JP2019182833A - 酸性殺菌剤組成物および殺菌効力増強方法 - Google Patents

酸性殺菌剤組成物および殺菌効力増強方法 Download PDF

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Abstract

【課題】殺菌成分として配合される酸の殺菌効力を向上させることができる酸性殺菌剤組成物、および殺菌効力増強方法を提供する。【解決手段】(A)殺菌成分として有機酸またはリン酸と、(B)殺菌効力増強成分として炭素数が7〜9の芳香族スルホン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、(C)水と、を含有する酸性殺菌剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、殺菌成分として酸を水溶液中に配合して成る酸性殺菌剤組成物、および酸性殺菌剤組成物の殺菌効力増強方法に関する。
浴室・トイレ、キッチン等のタイル、目地、プラスチックに付着する汚れの中には、細菌やカビによって発生する汚れやぬめりなどがある。このような細菌やカビによる汚れは、次亜塩素酸塩を主成分とする液体洗浄剤などで、日常的に殺菌を行うことで、発生を予防することができる。しかし、次亜塩素酸製剤は、酸性タイプの漂白剤等と混用すると危険な塩素ガスを発生することから、本来的には使用を制限すべき製品であるが、他に置き換える製品が存在しないため現在でも広く使用されている。こうした現状から、安全性が高く、且つ殺菌効果の高い洗浄剤が要望されている。
そこで、殺菌成分として酸を配合した水系洗浄剤が種々提案されている。例えば、特許文献1には、殺菌有効性脂肪酸、ヒドロトロープ−可溶化剤、強酸、および安定性が増大された組成物を与える成分を含む希釈可能な酸殺菌剤濃厚組成物であって、安定化成分が、プロピオン酸、酪酸および吉草酸並びにそれらの混合物から成る群より選択される弱酸を配合した硬表面用除菌洗浄剤組成物が開示されている。また、ヒドロトロープ剤として1−オクタンスルホン酸ナトリウムおよび1,2−オクタンジスルホン酸ナトリウム等のアルカンスルホン酸塩を用いることも記載されている。
また、特許文献2には、少なくとも1種の脂肪族短鎖の抗菌的に有効なC5〜C14脂肪酸またはそれらの混合物と、少なくとも1種のカルボン酸系弱酸と、硝酸であるか又は硝酸とリン酸の混合物である強鉱酸とを含む消毒組成物が開示されている。また、少なくとも1種の有機ヒドロトロープを配合することも記載されている。
特表平8−503209号公報 特表2005−511635号公報
上述した特許文献1、2には、殺菌成分である脂肪酸と、ヒドロトロープ剤とを含有する殺菌剤組成物が開示されており、1−オクタンスルホン酸ナトリウムおよび1,2−オクタンジスルホン酸ナトリウムを含む組成物については抗菌性試験結果も記載されている。しかしながら、特許文献1、2では、脂肪酸を水に溶解させるためのヒドロトロープ剤としてスルホン酸塩を配合しており、殺菌成分の殺菌効力を向上させる殺菌効力増強成分として特定のスルホン酸塩を用いるという技術的思想は何ら示唆されていなかった。
本発明は、上記問題点に鑑み、殺菌成分として配合される酸の殺菌効力を向上させることができる酸性殺菌剤組成物、および殺菌効力増強方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、(A)殺菌成分として有機酸またはリン酸と、(B)殺菌効力増強成分として炭素数7〜9の芳香族スルホン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、(C)水と、を含有する酸性殺菌剤組成物である。
また本発明は、上記構成の酸性殺菌剤組成物において、前記有機酸が、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の酸性殺菌剤組成物において、前記有機酸が、フマル酸であることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の酸性殺菌剤組成物において、前記芳香族スルホン酸塩が、キシレンスルホン酸ナトリウムであることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の酸性殺菌剤組成物において、前記芳香族スルホン酸塩が、メシチレンスルホン酸ナトリウム又はクメンスルホン酸ナトリウムであるであることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の酸性殺菌剤組成物において、前記芳香族スルホン酸塩の配合量が、0.1質量%以上であることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の酸性殺菌剤組成物において、前記殺菌成分の配合量が0.01質量%以上であることを特徴としている。
また本発明は、(A)殺菌成分として有機酸またはリン酸と、(C)水と、を含有する酸性殺菌剤組成物に、(B)殺菌効力増強成分として炭素数7〜9の芳香族スルホン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法である。
また本発明は、上記構成の殺菌効力増強方法において、前記有機酸が、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の殺菌効力増強方法において、前記有機酸が、フマル酸であることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の殺菌効力増強方法において、前記芳香族スルホン酸塩が、キシレンスルホン酸ナトリウムであることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の殺菌効力増強方法において、前記芳香族スルホン酸塩が、メシチレンスルホン酸ナトリウム又はクメンスルホン酸ナトリウムであることを特徴としている。
