JP2019177343A - 分離膜エレメント - Google Patents
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Abstract
【課題】長期にわたり優れた耐ファウリング性を実現可能な分離膜エレメントを提供する。【解決手段】特定の構造を有する透過側流路材を有すると共に、分離膜の有する分離機能層の自乗平均面粗さ、解離カルボキシル基量、分離機能層の有する親水性高分子が下記化学式(1)に示す構造を含み、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて前記複合半透膜の分離機能層側を測定したとき、負2次イオンm/z=71.02、103.02、107.06、133.04のカウント数をそれぞれa、b、c、dとしたとき、a/(b+c+d)≧1を満たす。【選択図】図1
Description
本発明は、液体、気体等の流体に含まれる成分を分離するために使用される分離膜エレメントに関する。
海水およびかん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術においては、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして、分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜は、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜に分類される。これらの膜は、例えば海水、かん水および有害物を含んだ水などからの飲料水の製造、工業用超純水の製造、並びに排水処理および有価物の回収などに用いられており、目的とする分離成分及び分離性能によって使い分けられている。
ファウリング現象は分離膜を用いた分離技術における課題である。ファウリング現象とは、被処理水中に含まれる物質等が分離膜の表面や内孔に吸着されることにより、溶液の透過が阻害され、分離膜の分離性能が劣化する現象である。ファウリング現象は、付着する物質の種類により分類され、有機物の吸着によるケミカルファウリング、微生物の吸着によるバイオファウリング、無機物の吸着による無機ファウリングなどがある。
ケミカルファウリングは、排水等の被処理水中に含まれる有機物が分離膜の表面に堆積したり分離膜の内部に吸着したりすることで、分離膜が目詰まりを起こし、被処理水の透過水量が減少することにより分離性能が低下する現象である。
バイオファウリングは、被処理水中に含まれる微生物が前述のケミカルファウリングにより分離膜に吸着した有機物を栄養源として分離膜の表面や内部で繁殖することで、分離膜が目詰まりを起こす現象である。
無機ファウリングは、無機コロイドや炭酸カルシウムなどの難溶性の塩が分離膜上に析出すること(スケール)で、分離膜の透水性や分離性能が低下する現象である。ファウリングは、分離膜の透水性を著しく劣化させる。そこで、分離膜を改質して吸着抑制能を付与することが検討されている。
特許文献1にはポリビニルアルコールを分離機能層表面にコーティングし、膜表面の荷電状態を中性にすることで、荷電を持つファウラントとの相互作用を減らし、耐ファウリング性を向上する方法が開示されている。特許文献2には、ポリアミドを含有するとともに、ポリアミドとアミド結合で結合した親水性高分子を有する分離機能層を備える分離膜が開示されている。また、特許文献2には、酸性基を有する親水性高分子によって耐ファウリング性が実現されることが記載されている。
一方、分離膜エレメントとしては様々な形態があるが、分離膜の一方の面に供給水を供給し、他方の面から透過水を得る点では共通している。分離膜エレメントは、束ねられた多数の分離膜を備えることで、1個の分離膜エレメントあたりの膜面積が大きくなるように、つまり1個の分離膜エレメントあたりに得られる透過水の量が大きくなるように形成されている。分離膜エレメントとしては、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型、平膜集積型などの各種の形状が提案されている。
例えば、逆浸透ろ過には、スパイラル型分離膜エレメントが広く用いられる。スパイラル型分離膜エレメントは、中心管と、中心管の周囲に巻き付けられた積層体とを備える。積層体は、供給水(つまり被処理水)を分離膜表面へ供給する供給水側流路材、供給水に含まれる成分を分離する分離膜、及び分離膜を透過し供給水側流体から分離された透過側流体を中心管へと導くための透過側流路材が積層されることで形成される。スパイラル型分離膜エレメントは、供給水に圧力を付与することができるので、透過水を多く取り出すことができる点で好ましく用いられている。
スパイラル型分離膜エレメントでは、一般的に、供給水側流体の流路を形成させるために、供給水側流路材として、主に高分子製のネットが使用される。また、分離膜として、積層型の分離膜が用いられる。積層型の分離膜は、供給水側から透過側に積層された、ポリアミドなどの架橋高分子からなる分離機能層、ポリスルホンなどの高分子からなる多孔性樹脂層(多孔性支持層)、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子からなる不織布の基材を備えている。また、透過側流路材としては、分離膜の落込みを防き、かつ透過側の流路を形成させる目的で、供給水側流路材よりも間隔の細かいトリコットと呼ばれる編み物部材(緯編物とも言う)が使用される。
近年、造水コストの低減への要求の高まりから、分離膜エレメントの高性能化が求められている。例えば、分離膜エレメントの分離性能の向上、および単位時間あたりの透過水量の増大のために、各流路部材等の分離膜エレメント部材の性能向上が提案されている。
具体的には、特許文献3では、糸を不織布上に配置した流路材を備えた分離膜エレメントが提案されている。特許文献4では、一般的なフィルムをインプリント成形し、ドットなど、フィルム表面方向における液体通過性を改善した分離膜エレメントが提案されている。
このような分離膜エレメントは、図1に示すように、供給水側流路材1を分離膜2で挟み込み、透過側流路材3を積層させて一組のユニットとし、集水管4の周囲にスパイラル状に巻囲して分離膜エレメント5としている。
しかしながら、近年、高回収率運転化(回収率:エレメントに供給する供給水量に対する透過水量の割合)が進み、供給水に対する濃縮水の割合をできるだけ少なくして透過水の生産割合を高めるニーズが高まっており、特許文献3や特許文献4に示される分離膜エレメントでは、供給水がエレメント端面から他方の端面へ流れるため濃度分極が生じやすい形態であり、ファウリングが発生しやすい問題がある。このような条件下においては特許文献1や特許文献2に示される分離膜を用いても透水性の低下を十分に抑制できない問題がある。そこで、本発明では、高回収率運転下においても高い造水性と高除去性を有し、かつファウリングが生じにくい分離膜エレメントを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
供給側の面と透過側の面とを有し、透過側の面同士が向かい合うように配置されることで分離膜対を形成する分離膜と、
前記分離膜の前記透過側の面の間に設けられる透過側流路材と、
透過水を集水できる有孔集水管と、を備える分離膜エレメントであって、
前記透過側流路材の横断面は複数の流路を有し、かつ横断面積比が0.4以上0.75以下であり、
前記有孔集水管の長手方向における前記分離膜エレメントの端部に設けられた原水供給部と、
前記分離膜エレメントの外周面に設けられた濃縮水排出部と、を備え、
前記分離膜は基材および多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる複合半透膜であり、
前記分離機能層が、架橋ポリアミドと、親水性高分子とを含み、下記条件(A)〜(C)を満たす分離膜エレメント。
(A)前記分離機能層の表面の自乗平均面粗さが80nm以上である。
(B)前記分離機能層表面のラザフォード後方散乱分光法により測定された、pH10における表面方向から深さ2nm領域の解離カルボキシル基量が0.35mol/kg以上0.45mol/kg以下であり、かつ表面方向からの深さ2nmにおける解離カルボキシル基量D1と、表面方向から深さ50nmにおける解離カルボキシル基量D2が、D1>2×D2を満たす。
(C)前記親水性高分子が下記化学式(1)に示す構造を含み、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて前記複合半透膜の分離機能層側を測定したとき、負2次イオンm/z=71.02、103.02、107.06、133.04のカウント数をそれぞれa、b、c、dとしたとき、a/(b+c+d)≧1を満たす。
前記分離膜の前記透過側の面の間に設けられる透過側流路材と、
透過水を集水できる有孔集水管と、を備える分離膜エレメントであって、
前記透過側流路材の横断面は複数の流路を有し、かつ横断面積比が0.4以上0.75以下であり、
前記有孔集水管の長手方向における前記分離膜エレメントの端部に設けられた原水供給部と、
前記分離膜エレメントの外周面に設けられた濃縮水排出部と、を備え、
前記分離膜は基材および多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる複合半透膜であり、
前記分離機能層が、架橋ポリアミドと、親水性高分子とを含み、下記条件(A)〜(C)を満たす分離膜エレメント。
(A)前記分離機能層の表面の自乗平均面粗さが80nm以上である。
(B)前記分離機能層表面のラザフォード後方散乱分光法により測定された、pH10における表面方向から深さ2nm領域の解離カルボキシル基量が0.35mol/kg以上0.45mol/kg以下であり、かつ表面方向からの深さ2nmにおける解離カルボキシル基量D1と、表面方向から深さ50nmにおける解離カルボキシル基量D2が、D1>2×D2を満たす。
(C)前記親水性高分子が下記化学式(1)に示す構造を含み、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて前記複合半透膜の分離機能層側を測定したとき、負2次イオンm/z=71.02、103.02、107.06、133.04のカウント数をそれぞれa、b、c、dとしたとき、a/(b+c+d)≧1を満たす。
本発明の分離膜エレメントによれば、優れた耐ファウリング性を備え、高回収率運転条件下においても、高い透水性と除去性を維持することができる。
1.分離膜エレメント
(1−1)分離膜エレメント概要
図2を参照して、本発明の分離膜エレメント5Bについて説明する。なお、既に説明した構成要素については、同符号を付してその説明を省略する。
(1−1)分離膜エレメント概要
図2を参照して、本発明の分離膜エレメント5Bについて説明する。なお、既に説明した構成要素については、同符号を付してその説明を省略する。
分離膜エレメント5Bは、有孔集水管と、有孔集水管の周囲に巻囲された分離膜と、を備える。巻囲された分離膜は円柱状の巻囲体を形成する。分離膜エレメント5Bはさらに、巻囲体の第1端に装着され、かつ孔を有する孔付端板92と、巻囲体の第2端に装着され、かつ孔を有さない孔無し端板91とを備える。また、分離膜エレメント5Bは、巻囲された分離膜2の最外面にさらに巻き付けられた多孔性部材82を備える。 多孔性部材82としては、濃縮水を通過させることができる複数の孔を有する部材が用いられる。多孔性部材82に設けられたこれらの孔821は、濃縮水の出口と言い換えられてもよい。多孔性部材82は、複数の孔を有していれば、その材質、大きさ、厚み、剛性等は、特に限定されるものではない。多孔性部材82として、比較的小さい厚みを有する部材を採用することで、分離膜エレメントの単位体積当たりの膜面積を増大させることができる。
なお図2において、多孔性部材82に設けられた孔821はスリット状(直線状)に示されているが、円形や四角形、楕円形や三角形などの孔が複数配列される構造でもよい。
多孔性部材82の厚みは、例えば、1mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下である。また、多孔性部材82は、巻囲体の外周形状に沿うように変形することができる、柔軟性又は可撓性を有する部材であってもよい。より具体的には、多孔性部材82として、ネット、多孔性フィルム等が適用可能である。ネット及び多孔性フィルムは、巻囲体を内部に収容できるように筒状に形成されていてもよいし、長尺状であって、巻囲体の周囲に巻き付けられていてもよい。
分離膜エレメントは、巻囲体の第1端に装着された孔付端板92を有する。供給水は孔付端板92を介し、供給側流路へ流入する。なお、孔付端板92と、孔付端板92が設置される分離膜エレメントとの端面との間には、供給水が滞留する空間があってもよい。
さらに、孔付端板92の孔の配置については、開孔が大きすぎると供給水が供給側流路に均一に流れず、ショートパスするといった場合があるため、本発明の効果が発現するように集水管の周辺に設けることができる。
多孔性部材82は、分離膜エレメント5Bの外周面に配置される。多孔性部材82がこのように設けられることで、孔が分離膜エレメント5Bの外周面に設けられる。「外周面」とは、特に、分離膜エレメント5Bの外周面全体のうち、上述の第1端の面及び第2端の面を除く部分であるとも言える。本実施形態では、多孔性部材82は、巻囲体の外周面のほぼ全体を覆うように配置される。
