JP2019174492A - 蛍光観察に使用する蛍光体集積ナノ粒子 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】母体粒子と、該母体粒子に含有される蛍光体とを有する粒子を含み、下記式2で表される周長比Rの平均値が0.50〜0.95である蛍光体集積ナノ粒子。R=2π([M/π]0.5)/r1・・・(式2)(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、r1はその周長nmをそれぞれ表す。)【効果】蛍光免疫染色において、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、蛍光体集積ナノ粒子の分散性が高まり、沈降および/または凝集を抑制でき、好ましくは染色液を長期保存した後も鮮明な染色像を得ることが可能となる。【選択図】図1

Description

本発明は、蛍光免疫染色法で使用する蛍光体集積ナノ粒子に関する。
近年の抗体医薬を中心とした分子標的薬治療の広がりに伴い、分子標的薬をより効率的に使用するための正確な診断法への必要性が高まっている。
現在は、患部より採取した組織を固定するために脱水し、パラフィンによるブロック化といった処理を行った後2〜8ミクロンの厚さの薄片に切り、パラフィンを取り除いた切片(以下「組織切片」ともいう。)に対し、標的とする生体物質を染色し、その顕微鏡観察を行っている。この顕微鏡画像の中で、細胞の核の大きさや形の変化、組織としてのパターンの変化などの形態学的な情報、染色情報をもとに診断を行っている。
従来から組織染色方法として、色素を用いるヘマトキシリン−エオジン〔HE〕染色、酵素を用いたDAB染色法が広くおこなわれてきたが、その染色濃度は温度、時間などの環境条件により大きく左右され、正確な定量測定は困難であるとされている。
近年、標識試薬として色素に代わり、蛍光色素およびその集積体を用いる免疫染色が行われており、特に蛍光色素を集積させたナノ粒子により、免疫染色を行うことで、従来の酵素法では得られない高い精度および定量性のある評価が可能となる。
しかし、蛍光体集積ナノ粒子は、その品質によって試験結果が大きく左右されるという問題点がある。
たとえば、病理標本の染色において、このような蛍光体集積ナノ粒子を使用する場合、必ずしも製造後すぐに使用されるとは限らず、使用まである程度の期間保存しておく場合がある。このとき、蛍光標識剤としての機能を維持できるよう、多くの場合、保存液中に稀釈した状態で蛍光体集積ナノ粒子の保存が行われる。
しかし、長期保存後の蛍光体集積ナノ粒子において、保存液中でしばしば沈降および/または凝集などがおこり、そのまま免疫染色に使用すると、染色後の細胞組織画像において粗大塊が発生し、輝点の数を正しくカウントする妨げとなることがある。
このような事態を避けるため、従来、長期保存後の保存液で稀釈した状態の蛍光体集積ナノ粒子について、染色に用いる前に、予め、遠心分離、上澄み液の除去染色用溶媒による稀釈、および超音波処理による再分散を適当な回数繰り返すことにより溶媒置換を行った後、フィルター処理を行うなどの前処理を行う必要があり、煩雑な操作を要するという問題点があった。
ここで、蛍光体集積ナノ粒子の品質維持に関し、その粒子形状および表面微細構造が重要な因子となる。これまでは、蛍光体集積ナノ粒子においては、真球度の高い均質な粒子のほうが長期間安定であると考えられていた。
なお、特許文献1には、発光デバイスの発光面(CRT等の発光面等)の内面に形成する蛍光膜を製造するための蛍光体粉末という用途において、蛍光体の真球度の平均値が高くなると、具体的には0.95以上になると、優れた発光強度および残光特性を発揮する旨記載されている。しかしながら特許文献1には、真球度が0.95未満の蛍光体が有用性を持つ発明であること、特にそのような蛍光体を組織免疫染色における標識試薬等として利用した場合に、分散性や長期保存後の染色性などに優れるという作用効果を奏することは、記載も示唆もされていない。
さらにナノ粒子の周長比に関する発明については、特許文献2に開示されているが、当該発明は静電荷像現像用トナーに用いる粒子に関するものであり、当該発明においての周長比に係る特性を組織免疫染色に用いる蛍光体集積ナノ粒子に応用することの技術的意義は当業者にとっても自明ではなく、容易に想到できるものではなかった。
特開2002―194347号公報 特開2010−048932号公報
本発明の目的は、上述したような課題を解決するために、蛍光体集積ナノ粒子を用いた免疫染色を行う際に、蛍光体集積ナノ粒子の沈降および/または凝集、特に凝集を抑制できることから長期保存後においても煩雑な操作を行う必要なく染色に用いることを可能とし、好ましくは長期間保存後も染色性などの性能に優れる蛍光体集積ナノ粒子を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粒子表面の状態を表すパラメータとして蛍光体集積ナノ粒子の真球度および周長比に着目した。研究を進めた結果、真球度fの平均値が0.80〜0.95であり、好ましくは周長比の平均値が0.50〜0.95である粒子を用いることで、蛍光体集積ナノ粒子の沈降および/または凝集を抑制でき、好ましくは染色液を3ヶ月程度など比較的長期間保存した後も染色性が劣化しにくいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は次のような蛍光体集積ナノ粒子および免疫染色用溶液を提供する。
[1]
下記式1で表される真球度fの平均値が0.80〜0.95である蛍光体集積ナノ粒子。
f=[M/(π/4)]0.5/Nmax・・・(式1)
(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、Nmaxはその断面の最長径nmをそれぞれ表す。)
[2]
下記式2で表される周長比Rの平均値が0.50〜0.95である、項1に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
R=2π([M/π]0.5)/r1・・・(式2)
(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、r1はその周長nmをそれぞれ表す。)
[3]
前記粒子の母体が、有機系化合物からなる、項1または2に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
[4]
前記有機系化合物が、熱硬化性樹脂である、項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
[5]
前記粒子の平均粒径が300nm以下である、項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
[6]
前記粒子の表面に、生体成分結合性分子を結合した、項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
[7]
項6に記載の蛍光体集積ナノ粒子を含有する蛍光免疫染色用溶液。
蛍光免疫染色において、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、蛍光体集積ナノ粒子の分散性が高まり、沈降および/または凝集を抑制でき、好ましくは染色液を長期保存した後も鮮明な染色像を得ることが可能となる。
図1は、実施例1および比較例1において用いられた粒子のSEM画像を示す。拡大図から、実施例1の粒子の凸凹具合が比較例の凸凹具合よりも顕著であることが、見て取れる。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<蛍光体集積ナノ粒子>
本発明における蛍光体集積ナノ粒子は、有機系化合物または無機系化合物でできた粒子を母体とし、複数の蛍光物質(たとえば蛍光色素)がその中に内包されているおよび/またはその表面に吸着している構造を有する、ナノサイズの粒子である。なお「蛍光物質」は、所定の波長の電磁波(X線、紫外線または可視光線)が照射されてそのエネルギーを吸収することで電子が励起し、その励起状態から基底状態に戻る際に余剰のエネルギーを電磁波として放出する、つまり「蛍光」を発する物質であって、二次抗体と直接的、あるいは間接的に結合させることのできるものを指す。また、「蛍光」は広義的な意味を持ち、励起のための電磁波の照射を止めても発光が持続する発光寿命の長い燐光と、発光寿命が短い狭義の蛍光とを包含する。