また本発明は、上記構成の殺菌効力増強方法において、前記芳香族スルホン酸塩の添加量が、前記酸性殺菌剤組成物に対して0.1質量%以上であることを特徴としている。
本発明の第1の構成によれば、(A)殺菌成分として有機酸またはリン酸と、(B)殺菌効力増強成分として炭素数7〜9の芳香族スルホン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、(C)水と、を含有することにより、殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効果を向上させることができ、高い殺菌力を備えた酸性殺菌組成物となる。
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の酸性殺菌剤組成物において、有機酸としてクエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれた1種又は2種以上を用いることにより、より殺菌効果が高く安全性にも優れた酸性殺菌組成物となる。
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の酸性殺菌剤組成物において、殺菌成分としてフマル酸を用いることにより、低い配合量で高い殺菌効果が得られる酸性殺菌剤組成物となる。
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の酸性殺菌剤組成物において、芳香族スルホン酸塩として、化学製品として汎用されており入手が容易なキシレンスルホン酸ナトリウムを用いることにより、殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効力をより効果的に向上させることができ、安全性やコスト面においても優れた酸性殺菌剤組成物となる。
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の酸性殺菌剤組成物において、芳香族スルホン酸塩としてメシチレンスルホン酸ナトリウム又はクメンスルホン酸ナトリウムを用いることにより、低い配合量で殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効力を顕著に向上することができる酸性殺菌剤組成物となる。
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成の酸性殺菌剤組成物において、芳香族スルホン酸塩の配合量を0.1質量%以上とすることにより、芳香族スルホン酸塩の配合量を殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効力を向上させるために必要な配合量とすることができる。
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第6のいずれかの構成の酸性殺菌剤組成物において、殺菌成分である有機酸またはリン酸の配合量を0.01質量%以上とすることにより、有機酸またはリン酸の配合量を十分な殺菌効力を発揮するために必要な配合量とすることができる。
また、本発明の第8の構成によれば、(A)殺菌成分として有機酸またはリン酸と、(C)水と、を含有する酸性殺菌剤組成物に、(B)殺菌効力増強成分として炭素数7〜9の芳香族スルホン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することにより、殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効果を向上させることができ、高い殺菌力を備えた酸性殺菌組成物を製造可能となる。
また、本発明の第9の構成によれば、上記第8の構成の殺菌効力増強方法において、有機酸としてクエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれた1種又は2種以上を用いることにより、より殺菌効果が高く安全性にも優れた酸性殺菌組成物を製造可能となる。
また、本発明の第10の構成によれば、上記第9の構成の殺菌効力増強方法において、有機酸としてフマル酸を用いることにより、低い配合量で高い殺菌効果が得られる酸性殺菌剤組成物を製造可能となる。
また、本発明の第11の構成によれば、上記第8乃至第10のいずれかの構成の殺菌効力増強方法において、芳香族スルホン酸塩として、化学製品として汎用されており入手が容易なキシレンスルホン酸ナトリウムを添加することにより、殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効力をより効果的に向上させることができ、高い殺菌力と安全性とを兼ね備えた酸性殺菌組成物を簡単に且つ低コストで製造可能となる。
また、本発明の第12の構成によれば、上記第8乃至第10のいずれかの構成の殺菌効力増強方法において、芳香族スルホン酸塩としてメシチレンスルホン酸ナトリウム又はクメンスルホン酸ナトリウムを用いることにより、低い配合量で殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効力を顕著に向上することができ、殺菌性および安全性において優れた酸性殺菌剤組成物を製造可能となる。
また、本発明の第13の構成によれば、上記第8乃至第12のいずれかの構成の殺菌効力増強方法において、芳香族スルホン酸塩の配合量を0.1質量%以上とすることにより、芳香族スルホン酸塩の配合量を殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効力を向上させるために必要な配合量とすることができる。
以下、本発明の酸性殺菌剤組成物について詳細に説明する。本発明の酸性殺菌剤組成物は、(A)殺菌成分としての有機酸またはリン酸と、(B)殺菌成分の殺菌効力を増強する殺菌効力増強成分として炭素数7〜9の芳香族スルホン酸塩と、を(C)水に混合して水溶液としたものである。