分離膜エレメント5Bにおいては、ベッセルに装填して運転する場合、第2端の端板が孔無し端板91なので、第2端の面からは供給水(濃縮水)は流出しない。濃縮水103は、分離膜2に対して、分離膜エレメント5Bの外周面(つまり円柱状の巻囲体の側面)から、多孔性部材82を介して排出される。透過水102は、有孔集水管4を通って、分離膜エレメント5Bの第2端から取り出される。ここで、原水供給部とは、分離膜エレメントの供給側流路内に原水が流れ込む部分を表し、濃縮水排出部とは分離膜エレメントの供給側流路から外部へと濃縮水が排出される部分を表す。すなわち、分離膜エレメント5Bにおける原水供給部とは孔付端版92であり、濃縮水排出部とは多孔性部材82である。なお、上述した分離膜エレメントにおいて、第2端における孔無し端板91を孔付端板92に変更し、分離膜エレメント5Bの外周面と第1端の両方から濃縮水103が排出される構成においても、従来エレメントと比べて高回収率運転に適した構成とすることができる。
有孔集水管は円筒形状を有し、外周面から内周面につながる複数の連通孔を有する。より具体的には、透過水102はその連通孔を通じて集水管内部へと集められ、分離膜エレメント5Bの第2端から取り出される。有孔集水管の材質などは特に限定されるものではないが、可撓性を有しない剛体であることが好ましい。
分離膜エレメント5Bにおいて、第2端の端板が孔付端板92に変更し、第2端を完全に封止せず部分的に濃縮水が通過する構成になっても良い。
分離膜は、分離膜の供給水側面が対向するように配置された分離膜リーフ(単に膜リーフやリーフとも言う)の状態で分離膜エレメントに装填される。分離膜リーフの長さ(膜リーフ長とも言う)について、本発明に適用される透過側流路材は透過側抵抗を小さい状態に維持できるため、リーフ長が長くなっても透過側抵抗が低いことにより膜リーフ数を減らし、膜リーフ長を長くすることも可能である。膜リーフ数が減ると、供給水流路の入口が、減らした膜リーフ数分だけ減るが、供給する供給水量はほぼ同等であるため、より供給水の流速を早めることができる。ただし、膜リーフの長さが長くなるほど流動抵抗が高くなるため、膜リーフの長さは750mm以上2000mm以下が好ましい。
本発明の分離膜エレメントの供給側流路の長さは750mm以上2000mm以下が好ましい。供給側流路の長さとは、原水供給部から濃縮水排出部までの長さを表す。分離膜エレメント5のように、その第1端から原水が供給され、第2端から濃縮水が排出される構成においては、供給側流路の長さは集水管長手方向の分離膜の長さに等しい。一方、分離膜エレメント5Bにおいては、供給側流路の長さは膜リーフの長さに等しい。
供給水の流速は単位時間に供給する供給水量を、供給水側流路入口の断面積で除して算出することができる。供給水流路入口の断面積とは、分離膜エレメントにおける膜の幅(すなわち、集水管の長手方向と平行な方向)と供給水側流路材の厚み、供給水側流路材の空隙率の積である。
(1−2)透過側流路材
本発明の分離膜エレメントには、分離膜の透過側面に透過側流路材が配置される。透過側流路材は、有孔集水管の長手方向に垂直な方向に沿って(つまり巻囲方向に沿って)延びる複数の凸部を有する。凸部間(つまり凹部)が流路となり、透過水を有孔集水管に導く。透過側流路材としては、トリコット等の緯編物、不織布のような多孔性基材とその上に形成された突起物とを有するシート、フィルムまたは不織布自体を凹凸加工して得られる凹凸シート、分離膜上に直接設けられたストライプ等の形状を有する樹脂パターンを用いることができる。
本発明の分離膜エレメントには、分離膜の透過側面に透過側流路材が配置される。透過側流路材は、有孔集水管の長手方向に垂直な方向に沿って(つまり巻囲方向に沿って)延びる複数の凸部を有する。凸部間(つまり凹部)が流路となり、透過水を有孔集水管に導く。透過側流路材としては、トリコット等の緯編物、不織布のような多孔性基材とその上に形成された突起物とを有するシート、フィルムまたは不織布自体を凹凸加工して得られる凹凸シート、分離膜上に直接設けられたストライプ等の形状を有する樹脂パターンを用いることができる。
透過側流路材の横断面積比が0.4以上0.75以下であることで、透過側流路の流動抵抗を低減し、かつ加圧ろ過下においても流路を安定に形成することができる。
ここで、透過側流路材の横断面積比について説明する。図3では一例として、シート状の透過側流路材について示す。横断面積比は、集水管の長手方向と平行な断面において、透過側流路材の凸部の中心と隣接する凸部の中心の距離(ピッチとも言う)と透過側流路材の厚みの積(H0×P)に対する、凸部の中心と隣接する凸部の中心との間を占める透過側流路材の面積(S)との比(S/(H0×P))が横断面積比である。なお、厚みH0は、隣り合う2つの凸部の中心における透過側流路材の厚みの平均値である。
また、図4のように、透過側流路材が分離膜の透過側面に固着している場合においても同様に手法で計算できる。ただし、この場合は流路材が複数存在することになり、凸部の中心と隣接する凸部の中心との間に占める透過側流路材の横断面積は2つ(S1およびS2)存在することになり、横断面積SはS1とS2の和に相当する。
具体的な測定方法としては、上述のように透過側流路材を切断し、顕微鏡画像解析装置を用いて算出することができる。
特定の横断面積比を有する透過側流路材を本発明の分離膜エレメントに配置することにより、透過側流路の流動抵抗を低減することができ、それに伴い、流動抵抗が大きい流路材を含む分離膜エレメントと、同じ回収率で運転した際、供給水の流速が速まり濃度分極を小さくでき、特に高回収率運転下における濃度分極の低減、スケール発生を抑制することができる。
一般的な分離膜エレメントは回収率30%以下で運転するが、本発明の分離膜エレメントでは回収率35%以上においても安定に作動することができ、回収率が高くなるほど従来の分離膜エレメントに対して優位性を発現することができる。
図5における透過側流路材の厚みH0は、0.1mm以上1mmであることが好ましい。厚みの測定は、電磁式、超音波式、磁力式、光透過式等さまざまな方式のフィルム膜厚測定器が市販されているが、非接触のものであればいずれの方式でもよい。ランダムに10ヶ所で測定を行いその平均値で評価する。0.1mm以上であることで透過側流路材としての強度を備え、応力が負荷されても透過側流路材の潰れや破れを引き起こすこと無く取り扱うことができる。また、厚みが1mm以下で集水管への巻囲性を損なうことなく、エレメント内に挿入できる分離膜や流路材数を増加させることができる。
なお、図4のように透過側流路材が分離膜の透過側に固着している場合は、透過側流路材の厚みH0は、後述する透過側流路材の凸部の高さH1と同じである。
図5における透過側流路材の凸部の高さH1は、0.05mm以上0.8mm以下であることが好ましく、溝幅Dは0.02mm以上0.8mm以下であることが好ましい。凸部の高さや溝幅Dは、透過側流路材の横断面を市販のマイクロスコープなどで観察することで測定することができる。
凸部の高さや溝幅D、および積層された分離膜とで形成される空間が流路となることができ、凸部の高さや溝幅Dが上記範囲であることで、加圧ろ過時の膜落込みを抑制しつつ、流動抵抗を低減し、耐圧性と造水性能に優れた分離膜エレメントを得ることができる。
また、凸部がドット状のように、MDおよびCDのいずれの方向にも凸部が離れて配置されるような場合(図6参照)は、溝長さEは溝幅Dと同様に設定することができる。
図5における透過側流路材の凸部の幅Wは、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.3mm以上である。幅Wが0.2mm以上であることで、分離膜エレメントの運転時透過側流路材に圧力がかかっても、凸部の形状を保持することができ透過側流路が安定的に形成される。幅Wは、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下である。幅Wが1mm以下であることで、分離膜の透過側の面側の流路を十分確保することができる。
凸部6の幅Wは、次のように測定される。まず、第1方向(分離膜のCD)に垂直な1つの断面において、1つの凸部6の最大幅と最小幅の平均値を算出する。つまり、図7に示すような上部が細く下部が太い凸部6においては、流路材下部の幅と上部の幅を測定し、その平均値を算出する。このような平均値を少なくとも30箇所の断面において算出し、その相加平均を算出することで、1枚の膜当たりの幅Wを算出することができる。
なお、凸部がドット状のように、MDおよびCDのいずれの方向にも凸部が離れて配置されるような場合(図6参照)は、長さXは幅Wと同様に設定することができる。
シート状物の形態としては、編み物や織物、多孔性フィルムや不織布、ネットなどを用いることができ、特に不織布の場合では、不織布を構成する繊維同士で形成された流路となる空間が広くなるため、水が流動しやすく、その結果、分離膜エレメントの造水能が向上するため好ましい。
また、透過側流路材の材料であるポリマーの材質については、透過側流路材としての形状を保持し、透過水中への成分の溶出が少ないものであるならば特に限定されず、例えば、ナイロン等のポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリフルオロエチレン系等の合成樹脂が挙げられるが、特に高圧化に耐えうる強度や親水性を考慮するとポリオレフィン系やポリエステル系を用いるのが好ましい。
シート状物が複数の繊維から構成される場合では、繊維がたとえばポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘構造を有するものを用いてもよい。
透過側流路材の両面に分離膜が配置された際、凸部と隣接する凸部の空間は、透過水の流路となることができる。流路は、透過側流路材自体が波板状、矩形波状、三角波状などに賦形加工されていたり、透過側流路材の一面が平坦で他の表面が凹凸状に加工されていたり、透過側流路材表面に他の部材が凹凸形状に積層されることによって形成されたものであってもよい。
本発明の透過側流路材は、流路を形成する凸部が、図2に示すようなドット状でも良い。ドットの配列は千鳥型に配置された場合は、供給水を受圧する時の応力が分散され、陥没の抑制に有利である。なお、図2には断面(シート平面に対して平行面)が円である円柱状の突起を記載したが、多角形や楕円等、特に断面形状については限定しない。また、異なる断面の凸部が混在していてもよい。また、図7に示すような溝が一方向に並んで連続した溝を有する凹凸形状であってもよい。
巻回方向に垂直な方向での断面形状において、幅に変化があるような台形状の壁状物、楕円柱、楕円錐、四角錐あるいは半球のような形状であってもよい。
(1−3)分離膜
本発明の分離膜は、基材及び多孔性支持層を含む支持膜と、多孔性支持層上に設けられた、架橋ポリアミド(以下、単に「ポリアミド」と称することもある。)と親水性高分子とを含む分離機能層とを備える。
本発明の分離膜は、基材及び多孔性支持層を含む支持膜と、多孔性支持層上に設けられた、架橋ポリアミド(以下、単に「ポリアミド」と称することもある。)と親水性高分子とを含む分離機能層とを備える。
(1−3−1)分離機能層
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層である。分離機能層の組成及び厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層である。分離機能層の組成及び厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
分離機能層は、具体的には、架橋ポリアミド及び親水性高分子を含む。
架橋ポリアミドは、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合によって得られる。
ここで多官能アミンは、芳香族多官能アミン及び脂肪族多官能アミンから選ばれる少なくとも1つのアミンであることが好ましい。
芳香族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミンであり、特に限定されるものではないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンなどが例示される。また、そのN−アルキル化物として、N,N−ジメチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジエチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラフェニレンジアミンなどが例示される。
性能発現の安定性から、特にメタフェニレンジアミン(以下、「m−PDA」という)、又は1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
また、脂肪族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミンであり、好ましくはピペラジン系アミン及びその誘導体である。
例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジン、エチレンジアミンなどが例示される。
性能発現の安定性から、特に、ピペラジン又は2,5−ジメチルピペラジンが好ましい。
