JP2019174492A - 蛍光観察に使用する蛍光体集積ナノ粒子 - Google Patents
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Abstract
Description
現在は、患部より採取した組織を固定するために脱水し、パラフィンによるブロック化といった処理を行った後2〜8ミクロンの厚さの薄片に切り、パラフィンを取り除いた切片(以下「組織切片」ともいう。)に対し、標的とする生体物質を染色し、その顕微鏡観察を行っている。この顕微鏡画像の中で、細胞の核の大きさや形の変化、組織としてのパターンの変化などの形態学的な情報、染色情報をもとに診断を行っている。
たとえば、病理標本の染色において、このような蛍光体集積ナノ粒子を使用する場合、必ずしも製造後すぐに使用されるとは限らず、使用まである程度の期間保存しておく場合がある。このとき、蛍光標識剤としての機能を維持できるよう、多くの場合、保存液中に稀釈した状態で蛍光体集積ナノ粒子の保存が行われる。
[1]
下記式1で表される真球度fの平均値が0.80〜0.95である蛍光体集積ナノ粒子。
f=[M/(π/4)]0.5/Nmax・・・(式1)
(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、Nmaxはその断面の最長径nmをそれぞれ表す。)
[2]
下記式2で表される周長比Rの平均値が0.50〜0.95である、項1に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
R=2π([M/π]0.5)/r1・・・(式2)
(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、r1はその周長nmをそれぞれ表す。)
[3]
前記粒子の母体が、有機系化合物からなる、項1または2に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
[4]
前記有機系化合物が、熱硬化性樹脂である、項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
[5]
前記粒子の平均粒径が300nm以下である、項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
[6]
前記粒子の表面に、生体成分結合性分子を結合した、項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
[7]
項6に記載の蛍光体集積ナノ粒子を含有する蛍光免疫染色用溶液。
<蛍光体集積ナノ粒子>
本発明における蛍光体集積ナノ粒子は、有機系化合物または無機系化合物でできた粒子を母体とし、複数の蛍光物質(たとえば蛍光色素)がその中に内包されているおよび/またはその表面に吸着している構造を有する、ナノサイズの粒子である。なお「蛍光物質」は、所定の波長の電磁波(X線、紫外線または可視光線)が照射されてそのエネルギーを吸収することで電子が励起し、その励起状態から基底状態に戻る際に余剰のエネルギーを電磁波として放出する、つまり「蛍光」を発する物質であって、二次抗体と直接的、あるいは間接的に結合させることのできるものを指す。また、「蛍光」は広義的な意味を持ち、励起のための電磁波の照射を止めても発光が持続する発光寿命の長い燐光と、発光寿命が短い狭義の蛍光とを包含する。
f=[M/(π/4)]0.5/Nmax・・・(式1)
(特開2008−127279記載の真球度fの計算式による。式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、Nmaxはその断面の最長径nmをそれぞれ表す。)特許文献1記載の真球度fの計算式、f=4πA/L2(式中、Aは投影像の実面積を、Lは各粒子の投影像の周囲長をそれぞれ表す。)は上記式1に変換され、両者の間に本質的な定義には差はない。
R=2π([M/π]0.5)/r1・・・(式2)
(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、r1はその周長nmをそれぞれ表す。)
上記熱硬化性樹脂のなかでも、メラミン樹脂は発光波長がシフトすることから特に好適に用いることができる。
さらに、上記粒子をバイオ分野で目的生体物質を検出するために利用する実施形態においては、生体成分結合性分子を上記粒子の表面に結合することが好ましい。生体成分結合性分子は、蛍光体集積ナノ粒子を直接的または間接的に目的生体物質に連結させた複合体を形成することができるよう、所定の生体成分に特異的に結合することのできる分子である。このような生体成分結合性分子としては、たとえば抗体、ビオチン、アビジン(ストレプトアビジン、ニュートラアビジン等を含む)、核酸(DNA,RNA,siRNA,miRNAなどを含む)、糖鎖、レクチンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。結合は直接的なものでも間接的なものでもよいが、蛍光標識の効率を向上させて蛍光の劣化につながる時間経過をなるべく抑えるために、一次抗体および蛍光体集積ナノ粒子が間接的に、つまり抗原抗体反応やアビジン・ビオチン反応などを利用した、共有結合以外の結合によって連結される複合体を用いることが好ましい。