本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子は、少なくとも、その真球度を特徴とする粒子であり、次の(式1)に定義する式で表される真球度fの平均値が0.80〜0.95であり、さらに好ましくは0.90〜0.95である粒子である。
f=[M/(π/4)]0.5/Nmax・・・(式1)
(特開2008−127279記載の真球度fの計算式による。式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、Nmaxはその断面の最長径nmをそれぞれ表す。)特許文献1記載の真球度fの計算式、f=4πA/L2(式中、Aは投影像の実面積を、Lは各粒子の投影像の周囲長をそれぞれ表す。)は上記式1に変換され、両者の間に本質的な定義には差はない。
本来真球度は3次元で求める必要があるが、粒子が微細過ぎるため難しく、現実には二次元画像で評価せざるを得ないため、撮影シーンを変えて数多く撮影し平均化することで求めることができる。本発明において、蛍光体集積ナノ粒子の真球度は、電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し十分な数の粒子について断面積、最長径を計測し、上記式から求めた値の算術平均を扱うこととする。SEMで撮影する粒子数としては20個以上が好ましく、100個以上の粒子を撮影するのが更に好ましい。
さらに本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子は、次の(式2)に定義する式で表される周長比Rの平均値(表面粗さを表す)が好ましくは0.50〜0.95であり、さらに好ましくは0.8〜0.95である粒子である。
R=2π([M/π]0.5)/r1・・・(式2)
(式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、r1はその周長nmをそれぞれ表す。)
真球度と同様に、周長比についても、電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し十分な数の粒子(好ましくは20個以上、より好ましくは100個以上)について断面積、最長径を計測し式から周長比を求めて、その算術平均を扱うこととする。
上記粒子の母体のうち、有機系化合物としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂など、一般的に熱硬化性樹脂に分類される樹脂;スチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体)、一般的に熱可塑性樹脂に分類される樹脂;スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリロニトリル、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成される構成単位を含む(共)重合体、あるいはポリ乳酸等のその他の樹脂;多糖を例示することができ、また無機系化合物としてはシリカ、ガラスなどを例示することができる。母体は有機系化合物であっても無機系化合物であってもよいが、母体が有機系化合物からなる粒子の方が染色性の保存性においてより好ましく、熱硬化樹脂からなる粒子であることがより好ましい。
スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリロニトリル、およびそれらの誘導体は、それぞれ、1分子中に重合に関与するビニル基(C=C結合)を少なくとも1個持つ単官能または多官能のモノマーである。メタクリル酸アルキルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等がある。スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリロニトリル、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成される構成単位を含む(共)重合体は、これらの少なくとも1つのモノマーから形成される構成単位を有し、かつその構成単位に含まれる水素の少なくとも一部が電荷を持つ置換基に置き換えられている。
熱硬化性樹脂の分子構造は三次元的な網目構造であり、高分子同士が架橋することによって作られる。このため、熱硬化性樹脂の樹脂粒子に内包された蛍光物資は樹脂粒子の外側に溶出しにくく、蛍光観察の際に輝点の滲みを抑制する効果が得られる。
また上記熱硬化性樹脂がプラス電荷またはマイナス電荷の置換基を有しており、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子を構成する蛍光物質が、樹脂と逆の電荷の置換基を有している場合、樹脂粒子に内包された蛍光物資が樹脂粒子に強固に集積され、色素の溶出はさらに起こりにくくなるため、組織染色後の蛍光観察における蛍光色素の滲みを抑制することができ、染色像の明るさを確保することができる。
前記蛍光物質が、ローダミン、BODIPY、スクアリリウムまたは芳香族炭化水素系色素分子である場合、蛍光物質と樹脂の疎水性部分の相互作用により、置換基のイオン結合と共に、強固に色素物質と樹脂とを結合させることができ、これにより、樹脂粒子内における蛍光物質は一層強固に集積されるのでさらに好ましい。
また、前記熱硬化性樹脂と前記蛍光物質とが、アミド結合、エステル結合、エーテル結合およびC−N結合のいずれかによって共有結合していても同様の効果を奏する。
上記熱硬化性樹脂のなかでも、メラミン樹脂は発光波長がシフトすることから特に好適に用いることができる。
また、上記粒子の平均粒径は300nm以下であることが好ましい。特に粒子の平均粒径が300nmを上回ると、保管後の染色性が顕著に劣化する。
さらに、上記粒子をバイオ分野で目的生体物質を検出するために利用する実施形態においては、生体成分結合性分子を上記粒子の表面に結合することが好ましい。生体成分結合性分子は、蛍光体集積ナノ粒子を直接的または間接的に目的生体物質に連結させた複合体を形成することができるよう、所定の生体成分に特異的に結合することのできる分子である。このような生体成分結合性分子としては、たとえば抗体、ビオチン、アビジン(ストレプトアビジン、ニュートラアビジン等を含む)、核酸(DNA,RNA,siRNA,miRNAなどを含む)、糖鎖、レクチンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。結合は直接的なものでも間接的なものでもよいが、蛍光標識の効率を向上させて蛍光の劣化につながる時間経過をなるべく抑えるために、一次抗体および蛍光体集積ナノ粒子が間接的に、つまり抗原抗体反応やアビジン・ビオチン反応などを利用した、共有結合以外の結合によって連結される複合体を用いることが好ましい。
プローブおよび蛍光体集積ナノ粒子が間接的に連結される免疫染色剤の一例として、[目的生体物質に対する一次抗体]…[一次抗体に対する抗体(二次抗体)]〜[蛍光ナノ粒子(蛍光集積粒子)]が挙げられる。ここで、"・・・"は抗原抗体反応により結合していることを表し、"〜"が示す結合の態様としては特に限定されず、例えば、共有結合,イオン結合,水素結合,配位結合,物理吸着または化学吸着等が挙げられ、必要に応じてリンカー分子を介していてもよい。例えば、無機物と有機物とを結合させるために広く用いられている化合物であるシランカップリング剤を用いることができる。このシランカップリング剤は、分子の一端に加水分解でシラノール基を与えるアルコキシシリル基を有し、他端に、カルボキシル基,アミノ基,エポキシ基,アルデヒド基などの官能基を有する化合物であり、上記シラノール基の酸素原子を介して無機物と結合する。具体的には、メルカプトプロピルトリエトキシシラン,グリシドキシプロピルトリエトキシシラン,アミノプロピルトリエトキシシラン,ポリエチレングリコール鎖を有するシランカップリング剤(例えば、Gelest社製PEG−silane:no.SIM6492.7)等が挙げられる。シランカップリング剤を用いる場合、2種以上を併用してもよい。