これらの多官能アミンは、1種を単独で用いても、2種類以上を混合物として用いてもよい。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物であり、上記多官能アミンとの反応によりポリアミドを与えるものであれば特に限定されない。
多官能酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸等のハロゲン化物を用いることができる。酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応性の容易さ等の点から、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロライド(以下、「TMC」という)が好ましい。
上記多官能酸ハロゲン化物は1種を単独で用いても、2種類以上を混合物として用いてもよい。
上記ポリアミドは、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物の重合反応に由来するアミド基、未反応末端官能基に由来するアミノ基及びカルボキシ基を有する。これらの官能基量は、複合半透膜の透水性能や塩除去率に影響を与える。
ポリアミド形成後に化学処理を行うと、ポリアミド中の官能基を変換したり、ポリアミドに新たな官能基を導入したりすることができ、これによって複合半透膜の透過水量や塩除去率を向上させることができる。導入する官能基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、アゾ基等が挙げられる。
親水性高分子とは、25℃の条件下で水1Lに対し0.5g以上溶解する高分子である。親水性高分子は、その水和構造によって、分離機能層に汚れが付着することを抑制できる。水和構造によるファウリング抑制は、ノニオン性、カチオン性及びアニオン性のいずれの汚れについても効果的である。
また、親水性高分子が分離機能層表面に存在することで、汚れはポリアミドよりも親水性高分子に付着しやすい。つまり、仮に汚れが分離機能層表面に付着しても、親水性高分子によって、汚れはポリアミドから離れた位置に付着すると考えられる。よって、分離膜の性能低下が低く抑えられる。
以上のことから、親水性高分子は分離機能層表面に存在していることが好ましい。言い換えると、分離機能層は、ポリアミドを主成分とする第1層と、親水性高分子を主成分とする第2層とを備え、第1層が多孔性支持層側に配置されることが好ましい。
本発明者らは鋭意研究の結果、親水性高分子が下記化学式(1)に示す構造を含み、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて前記複合半透膜の分離機能層側を測定したとき、負2次イオンm/z=71.02、103.02、107.06、133.04のカウント数をそれぞれa、b、c、dとしたとき、a/(b+c+d)≧1を満たすことで、優れた低ファウリング性を示すことを見出した。
なお、負2次イオンm/z=71.02は親水性高分子の部分構造に、103.02、107.06、133.04は芳香族ポリアミドの部分構造に帰属される。
本発明の親水性高分子は、25℃、75%RH条件下における含水率が40%以上であることが好ましい。含水率とは、絶乾状態の高分子の重量をWdry、25℃、75%RH条件下での平衡重量をW75とすると、以下の式(1)により求めることが出来る。
親水性高分子の25℃、75%RH条件下における含水率が40%以上であることで、分離機能層は十分な水和構造を保持することができ、優れた耐ファウリング性を発現する。より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。
ここで、耐ファウリング性とは、ファウリングを抑制することと、ファウリングが起きたとしても性能低下を小さく抑えることとのいずれをも含み得る。
本発明の親水性高分子は、少なくとも一つの分岐点を有することが好ましい。分岐点とは、主鎖と側鎖が接する点であり、3本以上の高分子鎖が接する点のことである(図8)。分岐点を有するとは、その高分子が直鎖状でないことと同義であり、高分子が複数の末端を有するとも言い換えることができる。
分岐点をもつ高分子としては、星型高分子、櫛形高分子、ハイパーブランチポリマー、およびデンドリマー等が好ましく例示される。星型高分子は図8(b)に示すように、1つの分岐点から複数の直鎖状高分子が出ている高分子である。櫛型高分子とは1つの直鎖状高分子鎖(主鎖)上に複数の分岐点を有し、分岐点から複数の高分子(側鎖)が出ている高分子である。ハイパーブランチポリマーおよびデンドリマーは図8(c)に示すように中心から放射状に分岐した構造の高分子であり、繰り返し単位中に分岐点を有する。
一般に、分岐点をもつ高分子は同じ分子量の直鎖状高分子に比べ、高分子鎖の慣性半径が小さくなる。親水性高分子が分岐点を有することで、単位体積あたりに配置できる親水性高分子の量を増やすことができる。すなわち、親水性高分子を高密度で導入することができる。また、分岐点をもつ高分子は直鎖状高分子に比べ分子鎖同士の絡み合いを抑制できるため、塩濃度が高い被処理水に対しても水和構造を維持し、優れた耐ファウリング性を維持することができる。
本発明の親水性高分子は分岐度が0.2以上0.8以下あることが好ましい。分岐度とは、ある分子量nの直鎖状高分子の慣性半径をRnL、分岐高分子の慣性半径をRnBとすると、以下の式(2)により求めることが出来る。
分岐度が0.8以下であることで、親水性高分子を高密度で導入でき、優れた耐ファウリング性を発現する。また、分岐度が0.2以上であることで、高分子のゲル化を抑制し、良好な取り扱い性を維持することができる。より好ましくは0.25以上0.75以下、さらに好ましくは0.3以上0.7以下である。
なお、慣性半径は多角光散乱検出器(以下、「MALS」という)を用いることで測定できる。慣性半径は分子鎖の重心からのひろがりを示す値である。MALSは、例えばWyatt Technology社製DAWN HELEOSが使用できる。
本発明の分離機能層表面のラザフォード後方散乱分光法(RBS)により測定されたpH10における表面から深さ2nm領域の解離カルボキシル基量が0.35mol/kg以上0.45mol/kg以下であり、かつ表面方向からの深さ2nmにおける解離カルボキシル基量D1と、表面方向から深さ50nmにおける解離カルボキシル基量D2が、D1/D2>2を満たす。解離カルボキシル基量が0.35mol/kg以上であることで、優れた耐ファウリング性を発現し、0.45mol/kg以下であることで透水性の低下を抑制できる。また、D1/D2>2を満たすことで、カルボキシル基が分離機能層表層に多く存在し、優れた耐ファウリング性と除去性を発現する。
RBS測定は試料中に高速イオンを照射し、試料中の原子核から受ける弾性散乱の散乱イオンエネルギーと収量から、試料深さ方向の元素組成を読み取る測定法である。
RBS測定によりpH10における解離カルボキシル基量を読み取る方法は例えば以下の方法を用いることができる。まず、5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄する。続いて、試料をメタノール50%水溶液中で16時間浸漬し、さらに試料をpH10に調整した硝酸銀1×10−4M水溶液に30分浸漬する。その後遊離の銀を取り除くため、メタノールで5分ずつ浸漬洗浄する。
銀イオンは解離カルボキシル基の対イオンとなるため、得られた試料のRBS測定における銀定量結果から各深さにおける解離カルボキシル基量を導き出すことができる。
なお、RBS測定で用いられる深さ(厚さ)の単位は1015atoms/cm2である。この単位をnmに換算するために以下の式を用いる。
深さ(cm)=面密度(atoms/cm2)/原子数密度(atoms/cm3)
本発明の分離機能層表面の自乗平均面粗さ(以下、「Rms」ともいう)は、80nm以上である。自乗平均面粗さが80nm以上であることで、分離機能層の表面積が大きくなり、透過水量が高くなる。一方、自乗平均面粗さが80nm未満の場合には透過水量が低下する。より好ましくは90nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。
本発明の分離機能層表面の自乗平均面粗さ(以下、「Rms」ともいう)は、80nm以上である。自乗平均面粗さが80nm以上であることで、分離機能層の表面積が大きくなり、透過水量が高くなる。一方、自乗平均面粗さが80nm未満の場合には透過水量が低下する。より好ましくは90nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。
なお、自乗平均面粗さは原子間力顕微鏡(以下、「AFM」という)で測定できる。自乗平均面粗さは基準面から指定面までの偏差の自乗を平均した値の平方根である。ここで測定面とは全測定データの示す面をいい、指定面とは粗さ計測の対象となる面で、測定面のうちクリップで指定した特定の部分をいい、基準面とは指定面の高さの平均値をZ0とするとき、Z=Z0で表される平面をいう。AFMは、例えばデジタル・インスツルメンツ社製NanoScope IIIaが使用できる。
分離機能層表面の自乗平均面粗さは、界面重縮合によって分離機能層を形成する時のモノマー濃度や温度によって制御できる。例えば、界面重縮合時の温度が低いと自乗平均面粗さは小さくなり、温度が高いと自乗平均面粗さは大きくなる。また、分離機能層表面に親水性高分子による修飾を行う際に、親水性高分子層が厚いと自乗平均面粗さは小さくなるため、自乗平均面粗さが80nm以上となるように修飾することで高い透水量を維持できる。
水への溶解性を向上させる効果や、負電荷を有するファウラントの付着を低減させる効果から、本発明の親水性高分子は少なくとも一つの酸性基を有することが好ましい。
好ましい酸性基としては、カルボキシ基、ホスホン酸基、リン酸基及びスルホン酸基であり、親水性高分子にこれらのうちの1つが単独で含まれていてもよく、2つ以上が含まれていてもよい。これらの酸性基の構造としては、酸の形態、エステル化合物、無水物、及び金属塩のいずれの状態で存在してもよい。
これら親水性高分子は、重合体の化学的安定性からエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体であることが好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でカルボキシ基を有するモノマーとしては、以下のものが例示される。マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸及び対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシン及び4−ビニル安息香酸が挙げられ、中でも汎用性、共重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が好ましく、ポリマーPとして、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でホスホン酸基を有するモノマーとしては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸及び2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でリン酸エステル基を有するモノマーとしては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸及び2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸及び2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェートならびに1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素ホスフェートが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でスルホン酸基を有するモノマーとしては、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸、2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパン−1−スルホン酸、3−(アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、又は3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸が挙げられる。
親水性高分子は上記エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独重合体でもよいが、目的に応じて2成分以上のモノマーの共重合体であってもよい。共重合成分の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、イソブチルビニルエーテル、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、2−アミノエチルメタクリレート、[(2−メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル(3−スルホプロピル)−アンモニウムヒドロキシド、(2−メタクリロイルオキシ)エチル[(2−トリメチルアンモニオ)エチル]ホスフェート、3−{[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ}プロピオネート、またはこれらの親水性高分子と疎水性高分子のブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等が挙げられる。上記親水性高分子の中でも、共重合の容易さ、ファウラントに対する付着性低減の観点から、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルが好ましい。