母体に集積される蛍光物質としては特に限定はされない。
蛍光体として使用可能な無機蛍光体の例としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。量子ドットは、市販されているものでもよい。具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子は、製造条件を調節することにより作製することができる。
また、本発明においては、目的生体物質用の免疫染色用試薬を蛍光ナノ粒子用希釈液で希釈した蛍光免疫染色用溶液が規定される。免疫染色用試薬の選択と希釈倍率については、目的生体物質と免疫染色用試薬とのアフィニティーに応じて最適化することができる。
本発明における目的生体物質は、組織切片に発現している生体物質、特にタンパク質(抗原)であって、主に病理診断の観点からの定量ないし検出のために、蛍光標識体を用いた免疫染色の対象とするものを指す。
本発明で用いられる抗体は、用途に応じて選択され、特定の生体物質(抗原)を特異的に認識して結合する能力を有するものであればよい。例えば疾病(悪性腫瘍等)に関連する抗原(例;HER2等)に対する抗体(1次抗体)、または該1次抗体と抗原抗体反応により結合する2次抗体〜n次抗体を意味する。これら抗体のいずれかに対して、後述するように還元処理がなされる。ここで、「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、例えば、Fab、Fab'2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などを含む。
上記抗原としては、例えば、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)であるが、該タンパク質またはアミノ酸と、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子との複合体なども含まれる。具体的には、例えば上記病理診断の対象となる疾病に関連する抗原(腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなど)であり、特に限定されない。抗原として、例えば、がんの増殖制御因子,転移制御因子,増殖制御因子受容体および転移制御因子受容体等のがんに関連する抗原の他に、TNF−α(Tumor Necrosis Factor α),IL−6(Interleukin−6)受容体などの炎症性サイトカイン、RSV F蛋白質等のウィルス関連分子なども「抗原」に含まれる。
以下、本発明の一様態である生体成分結合性の分子を蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合した粒子を用いておこなう染色方法の一例について説明する。この染色方法が適用できる組織切片(本明細書において、単に「切片」ともいい、例えば病理切片等の切片も包含する用語として用いる。)の作製法は特に限定されず、公知の手順により作製されたものを用いることができる。
(1−1.脱パラフィン処理)
キシレンを入れた容器に、切片を浸漬させ、パラフィン除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。
公知の方法に倣い、目的とする生体物質の賦活化処理を行う。賦活化条件に特に定めはないが、賦活液としては、0.01Mのクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMのEDTA溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mのトリス塩酸緩衝液などを用いることができる。加熱機器はオートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバスなどを用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。温度は50〜130℃、時間は5〜30分で行うことができる。
免疫染色工程では、生体物質を染色するために、目的生体物質に直接的または間接的に結合しうる部位を有する蛍光ナノ粒子を本発明における蛍光ナノ粒子希釈液に分散させ、切片に乗せ、目的とする生体物質との反応を行う。免疫染色工程に用いる蛍光免疫染色用溶液ないしそれを調製するための蛍光ナノ粒子用希釈液およびその他の成分については前述した通りであり、この工程の前にあらかじめ調製しておけばよい。
上述したような1次反応処理を行う前に、BSA含有PBSなど公知のブロッキング剤やTween20などの界面活性剤を滴下することが好ましい。
免疫染色工程を終えた病理標本は、観察に適したものとなるよう、固定化・脱水、透徹、封入などの処理を行うことが好ましい。