本発明の酸性殺菌剤組成物に配合される殺菌成分としては、有機酸またはリン酸が挙げられる。有機酸としては、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸が好ましい。これらの酸は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。特に、化合物自体の殺菌効果が高く、且つ、殺菌効力増強成分による殺菌効力の増強効果も顕著であるフマル酸が好ましい。
本発明の酸性殺菌剤組成物における殺菌成分の配合量は特に限定されないものの、十分な殺菌効果を得るためには、後述の実施例において示すように、酸性殺菌剤組成物全体に対して0.01質量%以上配合することが好ましい。
本発明の酸性殺菌剤組成物に配合される炭素数7〜9の芳香族スルホン酸塩は、殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効力を向上させる殺菌効力増強成分として用いられる。芳香族スルホン酸塩は、分子中に親水基と親油基を有し、他の有機化合物を水あるいは塩類の水溶液中に高濃度に溶かす性質を有する。この性質を利用して、従来、有機化合物の水に対する溶解度を高めることにより、温度変化による粘性の変化や有機化合物の析出を防止するヒドロトロープ剤として芳香族スルホン酸塩を配合することは知られていたが、芳香族スルホン酸塩が有機酸またはリン酸の殺菌効力増強成分として作用することは、本発明者らによって初めて発見された知見である。
本発明の酸性殺菌剤組成物に配合される炭素数7〜9の芳香族カルボン酸塩の具体例としては、o−キシレンスルホン酸ナトリウム、m−キシレンスルホン酸ナトリウム、o−トルエンスルホン酸ナトリウム、m−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、m−クメンスルホン酸ナトリウム、p−クメンスルホン酸ナトリウム、メシチレンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。これらの芳香族スルホン酸塩は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
上記の芳香族スルホン酸塩の中でも、特に、化学製品として汎用されており入手が容易で、且つ殺菌効力の増強効果も顕著であるキシレンスルホン酸ナトリウム、低い配合量で殺菌成分である有機酸またはリン酸の殺菌効力を顕著に向上することができるメシチレンスルホン酸ナトリウム又はクメンスルホン酸ナトリウムが好ましい。キシレンスルホン酸ナトリウムの中では、m−キシレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
本発明の酸性殺菌剤組成物における芳香族スルホン酸塩の配合量は、特に限定されないものの、配合量が少なすぎる場合は、殺菌成分である有機酸、リン酸の殺菌効果が十分に増強されない可能性がある。後述の実施例において示すように、芳香族スルホン酸塩を酸性殺菌剤組成物全体に対して0.1質量%以上配合することが好ましい。
本発明の酸性殺菌剤組成物には、目的に応じて界面活性剤を配合することができる。例えば、殺菌効力増強成分として配合する芳香族スルホン酸塩の水に対する溶解度がさほど高くない場合であって、芳香族スルホン酸塩の配合量を増加させたい場合に界面活性剤を配合する。また、界面活性剤には泡を発生する性質(泡立ち性)があり、泡立ち性に優れた界面活性剤を使用することで、本発明の酸性殺菌剤組成物をトリガースプレー等で壁面にスプレーしたときの液ダレを抑制するとともに塗布領域も視認しやすくなる。
殺菌効力増強成分として配合される芳香族スルホン酸塩は、一般的なアニオン界面活性剤と異なり、 ノニオン界面活性剤などと併用しても泡切れを悪くしにくい 。また、カチオン界面活性剤と共存しても沈殿を生じにくい。そのため、本発明の酸性殺菌剤組成物に配合される界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも好適に用いられる。本発明の酸性殺菌剤組成物中における界面活性剤の配合量は、特に限定されないものの、0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
アニオン界面活性剤の例としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
カチオン界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
ノニオン界面活性剤の例としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、ベタイン型界面活性剤が挙げられる。具体的には、ラウリル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピル−N,N−ジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン等が挙げられる。
本発明の酸性殺菌剤組成物は、水系タイプであり、溶媒としては主に水が用いられる。水としては、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
更に、本発明の酸性殺菌剤組成物には、その他の成分として、必要に応じて、無機抗菌剤、有機抗菌剤、防藻剤、防錆剤、溶剤、キレート剤、香料、消臭成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することにより、抗菌効果、防藻効果、防錆効果、洗浄効果、芳香性、消臭性等を付与するようにしてもよい。