また、分子内に複数のエチレン性不飽和基を有するモノマーを共重合させることで、生成する高分子が分岐点を有するため、好適に用いることができる。分子内に複数のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−プロピレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド、N,N’−プロピレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
親水性高分子に分岐点を持たせる別の手法として、マクロモノマーを好適に用いることができる。側鎖の種類は特に限定されないが、合成のしやすさ、および親水性の観点からポリアルキレンオキサイドを側鎖にもつマクロモノマーを好適に用いることができる。ポリポリアルキレンオキサイドを側鎖にもつマクロモノマーの例としては、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレンオキサイドモノアクリレート、ポリプロピレンオキサイドモノメタクリレート等が挙げられる。
親水性高分子に分岐点を持たせるその他の手法として、開始点を3つ以上有する開始剤を用いて重合を行う方法や、側鎖に官能基を有するモノマーを共重合し、重合反応後に側鎖の官能基を変換して開始点を持たせて、再度重合反応を行う方法が挙げられる。また、逐次重合系のモノマーを用いる場合は、反応する官能基数の異なるモノマーを適用することで、高分子に分岐点をもたせることができる。
また、通常の重合のほかに、グラフト重合法を適用することができる。グラフト重合法とは、高分子に放射線を照射し、分子内に発生したラジカルを起点にして重合する方法であり、分岐点を有する高分子を合成することができる。
重合後の親水性高分子に、側鎖の官能基と反応する架橋剤を反応させ、高分子反応により架橋構造をとることで分岐点を持たせることは可能だが、透水性、高分子の構造制御の観点から、重合時に分岐点を持たせるよう反応を行うことが好ましい。
親水性高分子において、モノマー単位として酸性基を含む構造の割合は、5mol%以上100mol%以下であることが好ましい。つまり、親水性高分子を構成するモノマーのうち、(酸性基を有するモノマーのmol数/親水性高分子を構成するモノマーのmol数)の比(共重合比)が、5%以上100%以下であることが好ましい。親水性高分子において、酸性基を含むモノマー単位の割合が5mol%以上であると、親水性高分子がポリアミドに十分に結合するので、親水性高分子の運動性により膜面へのファウラントの付着が抑制される。酸性基を含む構造の割合は10mol%以上100mol%以下であるとより好ましく、40mol%以上100mol%以下であるとさらに好ましい。
本発明の親水性高分子の重量平均分子量は、2,000以上、1,500,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上であることで、より十分な水和水の層を有することができ、また1,500,000以下であることで、分離機能層を透過する水の抵抗増大を抑え、より高い透過流速を維持することが出来る。より好ましくは3,000〜1,200,000、さらに好ましくは5,000〜1,000,000である。
親水性高分子は架橋ポリアミドに共有結合で導入されていることが好ましい。親水性高分子が例えば静電相互作用で膜に付着している場合、負荷電をもつファウラントによって親水性高分子と架橋ポリアミドとの間の相互作用が阻害されることで、親水性高分子が膜から剥離するが、共有結合であればこのような剥離が抑制される。
共有結合としては炭素−炭素結合のほか、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、炭酸エステル結合、リン酸エステル結合、硫酸エステル結合、硝酸エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、スルホニル結合が挙げられ、特にアミド結合で導入されていることが好ましい。
具体的には、分離機能層の主成分であるポリアミドに、ポリアミドの末端のカルボン酸又はアミノ基を介して、アミド結合によって親水性高分子が導入されていることが好ましい。つまり、上述の第2層に含まれる親水性高分子は、第1層に含まれるポリアミドとアミド結合していることが好ましい。また、分離機能層の表面において親水性高分子を検出し、その後エッチングし、さらに親水性高分子を検出する、という一連の測定操作を繰り返せば、親水性高分子が分離機能層の表面に多く存在することを確認することは可能である。
親水性高分子が分離機能層にアミド結合によって導入されていることで、複合半透膜(分離膜)は高い耐ファウリング性を発現することができる。親水性高分子が弱い結合や相互作用で導入されている場合には、薬液洗浄等により容易に脱離するため好ましくない。
(1−3−2)支持膜
支持膜は、分離機能層に強度を与えるためのものであり、それ自体は、実質的にイオン等の分離性能を有さない。支持膜は、基材と多孔性支持層とを含む。
支持膜は、分離機能層に強度を与えるためのものであり、それ自体は、実質的にイオン等の分離性能を有さない。支持膜は、基材と多孔性支持層とを含む。
支持膜における孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面における微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような支持膜が好ましい。
支持膜は、例えば基材上に高分子重合体を流延することで、基材上に多孔性支持層を形成することにより得ることができる。支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されない。
基材としては、ポリエステル及び芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種からなる布帛が例示される。機械的及び熱的に安定性の高いポリエステルを使用するのが特に好ましい。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布や短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持層が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求されることから、長繊維不織布をより好ましく用いることができる。
長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
特に、基材の多孔性支持層と反対側に配置される不織布における繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、縦配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向と言う。
不織布基材の繊維配向度としては、多孔性支持層と反対側における繊維の配向度が0°以上25°以下であることが好ましい。ここで繊維配向度とは、支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により支持膜又は複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。支持膜又は複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持層と反対側に配置される繊維と、多孔性支持層側に配置される繊維との配向度差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm2/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透過水量がより高くなる。これは、支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持層の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上120μm以下の範囲内である。
多孔性支持層の素材にはポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。
ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマー又はコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、又はポリフェニレンスルホンが挙げられ、さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
具体的には、次の式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、支持膜の孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいはポリエステル不織布の上に一定の厚さに流延し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有した支持膜を得ることができる。
上記の支持膜の厚みは、得られる複合半透膜の強度及びそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。支持膜の厚みは、十分な機械的強度及び充填密度を得るためには、30μm以上300μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは100μm以上220μm以下の範囲内である。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金又は白金−パラジウム又は四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜15kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)によって観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製作所社製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する支持膜は、ミリポア社製”ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製”ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるし、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法などに従って製造することもできる。
多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。多孔性支持層の厚みが20μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持層を備える複合半透膜は、より良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持層の厚みが100μmを超えると、製造時の未反応物質の残存量が増加し、それにより透過水量が低下するとともに、耐薬品性が低下するおそれがある。
なお、基材の厚み及び複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、分離機能層の厚みは支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを支持膜の厚みとみなすことができる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持層の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材の厚みもしくは複合半透膜の厚みをシックネスゲージによって測定することが困難な場合、走査型電子顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。
2.製造方法
次に、上記分離膜の製造方法について説明する。製造方法は、支持膜の形成工程及び分離機能層の形成工程を含む。
2.製造方法
次に、上記分離膜の製造方法について説明する。製造方法は、支持膜の形成工程及び分離機能層の形成工程を含む。
(2−1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程及び溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