固定化・脱水処理は、病理標本を固定処理液(ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤)に浸漬すればよい。透徹は、固定化・脱水処理を終えた病理標本を透徹液(キシレン等)に浸漬すればよい。封入処理は、透徹処理を終えた病理標本を封入液に浸漬すればよい。これらの処理を行う上での条件、たとえば病理標本を所定の処理液に浸漬する際の温度および浸漬時間は、従来の免疫染色法に準じて、適切なシグナルが得られるよう適宜調整することができる。
本発明では、もしも必要であれば、明視野において細胞、組織、臓器等の形態を観察することができるようにするための、形態観察染色工程を含めることができる。形態観察染色工程は、常法に従って行うことができる。組織標本の形態観察に関しては、細胞質・間質・各種線維・赤血球・角化細胞が赤〜濃赤色に染色される、エオジンを用いた染色が標準的に用いられている。また、細胞核・石灰部・軟骨組織・細菌・粘液が青藍色〜淡青色に染色される、ヘマトキシリンを用いた染色も標準的に用いられている(これら2つの染色を同時に行う方法はヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)として知られている)。形態観察染色工程を含める場合は、免疫染色工程の後に行うようにしてもよいし、免疫染色工程の前に行うようにしてもよい。
(4−1.観察・撮影)
観察・撮影工程では、所望の倍率における顕微鏡の同一視野において、免疫染色工程に用いられた目的生体物質を蛍光標識している蛍光体に対応した励起光に対応した励起光それぞれを病理標本に照射し、それらの蛍光体から発せられた蛍光による免疫染色像それぞれを観察・撮影する。これらの励起光の照射は、たとえば、蛍光顕微鏡が備えるレーザー光源と、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させる励起光用フィルターを用いることで照射することができる。免疫染色像の撮影は、たとえば、蛍光顕微鏡が備えるデジタルカメラによって行うことができる。免疫染色像の撮影の際には、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させる蛍光用フィルターを用いることで、目的とする蛍光のみを含み、目的としない蛍光やノイズとなる励起光およびその他の光を排除した免疫染色像を撮影することができる。
画像処理・計測工程では、目的生体物質に関して撮影された免疫染色像について、画像処理に基づき、目的生体物質に対応する蛍光標識シグナルに対応する蛍光標識シグナルを計測し、細胞膜の領域内にある前記目的生体物質に対応する蛍光標識シグナルを特定する。
画像処理に用いることができるソフトウェアとしては、たとえば「ImageJ」(オープンソース)が挙げられる。このような画像処理ソフトウェアを利用することにより、免疫染色像から、所定の波長(色)の輝点を抽出してその輝度の総和を算出したり、所定の輝度以上の輝点の数を計測したりする処理、特に、次に述べる第1実施形態および第2実施形態を行う為の処理を、半自動的に、迅速に行うことができる。
−蛍光体集積ナノ粒子合成例−
[粒子α-1・α-2]
・ペリレンジイミド集積ナノ粒子
N,N'−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミドを濃硫酸で処理することによりスルホ基の導入を行い、対応するスルホン酸に導いた。このスルホン酸を、常法により対応する酸塩化物に変換した。この酸塩化物14.4mgを水22.5mLに加えた後、ホットスターラー上で70℃20分間加熱し、メラミン樹脂ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)0.65gを加え、さらに5分間加熱撹拌した。ギ酸100μLを加え、60℃20分間で加熱攪拌した後、室温放冷した。冷却後、反応混合物を遠心用チューブに入れて遠心分離機に12,000rpmで20分間かけ、上澄み除去した。この洗浄をエタノールと水で行なった。
ストレプトアビジン(SA:和光純薬社製)を、SH基導入試薬であるN−スクシンイミジル-S-アセチルチオ酢酸(SATA)と反応させた後、公知のヒドロキシルアミン処理を行うことでS−アセチル基の脱保護を行うことにより、ストレプトアビジンにチオール基を導入した。その後、ゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:Thermo Scientific No.89889)によるろ過を行い、末端にマレイミド基が付いたペリレンジイミド集積ナノ粒子(粒子α-1およびα-2)に結合可能なストレプトアビジンを得た。
・TexasRed集積ナノ粒子
TexasRed色素3.4mgと3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM903)3μLをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