蛍光体集積ナノ粒子とシランカップリング剤との反応手順は、公知の手法を用いることができる。例えば、得られた蛍光物質を内包したシリカナノ粒子を純水中に分散させ、アミノプロピルトリエトキシシランを添加し、室温で12時間反応させる。反応終了後、遠心分離またはろ過により表面がアミノプロピル基で修飾された蛍光物質を内包したシリカナノ粒子を得ることができる。続いてアミノ基と抗体中のカルボキシル基とを反応させることで、アミド結合を介し抗体を、蛍光物質を内包したシリカナノ粒子と結合させることができる。必要に応じて、EDC〔1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩 ;Pierce社製〕のような縮合剤を用いることもできる。
必要により有機分子修飾された蛍光物質を内包したシリカナノ粒子と直接結合しうる部位と、分子標的物質と結合し得る部位とを有するリンカー化合物を用いることができる。具体例として、アミノ基に選択的に反応する部位とメルカプト基に選択的に反応する部位との両方を有するsulfo−SMCC(スルホスクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシラート;Pierce社製)を用いると、アミノプロピルトリエトキシシランで修飾した蛍光物質を内包したシリカナノ粒子のアミノ基と、抗体中のメルカプト基とを結合させることで、抗体結合した蛍光物質を内包したシリカナノ粒子が得られる。
蛍光物質を内包したポリスチレンナノ粒子に生体物質認識部位を結合させる場合、蛍光物質が蛍光色素の場合であっても、半導体ナノ粒子の場合であっても、同様の手順を適用することができる。すなわち、アミノ基など官能基を有するポリスチレンナノ粒子に半導体ナノ粒子または蛍光有機色素を含浸することにより、官能基を有する蛍光体集積ポリスチレンナノ粒子を得ることができ、以降EDCまたはsulfo−SMCCを用いることで、抗体結合した蛍光体集積ポリスチレンナノ粒子ができる。
プローブおよび蛍光体が間接的に連結される免疫染色剤の他の一例として、[目的生体物質に対す一次抗体]…[一次抗体に対する抗体(二次抗体)]−[ビオチン]/[アビジン]−[蛍光体(蛍光ナノ粒子)](ここで、"・・・"は抗原抗体反応により結合していることを表し、"−"は必要に応じてリンカー分子を介していてもよい共有結合により結合していることを表し、"/"はアビジン・ビオチン反応により結合していることを表す。)という様式によって連結される、3つの分子からなる複合体が挙げられる。
二次抗体−ビオチン結合体(ビオチン修飾二次抗体)は、所望の抗体(タンパク質)にビオチンを結合させることのできる公知の手法に基づいて、たとえば市販されているビオチン標識試薬(キット)を利用して作製することができる。また、あらかじめ所望の抗体にビオチンが結合されているビオチン修飾二次抗体自体が市販されていれば、それを利用してもよい。
蛍光体集積ナノ粒子−アビジン結合体(アビジン修飾蛍光体)も、蛍光体にアビジンを結合させることのできる公知の手法に基づいて、たとえば市販されているアビジン標識試薬(キット)を利用して作製することができる。この場合のアビジンは、ビオチンとの間でアビジンよりも高い結合力が働く、ストレプトアビジンやニュートラアビジンなどの改良型であってもよい。
蛍光体−アビジン結合体の作製方法の具体例を挙げれば次の通りである。蛍光体集積ナノ粒子が樹脂を母体とする蛍光体集積ナノ粒子である場合、その樹脂が有する官能基と、アビジン(タンパク質)が有する官能基とを、必要に応じて分子の両末端に官能基を有するPEG等のリンカー分子を介することにより、結合させることができる。たとえば、メラミン樹脂であればアミノ基等の官能基を利用することができるし、アクリル樹脂、スチレン樹脂等であれば、側鎖に官能基(たとえばエポキシ基)を有するモノマーを共重合させることにより、その官能基自体またはその官能基から変換された官能基(たとえばアンモニア水を反応させることにより生成するアミノ基)を利用することができるし、さらにはそれらの官能基を利用して別の官能基を導入することもできる。また、蛍光体集積ナノ粒子がシリカを母体とする蛍光体集積ナノ粒子または無機半導体ナノ粒子である場合、シランカップリング剤で表面修飾することにより所望の官能基を導入することができ、たとえばアミノプロピルトリメトキシシランを用いればアミノ基を導入することができる。一方、アビジンに対しては、たとえばN−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)をアビジンのアミノ基と反応させることにより、チオール基を導入することができる。そして、アミノ基との反応性を有するN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルおよびチオール基との反応性を有するマレイミド基をポリエチレングリコール(PEG)鎖の両端に有するクロスリンカー試薬を利用することにより、アミノ基を有する蛍光体と、チオール基が導入されたアビジンとを連結することができる。
二次抗体−蛍光色素結合体(蛍光標識二次抗体)は、所望の抗体(タンパク質)に所望の蛍光色素を結合させることのできる公知の手法に基づいて、たとえば市販されている蛍光標識試薬(キット)を利用して作製することができる。また、あらかじめ所望の抗体に所望の蛍光ナノ粒子が結合されている蛍光標識二次抗体自体が市販されていれば、それを利用してもよい。
母体に集積される蛍光物質としては特に限定はされない。
(i)〔無機蛍光体〕
蛍光体として使用可能な無機蛍光体の例としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。量子ドットは、市販されているものでもよい。具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。
上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。例えば、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO2、Si/ZnS、Ge/GeO2、Ge/ZnS等を用いることができるが、これらに限定されない。
量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等が挙げられる。(ii)〔有機蛍光体〕蛍光体としての使用可能な有機蛍光体の例としては、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、スクアリリウム系色素分子、芳香環系色素分子、カルボピロニン系色素分子、ピロメセン系色素分子、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素分子、Cy(GEヘルスケア社製)系色素分子、DY系色素分子(DYOMICS社製)、HiLyte(アナスペック社製)系色素分子、DyLight(サーモサイエンティフィック社製)系色素分子、ATTO(ATTO−TEC社製)系色素分子、MFP(Mobitec社製)系色素分子、クマリン系色素分子、NBD(登録商標)系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red(登録商標、Life Technologies 社)系色素分子、シアニン系色素分子、ペリレン系色素分子、オキサジン系色素分子等、有機蛍光色素として知られている物質を挙げることができる。
