以下であり、
ニッケルに対する接触角が、20°以上50°以下であり、
動摩擦係数が、0.20以上0.32以下であることを特徴とする請求項4に記載の固定砥粒ワイヤーソー用加工液。 - 請求項4または5に記載の固定砥粒ワイヤーソー用加工液を用いて、固定砥粒ワイヤーソーにより脆性材料の切断加工を行うことを特徴とする切断加工方法。
- 前記脆性材料が、シリコン、シリコンカーバイド、ガラス、セラミックス、窒化ガリウムおよびサファイアのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の切断加工方法。
- 請求項6または7に記載の切断加工方法を行った後に生じた使用済みの前記固定砥粒ワイヤーソー用加工液に対し、濾過処理を行うことを特徴とする使用済み加工液処理方法。
- 使用済みの前記固定砥粒ワイヤーソー用加工液に対し、前記濾過処理を行った後、活性炭処理を行うことを特徴とする請求項8に記載の使用済み加工液処理方法。
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