ストレプトアビジン(和光純薬工業社製)をボレートバッファーに加えた後、SH基導入試薬である2−イミノチオラン塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)と、室温で1時間反応させることにより、ストレプトアビジンにチオール基を導入した。このストレプトアビジン溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:Thermo Scientific No.89889)によるろ過を行い、末端にマレイミド基がついたTexasRed集積ナノ粒子(粒子β−1、β−2、β−3およびβ−4)に結合可能なストレプトアビジンを得た。
まず、末端にチオール基がついた抗体を以下の通り作製した。次に、上記粒子β−2、β−3と末端にチオール基がついた抗体とを以下の通り反応させた。
抗HER2抗体(ベンタナ社製「抗HER2ウサギモノクロナール抗体(4B5)」分子量148,000g/mol)100μgをPBS100μLに溶解させた。この抗体溶液に1Mのメルカプトエタノールを10μL添加して、室温で30分間反応させて抗体の還元を行い、反応後の反応液をゲル濾過カラムに供して、SH基を有する抗HER2抗体の溶液を得た。
・ペリレンジイミド集積メラミン粒子
ペリレンジイミドスルホン酸誘導体2.5mgを水22.5mLに加えた後、ホットスターラー上で70℃20分間加熱し、水溶性メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業社製)1.5gを加え、さらに5分間加熱撹拌した。ギ酸100μLを加え、20分間60度で加熱攪拌した後、室温放冷した。冷却後、反応混合物を遠心用チューブに入れて遠心分離機に12000rpm20分かけ、上澄み除去した。この洗浄をエタノールと水で行なった。
ストレプトアビジン修飾TexasRed集積ナノ粒子を作成する際と同様の手法で、末端にマレイミド基がついたペリレンジイミド集積ナノ粒子(粒子θ−1、およびθ−2)に結合可能なストレプトアビジンを取得し、粒子θ−1、およびθ−2と反応させ、遠心、精製をおこない、ストレプトアビジンで修飾された粒子θ−1−SA、およびθ−2−SAを回収した。
また、β−2からβ−2−Abを作成した抗体修飾方法と同様に、θ−2からθ−2−Abを作成した。
実施例1および6にはそれぞれ粒子α−1およびα−2、実施例2〜5にはそれぞれ粒子β−1、β−2、β−3およびβ−4、比較例1にはカルボン酸エステルで修飾されたポリスチレンを母体とする蛍光体集積ナノ粒子であるFluoSpheres Carboxylate-Modified Microspheres, 0.2 μm, red fluorescent (580/605), 2% solids(InvitrogenF−8810)、および比較例2および3には粒子θ−1またはθ−2を使用して沈降・凝集の評価を行った結果を示している(表1)。
各蛍光体集積ナノ粒子および生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子は、各々を保存液に含有させた形態のまま冷蔵庫中4℃で一週間保存したのちに、沈降・凝集の評価をおこなった。保存液としては、0.6% αカゼイン、0.6% βカゼイン、3% BSA、0.1% Tween(登録商標)20および0.015N NaN3を含むTris緩衝液(pH=6.9)を、採用した。
タービスキャン(商標)を用いた場合の測定条件は、蛍光体集積ナノ粒子含有液および生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子について、波長880nmの赤外線を光源として使用したときの後方散乱強度(透過光)を測定した。
D'=(I'B−I'A)/I'A×100
各蛍蛍光体集積ナノ粒子について、沈降・凝集の変化の割合D'を、表1および表2に示した。タービスキャンの測定値が−1以上であれば、目視での凝集は観察されないという相関性が確認された。
次に、保存性を評価するため、上記各生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子について、合成直後、および、上記保存液中で冷蔵庫中4℃で3ヶ月保存後の生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子のそれぞれを用いて、下記免疫染色、形態観察染色および観察を行った。
ここで、組織細胞スライドとして、US Biomax社製の乳癌組織アレイ(型番:BR243のシリーズ(24コア);コア直径1.5mm)を使用した。
組織細胞スライドを常法に従い脱パラフィン処理した後、水に置換する洗浄を行った。洗浄した組織細胞スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で121℃、5分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。
賦活化処理後の組織細胞スライドを、PBS緩衝液を用いて洗浄した後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBS緩衝液を用いてブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)(ベンタナ社製)を組織細胞スライドと2時間反応させた。これをPBS緩衝液で洗浄後、1%BSA含有PBS緩衝液で2μg/mLに希釈した4B5に結合するビオチン標識抗ウサギモノクローナル抗体と30分反応させた。