具体的には、5−カルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−フルオレセイン、5,6−ジカルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−2',4,4',5',7,7'−ヘキサクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−2',4,7,7'−テトラクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−4',5'−ジクロロ−2',7'−ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン、及びAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL、BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、メトキシクマリン、エオジン、NBD、ピレン、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
なお、このような色素分子の総称は、化合物中の主要な構造(骨格)または登録商標に基づき命名されており、それぞれに属する蛍光色素の範囲は当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく適切に把握できるものである。
蛍光体集積ナノ粒子に集積させる蛍光物質としては、上述したような半導体ナノ粒子、蛍光色素のほか、たとえば、Y23、Zn2SiO4等を母体とし、Mn2+,Eu3+等を賦活剤とする「長残光蛍光体」を挙げることができる。
蛍光体集積ナノ粒子は、公知の方法(たとえば特開2013−57937号公報参照)に従って作製することができる。より具体的には、たとえば、シリカを母体とし、その中に蛍光物質が内包されている蛍光物質集積シリカ粒子は、無機半導体ナノ粒子、有機蛍光色素などの蛍光物質と、テトラエトキシシランのようなシリカ前駆体とが溶解している溶液を、エタノールおよびアンモニアが溶解している溶液に滴下し、シリカ前駆体を加水分解することにより作製することができる。一方、樹脂を母体とし、蛍光物質を樹脂粒子の表面に吸着させるか、樹脂粒子中に内包させるかした蛍光物質集積樹脂粒子は、それらの樹脂の溶液ないし微粒子の分散液を先に用意しておき、そこに無機半導体ナノ粒子、有機蛍光色素などの蛍光物質を添加して撹拌することにより作製することができる。あるいは、樹脂原料の溶液に蛍光色素を添加した後、重合反応を進行させることにより、蛍光物質集積樹脂粒子を作製することもできる。たとえば、母体となる樹脂としてメラミン樹脂のような熱硬化性樹脂を用いる場合、その樹脂の原料(モノマーまたはオリゴマーないしプレポリマー、たとえばメラミンとホルムアルデヒドの縮合物であるメチロールメラミン)と、有機蛍光色素と、好ましくはさらに界面活性剤および重合反応促進剤(酸など)とを含有する反応混合物を加熱し、乳化重合法によって重合反応を進行させることにより、有機蛍光体集積ナノ粒子を作製することができる。また、母体となる樹脂としてスチレン系共重合体のような熱可塑性樹脂を用いる場合、その樹脂の原料と、有機蛍光色素と(樹脂の原料モノマーとして、あらかじめ有機蛍光色素を共有結合などで結合させたモノマーを用いるようにしてもよい)、重合開始剤(過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなど)を含有する反応混合物を加熱し、ラジカル重合法またはイオン重合法によって重合反応を進行させることにより、有機蛍光体集積ナノ粒子を作製することができる。
また、本発明に係る蛍光体集積ナノ粒子は、製造条件を調節することにより作製することができる。
<染色用溶液>
また、本発明においては、目的生体物質用の免疫染色用試薬を蛍光ナノ粒子用希釈液で希釈した蛍光免疫染色用溶液が規定される。免疫染色用試薬の選択と希釈倍率については、目的生体物質と免疫染色用試薬とのアフィニティーに応じて最適化することができる。
<目的生体物質>
本発明における目的生体物質は、組織切片に発現している生体物質、特にタンパク質(抗原)であって、主に病理診断の観点からの定量ないし検出のために、蛍光標識体を用いた免疫染色の対象とするものを指す。
目的生体物質は、病理診断など本発明の定量方法の用途を考慮しながら選択すればよく、特に限定されるものではない。典型的な目的生体物質としては、各種の癌組織の細胞膜で発現しており、バイオマーカーとして利用することができる生体物質、たとえば、EGFR(HER1)(Epidermal Growth Factor Receptor:上皮増殖因子受容体)、HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor:ヒト上皮増殖因子受容体)、HER3、HER4、VEGFR(Vasular Endothelial Growth Factor Receptor:血管内皮細胞増殖因子受容体)、IGFR(Insulin−like Growth Factor Receptor:インスリン様増殖因子受容体)、HGFR(Hepatocyte Growth Factor Receptor:肝細胞増殖因子受容体)といった増殖因子の受容体(レセプター)や、PD−1(Programmed cell death 1)などの免疫系の受容体であるタンパク質が挙げられる。EGFR/HERには、大腸癌などの癌組織において過剰発現しているEGFR/HER1(ErbB1とも呼ばれる)、乳癌などの癌組織において過剰発現しているEGFR2/HER2(ErbB2、neuとも呼ばれる)、EGFR3/HER3およびEGFR4/HER4が包含される。VEGFRには、肝臓癌、食道癌などの癌組織における血管内皮細胞において発現が亢進しているVEGFR−1(Flt−1とも呼ばれる)、VEGFR−2(Flt−2、KDRとも呼ばれる)およびリンパ管内皮細胞において発現が亢進しているVEGFR−3(Flt−4とも呼ばれる)が包含される。たとえばHER2は、乳癌に係る病理診断において本発明の定量方法を実施する際の目的生体物質として好適である。
<抗体>
本発明で用いられる抗体は、用途に応じて選択され、特定の生体物質(抗原)を特異的に認識して結合する能力を有するものであればよい。例えば疾病(悪性腫瘍等)に関連する抗原(例;HER2等)に対する抗体(1次抗体)、または該1次抗体と抗原抗体反応により結合する2次抗体〜n次抗体を意味する。これら抗体のいずれかに対して、後述するように還元処理がなされる。ここで、「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、例えば、Fab、Fab'2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などを含む。
本発明で用いられる抗体は、はいずれも、ポリクローナル抗体であってもよいが、定量の安定性の観点から、モノクローナル抗体が好ましい。抗体を産生する動物(免疫動物)の種類は特に限定されるものではなく、従来と同様、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどから選択すればよい。
<抗原>
上記抗原としては、例えば、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)であるが、該タンパク質またはアミノ酸と、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子との複合体なども含まれる。具体的には、例えば上記病理診断の対象となる疾病に関連する抗原(腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなど)であり、特に限定されない。抗原として、例えば、がんの増殖制御因子,転移制御因子,増殖制御因子受容体および転移制御因子受容体等のがんに関連する抗原の他に、TNF−α(Tumor Necrosis Factor α),IL−6(Interleukin−6)受容体などの炎症性サイトカイン、RSV F蛋白質等のウィルス関連分子なども「抗原」に含まれる。