支持膜の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程及び溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
基材に高分子溶液を塗布する工程において、高分子溶液は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して調製する。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、高分子として例えばポリスルホンを用いる場合、10℃以上60℃以下であることが好ましい。高分子溶液の温度が、この範囲内であれば、高分子が析出することがなく、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により多孔性支持層が基材に強固に接合し、良好な支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1秒以上5秒以下であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、多孔性支持層の成分である高分子を溶解しないものであればよい。凝固浴の組成によって得られる支持膜の膜形態が変化し、それによって得られる複合半透膜も変化する。
凝固浴の温度は、−20℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは10℃以上50℃以下である。凝固浴の温度がこの範囲以内であれば、熱運動による凝固浴面の振動が激しくならず、膜形成後の膜表面の平滑性が保たれる。また温度がこの範囲内であれば凝固速度が適当で、製膜性が良好である。
次に、このようにして得られた支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は40℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは60℃以上95℃以下である。この範囲内であれば、支持膜の収縮度が大きくならず、透過水量が良好である。また、温度がこの範囲内であれば洗浄効果が十分である。
(2−2)分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。本発明の分離機能層の形成工程は、
(a)基材及び多孔性支持層を含む支持膜上に架橋ポリアミドを形成する工程、及び
(b)上記(a)で得られた前記架橋ポリアミドに親水性高分子を接触させる工程、
を有する。
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。本発明の分離機能層の形成工程は、
(a)基材及び多孔性支持層を含む支持膜上に架橋ポリアミドを形成する工程、及び
(b)上記(a)で得られた前記架橋ポリアミドに親水性高分子を接触させる工程、
を有する。
前記工程(a)は、下記工程(a)’であることが好ましい。
(a)’多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、架橋ポリアミドを形成する工程。
(a)’多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、架橋ポリアミドを形成する工程。
上記工程(b)は、工程(a)の後であればよい。上記工程(a)はポリアミドを主成分とする第1層を形成し、その後の工程(b)により第1層の表面に親水性高分子を主成分とする第2層が形成される。上記工程(b)は架橋ポリアミドに親水性高分子を導入する工程であり、親水性高分子は、分離機能を実質的に担う架橋ポリアミドをほとんど通過しないと考えられるため、第1層の表面に第2層が形成される。
工程(a)において、多官能酸ハロゲン化物を溶解する有機溶媒としては、水と非混和性のものであって、支持膜を破壊しないものであり、かつ、架橋ポリアミドの生成反応を阻害しないものであればいずれであってもよい。
代表例としては、液状の炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。オゾン層を破壊しない物質であることや入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全性を考慮すると、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
多官能アミン水溶液や多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液には、両成分間の反応を妨害しないものであれば、必要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、界面活性剤、酸化防止剤等の化合物が含まれていてもよい。
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、多官能アミン水溶液で支持膜表面を被覆する。ここで、多官能アミンを含有する水溶液の濃度は、0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下である。
多官能アミン水溶液で支持膜表面を被覆する方法としては、支持膜の表面がこの水溶液によって均一にかつ連続的に被覆されればよく、公知の塗布手段、例えば、水溶液を支持膜表面にコーティングする方法、支持膜を水溶液に浸漬する方法等で行えばよい。
支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。
次いで、過剰に塗布された水溶液を液切り工程により除去することが好ましい。液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保持して自然流下させる方法等がある。液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の全部あるいは一部を除去してもよい。
その後、多官能アミン水溶液で被覆した支持膜に、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布し、界面重縮合により架橋ポリアミドを形成させる。界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。
有機溶媒溶液における多官能酸ハロゲン化物の濃度は、特に限定されないが、低すぎると活性層であるポリアミドの形成が不十分となり欠点になる可能性があり、高すぎるとコスト面から不利になる。そのため、0.01重量%以上1.0重量%以下程度が好ましい。
次に、反応後の有機溶媒溶液を液切り工程により除去することが好ましい。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。
この場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下であることが好ましく、1分以上3分以下であるとより好ましい。把持する時間が1分以上であることで目的の機能を有するポリアミドを得やすく、5分以下であることで有機溶媒の過乾燥による欠点の発生を抑制できるので、性能低下を抑制することができる。
次に、上述の方法により得られたポリアミドを、25℃以上90℃以下の範囲内で、1分以上60分以下熱水で洗浄処理することで、複合半透膜の溶質阻止性能や透過水量をより一層向上させることができる。ただし、熱水の温度が高すぎる場合、熱水洗浄処理後に急激に冷却すると耐薬品性が低下する。そのため、熱水洗浄は、25℃以上60℃以下の範囲内で行うことがより好ましい。また、61℃以上90℃以下の高温で熱水洗浄処理する際には、熱水洗浄処理後は、緩やかに冷却することが好ましい。例えば、段階的に低い温度の熱水と接触させて室温まで冷却させる方法等がある。
また、上記の熱水洗浄する工程において、熱水中に酸又はアルコールが含まれていてもよい。酸又はアルコールを含むことで、ポリアミドにおける水素結合の形成をより制御しやすくなる。
酸としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸や、クエン酸、シュウ酸などの有機酸などが挙げられる。酸の濃度は、pH2以下となるように調整することが好ましく、pH1以下であるとより好ましい。
アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの1価アルコールや、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。アルコールの濃度は、好ましくは10重量%以上100重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上50重量%以下である。
工程(b)では、親水性高分子をポリアミドに導入する。前述のように、弱い結合や相互作用で導入すると薬液洗浄等により容易に脱離するため、共有結合で導入することが好ましい。
工程(b)で導入される親水性高分子の構造、種類等については、上述したとおりである。
この工程として、親水性高分子及び縮合剤を含む水溶液を、ポリアミド表面に接触させる方法が好適に用いられる。ポリアミド表面の官能基と、親水性高分子に含まれる官能基との縮合反応によってアミド結合を形成し、ポリアミド表面に親水性高分子が導入される。
分離機能層に親水性高分子及び縮合剤を含む水溶液を接触させる方法は特に限定されず、例えば、複合半透膜全体を親水性高分子と縮合剤とを含む水溶液中に浸漬してもよいし、親水性高分子及び縮合剤を含む水溶液を複合半透膜表面にスプレーしてもよく、ポリアミドと親水性高分子及び縮合剤が接触するのであれば、その方法は限定されない。
ポリアミド表面に接触させる親水性高分子は単独であっても数種混合して用いてもよい。
親水性高分子は、重量濃度で10ppm以上1%以下の水溶液として使用するのが好ましい。親水性高分子の濃度が10ppm以上であれば、ポリアミドに存在する官能基と親水性高分子を十分に反応させることができる。一方で、1%を超えると親水性高分子層が厚くなるため、造水量が低下するおそれがある。
また、親水性高分子の水溶液には必要に応じて他の化合物を混合することもできる。例えば、ポリアミド表面と親水性高分子の反応を促進するため、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどのアルカリ性金属化合物を添加してもよい。また、ポリアミド中に残存する、水と非混和性の有機溶媒や、多官能酸ハロゲン化物や多官能アミン化合物などのモノマー、及びこれらモノマーの反応で生じたオリゴマーなどを除去するために、ドデシル硫酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加することも好ましい。
本発明において縮合剤とは、水中でカルボキシ基を活性化させ、ポリアミドのアミノ基との縮合反応を進行する化合物を指す。このような化合物として、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1,3−ビス(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)カルボジイミド、及び4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(以下、「DMT−MM」という)が挙げられる。これらの化合物の中でも、縮合反応時の安定性、及び縮合反応後の副生成物の毒性の低さなどから、DMT−MMが特に好ましく用いられる。
親水性高分子と縮合剤とを含む水溶液中の縮合剤の濃度は、活性化させるカルボキシ基濃度より高ければ特に限定されず、反応性基との縮合に十分な効果を得ることができる。
親水性高分子と縮合剤とを含む水溶液のpHは2以上12以下であることが好ましい。水溶液のpHを上記範囲内とすることで、酸やアルカリによる膜の劣化を抑制し、複合半透膜の塩除去性能を維持することが出来る。また、親水性高分子が負荷電を有する官能基数が多い場合は、ポリアミド中のカルボキシ基の解離で生じた負荷電によってポリアミドと親水性高分子の接触頻度が低下するため、より好ましくはpH6以下、さらに好ましくはpH5以下である。
なお、親水性高分子の製法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、親水性高分子は、モノマーと重合開始剤とを水溶液中で混合し、適切な温度下に置くことで合成することができる。モノマーの構造の例については既に述べたとおりである。
(2−3)分離膜エレメント
分離膜エレメント5Bの作製方法としては、次の通りである。具体的には供給水側流路材1を分離膜2で挟み込み、透過側流路材3を積層させて一組のユニットとし、有孔集水管4の周囲にスパイラル状に巻囲する。その後、両端のエッジカットを行い、一端から濃縮水の排出を防ぐための封止板(第1端板91に相当する)の取り付け、さらに、供給水が流入する第2端板92に相当する端板を被覆された巻囲体の他端に取り付け、分離膜エレメントを得ることができる。
3.複合半透膜の利用
本発明の分離膜エレメントは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
分離膜エレメント5Bの作製方法としては、次の通りである。具体的には供給水側流路材1を分離膜2で挟み込み、透過側流路材3を積層させて一組のユニットとし、有孔集水管4の周囲にスパイラル状に巻囲する。その後、両端のエッジカットを行い、一端から濃縮水の排出を防ぐための封止板(第1端板91に相当する)の取り付け、さらに、供給水が流入する第2端板92に相当する端板を被覆された巻囲体の他端に取り付け、分離膜エレメントを得ることができる。