こうして得られた本発明の酸性殺菌剤組成物を、キッチンや浴室の排水口、タイル目地等、細菌やカビの発生しやすい箇所に塗布あるいはスプレーすることで、細菌やカビを効果的に除去することができる。そして、本発明の酸性殺菌剤組成物は、危険で取り扱いにくい次亜塩素酸製剤と異なり、安全に、かつ簡単に施用できるので極めて実用性が高いものである。
また、本発明の酸性殺菌剤組成物は、殺菌成分としてクエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸等の有機酸またはリン酸と、殺菌効力増強成分として特定の芳香族スルホン酸化合物を水に配合するだけの、非常に単純な組成である。そのため、製造が簡便なうえ、多くの殺菌剤で問題となる皮膚への刺激性も小さく、安全性が極めて高いものである。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
[試験液の調製]
(A)殺菌成分として、クエン酸、酢酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸(以上、和光純薬工業社製)、(B)芳香族スルホン酸塩(殺菌効力増強成分)として、m−キシレンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業社製)、p−トルエンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、メシチレンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業社製)、クメンスルホン酸ナトリウム(Ark Pharm,Inc社製)を表1、表2に示す配合割合(質量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として試験液(本発明1〜21)を得た。
(A)殺菌成分として、クエン酸、酢酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、ホウ酸(以上、和光純薬工業社製)、(B)芳香族スルホン酸塩(殺菌効力増強成分)として、m−キシレンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業社製)、p−トルエンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、メシチレンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業社製)、クメンスルホン酸ナトリウム(Ark Pharm,Inc社製)を表3に示す配合割合(質量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として試験液(比較例1〜13)を得た。
[殺菌効果の確認試験(Staphylococcus aureus)]
本発明、比較例の試験液990μLに、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の培養液10μLを接種してよく攪拌した後、混合液をSCDLP培地で100倍希釈した。接種から希釈までの時間は10分間とした。この希釈液を滅菌済みのプラスチックシャーレに固化させておいたSCDLP寒天培地上に100μL滴下し、コンラージ棒でよく延ばした後、37℃で培養を行い、発生するコロニー数を計測した。また、対照例(ネガティブコントロール)として試験液の代わりに滅菌水を用いたものも用意した。試験液で処理したものと対照例のコロニー数の比較により除菌率を算出した。
評価基準としては、除菌率が99%以上の場合を◎、除菌率が90%以上99%未満の場合を○、除菌率が90%未満の場合を×とした。殺菌効果の試験結果を試験液の配合と併せて表1〜表3に示す。
Figure 2019182833
Figure 2019182833
Figure 2019182833
表1に示すように、クエン酸、酢酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれる1種以上の酸と、m−キシレンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、メシチレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウムから選ばれる1種以上の芳香族スルホン酸塩とを配合した本発明1〜21では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して除菌率が90%以上となった。特に、本発明1、2、4〜13、15〜17、19〜21では除菌率が99%以上となり、短時間(10分間)の処理で細菌が完全に死滅した。
また、本発明12〜21の結果より、殺菌成分としてフマル酸を配合した場合に低い配合量で高い除菌効果が得られた。フマル酸の配合量が0.01質量%、メシチレンスルホン酸ナトリウムの配合量が5質量%である本発明19、およびフマル酸の配合量が0.01質量%、クメンスルホン酸ナトリウムの配合量が5質量%である本発明21の結果より、フマル酸の配合量が0.01質量%以上で十分な殺菌効果が認められた。
また、フマル酸の配合量が0.45質量%、メシチレンスルホン酸ナトリウムの配合量が0.1質量%である本発明18、およびフマル酸の配合量が0.45質量%、クメンスルホン酸ナトリウムの配合量が0.1質量%である本発明20の結果より、芳香族スルホン酸塩の配合量が0.1質量%以上で十分な殺菌効力増強効果が認められた。
これに対し、表3に示すように、m−キシレンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、メシチレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウムのみを配合した比較例1〜4、クエン酸、酢酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸のみを配合した比較例5〜12では除菌率が90%未満となり、殺菌効果が十分でなかった。また、ホウ酸1.8質量%とm−キシレンスルホン酸ナトリウム1.0質量%を配合した比較例13では除菌率が90%未満であり、芳香族スルホン酸塩による殺菌効力増強効果が認められなかった。