この他にも、例えば、がん関連遺伝子由来のタンパク質である、HER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、METが挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって各種癌関連遺伝子由来の蛋白質として知られているものとして、以下のものが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであってチロシンキナーゼ関連遺伝子由来の蛋白質としては、ALK、FLT3、AXL、FLT4(VEGFR3、DDR1、FMS(CSF1R)、DDR2、EGFR(ERBB1)、HER4(ERBB4)、EML4−ALK、IGF1R、EPHA1、INSR、EPHA2、IRR(INSRR)、EPHA3、KIT、EPHA4、LTK、EPHA5、MER(MERTK)、EPHA6、MET、EPHA7、MUSK、EPHA8、NPM1−ALK、EPHB1、PDGFRα(PDGFRA)、EPHB2、PDGFRβ(PDGFRB)EPHB3、RET、EPHB4、RON(MST1R)、FGFR1、ROS(ROS1)、FGFR2、TIE2(TEK)、FGFR3、TRKA(NTRK1)、FGFR4、TRKB(NTRK2)、FLT1(VEGFR1)、TRKC(NTRK3)が挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって乳がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、ATM、BRCA1、BRCA2、BRCA3、CCND1、E−Cadherin、ERBB2、ETV6、FGFR1、HRAS、KRAS、NRAS、NTRK3、p53、PTENが挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであってカルチノイド腫瘍に関連する遺伝子由来の蛋白質としては、BCL2、BRD4、CCND1、CDKN1A、CDKN2A、CTNNB1、HES1、MAP2、MEN1、NF1、NOTCH1、NUT、RAF、SDHD、VEGFAが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって大腸がん関連遺伝子由来の蛋白質として、APC、MSH6、AXIN2、MYH、BMPR1A、p53、DCC、PMS2、KRAS2(or Ki−ras)、PTEN、MLH1、SMAD4、MSH2、STK11、MSH6が挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって肺がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、ALK、PTEN、CCND1、RASSF1A、CDKN2A、RB1、EGFR、RET、EML4、ROS1、KRAS2、TP53、MYCが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって肝臓がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、Axin1、MALAT1、b−catenin、p16 INK4A、c−ERBB−2、p53、CTNNB1、RB1、Cyclin D1、SMAD2、EGFR、SMAD4、IGFR2、TCF1、KRASが挙げられる。上記抗原となりうるものであって腎臓がん関連遺伝子由来の蛋白質として、Alpha、PRCC、ASPSCR1、PSF、CLTC、TFE3、p54nrb/NONO、TFEBが挙げられる。上記抗原となりうるものであって甲状腺がん関連遺伝子由来の蛋白質としては、AKAP10、NTRK1、AKAP9、RET、BRAF、TFG、ELE1、TPM3、H4/D10S170、TPRが挙げられる。上記抗原となりうるものであって卵巣がん関連遺伝子由来の蛋白質として、AKT2、MDM2、BCL2、MYC、BRCA1、NCOA4、CDKN2A、p53、ERBB2、PIK3CA、GATA4、RB、HRAS、RET、KRAS、RNASET2が挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって前立腺がん関連遺伝子由来の蛋白質として、AR、KLK3、BRCA2、MYC、CDKN1B、NKX3.1、EZH2、p53、GSTP1、PTENが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって骨腫瘍関連遺伝子由来の蛋白質としては、CDH11、COL12A1、CNBP、OMD、COL1A1、THRAP3、COL4A5、USP6が挙げられる。
―組織切片の染色方法−
以下、本発明の一様態である生体成分結合性の分子を蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合した粒子を用いておこなう染色方法の一例について説明する。この染色方法が適用できる組織切片(本明細書において、単に「切片」ともいい、例えば病理切片等の切片も包含する用語として用いる。)の作製法は特に限定されず、公知の手順により作製されたものを用いることができる。
(1.標本作製工程)
(1−1.脱パラフィン処理)
キシレンを入れた容器に、切片を浸漬させ、パラフィン除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。
次いでエタノールを入れた容器に切片を浸漬させ、キシレン除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。
水を入れた容器に、切片を浸漬させ、エタノール除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中で水を交換してもよい。
(1−2.賦活化処理)
公知の方法に倣い、目的とする生体物質の賦活化処理を行う。賦活化条件に特に定めはないが、賦活液としては、0.01Mのクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMのEDTA溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mのトリス塩酸緩衝液などを用いることができる。加熱機器はオートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバスなどを用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。温度は50〜130℃、時間は5〜30分で行うことができる。
次いでPBSを入れた容器に、賦活処理後の切片を浸漬させ、洗浄を行う。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
(2.免疫染色工程)
免疫染色工程では、生体物質を染色するために、目的生体物質に直接的または間接的に結合しうる部位を有する蛍光ナノ粒子を本発明における蛍光ナノ粒子希釈液に分散させ、切片に乗せ、目的とする生体物質との反応を行う。免疫染色工程に用いる蛍光免疫染色用溶液ないしそれを調製するための蛍光ナノ粒子用希釈液およびその他の成分については前述した通りであり、この工程の前にあらかじめ調製しておけばよい。
たとえば、免疫染色剤が、[一次抗体(プローブ)]…[二次抗体]−[ビオチン]/[アビジン]−[蛍光色素内包ナノ粒子(蛍光体)]( "・・・"は抗原抗体反応により結合していることを表し、"−"は必要に応じてリンカー分子を介していてもよい共有結合により結合していることを表し、"/"はアビジン・ビオチン反応により結合していることを表す。)という複合体である場合、最初に一次抗体の溶液に病理標本を浸漬する処理(1次反応処理)、次に二次抗体−ビオチン結合体の溶液に病理標本を浸漬する処理(2次反応処理)、最後に本発明に係る蛍光ナノ粒子用染色液で分散させたアビジン−蛍光色素内包ナノ粒子に病理標本を浸漬する処理(蛍光標識処理)を行えばよい。
免疫染色工程を行う上での条件、たとえば1次反応処理、2次反応処理および蛍光標識処理それぞれにおける、所定の溶液(試薬)に病理標本を浸漬する際の温度および浸漬時間は、従来の免疫染色法に準じて、適切なシグナルが得られるよう適宜調整することができる。