3.複合半透膜の利用
本発明の分離膜エレメントは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は0.1MPa以上、10MPa以下が好ましい。
供給水温度は高くなると塩除去率が低下するが、低くなるに従い膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなるとスケールが発生しやすくなり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
本発明に係る分離膜エレメントによって処理される原水としては、海水、かん水、排水等の50mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させた残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、単に‘ppm’と記載した場合には‘重量ppm’であることを意味する。
(NaCl除去率)
分離膜エレメントについて、温度25℃、pH7、NaCl濃度2,000ppmに調整した評価水を操作圧力1.0MPaで供給し、回収率40%で2時間運転した。供給水及び透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で測定して、それぞれの実用塩分、すなわちNaCl濃度を得た。こうして得られたNaCl濃度及び下記式に基づいて、NaCl除去率を算出した。
分離膜エレメントについて、温度25℃、pH7、NaCl濃度2,000ppmに調整した評価水を操作圧力1.0MPaで供給し、回収率40%で2時間運転した。供給水及び透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で測定して、それぞれの実用塩分、すなわちNaCl濃度を得た。こうして得られたNaCl濃度及び下記式に基づいて、NaCl除去率を算出した。
NaCl除去率(%)=100×{1−(透過水中のNaCl濃度/供給水中のNaCl濃度)}
(造水量)
前項の試験において、透過水を1分間サンプリングを行い、1日あたりの透水量(ガロン)を造水量(GPD(ガロン/日))として表した。
(造水量)
前項の試験において、透過水を1分間サンプリングを行い、1日あたりの透水量(ガロン)を造水量(GPD(ガロン/日))として表した。
(ファウリング試験)
初めに、25℃、pH7、NaCl濃度が2,000ppmである水溶液を1.0MPaの圧力で2時間ろ過したときの造水量を初期造水量(F1)とした。続いてフミン酸を50mg/Lの濃度となるように水溶液に加えて2時間ろ過したときの造水量をF2とし、F2/F1の値を算出した。
初めに、25℃、pH7、NaCl濃度が2,000ppmである水溶液を1.0MPaの圧力で2時間ろ過したときの造水量を初期造水量(F1)とした。続いてフミン酸を50mg/Lの濃度となるように水溶液に加えて2時間ろ過したときの造水量をF2とし、F2/F1の値を算出した。
(通気度)
通気度は、JIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定した。基材を200mm×200mmの大きさに切り出し、フラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から通気度を求めた。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1を使用した。
通気度は、JIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定した。基材を200mm×200mmの大きさに切り出し、フラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から通気度を求めた。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1を使用した。
(飛行時間型二次イオン質量分析測定)
複合半透膜を室温・真空下で乾燥し、TOF SIMS 5 (ION TOF 社製)装置を使用し、飛行時間型二次イオン質量分析測定を行った(2次イオン極性:負、質量範囲(m/z)=0−200、ラスターサイズ:300μm、スキャン数:16、ピクセル数(1辺)=256、測定真空度=4×10−7Pa以下、1次イオン種:Bi3 ++、1次イオン加速電圧=25kV、パルス幅=12.5、13.3ns、バンチング:あり、帯電中和:あり、後段加速:10kV)。複合半透膜の分離機能層側表面において、負2次イオンm/z=71.02、 103.02、 107.06、 133.04のカウント数をそれぞれ求め、それぞれa、b、c、dとし、a/(b+c+d)の値を求めた。
複合半透膜を室温・真空下で乾燥し、TOF SIMS 5 (ION TOF 社製)装置を使用し、飛行時間型二次イオン質量分析測定を行った(2次イオン極性:負、質量範囲(m/z)=0−200、ラスターサイズ:300μm、スキャン数:16、ピクセル数(1辺)=256、測定真空度=4×10−7Pa以下、1次イオン種:Bi3 ++、1次イオン加速電圧=25kV、パルス幅=12.5、13.3ns、バンチング:あり、帯電中和:あり、後段加速:10kV)。複合半透膜の分離機能層側表面において、負2次イオンm/z=71.02、 103.02、 107.06、 133.04のカウント数をそれぞれ求め、それぞれa、b、c、dとし、a/(b+c+d)の値を求めた。
(RBS)
5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄した。続いて、試料をメタノール50%水溶液中で16時間浸漬し、さらに試料をpH10に調整した硝酸銀1×10−4M水溶液に30分浸漬した。その後遊離の銀を取り除くため、メタノールで5分ずつ浸洗浄した。
5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄した。続いて、試料をメタノール50%水溶液中で16時間浸漬し、さらに試料をpH10に調整した硝酸銀1×10−4M水溶液に30分浸漬した。その後遊離の銀を取り除くため、メタノールで5分ずつ浸洗浄した。
得られた試料を以下の条件において測定した。
・装置:National Electrostatics Corporation製 Pelletron 3SDH
・入射イオン :4He++
・入射エネルギー:2300 keV
・入射角:0 deg
・散乱角:160 deg
・試料電流:4 nA
・ビーム径:2 mmφ
・面内回転:無
・照射量:72 μC
試料(複合半透膜)の表層から2nmもしくは50nmまでの各元素の平均組成(atomic%)を算出した。銀含有量が解離カルボキシル基量に対応すると仮定し、以下の計算により解離カルボキシル基量の定量を行った。
(1)atomic%をwt%(重量百分率)に換算する。
(2)銀のwt%から試料1kg中の銀の重量を求める。
(3)(2)の値から銀(=解離カルボキシル基)のmol/kg値を求める。
・装置:National Electrostatics Corporation製 Pelletron 3SDH
・入射イオン :4He++
・入射エネルギー:2300 keV
・入射角:0 deg
・散乱角:160 deg
・試料電流:4 nA
・ビーム径:2 mmφ
・面内回転:無
・照射量:72 μC
試料(複合半透膜)の表層から2nmもしくは50nmまでの各元素の平均組成(atomic%)を算出した。銀含有量が解離カルボキシル基量に対応すると仮定し、以下の計算により解離カルボキシル基量の定量を行った。
(1)atomic%をwt%(重量百分率)に換算する。
(2)銀のwt%から試料1kg中の銀の重量を求める。
(3)(2)の値から銀(=解離カルボキシル基)のmol/kg値を求める。
なお、深さは原子の面密度(atoms/cm2)で表されるため、表面からの深さについて、ポリアミドの原子数密度を10.0×1022atoms/cm3とし、算出した。
(親水性高分子の合成)
(合成例1)
アクリル酸を、あらかじめ窒素でバブリングを行った純水に溶解した後、開始剤として過硫酸ナトリウムを添加して、70℃で2時間重合反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(合成例1)
アクリル酸を、あらかじめ窒素でバブリングを行った純水に溶解した後、開始剤として過硫酸ナトリウムを添加して、70℃で2時間重合反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(合成例2)
アクリル酸を、あらかじめ窒素でバブリングを行ったエタノールに溶解した後、開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(V501)、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオカーボネートを添加して、90℃で80分間重合反応を行った後、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを添加して、さらに30分間反応を行い、ポリマー溶液を得た。
アクリル酸を、あらかじめ窒素でバブリングを行ったエタノールに溶解した後、開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(V501)、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオカーボネートを添加して、90℃で80分間重合反応を行った後、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを添加して、さらに30分間反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(合成例3)
N,N−ジメチルアクリルアミドを、あらかじめ窒素でバブリングを行ったエタノールに溶解した後、開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(V501)、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオカーボネートを添加して、90℃で80分間重合反応を行った後、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを添加して、さらに30分間反応を行い、ポリマー溶液を得た。
N,N−ジメチルアクリルアミドを、あらかじめ窒素でバブリングを行ったエタノールに溶解した後、開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(V501)、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオカーボネートを添加して、90℃で80分間重合反応を行った後、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを添加して、さらに30分間反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(合成例4)
アクリル酸と、N,N−ジメチルアクリルアミドをモル比2:1で仕込み、あらかじめ窒素でバブリングを行ったエタノールに溶解した後、開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(V501)、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオカーボネートを添加して、90℃で80分間重合反応を行った後、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを添加して、さらに30分間反応を行い、ポリマー溶液を得た。
アクリル酸と、N,N−ジメチルアクリルアミドをモル比2:1で仕込み、あらかじめ窒素でバブリングを行ったエタノールに溶解した後、開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(V501)、連鎖移動剤としてS,S−ジベンジルトリチオカーボネートを添加して、90℃で80分間重合反応を行った後、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを添加して、さらに30分間反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(合成例5)
アクリル酸とN,N−ジメチルアクリルアミドのモル比を、1:2に代えた以外は、合成例4と同様にして反応を行い、ポリマー溶液を得た。
アクリル酸とN,N−ジメチルアクリルアミドのモル比を、1:2に代えた以外は、合成例4と同様にして反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(合成例6)
N,N−ジメチルアクリルアミドに代えて、3−(アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸を用いた以外は、合成例4と同様にして反応を行い、ポリマー溶液を得た。