本発明1〜21と比較例5〜12の比較より、殺菌成分としてクエン酸、酢酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸のみを配合した比較例5〜12では即効性のある十分な殺菌効果は認められなかったが、比較例5〜12よりも少量のクエン酸、酢酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸と共に、m−キシレンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、メシチレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウムのいずれかを配合した本発明1〜21では、即効的な殺菌効果が得られることが確認された。
また、本発明1、3、6、8、9〜12と比較例13の比較より、クエン酸、酢酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸とm−キシレンスルホン酸またはメシチレンスルホン酸ナトリウムとを配合した場合は即効的な殺菌効果が認められたが、ホウ酸とm−キシレンスルホン酸とを配合した場合は殺菌効果が認められなかった。以上の結果から、芳香族スルホン酸塩は、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸などの有機酸またはリン酸と共に配合することで、有機酸またはリン酸の殺菌効力増強成分として作用することが確認された。
[浴室用殺菌洗浄剤の作製]
殺菌成分としてクエン酸を1質量%、殺菌効力増強成分としてm−キシレンスルホン酸ナトリウムを5質量%、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルを2質量%加えたものに、最終的にバランスとして水を加えて100質量%に調製し、よく混合して浴室用殺菌洗浄剤を作製した。
また、殺菌成分としてクエン酸に代えて酢酸を1質量%加えた以外は上記と同様の方法により浴室用殺菌洗浄剤を作製した。
作製された浴室用殺菌洗浄剤を、トリガースプレー(1回の吐出量が約0.7cc)を用いて、汚れのあるユニットバス浴槽に適量噴霧後、スポンジを用いて擦り洗浄を行い、水洗した結果、泡切れもよく、汚れがほとんど落ちた。さらに、浴室用殺菌洗浄剤を浴槽の排水溝に適量噴霧しておいたところ、それまでは常に発生が認められていた雑菌の繁殖によるピンク色のヌメリが3日後も認められなかった。
本発明は、殺菌成分である酸の殺菌効力を顕著に向上させることができ、安全性にも優れた酸性殺菌剤組成物、および殺菌効力増強方法であり、特にキッチンや浴室等で使用される殺菌剤組成物として好適に用いられる。

Claims (13)

  1. (A)殺菌成分として有機酸またはリン酸と、(B)殺菌効力増強成分として炭素数が7〜9の芳香族スルホン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、(C)水と、を含有する酸性殺菌剤組成物。
  2. 前記有機酸が、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸性殺菌剤組成物。
  3. 前記有機酸が、フマル酸であることを特徴とする請求項2に記載の酸性殺菌剤組成物。
  4. 前記芳香族スルホン酸塩が、キシレンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項3に記載の酸性殺菌剤組成物。
  5. 前記芳香族スルホン酸塩が、メシチレンスルホン酸ナトリウム又はクメンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸性殺菌組成物。
  6. 前記芳香族スルホン酸塩の配合量が、0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の酸性殺菌剤組成物。
  7. 前記殺菌成分の配合量が0.01質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の酸性殺菌剤組成物。
  8. (A)殺菌成分として有機酸またはリン酸と、(C)水と、を含有する酸性殺菌剤組成物に、
    (B)殺菌効力増強成分として炭素数7〜9の芳香族スルホン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法。
  9. 前記有機酸が、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項8に記載の殺菌効力増強方法。
  10. 前記有機酸が、フマル酸であることを特徴とする請求項9に記載の殺菌効力増強方法。
  11. 前記芳香族スルホン酸塩が、キシレンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の殺菌効力増強方法。
  12. 前記芳香族スルホン酸塩が、メシチレンスルホン酸ナトリウム又はクメンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の殺菌効力増強方法。
  13. 前記芳香族スルホン酸塩の添加量が、前記酸性殺菌剤組成物に対して0.1質量%以上であることを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の殺菌効力増強方法。
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