温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。反応時間は、30分以上24時間以下であることが好ましい。
上述したような1次反応処理を行う前に、BSA含有PBSなど公知のブロッキング剤やTween20などの界面活性剤を滴下することが好ましい。
(3.標本後処理工程)
免疫染色工程を終えた病理標本は、観察に適したものとなるよう、固定化・脱水、透徹、封入などの処理を行うことが好ましい。
固定化・脱水処理は、病理標本を固定処理液(ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤)に浸漬すればよい。透徹は、固定化・脱水処理を終えた病理標本を透徹液(キシレン等)に浸漬すればよい。封入処理は、透徹処理を終えた病理標本を封入液に浸漬すればよい。これらの処理を行う上での条件、たとえば病理標本を所定の処理液に浸漬する際の温度および浸漬時間は、従来の免疫染色法に準じて、適切なシグナルが得られるよう適宜調整することができる。
(3'.任意工程)
本発明では、もしも必要であれば、明視野において細胞、組織、臓器等の形態を観察することができるようにするための、形態観察染色工程を含めることができる。形態観察染色工程は、常法に従って行うことができる。組織標本の形態観察に関しては、細胞質・間質・各種線維・赤血球・角化細胞が赤〜濃赤色に染色される、エオジンを用いた染色が標準的に用いられている。また、細胞核・石灰部・軟骨組織・細菌・粘液が青藍色〜淡青色に染色される、ヘマトキシリンを用いた染色も標準的に用いられている(これら2つの染色を同時に行う方法はヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)として知られている)。形態観察染色工程を含める場合は、免疫染色工程の後に行うようにしてもよいし、免疫染色工程の前に行うようにしてもよい。
(4.評価工程)
(4−1.観察・撮影)
観察・撮影工程では、所望の倍率における顕微鏡の同一視野において、免疫染色工程に用いられた目的生体物質を蛍光標識している蛍光体に対応した励起光に対応した励起光それぞれを病理標本に照射し、それらの蛍光体から発せられた蛍光による免疫染色像それぞれを観察・撮影する。これらの励起光の照射は、たとえば、蛍光顕微鏡が備えるレーザー光源と、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させる励起光用フィルターを用いることで照射することができる。免疫染色像の撮影は、たとえば、蛍光顕微鏡が備えるデジタルカメラによって行うことができる。免疫染色像の撮影の際には、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させる蛍光用フィルターを用いることで、目的とする蛍光のみを含み、目的としない蛍光やノイズとなる励起光およびその他の光を排除した免疫染色像を撮影することができる。
(4−2.画像処理・シグナル計測)
画像処理・計測工程では、目的生体物質に関して撮影された免疫染色像について、画像処理に基づき、目的生体物質に対応する蛍光標識シグナルに対応する蛍光標識シグナルを計測し、細胞膜の領域内にある前記目的生体物質に対応する蛍光標識シグナルを特定する。
蛍光標識シグナルは、蛍光の輝点数として扱うことが好ましい。
画像処理に用いることができるソフトウェアとしては、たとえば「ImageJ」(オープンソース)が挙げられる。このような画像処理ソフトウェアを利用することにより、免疫染色像から、所定の波長(色)の輝点を抽出してその輝度の総和を算出したり、所定の輝度以上の輝点の数を計測したりする処理、特に、次に述べる第1実施形態および第2実施形態を行う為の処理を、半自動的に、迅速に行うことができる。
本発明では、第1染色像および第2染色像を用いることにより、蛍光標識シグナルを計測すると同時に、染色像の細胞膜の領域内(つまり細胞膜上)に存在する目的生体物質に対応している蛍光標識シグナルを特定して抽出することができる。特に、目的生体物質用の蛍光体として蛍光色素内包ナノ粒子を用い、参照生体物質用の蛍光体として蛍光色素を用いる場合、好ましい実施形態として、たとえば次のような第1実施形態および第2実施形態が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
−蛍光体集積ナノ粒子合成例−
[粒子α-1・α-2]
・ペリレンジイミド集積ナノ粒子
N,N'−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミドを濃硫酸で処理することによりスルホ基の導入を行い、対応するスルホン酸に導いた。このスルホン酸を、常法により対応する酸塩化物に変換した。この酸塩化物14.4mgを水22.5mLに加えた後、ホットスターラー上で70℃20分間加熱し、メラミン樹脂ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)0.65gを加え、さらに5分間加熱撹拌した。ギ酸100μLを加え、60℃20分間で加熱攪拌した後、室温放冷した。冷却後、反応混合物を遠心用チューブに入れて遠心分離機に12,000rpmで20分間かけ、上澄み除去した。この洗浄をエタノールと水で行なった。
得られた粒子0.1mgをEtOH(エタノール)1.5mL中に分散し、アミンプロピルトリメトキシシランLS−3150(信越化学工業社製)2μLを加えて8時間反応させて表面アミノ化処理を行なった。
得られたペリレンジイミド集積ナノ粒子を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10,000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基が付いたペリレンジイミド集積ナノ粒子(粒子α-1)を得た。
得られた粒子α-1の粒径について電子顕微鏡を用いて計測したところ、平均粒径が150nmであった。また粒子α-1とは粒径の異なる粒子α-2については、合成時の色素量を14.4mgから3.6mgに、樹脂量を0.65mgから0.21mg減じたことを除いて、粒子α-1と同様に合成を行った。
・ストレプトアビジン修飾ペリレンジイミド集積ナノ粒子
ストレプトアビジン(SA:和光純薬社製)を、SH基導入試薬であるN−スクシンイミジル-S-アセチルチオ酢酸(SATA)と反応させた後、公知のヒドロキシルアミン処理を行うことでS−アセチル基の脱保護を行うことにより、ストレプトアビジンにチオール基を導入した。その後、ゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:Thermo Scientific No.89889)によるろ過を行い、末端にマレイミド基が付いたペリレンジイミド集積ナノ粒子(粒子α-1およびα-2)に結合可能なストレプトアビジンを得た。
EDTAを2mM含有したPBSを用いて上記粒子α-1およびα-2を稀釈し1nMに調整して得られる蛍光体集積ナノ粒子含有液1mLと、上記ストレプトアビジン溶液とを混合し、室温で1時間反応を行い、粒子α-1およびα-2とストレプトアビジンを結合させた。
10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を、EDTAを2mM含有したPBSを用いて遠心、洗浄を行い、ストレプトアビジンで修飾された粒子α−1−SAおよびα−2−SAのみを回収した。
[粒子β−1・β−2、β−3,β−4']
・TexasRed集積ナノ粒子
TexasRed色素3.4mgと3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM903)3μLをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mLを、99%エタノール48mL、テトラエトキシシラン(TEOS)0.6mL、超純水2mL、および28質量%のアンモニア水2.0mLと5℃で3時間混合した。