このビオチン標識抗ウサギモノクローナル抗体との反応後、生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子による組織細胞スライドの染色を行った。
ここで、合成直後の生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子を用いた染色にあたっては、1%BSA含有PBS緩衝液で0.2nMに稀釈した合成直後の蛍光体集積ナノ粒子を組織細胞スライドと、中性のpH環境(pH6.9〜7.4)、室温の条件下で3時間反応させた。なお、生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子は0.2nMに稀釈する前に、遠心分離、上澄み液の除去、上記保存液による稀釈、および超音波処理による再分散を適当な回数繰り返すことにより上記保存液への溶媒置換を行った後、フィルター処理(0.65μm:ミリポア社製)を行った。
上記免疫染色を行った組織細胞スライドについて、さらに、形態観察染色を行った。具体的には、免疫染色した組織細胞スライドをマイヤーヘマトキシリン液で1分間染色してヘマトキシリン染色を行った(HE染色)。その後、該組織細胞スライドを45℃の流水で3分間洗浄した。その後、純エタノールに5分間漬ける操作4回行い、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間漬ける操作を4回行い、透徹を行った。最後に、封入剤(「エンテランニュー」、Merck社製)を用いて組織切片を封入して観察用のサンプルスライドとした。
(2−5−1)観察・撮影工程
上記免疫染色および形態観察染色したサンプルスライド上にある組織切片に対して所定の励起光を照射して蛍光を発光させた。その状態の組織切片を蛍光顕微鏡(BX−53,オリンパス社製)により観察および撮像を行った。ここで、観察および撮像は、サンプルスライド上の1つのコア(1つの組織スポット)につき10視野に分けて行った。このとき、対物レンズおよび接眼レンズとして、それぞれ倍率が40倍および10倍のものを用いた。
また、輝点計測は、ImageJ FindMaxima法により計測した。
上記励起光は、光学フィルターに通すことで575〜600nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、光学フィルターに通すことで612〜682nmに設定した。
評価2における各評価の結果を、下記表2に示す。
Claims (8)
- 母体粒子と、該母体粒子に含有される蛍光体とを有する粒子を含み、
下記式2で表される周長比Rの平均値が0.50〜0.95である蛍光体集積ナノ粒子。
R=2π([M/π]0.5)/r1・・・(式2)
(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、r1はその周長nmをそれぞれ表す。) - 下記式1で表される真球度fの平均値が0.80〜0.95である、請求項1に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
f=[M/(π/4)]0.5/Nmax・・・(式1)
(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、Nmaxはその断面の最長径nmをそれぞれ表す。) - 前記母体粒子が、有機系化合物を含む、請求項1または2に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
- 前記母体粒子が、熱硬化性樹脂;スチレン樹脂;アクリル樹脂;アクリロニトリル樹脂;アクリロニトリル−スチレン共重合体;アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体;スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリロニトリル、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成される構成単位を含む(共)重合体;またはポリ乳酸を含む粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
- 前記母体粒子が、熱硬化性樹脂を含む粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
- 平均粒径が300nm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
- 前記粒子の表面に、生体成分結合性分子を結合した、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子を含有する蛍光免疫染色用溶液。
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