N,N−ジメチルアクリルアミドに代えて、3−(アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸を用いた以外は、合成例4と同様にして反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(合成例7)
アクリル酸と、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレートをモル比2:1で仕込み、あらかじめ窒素でバブリングを行った純水に溶解、混合した後、開始剤である過硫酸ナトリウムを添加して70℃で2時間重合反応を行い、ポリマー溶液を得た。
アクリル酸と、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレートをモル比2:1で仕込み、あらかじめ窒素でバブリングを行った純水に溶解、混合した後、開始剤である過硫酸ナトリウムを添加して70℃で2時間重合反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(合成例8)
アクリル酸と、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレートのモル比を1:5に変えた以外は、合成例7と同様にして反応を行い、ポリマー溶液を得た。
アクリル酸と、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレートのモル比を1:5に変えた以外は、合成例7と同様にして反応を行い、ポリマー溶液を得た。
(分子量および分岐度測定方法)
各合成例で得られた溶液を0.1w/v%になるよう20mMリン酸バッファー(pH7.4)で希釈し、この溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過して試験溶液とし、GPC−MALSにより分岐度を測定・算出した。なお、分岐度算出用に直鎖状のポリマーを別途合成し、直鎖状ポリマーの慣性半径を算出した。GPC−MALS分析の測定条件は次の通りである。
各合成例で得られた溶液を0.1w/v%になるよう20mMリン酸バッファー(pH7.4)で希釈し、この溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過して試験溶液とし、GPC−MALSにより分岐度を測定・算出した。なお、分岐度算出用に直鎖状のポリマーを別途合成し、直鎖状ポリマーの慣性半径を算出した。GPC−MALS分析の測定条件は次の通りである。
(GPC−MALS分析の測定条件)
GPCカラム;TSKgel G3000−PWXL(東ソー株式会社製)、
溶離溶媒;20mMリン酸バッファー(pH7.4)、
標準物質;ポリエチレングリコール(Polymer Laboratories Ltd.製)、
検出;示差屈折計RI−8020(東ソー株式会社製)、
流速;0.5mL/分、
試料溶液使用量;10μL、カラム温度;45℃。
MALS;DAWN HELEOS(Wyatt Technology社製)
(含水率)
親水性高分子を水に溶解し、pH7に調整した後、凍結乾燥により粉末を得た。得られた粉末を25℃、75%RHに調整した雰囲気下にて重量変化が0.1%以下となるまで静置し、重量を測定した。その後、50℃で24時間加熱乾燥し、乾燥後の重量を測定した。それぞれ得られた重量から前記式(1)より含水率を算出した。
GPCカラム;TSKgel G3000−PWXL(東ソー株式会社製)、
溶離溶媒;20mMリン酸バッファー(pH7.4)、
標準物質;ポリエチレングリコール(Polymer Laboratories Ltd.製)、
検出;示差屈折計RI−8020(東ソー株式会社製)、
流速;0.5mL/分、
試料溶液使用量;10μL、カラム温度;45℃。
MALS;DAWN HELEOS(Wyatt Technology社製)
(含水率)
親水性高分子を水に溶解し、pH7に調整した後、凍結乾燥により粉末を得た。得られた粉末を25℃、75%RHに調整した雰囲気下にて重量変化が0.1%以下となるまで静置し、重量を測定した。その後、50℃で24時間加熱乾燥し、乾燥後の重量を測定した。それぞれ得られた重量から前記式(1)より含水率を算出した。
(複合半透膜の作製)
(合成例9)
長繊維からなるポリエステル不織布(通気度2.0mL/cm2/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0重量%DMF溶液を25℃の条件下でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって、多孔性支持層の厚みが40μmである支持膜を作製した。
(合成例9)
長繊維からなるポリエステル不織布(通気度2.0mL/cm2/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0重量%DMF溶液を25℃の条件下でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって、多孔性支持層の厚みが40μmである支持膜を作製した。
次に、この支持膜を2.4重量%のm−PDA水溶液に浸漬した後、余分な水溶液を除去し、さらに0.12重量%のTMCとなるように溶解したn−デカン溶液を多孔性支持層の表面が完全に濡れるように塗布した。次に膜から余分な溶液を除去するために、膜を垂直にして液切りを行って、80℃で1分乾燥させた後、70℃の純水で洗浄し、合成例9の複合半透膜を得た。
(合成例10)
合成例9で得られた複合半透膜を、合成例1で得られたポリマーを300ppmとなるよう調整した溶液に、DMT−MMを0.1%となるよう添加し、20℃で24時間接触させた後、水洗し、合成例10の複合半透膜を得た。
合成例9で得られた複合半透膜を、合成例1で得られたポリマーを300ppmとなるよう調整した溶液に、DMT−MMを0.1%となるよう添加し、20℃で24時間接触させた後、水洗し、合成例10の複合半透膜を得た。
(合成例11)
DMT−MMを添加しなかった以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例11の複合半透膜を得た。
DMT−MMを添加しなかった以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例11の複合半透膜を得た。
(合成例12)
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例2で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例12の複合半透膜を得た。
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例2で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例12の複合半透膜を得た。
(合成例13)
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例3で得られたポリマーを用いた以外は、合成例11と同様にして処理を行い、合成例13の複合半透膜を得た。
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例3で得られたポリマーを用いた以外は、合成例11と同様にして処理を行い、合成例13の複合半透膜を得た。
(合成例14)
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例4で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例14の複合半透膜を得た。
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例4で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例14の複合半透膜を得た。
(合成例15)
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例5で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例15の複合半透膜を得た。
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例5で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例15の複合半透膜を得た。
(合成例16)
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例6で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例16の複合半透膜を得た。
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例6で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例16の複合半透膜を得た。
(合成例17)
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例7で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例17の複合半透膜を得た。
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例7で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例17の複合半透膜を得た。
(合成例18)
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例8で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例18の複合半透膜を得た。
合成例1で得られたポリマーに代えて、合成例8で得られたポリマーを用いた以外は、合成例10と同様にして処理を行い、合成例18の複合半透膜を得た。
(合成例19)
合成例9で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000、ナカライテスク社製)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に2分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、4分間乾燥して、合成例19の複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。
合成例9で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000、ナカライテスク社製)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に2分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、4分間乾燥して、合成例19の複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。
(分離膜エレメントの作製)
(比較例1)
合成例9で得られた複合半透膜を、分離膜エレメントでの有効面積が0.5m2となるように折り畳み断裁加工し、ネット(厚み:0.4mm、ピッチ:3mm×3mm、繊維径:250μm、投影面積比:0.25)を供給水側流路材として、リーフ長1000mmの1枚のリーフを作製した。
(比較例1)
合成例9で得られた複合半透膜を、分離膜エレメントでの有効面積が0.5m2となるように折り畳み断裁加工し、ネット(厚み:0.4mm、ピッチ:3mm×3mm、繊維径:250μm、投影面積比:0.25)を供給水側流路材として、リーフ長1000mmの1枚のリーフを作製した。
得られたリーフの透過側面に透過側流路材としてトリコット(ポリエチレンテレフタレート製、厚み:0.3mm、横断面積比:0.83)を積層し、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)製有孔集水管(幅:350mm、径:18mm、孔数10個×直線状1列)にスパイラル状に巻き付け、外周にさらにフィルムを巻き付けた。テープで固定した後に、エッジカット、端板の取り付けおよびフィラメントワインディングを行い、直径が2インチの分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例2)
透過側流路材として、トリコットに代えて突起物を有する不織布(厚みH0:0.3mm、横断面積比:0.67、高さH1:0.23mm、幅W:0.34mm、溝幅D:0.38mm、以下不織布Aとする)を積層した以外は、比較例1と同様にして分離膜エレメントを作製した。
透過側流路材として、トリコットに代えて突起物を有する不織布(厚みH0:0.3mm、横断面積比:0.67、高さH1:0.23mm、幅W:0.34mm、溝幅D:0.38mm、以下不織布Aとする)を積層した以外は、比較例1と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例3)