上記工程で作製した混合液を10000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した。この沈殿に対して、エタノールを加えて、沈殿物を分散させ、再度遠心分離をする洗浄工程を3回繰り返し、TexasRed集積ナノ粒子を得た。
得られた蛍光体集積ナノ粒子を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有してPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようにSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル)を混合し、5℃で1時間反応させた。この混合液を、10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後に、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基がついたTexasRed集積ナノ粒子(β−1)を得た。得られた粒子β−1の粒径について電子顕微鏡を用いて計測したところ、平均粒径が150nmであった。また粒子β−2は28質量%のアンモニア水を14質量%のアンモニア水に変更することを除いて、β−3、 β−4については、合成時の28質量%のアンモニア水量2.0mLをそれぞれ2.5mLおよび3.1mLに変更したことを除いて、粒子β−1と同様に合成を行った。
・ストレプトアビジン修飾TexasRed集積ナノ粒子
ストレプトアビジン(和光純薬工業社製)をボレートバッファーに加えた後、SH基導入試薬である2−イミノチオラン塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)と、室温で1時間反応させることにより、ストレプトアビジンにチオール基を導入した。このストレプトアビジン溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:Thermo Scientific No.89889)によるろ過を行い、末端にマレイミド基がついたTexasRed集積ナノ粒子(粒子β−1、β−2、β−3およびβ−4)に結合可能なストレプトアビジンを得た。
EDTAを2mM含有したPBSを用いて上記粒子を稀釈し0.67nMに調整して得られる粒子740μLと、上記ストレプトアビジンとを混合し、室温で1時間反応を行い、粒子β−1、β−2、β−3およびβ−4とストレプトアビジンを結合させた。
10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心、精製を行い、ストレプトアビジンで修飾された粒子β−1−SA、β−2−SA、β−3−SAおよびβ−4−SAのみを回収した。
・抗体修飾TexasRed集積ナノ粒子
まず、末端にチオール基がついた抗体を以下の通り作製した。次に、上記粒子β−2、β−3と末端にチオール基がついた抗体とを以下の通り反応させた。
・還元工程:抗HER2抗体の還元処理(SH基導入処理)
抗HER2抗体(ベンタナ社製「抗HER2ウサギモノクロナール抗体(4B5)」分子量148,000g/mol)100μgをPBS100μLに溶解させた。この抗体溶液に1Mのメルカプトエタノールを10μL添加して、室温で30分間反応させて抗体の還元を行い、反応後の反応液をゲル濾過カラムに供して、SH基を有する抗HER2抗体の溶液を得た。
得られたSH基を有する抗HER2抗体と上記粒子β−2、β−3をPBS中で室温で混合し、1時間反応を行った後、10mMの2−メルカプトエタノール4μLを反応液に添加して結合反応を停止させ、得られた溶液を10000gで60分間遠心分離処理を行い、上澄みを除去した。その後、EDTAを2mM含有したPBSを加えて沈降物を分散させた後、上記遠心分離を再度行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSにより分散させて、抗HER2抗体が結合したシリカナノ粒子(抗体結合蛍光体集積ナノ粒子)β−2−Ab、β−3−Abを得た。
[粒子θ−1・θ−2]
・ペリレンジイミド集積メラミン粒子
ペリレンジイミドスルホン酸誘導体2.5mgを水22.5mLに加えた後、ホットスターラー上で70℃20分間加熱し、水溶性メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業社製)1.5gを加え、さらに5分間加熱撹拌した。ギ酸100μLを加え、20分間60度で加熱攪拌した後、室温放冷した。冷却後、反応混合物を遠心用チューブに入れて遠心分離機に12000rpm20分かけ、上澄み除去した。この洗浄をエタノールと水で行なった。
得られたペリレンジイミド集積ナノ粒子を、SM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基が付いたペリレンジイミド集積ナノ粒子(粒子θ−1)を得た。
得られた粒子Cの粒径について電子顕微鏡を用いて計測したところ、平均粒径が150nmであった。また粒子θ−2については、合成時のギ酸100μLを50μLに減じたことを除いて、粒子θ−1と同様に合成を行った。
・ストレプトアビジン修飾ペリレンジイミド集積メラミン粒子
ストレプトアビジン修飾TexasRed集積ナノ粒子を作成する際と同様の手法で、末端にマレイミド基がついたペリレンジイミド集積ナノ粒子(粒子θ−1、およびθ−2)に結合可能なストレプトアビジンを取得し、粒子θ−1、およびθ−2と反応させ、遠心、精製をおこない、ストレプトアビジンで修飾された粒子θ−1−SA、およびθ−2−SAを回収した。
・抗体修飾ペリレンジイミド集積メラミン粒子
また、β−2からβ−2−Abを作成した抗体修飾方法と同様に、θ−2からθ−2−Abを作成した。
(評価1)蛍光体集積ナノ粒子の沈降・凝集の評価
実施例1および6にはそれぞれ粒子α−1およびα−2、実施例2〜5にはそれぞれ粒子β−1、β−2、β−3およびβ−4、比較例1にはカルボン酸エステルで修飾されたポリスチレンを母体とする蛍光体集積ナノ粒子であるFluoSpheres Carboxylate-Modified Microspheres, 0.2 μm, red fluorescent (580/605), 2% solids(InvitrogenF−8810)、および比較例2および3には粒子θ−1またはθ−2を使用して沈降・凝集の評価を行った結果を示している(表1)。
また、上記各粒子の表面に生体成分結合性分子を修飾後の各粒子の、沈降・凝集の評価を行った結果は表2に示す。
各蛍光体集積ナノ粒子および生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子は、各々を保存液に含有させた形態のまま冷蔵庫中4℃で一週間保存したのちに、沈降・凝集の評価をおこなった。保存液としては、0.6% αカゼイン、0.6% βカゼイン、3% BSA、0.1% Tween(登録商標)20および0.015N NaN3を含むTris緩衝液(pH=6.9)を、採用した。
各粒子の沈降・凝集の評価は、目視、あるいはフォーマルアクション(Formulaction)社製のタービスキャン(商標)(タービスキャンLab)を用いて行った。
タービスキャン(商標)を用いた場合の測定条件は、蛍光体集積ナノ粒子含有液および生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子について、波長880nmの赤外線を光源として使用したときの後方散乱強度(透過光)を測定した。
そして、初回観測時における高さ中心部の後方散乱強度(透過光)をI'A、一週間保存後における高さ中心部の後方散乱強度(透過光)をI'Bとしたときの、高さ中心部の後方散乱強度(透過光)の変化の割合D'(%)を、以下のように算出した。
D'=(I'B−I'A)/I'A×100
各蛍蛍光体集積ナノ粒子について、沈降・凝集の変化の割合D'を、表1および表2に示した。タービスキャンの測定値が−1以上であれば、目視での凝集は観察されないという相関性が確認された。
(評価2)蛍光体集積ナノ粒子を用いた染色力維持評価
次に、保存性を評価するため、上記各生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子について、合成直後、および、上記保存液中で冷蔵庫中4℃で3ヶ月保存後の生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子のそれぞれを用いて、下記免疫染色、形態観察染色および観察を行った。
(2−1)標本作製工程
ここで、組織細胞スライドとして、US Biomax社製の乳癌組織アレイ(型番:BR243のシリーズ(24コア);コア直径1.5mm)を使用した。
組織細胞スライドを常法に従い脱パラフィン処理した後、水に置換する洗浄を行った。洗浄した組織細胞スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で121℃、5分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。
(2−2)免疫染色工程
賦活化処理後の組織細胞スライドを、PBS緩衝液を用いて洗浄した後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBS緩衝液を用いてブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)(ベンタナ社製)を組織細胞スライドと2時間反応させた。これをPBS緩衝液で洗浄後、1%BSA含有PBS緩衝液で2μg/mLに希釈した4B5に結合するビオチン標識抗ウサギモノクローナル抗体と30分反応させた。
このビオチン標識抗ウサギモノクローナル抗体との反応後、生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子による組織細胞スライドの染色を行った。
(2−3)免疫染色の蛍光標識処理
ここで、合成直後の生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子を用いた染色にあたっては、1%BSA含有PBS緩衝液で0.2nMに稀釈した合成直後の蛍光体集積ナノ粒子を組織細胞スライドと、中性のpH環境(pH6.9〜7.4)、室温の条件下で3時間反応させた。なお、生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子は0.2nMに稀釈する前に、遠心分離、上澄み液の除去、上記保存液による稀釈、および超音波処理による再分散を適当な回数繰り返すことにより上記保存液への溶媒置換を行った後、フィルター処理(0.65μm:ミリポア社製)を行った。
一方、上記保存液中で3ヶ月保存後の生体成分結合性分子結合型蛍光体集積ナノ粒子を用いた染色についても、0.2nMに稀釈した合成直後の蛍光体内包樹脂粒子に代えて、上記保存液中で3ヶ月保存後の蛍光体集積ナノ粒子を用いたことを除き、同様に行った。この場合、上記蛍光色素内包樹脂粒子含有保存液の形態で保存した蛍光体集積ナノ粒子を1%BSA含有PBS緩衝液で0.2nMに稀釈して、染色に用いた。蛍光体集積ナノ粒子との反応後、組織細胞スライドを、PBS緩衝液を用いて洗浄した。
(2−4)標本後処理工程
上記免疫染色を行った組織細胞スライドについて、さらに、形態観察染色を行った。具体的には、免疫染色した組織細胞スライドをマイヤーヘマトキシリン液で1分間染色してヘマトキシリン染色を行った(HE染色)。その後、該組織細胞スライドを45℃の流水で3分間洗浄した。その後、純エタノールに5分間漬ける操作4回行い、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間漬ける操作を4回行い、透徹を行った。最後に、封入剤(「エンテランニュー」、Merck社製)を用いて組織切片を封入して観察用のサンプルスライドとした。
(2−5)評価工程
(2−5−1)観察・撮影工程
上記免疫染色および形態観察染色したサンプルスライド上にある組織切片に対して所定の励起光を照射して蛍光を発光させた。その状態の組織切片を蛍光顕微鏡(BX−53,オリンパス社製)により観察および撮像を行った。ここで、観察および撮像は、サンプルスライド上の1つのコア(1つの組織スポット)につき10視野に分けて行った。このとき、対物レンズおよび接眼レンズとして、それぞれ倍率が40倍および10倍のものを用いた。
(2−5−2)画像処理・計測工程
また、輝点計測は、ImageJ FindMaxima法により計測した。
上記励起光は、光学フィルターに通すことで575〜600nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、光学フィルターに通すことで612〜682nmに設定した。
顕微鏡観察、画像取得時の励起波長条件は、580nmの励起では視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像取得時の露光時間は画像の輝度が飽和しないように任意に設定(例えば4000μ秒に設定)して撮像した。
評価2における各評価の結果を、下記表2に示す。
表1および2の結果から、真球度fの平均値が0.80〜0.95である蛍光体集積ナノ粒子および生体成分結合性分子と結合後の粒子は、一週間保管後の沈降・凝集がないと評価され、一方、その値が範囲外の粒子は保管後の沈降・凝集があると評価された。粒子α-1と粒子θ-1とは、本文に示した通りその製法がわずかに異なっており、その差が真球度などのパラメータ値の差に表れたと考察している。また、生体成分結合性分子と結合後の粒子の真球度などのパラメータ値は、結合前のそれとほとんど変わらない値であった。

Claims (8)

  1. 母体粒子と、該母体粒子に含有される蛍光体とを有する粒子を含み、
    下記式2で表される周長比Rの平均値が0.50〜0.95である蛍光体集積ナノ粒子。
    R=2π([M/π]0.5)/r1・・・(式2)
    (式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、r1はその周長nmをそれぞれ表す。)
  2. 下記式1で表される真球度fの平均値が0.80〜0.95である、請求項1に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
    f=[M/(π/4)]0.5/Nmax・・・(式1)
    (式中、Mは微粒子の投影断面積nm2を、Nmaxはその断面の最長径nmをそれぞれ表す。)
  3. 前記母体粒子が、有機系化合物を含む、請求項1または2に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
  4. 前記母体粒子が、熱硬化性樹脂;スチレン樹脂;アクリル樹脂;アクリロニトリル樹脂;アクリロニトリル−スチレン共重合体;アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体;スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリロニトリル、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成される構成単位を含む(共)重合体;またはポリ乳酸を含む粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
  5. 前記母体粒子が、熱硬化性樹脂を含む粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
  6. 平均粒径が300nm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
  7. 前記粒子の表面に、生体成分結合性分子を結合した、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光体集積ナノ粒子を含有する蛍光免疫染色用溶液。
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