合成例9で得られた複合半透膜を、分離膜エレメントでの有効面積が0.5m2となるように折り畳み断裁加工し、ネット(厚み:0.4mm、ピッチ:3mm×3mm、繊維径:250μm、投影面積比:0.25)を供給水側流路材として1枚のリーフを作製した。
合成例9で得られた複合半透膜を、分離膜エレメントでの有効面積が0.5m2となるように折り畳み断裁加工し、ネット(厚み:0.4mm、ピッチ:3mm×3mm、繊維径:250μm、投影面積比:0.25)を供給水側流路材として1枚のリーフを作製した。
得られたリーフの透過側面に透過側流路材としてトリコット(ポリエチレンテレフタレート製、厚み:0.3mm、横断面積比:0.83)を積層し、ABS製有孔集水管(幅:350mm、径:18mm、孔数10個×直線状1列)にスパイラル状に巻き付け、巻囲体の外周面を、筒状に連続押し出し成形されたネット(厚み:0.7mm、ピッチ:5mm×5mm、繊維径:350μm、投影面積比:0.13)で被覆した。被覆された巻囲体の両端のエッジカットを行った後、一端からの供給水流入を防ぐための封止板(第1端板91に相当する)の取り付けを行った。こうして、供給水供給口を分離膜エレメントの外周面のみに設けた。さらに、第2端板92に相当する端板を被覆された巻囲体の他端に取り付け、濃縮流体出口を分離膜エレメントの他端に設けた直径が2インチの分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例4)
透過側流路材として、トリコットに代えて突起物を有する不織布(厚みH0:0.3mm、横断面積比:0.38、高さH1:0.23mm、幅W:0.30mm、溝幅D:1.5mm)を積層した以外は、比較例3と同様にして分離膜エレメントを作製した。
透過側流路材として、トリコットに代えて突起物を有する不織布(厚みH0:0.3mm、横断面積比:0.38、高さH1:0.23mm、幅W:0.30mm、溝幅D:1.5mm)を積層した以外は、比較例3と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例5)
透過側流路材として、トリコットに代えて不織布Aを用いた以外は、比較例3と同様にして分離膜エレメントを作製した。
透過側流路材として、トリコットに代えて不織布Aを用いた以外は、比較例3と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例6)
膜リーフのリーフ長を700mmに代えた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
膜リーフのリーフ長を700mmに代えた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例7)
分離膜として、合成例19を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例19を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例8)
分離膜として、合成例10を用いた以外は、比較例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例10を用いた以外は、比較例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例9)
分離膜として、合成例10を用いた以外は、比較例3と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例10を用いた以外は、比較例3と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例10)
分離膜として、合成例13を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例13を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例11)
分離膜として、合成例15を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例15を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(比較例12)
分離膜として、合成例18を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例18を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(実施例1)
分離膜として、合成例10を用いた以外は、比較例6と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例10を用いた以外は、比較例6と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(実施例2)
分離膜として、合成例11を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例11を用いた以外は、比較例5と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(実施例3)
分離膜として、合成例10を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例10を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(実施例4)
分離膜として、合成例12を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例12を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(実施例5)
分離膜として、合成例14を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例14を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(実施例6)
分離膜として、合成例16を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例16を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
(実施例7)
分離膜として、合成例18を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜として、合成例18を用いた以外は、実施例2と同様にして分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で各性能を評価したところ、結果は表1の通りであった。
以上のように、本発明の分離膜エレメントは、優れた耐ファウリング性を実現可能であることが分かった。すなわち、膜汚染物質に対する高い付着抑制能を持ち、長期間安定して高い性能を維持することができる。
本発明の分離膜エレメントを用いれば、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。本発明の分離膜エレメントは、特に、かん水又は海水の脱塩に好適に用いることができる。
1 供給水側流路財
101 供給水
102 透過水
103 濃縮水
2 分離膜
3 透過側流路材
4 有孔集水管
5 一般的な分離膜エレメント
5B 本発明の分離膜エレメント
6 凸部
7 凹部
8 貫通孔
821 多孔性部材に設けられた孔
91 孔無し端板
92 孔付端板
10 高分子鎖
11 分岐点
D 溝幅
E 溝長さ
H0 透過側流路材の厚み
H1 透過側流路材の凸部の高さ
J 貫通孔の幅
K 貫通孔の長さ
S 透過側流路材の凸部の横断面積
VF 単位時間あたりの供給水流量
VP 単位時間あたりの透過水量
W 透過側流路材の凸部の幅
X 透過側流路材の凸部の長さ
101 供給水
102 透過水
103 濃縮水
2 分離膜
3 透過側流路材
4 有孔集水管
5 一般的な分離膜エレメント
5B 本発明の分離膜エレメント
6 凸部
7 凹部
8 貫通孔
821 多孔性部材に設けられた孔
91 孔無し端板
92 孔付端板
10 高分子鎖
11 分岐点
D 溝幅
E 溝長さ
H0 透過側流路材の厚み
H1 透過側流路材の凸部の高さ
J 貫通孔の幅
K 貫通孔の長さ
S 透過側流路材の凸部の横断面積
VF 単位時間あたりの供給水流量
VP 単位時間あたりの透過水量
W 透過側流路材の凸部の幅
X 透過側流路材の凸部の長さ
Claims (6)
- 有孔集水管と、
供給側の面と透過側の面とを有し、透過側の面同士が向かい合うように重ねられ、かつ前記有孔集水管の周囲に巻囲されることで巻囲体を形成する複数の分離膜と、
前記分離膜の前記透過側の面の間に設けられる透過側流路材と、
を備える分離膜エレメントであって、
前記透過側流路材は、前記有孔集水管の長手方向に垂直な方向に沿って延びる複数の凸部を有し、前記有孔集水管の長手方向に平行な断面において、透過側流路材の隣接する凸部の中心間の距離と前記中心における前記透過側流路材の厚みの積に対する、前記中心の間を占める透過側流路材の面積との比である横断面積比が0.4以上0.75以下であり、
前記分離膜エレメントは、前記有孔集水管の長手方向における前記巻囲体の端部に設けられた原水供給部と、前記巻囲体の外周面に設けられた濃縮水排出部と、をさらに備え、
前記分離膜は基材および多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる複合半透膜であり、
前記分離機能層が、架橋ポリアミドと、親水性高分子とを含み、下記条件(A)〜(C)を満たす分離膜エレメント。
(A)前記分離機能層の表面の自乗平均面粗さが80nm以上である。
(B)前記分離機能層表面のラザフォード後方散乱分光法により測定された、pH10における表面方向から深さ2nm領域の解離カルボキシル基量が0.35mol/kg以上0.45mol/kg以下であり、かつ表面方向からの深さ2nmにおける解離カルボキシル基量D1と、表面方向から深さ50nmにおける解離カルボキシル基量D2が、D1/D2>2を満たす。
(C)前記親水性高分子が下記化学式(1)に示す構造を含み、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて前記複合半透膜の分離機能層側を測定したとき、負2次イオンm/z=71.02、103.02、107.06、133.04のカウント数をそれぞれa、b、c、dとしたとき、a/(b+c+d)≧1を満たす。
- 前記親水性高分子の25℃、75%RH条件下での含水率が40%以上である
請求項1に記載の分離膜エレメント。 - 前記親水性高分子が少なくとも一つの分岐点を有し、前記親水性高分子の分岐度が0.2以上0.8以下である
請求項1〜2のいずれかに記載の分離膜エレメント。 - 前記親水性高分子が星型高分子、櫛形高分子、ハイパーブランチポリマーおよびデンドリマーからなる群から選択される少なくとも1つの高分子である
請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜エレメント。 - 前記親水性高分子と前記架橋ポリアミドがアミド結合で結合している
請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜エレメント。 - 前記分離膜エレメントにおける、供給側流路の長さが750mm以上2000mm以下である
請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜エレメント。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018067918A JP2019177343A (ja) | 2018-03-30 | 2018-03-30 | 分離膜エレメント |
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---|---|
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ID=68277351
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JP (1) | JP2019177343A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021132218A1 (ja) * | 2019-12-23 | 2021-07-01 | 東レ株式会社 | ガス分離膜、ガス分離膜エレメント及びガス製造方法 |
-
2018
- 2018-03-30 JP JP2018067918A patent/JP2019177343A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021132218A1 (ja) * | 2019-12-23 | 2021-07-01 | 東レ株式会社 | ガス分離膜、ガス分離膜エレメント及びガス製造方法 |
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